説明

クローラ式運搬車

【課題】荷物を載置する荷台部と手持ち式ハンドルを設けた機体フレームの下方に、駆動スプロケットとアイドラにクローラを巻き掛けたクローラ走行装置を備える歩行型クローラ式運搬車において、運搬走行中の横転を防ぐ適切な接地手段を設ける。
【解決手段】クローラ走行装置18を、駆動スプロケット15の駆動軸19を軸心に上下揺動自在に支持したクローラ式運搬車において、前記駆動スプロケット15の駆動軸19の両側方近傍に、クローラ式運搬車本体14の横転を防止すべく左右取付位置と取付高さとを調節できる着脱可能な接地手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端軌道輪(クローラ走行装置)を備えるクローラ式運搬車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷物を載置する荷台部と、手持ち式のハンドル部を設けた本体(機体)フレームを備える歩行型クローラ式運搬車の本体の下方に、クローラ走行装置を、該クローラ走行装置の後輪の車軸を軸心に所定の範囲で上下揺動自在に支持すると共に、後輪の車軸を荷台部の前後方向の略中央直下に、また前輪を本体前端の略直下に設けることによって、当該運搬車が凹凸の大きい不整地を走行する際、オペレータが荷台部の水平を容易に維持しながら運転走行できるようにしたものを本出願人自ら出願している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−237869号公報(第4−6頁、図1−図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した特許文献1の歩行型クローラ式運搬車では、荷台部に載置した荷物の左右バランスが極端に悪い場合や、運搬走行中に荷台部に載置した荷物が荷崩れを起こして重心が移動した場合は、歩行型クローラ式運搬車の本体が左右一側に大きく傾倒し、オペレータが手持ち式のハンドル部でこの傾倒状態を支えきれずに本体が横転する虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、荷物を載置する荷台部を前側に、手持ち式ハンドルを後側に設けた機体フレームを備える本体の下方に、駆動スプロケットとアイドラにクローラを巻き掛けたクローラ走行装置を、該クローラ走行装置の左右方向の中心と、本体の左右方向の中心が一致するように設け、且つ前記駆動スプロケットの駆動軸を荷台部の前後方向の略中央直下に、またアイドラを本体前端の略直下に設けると共に、当該クローラ走行装置を、駆動スプロケットの駆動軸を軸心に上下揺動自在に支持したクローラ式運搬車において、前記駆動スプロケットの駆動軸の両側方近傍に、本体の横転を防止するための接地手段を設けたことを第1の特徴としている。
【0005】
そして、接地手段が、左右取付位置と取付高さとを調節できる着脱可能な回転車輪または橇体であることを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明のクローラ式運搬車は、荷物を載置する荷台部を前側に、手持ち式ハンドルを後側に設けた機体フレームを備える本体の下方に、駆動スプロケットとアイドラにクローラを巻き掛けたクローラ走行装置を、該クローラ走行装置の左右方向の中心と、本体の左右方向の中心が一致するように設け、且つ前記駆動スプロケットの駆動軸を荷台部の前後方向の略中央直下に、またアイドラを本体前端の略直下に設けると共に、当該クローラ走行装置を、駆動スプロケットの駆動軸を軸心に上下揺動自在に支持しているので、凹凸の大きい不整地を走行する際、その凹凸に対応してクローラ走行装置は、その駆動スプロケットの駆動軸を軸心に上下揺動し、この時、オペレータは手持ち式ハンドルを把持して荷台部の水平を調節維持しながら運転走行することができるようになっているが、請求項1の発明の如く、前記駆動スプロケットの駆動軸の両側方近傍に、本体の横転を防止するための接地手段を設けたことにより、オペレータが手持ち式ハンドルを介して荷台部の水平を調節する際における前記接地手段の接地高さの変動を極力少なくすることが可能であり、それによって、荷台部に載置した荷物の左右バランスが極端に悪い場合や、運搬走行中に荷台部に載置した荷物が荷崩れを起こして重心が移動し、クローラ式運搬車が左右一側に傾倒しそうになっても、当該接地手段が速やかに接地してクローラ式運搬車が横転することを回避できるようになる。
【0007】
そして、請求項2の発明によれば、接地手段が、左右取付位置と取付高さとを調節できる着脱可能な回転車輪または橇体であることによって、クローラ式運搬車を走行させようとする路面幅や、凹凸の大きい不整地状の地面、及び泥濘を有する地面や雪上にも順応させての当該クローラ式運搬車の走行が可能になる。
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、クローラ式運搬車の側面図、図2は、説明の便宜上一部を省略したクローラ式運搬車の背面図であって、クローラ式運搬車は、荷物を載置する荷台部11を前側に、左右一対の手持ち式ハンドル12,12を後側に設けた機体フレーム13を備える本体14の下方に、駆動スプロケット15とアイドラ16にクローラ17を巻き掛けたクローラ走行装置18を配置している。
【0009】
そして、クローラ走行装置18を、このクローラ走行装置18の左右方向の中心と、本体14の左右方向の中心が一致するように設け、且つ駆動スプロケット15の駆動軸19を荷台部11の前後方向の略中央直下に、またアイドラ16を本体14前端の略直下に位置するように設けている。
【0010】
更に、クローラ走行装置18は、駆動スプロケット15の駆動軸19を軸心として上下揺動自在に支持してあり、クローラ式運搬車のオペレータは、手持ち式ハンドル12,12を把持して荷台部11を略水平に調節維持しながら、当該クローラ走行装置18を駆動してクローラ式運搬車を走行させることにより、荷台部11に載せた荷物の運搬を行うことができるようになっている。
【0011】
また、図3は、機体フレーム13、及び詳細は後述する回転車輪(補助車輪)34の取付構成を明確にすべく、クローラ走行装置18を省略したクローラ式運搬車の斜視図であって、荷台部11は、角パイプからなる外枠21と、その内側に固設した左右一対の縦ステー22,22と、複数の横ステー23,・・・により格子状に形成している。
【0012】
そして、上述した左右一対の縦ステー22,22には、クローラ走行装置18を支持す
る下部フレーム24,24を下方に向けて突設している。この下部フレーム24,24は、側面視で略U字状に形成すると共に、本体14、即ち機体フレーム13の左右方向の中心を対称軸として左右対称に配置している。更に下部フレーム24,24の後側下部には、支持プレート24a,24aが固設してあり、この支持プレート24a,24aに螺設するベアリングホルダ25,25を介して、前記駆動スプロケット15の駆動軸19を支承している。
【0013】
また、左右一対の手持ち式ハンドル12,12は、荷台部11の外枠21の後端部に、この外枠21に固設した略三角形のプレート26を介して強固に固設してある。更に詳しくは、手持ち式ハンドル12,12は、全体として側面視で略へ字状に形成されており、その長辺12aを荷台部11に対して後高状に延出させた状態で固設することにより、両ハンドル12,12の把持部側を構成すると共に、その単辺12bは、下方に突出したスタンドを構成している。
【0014】
そして、荷台部11の後側下方には、ブラケット27を介して減速機28に連結する遠心クラッチを備えた走行用の原動機であるエンジン29を搭載(螺設)している。そして、エンジン29の動力は、減速機28、変速装置31、及びチェン伝動機構32を経て駆動スプロケット15の駆動軸19に伝達されるようになっている。即ち、図2に示すように、駆動軸19の左側軸端に設けた図示しない従動スプロケットに、変速装置31の出力軸に設けた駆動スプロケットからチェン33(図1参照)を介して動力が伝達される。
【0015】
また、上述したクローラ走行装置18を構成する駆動スプロケット15の駆動軸19の両側方近傍には、クローラ式運搬車本体14の横転を防止するための接地手段を設けている。図1〜図3には、接地手段の第一実施例として、回転車輪34を駆動スプロケット15の駆動軸19の両側方近傍に装着した状態を例示している。
【0016】
この回転車輪34は、クローラ走行装置18の駆動スプロケット15の駆動軸19を支承する下部フレーム24,24に、ブラケット35を介して螺設できるようになっている。このブラケット35は、図4に示すように、側面視で略へ字状に曲げ形成した丸パイプ36の両端部に、下部フレーム24への螺設部材37,38を固設すると共に、当該丸パイプ36の略中間部において、その両側に固設した左右一対のプレート39,39にクローラ式運搬車本体14の側方に向く連結ピン41を突設している。
【0017】
そして、この連結ピン41に嵌装可能なボス42を固設した上下調節プレート43に、回転車輪34を回転自由に支承する車軸を備えた支持プレート44を螺設できるように構成している。前記連結ピン41には、上下調節プレート43のボス42を嵌装した状態で、クレビスピン45とスナップピン46を用いて、当該上下調節プレート43を取り付けることができるピン孔41aを所定の間隔で複数個所(本実施例では、2箇所)設けている。したがって、回転車輪34の左右取付位置を、図2に実線と二点鎖線で示すように調節可能である。また、上下調節プレート43には、回転車輪34の取付高さを調節できるように左右一対の調節孔43aを上下複数段に穿設してあって、図2において、左右逆に例示するような回転車輪34の取付高さ調節が可能である。
【0018】
更に詳しくは、上述した回転車輪34を、クローラ走行装置18の駆動スプロケット15の駆動軸19を支承する下部フレーム24,24にブラケット35を介して螺設した状態では、当該回転車輪34は、駆動スプロケット15の駆動軸19の両側方近傍に配設されるようになっている。
【0019】
即ち、本発明のクローラ式運搬車では、凹凸の大きい不整地を走行する際、その凹凸に対応してクローラ走行装置18は、その駆動スプロケット15の駆動軸19を軸心に上下揺動し、この時、オペレータは手持ち式ハンドル12,12を把持して荷台部11の水平を調節維持しながら運転走行することができるようになっているが、駆動スプロケット15の駆動軸19にクローラ式運搬車本体14の横転を防止するための回転車輪34を設けたことにより、オペレータによる手持ち式ハンドル12,12を介しての荷台部11の水平調節による回転車輪34の接地高さの変動を極力少なくすることが可能であり、それによって、荷台部11に載置した荷物の左右バランスが極端に悪い場合や、運搬走行中に荷台部11に載置した荷物が荷崩れを起こして重心が移動し、クローラ式運搬車本体14が左右一側に傾倒しそうになっても、当該回転車輪34が速やかに接地してクローラ式運搬車本体14が横転することを回避できるようになる。
【0020】
また、図5に示すものは、クローラ式運搬車本体14の横転を防止するために設ける接地手段の第二実施例であって、この第二実施例では、上述の回転車輪34を装着する際に用いたブラケット35と上下調節プレート43を利用して、この上下調節プレート43に、接地手段としての橇体51を回転自由に支承する支持ピン52を固設した支持プレート53を螺設できるように構成している。したがって、接地手段である橇体51は、上述した回転車輪34と同様に、その左右取付位置と取付高さとを調節することができる。
【0021】
即ち、本発明のクローラ式運搬車は、本体14の横転を防止するために設ける接地手段
が、左右取付位置と取付高さとを調節できる着脱可能な回転車輪34または橇体51であり、それによって、クローラ式運搬車を走行させようとする路面幅や、凹凸の大きい不整地状の地面、及び泥濘を有する地面や雪上にも順応させての当該クローラ式運搬車の走行が可能になる。
【0022】
ところで、本発明のクローラ式運搬車は、温室や鶏舎等の室内で運搬作業を行なう場合は、排ガスによる環境面への影響がない直流モータM(図6参照)を走行用の原動機として採用することが好ましい。その場合、詳細は省略するが、エンジン29を螺設した上述のブラケット27に直流モータMを装着すると共に、当該ブラケット27にバッテリを搭載可能な受け台をセットすればよい。
【0023】
しかしながら、上述の如く直流モータMを走行用の原動機として採用し、荷台部11に荷物を載置して機体の総重量が増加した状態で約10°以上の下り坂を下り走行しようとすると、機体の総重量の増加分に比例して走行速度が速くなるので、オペレータは手持ち式ハンドルを強く持って自らブレーキを掛けながらの下り走行を強いられる。
【0024】
そこで、図示しない起動スイッチをOFF状態からON操作することにより、図6の概略回路図に示すように、電磁接触器61を励磁させて直流モータMを起動させる一方、前記起動スイッチをON状態からOFF操作することにより、電磁接触器61の励磁を解除して直流モータMを停止させた時、当該直流モータMを短絡させるNC(Normally−Closed)接点62を電磁接触器61と並列的に設けることによって、下り坂を下り走行する際には、当該直流モータMを発電ブレーキとして作用させるように構成してもよい。
【0025】
即ち、下り坂を下り走行する際は、直流モータMへの通電を止めてクローラ走行装置18の駆動を停止し、このクローラ走行装置18の駆動スプロケット15の回転を逆に直流モータMに入力することによって、当該直流モータMを発電機として作動させる。この時、直流モータMの発生電力を図示しない抵抗器に通電して発熱消費させ、それにより直流モータMに回転抵抗を生じさせてブレーキ制動力を得ることができるので、下り坂における安全な下り走行が可能になる。
【0026】
また、上述した発電ブレーキのような電気的なブレーキによらず、機械的なブレーキを設けることも可能である。例えば、図7に示すように、直流モータMの動力は、その出力軸65にカップリング66を介して連結する変速装置31の入力軸67に伝達され、次いで変速装置31の出力軸68端部の二面取加工部68aに嵌装するボス69に固設したスプロケット70から、チェン33を介してクローラ走行装置18の駆動スプロケット15(駆動軸19)に伝達されるようになっている。
【0027】
そこで、変速装置31の出力軸68の二面取加工部68aを、図示するようにスプロケット70よりも大きく外側に突出させると共に、出力軸68の二面取加工部68aに嵌装してボス69の外側端に当接するボス72にブレーキドラム73を固設する一方、このブレーキドラム73に圧接して制動をかけるブレーキシュー74を外側カバー75に支承している。更に詳しくは、外側カバー75は、変速装置31の外側に固設したブラケット76に、泥水侵入防止カバー77を介して螺設してある。
【0028】
即ち、この泥水侵入防止カバー77は、図8に示す平面図の如く略円盤状の外形形状を有する薄板からなり、その中央にボス72に外嵌可能な孔77aを設けると共に、外周のフランジ部に相当する部分に螺設用の複数の孔77bを穿設している。尚、泥水侵入防止カバー77を上述したように螺設した状態で、その下部から水抜きすることができる切欠き77cも設けてあり、チェン33側からブレーキハウジング78内に水が浸入した場合でもブレーキ性能が低下しないように配慮している。
【0029】
更に、外側カバー75には、ブレーキシュー74を揺動させる操作アーム79が支承してあり、手持ち式ハンドル12,12の把持部近傍に図示しないブレーキレバーを設けることによって、このブレーキレバーに連係するワイヤを介して操作アーム79を回動させることができる機械的なブレーキ機構を構成することが可能である。
【0030】
尚、上述したブレーキレバーにロック機構を介装することによって、機械的なブレーキを駐車ブレーキとして作用させることもでき、また電気的なブレーキと併用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】クローラ式運搬車の側面図。
【図2】クローラ式運搬車の一部省略背面図。
【図3】クローラ式運搬車の一部省略斜視図。
【図4】回転車輪の取付構成を示す斜視図。
【図5】橇体の取付構成を示す斜視図。
【図6】発電ブレーキの構成を示す回路図。
【図7】機械的なブレーキの構成を示す一部破断背面図。
【図8】泥水侵入防止カバーの平面図。
【符号の説明】
【0032】
11 荷台部
12 手持ち式ハンドル
13 機体フレーム
14 本体(クローラ式運搬車)
15 駆動スプロケット
16 アイドラ
17 クローラ
18 クローラ走行装置
19 駆動軸
34 回転車輪
51 橇体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を載置する荷台部(11)を前側に、手持ち式ハンドル(12,12)を後側に設けた機体フレーム(13)を備える本体(14)の下方に、駆動スプロケット(15)とアイドラ(16)にクローラ(17)を巻き掛けたクローラ走行装置(18)を、該クローラ走行装置(18)の左右方向の中心と、本体(14)の左右方向の中心が一致するように設け、且つ前記駆動スプロケット(15)の駆動軸(19)を荷台部(11)の前後方向の略中央直下に、またアイドラ(16)を本体(14)前端の略直下に設けると共に、当該クローラ走行装置(18)を、駆動スプロケット(15)の駆動軸(19)を軸心に上下揺動自在に支持したクローラ式運搬車において、前記駆動スプロケット(15)の駆動軸(19)の両側方近傍に、本体(14)の横転を防止するための接地手段を設けたことを特徴とするクローラ式運搬車。
【請求項2】
接地手段が、左右取付位置と取付高さとを調節できる着脱可能な回転車輪(34)または橇体(51)である請求項1に記載のクローラ式運搬車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−283915(P2007−283915A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113936(P2006−113936)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000236090)菱農エンジニアリング株式会社 (2)
【Fターム(参考)】