説明

クレーンの故障診断装置

【課題】クレーンの制御装置が故障した場合でも、この故障したクレーンを運転して退避させ、代わりのクレーンをごみピット全体で運転することにより、クレーン設備を備えた施設を安定した状態で稼働を継続させることができるクレーンの故障診断装置を提供すること。
【解決手段】No1クレーンとNo2クレーンの両方において、巻上インバータ9a、9bと巻上ブレーキ回路10a、10bとにそれぞれ補助接点付ブレーカ1を設けるとともに、非常巻上運転用スナップスイッチ2と、動力切替用マグネットスイッチ3とを設け、正常な側の巻上インバータ9bを使用して、故障したNo1クレーンの巻上運転を一時的に可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの故障診断装置に関し、特に、クレーンの制御装置が故障した場合でも、この故障したクレーンを運転して退避させ、代わりのクレーンを運転することにより、クレーン設備を備えた施設を安定した状態で稼働させることができるクレーンの故障診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ごみ処理場で使用されるクレーン設備では、例えば、図1に示すように、切替用として2台のクレーンが装備されている。
このようなクレーン設備では、通常は15〜20分に1回の割合で、クレーンのバケットによりごみを掴み、巻上・横行・走行・開閉し、ごみをホッパヘ投入するような、安定した運転をすることが必要となっている。
【0003】
ところで、従来のクレーンの故障診断装置においては、例えば、巻上制御装置(インバータ)の故障を検出し、この巻上制御装置が復旧不能な場合、バケットを巻上げて、クレーンを退避エリアに寄せないと、正常なクレーンに切り替えようとしても、故障したクレーンがピット内にあるために、焼却炉(ホッパ)にごみを投入することができず、正常なクレーンが1台あったとしても、焼却炉、ひいては、プラントそのものの運転を停止せざるを得ないという問題があった。
また、一時的にバケットを退避するには、ごみ処理場の天井にウインチを取り付け、バケットにこのウインチをひっかけて巻上げることしかできなかったが、現状は人手で巻上げるため相当な労力がいるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来のクレーンの故障診断装置が有する問題点に鑑み、クレーンの制御装置が故障した場合でも、この故障したクレーンを運転して退避させ、代わりのクレーンをごみピット全体で運転することにより、クレーン設備を備えた施設を安定した状態で稼働を継続させることができるクレーンの故障診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明のクレーンの故障診断装置は、複数のクレーンを各クレーン毎に設けた制御装置により運転するクレーン設備において、任意の制御装置を他のクレーンの制御装置に切り替える非常切替回路を設けたことを特徴とする。
【0006】
この場合において、非常切替回路が、各クレーンの巻上インバータと巻上ブレーキ回路とに設けられた補助接点付ブレーカ、非常巻上運転用スナップスイッチ及び動力切替用マグネットスイッチを備えることができる。
【0007】
また、2台のクレーンを各クレーン毎に設けた制御装置により運転するクレーン設備を対象とすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のクレーンの故障診断装置によれば、複数のクレーンを各クレーン毎に設けた制御装置により運転するクレーン設備において、任意の制御装置を他のクレーンの制御装置に切り替える非常切替回路を設けることから、クレーンの制御装置が故障した場合でも、この故障したクレーンを正常な別のクレーンの制御装置で運転することによって退避させることができる。
そして、代わりのクレーンを運転することにより、クレーン設備を備えた施設を安定した状態で稼働させることができる。
【0009】
この場合、非常切替回路が、各クレーンの巻上インバータと巻上ブレーキ回路とに設けられた補助接点付ブレーカ、非常巻上運転用スナップスイッチ及び動力切替用マグネットスイッチを備えることにより、正常な側の巻上インバータを使用して、故障したクレーンの巻上運転を可能にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のクレーンの故障診断装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1〜図2に、本発明のクレーンの故障診断装置の一実施例を示す。
このクレーン設備は、図1に示すように、No1クレーンとNo2クレーンとを各クレーン毎に設けた制御装置により運転するもので、任意の制御装置を他のクレーンの制御装置に切り替える非常切替回路を設けている。
【0012】
非常切替回路としては、例えば、図2に示すように、No1クレーンとNo2クレーンの両方において、巻上インバータ(制御装置)9a、9bと巻上ブレーキ回路10a、10bとにそれぞれ補助接点付ブレーカ1を設けるとともに、非常巻上運転用スナップスイッチ2と、動力切替用マグネットスイッチ3とを設け、正常な側の巻上インバータ9bを使用して、故障したNo1クレーンの巻上運転を一時的に可能にする。
【0013】
例えば、No1クレーンの巻上インバータ9aが故障した場合、No1クレーンとNo2クレーン共に補助接点付ブレーカ1を切る。これにより、通常ONしている該ブレーカ1の補助接点信号INT11、INT12、INT21、INT22がOFFする。
そして、通常OFFしているNo1制御盤内の非常巻上運転用スナップスイッチ2をONし、No1シーケンサ11aに取込む。
【0014】
補助接点付ブレーカ1がOFF、非常巻上運転用スナップスイッチ2がONの条件が成立すると、No1シーケンサ11aよりOUTX1が出力され、この接点信号をNo2シーケンサ11bヘ取込み、この信号をもって、No2シーケンサ11bがOUT21、OUT22を出力し、補助リレーY1、Y2がONし、No2側にマグネットスイッチ3をONさせる。
これにより、No2クレーン側の巻上インバータ9b及び巻上ブレーキ回路10bに切り替わり、コントローラ4或いはタッチパネル5からの操作で、一時的にNo1クレーンのバケットを巻上げ、このNo1クレーンを退避可能な状態にした。
また、シーケンサ11a、11b間に光リンクケーブル8等を設けることにより、故障した側のコントローラ6やタッチパネル7からの操作も可能となる。
【0015】
図3に、操作画面の一例を示す。
1)ブレーキブレーカOFFによりNo1巻上ブレーキブレーカOFFランプ点灯
2)インバータブレーカOFFによりNo1巻上インバータブレーカOFFランプ点灯
3)非常巻上運転用スイッチONによりNo1非常巻上スイッチランプ点灯
4)No1非常巻上スイッチランプが点灯し、OUTX1出力後、No1非常巻上運転準備完了のランプが点灯する。
5)巻上・巻下ボタンを操作することにより、巻上動作が可能となる。
6)バケットの巻上後は、横行や走行のブレーキを手動で解放し、メンテナンス要員による人手で押すことにより、待機位置までクレーンを移動させることができる。
【0016】
このように、本実施例のクレーン設備は、複数のクレーンを各クレーン毎に設けた制御装置9a、9bにより運転するクレーン設備において、任意の制御装置9aを他のクレーンの制御装置9bに切り替える非常切替回路を設けることから、No1クレーンの制御装置9aが故障した場合でも、この故障したNo1クレーンを正常なNo2クレーンの制御装置9bで運転することによって退避させることができる。
そして、代わりにNo2クレーンを運転することにより、クレーン設備を備えた施設を安定した状態で稼働させることができる。
【0017】
また、非常切替回路が、各クレーンの巻上インバータ9a、9bと巻上ブレーキ回路10a、10bとに設けられた補助接点付ブレーカ1、非常巻上運転用スナップスイッチ2及び動力切替用マグネットスイッチ3を備えることにより、正常な側の巻上インバータ9bを使用して、故障したNo1クレーンの巻上運転を可能にすることができる。
【0018】
なお、本実施例のクレーン設備においては、故障頻度が高い巻上制御装置に非常切替回路は設けるようにしているが、この場合には、以下(1)〜(4)のような運転を行うようにする。
(1)非常切替の後、正常側クレーンの動力を用いて、故障したクレーンのグラブバケットを巻上げる。
(2)非常切替を元に戻し、故障クレーンを走行させ、退避エリアに移動させる。
(3)この時、故障クレーンが、巻上回路のみだけでなく走行回路も故障していた場合、正常側クレーンで後押しをして退避エリアに移動させる。
(4)正常クレーンでピット全体(ただし、故障クレーンの退避エリアは除く。)のごみを担当し、運転する。
なお、横走行は、巻上に比して故障頻度が格段に低く故障したとしても、後押し運転で移動させることができるが、必要があれば、横走行についても巻上と同様に非常切替回路を設けることができ、この場合は、横走行も切替ができ、後押しで退避エリアに移動させるものでないため、周壁への衝突の心配がないという利点がある。
【0019】
以上、本発明のクレーンの故障診断装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、例えば、非常切替回路は巻上制御装置以外の横行や走行についても設置し得るなど、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明のクレーンの故障診断装置は、クレーンの制御装置が故障した場合でも、この故障したクレーンを運転して退避させ、代わりのクレーンを運転することにより、クレーン設備を備えた施設を安定した状態で稼働させることができるという特性を有していることから、例えば、ごみ処理場のようなクレーンを休みなく稼働させる必要がある設備の用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のクレーンの故障診断装置の一実施例を示し、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図2】非常切替回路の一例を示す回路図である。
【図3】操作画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1 補助接点付ブレーカ
2 非常巻上運転用スナップスイッチ
3 動力切替用マグネットスイッチ
4 コントローラ
5 タッチパネル
6 コントローラ
7 タッチパネル
8 光リンクケーブル
9a 巻上インバータ
9b 巻上インバータ
10a 巻上ブレーキ回路
10b 巻上ブレーキ回路
11a シーケンサ
11b シーケンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のクレーンを各クレーン毎に設けた制御装置により運転するクレーン設備において、任意の制御装置を他のクレーンの制御装置に切り替える非常切替回路を設けたことを特徴とするクレーンの故障診断装置。
【請求項2】
非常切替回路が、各クレーンの巻上インバータと巻上ブレーキ回路とに設けられた補助接点付ブレーカ、非常巻上運転用スナップスイッチ及び動力切替用マグネットスイッチを備えたことを特徴とする請求項1記載のクレーンの故障診断装置。
【請求項3】
2台のクレーンを各クレーン毎に設けた制御装置により運転するクレーン設備を対象とするようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載のクレーンの故障診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−160501(P2006−160501A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357969(P2004−357969)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000233206)日立機電工業株式会社 (64)
【Fターム(参考)】