説明

クリーンルームの防災設備

【課題】 ガス検知についてはその精度が高く、且つ高速応答を可能にし、また、火災検出とガス検知とを連動させることによって火災の発生を確実に判断することを可能にしたクリーンルームの防災設備を提供する。
【解決手段】 クリーンルーム100に配置された火災センサ21と、火災センサ21の出力に基づいて火災発生を検知する火災受信装置20と、クリーンルーム100の空気を分析する質量分析計30と、火災受信装置20からの火災信号と質量分析計30の分析結果とに基づいて火災発生状態を判定する警報制御装置40とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、液晶、新材料等の製造工場のクリーンルームの防災設備に関し、特に、火災感知と漏洩ガス検知との組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、液晶、新材料等の製造工場のクリーンルームでは、自然発火の危険性もある多種多様なガスを扱っており、微量の漏洩を検知しなければ重大な事故に繋がる恐れがある。従来は、クリーンルームの環境雰囲気を監視するため、例えば半導体式ガスセンサを使用しガスの漏洩を検知したり、或いは煙センサで火災を検出したりして、防災対策を取っていた(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−76445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のクリーンルームの環境雰囲気の監視手段は次のような問題点がある。
(a)半導体式のようなガスセンサは、検知精度が低く、反応速度が遅い。また、特定ガスに反応するセンサは複数設置しなければならず、トータルコストが高くなる。
(b)煙を検出する火災センサは、火災が発生しないと動作せず、室内の環境変化からの火災に至る早期予兆ができない。また、非火災報(誤報)を起しても確認手段がない。
【0004】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、ガス検知についてはその精度が高く、且つ高速応答を可能にし、また、火災検出とガス検知とを連動させることによって火災発生を確実に判断することを可能にしたクリーンルームの防災設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るクリーンルームの防災設備は、クリーンルームに配置された火災センサと、該火災センサの出力に基づいて火災発生を検知する火災受信部と、前記クリーンルームの空気を分析する質量分析計と、前記火災受信部から火災信号と前記質量分析計の分析結果とに基づいて火災発生状態を判定する警報制御手段とを備えたものである。
また、本発明に係るクリーンルームの防災設備において、前記警報制御手段は、前記火災受信部から火災発生信号を受信したときに、前記質量分析計による特定ガス及び燃焼生成ガスの検出がないときには、または、前記質量分析計が特定ガスを検出したときに、火災受信部が火災発生信号を出力していないときには、予備警報を出力する。
また、本発明に係るクリーンルームの防災設備において、前記警報制御手段は、前記火災受信部から火災発生信号を受信したときに、前記質量分析計による特定ガス又は燃焼生成ガスの検出があったときには、または、前記質量分析計が特定ガスを検出したときに、前記火災受信部が火災発生信号を出力しているときには、火災発生状態であることを確定し火災警報を出力する。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、火災受信部からの火災信号と質量分析計の分析結果とに基づいて火災発生状態を判定しており、質量分析計は、高精度、高速応答であり、微量のガスが漏洩しても検知することができ、室内の環境変化を火災に至る早期予兆で発見することができる。また、火災センサが作動する際に、質量分析計でその火災が発生する要因となるガスを検出でき、火災センサと質量分析計との連動によって火災発生を確実に判定しており、火災センサの非火災報(誤報)を防止することができる。また、質量分析計はマルチセンシングの特徴があるので、1台の分析計で複数のガスに対応することができ、トータルコストが低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は本発明の実施の形態に係るクリーンルームの防災設備及びそれに関連する設備の構成を示した構成図である。半導体、液晶、新材料等の製造工場に建てられたクリーンルーム100は、その換気の要求で建物の構造は縦に4つの部分、すなわち、製造現場である室内101、天井裏102、床下103及びリターンシャフト104から構成されている。図示しない換気ポンプがクリーンルーム100の空気を一定方向(矢印の方向)で循環させ、空気が室内101の天井に設けられたフィルタ105を通過するときに濾過され、そのため、室内101の空間はいつも高い清浄度に保持されている。これら室内101の天井及び床下103には、煙や炎を検出する火災センサ21が設置されていて、火災が発生するとその火災センサ21が作動して、信号線22を介して火災受信部である火災受信装置20に通報する。また、室内101、天井裏102及び床下103には複数の吸引管31が配置されており、吸引管31は吸引式の質量分析計30に接続されている。質量分析計30は、図2に示されるように、空気吸引部32、質量分析部33及びデータ変換部34から構成されており、吸引管31を介して室内101、天井裏102、及び床下103の空気をサンプリングしてそれらの雰囲気を監視する。警報制御手段としての警報制御装置40は、火災受信装置20及び質量分析計30の動作制御や、予備警報、火災警報等の表示や鳴動等を行ったり、図示しない消火設備や防排煙等の連動されるべき機器の駆動を制御する。
【0008】
図3は図1のクリーンルームの防災設備の動作を示したフローチャートである。警報制御装置40は質量分析計30に監視を行わせると(S11)、質量分析計30は監視を開始し、吸引管31を介して室内101、天井裏102及び床下103の空気をサンプリングする(S12)。質量分析計30の質量分析部33はそのサンプリングされた空気のガス分析、例えばCO、CO2、シランガス、ジボランガス等のガス分析をし、分析結果はデータ変換部34によりデータ変換されて警報制御装置40に出力される(S13)。警報制御装置40は、特定のガス、例えばシランガスやジボランガスが検出されたかどうかを判定し(S14)、検出されなかった場合には上記の分析処理(S13)に移行して分析処理を繰り返させる。警報制御装置40は、質量分析部33が特定のガスを検出したと判定した場合には、ガス漏洩プレアラームを設定する(S15)。そして、警報制御装置40は、後述の火災プレアラームが設定されているかどうかを判定し(S16)、火災プレアラームが設定されていない場合には、まだ火災の発生の可能性があるがまだ断定できるような状態ではないということで、予備警報(プレアラーム)を出力する(S17)。即ち、その旨を表示するとともにそれに対応した警報音を図示しないスピーカー、ブザー又はベル等によって発する。そして、上記の分析処理(S13)に移行する。また、火災センサプレアラームが設定されていた場合には、火災発生を確定し、火災警報を出力する(S18)。即ち、火災が発生したこと表示するとともにそれに対応した警報音を図示しないスピーカー、ブザー又はベル等によって発する。そして、警報制御装置40は、火災発生が確定すると、図示しない消火設備や防排煙等の連動されるべき機器を駆動してクリーンルーム100の火災を消火をさせる(或いは火災の発生を抑制する。)。
【0009】
また、警報制御装置40が火災受信装置20に監視を行わせると(S21)、火災受信装置20は監視を開始し(S22)、火災センサ21の出力に基づいて火災が発生したかを判定し(S23)、火災が発生していなければ上記の処理(22)に移行して監視を続ける。火災が発生したと判定した場合には警報制御装置40に火災信号を出力し、警報制御装置40は火災プレアラームを設定する(S24)。警報制御装置40はガス漏洩プレアラームが設定されているかどうかを判定し(S25)、ガス漏洩プレアラームが設定されていた場合には、火災発生を確定し、火災警報を出力する(S18)。ガス漏洩プレアラームが設定されていなかった場合には、次に、質量分析計30により燃焼生成ガス(例えばCO、CO2等)がが検出されていたかどうかを判定し(S26)、燃焼生成ガスの検出がないときには、警報制御装置40は、予備警報(プレアラーム)を出力する(S27)。また、質量分析計30により燃焼生成ガス(例えばCO、CO2等)が検出されていた場合には、警報火災発生を確定し、火災警報を出力する(S18)。
【0010】
以上のように本実施形態では、警報制御装置40が火災受信装置20からの火災信号と質量分析計30の分析結果とに基づいて火災発生状態を判定している。特に、警報制御装置40は、
(a)火災受信装置20からの火災発生信号を受信したときに、質量分析計30による特定ガス又は燃焼生成ガスの検出があったとき、及び、
(b)質量分析計30が特定ガスを検出しときに、火災受信装置20が火災発生信号を出力しているときに、
火災発生状態であることを確定して火災警報を出力しており、その判定結果は精度の高いものとなり、火災センサ21の非火災報(誤報)を防止することができる。
また、警報制御装置40は、
(c)火災受信装置20から火災発生信号を受信したときに、質量分析計30による特定ガス及び燃焼生成ガスの検出がないとき、及び、
(d)質量分析計30が特定ガスを検出したときに、火災受信装置20が火災発生信号を出力していないときに、
予備警報(プレアラーム)を出力するようにしており、このようなことからも、火災センサ21の非火災報(誤報)を防止している。
【0011】
なお、上記の説明においては、特定ガスとしてシランガス、ジボランガス等のガスを例に挙げたが、本発明はこれらのガスに限定されるものではなく、クリーンルーム100において使用されるガス等により適宜変更される。また、このことは燃焼生成ガスにおいても同様である。
【0012】
また、上記実施形態に用いられる質量分析計30は、ガス分析の結果として、火災発生を検出するための特定ガス以外のガスも検出することもでき、汚損物質ガスの監視装置を兼用することができる。すなわち、クリーンルーム100内の雰囲気は、フィルタ105によってクリーンな環境に保たれているが、フィルタ105の劣化または性能以上の汚損物質の発生等によって、雰囲気が汚損されると、その汚損物質が質量分析計30によって検出される。例えば、HClやHF等の酸性ガス成分、NH3等のアルカリ性ガス成分、またはハイドロカーボンと呼ばれる各種有機物が検出される場合には、警報制御装置40に汚損信号を出力して、警報制御装置40に汚損警報を行わせることも可能である。このようなクリーンルーム100内の雰囲気を質量分析計30によって監視することは1台の装置で各種ガスを検出できることから非常に効率的である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るクリーンルームの防災設備及びそれに関連する設備の構成を示した構成図である。
【図2】質量分析計の構成図である。
【図3】クリーンルームの防災設備の動作を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0014】
20 火災受信装置、30 質量分析計、40 警報制御装置、100 クリーンルーム、101 室内、102 天井裏、103 床下、104 リターンシャフト、105 フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーンルームに配置された火災センサと、
該火災センサの出力に基づいて火災発生を検知する火災受信部と、
前記クリーンルームの空気を分析する質量分析計と、
前記火災受信部からの火災信号と前記質量分析計の分析結果とに基づいて火災発生状態を判定する警報制御手段と
を備えたことを特徴とするクリーンルームの防災設備。
【請求項2】
前記警報制御手段は、前記火災受信部から火災発生信号を受信したときに、前記質量分析計による特定ガス及び燃焼生成ガスの検出がないときには、または、前記質量分析計が特定ガスを検出したときに、火災受信部が火災発生信号を出力していないときには、予備警報を出力することを特徴とする請求項1記載のクリーンルームの防災設備。
【請求項3】
前記警報制御手段は、前記火災受信部から火災発生信号を受信したときに、前記質量分析計による特定ガス又は燃焼生成ガスの検出があったときには、または、前記質量分析計が特定ガスを検出したときに、前記火災受信部が火災発生信号を出力しているときには、火災発生状態であることを確定し火災警報を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載のクリーンルームの防災設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−66218(P2007−66218A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−254352(P2005−254352)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】