説明

グリストラップ液の処理装置

【課題】 安価かつ簡単な構成でグリストラップ内の有機物、特に油脂分を微生物で高速に分解できるようにする。
【解決手段】 グリストラップ1内に浮上液を回収する浮上液回収管3cと、浮上液回収管3cによって浮上液を回収するための回収ポンプ4cと、回収された浮上液が接触する微生物保持部15と、回収された浮上液をグリストラップ1で循環させる循環管路21とを備え、循環管路21に液体の進行方向に対して管路断面積が小さくなる部分と管路断面積が大きくなる部分を複数個配置したミキシング部22を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飲食店等の排水部などに設置されているグリストラップに関する。
【背景技術】
【0002】
飲食店等の排水部には排水を一時的に貯留するグリストラップが設置されている。
グリストラップは油、食品に含まれる有機物、懸濁物などを含む排水を一時的に貯溜させ、油分を浮上分離させた状態で、前記油分を回収することを目的とする槽である。
また、従来からグリストラップ内の有機物を別の処理装置で分解することにより、有機物の分解による腐敗を防止する試みがなされている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、業務用厨房排水の油脂分解浄化装置として、動植物性油脂を含有した排水を微生物生息剤を収容した濾過槽に通水し、固形分を濾過するとともに、油脂を油脂吸着剤に吸着させて分解浄化するものが開示されている。
また、下記特許文献2には、グリストラップの底部から収容液を採取するスカム採取手段と、そのスカム採取手段からの収容液を固液体離して固形分を微生物によって分解するとともに分離された液体を排出する分離処理装置と、を備えた処理装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−28484「排水油脂分解浄化装置」
【特許文献2】特開2004−154730「グリストラップ収容液の処理装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術であれば下記のような課題がある。
上記従来技術はいずれもグリストラップ内の有機物を固液分離する工程が必要である。また、油脂分などの有機物を固形物とした後に微生物によって分解する方法は、処理に時間がかかる課題があった。
一方、グリストラップの近くに補助槽を設けて微生物によって油脂分などを分解する方法も考えられるが、補助槽内に曝気装置を設ける方法では、気泡によって油脂分が液面に浮上してしまい分解が良好に行えないという課題があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は上記課題を解決できるグリストラップ液の処理装置を提供することにある。
具体的な目的の一例を示すと、以下の通りである。
(a)安価かつ簡単な構成でグリストラップ内の有機物、特に油脂分を微生物で高速に分解できるようにする。
(b)レストランなどの厨房排水に含まれる油脂分を高速分解して悪臭を低減するとともに、油脂分を手作業で取り除く手間を低減又は省くことができる処理装置を提供する。
なお、上記に記載した以外の発明の課題、その解決手段及びその効果は、後述する明細書内の記載において詳しく説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は多面的に表現できるが、例えば、代表的なものを挙げると、次のように構成したものである。なお、下記各発明において、各符号は後述する実施形態との対応関係を分かりやすくするために一例として示したものであり、本発明の各構成要素は、実施形態に記載した符号に係る構成に限定されないことは言うまでもない。
【0008】
第1発明に係るグリストラップ液の処理装置は、グリストラップ1と違う位置に設けられた補助槽2と、前記グリストラップ1の浮上液を回収する浮上液回収手段と、前記浮上液回収手段によって浮上液を回収するための回収ポンプ4と、前記グリストラップ1の浮上液を前記補助槽2へと送る送液管路5と、前記補助槽2内に設けられ、前記グリストラップ1において回収した浮上液が接触する微生物保持手段15と、前記補助槽2の余分な液体を前記グリストラップ1へ戻す戻し管路28と、前記補助槽2内の液体を循環させる循環管路21と、前記補助槽2内の前記液体と気体を加圧状態で前記循環管路21へ送り込む循環ポンプ20とを備え、
前記循環管路21に、前記液体の進行方向に対して管路断面積が小さくなる部分と管路断面積が大きくなる部分を複数個配置したミキシング部22を設け、前記気体と加圧された前記液体を通過させることによって前記気体と前記液体を混合することを特徴とする。
【0009】
第1発明において、補助槽内にも浮上液回収手段を設け、循環ポンプによって循環管路へ送り込まれる液体を補助槽内の浮上液とすることが好ましい。補助槽でも浮上液には油脂分が多く含まれるからである。
循環ポンプ、循環管路(ミキシング部)は補助槽の内部又は外部に設けることができる。
【0010】
管路断面積が小さくなる部分の個数は5個〜100個程度が好ましい。前記気体には空気や酸素などを含む。「気体と液体を混合する」とは、油脂分、水分などの液体に微細化された気泡などが混ざることのみならず、水分中に気体が溶け込む場合も含む。
本明細書において「浮上液」とは槽の上層域に浮上する油脂分、水分やその他有機物を含んだものを言う。
【0011】
第2発明に係るグリストラップ液の処理装置は、浮上液を回収する浮上液回収手段と、前記浮上液回収手段によって浮上液を回収するための回収ポンプ4と、回収された浮上液が接触する微生物保持手段15と、回収された浮上液と気体を前記グリストラップ1で循環させる循環管路21と、を備え、
前記循環管路21に、前記液体の進行方向に対して管路断面積が小さくなる部分と管路断面積が大きくなる部分を複数個配置したミキシング部22を設け、前記気体と加圧された前記液体を通過させることによって前記気体と前記液体を混合することを特徴とする。
回収ポンプ、循環管路(ミキシング部)は、それぞれグリストラップの内部又は外部に設けることができる。なお、浮上液回収手段と微生物保持手段はグリストラップ内に設けられる。
【0012】
第3発明は、第1発明から第2発明のいずれか一つに記載の発明において、前記循環管路21に複数の抵抗壁24を立設し、前記循環管路21の内周壁において一の抵抗壁24の立設位置を前の抵抗壁24の立設位置からずらすことによって前記ミキシング部22を構成したことを特徴とする。
第3発明において、「一の抵抗壁の立設位置を前の抵抗壁の立設位置からずらす」の一例としては、後述する実施形態で説明するように内周壁に抵抗壁を互い違いに立設する構成がある。
【0013】
第4発明は、第1発明から第3発明のいずれか一つに記載の発明において、前記浮上液回収手段を浮上液回収管3で構成し、前記浮上液回収管3は、外縁に配置された複数の吸込用開口部12を備えており、前記グリストラップ1の最も下位の水面14を前記吸込用開口部12の下端13よりも上方に位置させるように前記浮上液回収管3を前記グリストラップ1内に立設したことを特徴とする。
【0014】
第5発明は、第1発明から第2発明のいずれか一つに記載の発明において、前記浮上液回収手段によって回収された浮上液を直接に前記ミキシング部22に導くミキシング連通管路31を備えたことを構成したことを特徴とする。
【0015】
第6発明は、第1発明から第5発明のいずれか一つに記載の発明において、前記微生物保持手段15をカゴ体17内に微生物担持物16を浮遊状態で収容したもので構成し、回収した浮上液を前記カゴ体17に噴出するように供給するカゴ体連通管路を設けたことを特徴とする。
カゴ体の材料・形状などは特に限定されない。網体や格子などでカゴ体は構成される。カゴ体は微生物担持物を他の領域よりも高密度で収容する機能があればよい。
【0016】
第7発明は、第6発明において、前記回収した浮上液を前記ミキシング部22へ導くミキシング連通管路31を設け、前記ミキシング部22を出た液を前記カゴ体連通管路へ導くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以下、各発明の効果などについて説明する。
第1発明であれば、管路断面積が小さくなる部分では液体の速度が大きくなって静圧が低下し、管路断面積が大きくなる部分で液体の速度が小さくなり静圧が大きくなる。循環ポンプの加圧状態において、このような静圧変化を複数回、繰り返すことによって気体は液体に混合されていく。このため従来の曝気装置を用いる構成に比べて、好気性微生物による主に油脂分の分解を促進できる。したがって悪臭を低減できるとともに、油脂分を手作業で取り除く手間を低減又は省くことができる。
【0018】
第2発明であれば、第1発明と同様の効果を得ることができる。また、グリストラップ内で処理できるので、補助槽が不要であり省スペースである。
第3発明であれば、複数の抵抗壁を内周壁に立設するという簡単かつ安価な構成で、ミキシング部を構成することができる。
【0019】
第4発明であれば、回収管の外縁に開口又は切欠きを複数個設けるという簡単かつ安価な構成で浮上液を良好に回収することができる。また、この発明であれば、単位時間当たりの油脂分の排出量や排出有機物の種類が異なる多種多様なグリストラップであっても、回収管の径、吸込用開口部の幅や数、回収ポンプの能力などを適宜、選定するだけで、最適な浮上液の回収装置を構成できる利点がある。
また、浮上液回収管は安価であるからコストをかけることなく、一つのグリストラップに複数個の浮上液回収管を設けることができ浮上液の回収を効率化しやすい。
第5発明であれば、空気を大量に含んだ浮上液をミキシング部に導くことができ、油脂分、水分と気体を効率的に混合することができる。
【0020】
第6発明であれば、微生物担持物に担持された微生物と浮上液を効率的に接触させることができ、微生物による分解を促進させることができる。
第7発明であれば、空気を大量に含んだ浮上液をミキシング部において混合した後に、カゴ体に導くことができ、微生物による分解を促進させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明に係るグリストラップの処理装置の第1実施形態を示す概略構成図である。
この処理装置は、グリストラップ1と、グリストラップ1に付設された補助槽2を主要構成要素としている。
【0022】
グリストラップ1には、前記浮上液回収手段としての浮上液回収管3と、浮上液を回収する動力となる回収ポンプ4とを備えている。また、補助槽2には、浮上液回収管3a、回収ポンプ4aと、グリストラップ1の浮上液が接触する微生物保持部15と、補助槽2内の液体を循環させる循環管路21と、循環管路21に設けられたミキシング部22と、補助槽2内の液体と気体を加圧状態で循環管路21へ送り込む循環ポンプ20とを備えている。
【0023】
グリストラップ1と補助槽2の間には、グリストラップ1の浮上液を補助槽2へと送る送液管路5と、補助槽2の余分な液体をグリストラップ1へ戻す戻し管路28とが設けてある。
図1に示すグリストラップ1は、図示しない厨房装置からの廃液が入口37から最初に入る第1区画槽7と、浮上液回収管3が設けられた第2区画槽8と、第3区画槽9と、排出口10に面する第4区画槽11に区画されている。
【0024】
まず、浮上液回収管3について説明する。
図2(A)は浮上液回収管3の一例を示す拡大図、図2(B)はその平面図である。
浮上液回収管3は、外縁に複数の吸込用開口部12を備えた円形の回収管で構成されている。吸込用開口部12は浮上液を360゜の周囲から均等に吸い込めるように外縁においてほぼ等間隔で配置してある。
【0025】
図2に示す構成では、吸込用開口部12は4個の四角形スリット(四角形切欠き)を設けることで形成してある。吸込用開口部12はスリットでなく、四角形の開口で形成してもよい。複数個の吸込用開口部12の下端13は全て同じ高さとなるように調整してある。
【0026】
吸込用開口部12の先端までの高さHは、取付けようとする個々のグリストラップ1の水面の変動幅に対して十分な余裕があるように設定される。
例えば、H=50mm〜100mm程度に設定される。このような吸込用開口部12を備えた浮上液回収管3をグリストラップに取付けるときは、そのグリストラップの予想される最も低い水面14よりも余裕分hを持って、吸込用開口部12の下端13が位置するように浮上液回収管3が立設される。
図2(B)に示すように吸込用開口部12の開口幅Lは回収ポンプの吸引力と浮上液の表面張力のバランスによって浮上液を連続的に回収できる幅に設定される。
【0027】
図1に示すように、補助槽2に設けられた微生物保持部15は、微生物担持物16を一対のカゴ体17・17に収容したものが採用されている。微生物担持物16としては、ポリエチレンなどの発泡体を10mm〜30mm程度に造形したものなどが例示できる。
また、補助槽2内には、浮上液回収管3aと、浮上液を吸入する回収ポンプ4aと、回収された浮上液を回収ポンプ4aによってカゴ体17に向けて放出する第1供給管路18とを設けてある。この第1供給管路18は前記カゴ体連通管路の一例である。
【0028】
また、補助槽2内のカゴ体17の近くには、循環管路21の吸込み開口27が設けられ、循環ポンプ20によって回収された補助槽2内の液体を再び補助槽2へ戻すように構成してある。
【0029】
次に、循環管路21に形成されるミキシング部22について説明する。
図3(A)は循環管路21内に設けられたミキシング部22の一例を示す縦断面図、図3(B)はその横断面図である。
ミキシング部22は循環管路21内に複数の抵抗壁24を間隔Xで配置した構成としてある。抵抗壁24は液の進行方向に対してほぼ直交するように配設され、一の抵抗壁24の前後の抵抗壁24は一の抵抗壁24に対して内周壁において反対側に位置するように、互い違いに配設してある。各抵抗壁24の間隔Xは、ミキシング部22の横幅(円管の場合は直径Dに相当)に比べて短く(例えば、X<D)なるように設定してある。
また、図3(B)に示すように、一の抵抗壁24と前後の抵抗壁24との間には、間隔dが形成されるように内周壁からの各抵抗壁24の立設距離が設定してある。設置するグリストラップの油脂分が多くて粘性が高い場合は、前記間隔dを大きくしてミキシング部22において詰まることなく通過できるように調整する。
【0030】
また、図1に示す装置では、グリストラップ1の第4区画槽11にも浮上液回収管3b、回収ポンプ4b及び液戻管35を設け、第2区画槽8に第4区画槽11の浮上液が戻されるように構成してある。
【0031】
上記構成の処理装置の作用について説明する。
グリストラップ1の第2区画槽8内の浮上液回収管3から回収された浮上液は、送液管路5を経て補助槽2に送られる。補助槽2内へ送られた浮上液は油脂分と水分とを含んでいるが、補助槽2内でも油脂分が水面上に浮上することになる。
【0032】
補助槽2内の浮上液回収管3aからその浮上液は回収され、回収ポンプ4aによって第1供給管路18を経てカゴ体17の微生物担持物16に噴出される。ここで、微生物担持物15はカゴ体17内で移動を制限され、密集して存在しているので、第1供給管路18から放出される浮上液は効率的に微生物に接触することになる。
【0033】
さらに、浮上液回収管3aは油脂分のみならず、空気も吸込むのでカゴ体17に向けて放出される浮上液には多量の空気が含まれている。したがって、第1供給管路18によって油脂分を多く含む浮上液は空気中の酸素と混合されるとともに、直接的に微生物担持物15に向けて噴出することになるので、微生物による油脂分の分解が促進される。
【0034】
一方、補助槽2内のカゴ体17の近くには、循環管路21の吸込み開口27が設けられているので、空気を含んだ浮上液を循環ポンプ20の吸引力によって吸込み、循環ポンプ20によって加圧された空気と浮上液とが一緒になってミキシング部22へ送り込まれる。
ミキシング部22では、抵抗壁24が立設された位置では管路断面積が小さくなり、抵抗壁24がない位置では管路断面積が大きくなるので、静圧変化を繰り返して油脂分・水分と空気及び微生物が混ざり合うことになる。また、ミキシング部22内で圧送される液体は、互い違いに突設された各抵抗壁24で衝突を繰り返すことによって拡散状態が順々に高まって、ミキシング部22を出るころには、微細化された油脂分、水分、微細化された気泡(又は水分に溶け込んだ酸素)、さらには微生物が混然一体に混ざり合って補助槽2の上部位置へ戻されることになる。したがって、好気性微生物が働きやすい状態にすることができる。
【0035】
これに対して、従来のように補助槽2内に曝気装置を設ける構成では、液体が加圧状態でなく、油脂分は補助槽2内で単に浮遊して比重差によって液面へ浮上するだけであるから、油脂分、酸素、微生物との良好な混合状態は起こりにくい。
【0036】
なお、補助槽2内のオーバーフロー区画槽29には戻し管路28が設けられており、その戻し管路28から補助槽2内の余分な液体がグリストラップ1の第2区画槽8へ戻される。したがって、グリストラップ1の浮上した油脂分は補助槽2内において微生物によって分解され、残った水分のみがグリストラップ1へ返送されるように構成されているので、補助槽2内の液体が溢れ出ることはない。
【0037】
また、グリストラップ1の第4区画槽11に設けられた浮上液回収管3bは液戻管35によって第2区画槽8へ戻されるので、排出口10から浮上液の油脂分が排出することを抑制することができる。
このような油脂分解装置においては、油脂分を含んだ廃液が多量であっても油脂分分解専用の補助槽を備えているので、グリストラップから多量の油脂分が排出されてしまうことを防止することができる。
【0038】
(第2実施形態)
図4は本発明の第2実施形態を説明するためのグリストラップ1の縦断面図、図5はその平面図である。
第1実施形態がグリストラップ1とは別体の補助槽2を設けた構成であるのに対して、この第2実施形態はグリストラップ1に浮上液を分解する装置を内蔵又は付設した点を特徴としている。
【0039】
この処理装置は、一対の浮上液回収管3c・3cと、一対のカゴ体17・17と、浮上液を圧送状態でミキシング部22へ送る回収ポンプ4cと、浮上液回収管3c・3cで回収された浮上液をミキシング部22へ送るミキシング連通管路31・31と、ミキシング部22を出た液体を一対のカゴ体17・17へ戻す第2供給管路32・32とを備えている。この第2供給管路32は前記カゴ体連通管路の一例である。また、ミキシング連通管路31、ミキシング部22、及び第2供給管路32によって循環管路21が構成されている。本構成では回収ポンプ4cが循環管路21の循環ポンプを兼ねている。
【0040】
この実施形態であれば、複数個の浮上液回収管3cがグリストラップ1内に設けられているので、単位時間当たりの浮上液の回収量を増やすことができる。また、浮上液回収管3cから回収された油脂分は空気を大量に含んだ状態で直接にミキシング部22へ供給されるので、微生物が作用すべき油脂分と酸素を良好に混合することができる。
【0041】
さらに、ミキシング部22を経た浮上液は上方からカゴ体17・17内の微生物担持物16へ降り注ぐように落下するので、カゴ体17・17内での微生物担持物16の移動が大きくなり、油脂分と微生物の接触状態を向上させることができ、微生物による分解を促進できる。
【0042】
また、図5に示すように、一対の浮上液回収管3c・3cはグリストラップ1の一方のほぼ対角線上に配置され、四角形の角から対角線の長さの略1/4の距離にそれぞれの浮上液回収管3c・3cが配設されているので、グリストラップ1の水面において浮上した油脂分が局所的に偏在することを抑制することができる。
【0043】
さらに、一対のカゴ体17・17はグリストラップ1の他方のほぼ対角線上に配置され、四角形の角から所定位置にそれぞれ配設されているので、一対の浮上液回収管3c・3cとの距離を大きく取れ、第2供給管路32・32から落下した液の下流方向の流れによって浮上液回収管3c・3cの浮上液の回収が妨げられることを抑制できる。
【0044】
また、一対のカゴ体17・17の配設位置において表層水から下層水へ向かう流れを形成し、一方、一対の浮上液回収管3c・3cの配設位置において、表層水を吸込むような流れが形成されるので、グリストラップ1全体において、浮上液に含まれる油脂分と微生物との混合状態を良好に保つことができ、油脂分の分解を早めることができる。
【0045】
本発明は上記実施形態の構成に限らず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
(1)図1に示す構成では、カゴ体17の近くに循環管路21の開口27を設け、浮上液と一緒に吸込まれた空気を吸入するように構成したが、循環管路21の開口27に面した位置に空気注入管(図示せず)を設けて空気又は酸素を圧入するように構成することもできる。この構成であれば、第1供給管路18に流れる空気量(酸素量)に依存せず、微生物に必要な酸素量をミキシング部22へ送り込むことができる。
【0046】
(2)前記各実施形態において、グリストラップ又は補助槽に微生物注入装置を設けてもよい。
(3)第1実施形態に示す補助槽の構成を、第2実施形態で説明したグリストラップに設けられた各構成要素に代えても良い。但し、図1に示すように送液管路5と、戻し管路28は必要になる。
【0047】
(4)本発明において一つのグリストラップに設けられる補助槽は複数でも良い。複数個の補助槽を設ける形態は、浮上液の流れに関して並列である場合と直列である場合がある。
並列の場合は、例えば、グリストラップに設けられた浮上液回収管の数と一致する数の補助槽を設けるような構成である。直列の場合は、例えば、第1次補助槽と第2次補助槽を設け、第1次補助槽に設けられた浮上液回収管が回収する浮上液を容量の小さい第2次補助槽で分解する場合などである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は本発明に係る第1実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図2(A)は浮上液回収管の拡大図、図2(B)はその平面図である。
【図3】図3(A)はミキシング部の縦断面図、図3(B)はその横断面図である。
【図4】図4は本発明に係る第2実施形態の縦断面図である。
【図5】図5は本発明に係る第2実施形態の平面図である。
【符号の説明】
【0049】
1…グリストラップ、2…補助槽、3,3a,3b,3c…浮上液回収管(浮上液回収手段)、4,4a,4b,4c…回収ポンプ、5…送液管路、12…吸込用開口部、13…吸込用開口部の下端、14…最も下位の水面、15…微生物保持部(微生物保持手段)、17…カゴ体、18…第1供給管路(カゴ体連通管路)、20…循環ポンプ、21…循環管路、22…ミキシング部、24…抵抗壁、28…戻し管路、31…ミキシング連通管路、32…第2供給管路(カゴ体連通管路)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリストラップと違う位置に設けられた補助槽と、前記グリストラップの浮上液を回収する浮上液回収手段と、前記浮上液回収手段によって浮上液を回収するための回収ポンプと、前記グリストラップの浮上液を前記補助槽へと送る送液管路と、前記補助槽内に設けられ、前記グリストラップにおいて回収した浮上液が接触する微生物保持手段と、前記補助槽の余分な液体を前記グリストラップへ戻す戻し管路と、前記補助槽内の液体を循環させる循環管路と、前記補助槽内の前記液体と気体を加圧状態で前記循環管路へ送り込む循環ポンプとを備え、
前記循環管路に、前記液体の進行方向に対して管路断面積が小さくなる部分と管路断面積が大きくなる部分を複数個配置したミキシング部を設け、前記気体と加圧された前記液体を通過させることによって前記気体と前記液体を混合することを特徴とする、グリストラップ液の処理装置。
【請求項2】
浮上液を回収する浮上液回収手段と、前記浮上液回収手段によって浮上液を回収するための回収ポンプと、回収された浮上液が接触する微生物保持手段と、回収された浮上液と気体を前記グリストラップで循環させる循環管路と、を備え、
前記循環管路に、前記液体の進行方向に対して管路断面積が小さくなる部分と管路断面積が大きくなる部分を複数個配置したミキシング部を設け、前記気体と加圧された前記液体を通過させることによって前記気体と前記液体を混合することを特徴とする、グリストラップ液の処理装置。
【請求項3】
請求項1から請求項2のいずれか一項に記載のグリストラップ液の処理装置において、前記循環管路に複数の抵抗壁を立設し、前記循環管路の内周壁において一の抵抗壁の立設位置を前の抵抗壁の立設位置からずらすことによって前記ミキシング部を構成した、グリストラップ液の処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のグリストラップ液の処理装置において、前記浮上液回収手段を浮上液回収管で構成し、前記浮上液回収管は、外縁に配置された複数の吸込用開口部を備えており、前記グリストラップの最も下位の水面を前記吸込用開口部の下端よりも上方に位置させるように前記浮上液回収管を前記グリストラップ内に立設した、グリストラップ液の処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項2のいずれか一項に記載のグリストラップ液の処理装置において、前記浮上液回収手段によって回収された浮上液を直接に前記ミキシング部に導くミキシング連通管路を備えたことを構成した、グリストラップ液の処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のグリストラップ液の処理装置において、前記微生物保持手段をカゴ体内に微生物担持物を浮遊状態で収容したもので構成し、回収した浮上液を前記カゴ体に噴出するように供給するカゴ体連通管路を設けた、グリストラップ液の処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載のグリストラップ液の処理装置において、前記回収した浮上液を前記ミキシング部へ導くミキシング連通管路を設け、前記ミキシング部を出た液を前記カゴ体連通管路へ導く、グリストラップ液の処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−319818(P2007−319818A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154795(P2006−154795)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(599004070)株式会社アーサー (4)
【Fターム(参考)】