説明

クレーン装置及び走行体の位置検出方法

【課題】走行体の移動制御の信頼性及び精度を高めることが可能となるクレーン装置を提供する。
【解決手段】クレーン本体2と共に移動する撮像装置3は、クレーン本体2の移動経路に沿って複数設けられ、起点からの距離である絶対位置を示す絶対位置マーク6と、クレーン本体2の移動経路に沿って一定間隔毎に、且つ、隣り合う絶対位置マーク6間を複数に分割できるようにして設けられた相対位置マーク7と、を撮像する。制御装置4は、撮像装置3が撮像した画像を解析し、走行体2の現在位置を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン装置及び走行体の位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、天井クレーン装置等において、レールに沿って移動する走行体の位置を検出するための技術が種々提案されている。
【0003】
例えば、移動経路に沿って設けた絶対位置を示すマークを読み取ることで、走行体(クレーン本体)の位置を検出する天井クレーン装置が知られている(図14参照)。この従来の天井クレーン装置について、簡単に説明する。
【0004】
図14において、クレーン本体2(走行体)は、制御装置4による無線制御の下、建屋の天井近くに配設された一対のレール1(1a,1b)に沿って水平方向に走行(移動)する。走行体2の上面には、撮像装置3が搭載されている。撮像装置3は、レール1aに沿って配設されたマーク表示板5に設けられた絶対位置マーク6を撮像する。絶対位置マーク6は、文字、図形、記号又はこれらの組み合わせで構成される。絶対位置マーク6は、移動経路における起点からの距離(例えば、70m等)を示している。撮像装置3によって撮像された絶対位置マーク6の画像は、制御装置4に送信される。
【0005】
制御装置4は、撮像装置3から送信された絶対位置マーク6の画像を解析し、当該絶対位置マーク6が示す絶対位置(例えば、70m等)を取得する。制御装置4は、取得した絶対位置に基づいて、クレーン本体2を目的位置(例えば、ユーザにより指定された位置)まで走行させる。
【0006】
また、特許文献1には、走行体の移動経路に沿って布設等された走行マーカ、位置マーカを走行体上に設置されたカメラで撮影し、撮影された映像を画像処理することで、走行体の方向位置を算出する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平8−26667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図14に示す天井クレーン装置では、撮像装置3が絶対位置マーク6の撮像に失敗した場合等、何らかの理由により、制御装置4が、撮像された絶対位置マーク6の画像に基づく絶対位置を取得できないと、予定の停止位置をオーバランさせてしまう等、クレーン本体2を正常に制御することができなくなる。
【0008】
また、上記特許文献1に係るマーク(走行マーカ、位置マーカ)は、そもそも、走行体の絶対位置を示すものではないため、特許文献1に係る技術は、前述した問題の解決策とはならない。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、走行体の移動制御の信頼性及び精度を高めることが可能となるクレーン装置及び走行体の位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るクレーン装置は、レールに沿って移動する走行体と、該走行体の移動経路に沿って複数設けられ、前記移動経路における起点からの距離である絶対位置を示す絶対位置マークと、前記走行体の移動経路に沿って一定間隔毎に、且つ、隣り合う前記絶対位置マーク間を複数に分割できるようにして設けられた相対位置マークと、前記走行体と共に移動し、前記絶対位置マーク及び前記相対位置マークを撮像する撮像手段と、該撮像手段が撮像した画像を解析し、前記走行体の現在位置を取得する位置取得手段と、該位置取得手段が取得した前記現在位置を使用して前記走行体の移動制御を行う移動制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
前記撮像手段は、前記絶対位置マークと該絶対位置マークに対応する前記相対位置マークの双方を同時に撮像可能な視野範囲を有するようにしてもよい。
【0012】
前記絶対位置マークが設けられる地点の絶対位置が設定された絶対位置テーブルと、
前記撮像手段が撮像した画像と、前記位置取得手段が取得した現在位置と、前記絶対位置テーブルの設定内容と、に基づいて、前記移動制御手段が所定の異常時対応処理を行う必要があるか否かを判定する判定手段と、をさらに備える構成にしてもよい。
【0013】
上記の場合、前記判定手段は、前記絶対位置マークが、検出されるべき地点で正常に検出されていない場合に、前記移動制御手段が前記異常時対応処理を行う必要があると判定するようにしてもよい。
【0014】
前記異常時対応処理の一例として、前記走行体を停止させる処理が挙げられる。
【0015】
また、撮像精度を高める観点から、前記撮像手段は、前記走行体と連結部を介して連結された台車に搭載され、前記連結部は、前記走行体の移動によって生じる所定方向の振動の前記台車への伝達を緩衝する緩衝部を有する構成にしてもよい。
【0016】
前記緩衝部によって緩衝される振動の方向の一例として、前記走行体の移動面に略垂直な方向が挙げられる。
【0017】
また、本発明に係る走行体の位置検出方法は、レールに沿って移動する走行体の移動経路に沿って複数設けられ、前記移動経路における起点からの距離である絶対位置を示す絶対位置マークと、前記走行体の移動経路に沿って一定間隔毎に、且つ、隣り合う前記絶対位置マーク間を複数に分割できるようにして設けられた相対位置マークと、を前記走行体と共に移動する撮像手段によって撮像する撮像ステップと、該撮像手段が撮像した画像を解析し、前記走行体の現在位置を取得する位置取得ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上の如く、本発明によれば、走行体の移動制御の信頼性及び精度を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係るクレーン装置の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
[第1の実施形態]
本実施形態に係るクレーン装置は、図1に示すように、レール1(1a,1b)と、クレーン本体2(走行体)と、撮像装置3と、制御装置4と、マーク表示板5と、絶対位置マーク6と、相対位置マーク7と、から構成される。本実施形態に係るクレーン装置は、天井クレーン装置であり、クレーン本体2は、建屋の天井近くに略水平に配設された一対のレール1a,1b上を走行(移動)し、その下面には、荷物を吊り上げて把持するための巻き上げ機構等(図示せず)が取り付けられている。
【0021】
クレーン本体2は、図2に示すように、レール1上を転動するローラ20と、ローラ20を回転させるためのローラ駆動装置や制御装置4と通信するための通信装置等(何れも図示せず)を内部に備え、制御装置4からの制御に従って、レール1上を移動する。クレーン本体2には、レール1や図示しない電源ケーブルを介して電力が供給される。
【0022】
撮像装置3は、CCDあるいはCMOS等のイメージセンサ、所定の通信方式にて制御装置4と無線通信を行う通信装置(何れも図示せず)等を備える。撮像装置3は、クレーン本体2の上面の所定位置に設置される。より詳細には、撮像装置3は、移動方向におけるクレーン本体2の上面中間に、マーク表示板5のマーク表示面50を正面方向から撮像できる態様で設置される。撮像装置3は、クレーン本体2と共に移動し、制御装置4の制御の下、マーク表示面50を所定時間毎に撮像し、撮像した画像を制御装置4に送信する。撮像装置3への電力は、クレーン本体2から供給される。
【0023】
マーク表示板5は、レール1aに沿って壁状に設けられ、その表示面(マーク表示面50)には、複数の絶対位置マーク6と、複数の相対位置マーク7とが設けられている。絶対位置マーク6は、絶対位置を示すためのマークであり、文字、図形、記号又はこれらの組み合わせで構成される。絶対位置マーク6は、マーク表示面50の長手方向において、自らが示す絶対位置に対応した所定位置に設けられる。ここで、絶対位置とは、起点からの距離(例えば、70m等)を意味し、起点とは、例えば、レール1の一方の端点近傍に設定された所定の地点をいう。絶対位置マーク6は、一定間隔(例えば、10m間隔)毎に設けられてもよいし、不規則な間隔で設けられてもよい。
【0024】
また、絶対位置マーク6は、マーク表示面50の短手方向において、撮像装置3によって撮像され得る位置に設けられる。具体的には、絶対位置マーク6は、自らが示す絶対位置に対応する地点にクレーン本体2が到達した際、撮像装置3によって、その全体を撮像され得る位置に設けられる。
【0025】
相対位置マーク7は、起点から移動経路に沿って、一定間隔(例えば、2m間隔等)毎に設けられるマークであり、例えば、黒塗り矩形等で表される。また、図3(a)、(b)に示すように、相対位置マーク7は、隣り合う絶対位置マーク6間を複数に分割できるようにして設けられる。図3(a)では、絶対位置P(例えば、起点から70m)と、絶対位置P(例えば、起点から80m)の隣り合う2つの絶対位置マーク6間の距離(10m)が、間隔L(例えば、2m)で設けられた相対位置マーク7によって5分割されている例が示されている。また、図3(b)では、絶対位置P(例えば、起点から80m)と、絶対位置P(例えば、起点から100m)の隣り合う2つの絶対位置マーク6間の距離(20m)が、間隔L(例えば、2m)で設けられた相対位置マーク7によって10分割されている例が示されている。なお、絶対位置マーク6は、撮像装置3によって認識されやすい形状であればどのような形状でもよい、また、必ずしも共通の形状でなくても構わない。同様に、相対位置マーク7は、撮像装置3によって認識されやすい形状であればどのような形状でもよい、また、必ずしも共通の形状でなくても構わない。
【0026】
また、相対位置マーク7は、絶対位置マーク6と同様、マーク表示面50の短手方向において、撮像装置3によって撮像され得る位置に設けられる。撮像装置3は、絶対位置マーク6と当該絶対位置マーク6に対応する相対位置マーク7の双方を同時に撮像可能な視野範囲(撮像範囲)を有するので、絶対位置マーク6が示す絶対位置にクレーン本体2が到達した際に撮像された画像には、図4に示すように、絶対位置マーク画像30及び相対位置マーク画像31の双方が含まれている。
【0027】
図1に戻り、制御装置4は、クレーン本体2の移動制御を行う装置であり、例えば、地上の操作室等に設置される。制御装置4は、CPU、ROM、RAM、通信装置、ハードディスク等の記憶装置、入出力装置等(何れも図示せず)から構成される。
【0028】
制御装置4は、機能的には、図5に示すように、通信部40と、位置検出部41と、移動制御部42とを備える。通信部40は、所定の通信方式にて、クレーン本体2及び撮像装置3と無線通信を行う。位置検出部41は、通信部40が受信した撮像装置3からの画像(撮像画像)に基づいて、クレーン本体2の現在位置を検出する。移動制御部42は、位置検出部41により検出されたクレーン本体2の現在位置を使用して、クレーン本体2の移動制御を行う。
【0029】
続いて、位置検出部41による位置検出処理の手順について、図6及び図7に示すフローチャートを用いて説明する。位置検出処理は、クレーン本体2の走行時において、所定時間毎に(例えば、撮像装置3の撮像周期に同期して)繰り返し実行される。
【0030】
先ず、位置検出部41は、撮像装置3から送られてきた撮像画像を解析し(ステップS11)、当該撮像画像に絶対位置マーク画像30が含まれているか否かを判定する。絶対位置マーク画像30が含まれている場合(ステップS12でYES)、よく知られた文字認識技術等を用いて、当該絶対位置マーク画像30が示す絶対位置を取得する(ステップS13)。なお、当該撮像画像にマーク全体が含まれている場合に限り、絶対位置マーク画像30が含まれていると判定される。
【0031】
位置検出部41は、取得した絶対位置に基づいて、制御装置4のRAM等に保存されている現在位置を示す数値データ(現在位置データ)の内容を更新する(ステップS14)。更新された現在位置データは、移動制御部42に参照され、クレーン本体2の移動制御に使用される。現在位置データの更新後、本処理を終了する(次回の起動まで待機となる)。
【0032】
ステップS12でNOの場合(絶対位置マーク画像30が含まれていない場合)、位置検出部41は、撮像画像に相対位置マーク画像31が含まれているか否かを判定する。相対位置マーク画像31が含まれている場合(ステップS15でYES)、位置検出部41は、相対位置マークに基づく絶対位置取得処理を行う(ステップS16)。そして、位置検出部41は、ステップS16での処理結果に基づいて、制御装置4のRAM等に保存されている現在位置データの内容を更新し(ステップS17)、本処理を終了する。更新された現在位置データは、移動制御部42に参照され、クレーン本体2の移動制御に使用される。
【0033】
一方、ステップS15でNOの場合(即ち、当該撮像画像に絶対位置マーク画像30及び相対位置マーク画像31の何れも含まれていない場合)、現在位置データの更新は行われず、本処理は終了する。
【0034】
続いて、相対位置マークに基づく絶対位置取得処理を図7のフローチャートを用いて説明する。位置検出部41は、クレーン本体2の現在の移動方向を取得する(ステップS21)。クレーン本体2の現在の移動方向は、移動方向データとして、制御装置4のRAM等に保存されている。移動方向データの更新等の管理は、移動制御部42によって行われる。移動方向の内容は、前進方向(起点から遠ざかる方向)と、後進方向(起点に近づく方向)の何れかを示す。
【0035】
現在の移動方向が前進方向の場合(ステップS22でYES)、位置検出部41は、制御装置4のRAM等に保存されている前述の現在位置データを読み出し、このデータが示す絶対位置に相対位置マーク間距離(例えば、2m)を加算する(ステップS23)。
【0036】
一方、現在の移動方向が後進方向の場合(ステップS22でNO)、位置検出部41は、読み出した現在位置データが示す絶対位置から相対位置マーク間距離(例えば、2m)を減算する(ステップS24)。
【0037】
以上のように、本実施形態に係るクレーン装置では、絶対位置を示す絶対位置マーク6のみならず、移動経路上に一定間隔で設けられる相対位置マーク7を使用して、それぞれ独立にクレーン本体2の現在位置を検出する。したがって、何らかの理由で絶対位置マーク6の読み取りに失敗した場合等であっても、クレーン本体2の現在位置を検出することが可能となり、クレーン本体2の移動制御の信頼性及び精度を高めることが可能となる。
【0038】
[第1の実施形態の変形例]
本例のクレーン装置は、クレーン本体2の安全性をより高める観点から、絶対位置マーク6が検出されるべき地点で、検出できなかった場合、所定の異常時対応処理を行う機能を有する。以下、かかる機能を具体的に説明する。なお、第1の実施形態のクレーン装置の構成と共通する部分については、同一符号を付し、説明を省略する。
【0039】
本例の制御装置4のROMあるいは記憶装置には、絶対位置マーク6が設けられている地点の絶対位置が設定されたデータテーブル(絶対位置テーブル)が保存されている。また、本例の制御装置4は、機能的には、図8に示すように、通信部40と、位置検出部41と、移動制御部42と、判定部43と、を備える。
【0040】
判定部43は、位置検出部41による上記位置検出処理の終了後、異常時対応処理を行う必要があるか否かを判定する判定処理を行う(図9参照)。図9のフローチャートに示すように、撮像画像に絶対位置マーク画像30が含まれていなく、且つ、相対位置マーク画像31が含まれている、という条件が成立した場合(ステップS31でYES)、判定部43は、絶対位置テーブルをROM等から読み出す(ステップS32)。なお、上記条件の成立有無は、位置検出部41による位置検出処理の結果(図6のフローチャートのステップS12、ステップS15での判定結果)を使用して判定する。
【0041】
上記条件が成立しない場合(ステップS31でNO)は、本処理の対象外(即ち、異常時対応処理を行う必要がない)であるため、判定部43は、エラーフラグをOFFにし(ステップS33)、本処理を終了する。ここで、エラーフラグとは、本判定処理の結果を示す変数であり、制御装置4のRAM等に保存されている。エラーフラグがONの場合は、異常時対応処理を行う必要がある状態を示し、OFFの場合は、異常時対応処理を行う必要がない状態を示す。
【0042】
判定部43は、上記絶対位置テーブルの読み出し後、その設定内容と位置検出処理で検出された現在位置とを比較することで、当該現在位置が、絶対位置マーク6が検出されるべき地点であるか否かを判定する。
【0043】
この「絶対位置マーク6が検出されるべき地点」について具体的に説明する。例えば、図3(a)に示すように、絶対位置P(例えば、起点から70m)と、絶対位置P(例えば、起点から80m)の隣り合う2つの絶対位置マーク6間の距離(10m)が、間隔L(例えば、2m)で設けられた相対位置マーク7によって5分割されている場合を想定する。この場合、絶対位置Pが検出された後に相対位置マーク7が検出されていった結果、絶対位置Pから8m先の地点(即ち、起点から78m)まで検出されたとすると、次(2m先)の相対位置マーク7の検出時には、絶対位置マーク6も検出されるはずである。つまり、この場合においては、絶対位置Pから8m先の相対位置マーク7が検出された後、次に相対位置マーク7が検出された地点が、絶対位置マーク6が検出されるべき地点となる。
【0044】
絶対位置マーク6が検出されるべき地点であると判定した場合(ステップS34でYES)、異常時対応処理を行う必要があるため、判定部43は、エラーフラグをONにし(ステップS35)、本処理を終了する。一方、絶対位置マーク6が検出されるべき地点でないと判定した場合(ステップS34でNO)、異常時対応処理を行う必要がないため、判定部43は、エラーフラグをOFFにし(ステップS33)、本処理を終了する。
【0045】
移動制御部42は、上記エラーフラグをチェックし、それがONとなっている場合には、クレーン本体2の走行を直ちに停止させる等の異常時対応処理を行う。
【0046】
[第2の実施形態]
本実施形態に係るクレーン装置の構成を図10に示す。なお、第1の実施形態のクレーン装置の構成と共通する部分については、同一符号を付し、説明を省略する。本実施形態に係るクレーン装置では、上記第1の実施形態に係るクレーン装置と異なり、撮像装置3は、クレーン本体2とは別体の台車100の上面に設置されている。
【0047】
台車100は、クレーン本体2と連結部101を介して連結している。台車100は、レール1上を転動するローラ110(図11参照)を備え、クレーン本体2の移動に伴って、レール1上を移動する。図11に示すように、連結部101は、棒状(板状でもよい)の金属部材を略U字型に曲げ加工した部分(曲げ加工部120)と、その両端に連接する一対の緩衝部121と、を備える。各々の緩衝部121の先端は、それぞれクレーン本体2及び台車100の上面に対して、クレーン本体2の走行する方向には互いに拘束され、上下方向(クレーン本体2の移動面と略直交する方向)には互いに自由度を持つように接合されている。
【0048】
上記のように構成された連結部101によって、台車100とクレーン本体2とを連結することで、本実施形態に係るクレーン装置は、以下の如く優れた作用効果を奏する。
【0049】
上記のように、本実施形態に係るクレーン装置は、天井クレーン装置であり、クレーン本体2は、建屋の天井近くに略水平に配設された一対のレール1a,1b上を走行(移動)し、その下面には、荷物を吊り上げて把持するための巻き上げ機構等(図示せず)が取り付けられている。したがって、荷物を吊り上げた状態でクレーン本体2を走行させると、荷物の振動につられてクレーン本体2も上下に振動する。
【0050】
そうすると、クレーン本体2に取り付けられた撮像装置3も上下に振動してしまう。このときクレーン本体2の振動とレールの振動が合致していれば問題がないが、本実施形態のようにレール1上にローラ110を介してクレーン本体2が配置されている場合は、クレーン本体2の振動とレール1の振動が合致するとは限らず、その場合、撮像装置3が絶対位置マーク6や相対位置マーク7の認識を失敗してしまうおそれがある。
【0051】
ところが、本実施形態においては、クレーン本体2が走行する際に生じる上下方向の振動が、連結部101の緩衝部121により緩衝されるため、台車100の上下方向の振動が極力抑えられる。そうすると、台車100に搭載される撮像装置3の撮像範囲における上下方向(換言すれば、マーク表示面50の短手方向)の上下方向の振動が抑制されることになる。したがって、絶対位置マーク画像30及び相対位置マーク画像31の撮像精度の向上が図れる。
【0052】
こうした緩衝部の構造は、例えば図12に示すようであってもよい。台車100bは、クレーン本体2と連結部101bを介して連結している。台車100bは、レール1上を転動するローラ110(図13参照)を備え、クレーン本体2の移動に伴って、レール1上を移動する。図13に示すように、連結部101bは、棒状(板状でもよい)の金属部材を略U字型に曲げ加工した部分(曲げ加工部120b)を有し、その一端はクレーン本体2の上面に固定されており、もう一端は台車100bに設けられた穴に上下自在にはめ合わされている。
【0053】
台車100bに設けられた穴の形状は、連結部101bの一端をはめ合わせたときに、走行体の移動方向には、絶対位置マーク6および相対位置マーク7の認識やクレーン本体2の制御に支障が無い程度の間隔(隙間)を持つように、また、クレーン本体2の移動方向に略直交、且つ、上下方向に略直交する方向には十分な間隔(隙間)を持つように形成されている。
【0054】
このように構成することで、クレーン本体2の上下方向の振動が台車100bに伝わることを抑制できる。また、クレーン本体2の移動方向に略直交、且つ、上下方向に略直交する方向にも十分な間隔を持っているので、そちらの方向への振動が発生したとしても台車100bに当該振動が伝わることを抑制できる。したがって、さらに絶対位置マーク画像30及び相対位置マーク画像31の撮像精度の向上を図ることができる。
【0055】
以上のように、本実施形態に係るクレーン装置によれば、上記第1の実施形態に係るクレーン装置が奏する作用効果に加え、さらに、撮像精度の向上が期待できる。
【0056】
なお、本発明は、上記第1の実施形態及び第2の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0057】
例えば、撮像装置3が、同一のタイミングで繰り返し撮像を行う2台のカメラで構成され、一方のカメラは、絶対位置マーク6のみを撮像し、他方のカメラは、相対位置マーク7のみを撮像するようにしてもよい。
【0058】
また、撮像装置3の振動の大きさを判定する処理(振動判定処理)と、絶対位置マーク6又は相対位置マーク7の認識ができるか否かを予測する処理(マーク認識予測処理)とを制御装置4の機能に追加してもよい。振動判定処理は、絶対位置マーク画像30又は相対位置マーク画像31の撮像範囲内における上下方向の位置情報を追跡し、これを基に撮像装置3の振動の大きさを判定する。マーク認識予測処理は、振動判定処理の判定結果と、クレーン本体2の走行スピードとに基づいて、絶対位置マーク画像30又は相対位置マーク画像31の撮像範囲内における上下方向の位置が撮像装置3の撮像範囲から外れそうか否かを予測する。
【0059】
上述したようにクレーン本体2は、荷物の搬送中は振動しながら走行する。この振動は、第2の実施形態の緩衝部121によって概ね抑制されるが、抑制しきれない振動が発生すると、撮像装置3によって撮像される絶対位置マーク画像30又は相対位置マーク画像31の撮像範囲内における上下方向の位置が変動する。
【0060】
例えば、クレーン本体2の走行スピードが上がり、撮像装置3に伝わる振動が大きくなったとすると、絶対位置マーク画像30又は相対位置マーク画像31の上下方向の位置変動量も大きくなり、場合によっては撮像範囲から外れてしまうことも考えられる。
【0061】
上記の如く振動判定処理と、マーク認識予測処理とを有することで、絶対位置マーク画像30又は相対位置マーク画像31の上下方向の位置が、撮像範囲から外れそうになった場合(即ち、マーク認識できないと予測された場合)に、例えば、走行スピードを落として振動を抑制する等、事前に適切な対策を講じることが可能となる。したがって、撮像精度のさらなる向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るクレーン装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1のクレーン本体を側面方向から眺めた図である。
【図3】絶対位置マークと相対位置マークの関係を説明するための図であり、(a)は、隣り合う2つの絶対位置マーク間が、相対位置マークにより5分割されている様子を示し、(b)は、隣り合う2つの絶対位置マーク間が、10分割されている様子を示す。
【図4】撮像画像の一例を示す図である。
【図5】図1の制御装置の機能的な構成を示す図である。
【図6】位置検出処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】相対位置マークに基づく絶対位置取得処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】第1の実施形態の変形例に係るクレーン装置が備える制御装置の機能的な構成を示す図である。
【図9】判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るクレーン装置の概略構成を示す図である。
【図11】図10のクレーン本体を側面方向から眺めた図である。
【図12】第2の実施形態の変形例に係るクレーン装置の概略構成を示す図である。
【図13】図12のクレーン本体を側面方向から眺めた図である。
【図14】従来のクレーン装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1(1a,1b) レール
2 クレーン本体
3 撮像装置
4 制御装置
5 マーク表示板
6 絶対位置マーク
7 相対位置マーク
20、110 ローラ
30 絶対位置マーク画像
31 相対位置マーク画像
40 通信部
41 位置検出部
42 移動制御部
43 判定部
50 マーク表示面
100、100b 台車
101、101b 連結部
120、120b 曲げ加工部
121 緩衝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールに沿って移動する走行体と、
該走行体の移動経路に沿って複数設けられ、前記移動経路における起点からの距離である絶対位置を示す絶対位置マークと、
前記走行体の移動経路に沿って一定間隔毎に、且つ、隣り合う前記絶対位置マーク間を複数に分割できるようにして設けられた相対位置マークと、
前記走行体と共に移動し、前記絶対位置マーク及び前記相対位置マークを撮像する撮像手段と、
該撮像手段が撮像した画像を解析し、前記走行体の現在位置を取得する位置取得手段と、
該位置取得手段が取得した前記現在位置を使用して前記走行体の移動制御を行う移動制御手段と、を備える、
ことを特徴とするクレーン装置。
【請求項2】
前記撮像手段は、前記絶対位置マークと該絶対位置マークに対応する前記相対位置マークの双方を同時に撮像可能な視野範囲を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のクレーン装置。
【請求項3】
前記絶対位置マークが設けられる地点の絶対位置が設定された絶対位置テーブルと、
前記撮像手段が撮像した画像と、前記位置取得手段が取得した現在位置と、前記絶対位置テーブルの設定内容と、に基づいて、前記移動制御手段が所定の異常時対応処理を行う必要があるか否かを判定する判定手段と、をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のクレーン装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記絶対位置マークが、検出されるべき地点で正常に検出されていない場合に、前記移動制御手段が前記異常時対応処理を行う必要があると判定する、
ことを特徴とする請求項3に記載のクレーン装置。
【請求項5】
前記異常時対応処理が、前記走行体を停止させる処理である、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のクレーン装置。
【請求項6】
前記撮像手段は、前記走行体と連結部を介して連結された台車に搭載され、
前記連結部は、前記走行体の移動によって生じる所定方向の振動の前記台車への伝達を緩衝する緩衝部を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のクレーン装置。
【請求項7】
前記緩衝部によって緩衝される振動の方向が、前記走行体の移動面に略垂直な方向である、
ことを特徴とする請求項6に記載のクレーン装置。
【請求項8】
レールに沿って移動する走行体の移動経路に沿って複数設けられ、前記移動経路における起点からの距離である絶対位置を示す絶対位置マークと、前記走行体の移動経路に沿って一定間隔毎に、且つ、隣り合う前記絶対位置マーク間を複数に分割できるようにして設けられた相対位置マークと、を前記走行体と共に移動する撮像手段によって撮像する撮像ステップと、
該撮像手段が撮像した画像を解析し、前記走行体の現在位置を取得する位置取得ステップと、を有する、
ことを特徴とする走行体の位置検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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