説明

クロック生成回路、クロック選択回路、及び半導体集積回路

【課題】 PLL回路から出力される異常波形のクロックにより他の機能回路が誤動作すること。
【解決手段】 クロック生成回路50は、クロックCL1に同期したクロックCL2を出力するPLL回路11と、クロックCL1又はクロックCL2を出力するセレクタ14と、PLL回路11からのクロックCL2で異常波形のパルスが検出されたとき、クロックCL2に代えてクロックCL1を出力させる切替信号をセレクタ14に出力する切替信号生成回路13と、切替信号に基づいてセレクタ14がクロックCL2からクロックCL1に出力クロックを切り替えた後、異常波形のパルスがセレクタ14に入力されるように、PLL回路11からのクロックCL2を遅延させる遅延回路12と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロック生成回路、クロック選択回路、及び半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路(特に、マイクロコンピュータ(Microcomputer))に関する技術の進展が著しい。そして、この半導体集積回路に組み込まれる個々の機能回路にも高い性能が要求されている。
【0003】
半導体集積回路においては、周波数逓倍器として位相同期回路(以下、PLL(Phase locked Loop)回路)が広く用いられている。PLL回路を半導体集積回路に組み込むことで、基準周波数をN倍した周波数のクロックを生成することができる。
【0004】
PLL回路においてはクロックを安定して出力することが重要な特性である。しかしながら、近年の電源電圧の低下に伴って、PLL回路からの出力クロックの波形に乱れが生じることが問題となっている。すなわち、PLL回路は、電圧制御発振器(VCO(Voltage Controlled Oscillator))を利用して出力クロックを生成するが、VCOの電源電圧に生じるゆれにより、出力クロックの波形に乱れが発生してしまう。出力クロックの波形に乱れが生じると、出力クロックに基づいて動作する他の機能回路が誤動作してしまうことを招くおそれがある。
【0005】
特許文献1は、相互に独立した発振回路からのクロックを選択的に出力する技術が開示されている。図11に、特許文献1記載の技術を示す。図11に示すように、特許文献1では、監視回路83の判定結果に基づいてマルチプレクサ84は、発振回路81のクロックから発振回路82のクロックに出力するクロックを変更する。なお、特許文献2には、クロックの異常を検出する装置が記載されている。
【特許文献1】特開平10−124167号公報
【特許文献2】特開昭61−41243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、PLL回路から出力される異常波形のクロックにより他の機能回路が誤動作してしまうおそれがあることが問題となっている。この問題点は、特許文献1記載の技術に習って、単純にPLL回路に入力される基本クロックとPLL回路からの出力クロックのいずれかを選択的に出力させたとしても変わらない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるクロック生成回路は、第1クロックに同期した第2クロックを出力する位相同期回路と、前記第1クロック又は前記第2クロックを出力するセレクタと、前記位相同期回路から出力された前記第2クロックで異常波形のパルスが検出されたとき、前記第2クロックに代えて前記第1クロックを出力させる切替信号を前記セレクタに出力する切替信号生成回路と、前記切替信号に基づいて前記セレクタが前記第2クロックから前記第1クロックに出力クロックを切り替えた後、前記第2クロックに含まれる異常波形の前記パルスが前記セレクタに入力されるように、前記位相同期回路から前記セレクタに入力される前記第2クロックを遅延させる遅延回路と、を備える。
【0008】
本発明にかかるクロック選択回路は、切替信号の入力に基づいて第1クロック又は第2クロックを選択的に出力するセレクタと、前記セレクタに入力される前記第2クロックで異常波形のパルスが検出されたとき、前記第2クロックに代えて前記第1クロックを出力させる切替信号を前記セレクタに出力する切替信号生成回路と、前記セレクタが前記第2クロックから前記第1クロックに出力クロックを切り替えた後、異常波形の前記パルスが前記セレクタに入力されるように、前記セレクタに入力される前記第2クロックを遅延させる遅延回路と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
PLL回路から出力される異常波形のクロックにより他の機能回路が誤動作してしまうことを効果的に抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。尚、図面は簡略的なものであって、示された構成要素の正確な大きさ等を示すものではない。また、図面に基づいて、本発明の技術的範囲を狭めるように解釈してはならない。また、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略するものとする。
【0011】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態について、図1乃至図6を用いて説明する。図1は、クロック生成回路50を含む半導体集積回路(マイコン)の概略的な構成を示すブロック図である。図2は、クロック生成回路50の概略的な構成を示す回路図である。図3は、遅延回路12の概略的な構成を示す回路図である。図4は、異常パルス検出回路13aの概略的な回路図である。図5は、異常パルス検出回路13aの動作を説明するためのタイミングチャートである。図6は、クロック生成回路50の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0012】
図1に示すように、半導体集積回路100は、クロック生成回路50、CPU(Central Processing Unit)60、I/O(Input/Output)回路61、割り込みコントローラ回路62、ROM(Read Only Memory)63、RAM(Ramdom Access Memory)64、を備える。CPU61〜RAM64らの機能回路は、クロック生成回路50から出力されるクロック(システムクロック)に基づいて動作する。
【0013】
図2に示すように、クロック生成回路50は、発振器10、PLL回路11、遅延回路12、切替信号生成回路13(異常パルス検出回路13a、タイミング制御回路13b)、セレクタ14を備える。
【0014】
なお、PLL回路11は、PD(Phase Detector)20、LF(Loop Filter)21、VCO(Voltage Controlled Oscillator)22、1/N DIV(1/N Divider)23、を備える。なお、PD20を位相差検出器20と呼び、LF21をループ・フィルタ21と呼び、VCO22を電圧制御発振器22と呼び、1/N DIVを1/N分周器と呼んでも良い。
【0015】
クロック生成回路50の動作の概要は以下のとおりである。セレクタ14には、発振器10からのクロックCL1(第1クロック)とPLL回路11からのクロックCL2(第2クロック)が入力される。セレクタ14は、切替信号生成回路13から出力される切替信号S13に基づいて、発振器10からのクロックCL1又はPLL回路11からのクロックCL2のいずれかを選択的に出力する。通常動作時、セレクタ14は、クロックCL2を出力する。クロックCL2の波形に異常が検出された時、セレクタ14は、クロックCL1を出力する。本実施形態においては、遅延回路12がPLL回路11とセレクタ14との間に設けられている。これにより、クロックCL2に含まれる異常波形のパルスが後続の機能回路(CPU60〜RAM64)に入力されることが抑制される。
【0016】
以下、それぞれの構成要素の接続関係について説明した後、それぞれの構成要素の機能について説明する。
【0017】
発振器10の出力は、PLL回路11、セレクタ14に入力される。発振器10とPLL回路11との間の節点N1には、セレクタ14の入力(第1の入力)が接続される。換言すると、PLL回路11、セレクタ14は、発振器10に並列接続される。PLL回路11の出力は、遅延回路12、切替信号生成回路13に入力される。PLL回路11と遅延回路12との間の節点N3には、切替信号生成回路13の入力が接続される。換言すると、遅延回路12、切替信号生成回路13は、節点N3に並列接続される。遅延回路12の出力は、セレクタ14の他方の入力(第2の入力)に接続される。切替信号生成回路13の出力は、セレクタ14の制御端子に接続される。なお、切替信号生成回路13は、直列接続された異常パルス検出回路13a、タイミング制御回路13bを有する。また、切替信号生成回路13は、発振器10とセレクタ14との間の節点N6に接続される。セレクタ14の出力は、図1の後続の機能回路(CPU61〜RAM65)に接続される。
【0018】
以下、それぞれの回路要素の機能について説明する。
【0019】
発振器10は、所定周波数のクロックCL1を出力する。発振器10は、例えば、水晶振動子・セラミックス発振子等を用いた一般的な発振回路である。
【0020】
PLL回路11は、発振器10からのクロックCL1に同期したクロックCL2を出力する。ここでは、帰還経路に1/N DIV23が設けられている。従って、PLL回路11から出力されるクロックの周波数は、発振器10からのクロックの周波数のN倍となる。ここでは、VCO22と遅延回路12との間の節点N2の信号を帰還信号としている。
【0021】
なお、PD20は、発振器10からのクロックCL1とVCO22からのクロックCL2との位相差を検出する。LF21は、PD20から出力される位相差信号の交流成分を除去する。VCO22は、LF21から出力される位相差信号に応じて、出力するクロックの周波数を調整する。1/N DIV23は、クロックCL2を1/N(Nは2以上の自然数)に分周してPD20に入力させる。
【0022】
遅延回路12は、PLL回路11からのクロックCL2を所定時間遅延させ、セレクタ14に出力する。遅延回路12の概略的な構成を図3に示す。図3に示すように、遅延回路12は、遅延回路12a、遅延回路12bを有する。遅延回路12a、遅延回路12bとは互いに直列接続される。遅延回路12a、遅延回路12bのそれぞれは、直列接続された複数のバッファ60を有する。遅延回路12における遅延量は、直列接続されるバッファ数によって設定される。
【0023】
遅延回路12の遅延量は、セレクタ14に切替信号S13が入力された後、異常波形のパルスがセレクタ14に入力されるように設定される。具体的には、後述の説明からより明らかになるが、異常パルス検出回路13aによる異常波形のパルスの検出にかかる所要時間、タイミング制御回路13bの動作にかかる所要時間、及びセレクタ14のクロック切替にかかる所要時間の合計に基づいて設定される。このように遅延回路12の遅延量を設定することで、セレクタ14によるクロックの切替前に、異常波形のパルスがセレクタ14に入力され、後続の機能回路に伝播することが抑制される。
【0024】
切替信号生成回路13は、クロックCL2における異常波形のパルスを検出し、異常波形のパルスを検出したとき、セレクタ14にクロックCL2に代えてクロックCL1を選択して出力させる切替信号S13を出力する。
【0025】
切替信号生成回路13は、異常パルス検出回路13a、タイミング制御回路13bを有する。異常パルス検出回路13aは、クロックCL2の異常波形のパルスを検出する。そして、クロックCL2で異常波形のパルスを検出したとき、セレクタ14に異常検出信号S12を出力する。
【0026】
タイミング制御回路13bは、異常検出信号S12の入力に基づいて切替信号S13を出力する。タイミング制御回路13bは、異常パルス検出回路13aから出力される異常検出信号S12をセレクタ14に出力するタイミングをクロックCL1の入力に基づいて制御する。これにより、セレクタ14によるクロックCL2からクロックCL1の切替時点を、クロックCL1の立ち上がり時点にあわせることができる。
【0027】
セレクタ14は、切替信号S13の入力に基づいて、クロックCL2からクロックCL1にシステムクロックとして出力するクロックの切替を行う。すなわち、通常動作時、セレクタ14は、クロックCL2をシステムクロックとして出力する。他方、クロックCL2の波形に異常が検出され切替信号S13が入力された場合、セレクタ14は、クロックCL2に代えて、クロックCL1をシステムクロックとして出力する。
【0028】
ここで、図4、図5を用いて、異常パルス検出回路13aの構成及び動作について説明する。図4に、異常パルス検出回路13aの概略的な回路図を示す。図5に、異常パルス検出回路13aの動作を説明するためのタイミングチャートを示す。
【0029】
図4に示すように、異常パルス検出回路13aは、High(H)レベル判定回路25、Low(L)レベル判定回路26、OR回路27、パルス伸張回路28、を有する。Hレベル判定回路25、Lレベル判定回路26は、節点N3に並列接続される。OR回路27には、Hレベル判定回路25の出力及びLレベル判定回路26の出力が入力される。OR回路27の出力は、パルス伸張回路28に入力される。パルス伸張回路28の出力は節点N5に接続される。
【0030】
Hレベル判定回路25は、F/F(Flip/Flop)回路30、31、32、遅延回路33、34、35、AND回路36を有する。
【0031】
F/F回路30、31、32は、節点N3に対して並列に接続される。遅延回路33、34、35は、節点N3に直列接続される。遅延回路33と遅延回路34との間の節点N7は、F/F回路30のCLK端子に接続される。遅延回路34と遅延回路35との間の節点N8は、F/F回路31のCLK端子に接続される。遅延回路35の出力は、F/F回路32のCLK端子に接続される。
【0032】
F/F回路30〜32は、節点N3からのクロックCL2のHレベルの状態を異なる時点で記憶する。F/F回路30は、遅延回路33によって、クロックCL2の立ち上がりよりも所定時間後のクロックCL2の状態を記憶する。F/F回路31は、F/F回路30よりも遅延回路34による遅延時間分だけ後のクロックCL2の状態を記憶する。F/F回路32は、F/F回路31よりも遅延回路35による遅延時間分だけ後のクロックCL2の状態を記憶する。すなわち、Hレベル判定回路25は、クロックCL2のHレベルの状態を複数の異なる時点で判定する。
【0033】
AND回路36は、F/F回路30〜32のいずれかからLレベルの信号が出力された場合、Hレベルの信号を出力する。
【0034】
Lレベル判定回路26は、F/F(Flip/Flop)回路40、41、42、遅延回路43、44、45、OR回路46を有する。
【0035】
F/F回路40、41、42は、節点N3に対して並列に接続される。遅延回路43、44、45は、節点N3に直列接続される。遅延回路43と遅延回路44との間の節点N9は、F/F回路40のCLK端子に接続される。遅延回路44と遅延回路45との間の節点N10は、F/F回路41のCLK端子に接続される。遅延回路45の出力は、F/F回路42のCLK端子に接続される。
【0036】
F/F回路40〜42は、節点N3からのクロックCL2のLレベルの状態を異なる時点で記憶する。F/F回路40は、遅延回路43によって、クロックCL2の立ち下がりよりも所定時間後のクロックCL2の状態を記憶する。F/F回路41は、F/F回路40よりも遅延回路44による遅延時間分だけ後のクロックCL2の状態を記憶する。F/F回路42は、F/F回路41よりも遅延回路45による遅延時間分だけ後のクロックCL2の状態を記憶する。すなわち、Lレベル判定回路26は、クロックCL2のLレベルの状態を複数の異なる時点で判定する。
【0037】
OR回路46は、F/F回路40〜42のいずれかからHレベルの信号が出力された場合、Hレベルの信号を出力する。
【0038】
OR回路27は、Hレベル判定回路25又はLレベル判定回路26からHレベルの検出信号が入力されたとき、所定のパルス幅のHレベルの異常検出信号S12を出力する。
【0039】
パルス伸張回路28は、OR回路27から出力された異常検出信号S12のパルス幅を伸張して出力する。パルス伸張回路28は、例えば、単安定マルチバイブレータである。
【0040】
図5(a)に、Hレベル判定回路25の動作を説明するためのタイミングチャートを示す。
【0041】
時刻t1〜t3では、クロックCL2のパルスの波形に異常はない。すなわち、時刻t1〜t3、クロックCL2はHレベルである。従って、F/F回路30〜32は、Hレベルの信号を保持する。
【0042】
時刻t4〜t6では、クロックCL2のパルス波形に異常がある。
【0043】
時刻t4では、クロックCL2はHレベルである。従って、F/F回路30は、Hレベルの信号を保持する。
【0044】
時刻t5では、クロックCL2はLレベルである。従って、F/F回路31は、Lレベルの信号を保持する。そして、時刻t5から僅かに遅延して、Hレベル判定回路25からはHレベルの信号S10が出力される。そして、S10の出力から僅かに遅延して、パルス伸張回路28から異常検出信号S12が出力される。
【0045】
時刻t6では、クロックCL2はLレベルである。従って、F/F回路32は、Lレベルの信号を保持する。この場合、時刻t5と同様に動作する。
【0046】
時刻t7〜t9は、時刻t1〜t3の場合と同様である。
【0047】
このようにして、異常パルス検出回路13aでは、クロックCL2の異常波形のパルスが検出される。そして、異常パルス検出回路13aからは異常検出信号S12が出力される。
【0048】
図5(b)に、Lレベル判定回路26の動作を説明するためのタイミングチャートを示す。
【0049】
時刻t1〜t3では、クロックCL2のパルスの波形に異常はない。すなわち、時刻t1〜t3の間、クロックCL2はLレベルである。従って、F/F回路40〜42は、Lレベルの信号を保持する。
【0050】
時刻t4〜t6では、クロックCL2のパルス波形に異常がある。
【0051】
時刻t4では、クロックCL2はLレベルである。従って、F/F回路40は、Lレベルの信号を保持する。
【0052】
時刻t5では、クロックCL2はHレベルである。従って、F/F回路41は、Hレベルの信号を保持する。そして、時刻t5から僅かに遅延して、Lレベル判定回路26からはHレベルの信号S11が出力される。そして、S11の出力から僅かに遅延して、パルス伸張回路28から異常検出信号S12が出力される。
【0053】
時刻t6では、クロックCL2はHレベルである。従って、F/F回路42は、Hレベルの信号を保持する。この場合、時刻t5と同様に動作する。
【0054】
時刻t7〜t9は、時刻t1〜t3の場合と同様である。
【0055】
このようにして、異常パルス検出回路13aでは、クロックCL2のLレベルの異常が検出される。そして、異常パルス検出回路13aからは異常検出信号S12が出力される。
【0056】
クロックCL2のHレベルの状態及びLレベルの状態の双方を複数の異なる時点で判定することにより、高い精度を持って異常波形のパルスを検出することができる。これにより、異常波形のパルスが後続の機能回路に伝播されることが効果的に抑制される。
【0057】
次に、図6を参照して、クロック生成回路50の機能について説明する。なお、CL1は、セレクタ14に入力された発振器10からのクロックCL1である。CL2は、PLL回路11から出力されたクロックCL2である。Sin_2は、遅延回路12を介して、セレクタ14に入力されたクロックCL2である。S12は、異常パルス検出回路13aから出力された異常検出信号である。S13は、タイミング制御回路13bから出力された切替信号である。システムクロックは、セレクタ14から出力されたクロックである。
【0058】
図6に示すように、時刻t1〜t4まではクロックCL2の波形に異常はない。
【0059】
時刻t4の経過後、クロックCL2の波形に乱れが生じている。クロックCL2の異常は、上述の異常パルス検出回路13aによって直ちに検出される。そして、異常パルス検出回路13aからは異常検出信号S12が出力される。
【0060】
時刻t5で、タイミング制御回路13bは、入力された第1クロックCL1に基づいて異常検出信号S12を切替信号S13としてセレクタ14に出力する。そして、直ちに、セレクタ14は、システムクロックとして出力するクロックの切替を実行する。
【0061】
そして、時刻t5で、セレクタ14は、クロックCL2に代えて、クロックCL1をシステムクロックとして出力する。なお、クロックの切替が実行される時刻t5は、クロックCL1の立ち上がり時点と一致する。
【0062】
このようにクロック生成回路50が動作することによって、クロックCL2に生じた異常クロックがセレクタ14の後続の機能回路に伝播されることが高い精度で抑制される。
【0063】
すなわち、本実施形態においては、遅延回路12がPLL回路11とセレクタ14との間に設けられている。これにより、クロックCL2に含まれる異常波形のパルスが後続の機能回路(CPU60〜RAM64)に入力されることが抑制される。
【0064】
また、上述のように、切替信号生成回路13は、異常パルス検出回路13a、タイミング制御回路13bを有する。タイミング制御回路13bは、異常パルス検出回路13aから出力される異常検出信号S12をセレクタ14に出力するタイミングをクロックCL1の入力に基づいて制御する。これにより、セレクタ14によるクロックCL2からクロックCL1の切替時点を、クロックCL1の立ち上がり時点にあわせることができる。すなわち、セレクタ14によるクロックの切替自体によって異常パルスが発生されることも抑制される。
【0065】
また、上述のように、異常パルス検出回路13aは、クロックCL2のHレベルの状態及びLレベルの状態の双方を複数の異なる時点で判定する。これにより、高い精度を持って異常波形のパルスを検出することができる。そして、異常波形のパルスが後続の機能回路に伝播されることが効果的に抑制される。
また、上述のように、遅延回路12は、直列接続された複数のバッファ60を含む。従って、バッファ60の数を設定することにより、簡易に遅延回路12の遅延量を設定することができる。
【0066】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態について、図7を用いて説明する。図7は、クロック生成回路51の概略的な回路図である。なお、第1の実施形態と重複する説明は省略する。尚、第1の実施形態で説明した効果は、本実施形態においてもそのまま適用される。
【0067】
本実施形態においては、PLL回路11の帰還信号は、遅延回路12とセレクタ14との間の節点N4からPLL回路11に入力される。これによって、タイミング制御回路13bの構成を簡略化することができる。すなわち、セレクタ14に入力されるクロックCL1とクロックCL2との間に生じうる同期ずれを考慮して、タイミング制御回路13bを設計する必要を解消できる。F/F13bのように簡素な回路を採用することにより、回路規模が不必要に拡大することを抑制することができる。
【0068】
図7に示すように、本実施形態においては、タイミング制御回路13bとしてF/Fを用いる。F/F13bは、節点N6から入力されるクロックCL1に基づいて異常検出信号S12を切替信号S13として出力するタイミングを制御する。
【0069】
〔第3の実施形態〕
本発明の第3の実施形態について、図8乃至図10を用いて説明する。図8は、クロック生成回路52を含む半導体集積回路(マイコン)の概略的な構成を示すブロック図である。図9は、クロック生成回路52の概略的な構成を示す回路図である。図10は、クロック生成回路52の動作を説明するためのタイミングチャートである。なお、第1及び第2の実施形態と重複する説明は省略する。尚、第1及び第2の実施形態で説明した効果は、本実施形態においてもそのまま適用される。
【0070】
図8に示すように、クロック生成回路52は、システム停止信号を出力する。そして、システム停止制御部65は、システム停止信号の入力に基づいて、CPU60〜RAM64の動作を停止させる。
【0071】
図9に示すように、クロック生成回路52は、停止信号生成回路16を有する。
【0072】
停止信号生成回路16は、クロックCL1に異常波形のパルスがあり、かつクロックCL2にも異常波形のパルスがあるとき、システム停止信号を出力する。これによって、異常波形のパルスが後続の機能回路に伝播し、機能回路が誤動作することがより確実に抑制される。
【0073】
なお、停止信号生成回路16の第1の入力は、発振器10に接続される。また、停止信号生成回路16の第2の入力は、異常パルス検出回路13aの出力に接続される。つまり、停止信号生成回路16には、クロックCL1、異常検出信号S12が入力される。
【0074】
停止信号生成回路16は、異常パルス検出回路16a、判定回路16bを有する。
【0075】
異常パルス検出回路16aの構成及び動作は、異常パルス検出回路13aの構成及び動作と等しい。但し、異常パルス検出回路16aは、クロックCL1の異常波形のパルスを検出し、異常検出信号S14を出力する。
【0076】
判定回路16bは、ここでは、AND回路である。AND回路16bの第1入力は、異常パルス検出回路16aの出力に接続される。AND回路16bの第2入力は、異常パルス検出回路13aの出力に接続される。AND回路16bは、異常検出信号S14の入力及び異常検出信号S12の入力があったとき、システム停止信号を出力する。なお、ここでは、異常検出信号S14、異常検出信号S12はともにHレベルの信号である。
【0077】
図10に示すように、時刻t5と時刻t6との間でクロックCL1の波形に異常がある。異常パルス検出回路16aは、クロックCL1の異常を直ちに検出し、異常検出信号S14をAND回路16bに出力する。図10から明らかなように、この時点で、AND回路16bには、異常検出信号S12が入力されている。従って、AND回路16bは、異常検出信号S14の入力の直後に、システム停止信号を出力する。
【0078】
クロックCL1の波形に異常がある場合には、クロックCL2からクロックCL1に出力クロックを切り替えたとしても、後続の機能回路が誤動作することを抑制できない。本実施形態においては、この点を考慮し、停止信号生成回路16を用いて、後続の機能回路が誤動作することをより確実に抑制する。
【0079】
本発明の技術的な範囲は、上述の実施の形態に限らない。すなわち、PLL回路、セレクタ、異常パルス検出回路、タイミング制御回路、遅延回路の具体的な構成は任意である。また、クロック生成回路のうち、発振器10、PLL回路11を除くと、クロック選択回路として把握することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】第1の実施形態にかかるクロック生成回路50を含む半導体集積回路(マイコン)の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】クロック生成回路50の概略的な構成を示す回路図である。
【図3】遅延回路12の概略的な構成を示す回路図である。
【図4】異常パルス検出回路13aの概略的な回路図である。
【図5】異常パルス検出回路13aの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】クロック生成回路50の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】第2の実施形態にかかるクロック生成回路51の概略的な回路図である。
【図8】第3の実施形態にかかるクロック生成回路52を含む半導体集積回路(マイコン)の概略的な構成を示すブロック図である。
【図9】クロック生成回路52の概略的な構成を示す回路図である。
【図10】クロック生成回路52の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図11】従来の技術を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0081】
100 半導体集積回路
50 クロック生成回路
10 発振器
12 遅延回路
13 切替信号生成回路
13a 異常パルス検出回路
13b タイミング制御回路
14 セレクタ
16 停止信号生成回路
16a 異常パルス検出回路
16b 判定回路
20 位相差検出器
21 ループ・フィルタ
22 電圧制御発振器
25 レベル判定回路
26 レベル判定回路
51 クロック生成回路
CL1 クロック
CL2 クロック
S12 異常検出信号
S13 切替信号
S14 異常検出信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1クロックに同期した第2クロックを出力する位相同期回路と、
前記第1クロック又は前記第2クロックを出力するセレクタと、
前記位相同期回路から出力された前記第2クロックで異常波形のパルスが検出されたとき、前記第2クロックに代えて前記第1クロックを出力させる切替信号を前記セレクタに出力する切替信号生成回路と、
前記切替信号に基づいて前記セレクタが前記第2クロックから前記第1クロックに出力クロックを切り替えた後、前記第2クロックに含まれる異常波形の前記パルスが前記セレクタに入力されるように、前記位相同期回路から前記セレクタに入力される前記第2クロックを遅延させる遅延回路と、
を備えるクロック生成回路。
【請求項2】
前記切替信号生成回路は、
異常波形の前記パルスを検出する異常パルス検出回路と、
当該異常パルス検出回路から出力される異常検出信号を前記セレクタに前記切替信号として出力するタイミングを前記第1クロックの入力に基づいて制御するタイミング制御回路と、
を備えることを特徴とする請求項1記載のクロック生成回路。
【請求項3】
前記異常パルス検出回路は、
前記第2クロックに含まれるパルスの第1レベルの状態を複数の時点で判定する第1レベル判定回路と、
前記第2クロックに含まれるパルスの第2レベルの状態を複数の時点で判定する第2レベル判定回路と、
を備えることを特徴とする請求項1記載のクロック生成回路。
【請求項4】
前記遅延回路の遅延量は、異常波形の前記パルスの検出から前記セレクタによる前記第2クロックから前記第1クロックへの出力クロックの切替までに要する時間に基づいて設定されることを特徴とする請求項1記載のクロック生成回路。
【請求項5】
前記遅延回路は、直列接続された複数のバッファを含むことを特徴とする請求項4記載のクロック生成回路。
【請求項6】
前記位相同期回路は、前記遅延回路から出力される前記第2クロックを帰還信号として用いることを特徴とする請求項1記載のクロック生成回路。
【請求項7】
前記切替信号生成回路は、
異常波形の前記パルスを検出する異常パルス検出回路と、
当該異常パルス検出回路から出力される異常検出信号を前記セレクタに前記切替信号として出力するタイミングを前記第1クロックの入力に基づいて制御するタイミング制御回路と、
を備えることを特徴とする請求項6記載のクロック生成回路。
【請求項8】
前記タイミング制御回路は、フリップフロップであることを特徴とする請求項7記載のクロック生成回路。
【請求項9】
前記第1クロックに含まれる異常波形のパルスの検出及び前記第2クロックに含まれる異常波形の前記パルスの検出に基づいて、前記セレクタの出力クロックで動作する機能回路の停止用の停止信号を出力する停止信号生成回路をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のクロック生成回路。
【請求項10】
前記停止信号生成回路は、
前記第1クロックに含まれる異常波形の前記パルスを検出する異常パルス検出回路と、
当該異常パルス検出回路からの異常検出信号の入力及び前記切替信号生成回路からの前記切替信号の入力に基づいて前記停止信号を出力する判定回路と、
を備えることを特徴とする請求項9記載のクロック生成回路。
【請求項11】
切替信号の入力に基づいて第1クロック又は第2クロックを選択的に出力するセレクタと、
前記セレクタに入力される前記第2クロックで異常波形のパルスが検出されたとき、前記第2クロックに代えて前記第1クロックを出力させる切替信号を前記セレクタに出力する切替信号生成回路と、
前記セレクタが前記第2クロックから前記第1クロックに出力クロックを切り替えた後、異常波形の前記パルスが前記セレクタに入力されるように、前記セレクタに入力される前記第2クロックを遅延させる遅延回路と、
を備えるクロック選択回路。
【請求項12】
前記切替信号生成回路は、
異常波形の前記パルスを検出する異常パルス検出回路と、
当該異常パルス検出回路から出力される異常検出信号を前記セレクタに前記切替信号として出力するタイミングを前記第1クロックの入力に基づいて制御するタイミング制御回路と、
を備えることを特徴とする請求項11記載のクロック選択回路。
【請求項13】
前記異常パルス検出回路は、
前記第2クロックに含まれるパルスの第1レベルの状態を複数の時点で判定する第1レベル判定回路と、
前記第2クロックに含まれるパルスの第2レベルの状態を複数の時点で判定する第2レベル判定回路と、
を備えることを特徴とする請求項11記載のクロック選択回路。
【請求項14】
前記遅延回路の遅延量は、異常波形の前記パルスの検出から前記セレクタによる前記第2クロックから前記第1クロックへの出力クロックの切替までに要する時間に基づいて設定されることを特徴とする請求項11記載のクロック生成回路。
【請求項15】
前記遅延回路は、直列接続された複数のバッファを含むことを特徴とする請求項14記載のクロック選択回路。
【請求項16】
複数の機能回路に加えて、請求項1記載のクロック生成回路又は請求項11記載のクロック選択回路を備える半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−227936(P2008−227936A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63725(P2007−63725)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】