説明

クレーン装置用電源装置

【課題】荷巻下時の回生電力をキャパシタに蓄電し、横行・走行時の電力として有効利用可能なクレーン装置用電源装置を提供する。
【解決手段】巻上用電動機1、横行用電動機2及び走行用電動機3に、商用電源からの交流電力を電動機毎に設けたインバータ4,5,6で駆動用交流電力に変換して供給するクレーン装置用電源装置において、巻上用電動機1が巻下時に発生しインバータを介して取り出される回生電力を蓄電するキャパシタ10と、キャパシタ10に蓄電された直流電力を交流電力に変換するコンバータ11と、横行用及び走行用インバータ5,6にコンバータ11からの交流電力を商用電力と切り換えて供給する切換回路SW3,SW4と、キャパシタ10の蓄電量が放電可能閾値を超えた時にコンバータ11からの交流電力が横行用インバータ5及び走行用インバータ6に供給されるように前記切換回路を切り換え制御する制御装置13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻上下、横行、走行を行うクレーン装置に関し、特に荷巻下時の回生電力をキャパシタに蓄電し、横行・走行時の電力として有効利用することのできるクレーン装置用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、あらゆる産業分野において省エネルギー化が強く要望されており、クレーン装置においても、省エネルギー化が要望されている。
【0003】
従来のクレーン装置では、荷巻上用、横行用、走行用にそれぞれ電動機を備え、商用電源からの電力を電動機ごとに設けられたインバータに供給し、各インバータが所望の周波数及び電流を与えた交流電力に変換して各電動機に供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−222481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のクレーン装置では、特に荷巻下時に荷巻上用電動機が発生する電力を、抵抗器を用いて熱エネルギーに変換して放熱しており、荷役サイクル全体におけるエネルギー損失が大きい。
【0006】
本発明は、これまで利用されずに捨てられていた荷巻下時の電力をキャパシタに蓄電し、横行・走行時の電力として有効利用することのできるクレーン装置用電源装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明のクレーン装置用電源装置は、巻上用電動機、横行用電動機及び走行用電動機に、商用電源からの交流電力を電動機ごとに設けたインバータで駆動用交流電力に変換して供給するクレーン装置用電源装置において、前記巻上用電動機が巻下時に発生し前記インバータを介して取り出される回生電力を蓄電するキャパシタ蓄電装置と、キャパシタ蓄電装置に蓄電された直流電力を交流電力に変換するコンバータと、前記横行用電動機用インバータ及び走行用電動機用インバータにコンバータからの交流電力を前記商用電源からの商用電力と切り換えて供給する切換回路と、前記キャパシタ蓄電装置の蓄電量が放電可能閾値を超えたときにコンバータからの交流電力が前記横行用電動機用インバータ及び走行用電動機用インバータに供給されるように前記切換回路を切り換え制御する制御装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、巻上用電動機が巻下時に発生する回生電力を蓄電するキャパシタ蓄電装置と、キャパシタ蓄電装置に蓄電された直流電力を交流電力に変換するコンバータと、前記横行用電動機用インバータ及び走行用電動機用インバータにコンバータからの交流電力を前記商用電源からの商用電力と切り換えて供給する切換回路と、前記キャパシタ蓄電装置の蓄電量が放電可能閾値を超えたときにコンバータからの交流電力が前記横行用電動機用インバータ及び走行用電動機用インバータに供給されるように前記切換回路を切り換え制御する制御装置とを設けたため、これまで利用されずに捨てられていた荷巻下時の回生電力をキャパシタに蓄電し、横行・走行時の電力として有効利用することのできるクレーン装置用電源装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るクレーン装置用電源装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】充電制御のフローを示す図である。
【図3】走行/横行制御のフローを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係るクレーン装置用電源装置のシステム構成例を示す図である。図1において、1は巻上モータ、2は横行モータ、3は走行モータであり、各モータには、巻上インバータ4、横行インバータ5、走行インバータ6から駆動用の交流電力が供給される。
【0011】
商用電源に接続される給電走行トロリー線7から集電子8を介して取り込まれた商用交流電力は、巻上インバータ4、横行インバータ5及び走行インバータ6に供給されるが、横行インバータ5及び走行インバータ6には、スイッチSW3を介して供給される。各インバータは、商用交流電力を所望の周波数及び電流を与えた交流電力に変換して各モータに供給する。
【0012】
前記巻上インバータ4は、巻上モータ1が巻下げ時に発生する回生電力を直流に変換して出力する機能を有しており、出力される直流回生電力は、DC/DCコンバータ9によりキャパシタ充電に適した電圧に変換された後、スイッチSW1を介してキャパシタモジュール10へ供給されて蓄電される。キャパシタモジュール10は、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタなどの大容量キャパシタ素子を必要に応じて直列及び並列に接続したキャパシタ部と、各キャパシタ素子の充放電を制御する充放電制御部とから構成される。電気二重層キャパシタは、充放電に化学反応を伴わないため、応答が早く、大電流の充放電が可能で、サイクル寿命が長く、補水等のメンテナンスが不要という特徴を有し、更に従来型コンデンサに比べて静電容量が大きいという特徴も有している。またリチウムイオンキャパシタは、電気二重層キャパシタよりも更に大容量化が可能である。
【0013】
キャパシタモジュール10に蓄電された直流電力は、SW2を介してDC/ACインバータ11へ送られて商用周波数の交流電力に変換され、得られた交流電力はSW4を介して前記横行インバータ5及び走行インバータ6へそれぞれ供給される。
【0014】
12は、オペレータが操作の指示を行うコントローラであり、制御装置13は、コントローラ12からの巻上、巻下、横行、走行の各指示信号に基づき、前記巻上インバータ4、横行インバータ5及び走行インバータ6を制御する。併せて、制御装置13は、キャパシタモジュール10が発生するキャパシタ部の蓄電レベルを示す信号CLに基づき、スイッチSW1〜4の開閉制御を行う。
【0015】
上記構成において、巻上インバータ4には、商用交流電力が常に供給されており、オペレータがコントローラ12を操作して巻上動作を指令すると、制御装置13の制御のもとで商用交流電力を利用した巻上動作が行われる。そして、横行及び走行過程を経て所定の荷下ろし位置へ到着後、オペレータがコントローラ12を操作して巻下げ動作を指令すると、制御装置13の制御のもとで巻下げが行われる。この巻下げの際、巻上モータ1からは回生電力が発生し、この回生電力は、以下のような制御装置13による充電制御のもとでキャパシタモジュール10に充電される。
【0016】
図2は、充電制御のフローを示す図である。図2において、充電制御が開始されると、まずDC/DCコンバータ9が運転待機状態とされ(ステップS1)、次いでスイッチSW1がオフにされ(ステップS2)、その後回生電力の発生有無が判断される(ステップS3)。回生電力が発生すると、キャパシタへの充電が可能か否かが判定される(ステップS4)。この判断は、キャパシタモジュール10からの蓄電レベル信号CLに基づいて行われ、すでに満充電で充電不可と判断されると、ステップS2に戻る。一方、満充電ではなく、充電可能と判断されると、スイッチSW1がオンにされ(ステップS5)、キャパシタモジュール10にDC/DCコンバータ9からの回生直流電力が供給されて蓄電される。蓄電中は常にステップS4において充電が可能かの判断が行われ、満充電になって充電不可になるとステップS2に戻る。
【0017】
このような制御により、回生電力が発生し充電が可能である場合に、キャパシタへの充電が行われる。
【0018】
図3は、このようにしてキャパシタに蓄電された回生電力により、横行モータ及び走行モータを駆動するための制御のフローを示す図である。図3において、走行/横行制御が開始されると、スイッチSW2、SW3、SW4が共にオフにされる(ステップ11)。次に走行/横行指示の有無が判断され(ステップS12)、コントローラ12の操作による走行/横行指示があった場合には、キャパシタに蓄電された電力の利用が可能か否かが判断される(ステップS13)。この判断は、キャパシタモジュール10からの蓄電レベル信号CLと、予め設定されている放電可能な蓄電レベル閾値とにより行われる。走行/横行指示があった時の蓄電レベルが前記閾値を超えていて蓄電電力利用可と判断された場合には、スイッチSW2がオン、SW3がオフ、SW4がオンとされる(ステップS14)。このため、オフになったSW3を介した商用電源からの給電は停止され、その代わりに、キャパシタに蓄電された電力がDC/ACインバータ11へ送られて商用周波数の交流電力に変換され、SW4を介して前記横行インバータ5及び走行インバータ6へそれぞれ供給され、走行モータ2及び横行モータ3の駆動に使用される(ステップS15)。
【0019】
一方、ステップS13において、蓄電電力利用不可と判断された場合には、スイッチSW2がオフ、SW3がオン、SW4がオフとされる(ステップS16)。このため、オンになったSW3を介した商用電源からの給電により、走行モータ2及び横行モータ3が駆動されることになる。
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、これまで利用されずに捨てられていた荷巻下時の回生電力をキャパシタに蓄電し、横行・走行時の電力として有効利用することのできるクレーン装置用電源装置が提供される。
【0021】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【0022】
例えば、上記実施例では、制御装置13によりキャパシタの充電制御を行うようにしたが、キャパシタモジュール10が備えている充電制御回路により充電制御を行うことも可能である。その場合には、スイッチSW1を省略しても良い。また、DC/DCコンバータ9に充電制御機能を持たせ、DC/DCコンバータ9により充電制御を行うことも可能である。いずれにしても、回生電力が発生した期間にキャパシタを充電し、キャパシタが満充電になった時点で充電を終了させ、満充電の状態では更なる充電を行わないような制御が行われるようにすれば良い。
【符号の説明】
【0023】
1:巻上モータ 2:横行モータ 3:走行モータ 4:巻上インバータ
5:横行インバータ 6:走行インバータ 7:走行トロリー線 8:集電子
9:DC/DCコンバータ 10:キャパシタモジュール 11:DC/ACインバータ
12:コントローラ 13:制御装置 SW1,SW2,SW3,SW4:スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻上下用電動機、横行用電動機及び走行用電動機に、商用電源からの交流電力を電動機ごとに設けたインバータで駆動用交流電力に変換して供給するクレーン装置用電源装置において、前記巻上下用電動機が巻下時に発生し前記インバータを介して取り出される回生電力を蓄電するキャパシタ蓄電装置と、キャパシタ蓄電装置に蓄電された直流電力を交流電力に変換するコンバータと、前記横行用電動機用インバータ及び走行用電動機用インバータにコンバータからの交流電力を前記商用電源からの商用電力と切り換えて供給する切換回路と、前記キャパシタ蓄電装置の蓄電量が放電可能閾値を超えたときにコンバータからの交流電力が前記横行用電動機用インバータ及び走行用電動機用インバータに供給されるように前記切換回路を切り換え制御する制御装置とを備えることを特徴とするクレーン装置用電源装置。
【請求項2】
前記キャパシタ蓄電装置は、蓄電量不足を検出して充電を開始し満充電を検出して充電を停止する充電制御手段を備えることを特徴とする請求項1記載のクレーン装置用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−254838(P2012−254838A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127814(P2011−127814)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(501214524)双日マシナリー株式会社 (2)
【出願人】(511139176)株式会社産機 (1)
【出願人】(504216723)アドバンスト・キャパシタ・テクノロジーズ株式会社 (13)
【Fターム(参考)】