説明

グラファイトおよび合成樹脂結合剤の耐磨耗性滑り材料

【課題】製造費が安価でセラミックスに対する耐磨耗性に優れた滑り材料の提供。
【解決手段】20から40重量パーセントまでの比率で天然グラファイトをベースとする成分、及び20〜50重量パーセントまでの比率で合成グラファイトをベースとする少なくとも1つの別の成分から構成されるグラファイト及び合成樹脂結合材を包含する滑り材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばリン酸塩類のような吸湿性化合物を含まない、グラファイトおよび合成樹脂結合剤の改善された磨耗特性を有する滑り材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
滑り材料は、少なくとも2つの機械または装置部品が特定の圧力下で接触し、そして互いに関連して動く全ての場合に、できるだけ低い摩擦抵抗を達成する技術的目的で使用される。このような動きの間に、摩擦表面で生じる磨耗およびそこで発生した摩擦の熱は最小になるべきである。互いに関連して動く部品の適切な滑性が確保される場合、互いに対して滑る部品のための適切な材料の選択は困難ではない。しかし、作業が全体的に滑性なしに行われなければならず、そして乾式稼動が存在する用途もある。このような用途の例は、ポンプおよび圧縮機における遮断(シャットオフ)弁または回転弁である。
【0003】
例えばグラファイトまたは硫化モリブデンのような固有の滑性を有する物質を包含する滑り材料は、このような用途のために使用される。しかし、これらの乾式滑剤のほとんどの滑性は、例えば、ただ、周囲雰囲気中の水分に起因する可能性がある水分の薄膜がすでに生じている可能性のある範囲までは満足のいくレベルに達する。しかし非常に乾燥した空気中で、著しく乾燥された媒体中で、真空中で、高い高度で、または高温での操作のような状況下では、固有の滑性作用を有する上述の物質はもはやその要件に適合せず、そして別の基準が必要である。
【0004】
これらの場合には、滑り材料の本体を、フェノールまたはフラン樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアクリレート樹脂、過フッ化または部分的にフッ化された有機重合体のような合成樹脂で、または塩類またはガラス類のような無機化合物でも充填することは、先行技術から知られている。例えば、非特許文献1を参照。無機化合物の中でも、リン酸および硼酸化合物を使用するのが好ましい。
【0005】
しかし、高い製造費用に加えて、摩擦に対するこれらのセラミックス成分の比較的高い感受性は、それ自体ポンプおよび圧縮機における遮断または回転弁としての用途に関する実質的な欠点として現れる。
【0006】
これらの欠点のため、製造にあまり費用がかからない、脆さの低い滑り材料を開発する試みがなされてきた。しかしその結果は、フィラーとして炭素またはグラファイト、および結合剤として合成樹脂を包含し、そして実際に生成するのに実質的に高価でなく、そして摩擦に対して相当に感受性が低いが、しかし、それらの稼動および磨耗特性に関してはセラミックスから作られる滑り材料より劣ったままである滑り材料しか得られなかった。
【0007】
特許文献1は、フィラーとして炭素を、そして結合剤として合成樹脂を包含し、そしてリン酸亜鉛の添加により磨耗が減ったことを示す滑り材料を開示する。しかし、例えばリン酸塩類のような吸湿性化合物の添加も、結合剤として合成樹脂を包含する滑り材料の製造における種々の複雑さを招き、そしてそれは、大きな出費を伴う製造条件でのみ解決され得る。さらに、加算された化合物の費用は、開示される発明の市販用途を阻止するのに十分であることが立証された。さらに、リン酸亜鉛の添加により達成される磨耗特徴における改善は、もはや、特に、先端速度および圧力に関して高い要求がある場合には得られない。
【0008】
遮断弁の寿命は、主にクレーター磨耗および放射状磨耗によって決定される。放射状磨耗(幅磨耗)を受けて遮断弁の幅は減少する。クレーター磨耗(厚み磨耗)は、遮断弁の厚みの減少にいたる磨耗を示す。軸方向の磨耗により、遮断弁の高さが減少する(高さ磨耗)。しかし、原則としてのこの作用は、ポンプの稼動中のほんの小さな範囲に起こるにすぎない。
【特許文献1】欧州特許第915129号
【非特許文献1】Robert Paxton著「Manufactured Carbon:A Self−Lubricating Material for Mechanical Devices」CRC Press,Inc.,フロリダ、1979年。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、厚さ磨耗および幅磨耗に関して、炭素フィラーおよび結合剤として合成樹脂を包含する滑り材料の滑りおよび磨耗特性を改善し、そして滑り材料の改善が、特に、例えばリン酸塩類のような吸湿性化合物の添加なしに、低い費用で達成され得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、天然グラファイトをベースとする成分および合成グラファイトをベースとする少なくとも1つの別の成分のフィラーの組合せが、所望の製品特性を生じることが見出された。天然グラファイトをベースとする成分は低い幅磨耗を確保する一方で、合成グラファイトをベースとする少なくとも1つの成分は厚み磨耗を減少させる。本発明の第一の課題は、請求項1の特徴部分で達成され、そして第二の課題は請求項8以下の特徴部分で達成される。
【0011】
グラファイトおよび合成樹脂結合剤を包含する本発明による滑り材料は、グラファイトフィラーが、天然グラファイトをベースとする成分、および合成で調製された少なくとも1つの別の成分からなることで特徴づけられる。
【0012】
天然グラファイトをベースとするフィラー成分は、精製天然グラファイト、発泡天然グラファイトまたは加工グラファイト膜から製造でき、そして20から40重量パーセントまでの比率で滑り材料中に含まれる一方で、合成グラファイトをベースとするフィラー成分については、滑り材料は、20から50重量パーセントまでの比率で、以下の物質、即ちエレクトログラファイトまたは石油コークス、コールタールピッチコークスまたはカーボンブラックコークスの内の1つを包含する。そのうち最後の3つの物質は、グラファイト化形態で使用される。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によると、合成グラファイトをベースとする2つの成分が同時に使用される。これらは天然グラファイト成分に加えて、各々の場合に、15から30重量パーセントの比率で滑り材料に含まれるエレクトログラファイトおよびグラファイト化カーボンブラックコークスである。
【0014】
グラファイトのフィラー成分全ての共通の特性は、それらが塵様まで微細な微粒子であること、すなわち、それらの最大粒子サイズは3mmより大きくないことである。しかし、組成物の個々の粒子区分は、各々の場合で異なり、そして特定の目的に調整された粉末度および粒子分布を有し得る。
【0015】
グラファイトフィラーに加えて炭素フィラーを添加できるが、それは、中でも、滑り材料の機械的特性を改善する。カーボンブラック、メソカーボンマイクロビーズ、ナノチューブおよびフラーレンがこれらに含まれる。
【0016】
炭素フィラーと一緒に、またはそれに加えて、滑り材はそれ自体当業者に知られている別のフィラー、例えば二酸化シリコン、シリコンカーバイド、酸化アルミニウム、タルクおよび酸化マグネシウムのようなフィラーも包含でき、これらは滑り材料の稼動特性に影響を及ぼす。これらの物質は、滑り自体について所定の許容量を有するか、または制限された範囲の磨耗作用を有するかのいずれかであり、そして滑り材料の使用中、周囲雰囲気中から摂取される物質との相互作用に適切である対抗の稼動中の材料から除去される材料から形成された望しくない膜から、稼動中の表面を洗浄する働きをする。
【0017】
フィラー全て、特にグラファイトフィラー、炭素フィラーおよび炭素から製造されないフィラーは滑り材料の表面に、樹脂結合剤で被覆され、そしてその樹脂結合剤は実質的に孔なしの滑り材料の本体中の粒子の間の中間空間を満たすマトリックスも形成する。したがって、本発明による滑り材料の最大操作温度は、使用される樹脂についての操作温度の上限によって決定される。合成樹脂は、好ましくは、例えばフェノール、フラン、エポキシ、ポリエステルおよびシアネートエステル樹脂のような結合剤として、または高ガラス遷移温度を有し、かつ任意で所定の滑り作用を有する熱可塑剤(ポリイミド、PVDFのようなフルオロ重合体、ポリフェニレンスルフィド)としても使用される。通常の操作条件下での滑り材料については、フェノールおよび/またはフラン樹脂はそれらの好ましい費用−性能比のため使用されるのが好ましい。例えばヘキサメチレンテトラアミンのようなホルムアルデヒドを発生する物質に、硬化のためにそれに添加されるノボラック型のフェノール性樹脂が特に好ましい。結合剤として天然樹脂または改質された天然樹脂の使用は可能であるが、しかし、合成樹脂の方が特定の要件によりよく調節でき、したがって優利に使用される。滑り材料の本体における結合剤樹脂の含有率は、好ましくは20から40重量パーセントまでの範囲にある。
【0018】
好ましい実施形態では、滑り材料は複数の水平層を含み、そしてその各々は、グラファイトをベースとする2つのフィラー成分の内のただ1つを含む。このため、天然グラファイトをベースとするフィラー成分を有する層は、合成グラファイトをベースとする少なくとも1つのフィラー成分を有する層と交互に配置される。
【0019】
最も簡単な場合には、本発明による滑り材料は、各々の場合に、天然グラファイトをベースとするフィラー成分を包含する1つの層、および合成グラファイトをベースとする少なくとも1つのフィラー成分を包含する層を包含する。本発明による滑り材料が奇数の層を包含する場合には、2つの外側層は、好ましくは合成グラファイトをベースとする少なくとも1つのフィラー成分を包含する。偶数の層の場合には、遮断弁は、合成グラファイトをベースとする少なくとも1つのフィラー成分を包含する層が、回転装置の回転方向から別の方向に向く側に対して置かれるように、回転装置のスロットに挿入されなければならない。
【0020】
個々の層およびその組成物の厚みは、熱の作用下での個々の層の様々な線状の膨張を避けるために、互いに等しくされるべきである。
【0021】
本発明による滑り材料は、乾燥成分を結合剤樹脂と混合すること、好ましくは粉末化および等級分けによってもたらされる、混合物からの成形に適切な顆粒または粉末の調製、型押または平衡圧縮形成での熱圧による成形、例えば押出、トランスファー成型または射出成型の手段による押出、続いて結合剤樹脂を完全に硬化させるために、任意で得られた成形体の熱処理によって製造される。これに続いて、機械的寸法決めが行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この一般的プロセスパッチは、以下の2つの変法によって実現され得る。
【0023】
第一の変法によって操作する場合、グラファイト、任意で炭素フィラーおよび炭素から製造されない少なくとも1つのフィラーから製造されるフィラー成分を、結合剤の添加なしに成分の均質な分布が達成されるまで互いに混合し、その後乾燥混合物を合成樹脂結合剤と混合し、そしてその後この方法で得られた混合物を、上述または後述の手段の内の1つにより成型体に加工する。
【0024】
第二の変法によって操作する場合、グラファイト、任意で炭素フィラー、および炭素から製造されない少なくとも1つのフィラー、および合成樹脂の結合剤により製造されるフィラー成分を、その成分の均質な分布が達成されるまで互いに混合して組成物を得て、そしてその後この方法で得られた混合物を上述または後述の手段の内の1つにより成型デバイスの助成で成形体に加工する。
【0025】
滑り材料の積層体を製造するために、2つの加工変法は各々の場合に天然グラファイト成分または少なくとも1つの合成グラファイト成分のみを組成物の別の構成要素と混合するという形で変化される。
【0026】
滑り材料の製造のための方法において、混合物、特にグラファイト、任意で添加される別のフィラー、および特定の樹脂結合剤から製造されるフィラー成分を構成するために使用される成分は、特定の製法説明書によって、そして特定の用途要件に合わせて、滑り材料の組成物の説明で上に列挙される物質である。
【0027】
プロセスの実施にあたっては、結合剤樹脂は粉末形態で、またはペースト様、液体または溶解形態で、またはスラリーの形態でのいずれかで固形成分に添加でき、そしてその後、さらに固形内容物と一緒に加工できる。結合剤樹脂も融解範囲、または使用される特定の樹脂または使用される特定の樹脂混合物のガラス遷移温度より上の温度、並びに室温での温度で乾燥成分と混合し得る。
【0028】
本発明による滑り材料の製造のためのいくつかの好ましい方法の変法は、以下に記述される。
【0029】
第一の好ましい変法によれば、粉末形態にあるグラファイト、任意で添加されるものである別のフィラー、および結合剤樹脂から製造されるフィラー成分といわれる乾燥成分を、その成分の均質な分布が達成されるまで第一の工程で混合機中で混合する。その後、混合物を高い混練作用を有する加熱された混合ユニット、例えばローラー混合機またはカレンダー中で、結合樹脂の軟化範囲より上にある温度で混合し、その間に、結合樹脂は溶融される。熱混合物はウエブまたは破砕シートの形態で送り出され、そして冷却後、破壊および粉砕される。粉砕は例えば、ピンまたは歯状突起のディスク破砕機で行われ得る。粉砕ユニットはこれを粉末化および連続篩いで、以下の粒子組成を有する粉砕および篩い材料が得られるように調節される。即ち40から60%までは1から2mmまで、30%までは2mmより大きく、そして30%までは600μmより大きく1mmまでである。600μmより小さいかまたは等しい微細内容物は、篩いの間に分離され、そして混練工程にフィードバックされる。この粉砕材料を、型押、射出成形またはトランスファー成形によって成形体に圧縮する。その後、この方法で得られる成形体を、本発明による滑り材料の本体か、またはそれから滑り材料が機械作業により製造され得る前駆体製品本体のいずれかを得るために、結合剤の架橋のために160℃から250℃までの温度で加熱処理する。
【0030】
本方法の別の変法によれば、およそ40μmのd50%の粉末度が達成されるまで粉末化工程の後に得られた粉砕材料は、粉砕によってさらに粉末化され得るか、またはこの粉末度の粒子区分は粉砕の後の等級分けにより製造される。その後、樹脂結合剤が最初に融解するが、しかしその後硬化するような温度プログラム下で、この微粒子区分を加熱用メス型を用いて型押プレスで、または熱圧に適切な平衡プレスで成形体に圧縮する。160から200℃までの温度が好ましくはここで使用される。必要であれば、この方法で得られた成形体は型から取り出した後、結合剤樹脂の完全な硬化のためにさらに加熱処理しなければならない。別の変法によれば、当初に導入された成分の全部に基づいて、樹脂結合剤を溶解する能力のある溶媒の5から20重量パーセントを、組成物、特にグラファイト、任意で添加されるものである別のフィラー、および結合剤樹脂から製造されるフィラー成分によって混合機中に一緒に注がれた出発物質に添加する。フェノール樹脂を使用する場合、およそ10重量%エタノールを、好ましくはこのために使用する。その後、必要な場合、温和な加熱を伴って適切な均質性が達成されるまで混合物を最初に混合する。この間、液体に近づきうる固形粒子全ての表面を、結合剤樹脂溶液の薄層で被覆する。その後、さらに混合しながら、混合物の温度を増大させることによって、混合物が崩壊しそして粘土様から顆粒様の塊として現れるまで、溶媒を蒸散させる。混合機から取り出された後、任意で粉末化工程の後にそのを等級分けする。好ましくは、射出成形またはトランスファー成形によって0.6mmより上の粒子サイズを有する内容物を加工し、そして熱圧することによって、残りの微細内容物を加工して成形体を得る。滑り材料を仕上るためには、結合剤樹脂の最終架橋のためさらに加熱処理しなければならない。
【0031】
別の好ましい変法によれば、混合物が完全に均質になるまで微細粉末化結合剤を含めた混合物の全成分を混合機中で混合する。取り出した後、粉末を室温で型押プレスのメス型中で、または10バール未満下で、別の適切な圧縮装置で予備成形物に圧縮する。
【0032】
その後、これらの予備成形物を、型押プレスの加熱用プレス型に、または加熱された平衡プレスの成形容器に移行させ、そしてそこで、結合剤樹脂が液体形態にある温度で成形体に圧縮する。その後、得られた成形体は、適切な場合、樹脂結合剤の完全な架橋のために130から250℃までの温度でさらに加熱処理しなければならない。
【0033】
滑り材料の積層体の製造のための多様なこの方法は、第一工程で天然グラファイトをベースとするフィラー成分のみ、または合成グラファイトをベースとする少なくとも1つのフィラー成分、および微細粉末結合剤を含めた混合物の別の成分を混合することを包含する。滑り材料の積層体の製造のために、天然グラファイトをベースとするフィラー成分、または合成グラファイトをベースとする少なくとも1つのフィラー成分のみを包含する予備成形物を、その後室温で互いに別々に圧縮する。これらの予備成形物を交互に互いの上に水平に積み重ね、奇数の層の場合には、2つの外側層が好ましくは合成グラファイトをベースとするフィラー成分を包含する。その後、型押プレスの加熱用プレス型に、または加熱された平衡プレスの型容器にこの積重ねを移し、そしてそこで結合剤樹脂が液体形態にある温度で、成形体に圧縮し、そして最終的に必要であれば加熱処理を行う。
【0034】
滑り材料の積層体は、天然グラファイトをベースとするフィラー成分、または合成グラファイトをベースとする少なくとも1つのフィラー成分のみを包含する混合物、および混合物の別の成分を交互に型押プレスのメス型に、または別の適切な圧縮装置に室温で導入することによっても製造でき、奇数の層の場合には、2つの外側層は好ましくは合成グラファイトをベースとする少なくとも1つのフィラー成分を包含し、そして続いてこれらの層から積層された予備成形物を圧縮する。
【0035】
その後、型押プレスの加熱用プレス型に、または加熱された平衡プレスの型容器にこの予備成形物を移し、そしてそこで、結合剤樹脂が液体形態にある温度で成形体に圧縮し、そして最終的に、必要であれば加熱処理を行う。
【0036】
滑り材料の積層体の製造のための別の変法によれば、天然グラファイトをベースとするフィラー成分、または合成グラファイトをベースとする少なくとも1つのフィラー成分のみを包含する混合物、およびその混合物の別の成分を交互に型押プレスのメス型に、または別の適切な圧縮装置に室温で導入し、そして導入された層をすぐに圧縮し、奇数の層の場合には、2つの外側層は好ましくは合成グラファイトをベースとする少なくとも1つのフィラー成分を包含する。
【0037】
その後、この方法で製造された積層予備成形物を型押プレスの加熱用プレス型に、または加熱された平衡プレスの型容器に移し、そしてそこで結合剤樹脂が液体形態にある温度で成形体に圧縮し、そしてその後、これらを必要であれば加熱処理にかける。
【0038】
滑り材料の積層本体の製造のための別の変法によって、天然グラファイトをベースとするフィラー成分、または合成グラファイトをベースとする少なくとも1つのフィラー成分のみを包含する混合物、およびその混合物の別の成分を結合剤樹脂の軟化範囲より上にある温度で互いに別個にストリップに押出す。予備成形物をこれらのストリップから切断し、そしてその後交互に型押プレスの加熱用プレス型中で、または加熱された平衡プレスの型容器中で互いに水平に積み重ね、奇数の層の場合には、2つの外側断片は好ましくは合成グラファイトをベースとするフィラー成分を包含する。この方法で得られた積重ねを、続いてそこで、結合剤樹脂が液体形態にある温度で成形体に圧縮し、そして最終的に要求される場合加熱処理を行う。
【0039】
本発明の実施形態を以下実施例によりさらに説明する。
【実施例1】
【0040】
d50%=19μmの粒子サイズの天然グラファイト32重量部、各々の場合に、d50%=24μmの粒子サイズのエレクトログラファイトおよびd50%=18μmの粒子サイズのグラファイト化カーボンブラックコークス16重量部、および結合剤として、10%>45μm粒子サイズのフェノール−ノボラック/ヘキサメチレンテトラアミン混合物(ヘキサメチレンテトラアミンの含有量:11重量%)36重量部を、総計15kgの量で、鋤先混合機中で激しく混合した。その後、この手段で均質化された乾燥材料を室温で18MPaの圧力下で、メス型(製造業者:Bussmann、タイプHPK60)中の型押プレス上で圧縮して、寸法150×200×12mm3を有する予備成形物を得た。型押プレスから取り出した後、この方法で製造された予備成形物を本体の外部寸法に対応する熱圧プレスの型に移し、そしてそこで、再度15分間20MPaの圧力下で、180℃の温度で圧縮した。この操作中に結合剤を溶融させ、そして実質的に硬化させた。熱圧プレスから取り出した後、本体を加熱処理オーブンに移し、そしてそこで、180℃で38時間、結合剤の後硬化のために後処理にかけた。オーブンから本体を取出しそして冷却した後、既知の機械作業工程によって、寸法95×43×4mm3を有する遮断弁を本体から製造した。
【実施例2】
【0041】
2つのグラファイト混合物を各々の場合に、粒子サイズ10%>45μmのフェノール−ノボラック/ヘキサメチレンテトラアミン混合物(ヘキサメチレンテトラアミンの含有量:11重量%)36重量部を、各々の場合に15kgの量で、鋤先混合機中で互いに別個に激しく混合した。一方の混合物は、d50%=19μmの粒子サイズの天然グラファイト64重量部を包含し、他方の混合物は、d50%=24μmの粒子サイズのエレクトログラファイトおよびd50%=18μmの粒子サイズのグラファイト化カーボンブラックコークスを各々32重量部包含した。その後、均質化乾燥混合物を18MPaの圧力下でメス型(製造業者:Bussmann、タイプHPK60)中の型押プレス上で室温で互いに別個に圧縮して、寸法150×200×5mm3を有する予備成形物を得た。プレス型から取り出した後、合成グラファイトをベースとするフィラー成分を包含する1つの予備成形物を本体の外部寸法に対応する熱圧の型に据えた。天然グラファイトをベースとするフィラー成分を包含する予備成形物をこれの頂上部に積み重ね、続いて合成グラファイトをベースとするフィラー成分を包含する別の予備成形物を積重ねた。3つの予備成形物のこの積層体を20分間、20MPaの圧力下で、180℃の温度で、熱圧で圧縮した。この操作の間に結合剤を融解させ、そして実質的に硬化させた。熱圧プレスから取出した後成形体を加熱処理オーブンに移し、そして結合剤の後硬化のために38時間、180℃で後処理にかけた。オーブンからの本体の取出しそして冷却の後、既知機械的作業プロセスによって、寸法95×43×4mm3を有する遮断弁を成形体から製造した。
【0042】
比較例1
比較のために、d50%=19μmの粒子サイズの天然グラファイト64重量部を、36重量部のフェノール−ノボラック/ヘキサメチレンテトラアミン混合物(ヘキサメチレンテトラアミンの含有量:11重量%)と混合し、そして寸法95×43×4mm3を有する遮断弁を実施例1で記述されるとおりに製造した。
【0043】
比較例2
比較のために、d50%=24μmの粒子サイズのエレクトログラファイトおよび粒子サイズd50%=18μmのグラファイト化カーボンブラックコークスの各々の場合に、32重量部の含有量で、64重量部の合成グラファイトを、36重量部のフェノール−ノボラック/ヘキサメチレンテトラアミン混合物(ヘキサメチレンテトラアミンの含有量:11重量%)と混合し、そして寸法95×43×4mm3を有する遮断弁を実施例1で記述されるとおりに製造した。
【0044】
比較例3
比較例1と同様に、d50%=19μmの粒子サイズの天然グラファイト57重量部を、d50%=7μmの粒子サイズのリン酸亜鉛7重量部、および36重量部のフェノール−ノボラック/ヘキサメチレンテトラアミン混合物(ヘキサメチレンテトラアミンの含有量:11重量%)と混合し、そして寸法95×43×4mm3を有する遮断弁を製造した。
【0045】
比較例4
比較例2と同様に、d50%=24μmの粒子サイズのエレクトログラファイトおよび粒子サイズd50%=18μmのグラファイト化カーボンブラックコークスの各々の場合に、28.5重量部の含有量で、57重量部の合成グラファイトを、d50%=7μmの粒子サイズのリン酸亜鉛7重量部と、および36重量部のフェノール−ノボラック/ヘキサメチレンテトラアミン混合物(ヘキサメチレンテトラアミンの含有量:11重量%)と混合し、そして寸法95×43×4mm3を有する遮断弁をそこから製造した。
【0046】
この方法で製造された遮断弁を、「Gebruder Backer」製のタイプ4.40から多セル圧縮機上で乾燥空気中で試験した。機械を800ミリバール(過剰圧力)にかけた。先端速度は14m/秒であった。過剰圧力下での負荷は真空中におけるより多くの応力を遮断弁にかけ、したがって後者よりいっそう明確である。
【0047】
これらの試験で得られた測定値を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1で示された測定値の比較は本発明による遮断弁が、改善した磨耗特性を有することを明らかに示す。これらは実施例2でのとおり、層から構築される本発明による遮断弁で最も証明される。幅磨耗における改善が天然グラファイトをベースとするフィラー成分全てに対して上で起因する一方で、厚み磨耗は合成グラファイトをベースとするフィラー成分によって達成されるものであることも、表1の助けで明確に見出され得る。天然グラファイトをベースとするフィラー成分を占有的に包含する比較例1による遮断弁のものよりも下でさえある幅磨耗は、驚くべきことに、本発明による遮断弁でここに達成される。
【0050】
比較例3および4と比較例1および2との比較は、さらに、リン酸亜鉛の添加によって従来の遮断弁の磨耗特性における不明瞭な改善しか達成されなかったことを示す。
【0051】
本発明の解決策は、以下の利点を有する。
【0052】
相当に改善した磨耗特性を有する乾燥稼動条件下で使用するための滑り材料が提供される。
【0053】
滑り材料は、例えばリン酸塩類のような吸湿性成分の添加なしに製造され得る。
【0054】
本発明による滑り材料は、種々の既知の製造方法によって製造され得る。射出成形およびトランスファー成形による成形も可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸塩類のような吸湿性化合物の添加なしに、20から40重量パーセントまでの比率で天然グラファイトをベースとする成分、および20から50重量パーセントまでの比率で合成グラファイトをベースとする少なくとも1つの別の成分から構成されることを特徴とする、グラファイトおよび合成樹脂結合剤を包含する滑り材料。
【請求項2】
精製天然グラファイト、発泡天然グラファイトまたは加工グラファイト膜からなる群より得られる天然グラファイトをベースとするフィラー成分を含有すること、およびエレクトログラファイト、グラファイト化形態にある石油コークス、グラファイト化形態にあるコールタールピッチコークス、およびグラファイト形態にあるカーボンブラックコークスからなる群より得られる合成グラファイトをベースとするフィラー成分を含有することを特徴とする、請求項1記載の滑り材料。
【請求項3】
精製天然グラファイト、発泡天然グラファイトまたは加工グラファイト膜からなる群より得られる天然グラファイトをベースとする成分に加えて、各々の場合に、15から30重量パーセントの比率で合成グラファイトであるエレクトログラファイトおよびグラファイト化ブラックカーボンコークスをベースとする2つの成分を包含することを特徴とする、請求項1記載の滑り材料。
【請求項4】
天然グラファイトをベースとする成分、または合成グラファイトをベースとする少なくとも1つの成分のいずれかを交互に包含するいくつかの水平の層を包含し、奇数の層の場合には、2つの外側層は好ましくは合成グラファイトをベースとする少なくとも1つのフィラー成分を包含することを特徴とする、請求項1から3の1つに記載の滑り材料。
【請求項5】
3重量パーセント未満の比率でカーボンブラック、メソカーボンマイクロビーズ、ナノチューブおよびフラーレンからなる群より得られる炭素フィラーを包含することを特徴とする、請求項1から4の1つに記載の滑り材料。
【請求項6】
3重量パーセント未満の範囲まで、二酸化シリコン、シリコンカーバイド、酸化アルミニウム、タルクおよび酸化マグネシウムからなる群より得られ炭素から製造されない少なくとも1つのフィラーを包含することを特徴とする、請求項1から5の1つに記載の滑り材料。
【請求項7】
20から40重量パーセントまでの含有量でフェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、硫化ポリエステル樹脂およびシアネートエステル樹脂からなる群より得られる少なくとも1つの結合剤を包含することを特徴とする、請求項1から6の1つに記載の滑り材料。
【請求項8】
天然グラファイトをベースとするフィラー成分、および合成グラファイトをベースとする少なくとも1つのフィラー成分を微粒子または粉末形態で少なくとも1つの合成樹脂結合剤と混合し、そして得られた混合物を、その後、高温下で圧縮方法によって成形体に加工することを特徴とする、グラファイトおよび合成樹脂結合剤を包含する滑り材料を製造する方法。
【請求項9】
互いに別個に、天然グラファイトをベースとするフィラー成分、および合成グラファイトをベースとする少なくとも1つのフィラー成分を微粒子または粉末形態で成分の均質分布が達成されるまで少なくとも1つの合成樹脂の結合剤と混合し、得られた混合物を高温下で成形デバイスによって交互の層配列で成形体に加工し、奇数の層の場合には、2つの外側層は好ましくは合成グラファイトをベースとする少なくとも1つのフィラー成分を包含することを特徴とする、滑り材料の積層体を製造する方法。
【請求項10】
均質な分布が達成されるまで、炭素含有フィラー成分を最初に結合剤の添加なしに互いに混合し、そしてその後、得られた混合物を少なくとも1つの合成樹脂結合剤と混合することを特徴とする、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの結合剤との混合を室温で行うことを特徴とする、請求項8から10の1つに記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの結合剤との混合を結合剤として使用される合成樹脂の融解範囲より上にある温度で行うことを特徴とする、請求項8から10の1つに記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの結合剤を粉末形態で添加することを特徴とする、請求項8から12の1つに記載の方法。
【請求項14】
結合剤をペースト様、液体、溶解またはスラリーの形態で添加することを特徴とする、請求項8から12の1つに記載の方法。
【請求項15】
得られた混合物を粉末化し、そして成形の前に等級分けすることを特徴とする、請求項8から14の1つに記載の方法。
【請求項16】
射出成形またはトランスファー成形によって混合物を成形体に加工することを特徴とする、請求項8から15の1つに記載の方法。
【請求項17】
混合物を10バール未満の下で、型押または二重ベルトプレス機中で室温で予備成形物に圧縮し、そしてその後、これらを熱圧によって成形体に加工することを特徴とする、請求項8から15の1つに記載の方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法により製造される混合物または予備成形物を結合剤として使用される合成樹脂の軟化範囲またはガラス遷移温度より上にあり分解温度より下にある温度で、型押プレスの加熱用プレス型中で、または加熱された平衡プレスの型容器中で、熱圧により成形体に加工することを特徴とする、請求項8から17の1つに記載の方法。
【請求項19】
天然グラファイトおよび合成グラファイトをベースとする混合物の交互導入により積層成形体を得て、各々の場合に、ちょうど導入された層の圧縮を直ちに行うことを特徴とする、請求項8から18の1つに記載の方法。
【請求項20】
最初に天然グラファイトおよび合成グラファイトをベースとする混合物の交互導入によって、続いて導入された層の最終圧縮によって、積層成形体を得ることを特徴とする、請求項8から18の1つに記載の方法。
【請求項21】
請求項17記載の方法により予備成形物を最初に天然グラファイトおよび合成グラファイトをベースとする混合物から互いに別個に製造し、そしてこれらを交互層配列で積重ね、そして請求項18記載の方法により圧縮して成形体を得ることを特徴とする、請求項8から18の1つに記載の方法。
【請求項22】
予備成形物をストリップの形態で押出し、そしてその後これらを適切な断片に切断することを特徴とする、請求項21記載の方法。
【請求項23】
カーボンブラック、メソカーボンマイクロビーズ、ナノチューブおよびフラーレンからなる群より得られる炭素から製造されるフィラー、および二酸化シリコン、シリコンカーバイド、酸化アルミニウム、タルクおよび酸化マグネシウムからなる群より得られ炭素から製造されない少なくとも1つのフィラーを、さらに添加することを特徴とする、請求項8から22の1つに記載の方法。
【請求項24】
得られた成形体を加熱処理することを特徴とする、請求項8から23の1つに記載の方法。
【請求項25】
得られた成形体が破砕により、続いて精密調整、精密旋削、砥ぎおよび/または研磨を行うことによって最終外形に加工されることを特徴とする、請求項8から24の1つに記載の方法。


【公開番号】特開2006−144004(P2006−144004A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−313104(P2005−313104)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(501090803)エスゲーエル カーボン アクチエンゲゼルシャフト (47)
【Fターム(参考)】