説明

クロメン化合物

【課題】発色時の色調が中間色を示し、発色濃度が高く、退色速度が速い新規なフォトクロミック化合物を提供する。
【解決手段】インデノ(2,1−f)ナフト(1,2−b)ピラン構造を基本骨格として有し、7位の炭素原子に、ホスフィノ基等の、燐原子を有する置換基を有することを特徴とするクロメン化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトクロミック眼鏡レンズの用のフォトクロミック化合物として有用な新規なクロメン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトクロミズムとは、ある化合物に太陽光あるいは水銀灯の光のような紫外線を含む光を照射すると速やかに色が変わり、光の照射をやめて暗所におくと元の色に戻る可逆作用のことである。この性質を有する化合物はフォトクロミック化合物と呼ばれ、フォトクロミックプラスチックレンズの材料として使用されている。
【0003】
このような用途に使用されるフォトクロミック化合物においては、(I)紫外線を照射する前の可視光領域での着色度(以下、初期着色という。)が小さい、(II)紫外線を照射した時の着色度(以下、発色濃度と言う。)が高い、(III)紫外線を照射し始めてから発色濃度が飽和に達するまでの速度が速い(以下、発色感度が高いともいう。)、(IV)紫外線の照射を止めてから元の状態に戻るまでの速度(以下、退色速度という。)が速い、(V)この可逆作用の繰り返し耐久性がよい、及び(VI)使用されるホスト材料への分散性が高くなるように、硬化後にホスト材料となるモノマー組成物に高濃度に溶解するといった特性が求められている。
【0004】
このような要求を満足し得るフォトクロミック化合物としては、インデノ(2,1−f)ナフト(1,2−b)ピラン構造を基本骨格として有するクロメン化合物が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
フォトクロミック化合物を利用したフォトクロミックプラスチックレンズは、グレー、又はブラウンなどの中間色に発色することが好まれている。このような中間色は、発色時の色調の異なる数種類のフォトクロミック化合物を混合することにより得られている。具体的には、430〜530nmに発色時の極大吸収を有する黄色〜赤色のフォトクロミック化合物(黄色化合物)と、550〜650nmに発色時の極大吸収を有する紫色〜青色のフォトクロミック化合物(青色化合物)とを混合することによって得られている。
【0006】
しかしながら、このような方法で色調調節を行なった場合には、混合された化合物のフォトクロミック物性の違いにより、種々の問題が生じる。例えば、黄色化合物の繰り返し耐久性が青色化合物のそれと比較して低い場合、長期にわたって使用していくと、徐々に発色色調が青色の強い色調へと変化してしまうという問題が発生していた。
【0007】
また、黄色化合物の発色感度と退色速度が青色化合物のそれと比べて低い場合、発色途中の色調は青みが強く、退色途中の色調は黄色みが強い色調となってしまうという等の問題が発生していた。
【0008】
このような問題は、発色時に2つ以上の吸収極大を有し、単一の化合物で中間色に発色する化合物(ダブルピーク化合物)を使用することにより解決できると考えられる。一般的に、黄色化合物の方が、青色化合物よりも耐久性に劣ることが知られている。そのため、ダブルピーク化合物においては、黄色に発色するピーク部分の発色濃度が、青色に発色するピーク部分の発色濃度よりも、より高くなる化合物が望まれている(以下、ダブルピーク化合物において、黄色の発色濃度が高くなる特性をダブルピーク性とする場合もある。)。
【0009】
これまで発色時に2つ以上の吸収極大を有するフォトクロミック化合物(ダブルピーク化合物)は、下記式(A)〜(B)に示すような化合物が知られている。これら化合物は、発色時に2つのピークを有する優れた特性を発揮する化合物である。
【0010】
しかしながら、これら化合物は、以下の点で改善の余地があった。即ち、下記式(A)
【0011】
【化1】

【0012】
で示されるクロメン化合物(特許文献3参照)は、ダブルピーク性は高いものの、退色速度が遅いという問題があった。
【0013】
また、下記式(B)
【0014】
【化2】

【0015】
で示されるクロメン化合物(特許文献4参照)は、430〜530nmの吸収が、550〜650nmの吸収に比べて小さく、ダブルピーク性が低いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第99/15518号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2001/60811号パンフレット
【特許文献3】国際公開第WO01/19813号パンフレット
【特許文献4】国際公開第WO03/044022号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そこで、本発明の目的は、発色色調として中間色を示し、さらに上記した化合物に比べフォトクロミック特性をさらに向上させたクロメン化合物を提供することにある。より詳しくは、発色濃度が高く、退色速度が速いクロメン化合物を提供することにある。
【0018】
さらに、光学物品の基材となるモノマー組成物に高濃度で溶解し得るクロメン化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった。その結果、優れたフォトクロミック特性を与えることが知られているインデノ(2,1−f)ナフト(1,2−b)ピラン構造を基本骨格として有するクロメン化合物において、インデノ(2,1−f)ナフト(1,2−b)ピラン構造の7位に特定の置換基を導入した場合に、その優れたフォトクロミック特性を損なうことなく、中間色に発色するという知見を得、本発明を完成するに至った。
【0020】
即ち、第一の本発明は、下記式(1)で示される骨格を有するクロメン化合物である。
【0021】
【化3】

【0022】
{式中、
は、ホスフィノ基、アルキルホスフィノ基、ハロアルキルホスフィノ基、シクロアルキルホスフィノ基、アリールホスフィノ基、及びヘテロアリールホスフィノ基から選ばれる燐原子を有する置換基であり、
は、Hammett数σが0より小さい電子供与性の置換基である。}
また、第二の本発明は、上記本発明のクロメン化合物と重合性単量体とを含有するフォトクロミック硬化性組成物である。
【0023】
さらに第三の本発明は、その内部に前記本発明のクロメン化合物が分散した高分子成型体を構成部材として有するフォトクロミック光学物品であり、第四の本発明は、少なくとも1つの面の全部又は一部が本発明のクロメン化合物が分散した高分子膜で被覆された光学基材を構成部材として有する光学物品である。
【発明の効果】
【0024】
本発明のクロメン化合物は、発色時の色調が中間色を示し、発色感度が高く、発色濃度が高く、更に溶液中又は高分子固体マトリックス中に分散させても速い退色速度を示す。
【0025】
したがって、例えば、本発明のクロメン化合物を用いてフォトクロミックレンズを作製した場合には、屋外へ出た時にすばやく、濃く中間色に発色して、屋外から室内に戻った時にすばやく退色して元の色調に戻るフォトクロミックレンズを製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のクロメン化合物は、下記式(1)
【0027】
【化4】

【0028】
で示されるインデノ(2,1−f)ナフト(1,2−b)ピラン構造を基本骨格として有する。インデノ(2,1−f)ナフト(1,2−b)ピラン構造を基本骨格として有するクロメン化合物は、優れたフォトクロミック特性を示すことが知られている。本発明は、その基本骨格を有するクロメン化合物の中でも、7位の炭素原子に、特定の置換基を導入することにより、その優れたフォトクロミック特性を維持しつつ、単一化合物で濃く中間色に発色することが可能となる。ここで、特定の置換基とは、ホスフィノ基、アルキルホスフィノ基、ハロアルキルホスフィノ基、シクロアルキルホスフィノ基、アリールホスフィノ基、及びヘテロアリールホスフィノ基から選ばれる燐原子を有する置換基である。このように特定の位置に、上記の特定の置換基を導入したクロメン化合物は、従来は知られていない。以下、ピラン構造の7位に導入された上記置換基を、単に燐原子を有する置換基とする場合もある。次に、この燐原子を有する置換基について説明する。
【0029】
<R
は、ピラン骨格の7位の炭素原子と結合する置換基である。本発明においては、Rは、ホスフィノ基、アルキルホスフィノ基、ハロアルキルホスフィノ基、シクロアルキルホスフィノ基、アリールホスフィノ基、及びヘテロアリールホスフィノ基から選ばれる燐原子を有する置換基でなければならない。
【0030】
前記アルキルホスフィノ基は、特に制限されないが、炭素数1〜6のアルキルホスフィノ基が好ましい。好適なアルキルホスフィノ基を例示すると、メチルホスフィノ基、エチルホスフィノ基、n−プロピルホスフィノ基、イソプロピルホスフィノ基、n−ブチルホスフィノ基、sec−ブチルホスフィノ基、t−ブチルホスフィノ基等を挙げることができる。
【0031】
前記ハロアルキルホスフィノ基は、特に制限されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子で置換された炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。好適なハロアルキルホスフィノ基を例示すると、トリフルオロメチルホスフィノ基、テトラフルオロエチルホスフィノ基、クロロメチルホスフィノ基、2−クロロエチルホスフィノ基、ブロモメチルホスフィノ基等を挙げることができる。
【0032】
前記シクロアルキルホスフィノ基は、特に制限されないが、炭素数3〜8のシクロアルキルホスフィノ基が好ましい。好適なシクロアルキルホスフィノ基を例示すると、シクロプロピルホスフィノ基、シクロブチルホスフィノ基、シクロペンチルホスフィノ基、シクロヘキシルホスフィノ基等を挙げることができる。
前記アリールホスフィノ基は、特に制限されないが、炭素数6〜10のアリールホスフィノ基が好ましい。好適なアリールホスフィノ基を例示すると、フェニルホスフィノ基、1−ナフチルホスフィノ基、2−ナフチルホスフィノ基等を挙げることができる。
【0033】
前記ヘテロアリールホスフィノ基は、特に制限されないが、炭素数4〜12のヘテロアリールホスフィノ基が好ましい。好適なヘテロアリールホスフィノ基を例示すると、チエニルホスフィノ基、フリルホスフィノ基、ピロリニルホスフィノ基、ピリジルホスフィノ基、ベンゾチエニルホスフィノ基、ベンゾフラニルホスフィノ基、ベンゾピロリニルホスフィノ基等を挙げることができる。
【0034】
なお、前記アリールホスフィノ基、及び前記ヘテロアリールホスフィノ基は、その基の1〜9個の水素原子、特に好ましくは1〜4個の水素原子が、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0035】
上記の燐原子を有する置換基において、特に、発色濃度が高く、ダブルピーク性が高いという点で炭素数1〜6のアルキルホスフィノ基、炭素数6〜10のアリールホスフィノ基または炭素数1〜6のハロアルキルホスフィノ基が好ましい。特に好適なものを例示すると、メチルホスフィノ基、エチルホスフィノ基、フェニルホスフィノ基、トリフルオロメチルホスフィノ基等が挙げられる。また、退色速度が速いという点では、炭素数1〜6のハロアルキルホスフィノ基が好ましく、特に好適なものを例示すると、トリフルオロメチルホスフィノ基等が挙げられる。
【0036】
<R
本発明においては、Rは、Hammett数σが0より小さい電子供与性の置換基でなければならない。
【0037】
Hammett数σとは、p−置換安息香酸の解離定数Kaを基準に用いて、π電子系に結合した置換基の電気的効果を定量化したHammett則に基づいて定義されるものである。そして、Hammett数σが0となる置換基は水素原子であり、Hammett数σが0より小さい置換基とは、水素原子よりも電子供与性の高い置換基を指す。
【0038】
Hammett数σが0より小さい電子供与性の置換基であるRとしては、ヒドロキシル基(σ=−0.37)、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基が挙げられる。
【0039】
また、基Rは、アラルキル基、アラルコキシ基、アリール基、アミノ基、または窒素原子を含み該窒素原子がベンゼン環の6位の炭素原子と直接結合する複素環基であってもよく、これら基には、Hammett数σが0より小さい電子供与性の置換基が置換していてもよい。下記に詳述するが、アラルキル基、アラルコキシ基、アリール基、アミノ基、または窒素原子を含み該窒素原子が6位の炭素原子と直接結合する複素環基は、置換基を有さない場合にHammett数σが0より小さい電子供与性の基である。そのため、これら基に、さらにHammett数σが0より小さい電子供与性の置換基が置換した基であれば、Hammett数σが0より小さい基となる。
【0040】
以下、Hammett数σが0より小さい上記電子供与性の置換基について、詳細に説明する。
【0041】
前記アルキル基は、通常、Hammett数σが−0.20以上−0.10以下の基であり、特に、本発明においては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。好適なアルキル基を具体的に例示すると、メチル基(σ=−0.14)、エチル基(σ=−0.13)、n−プロピル基(σ=−0.12)、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基(σ=−0.15)、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基等を挙げることができる。
【0042】
シクロアルキル基は、通常、Hammett数σが0より小さい基であり、特に、本発明においては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましい。好適なシクロアルキル基を具体的に例示すると、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基(σ=−0.16)、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等を挙げることができる。
【0043】
アルコキシ基は、通常、Hammett数σが−0.3以上−0.2以下の基であり、特に、本発明においては、炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましい。好適なアルコキシ基を具体的に例示すると、メトキシ基(σ=−0.28)、エトキシ基(σ=−0.21)、n−プロポキシ基(σ=−0.26)、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等を挙げることができる。
【0044】
アラルキル基は、通常、Hammett数σが0より小さい基であり、特に、本発明においては、炭素数7〜11のアラルキル基が好ましい。好適なアラルキル基を具体的に例示すると、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、ナフチルメチル基等を挙げることができる。また、アラルキル基は、ベンゼン環の1もしくは2以上の水素原子が、Hammett数σが0よりも小さい基、具体的には、上述と同様のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アラルコキシ基で置換されたものであってもよい。置換基を有さないアラルキル基は、Hammett数σが0より小さい基であるため、該アラルキル基にHammett数σが0より小さい基が置換したとしても、Hammett数σが0より小さい基となる。
【0045】
アラルコキシ基は、通常、Hammett数σが−0.6以上−0.4以下の基であり、特に、本発明においては、炭素数7〜11のアラルコキシ基が好ましい。好適なアラルコキシ基を具体的に例示すると、ベンジロキシ基(σ=−0.49)、ナフチルメトキシ基等を挙げることができる。また、アラルコキシ基は、ベンゼン環の1もしくは2以上の水素原子が、Hammett数σが0よりも小さい基、具体的には、上述と同様のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アラルコキシ基で置換されたものであってもよい。これら基で置換されたアラルコキシ基であっても、Hammett数σは0よりも小さくなる。
【0046】
アリール基は、通常、Hammett数σが−0.1以上−0.01以下の基であり、特に、本発明においては、炭素数6〜14のアリール基が好ましい。好適なアリール基を具体的に例示すると、フェニル基(σ=−0.01)、1−ナフチル基(σ=−0.08)等を挙げることができる。また、アリール基は、ベンゼン環の1もしくは2以上の水素原子が、Hammett数σが0よりも小さい基、具体的には、上述と同様のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アラルコキシ基で置換されたものであってもよい。これら基で置換されたアラルコキシ基であっても、Hammett数σは0よりも小さくなる。
【0047】
アミノ基は、通常、Hammett数σが−1.00以上−0.10以下の基である。好適なアミノ基を例示すると、一級アミノ基(σ=−0.66)に限定されず、置換基を有する2級アミノ基や3級アミノ基であってもよい。かかるアミノ基が有する置換基としては、Hammett数σが0よりも小さい基であることが好ましく、アルキル基、またはアリール基が代表的である。これら基で置換されたアミノ基であっても、Hammett数σは0よりも小さくなる。このような置換アミノ基(2級アミノ基或いは3級アミノ基)の好適な例としては、メチルアミノ基(σ=−0.77)、エチルアミノ基等のアルキルアミノ基;ジメチルアミノ基(σ=−0.83)、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;フェニルアミノ基(σ=−0.11)等のアリールアミノ基;ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基;などを挙げることできる。
【0048】
窒素原子を含み該窒素原子が6位の炭素原子と直接結合する複素環基は、通常、Hammett数σが−1.00以上−0.40以下の基である。好適な該複素環基を例示すると、モルホリノ基(σ=−0.50)、ピペリジノ基(σ=−0.83)、ピロリジニル基、ピペラジノ基、N−メチルピペラジノ基、インドリニル基等を挙げることがでる。さらに、該複素環基は、Hammett数σが0よりも小さい基を置換基として有してもよく、具体的な置換基としては、メチル基等のアルキル基を挙げることができる。このような置換基を有しても、Hammett数σは0よりも小さい基となる。置換基を有する複素環基を具体的に例示すれば、2,6−ジメチルモルホリノ基、2,6−ジメチルピペリジノ基、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ基等が挙げられる。
【0049】
上記の置換基において、特に、発色濃度が高く、ダブルピーク性が高いという点で炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数7〜11のアラルコキシ基、アミノ基、または窒素原子を含み該窒素原子が6位の炭素原子と直接結合する複素環基が好ましい。さらに、退色速度の観点からアルコキシ基、および窒素原子を含み該窒素原子が6位の炭素原子と直接結合する複素環基が特に好ましい。具体的に特に好適な置換基を例示すると、メトキシ基、モルホリノ基等を挙げることができる。
【0050】
<好適なクロメン化合物>
本発明のクロメン化合物の中でも、発色時の色調が中間色を示し、発色濃度が高く、退色速度が速という観点から、下記式(2)で示されるクロメン化合物が好適である。
【0051】
【化5】

【0052】
上記式(2)で示されるクロメン化合物の置換基について説明する。
【0053】
<R
本発明の好適なクロメン化合物において、上記式中、Rは、ホスフィノ基、アルキルホスフィノ基、ハロアルキルホスフィノ基、シクロアルキルホスフィノ基、アリールホスフィノ基、又はヘテロアリールホスフィノ基から選ばれる燐原子を有する置換基である。これら基は、上記式(1)で示される骨格を有するクロメン化合物において説明した基と同一の基であり、当然のことながら、好ましい基も同じ基である。
【0054】
<R
本発明の好適なクロメン化合物において、上記式中、Rは、Hammett数σが0より小さい電子供与性の置換基である。これら基は、上記式(1)で示される骨格を有するクロメン化合物において説明した基と同一の基であり、当然のことながら、好ましい基も同じ基である。
【0055】
<R及びR
及びRは、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、窒素原子を含み該窒素原子がベンゼン環の炭素原子と直接結合する複素環基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、アラルキル基、アラルコキシ基、又はアリール基である。
【0056】
前記アルキル基は、特に制限されないが、炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。好適なアルキル基を例示すると、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を挙げることができる。
【0057】
前記ハロアルキル基は、特に制限されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子で置換された炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。好適なハロアルキル基を例示すると、トリフルオロメチル基、テトラフルオロエチル基、クロロメチル基、2−クロロエチル基、ブロモメチル基等を挙げることができる。
【0058】
前記シクロアルキル基は、特に制限されないが、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましい。好適なシクロアルキル基を例示すると、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0059】
前記アルコキシ基は特に制限されないが、炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましい。好適なアルコキシ基を例示すると、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等を挙げることができる。
【0060】
前記アミノ基は、一級アミノ基に限定されず、置換基を有する2級アミノ基や3級アミノ基であってもよい。かかるアミノ基が有する置換基としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のハロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数4〜14のヘテロアリール基等が挙げられる。好適なアミノ基を例示すると、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基等を挙げることできる。
【0061】
前記窒素原子を含み該窒素原子がベンゼン環の炭素原子と直接結合する複素環基は、特に制限されないが、好適なものを例示すると、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジニル基、ピペラジノ基、N−メチルピペラジノ基、インドリニル基等を挙げることができる。
【0062】
前記アルキルカルボニル基は、特に制限されないが、好適なものを例示すると、アセチル基、エチルカルボニル基等を挙げることができる。
【0063】
前記アルコキシカルボニル基は、特に制限されないが、好適なものを例示すると、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0064】
前記ハロゲン原子は特に制限されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
【0065】
前記アラルキル基は、特に制限されないが、炭素数7〜11のアラルキル基が好ましい。好適なアラルキル基を例示すると、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、ナフチルメチル基等を挙げることができる。
【0066】
前記アラルコキシ基は、炭素数7〜11のアラルコキシ基が好ましい。好適なアラルコキシ基を例示すると、ベンジロキシ基、ナフチルメトキシ基等を挙げることができる。
【0067】
前記アリール基は、特に制限されないが、炭素数6〜12のアリール基が好ましい。好適なアリール基を具体的に例示すると、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等を挙げることができる。
【0068】
なお、アラルキル基、及びアリール基は、ベンゼンもしくはナフタレン環は、1〜9個の水素原子、特に好ましくは1〜4個の水素原子が、前記のヒドロキシル基、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、窒素原子を含み該窒素原子がベンゼン環の炭素原子と結合する複素環基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0069】
上記の中でも、Rとしては、高いダブルピーク性が得られるという点で、無置換(水素原子)であるか、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、アミノ基、窒素原子を含み該窒素原子がベンゼン環の炭素原子と直接結合する複素環基が好ましい。特に好適なものを例示すると、水素原子、メチル基、メトキシ基、N,N−ジメチルアミノ基、モルホリノ基等が挙げられる。
【0070】
一方、Rとしては、速い退色速度が得られるという点で、炭素数1〜6のハロアルキル基、シアノ基が好ましい。特に好適なハロアルキル基を例示すると、トリフルオロメチル基、シアノ基等が挙げられる。
【0071】
aは0〜2の整数であり、Rの基の数を指す。aが2である場合、Rは、互いに同一であっても異なる基であってもよい。また、bは0〜4の整数であり、Rの基の数を指す。bが2以上の整数である場合、Rは、互いに同一であっても異なる基であってもよい。なお、複数のR、Rが存在する場合にも、好ましい基は、上記の説明で示した基である。
【0072】
<R及びR
及びRは、互いに独立しており、それぞれ、下記式(3)で示される基、下記式式(4)で示される基、アリール基、ヘテロアリール基、又はアルキル基である。
【0073】
【化6】

【0074】
【化7】

【0075】
前記式(3)中のRは、アリール基又はヘテロアリール基である。ここで、アリール基、又はヘテロアリール基は、R及びRとして既に説明した基と同じものが適用される。
【0076】
また、R10は、水素原子、アルキル基、又はハロゲン原子である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。また上記のハロゲン原子を具体的に例示すると、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を挙げることができる。
【0077】
mは1〜3の整数であるが、原料入手の観点からmは1であるのが好適である。
【0078】
前記式(3)で示される基のうち好適な基を例示すれば、フェニル−エチレニル基、(4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−エテニル基、(4−モルホリノフェニル)−エテニル基、(4−ピペリジノフェニル)−エテニル基、(4−メトキシフェニル)−エテニル基、(2−メトキシフェニル)−エテニル基、フェニル−1−メチルエテニル基、(4−メトキシフェニル)−1−メチルエテニル基、フェニル−1−フルオロエテニル基、(4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−1−フルオロエテニル基、2−チエニル−エテニル基、2−フリル−エテニル基、2−(N−メチル)ピロリニル−エテニル基、2−ベンゾチエニル−エテニル基、2−ベンゾフラニル−エテニル基、2−(N−メチル)インドリル−エテニル基等を挙げることができる。
【0079】
前記式(4)において、R11は、前記Rと同じアリール基、又はヘテロアリール基である。また、nは1〜3の整数であるが、原料入手の容易さの観点からnは1であるのが好適である。
【0080】
前記式(4)で示される基のうち好適な基を例示すれば、フェニル−エチリニル基、(4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−エチニル基、(4−モルホリノフェニル)−エチニル基、(4−ピペリジノフェニル)−エチニル基、(4−メトキシフェニル)−エチニル基、(4−メチルフェニル)−エチニル基、(2−メトキシフェニル)−エチニル基、2−チエニル−エチニル基、2−フリル−エチニル基、2−(N−メチル)ピロリニル−エチニル基、2−ベンゾチエニル−エチル基、2−ベンゾフラニル−エチニル基、2−(N−メチル)インドリル−エチニル基等を挙げることができる。
【0081】
、及びRのアリール基、ヘテロアリール基、又はアルキル基は、R及びRとして既に説明した基と同じ基が適用される。
【0082】
また、R及びRは、互いに結合して脂肪族炭化水素環もしくは芳香族炭化水素環を形成することもできる。
【0083】
脂肪族炭化水素環としては、特に制限はされないが、好適な環を具体的に例示すると、アダマンタン環、ビシクロノナン環、ノルボルナン環等を挙げることができる。
【0084】
また、芳香族炭化水素環としては、特に制限はされないが、好適な環としては、フルオレン環等を挙げることができる。
【0085】
上記R及びRの基において、特に、優れたフォトクロミック特性を発揮するためには、少なくとも一方、好ましくは両方の基が、アリール基、又はヘテロアリール基であることが好ましい。さらに、R及びRの少なくとも一方、好ましくは両方の基が、下記(i)〜(iv)に示される何れかの基であることが特に好ましい。
【0086】
(i)アルキル基もしくはアルコキシ基を置換基として有するアリール基、又はヘテロアリール基、
(ii)アミノ基を置換基として有するアリール基、又はヘテロアリール基、
(iii)窒素原子をヘテロ原子として有し且つ該窒素原子とアリール基、又はヘテロアリール基とが結合する複素環基を置換基として有するアリール基、又はヘテロアリール基、
(iv)前記(iii)における複素環基に、芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基を置換基として有するアリール基、又はヘテロアリール基;
なお、上記(i)〜(iv)におけるアリール基においては、置換基の置換する位置は特に限定されず、その総数も特に限定されるものではない。ただし、優れたフォトクロミック特性を発揮するためには、置換位置は、アリール基がフェニル基であるときは3位又は4位であることが好ましい。また、その際の置換基の数は、1乃至2であることが好ましい。このような好適なアリール基に例示すると、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、4−n−プロポキシフェニル基、4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル基、4−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル基、4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル基、4−モルホリノフェニル基、4−ピペリジノフェニル基、3−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル基、4−(2,6−ジメチルピペリジノ)フェニル基等を挙げることができる。
【0087】
また、前記(i)〜(iv)におけるヘテロアリール基において、置換基が置換する位置は特に限定されず、その総数も特に限定されないが、その数は1であることが好ましい。当該ヘテロアリール基として好適なものを具体的に例示すると、4−メトキシチエニル基、4−(N,N−ジメチルアミノ)チエニル基、4−メチルフリル基、4−(N,N−ジエチルアミノ)フリル基、4−(N,N−ジフェニルアミノ)チエニル基、4−モルホリノピロリニル基、6−ピペリジノベンゾチエニル基、6−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフラニル基等をあげることができる。
【0088】
<R及びR
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、窒素原子を含み該窒素原子が13位の炭素原子と直接結合する複素環基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、アラルキル基、アラルコキシ基、又はアリール基である。
【0089】
上記基において、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、アラルキル基、アラルコキシ基、及びアリール基は、上記R、及びRで説明した基と同様の基が挙げられる。
【0090】
また、上記アルコキシアルキル基は、特に制限されるものではないが、好ましい基として、メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシn−プロピル基、メトキシn−ブチル基、エトキシエチル基、n−プロポキシプロピル基が挙げられる。
【0091】
また、R及びRは、互いに一緒になってピラン構造の13位の炭素原子と共に、
環を構成する炭素数が該13位の炭素原子を含めて3〜20である脂肪族環、
前記脂肪族環に芳香族環もしくは芳香族複素環が縮環した縮合多環、
環を構成する原子数が該13位の炭素原子を含めて3〜20である複素環、又は
前記複素環に芳香族環もしくは芳香族複素環が縮環した縮合多環
を形成する基であってもよい。
【0092】
環を構成する炭素数が該13位の炭素原子を含めて3〜20である脂肪族環としては、例えば、例えばシクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、シクロヘプタン環、ノルボルナン環、ビシクロノナン環、アダマンタン環が挙げられる。
【0093】
また、前記脂肪族環に芳香族環もしくは芳香族複素環が縮環した縮合多環としては、例えばフェナントレン環が挙げられる。
【0094】
環を構成する原子数が該13位の炭素原子を含めて3〜20である複素環としては、例えばチオフェン環、フラン環、ピリジン環が挙げられる。
【0095】
また、前記複素環に芳香族環もしくは芳香族複素環が縮環した縮合多環としては、例えば、フェニルフラン環、ビフェニルチオフェン環が挙げられる。
【0096】
<特に好適なR及びR
本発明において、R及びRは、互いに一緒になってピラン構造の13位の炭素原子と共に環を形成していることが好ましい。中でも、退色速度が速くなるという観点から、特に、前記脂肪族環、又は前記脂肪族環に芳香族環もしくは芳香族複素環が縮環した縮合多環を形成していることが好ましい。その中でも、特に退色速度が速くなる観点からは、前記脂肪族環を形成していることが好ましい。
【0097】
及びRが形成する脂肪族環として、特に好適なものとしては、該脂肪族環が脂肪族炭化水素環であって、該脂肪族炭化水素環は、13位の炭素原子を含めて該環を形成する炭素原子数が3〜20であり、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アラルキル基、アリール基、及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも1種の置換基を有してもよい脂肪族炭化水素環であることが好ましい。なお、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アラルキル基、アリール基、及びハロゲン原子は、R及びRで説明した基と同様の基が挙げられる。
【0098】
より好適な基を例示すると、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、シクロヘプタン環等の単環、ノルボルナン環、ビシクロノナン環等のビシクロ環、及びアダマンタン環等のトリシクロ環を例示することができる。これらは、メチル基等の炭素数4以下の低級アルキル基を置換基として少なくとも1個有していてもよい。
本発明において、R及びRが結合して形成する環として最も好適なものの代表例は、例えば下記式で示される。尚、下記式中、13で示された位置の炭素原子が前記ピラン構造の13位の炭素原子となる。
【0099】
【化8】

【0100】
本発明において特に好適なクロメン化合物を具体的に例示すれば、次のような化合物を挙げることができる。
【0101】
【化9】

【0102】
【化10】

【0103】
【化11】

【0104】
【化12】

【0105】
【化13】

【0106】
(クロメン化合物の同定)
本発明のクロメン化合物は、一般に常温常圧で無色、あるいは淡黄色、淡緑色の固体又は粘稠な液体として存在し、次の(イ)〜(ハ)のような手段で確認できる。
(イ) プロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)を測定することにより、δ:5.0〜9.0ppm付近にアロマティックなプロトン及びアルケンのプロトンに基づくピーク、δ:1.0〜4.0ppm付近にアルキル基及びアルキレン基のプロトンに基づくピークが現れる。また、それぞれのスペクトル強度を相対的に比較することにより、それぞれの結合基のプロトンの個数を知ることができる。
(ロ) 元素分析によって相当する生成物の組成を決定することができる。
(ハ) 13C−核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定することにより、δ:110〜160ppm付近に芳香族炭化水素基の炭素に基づくピーク、δ:80〜140ppm付近にアルケン及びアルキンの炭素に基づくピーク、δ:20〜80ppm付近にアルキル基及びアルキレン基の炭素に基づくピークが現われる。
【0107】
<クロメン化合物の製造>
本発明のクロメン化合物の製造方法は、特に限定されず如何なる合成法によって得てもよい。たとえば、前記式(1)で示されるクロメン化合物は次のような方法で好適に製造することができる。尚、以下の説明において、各式中の符号は、特記しないかぎり、前述した式で説明したとおりの意味を示す。
すなわち、下記式(5):
【0108】
【化14】

【0109】
で示されるナフトール誘導体と、下記式(6):
【0110】
【化15】

【0111】
で示されるプロパルギルアルコール誘導体とを、酸触媒存在下で反応させる方法により好適に製造することができる。ナフトール誘導体とプロパルギルアルコール誘導体との反応比率は、広い範囲から採用されるが、一般には1:10〜10:1(モル比)の範囲から選択される。また、酸触媒としては硫酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酸性アルミナ等が用いられ、ナフトール誘導体とプロパルギルアルコール誘導体との総和100重量部当り0.1〜10重量部の範囲で用いられる。反応温度は、通常、0乃至200℃が好ましく、溶媒としては、非プロトン性有機溶媒、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン等が使用される。かかる反応により得られた生成物の精製方法としては特に限定されない。例えば、シリカゲルカラム精製を行い、さらに再結晶により、生成物の精製を行なうことができる。
尚、前記式(5)で示されるナフトール誘導体の合成法は、特に限定されないが、例えば、以下のようにして合成することができる。
先ず、下記式(7):
【0112】
【化16】

【0113】
で示されるカルボン酸誘導体を、Curtius転位、Hofmann転位、Lossen転位等の方法によりカルボン酸をアミンに変換し、これからジアゾニウム塩を調製する。このジアゾニウム塩を、Sandmeyer反応等によりブロマイドに変換し、得られたブロマイドをマグネシウムやリチウム等と反応させ有機金属試薬を調製する。この有機金属試薬を、下記式(8):
【0114】
【化17】

【0115】
で示されるケトンと、−80〜70℃、10分〜4時間、有機溶媒中で反応させ、下記式(9):
【0116】
【化18】

【0117】
で示されるアルコール体を得る。このアルコール体を中性〜酸性条件下で、10〜120℃で10分〜2時間反応させ、アルコールをスピロ化することにより、目的とするナフトール誘導体を合成することができる。かかる反応において、前記有機金属試薬と前記式(8)で示されるケトンとの反応比率は、広い範囲から採用されるが、一般には1:10〜10:1(モル比)の範囲から選択される。反応温度は、通常−80〜70℃が好ましく、溶媒としては、非プロトン性有機溶媒、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン等が使用される。また、アルコール体の中性〜酸性条件下でのスピロ化は、酢酸、塩酸、硫酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酸性アルミナ等の酸触媒を用いて行うことが好ましく、このような酸触媒は、アルコール体100重量部当り0.1〜10重量部の範囲で用いるのが好適である。スピロ化に際しては、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン等の溶媒が使用される。
また、前記一般式(6)で示されるプロパルギルアルコール誘導体は、種々の方法で合成することができるが、例えば、前記一般式(6)に対応するケトン誘導体とリチウムアセチリド等の金属アセチレン化合物と反応させることにより、容易に合成できる。
以上のようにして合成される本発明のクロメン化合物は、トルエン、クロロホルム、テトラヒドロフラン等の一般の有機溶媒によく溶ける。このような溶媒に前記式(1)で示されるクロメン化合物を溶かしたとき、一般に溶液はほぼ無色透明であり、太陽光あるいは紫外線を照射すると速やかに発色し、光を遮断すると可逆的に速やかに元の無色にもどる良好なフォトクロミック作用を呈する。
【0118】
(クロメン化合物の用途)
また、本発明のクロメン化合物は、高分子固体マトリックス中でも同様なフォトクロミック特性を示す。かかる対象となる高分子固体マトリックスとしては、本発明のクロメン化合物が均一に分散するものであればよく、光学的に好ましくは、例えばポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
さらに、ラジカル重合性多官能単量体を重合してなる熱硬化性樹脂も上記高分子マトリックスとして用いることができる。このようなラジカル重合性多官能単量体としては、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン等の多価アクリル酸及び多価メタクリル酸エステル化合物;ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、酒石酸ジアリル、エポキシこはく酸ジアリル、ジアリルフマレート、クロレンド酸ジアリル、ヘキサフタル酸ジアリル、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート、トリメチロールプロパントリアリルカーボネート等の多価アリル化合物;1,2−ビス(メタクリロイルチオ)エタン、ビス(2−アクリロイルチオエチル)エーテル、1,4−ビス(メタクリロイルチオメチル)ベンゼン等の多価チオアクリル酸及び多価チオメタクリル酸エステル化合物;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレート、ビスフェノールA−モノグリシジルエーテル−メタクリレート、4−グリシジルオキシメタクリレート、3−(グリシジル−2−オキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−(グリシジルオキシ−1−イソプロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−グリシジルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート等のアクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物;ジビニルベンゼン等を例示することができる。
また、上述したラジカル重合性多官能単量体を、ラジカル重合性単官能単量体と共重合させた共重合体も、前記高分子マトリックスとして使用することができる。このようなラジカル重合性単官能単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアクリル酸及びメタクリル酸エステル化合物;フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物;メチルチオアクリレート、ベンジルチオアクリレート、ベンジルチオメタクリレート等のチオアクリル酸及びチオメタクリル酸エステル化合物;スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−メチルスチレンダイマー、ブロモスチレン等のビニル化合物等が挙げられる。
本発明のクロメン化合物を上記高分子固体マトリックス中へ分散させる方法としては特に制限はなく、一般的な手法を用いることができる。例えば、上記熱可塑性樹脂とクロメン化合物を溶融状態にて混練し、樹脂中に分散させる方法、又は上記重合性単量体にクロメン化合物を溶解させた後、重合触媒を加え熱又は光にて重合させ樹脂中に分散させる方法、あるいは上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の表面にクロメン化合物を染色することにより樹脂中に分散させる方法等を挙げることができる。
本発明のクロメン化合物はフォトクロミック材として広範囲に利用でき、例えば、銀塩感光材に代る各種の記憶材料、複写材料、印刷用感光体、陰極線管用記憶材料、レーザー用感光材料、ホログラフィー用感光材料などの種々の記憶材料として利用できる。その他、本発明のクロメン化合物を用いたフォトクロミック材は、フォトクロミックレンズ材料、光学フィルター材料、ディスプレイ材料、光量計、装飾などの材料としても利用できる。
例えば、フォトクロミックレンズに使用する場合には、均一な調光性能が得られる方法であれば特に制限がなく、具体的に例示するならば、本発明のフォトクロミック材を均一に分散してなるポリマーフィルムをレンズ中にサンドウイッチする方法、あるいは、本発明のクロメン化合物を前記の重合性単量体中に分散させ、所定の手法により重合する方法、あるいは、この化合物を例えばシリコーンオイル中に溶解して150〜200℃で10〜60分かけてレンズ表面に含浸させ、さらにその表面を硬化性物質で被覆し、フォトクロミックレンズにする方法などがある。さらに、上記ポリマーフィルムをレンズ表面に塗布し、その表面を硬化性物質で被覆し、フォトクロミックレンズにする方法などもある。
更に本発明のクロメン化合物を含有する重合硬化性組成物からなるコーティング剤をレンズ基材の表面に塗布し、塗膜を硬化させてもよい。このとき、レンズ基材には予めアルカリ性溶液による表面処理あるいはプラズマ処理等の表面処理を施してもよく、更に(これら表面処理と併せて又はこれら表面処理を行なわずに)基材とコート膜との密着性を向上させるためにプライマーを施用することもできる。
【実施例】
【0119】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0120】
実施例1
下記のナフトール誘導体
【0121】
【化19】

【0122】
1.09g(2.3mmol)と、下記のプロパルギルアルコール誘導体
【0123】
【化20】

【0124】
0.80g(3.0mmol)とをトルエン70mlに溶解し、さらにp−トルエンスルホン酸を0.022g加えて加熱還流下、1時間攪拌した。反応後、溶媒を除去し、シリカゲル上でのクロマトグラフィーにより精製することにより、白色粉末状の生成物1.27gを得た。収率は76%であった。
【0125】
この生成物の元素分析値は、C79.43%、H7.45%、O8.77%、P4.35であり、C4853ОPの計算値であるC79.53%、H7.37%、O8.83%、P4.27%に極めてよく一致した。
【0126】
また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、1.0〜3.0ppm付近にテトラメチルシクロヘキサン環のメチル、メチレンプロトン及びエチルホスフィノ基のメチルプロトンに基づく24Hのピーク、δ2.3〜4.5ppm付近にエチルホスフィノ基のメチレンプロトン及びメトキシ基のメチルプロトンに基づく13Hのピーク、δ5.6〜9.0ppm付近にアロマティックなプロトン及びアルケンのプロトンに基づく16Hのピークを示した。
【0127】
さらに13C−核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、δ110〜160ppm付近に芳香環の炭素に基づくピーク、δ80〜140ppm付近にアルケンの炭素に基づくピーク、δ20〜60ppmにアルキルの炭素に基づくピークを示した。
【0128】
上記の結果から単離生成物は、下記構造式で示される化合物であることを確認した。
【0129】
【化21】

【0130】
実施例2〜3
実施例1と同様にして表1(実施例2、及び3)に示したクロメン化合物を合成した。得られた生成物について、実施例1と同様な構造確認の手段を用いて構造解析した結果、表1に示す構造式で示される化合物であることを確認した。また、表2にこれらの化合物の元素分析値、各化合物の構造式から求めた計算値及び1H−NMRスペクトルの特徴的なスペクトルを示した。
【0131】
【表1】

【0132】
【表2】

【0133】
実施例4〜6
(コーティング法により作製したフォトクロミックプラスチックレンズの物性評価)
上記実施例で得られたクロメン化合物を光重合開始剤、および重合性単量体と混合後、レンズ基材表面に塗布し、さらに紫外線を照射して、レンズ基材表面の塗膜を重合した。
【0134】
フォトクロミック硬化性組成物としては、ラジカル重合性単量体として2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン/ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量532)/トリメチロールプロパントリメタクリレート/ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート(ダイセルユーシービー(株)製、EB−1830)/グリシジルメタクリレートをそれぞれ50質量部/10質量部/10質量部/10質量部/10質量部の配合割合で配合したものを使用した。このラジカル重合性単量体の混合物90質量部に対して、実施例1で得られたクロメン化合物1質量部を添加し十分に混合した後に、光重合開始剤であるCGI1800{1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイドの混合物(重量比3:1)}を0.3質量部、安定剤であるビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートを5質量部、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]を3質量部、シランカップリング剤であるγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを7質量部、およびN−メチルジエタノールアミンを3質量部添加して十分に混合し、フォトクロミック硬化性組成物とした。
【0135】
続いて、前記方法で得られたフォトクロミック硬化性組成物約2gをMIKASA製スピンコーター1H−DX2を用いて、レンズ基材(CR39:アリル樹脂プラスチックレンズ;屈折率=1.50)の表面にスピンコートした。この表面がコートされたレンズを窒素ガス雰囲気中で出力120mW/cmのメタルハライドランプを用いて、3分間照射し、硬化させた(クロメン化合物が分散した高分子膜で被覆された光学物品(フォトクロミックプラスチックレンズ)を作製した。(高分子膜の厚さ:40μm)。
【0136】
得られたフォトクロミックプラスチックレンズについて、下記フォトクロミック特性を評価した。実施例1のクロメン化合物を使用した下記の結果を表4にまとめた。
【0137】
[1] 極大吸収波長(λmax): (株)大塚電子工業(株)製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディテクターMCPD3000)により求めた発色後の極大吸収波長である。該極大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
【0138】
[2] 発色濃度(A): 前記極大吸収波長における、120秒間光照射した後の吸光度{ε(120)}と前記ε(0)との差。この値が高いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
【0139】
[3] ダブルピーク性(A/A):黄色発色部分(420nm〜500nm)の発色濃度(A:λmaxの値)と青色発色部分(530nm〜600nm)の発色濃度(A:λmaxの値)との比。この値が高いほどダブルピーク性が高いといえる。
【0140】
[4] 退色半減期〔τ1/2(sec.)〕: 120秒間光照射後、光の照射を止めたときに、試料の前記極大吸収波長における吸光度が{ε(120)−ε(0)}の1/2まで低下するのに要する時間。この時間が短いほど退色速度が速い。
【0141】
また、クロメン化合物として実施例2乃至3で得られた化合物を用いた以外は、上記と同様にしてフォトクロミックプラスチックレンズを得、その特性を評価した。その結果をまとめて表3に示す。なお、表3において、化合物No.は、実施例No.に相当する(例えば、表3において、実施例1のクロメン化合物は、化合物No.1に相当する。)。
【0142】
【表3】

【0143】
比較例1〜2
比較のために、下記式(A)、(B)で示される化合物を用い実施例と同様にしてフォトクロミックプラスチックレンズを得、その特性を評価した。その結果を表4に示す。
【0144】
【化22】

【0145】
【化23】

【0146】
【表4】

【0147】
本発明のクロメン化合物を用いた実施例4〜6におけるフォトクロミックプラスチックレンズは、比較例1(前記式(A)で示されるクロメン化合物)、及び比較例2(前記式(B)で示されるクロメン化合物)のフォトクロミックプラスチックレンズに比べ、高いダブルピーク性を有しつつ、発色濃度及び退色速度の全てにおいて優れた性能を有していることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される骨格を有するクロメン化合物。
【化1】

{式中、
は、ホスフィノ基、アルキルホスフィノ基、ハロアルキルホスフィノ基、シクロアルキルホスフィノ基、アリールホスフィノ基、及びヘテロアリールホスフィノ基から選ばれる燐原子を有する置換基であり、
は、Hammett数σが0より小さい電子供与性の置換基である。}
【請求項2】
下記式(2)で示される請求項1に記載のクロメン化合物。
【化2】

〔式中、
及びRは、それぞれ前記式(1)におけるものと同義であり、
及びRは、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、窒素原子を含み該窒素原子がベンゼン環の炭素原子と直接結合する複素環基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、アラルキル基、アラルコキシ基、又はアリール基であり、
及びRは、それぞれ独立に、下記式(3)
【化3】

(式中、
は、アリール基、又はヘテロアリール基であり、
10は、水素原子、アルキル基、又はハロゲン原子であり、
mは、1〜3の整数である。)で示される基、下記式(4)
【化4】

(式中、
11は、アリール基、又はヘテロアリール基であり、
nは、1〜3の整数である。)で示される基、アリール基、ヘテロアリール基、又はアルキル基であり、
また、R及びRは、互いに結合して脂肪族炭化水素環、又は芳香族炭化水素環を構成する基であってもよく、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、窒素原子を含み該窒素原子が13位の炭素原子と直接結合する複素環基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、アラルキル基、アラルコキシ基、又はアリール基であり、
また、R及びRは、互いに一緒になってピラン構造の13位の炭素原子と共に、
環を構成する炭素数が該13位の炭素原子を含めて3〜20である脂肪族環、前記脂肪族環に芳香族環もしくは芳香族複素環が縮環した縮合多環、環を構成する原子数が該13位の炭素原子を含めて3〜20である複素環、又は前記複素環に芳香族環もしくは芳香族複素環が縮環した縮合多環を形成する基であってもよく、
aは、0〜2の整数であり、
bは、0〜4の整数であり、
aが2である場合には、Rは、互いに同一でも異なる基であってもよく、
bが2以上である場合には、Rは、互いに同一でも異なる基であってもよい。〕
【請求項3】
請求項2に記載のクロメン化合物において、RとRとが一緒になってピラン構造の13位の炭素原子と共に脂肪族炭化水素環を形成し、該脂肪族炭化水素環は、13位の炭素原子を含めて該環を形成する炭素原子数が3〜20であり、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アラルキル基、アリール基、及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも1種の置換基を有してもよい脂肪族炭化水素環であることを特徴とするクロメン化合物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のクロメン化合物と重合性単量体とを含有するフォトクロミック硬化性組成物。
【請求項5】
その内部に請求項1〜3の何れかに記載のクロメン化合物が分散した高分子成型体を構成部材として有するフォトクロミック光学物品。
【請求項6】
少なくとも1つの面の全部又は一部が請求項1〜3の何れかに記載のクロメン化合物が分散した高分子膜で被覆された光学基材を構成部材として有する光学物品。

【公開番号】特開2011−57581(P2011−57581A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206667(P2009−206667)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】