説明

クーラント液の処理装置

【課題】クーラント槽の底部に金属粉、ゴミ等が溜まりにくく、クーラント液が劣化にくいクーラント液の処理装置を提供する。
【解決手段】円筒状のタンク本体の下部を逆円錐状に形成したクーラント槽10の内側を、断面円形の筒体12で仕切り、加工装置11から排出されるクーラント液が流入するよう流通路15を設け、筒体12の下部に吸込み口16を透設し、浸漬ポンプ18を設けて、加工装置11から排出されるクーラント液と筒体12の外側のクーラント液とを混合することによって混合槽28として構成し、この混合槽28から前記クーラント層10の外部に設けられた分離装置30に混合されたクーラント液を送るよう流通路17を設け、分離装置30で処理されたクーラント液を前記クーラント槽10に横方向から送ってクーラント槽10内で浸漬ポンプ18と同じ方向に渦巻き状態になるよう流通路21を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工作機械等の加工装置で使用されたクーラント液の処理装置に関するもので、外部に設けられた分離装置で処理されたクーラント液を再度渦流によって分離して、洗浄度の高いクーラント液を加工装置で再利用する処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、日本での金属加工にはクーラント液として水溶性加工液が発火の危険性の無い事、水で希釈する為に安価である事から多く使用されている。水溶性加工液の問題点として腐敗が起こり、この腐敗の多くの原因は加工液に混入する加工金属粉、砥石粉等と機械油をバクテリアが食する事によりバクテリアが繁殖、腐敗するので、この原因となるゴミ、油を除去する必要がある。
【0003】
上記の問題を解決するために、クーラント液を渦流によって浄化して再度工作機械等の加工装置で使用することに関して例えば特開2001−277067に開示されるように、従来から種々の発明がなされている。しかしながら、同公報で開示されている装置においては使用済のクーラント液を収納するタンクが一つであるため、当該タンク内壁近傍にある洗浄度の高いクーラント液と同タンク中央部にある洗浄度の高いクーラント液とが入り混じってしまう虞があり、浄化効率が悪化してしまう問題があった。
【0004】
上記の問題を解決するために、特開2003−175437及び従来技術として図3に示されるように、工作機械等の加工装置11より排出されたクーラント液を渦流状態で収納するとともに、中央底面から排出させる吐出口1を有する第一クーラント槽2と、この第一クーラント槽2の外側でクーラント液を渦流状態で収納するとともに、下方で第一クーラント槽の前記吐出口1と連通した第二クーラント槽3と、この吐出されたクーラント液を第二クーラント槽2に導く排出部4とポンプ13と流通路5で構成することによって、クーラント液を二つのクーラント槽で渦巻き状態で収納するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開2001−277067 号公報
【特許文献2】 特開2003−175437 号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3に示される従来の構造では、加工装置11から排出されたクーラント液は第一クーラント槽2に渦流状態で収納されて洗浄度の低いクーラント液は下部に沈み、他方第二クーラント槽3には、被処理されたクーラント液が渦流状態で収納されて下部の洗浄度の低いクーラント液は、前記第一クーラント槽2の下部の洗浄度の低いクーラント液とともに吐出口1から下方の排出部4に落下され、ポンプ13によって送られ、流通路5を通って第二クーラント槽3に戻るよう構成されている。
【0007】
従って、洗浄度の低いクーラント液は下方に落下するのでクーラント槽2及び3には吐出口1及び排出部4が必要で、その後ポンプ13によって上方に送られるが、その上この排出部4及びクーラント槽2の底部は角型であるため、底部に金属粉、ゴミ47が溜まりクーラント液が劣化していなくても底部清掃の為に液を交換しているのが現状で、又この廃液はCO2発生の元ともなっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
底部に金属粉、ゴミ等が溜まらないよう、円筒状のタンク本体の下部を逆円錐状に形成したクーラント槽の内側を、筒体で仕切り、この筒体に加工装置から排出されるクーラント液が流入するよう流通路を設け、前記筒体の下部に吸込み口を透設し、この筒体の内側に浸漬ポンプを設けて、加工装置から排出されるクーラント液と筒体の外側のクーラント液とを混合することによって、この筒体の内側を混合槽として構成し、この混合槽から前記クーラント層の外部に設けられた分離装置に混合されたクーラント液を送るよう流通路を設け、前記分離装置で処理されたクーラント液を前記クーラント槽に横方向から送ってクーラント槽内で前記浸漬ポンプと同じ方向に渦巻き状態になるよう流通路を設け、処理された洗浄度の高いクーラント液を前記加工装置で再利用するよう配管したことを特徴とするクーラント液の処理装置。
【発明の効果】
【0009】
クーラント槽の下部を逆円錐状に形成したので、ゴミ、泥等が溜まることがなく、加工装置から排出される未処理のクーラント液と筒体の外側の被処理のクーラント液とを混合して浸漬ポンプで外部に設けられた分離装置に送られて油、ゴミを分離して、元のクーラント槽に循環して、ここでも油、ゴミが分離されるので、油、水、ゴミの分離効率は非常によく、又浸漬ポンプは混合されたクーラント液を上方に送るので従来の排出部4は必要でなく、従って構造も簡単でゴミ、泥等を除く労力も不要である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】 本発明による、クーラント液処理装置の全体斜視図を示す。
【図2】 図1のクーラント槽10の縦断面図を示す。
【図3】 従来のクーラント液の処理装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面により、本発明の実施例について説明する。図1は本発明によるクーラント液処理装置の全体斜視図を示し、図2は図1のクーラント槽10の縦断面図を示し、図3は従来のクーラント液の処理装置を示す。図1及び図2に示されるように、クーラント槽10の下部は底部に金属粉、ゴミ等が溜まらないよう、円筒状のタンク本体の下部を逆円錐状に形成し、このクーラント槽10の内部を断面円形の筒体12で仕切り、この筒体12に加工装置11から排出されるクーラント液をマグネットセパレータ14を通って、クーラント液に含まれる金属を取除いた後、筒体12の内部に流入するよう流通路15を設け、前記筒体12の下部に吸込み口16を透設し、筒体12の内側に浸漬ポンプ18を設け、この浸漬ポンプ18は軸20に取付けた羽根22をモータ24によって回動して、筒体12の外側のクーラント液を吸込み口16から上方に吸上げ、前記流通路15から流入したクーラント液と混合するので、筒体12の内側は混合槽28として構成されている。
【0012】
混合槽28の内部のクーラント液は流通路17を通って、分離装置30に送られる。この分離装置30は公知のもので、円筒形12の本体内側にクーラント液を横方向から送って、内部で渦流状態にして、クーラント液に含まれる軽い油は上方に分離させて流通路19を通って分離槽32に送られ、重いゴミを下方に集めて、クーラント液の洗浄度を高めるもので、洗浄度が高められたクーラント液は流通路21を通って、前記クーラント槽10に横方向から流入させ、内部で渦流状態になりここでも、洗浄度が高められるよう構成されている。
【0013】
前記クーラント槽10内で最もクーラント液の洗浄度が高められた部分は前記円筒形12の外側の上部近傍であるから、この部分を開口してここから流通路23を通ってポンプ25により、元の加工装置11に洗浄度が高められたクーラント液が送られて再利用されるが、このポンプ25より浸漬ポンプ18の能力を高くしてクーラント槽10の底部に溜まったゴミは確実に混合槽内に吸込まれて混合され、分離装置30に送られる。
【0014】
腐敗の多くの原因はクーラント液に混入する加工金属液、砥石粉等と機械油である。これらをバクテリアが食することによりバクテリアが繁殖、腐敗するが、この原因であるゴミ、油分を除去することにより腐敗しにくくなる。ゴミは上記のクーラント槽10及び分離装置30で除去されるが、油分は上記のクーラント槽10の渦流の中は上部外周部に多く集まるので、この外周部に排出口34を透設して、クーラント槽10と連通する分離タンク36を設けて油分の多いクーラント液をこの分離タンク36に落として、上部に浮いた油分をフロートサクション38に集めて流通路49を通って、ポンプ27により分離槽32に送られて油水分離が行なわれ、水分は流通路49を通って分離槽32に流入する。
【0015】
水溶性加工液の問題点として、腐敗が起こり液交換の必要があるのに加え液の蒸発等により液量が低下し、水の補充、原液の補充をする必要があり安定使用には労力を要する。槽10の液量が減少するとクーラント槽10の排出口34を通ってクーラント液が分離タンク36に流れ込まなくなるとポンプ27は液を分離槽32に送っているので、自ずと分離タンク36の液面は低下する。この時、分離タンク36内に設けたレベルスイッチ40が下限を打つと電線42を通じて電気信号が送られて自動的に水道水の電磁バルブ44が開くとともに原液タンク46に接続されている定量ポンプ31が起動し、定められた濃度の調合液をクーラント槽10に流通路33を流れてクーラント槽10に流入する。クーラント槽10の液面が上昇すると排出口34より液が分離タンク36に流入して液面が上がりレベルスイッチ40の上限を打ち、液量が確保され、この時電磁弁46定量ポンプ31も停止して常に自動的にクーラント槽10の水量は確保されるよう構成されている。
【符号の説明】
【0016】
1 吐出口
2 第一クーラント槽
3 第二クーラント槽
4 排出部
5 流通路
10 クーラント槽
11 加工装置
12 断面円形の筒体
13 ポンプ
14 マグネットセパレータ
15 流通路
16 吸込み口
17 流通路
18 浸漬ポンプ
19 流通路
20 軸
21 流通路
22 羽根
25 流通路
24 モータ
27 ポンプ
28 混合槽
29 流通路
30 分離装置
31 ポンプ
32 分離槽
33 流通路
34 排出口
36 分離タンク
38 フロートサクション
40 レベルスイッチ
42 電線
44 電磁バルブ
46 原液タンク
47 ゴミ
49 流通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に金属粉、ゴミ等が溜まらないよう、円筒状のタンク本体の下部を逆円錐状に形成したクーラント槽の内側を、筒体で仕切り、この筒体に加工装置から排出されるクーラント液が流入するよう流通路を設け、前記筒体の下部に吸込み口を透設し、この筒体の内側に浸漬ポンプを設けて、加工装置から排出されるクーラント液と筒体の外側のクーラント液とを混合することによって、この筒体の内側を混合槽として構成し、この混合槽から前記クーラント層の外部に設けられた分離装置に混合されたクーラント液を送るよう流通路を設け、前記分離装置で処理されたクーラント液を前記クーラント槽に横方向から送ってクーラント槽内で前記浸漬ポンプと同じ方向に渦巻き状態になるよう流通路を設け、処理された洗浄度の高いクーラント液を前記加工装置で再利用するよう配管したことを特徴とするクーラント液の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−125909(P2012−125909A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294714(P2010−294714)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(504325438)
【Fターム(参考)】