説明

クレーン

【課題】 誤操作による作動を防止するようにしたクレーンを提供する。
【解決手段】 ペンダントスイッチ19と各駆動装置9、10、11との間に、ペンダントスイッチ19の音声入力部21から出力される音声信号を、予め登録してある駆動装置9、10、11の作動内容に対応した作動信号として出力する出力部22と、ペンダントスイッチ19の押釦13〜18から出力される作動信号とを比較し、同一の作動信号のときには、その作業信号を対応する駆動装置9、10、11に出力するようにした比較部23を備えた制御装置20を設け、ペンダントスイッチ19の複数ある押釦13〜18の中から作動内容に沿った押釦13〜18を押し込むと共に、作動内容に沿った音声を入力することで、作業者はクレーン1の作動内容を押釦13〜18と音声で確認しているので、誤操作が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体を、操作部から出力される信号に基づき制御される駆動装置によって作動させて成るクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のようなクレーンでは、操作部と駆動装置との間に、操作部から出力された動作指示信号(特許文献1)や音声信号(特許文献2)を、予め登録してある動作内容に対応した音声として外部に出力すると共に、予め登録してある動作内容に対応した制御信号として駆動装置に出力するように構成した装置を備え、操作部から出力される信号によってクレーンの動作内容を音声にて確認できると共に、クレーンを作動させるようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4452299号公報
【特許文献2】特開平2−286595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、操作部の押釦の押し込みで信号が出力され、その押し込みを解除することで信号の送信が停止されるようになっている。ところが、クレーンが騒音の大きな工場内に設置された場合に、作業者が外部へ出力された音声を聞き逃すことがあると、クレーンの動作内容の誤りに気付くのが遅れ、操作部の押釦の押し込みを解除することが遅れてクレーンの作動を直ぐ停止させることができないおそれがあった。クレーンの作動が直ぐ停止できないと、フック部材が工場内の作業者や搬送物などにぶつかったり、搬送物を他のものにぶつけたりする問題があった。特許文献2では、クレーンの動作内容を音声で確認した後、再び音声信号を出力することで、クレーンを動作内容に沿って作動させるようになっている。更に、操作部には上記装置に音声信号以外の信号を出力させるスイッチが設けられ、音声信号が出力される装置に音声信号以外の信号を出力することで、音声信号に基づく制御信号の出力を停止させるようになっている。ところが、再び出力する音声信号が誤って認識された場合、作業者がクレーンの動作内容の誤りに気付き、スイッチによって制御信号を停止させるまでに時間が生じ、特許文献1同様にクレーンの作動を直ぐ停止させることができないおそれがあった。
そこで本発明の課題は、上記問題点に鑑み、誤操作による作動を防止するようにしたクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、移動体を、操作部から出力される信号に基づき制御される駆動装置によって作動させて成るクレーンにおいて、操作部には駆動装置の作動内容に対応する作動信号を出力する操作部材が設けられ、その操作部と駆動装置との間に、操作部に設けた音声入力部から出力する音声信号を、予め登録してある駆動装置の作動内容に対応した作動信号として出力する出力部と、操作部から出力される作動信号とを比較し、同一の作動信号のときには、その作動信号を駆動装置に出力するようにした比較部とを備えた制御装置が設けられ、操作部の操作部材から出力される作動信号と、音声信号に基づいて出力される作動信号が同一のときに駆動装置を駆動させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、ペンダントスイッチの複数ある押釦の中から作動内容に沿った押釦を押し込むと共に、作動内容に沿った音声を入力するようにしたから、作業者はクレーンの作動内容を押釦と音声で確認しているので、クレーンの誤操作が確実に防止され、フック部材を作業者や搬送物にぶつけたり、吊っている搬送物を他のものにぶつけたりすることを防ぐ。また、騒音の大きな工場内であってもクレーンを作動内容に沿って作動させることができるので、確実に搬送物を搬送することが可能となる。更に、押釦からの作動信号、ペンダントスイッチからの音声信号の何れかが誤って認識されても、前記2つの信号が同一でないと比較部から各駆動装置に出力されないことから、誤操作によるクレーンの作動が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】クレーンを示す図である。
【図2】図1に示すクレーンのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1のクレーン1の移動体2は、天井に設けた走行レール3に沿って建屋4の長手方向(例えば東西方向)に走行可能なガーダ5と、そのガーダ5に沿って建屋4の幅方向(例えば南北方向)に横行可能なトロリ6と、トロリ6に設置され、フック部材7を上下方向に移動可能な巻上装置8とから成り、ガーダ5、トロリ6、巻上装置8は各駆動装置9、10、11によって夫々作動するようになっている。尚、本実施形態のクレーン1は、建屋4に設置する天井クレーンであるが、例えばスタッカークレーンなどであってもよい。前記巻上装置8から垂下したケーブル12には、複数(6個)の操作部材として例示する押釦13〜18を備えた操作部であるペンダントスイッチ19が取り付けられている。各押釦13〜18を押し込むと、各駆動装置9、10、11の作動内容に対応した作動信号が出力され、押し込みを解除すると、作動信号の出力が停止されるようになっている。本実施形態では、東の押釦15はガーダ5を建屋4の東方向へ走行させ、西の押釦16はガーダ5を建屋4の西方向へ走行させ、南の押釦17はトロリ6を建屋4の南方向へ横行させ、北の押釦18はトロリ6を建屋4の北方向へ横行させ、上の押釦13はフック部材7を上方向へ移動させ、下の押釦14はフック部材7を下方向へ移動させる作動信号が出力されるように設定されている。ペンダントスイッチ19と各駆動装置9、10、11との間には誤操作防止装置の制御装置20が設けられている。また、前記ペンダントスイッチ19には音声入力部21が設けられ、その音声入力部21に次の6種類(ひがし、にし、みなみ、きた、うえ、した)の何れかの音声が入力されると、夫々を音声信号として前記制御装置20に出力するようになっている。
【0009】
上記の制御装置20は、ペンダントスイッチ19の音声入力部21から出力される音声信号を、予め登録してある駆動装置9、10、11の作動内容に対応した作動信号として出力する出力部22と、ペンダントスイッチ19の押釦13〜18から出力される作動信号とを比較し、同一の作動信号のときには、その作動信号を対応する駆動装置9、10、1に出力するようにした比較部23が備えられている。本実施形態の出力部22では、音声信号(ひがし)は、ガーダ5を東方向に走行させる作動信号として出力させ、音声信号(にし)は、ガーダ5を西方向に走行させる作動信号として出力させ、音声信号(みなみ)は、トロリ6を南方向へ横行させる作動信号として出力させ、音声信号(きた)は、トロリ6を北方向へ横行させる作動信号として出力させ、音声信号(うえ)は、フック部材7を上方向へ移動させる作動信号として出力させ、音声信号(した)は、フック部材7を下方向へ移動させる作動信号として出力させるようにしてある。また、出力部22では、ペンダントスイッチ19から次の音声信号が出力されるまで、前の音声信号に対応した作動信号を出力し続けるようになっている。よって、押釦13〜18の押し込み、押し込みの解除を繰り返すことで、クレーン1の寸動作動を行うようになっている。
【0010】
次に、上記構成のクレーン1の作動について説明する。作業者は、建屋4内において床面F上の搬送物Aを目的の場所に移動させるために、先ず、ガーダ5、トロリ6、巻上装置8の何れかを作動させるのかを考え、その作動内容に沿ったペンダントスイッチ19の押釦13〜18を押し込むと共に、その押釦13〜18に対応した音声をペンダントスイッチ19の音声入力部21に入力することで、クレーン1を作動させることになる。例えば、図1の状態のトロリ6を建屋4の北方向へ横行させ、フック部材7を搬送物Aに掛ける場合、作業者は、ペンダントスイッチ19の北の押釦18を押し込むと共に、ペンダントスイッチ19の音声入力部21から音声信号(きた)を制御装置20に出力する。音声信号(きた)に対応した作動信号が出力部22から比較部23に出力され、その作動信号と、前記押釦18から出力された信号とを比較し、同一の作動信号と判断されると、比較部23からトロリ6を作動させる駆動装置10に作動信号が出力され、トロリ6を北方向へ横行させる。このときに、2つの信号が異なっていたら、トロリ6は横行しない。その後、比較部23からの信号により搬送物Aの上方まで移動すると、押釦18の押し込みを解除し、前記信号の出力を停止させる。続いて、下の押釦14を押し込むと共に、ペンダントスイッチ19の音声入力部21から音声信号(した)を制御装置20に出力する。音声信号(した)に対応した作動信号が出力部22から比較部23に出力され、その作動信号と、前記押釦14から出力された信号とを比較し、同一の作動信号と判断されると、比較部23からフック部材7を作動させる駆動装置11に作動信号が出力され、フック部材7を下方へ移動させる。前記同様、2つの信号が異なっていたら、フック部材7は移動しない。その後、比較部23からの信号によりフック部材7が所定の位置まで移動すると、押釦14の押し込みを解除し、前記信号の出力を停止させる。その後、停止したフック部材7を搬送物Aに掛けることができる。
【0011】
このように、ペンダントスイッチ19の複数ある押釦13〜18の中から作動内容に沿った押釦13〜18を押し込むと共に、作動内容に沿った音声を入力するようにしたから、作業者はクレーン1の作動内容を押釦13〜18と音声で確認しているので、クレーン1の誤操作が確実に防止でき、従来のように、フック部材7を作業者や搬送物Aにぶつけたり、吊っている搬送物Aを他のものにぶつけたりすることがない。また、騒音の大きな工場内であってもクレーン1を作動内容に沿って作動させることができるので、確実に搬送物Aを搬送することができる。更に、押釦13〜18からの作動信号、ペンダントスイッチ19からの音声信号の何れかが誤って認識されても、前記2つの信号が同一でないと比較部23から各駆動装置9、10、11に送信されないことから、誤操作によるクレーン1の作動を防止できる。
【符号の説明】
【0012】
1 クレーン
2 ガーダ
9〜11 駆動装置
13〜18 押釦
19 ペンダントスイッチ
20 制御装置
21 音声入力部
22 出力部
23 比較部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を、操作部から出力される信号に基づき制御される駆動装置によって作動させて成るクレーンにおいて、操作部には駆動装置の作動内容に対応する作動信号を出力する操作部材が設けられ、その操作部と駆動装置との間に、操作部に設けた音声入力部から出力する音声信号を、予め登録してある駆動装置の作動内容に対応した作動信号として出力する出力部と、操作部から出力される作動信号とを比較し、同一の作動信号のときには、その作動信号を駆動装置に出力するようにした比較部とを備えた制御装置が設けられ、操作部の操作部材から出力される作動信号と、音声信号に基づいて出力される作動信号が同一のときに駆動装置を駆動させるようにしたことを特徴とするクレーン。

【図1】
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【図2】
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