説明

クレーン

【課題】クレーン能力を下げることなく、組立てが困難になることなく、従来のクレーンに対して変更点が少なく、高い費用をかけずに、ジブフット回りの前方モーメントの減少を抑制する。
【解決手段】ジブ起伏用下部スプレッダ70(下部スプレッダ)は、タワーブーム20に取り付けるための取付部73を備えるとともに、上部旋回体(旋回体)を横から見たときに取付部73を中心に回動可能にタワーブーム20(のブラケット22)に取り付けられている。また、ジブ起伏用下部スプレッダ70(の倒れ止め手段連結部79)とタワーブーム20(の倒れ止め手段連結部23)とが倒れ止め手段80で連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タワーブームの先端部にジブが取り付けられたクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
図4に、タワーブーム20の先端部21tにジブ40が取り付けられた従来のクレーン101(タワー仕様のクレーン)を示す。クレーン101では、ジブ起伏手段50を用いてジブ40を起伏する。ジブ起伏手段50は、ジブ40の先端部に一端が取り付けられたジブガイライン51、ジブガイライン51の他端が取り付けられたストラット52、ストラット52に一端が取り付けられたストラットガイライン53、ストラットガイライン53の他端に連結されたジブ起伏ロープ55、ジブ起伏ロープ55の一端側を巻込み及び巻出しするウインチ54、および、ジブ起伏ロープ55の他端側が掛け回されるジブ起伏用上部スプレッダ60とジブ起伏用下部スプレッダ70とを備える。ジブ起伏ロープ55がウインチ54で巻込み及び巻出しされることで、ジブ起伏用上部スプレッダ60とジブ起伏用下部スプレッダ70との間隔が変化する。これによりジブ40が起伏する。また、ジブ40が後方に反転することを防ぐためにジブ40にはバックストップ42が取り付けられる。
【0003】
この種のクレーンでは、ジブ40の起伏角度を大きくする(ジブ40を引き起こす)と、ジブフット41f回りの前方モーメントが小さくなる。特に、タワーブーム20が長く、ジブ40が短い場合にこれが顕著になる。
ジブフット41f回りの前方モーメントが小さいほど、ジブ起伏ロープ55の張力も小さくなりウインチ54で乱巻きが起こりやすくなる。
また、ジブフット41f回りの前方モーメントが小さい場合、ジブ40に当たる風、クレーン101が設置された地面の傾斜、及びジブ40を起こす速さ等の条件によっては、ジブ40が後方側に反転する危険性もある。そこで、以下の技術が知られている。
【0004】
(1)まず、ジブ40の先端にポイントウェイトをつけた技術がある。このポイントウェイトによりジブフット41f回りの前方モーメントを大きくする。また、このポイントウェイトにより、ジブ起伏ロープ55の張力を大きくする。
【0005】
(2)また、バックストップ42を強化した技術がある。すなわち、バックストップ42を長くし、バックストップ42に取り付けられたバネを強化(バネの巻き数を増やす、バネの径を大きくするなど)した技術がある。この技術では、ジブ40の角度が小さい状態からバックストップ42の先端が受け口に接触する。よって、ジブ40の角度が大きくならず、ジブフット41f回りの前方モーメントが小さくならない。また、ジブ起伏ロープ55の張力が小さくならない。
【0006】
なお、特許文献1にジブ起伏用スプレッダ(60、70)についての技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−11874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の技術には以下の問題がある。
【0009】
(1)まず、ジブ40の先端にポイントウェイトをつけた技術では、このポイントウェイトを備えない場合に比べ、クレーン能力が下がる。すなわち、ポイントウェイトの質量分、吊荷を吊り上げる能力が下がる。
また、ポイントウェイトの質量が過大な場合はジブ40やタワーブーム20が自立できなくなる可能性もある。
【0010】
(2)また、バックストップ42を強化した技術では次の問題がある。バックストップ42を長くすることには限界がある(例えば、長くしすぎるとジブ40を引き起こすことができなる)。また、バックストップ42を長くする、または、バックストップ42に取り付けられたバネを強化する場合、通常のバックストップをジブ40に取り付ける場合に比べ、組立てが煩雑となる。
【0011】
さらに、ジブ起伏用下部スプレッダ70はタワーブーム20に対して回動可能に取り付けられていることから、そのままではジブ起伏用下部スプレッダ70は後方側に倒れ、ジブ起伏ロープ55にジブ起伏用下部スプレッダ70の重量が加わる。その結果、ジブフット41f回りの前方モーメントが減少(後方モーメントが増大)する。
【0012】
本発明の目的は、クレーン能力を下げることなく、組立てが困難になることなく、従来のクレーンに対して変更点が少なく、高い費用をかけずに、ジブフット回りの前方モーメントの減少を抑制できるクレーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係るクレーンは、旋回体と、前記旋回体に起伏可能に取り付けられたタワーブームと、前記タワーブームの先端部に起伏可能に取り付けられたジブと、前記タワーブームの先端部に取り付けられたストラットと、前記ジブの先端部と前記ストラットとを連結するジブガイラインと、前記ストラットに一端が取り付けられたストラットガイラインと、前記ストラットガイラインの他端が取り付けられた上部スプレッダと、前記タワーブームに取り付けられた下部スプレッダと、前記旋回体に取り付けられたウインチと、を備える。また、一端側が前記ウインチにより巻取り及び巻出しされるとともに、他端側が前記上部スプレッダと前記下部スプレッダとに掛け回されたジブ起伏ロープを備える。前記下部スプレッダは、前記タワーブームに取り付けるための取付部を備えるとともに、前記旋回体を横から見たときに当該取付部を中心に回動可能に当該タワーブームに取り付けられる。また、前記下部スプレッダと前記タワーブームとが倒れ止め手段で連結されている。
【0014】
このクレーンの下部スプレッダは、タワーブームに取り付けるための取付部を備えるとともに、旋回体を横から見たときに取付部を中心に回動可能にタワーブームに取り付けられている。よって、そのままでは下部スプレッダは後方側に倒れ得る。
また、このクレーンでは、下部スプレッダとタワーブームとが倒れ止め手段で連結されている。よって、下部スプレッダが後方側に倒れることが抑制される。その結果、上部スプレッダと下部スプレッダとに掛け回されたジブ起伏ロープに、下部スプレッダの重量が加わることが抑制される。その結果、ジブフット回りの前方モーメントの減少(後方モーメントの増加)が抑制される。
【0015】
ジブフット回りの前方モーメントの減少が抑制されるので、ジブ起伏ロープ張力が小さくなることが抑制される。その結果、ジブ起伏ロープの巻出し及び巻込みを行うウインチの乱巻きを抑制できる。
また、ジブフット回りの前方モーメントの減少が抑制されるので、ジブが後方に反転することを抑制できる。
また、上記構成では、ジブ先端にポイントウェイトをつける必要がない。よって、クレーン能力を下げる必要がない。
また、上記構成では、ジブに取り付けられたバックストップを長くする必要も、このバックストップのバネを強化する必要もない。よって、クレーンの組立てが煩雑にならない。
また、上記構成では、ジブ先端にポイントウェイトをつける必要も、上記バックストップを長くすることや上記バネを強化する必要もない。よって、従来のクレーンに対して少ない変更点で、高い費用をかけずに、ジブフット回りの前方モーメントの減少を抑制できる。また、変更点が少ないので、出荷後の従来のクレーンを本発明の構成に容易に変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】クレーンの全体図である。
【図2】図1に示す上部スプレッダ及び下部スプレッダの周辺を示す図であり、図1に示すF2矢視図である。
【図3】図1に示す下部スプレッダ周辺部(F3部分)の拡大図である。。
【図4】従来のクレーンである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るクレーン1の実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
クレーン1は、図1に示すように、タワー仕様の移動式クレーンである。クレーン1は、下部走行体11、下部走行体11に取り付けられた上部旋回体12(旋回体)、上部旋回体12に取り付けられたタワーブーム20、タワーブーム20を起伏させるためのタワーブーム起伏手段30、タワーブーム20の先端部に取り付けられたジブ40、および、ジブ40を起伏させるためのジブ起伏手段50を備える。
【0019】
下部走行体11はクレーン1の走行に供する部分である。下部走行体11は例えばクローラ走行式である(ホイール走行式でも良い)。
【0020】
上部旋回体12(旋回体)は、下部走行体11の上方側に取り付けられ、下部走行体11に対して旋回する部分である。上部旋回体12には、前端部付近にタワーブーム20が取り付けられ、タワーブーム20の後方側にタワーブーム起伏手段30を構成するガントリ31が取り付けられ、また、ジブ起伏手段50を構成するウインチ54が取り付けられる。なお、「前後方向」「前方側」「後方側」または「横方向」等というときは上部旋回体12を基準とする。
【0021】
タワーブーム20は、上部旋回体12の前端部付近に起伏可能に取り付けられるラチスブームである。タワーブーム20は、クレーン作業時には、地面Gに対して軸方向が約90°となるように(軸方向がほぼ鉛直方向となるように)配置される(軸方向が前方側に傾いていても良い)。なお、クレーン作業時には、タワーブーム20は通常は起伏させない。また、タワーブーム20は、ラチス構造のタワーブーム本体21と、タワーブーム本体21にそれぞれ取り付けられるブラケット22及び倒れ止め手段連結部23(図3参照)とを備える。なお、図1ではタワーブーム20とジブ40との長さの比を約3:2として示しているが、ジブ40に比べてタワーブーム20をさらに長くしても良い(例えば上記の比を3:1等としても良い)。
【0022】
ブラケット22は、図1〜図3に示すように、ジブ起伏用下部スプレッダ70を取り付けるための、例えば板状の部材である。図1及び図3に示すように、ブラケット22は、タワーブーム20の後方側の面21b(タワーブーム20を起こした状態におけるタワーブーム本体21の後方側の面21b、具体的には主柱21a)に取り付けられる。図2に示すように、ブラケット22は、タワーブーム本体21の例えば横方向両端に一つずつ(合計2つ)取り付けられる。図3に示すように、ブラケット22は、ジブ起伏用下部スプレッダ取付部22aを備える(後述)。
【0023】
倒れ止め手段連結部23は、倒れ止め手段80を取り付ける部分であり、貫通孔を備えた例えば板状の部材である。倒れ止め手段連結部23は、タワーブーム本体21の後方側の面21b(例えば主柱21a)に取り付けられる。図2に示すように、倒れ止め手段連結部23は、タワーブーム本体21の例えば横方向両端に一つずつ(合計2つ)取り付けられる(横方向中央に一つ取り付けても良い)。なお、出荷後の従来のクレーン101(図4参照)のタワーブーム本体21に倒れ止め手段連結部23を取り付けても良い。取り付けには例えば溶接やUボルト等を用いることができる。
【0024】
タワーブーム起伏手段30は、図1に示すように、タワーブーム20を起伏する部分である。タワーブーム起伏手段30は、上部旋回体12に取り付けられたガントリ31を備える。また、タワーブーム起伏手段30は、タワーブーム20の先端部21tとガントリ31とを連結する、ガイライン32及びタワーブーム起伏ロープ33を備える。なお、タワーブーム起伏ロープ33は、タワーブーム起伏用スプレッダ34に掛け回される。そして、タワーブーム起伏ロープ33をウインチ(図示なし)で巻出し及び巻込みすることでタワーブーム20が起伏する。
【0025】
ジブ40は、タワーブーム20の先端部21tに起伏可能に取り付けられる。ジブ40の基端部(ジブフット41f)はタワーブーム20の先端部に取り付けられる。ジブ40の先端部(ジブトップ41t)がタワーブーム20の前方側に位置するようにジブ40が配置される。ジブ40はジブ起伏手段50により起伏される。なお、ジブ40は、ラチス構造のジブ本体41と、ジブ本体41のジブフット41f付近に取り付けられたバックストップ42とを備える。バックストップ42は、ジブ40が後方側に反転することを防ぐ部材である。
【0026】
ジブ起伏手段50は、ジブ40を起伏させる部分である。ジブ起伏手段50は、ジブ40の先端側から順に、ジブガイライン51、ストラット52、ストラットガイライン53、ジブ起伏用上部スプレッダ60(上部スプレッダ)、ジブ起伏ロープ55、ジブ起伏用下部スプレッダ70(下部スプレッダ)、および、ウインチ54を備える。
【0027】
ジブガイライン51は、ジブ40の先端部(ジブトップ41t)とストラット52とを連結するガイライン(巻込み及び巻出し不可)である。
【0028】
ストラット52は、タワーブーム20の先端部21tに取り付けられた部材である。ストラット52は、前方側に配置された前ストラット52f、後方側に配置された後ストラット52r、及び、前ストラット52fの先端部と後ストラット52rの先端部とを連結する連結部材52cで構成される。そして、ストラット52全体は基端部(タワーブーム20の先端部21t)を中心に回動可能である。すなわち、ジブガイライン51を介してジブ40と連結されたストラット52が回動すると、ジブ40が起伏する。
【0029】
ストラットガイライン53は、ストラット52に一端が取り付けられるとともに、ジブ起伏用上部スプレッダ60に他端が取り付けられたガイラインである。すなわち、ストラットガイライン53は、後ストラット52rの先端部とジブ起伏用上部スプレッダ60とを連結するガイラインである。
【0030】
ウインチ54は、上部旋回体12に取り付けられる。ウインチ54はジブ起伏ロープ55の一端側を巻取り及び巻出しする。
【0031】
ジブ起伏ロープ55は、一端側がウインチ54により巻取り及び巻出しされるとともに、他端側がジブ起伏用上部スプレッダ60とジブ起伏用下部スプレッダ70とに掛け回される。なお、ガントリ31に取り付けられたシーブ56を用いてジブ起伏ロープ55の方向が変えられる(方向を変えなくても良い)。
【0032】
ジブ起伏用上部スプレッダ60は、図1及び図2に示すように、ストラットガイライン53の端部が取り付けられるとともにジブ起伏ロープ55が掛けられる部材である。図2に示すように、ジブ起伏用上部スプレッダ60は、上部スプレッダフレーム61と、上部スプレッダフレーム61に取り付けられた複数枚のシーブ62とを備える。シーブ62にジブ起伏ロープ55が掛けられる。
【0033】
ジブ起伏用下部スプレッダ70は、図1及び図2に示すように、ジブ起伏ロープ55が掛けられる部材である。図3に示すように、ジブ起伏用下部スプレッダ70は、タワーブーム20に取り付けるための取付部73を備えるとともに、上部旋回体12を横から見たときに取付部73を中心に回動可能にタワーブーム20に取り付けられる。図2及び図3に示すように、ジブ起伏用下部スプレッダ70は、下部スプレッダフレーム76、下部スプレッダフレーム76に取り付けられた複数枚のシーブ77、および、下部スプレッダフレーム76に取り付けられるとともに取付部73を備えたリンク部材71を備える。
【0034】
リンク部材71は、タワーブーム20のブラケット22と、下部スプレッダフレーム76とを連結する部材である。図2に示すように、リンク部材71は、下部スプレッダフレーム76の横方向両端に例えば2枚ずつ(合計4枚)取り付けられる(1枚ずつでも良い)。なお、煩雑を避けるため、図2では4枚図示したリンク部材のうち1枚にのみ詳細な符号を付している。
図2及び図3に示すように、リンク部材71の下端部(取付部73)は、上部旋回体12(図1参照)を横から見たときに回動可能に(上部旋回体12の横方向を軸方向として回動可能に)、タワーブーム20のジブ起伏用下部スプレッダ取付部22aに取り付けられる。具体的には取付部73及びジブ起伏用下部スプレッダ取付部22aは貫通孔であり、この貫通孔にピン71pを差し込むことで上記取り付けが行われる。
リンク部材71の上端72は、上部旋回体12(図1参照)を横から見たときに回動可能に、下部スプレッダフレーム76のリンク部材取付部78に取り付けられる。この取り付けには、下端(取付部73)と同様に、ピン71pを用いる。なお、この取り付けは回動可能でなくても良い。すなわち、リンク部材71と下部スプレッダフレーム76とが一体でも良い。
【0035】
下部スプレッダフレーム76は、複数枚(後方から見て横方向に並ぶように例えば2枚)のシーブ77を取り付ける部材である。図2に示すように、シーブ77にジブ起伏ロープ55が掛けられる。下部スプレッダフレーム76は、横方向両端に1つずつ(合計2つ)、下端から下方側に突出するリンク部材取付部78を備える。リンク部材取付部78にリンク部材71が取り付けられる。また、図3に示すように、下部スプレッダフレーム76はシーブ77の厚さ方向に対向する2枚の板状部材を備える。2枚の板状部材のうちタワーブーム20側の部材を板状部材76aとする。
【0036】
倒れ止め手段連結部79は、倒れ止め手段80を連結する部分であり、貫通孔を備えた例えば板状の部材である。倒れ止め手段連結部79は、下部スプレッダフレーム76のタワーブーム20に対向する面(板状部材76a)からタワーブーム20側(前方側)に突出するように、下部スプレッダフレーム76に取り付けられる。図2に示すように、倒れ止め手段連結部79は、下部スプレッダフレーム76の例えば横方向両端に一つずつ(合計2つ)設けられる(横方向中央に1つ設けても良い)。なお、出荷後の従来のクレーン101(図4参照)の下部スプレッダフレーム76に倒れ止め手段連結部79を溶接やボルト等を用いて取り付けても良い。
【0037】
倒れ止め手段80は、図3に示すように、ジブ起伏用下部スプレッダ70とタワーブーム20とを連結することで、ジブ起伏用下部スプレッダ70が後方側に倒れる(矢印A1参照)のを抑制する部材である。倒れ止め手段80は、取付部73(ジブ起伏用下部スプレッダ70の回動中心)よりも上方側に配置される。倒れ止め手段80の一端は、タワーブーム20の倒れ止め手段連結部23に取り付けられる。倒れ止め手段80の他端は、ジブ起伏用下部スプレッダ70の下部スプレッダフレーム76の倒れ止め手段連結部79に取り付けられる。また、図2に示すように、倒れ止め手段80は、タワーブーム20及び下部スプレッダフレーム76の例えば両端部付近に合計2つ配置される(横方向中央部に1つ設けても良い)。なお、図2では倒れ止め手段80を模式的に示している。また、図3に示すように、倒れ止め手段80は、ジブ起伏用下部スプレッダ70が前方側に移動する(矢印A2参照)ことは抑制する必要はない。
【0038】
また、倒れ止め手段80は、具体的には例えばワイヤロープ81と、ワイヤロープ81の両端部にそれぞれ取り付けられたシャックル82(合計2つ)とを備える。ワイヤロープ81の両端部は輪状にされ、この輪状の部分にシャックル82が取り付けられる。そして、倒れ止め手段連結部23及び79の貫通孔にシャックル82が取り付けられる。これにより、倒れ止め手段連結部23及び79に倒れ止め手段80が取り付けられる。
【0039】
また、倒れ止め手段80の長さ(倒れ止め手段連結部23と79との距離)は様々に設定できる。すなわち、ジブ起伏用下部スプレッダ70の重量がジブ起伏ロープ55(図1参照)にかかることで上述したような問題が生じるので、上記重量がかからない(または、重量がかかっても問題が生じない)ように、倒れ止め手段80の長さを設定すれば良い。具体的には例えば、ジブ40(図1参照)の起伏角度が所定角度(ウインチ54で乱巻きが生じやすい角度など)の場合に、取付部73とジブ起伏用下部スプレッダ70とジブ起伏用上部スプレッダ60(図1参照)とが直線上に配置されるときよりも、ジブ起伏用下部スプレッダ70が後方側(A1側)に倒れないように、倒れ止め手段80の長さを設定する。
【0040】
(本実施形態のクレーンの特徴)
本実施形態のクレーン1には以下の特徴がある。図3に示すように、ジブ起伏用下部スプレッダ70は、タワーブーム20に取り付けるための取付部73を備えるとともに、上部旋回体12(図1参照)を横から見たときに取付部73を中心に回動可能にタワーブーム20(のブラケット22)に取り付けられている。よって、そのままではジブ起伏用下部スプレッダ70後方側(矢印A1側)に倒れ得る。
また、このクレーン1では、ジブ起伏用下部スプレッダ70(の倒れ止め手段連結部79)とタワーブーム20(の倒れ止め手段連結部23)とが倒れ止め手段80で連結されている。よって、ジブ起伏用下部スプレッダ70が後方側(矢印A1側)に倒れることが抑制される。その結果、ジブ起伏用上部スプレッダ60とジブ起伏用下部スプレッダ70とに掛け回されたジブ起伏ロープ55(図1参照)に、ジブ起伏用下部スプレッダ70の重量が加わることが抑制される。その結果、図1に示すジブフット41f回りの前方モーメントの減少(後方モーメントの増加)が抑制される。
【0041】
図1に示すように、ジブフット41f回りの前方モーメントの減少が抑制されるので、ジブ起伏ロープ55張力が小さくなることが抑制される。その結果、ジブ起伏ロープ55の巻出し及び巻込みを行うウインチ54の乱巻きを抑制できる。
また、ジブフット41f回りの前方モーメントの減少が抑制されるので、ジブ40が後方に反転することを抑制できる。
また、上記構成では、ジブ40の先端(ジブトップ41t)にポイントウェイトをつける必要がない。よって、クレーン能力を下げる必要がない。
また、上記構成では、ジブ40に取り付けられたバックストップ42を長くする必要も、このバックストップ42のバネを強化する必要もない。よって、クレーン1の組立てが煩雑にならない。また、上記必要がないので、従来のクレーン101(図4参照)に対して少ない変更点で、高い費用をかけずに、ジブフット41f回りの前方モーメントの減少を抑制できる。また、変更点が少ないので、出荷後の従来のクレーン101(図4参照)を本発明の構成に容易に変更できる。
【0042】
(変形例)
図3に示す倒れ止め手段80の構成、及び、倒れ止め手段連結部23及び79への倒れ止め手段80の取り付け方法は様々に変形できる。例えば、ワイヤロープ81を、リンク(棒や長板を連結したもの)やチェーン等に変更しても良い。また、シャックル82を用いた取り付けに代えて、ピンを用いる方法やフックを用いる方法等に変形しても良い。また、倒れ止め手段80を3つ以上設けても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 クレーン
12 上部旋回体(旋回体)
20 タワーブーム
40 ジブ
52 ストラット
51 ジブガイライン
53 ストラットガイライン
54 ウインチ
55 ジブ起伏ロープ
60 ジブ起伏用上部スプレッダ(上部スプレッダ)
70 ジブ起伏用下部スプレッダ(下部スプレッダ)
73 取付部
80 倒れ止め手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回体と、
前記旋回体に起伏可能に取り付けられたタワーブームと、
前記タワーブームの先端部に起伏可能に取り付けられたジブと、
前記タワーブームの先端部に取り付けられたストラットと、
前記ジブの先端部と前記ストラットとを連結するジブガイラインと、
前記ストラットに一端が取り付けられたストラットガイラインと、
前記ストラットガイラインの他端が取り付けられた上部スプレッダと、
前記タワーブームに取り付けられた下部スプレッダと、
前記旋回体に取り付けられたウインチと、
一端側が前記ウインチにより巻取り及び巻出しされるとともに、他端側が前記上部スプレッダと前記下部スプレッダとに掛け回されたジブ起伏ロープと、を備え、
前記下部スプレッダは、前記タワーブームに取り付けるための取付部を備えるとともに、前記旋回体を横から見たときに当該取付部を中心に回動可能に当該タワーブームに取り付けられ、
前記下部スプレッダと前記タワーブームとが倒れ止め手段で連結されている、クレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−241003(P2011−241003A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112020(P2010−112020)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】