説明

クレーンのステアリング装置

【課題】構造が簡易で油漏れのないタイヤ走行式クレーンのステアリング装置を提供する。
【解決手段】クレーン本体の脚部に接続されたボギー11に固定されたブレーキ付き電動ジャッキ20により片方のヨーク12を回転軸15のまわりに旋回させ、連結ロッド13を通じて他方のヨーク12を連動させることにより、2本のタイヤ8の向きを任意の方向に変えてブレーキにより保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ走行式のクレーンにおいて、クレーンが走行、横行又は旋回することができるようにタイヤの向きを変えるステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
埠頭などに設けられたコンテナヤードにおいては、タイヤで走行する大型のクレーン(以下、「クレーン」という。)を用いてのコンテナの積み替え作業が行われている。
【0003】
このクレーンの一般的な構造を図3及び図4に示す。図3はクレーンの正面図であり、図4はクレーンの側面図である。
【0004】
クレーン本体1は、2本の脚部2とそれらの上部に渡されたガーダ3からなる門型(橋型)の形状を有している。ガーダ3上には、コンテナ4を掴持するスプレッダ5を吊持するワイヤ6を巻き上げ/巻き下げする駆動手段を有するトロリ7が、X方向に移送可能な状態で載置されている。
【0005】
2本の脚部2の底部には、走行用のタイヤ8がステアリング装置9を介して取り付けられている。このステアリング装置9は、図5に示すタイヤ部分の上面図のように、タイヤ8を90度旋回させることができ、それによりクレーン本体1はコンテナヤード内をY方向に走行(図5(a)参照。)又はX方向に横行(図5(b)参照。)して、コンテナを任意の場所に移送することができる。
【0006】
また、ステアリング装置9にそれぞれのタイヤ8を、例えば図5(c)のように、任意の角度まで旋回させる機能を持たせることにより、クレーン本体1を回転させることもできる(いわゆるインターミディエイト機能)。
【0007】
従来のステアリング装置の構造を図6及び図7に示す。図6はステアリング装置の側面図を、図7は図6のB−B矢視における断面図を、それぞれ示したものである。
【0008】
このステアリング装置9は、図6に示すように、クレーン本体1の脚部2に固定軸10により接続されたボギー11、当該ボギー11の両端下部に旋回可能に設置されたヨーク12、2つのヨーク12を接続する連結ロッド13、及びボギー11に固定され一方のヨーク12に接続する油圧シリンダ14から構成される。また、それぞれのヨーク12の下面には、回転可能な状態でタイヤ8が固定されている。
【0009】
このようなステアリング装置9においては、図示しない油圧ポンプにより油圧シリンダ14を伸縮させて一方のヨーク12を回転軸15のまわりに旋回させ、連結ロッド13を介して他方のヨーク12を連動させることにより、同時に2つのタイヤ8の向きを任意の方向に変えることができる。
【0010】
なお、タイヤ8が所定の向きまで旋回した後は、ヨーク12に設けられたロック穴16に、ボギー11に固定されたロック用シリンダ17(クレーン本体がインターミディエイト機能を有する場合にはインターミディエイト用シリンダ18)を挿入することにより、油圧シリンダ14の油リーク等によるヨーク12のズレを防止してクレーン作業の安全性を図るようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記のような構造を有するステアリンク装置においては、油圧ポンプ、油圧シリンダやロック用シリンダなどの部品が必要とされ構成機器の数が多くなるため、保守性に劣るとともに製造費が高くなるという問題があった。
【0012】
また、油圧ポンプや油圧シリンダ、またはそれらをつなぐ配管などからの油漏れにより、周囲の環境を悪化させるという問題もあった。
【0013】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造を有し、対環境性に優れたクレーンのステアリング装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明は、タイヤ走行式クレーン本体のタイヤの向きを切り替えるクレーンのステアリング装置であって、前記クレーン本体の下部に設置されたボギーと、前記ボギーの両端下部に前記クレーン本体に対して水平面上で旋回自在に取り付けられたヨークと、前記両端部のヨーク同士を連結して旋回を連動させる連結ロッドと、前記ボギーと前記ヨークの一方とを接続して伸縮することにより前記接続するヨークを旋回させるブレーキ付き電動ジャッキとからなることを特徴とするクレーンのステアリング装置である。
【0015】
このような構造を有することにより、油圧を利用する必要がないためステアリング装置の構造を簡単にすることができ、かつ油漏れの可能性がないため対環境性を向上させることができる。
【0016】
また、前記のブレーキ付き電動ジャッキには、ピストンの送り出し位置の検知手段を備えるものを用いることが望ましい。この検知手段としては、例えばシリンダとピストンを接続するロッドの停止位置をリミットスイッチにより検出したり、ピストンの変位を磁気、超音波又は光によるセンサー等により直接的に検知するものなどがある。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、タイヤ走行式のクレーンのステアリング装置において、ブレーキ付きの電動ジャッキを用いてヨークを旋回させてタイヤの向きを変えるようにしたことにより、油圧シリンダやロック用シリンダが不要となり、構成部品の数を減らすことができるため、ステアリンク装置の構造を簡易化して保守性を向上させるとともに、製造費を低減することができる。
【0018】
また、油漏れ自体がなくなることにより、対環境性を向上させることができる。
更に、ブレーキ付きの電動ジャッキに、ピストンの送り出し位置を検知する位置検出器を備えたものを用いることにより、クレーン本体のタイヤの向きを正確に把握・決定することができ、作業の効率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
本発明に係るステアリング装置の構造を図1及び図2に示す。図1はステアリング装置の側面図を、図2は図1のA−A矢視における断面図をそれぞれ示したものである。なお、図6及び図7と共通する部分には同一の符号を付している。
【0020】
本ステアリング装置9は、ヨーク12の旋回をブレーキ付き電動ジャッキ20のピストン22を伸縮させることにより行うものである。従って、図6及び図7に示した従来のステアリング装置と同じ部分の説明は省略する。
【0021】
ブレーキ付き電動ジャッキ20は本体がボギー11に固定され、伸縮する部分がヨーク12の片方と接続するように設置される。
【0022】
このブレーキ付き電動ジャッキ20とは、主にシリンダ21、ピストン22、電動モータ23から構成され、電動モータ23を駆動して減速機(図示せず)を介してシリンダ21内のピストン22を伸縮させるものである。電動モータ23にはブレーキ付きモータが用いられており、電磁式のブレーキ機構によりピストン22を任意の位置において保持することができる。
【0023】
本ステアリング装置9の動作を以下に説明する。
クレーン本体1の運転手は、ブレーキ付き電動ジャッキ20の電動モータ23を駆動させ、減速機(図示せず)を介してシリンダ21からピストン22を伸縮させることによりヨーク12を旋回させる。そして、このヨーク12の旋回を連結ロッド13を介して他方のヨーク12を連動させることにより、2本のタイヤ8の向きを同時に任意の方向へ変える。タイヤ8が所定の向きになった後は、電動モータ23のブレーキ機構を作動させてピストン22の位置を保持することによりヨーク12のズレを防止することができる。
【0024】
また、このブレーキ付き電動ジャッキ20において、シリンダ21とピストン22を伸縮自在のロッド24により接続してピストン22の動きと連動させるようにして、そのロッド24の変位をシリンダ21上に取り付けたリミットスイッチ25で検知することにより、タイヤ8の向きを正確に把握・決定することができる。
【0025】
なお、このロッド24とリミットスイッチ25の代わりにリニア式の磁気センサー及び超音波センサー等の位置検出器を用いてピストン22の位置を直接的に検知することにより、タイヤ8の向きを更に正確に把握・決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るステアリング装置の側面図である。
【図2】図1に示すA−A矢視の断面図である。
【図3】クレーン本体の正面図である。
【図4】クレーン本体の側面図である。
【図5】クレーン本体の作業時におけるタイヤの向きを示した図である。
【図6】従来のステアリング装置の側面図である。
【図7】図6に示すB−B矢視の断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 クレーン本体
2 脚部
3 ガーダ
4 コンテナ
5 スプレッダ
6 ワイヤ
7 トロリ
8 タイヤ
9 ステアリング装置
10 固定軸
11 ボギー
12 ヨーク
13 連結ロッド
14 油圧シリンダ
15 回転軸
16 ロック穴
17 ロック用シリンダ
18 インターミディエイト用シリンダ
20 ブレーキ付き電動ジャッキ
21 シリンダ
22 ピストン
23 電動モータ
24 伸縮ロッド
25 リミットスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ走行式クレーン本体のタイヤの向きを切り替えるクレーンのステアリング装置であって、前記クレーン本体の下部に設置されたボギーと、前記ボギーの両端下部に前記クレーン本体に対して水平面上で旋回自在に取り付けられたヨークと、前記ヨーク同士を連結して旋回を連動させる連結ロッドと、前記ボギーと前記ヨークの一方とを接続して伸縮することにより前記接続するヨークを旋回させるブレーキ付き電動ジャッキと、からなることを特徴とするクレーンのステアリング装置。
【請求項2】
前記ブレーキ付き電動ジャッキは、ピストンの送り出し位置の検知手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のクレーンのステアリング装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate