説明

グリセリンから生物起源のポリマーグレートのアクリル酸を製造する方法

14Cが最少量で重合プロセスに有害な不純物、特に全アルデヒド、プロトアネモニン、無水マレイン酸および非フェノール性重合禁止剤の含有量が所定限度以下であることで定義される、生物起源の「ポリマー」グレードのアクリル酸の製造方法。本発明の他の対象は出発原料としてグリセリンを用いたこの酸の製造方法と、エステルまたはアミドの形のアクリル酸誘導体の重合によって超吸収材の製造でのアクリル酸またはポリマーまたはコポリマーの製造での使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリセリンを出発原料として生物起源のポリマーグレードのアクリル酸を製造する方法に関するものである。
「生物起源」という用語はアクリル酸が基本的に天然起源の炭素源をベースにしているということを意味する。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸は極めて広範囲の最終製品を製造するための主として重合モノマーまたはコモノマーとして使用されている化合物である。この最終製品はエステル(ポリアクリレート)またはアミド(ポリアクリルアミド)の形でこの酸または酸誘導体の重合で製造される。アクリル酸の非常に重要な用途は超吸収剤(superabsorbents)である。この超吸収剤の製造では部分的に中和されたアクリル酸(アクリル酸とアクリル酸ナトリウムまたは他のカチオンのアクリレートとの混合物)を重合するか、アクリル酸を重合し、得られたるポリアクリル化合物を部分的に中和する。このポリマーはそのまま使用されるか、衛生用品、界面活性剤、ペイント、ニス、接着剤、製紙、織物、レザー等の各使用分野に応じたコポリマーにされる。
【0003】
アクリル酸の工業的な合成プロセスは古くから開発されている。第1世代の製造法は出発原料としてアセチレンタイプの三重結合を有する化合物を使用して、ニッケルベースの触媒の存在下で一酸化炭素と水との混合物とを反応させるものである。第2世代の製造法は今日でも工業的に最も広く使われている方法で、酸素または酸素含有混合物を使用したプロピレンおよび/またはプロパンの接触酸化反応を用いるものである。この反応は一般に気相で2段階で実行され、最初の段階はプロピレンのほぼ定量酸化でアクロレインリッチな混合気体を作る。ここではアクリル酸はマイナー成分である。第2段階ではアクロレインを選択酸化してアクリル酸にする。これら2つの段階は2つの反応装置で行うか、単一反応装置で反応を直列に実行させて行い、反応条件は異なり、各反応に適した触媒を必要とする、しかし、上記の2段階プロセスで第1段階からアクロレインを分離する必要はない。
【0004】
この方法の出発材料は石油または天然ガスであるので、得られたアクリル酸は再生不可能な化石燃料の炭素からなる。さらに、掘削プロセス、精製プロセス、一次原料の合成プロセスを必要とし、化石出発原料をベースに製造された生成物は使用寿命の終わりに二酸化炭素を生じる。プロピレンの酸化でアクロレインを作る反応およびアクロレインからアクリル酸を作る反応では副産物として二酸化炭素が生じる。これらは大気中の温室効果ガスの濃度を増加させる。大多数の工業化された国では温室効果ガスの排ガス流を減らす努力をしており、再生可能な出発原料をベースにした新しい製造方法に代えることによって上記の環境効果を減らすことが特に重要である。
【0005】
ここ数年間、製造メーカーは天然の再生可能な出発原料を使用した「生物起源」の合成のプロセスに対する研究開発を行ってきている。特に、従来法による生態学上への影響を減らすために非化石出発原料から始まる代替プロセスが開発されている。例としてはグルコースの発酵またはバイオマスからの糖蜜を出発原料として2-ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)を使用するプロセスが挙げられる。また、植物油のメタノール分解で得られるグリセロール(またグリセリン)を出発原料とするプロセスは、ガス油および加熱燃料として使われるメチルエステルと同時に得られる。植物油または動物性脂肪のメタノール分解はな周知の種々のプロセスを使用して、均一系触媒、例えば水酸化ナトリウムまたはナトリウムメトキシドのメタノール溶液または不均一系触媒を使用して実行できる。これに関しては非特許文献1を参照できる。
【0006】
出発原料としてヒドロキシプロピオン酸を使用するプロセスは主として経済的観点から欠点がある。すなわち、発酵反応は必然的に水に高度に希釈した条件下で実行される。アクリル酸を得るためには極めて多量の水を蒸留で除去しなければならず、非常に大量のエネルギーコストを必要とする。この水を除去するために消費するエネルギーは化石原料から製造される。この生物起源の出発原料からアクリル酸を製造するという利点はそのために失われる。特許文献1(国際特許第W02006/092271号公報)には酵素の経路で特に炭水化物から製造したアクリル酸からポリマーを製造するプロセスが記載されている。
【0007】
天然有機物始、例えばポリオールから化学的変成経路で酸またはアクリル酸の先駆体を構成する3つの炭素原子を有するアルデヒドを得る方法は古くから知られている。例えばグリセリンの脱水でアクロレインを合成でき、これは特許文献2(国特許第5387720号明細書)に記載されている。グリセロール(グリセリン)は植物油のメタノール分解で得られ、同時にメチルエステルが得られる。これは特にガス油および加熱鉱油の燃料として使用される。グリセロールは「グリーン」な天然物であり、大規模に入手でき、多量に保存でき、容易に輸送できる。多くの研究はその純度を上げてグリセリンの経済的価値を上げることに捧げられている。グリセリンの脱水でアクロレインにする経路は下記である:
CH2OH-CHOH-CH20H −> CH2=CH-CH0+2H20
この段階の後に従来の酸化段階でアクロレインをアクリル酸にする反応を行う:
CH2=CH-CHO+1/2 02 −> CH2=CH-COOH
【0008】
特許文献3〜6にはアルミニウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム等の無機酸化物(混合物または非混合物)をベースにした触媒の存在下でのグリセリンの気相脱水段階と鉄、モリブデン、銅等の酸化物をベースにした触媒の存在下でのクロレインの気相酸化段階と組み合わせたアクリル酸の合成方法が記載されている。しかし、アクリル酸の精製に関する詳細は記載がなく、得られたアクリル酸中に存在する不純物が何であるかについては記載がない。例えば特許文献5にはグリセリンから超吸収材製造用のアクリル酸の製造方法が記載されており、得られるアクリル酸の純度が99〜99.98%である。しかし残った不純物がなにであるかは記載がない。この特許の実施例2ではプロトアネモニンを含まないアクリル酸が得られることしか記載がなく、他の不純物が次の重合に与える作用についての記載はない。
【0009】
アクリル酸はアクリル酸の重合、そのエステル誘導体の重合で工業的に製造されており、重合は懸濁重合、乳化重合または溶液重合で行われる。これらの重合プロセスは不純物、例えばアルデヒドまたは不飽和化合物の存在に極めて敏感で、時として予想された使用値が得られず、例えばモノマーのポリマーへの変換が制限され、ポリマーの鎖長が制限され、また、不飽和化合物は重合に干渉する。他の不純物、例えば重合不可能な飽和化合物は最終用途で悪さをし、生成物の性質を変成し、問題となることがある。また、ポリマーの製造時および/または完成品の段階で完成品を着色したり、毒性や腐食性を与えたりする危険がある。
【0010】
アクリル酸(またはそのエステル)の品質規格に関してはユーザが厳しい要求をしており、不純物に関しては厳しい限度を満たさなければならない。すなわち、ポリマーを製造するアクリル酸またはアクリル酸エステルのユーザはプロピレンから製造したアクリル酸またはそのエステルの「標準」グレードからしかポリマーの生産ができない。ユーザ会社に対して明らかに不利な点を有するプロピレンからの従来方法とは異なるルートでアクリル酸またはそのエステルの異なる品質に合うようにプロセスが改良されている。化石材料または生物起源の材料(例えばグリセリン)のような出発物質に従ってアクリル酸やそのエステルの異なるグレードから同じ装置で一つのタイプのポリマーを生産すると、追加の研究開発コストの他に、生産設備に大きな変更とコストが必要になり、製造設備か複雑化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際特許第W02006/092271号公報
【特許文献2】米国特許第5387720号明細書
【特許文献3】国際特許第W02006/092272号公報
【特許文献4】国際特許第W02007/0219521号公報
【特許文献5】欧州特許第EP 1 710 227号公報
【特許文献6】国際特許第W02006/135336号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】D. Ballerini et al. in l'Actualite Chimique of Nov-Dec 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、現在市販のアクリル酸の上記の拘束条件、すなわち上流側では基本的に非化石資源をベースにしたアクリル酸での拘束、下流側では広範囲のテクニカルポリマーの製造で使用可能な品質を満たすアクリル酸での拘束を洗練されかつコストのかかる精製を必要としない方法で解決したいというニーズがある。
【0014】
本発明の目的は、天然炭素源をべースにしたポリマーグレードのアクリル酸の製造方法を提供することによって上記の課題を解決することにある。
上記グレードは大部分の重合プロセスに対して有害な不純物の含有量の閾値で定義される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の対象は、生物起源のポリマーグレードのアクリル酸の製造方法であって、アクリル酸の含有量は>99重量%で、不純物の重量含有量が下記:
プロトアネモニン(protoanemonin)<5ppm、
全アルデヒド<10ppm、
無水マレイン酸<30ppm、
非フェノール性重合禁止剤<10ppm、
で且つ14Cの含有量が14C/12Cの比が>0.8×10-12となる量であり、さらに下記の(i)〜(vii)の段階を有することを特徴とする方法にある:
(i) グリセリンの脱水でアクロレインを作り、
(ii) アクロレインの酸化でアクリル酸を作り、
(iii)得られたアクリル酸をアクリル酸の水溶液の形でカウンターフロー吸収で抽出し、
(iv) 水と共沸混合物を形成する水に不溶な溶剤の存在下で上記溶液を脱水し、
(y) 軽質化合物、特に酢酸および蟻酸を蒸留で除去し、
(vi) 重質不純物を蒸留で除去して「テクニカル」グレードのアクリル酸とし、
(vii)存在しているアルデヒドと化学反応可能なアミノ化合物をアクリル酸に添加した後に「テクニカル」グレードのアクリル酸を蒸留で精製して「ポリマー」グレードのアクリル酸とする。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明方法で得られる酸は下記の含有量を有するのが好ましい:
プロトアネモニン(protoanemonin)<3ppm、
全アルデヒド<3ppm、
無水マレイン酸<15ppm、
非フェノール性重合禁止剤<3ppm、
で且つ14Cの含有量が14C/12Cの比が>1×10-12となる量であり、
【0017】
本発明の目標は、出発原料としてグリセリンを使用し、グリセリンを上記2段階の変換−脱水および酸化−し、全体的な精製プロセスを取り入れて、ポリマーグレードのアクリル酸を製造する方法にある。
【0018】
本発明プロセスはプロピレンから中間生成物のアクロレインを合成する開始プロセスと極めて類似しており、最初の段階からの第2段階が同じ操作条件下で実行される点も同じである。しかし、本発明の最初の段階の反応である脱水反応は普通のプロセスのプロピレンの酸化反応とは異なっている。気相で実行されるこの脱水反応はプロピレンの酸化で使用されるものとは異なる固体触媒を使用して実行される。アクロレインを酸化してアクリル酸にする第2段階へ送られる一次脱水段階からのアクロレインリッチな流れは多量の水を含み、さらに、2つのルートの違いによる選択性の違いによる反応機構に起因する副産物に関して相当な相違を示す。
【0019】
自然期限の再生可能な物質の炭素ベースの出発原料を使用したことは、最終生産物の組成中の炭素原子で検出できる。すなわち、化石原料から生じた物質と違って、再生可能な出発原料から成る物質は14Cを含む。生物系(動物または植物)から得た全ての炭素サンプルは3つのアイソトープ:12C(98.892%)、13C(〜1.108%)および14C(痕跡:1.2×10-10%)の混合物である。生物組織の14C/12C比は大気のそれと同じである。環境中では14Cは主として2つの形:無機の形すなわち二酸化炭素(CO2)の形と、有機の形すなわち有機分子中に一体化された炭素の形で存在する。
【0020】
有機生物体中では炭素が環境と絶えず交換しているので、14C/12C比は新陳代謝によって一定に保たれる。大気中の14Cの比率は一定であるので、その比は生物中でも同じである。生きている間、生物は12Cと一緒に14Cも吸収し、14C/12C比の平均値は1.2×l0-12に等しい。12Cは安定しており、サンプル中の12C原子の数は経時的に一定である。一方、14Cは放射性であり、生物中の炭素の1グラム当たり毎分、13.6個の14C同位元素が崩壊する。半減期T1/214Cの崩壊定数と関係し、14Cの半減期は5730年である。14Cの半減期(T1/2)を考慮すると、14Cの含有量はバイオ資源の出発材料を抽出してから、これらの出発材料で「バイオ材料」を製造し、さらにはその使用終了までほぼ一定である。
【0021】
本発明の生物起源のアクリル酸の14C/12C比が0.2×10-12以上、好ましくは1×10-12以上である。製造で使用した炭素ベース成分の全てが非化石または天然期限の物質の場合、生物起源のアクリル酸の上記比はが1.2×10-12以上になる。
【0022】
サンプル中の14Cの含有量の現在の測定方法としては少なくとも下記の2つの方法がある:
(1)液体シンチレーションを用いたスペクトロメトリ:
(2)マススペクトル分析:サンプルをグラファイトまたはCO2ガスにし、質量分析機で分析する。この方法では14Cイオンを12Cイオンから分離するための加速器と質量分析装置とを使用して、2つの同位元素の比を求める。
【0023】
材料中の14Cの量を測定するこれらの方法はASTM D6866規格(特にD6866−06)およびASTM D7026規格(特に7026−04)に記載されている。これらの方法でサンプル中のデータを測定し、バイオ資源炭素が100%の参照サンプルのデータ(14C/12C比が1.2×10-12である)と比較することで、各サンプル中のバイオ資源炭素の相対百分比を求めることができる。続いてサンプルの14C/12C比をそこから演繹できる。
好ましい測定方法はASTM D6866−06規格(「加速質量分析法」)に記載のマススペクトル分析である。
【0024】
本発明の対象は、下記の(i)〜(vii)の段階を有することを特徴とするグリセリンからポリマーグレードの生物起源のアクリル酸の製造方法にある:
(i) グリセリンの脱水でアクロレインを作り、
(ii) アクロレインの酸化でアクリル酸を作り、
(iii)得られたアクリル酸をアクリル酸の水溶液の形でカウンターフロー吸収で抽出し、
(iv) 水と共沸混合物を形成する水に不溶な溶剤の存在下で上記溶液を脱水し、
(y) 軽質化合物、特に酢酸および蟻酸を蒸留で除去し、
(vi) 重質不純物を蒸留で除去して「テクニカル」グレードのアクリル酸とし、
(vii)存在しているアルデヒドと化学反応可能なアミノ化合物をアクリル酸に添加した後に「テクニカル」グレードのアクリル酸を蒸留で精製して「ポリマー」グレードのアクリル酸とする。
【0025】
グリセロールは化学物質:1,2,3-プロパントリオールで、これはプロピレンを有する開始材料として化学合成で得られるか、植物油または動物性脂肪のメタノール分解の共製品として得られる。油/脂肪の全体をアクリル酸にする一体ラインの場合の植物油のメタノール分解の予備段階ではメチルエステルとグリセリンとが得られる。このメチルエステルはガス油および家庭燃料として使われる。再生可能な物質を起源燃料の開発、特に植物油メチルエステル(VOME)の開発によって、この生産ルートによるグリセリンの生産量が大幅に増加し、グリセリンは変換オイルの10重量%のオーダに達している。
【0026】
グリセリンはグリセロールの水溶液を意味し、植物油または動物性脂肪から得られる、塩(NaCl、Na2SO4、KCI、K2S04等)を含む。この場合、塩を除去する予備段階がある。これは例えばイオン交換樹脂を用いるか、フランス特許第FR2 913 974号公報に記載のような流動床を用いる方法が一般的である。グリセリンの精製および蒸発方法に関する研究としては特に下記文献に記載のものが挙げられる。
【非特許文献2】G.B. D'Souza in J. Am. Oil Chemists' Soc., November 1979 (Vol 56) 812A, by Steinberner U et al. in Fat. Sci. Technol. (1987), 89 Jahrgang No. 8, pp 297-303
【非特許文献3】Anderson D.D. et al. in Soaps and Detergents: A Theoretical and Practical Review, Miami Beach, Fla., Oct 12-14 1994, chapter 6, pp 172-206. Ed: L Spitz, AOCS Press, Champaign
【0027】
一般にグリセリン水溶液が使用される。その濃度は広範囲に変わり、例えば20〜99重量%、好ましくは30〜80重量%のグリセリン水溶液が使用される。
【0028】
グリセリンからアクリル酸を得るためのプロセスの原理は連続した脱水および酸化反応をベースにする:
CH2OH−CHOH−CH2OH<−>CH2=CH−CHO+2H2
CH2=CH−CHO +1/2O2−>CH2=CH−COOH
【0029】
このプロセスは2つの異なる触媒で2つの互いに分離した段階で実行できる。脱水反応は平衡反応で、高温度で促進され、反応装置中で触媒の存在下で一般に150℃〜500℃、好ましくは250℃〜350℃間の温度で、1〜5バールの圧力で気相で実行される。また、液相でも実行できる。また、下記文献に記載のように、酸素または酸素-含有ガスの存在下で実行できる:
【特許文献7】国際特許第WO06087083号公報
【特許文献8】国際特許第WO06114506号公報
【0030】
酸化反応は分子酸素または分子酸素から成る混合物の存在下で200℃〜350℃、好ましくは250℃〜320℃の温度で1〜5バールの圧力下で酸化触媒の存在下で実行される。
【0031】
グリセリンの脱水反応は一般に固体酸触媒上で実行される。適した触媒は反応媒体に不溶で、H0で表されるハメット酸性度が+2以下の均一または多相な物質である。ハメット酸性度は特許文献9で最少している下記文献に記載のように、化学指示薬を使用したアミン滴定か、気相での塩基吸着で決定される。
【特許文献9】米国特許第5387 720号明細書
【非特許文献4】K. Tanabe et al. in Studies in Surface Science and Catalysis', Vol. 51, 1989, chap. 1 and 2
【0032】
触媒は天然または合成の珪素含有物質または酸性ゼオライト、モノ−、ジ−、トリ−またはポリ酸化無機酸を無機担体、例えば酸化物に担持させたもの、酸化物または混合酸化物またはヘテロポリ酸またはヘテロポリ酸塩から選択できる。これらの触媒は一般にヘテロポリ酸のプロトンを元素周期律表のI〜XVI族に属する少なくとも一つのカチオンで置換したヘテロポリ酸塩から成ることができる。このヘテロポリ酸の塩はW、MoおよびVから成る群の中から選択された少なくとも一つの元素を含む。特に、鉄ベース、リンベースおよびセシウム、リンおよびタングステンベースの混合酸化物を挙げることができる。
【0033】
特に、触媒はゼオライト、ナフィオン(Nafion、登録商標)複合材料(フルオロポリマーのスルホン酸ベース)、塩素化アルミナ、ホスホタングステン酸および/またはシリコ-タングステン酸および酸性塩、金属酸化物、例えばタンタル酸化物Ta25、酸化ニオブNb25、アルミナAl23、酸化チタンTiO2、ジルコニア面Zr02、酸化錫Sn02、シリカSi02を含む各種固形物、または酸官能基、例えばボラートB03、硫酸エステルSO4、タングステートWO3、ホスファートP04、シリケートSiO2またはモリブデートMoO3またはこれらの混合物を含浸させたシリコアルミン酸塩Si02/Al23から選択できる。
【0034】
上記触媒には促進剤、例えばAu、Ag、Cu、Pt、Rh、Pd、Ru、Sm、Ce、Yt、Sc、La、Zn、Mg、Fe、Co、Niまたはモンモリロナイトを加えることができる。
【0035】
好ましい触媒は燐酸処理したジルコニア、タングステン酸処理したジルコニア、シリカジルコニア、タングステン酸塩または燐タングステン酸塩が含浸したチタンまたは酸化錫、燐酸処理したアルミナまたはシリカ、ヘテロポリ酸またはヘテロポリ酸塩、鉄ホスフェートおよび促進剤を含む鉄ホスフェートである。
【0036】
この反応には酸化触媒として当業者に周知の任意タイプの触媒が使用できる。一般にはMo、V、W、Re、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sn、Te、Sb、Bi、Pt、Pd、RuおよびRhから選択される少なくとも一種の元素を金属の形、酸化物、硫酸エステルまたはホスファートの形で含む固形物が使用される。特に、Moおよび/またはVおよび/またはWおよび/またはCuおよび/またはSbおよび/またはFeを主成分とする組成物が好ましい。
【0037】
2つの異なる反応装置で2つの段階でプロセスを実行する場合には下記文献に記載のように2つの反応装置の間に水を中間凝縮するのが有利である。
【特許文献9】国際特許第WO 08087315号公報
【0038】
上記の連続した脱水および酸化反応をベースにしてグリセリンからアクリル酸を変換する反応を1つの同じ反応装置で実行することもできる。この反応スキームはオキシデハイドレーション(oxydehydration)として知られ、酸化反応の発熱特性が脱水反応の吸熱特性で補償され、それによってプロセスの熱バランスが良くなる。このタイプのプロセスでは各々が特定の種類の触媒から構成された上流側脱水ベッドと下流側酸化ベッドの2つの異なる触媒ベッドが使用され、また、脱水および酸化触媒の混合物から構成され「混合」触媒の単一のベッドを使用することもできる。単一反応装置から成る上記プロセスでは未変換のアクロレインを酸化相へ(分離後に)再循環する。
【0039】
第2段階(酸化反応)からのガス混合物はアクリル酸の他に下記を含む:
(1)一般に使用する温度および圧力条件下で非凝縮性の軽質化合物:窒素、未変換酸素、一酸化炭素および二酸化炭素(これらは最終酸化時に少量作られ、リサイクルによってプロセス中を循環)
(2)凝縮可能な軽質化合物:特に脱水反応で生じた水または希釈剤中の水未変換アクロレイン、軽質アルデヒド、例えばホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒド、蟻酸および酢酸
(3)重質化合物:フルフラール、ベンズアルデヒド、マイレン酸、無水マレイン酸、安息香酸、2-ブテン酸、フェノール、プロトアネモニン等。
【0040】
製造の第2段階は酸化反応し生じたガス流中に存在するアクリル酸を回収し、それを本発明のポリマーグレードのアクリル酸に変換することに本質がある。
【0041】
この精製段階の最初の段階(本発明方法の段階iii)はカウンターフロー(countercurrentwise)吸収によってアクリル酸を抽出する段階から成る。そのため、反応装置からのガスを吸収塔の底部から導入し、溶剤を吸収塔の最上部からカウンターフローで導入する。軽質化合物は通常使用する温度および圧力条件下(50℃以上、2×105 Pa以下)でこの吸収塔の最上部から除去される。このカラムで使用する溶剤は水である。吸収溶剤として使用する水はプロセス外から導入できるが、脱水段階で生じる水を、気体反応流の冷却で縮合して使用するのが好ましい。この吸収段階の操作条件は以下の通りである:気体反応混合物はカラム底に130℃〜250℃の温度で導入する。水はカラム最上部から10℃〜60℃の温度で導入する。水と気体反応混合物のそれぞれの量は水/アクリル酸の重量比が1/1〜1/4の間になるようにする。運転は大気圧で行なう。
【0042】
上記プロセスの変形例では、吸収塔を、アクリル酸水溶液中に低濃度で存在する極めて軽質な化合物(吸収塔の底部で回収した基本的に反応終了時に変換のアクロレイン)を蒸留するためのカラムと連結できる。この蒸留塔は6×103〜7×104Paの圧力下で運転し、その最上部に上記吸収塔から底部流を入れ、その最上部でアクロレインが濃縮されたアクリル酸流を除去する。これは吸収塔の下部へ再樹幹され、同じカラムの最上部で最終的に除去される。すなわち、未変換アクロレインから供給されるアクリル酸の水性混合物(重量比1/1〜4/1)が得られる。この混合物は「粗アクリル酸」といわれる。
【0043】
精製段階の第2段階(段階iv)は脱水段階で、この脱水段階は水と共沸混合物を形成でき且つ水に不溶性のアクリル酸の溶剤の存在下で実行される。溶剤は例えば次の溶剤から選択できる:メチルイソブチルケトン(MIBK)、トリメチルシクロヘキサノン、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸エチル、ブチル酸エチル、ヘプタン、ナフタリン、ジイソブチレン、メタクリル酸エチル、プロピル・アクリレート、プロピル・メタクリレート、トルエン、トルエン+C4−C8アルコール混合物、溶剤1(酢酸プロピルまたは酢酸エチルまたはメタクリル酸エチルまたはプロピル・アクリレートまたはプロピル・プロピオナート)の混合物+溶剤2(C4−C8アルコール)、溶剤1(C7炭化水素またはトルエン)+溶剤2(エステル:酢酸エチル、アクリル酸メチル、プロピル・アクリレートまたはエチル・アクリレートまたはニトリル:アセトニトリルまたはアクリロニトリル)の混合物、溶剤1(ジエチルケトンまたはペンタノンまたはMIBKまたはプロピル酢酸塩)+溶剤2(トルエン、ヘプタンまたはメチルシクロヘキサン)の混合物等。
【0044】
本発明の第1実施例では、脱水段階は溶剤の存在下でのアクリル酸の液/液抽出で実行でき、その後に有機相を蒸留してモノマーのアクリル酸を分離する。
【0045】
脱水段階は多数の特許に記載されている。例えば溶剤としてのメチルイソブチルケトン(MIBK)(特許文献10)またはトリメチルシクロヘキサノン(特許文献11)を使用するか、上記溶剤の存在下で水と異相共沸混合物を形成する溶剤混合物、例えばアセタートまたはメチルイソブチルケトン(例えば特許文献12に記載)または酢酸と共沸混合物を形成する溶剤、例えばトルエン(例えば特許文献13に記載)の存在下で蒸留する。
【特許文献10】米国特許第US 3 689 541号明細書
【特許文献11】フランス特許第FR 2 119 764号公報
【特許文献12】フランス特許第FR 2 554 809号公報
【特許文献13】日本特許第JP 03 181 440号公報
【0046】
本発明の第2実施例では、本発明方法の好ましくは脱水段階で上記の溶剤の一つ、特にMIBKのような溶剤の存在下でアクリル酸の共沸蒸留を行う。この蒸留塔は6×103〜7×104Paの圧力下で運転され、凝縮後のカラム最上部流を受けるデカンタを備え、そこで基本的に溶剤から成る有機相と水と大部分はホルムアルデヒドから成る水相とを分離し、有機相はカラム最上部へ還液として完全に再循環させる。このカラムのボイラの熱源は、粗アクリル酸中に存在する水に対する還液として戻す溶剤の重量比が理論共沸混合物(例えば:溶剤MIBKの場合、3/1)に対応するような溶剤還液比が得られるように調整する。カラム底で得られる流れ(脱水されたアクリル酸)は基本的に水を全く含まない(一般に1重量%以下)。
【0047】
別の実施例では、このカラムを溶剤回収用の第2カラムに連結して、共沸蒸留カラムの最上部で静置によって分離した水流を回収することができる。溶剤の痕跡量は水相中に溶けている。この少量の溶剤は大気圧下に運転されるこの溶剤回収カラムの最上部で蒸留され、凝縮され、上記カラムのデカンタへ再循環される。この溶剤回収カラムの底部からの水流は捨てられる。
【0048】
精製段階の第3段階(段階v)は軽質化合物、特に酢酸および蟻酸の蒸留による除去段階である。これは「トッピング」として周知である。共沸蒸留カラムの底部で得られた脱水されたアクリル酸流をこの蒸留塔の中央部へ送る。この蒸留塔は2×103〜2×104Paの最上部圧力下に運転される。カラム底部流は軽質化合物から解放されたアクリル酸から成る。酢酸および蟻酸がリッチなカラム最上部流は、必要に応じて直列な第2のカラムでさらに処理し、カラム最上部から随伴する少量のアクリル酸を回収することができる。
【0049】
精製段階の第4段階(段階vi)は蒸留による重質化合物の分離段階である。上記トッピング・カラムからの底部流を2×103〜2×104Paで運転される蒸留塔の底部へ導入する。その最上部でテクニカルグレードの精製されたアクリル酸流が得られる。
【0050】
精製段階の第5段階(段階vii)はテクニカルグレードのアクリル酸を精製して最終的なポリマーグレードのアクリル酸を得ることに本質がある。高分子量のポリマーを合成することを可能にするこのグレードのアクリル酸を得るためには、アクリル酸の沸点に極めて近い一定のアルデヒド、例えばフルフラール、ベンズアルデヒドおよびアクロレインを除去して、揮発性のために単なる蒸留では経済的に達成できなかった極めて低い含有量まで下げることが特に重要である。そのために、これらのアルデヒドと重質反応生成物を形成し、蒸留によって容易にアクリル酸から分離できる反応物質を使用してアルデヒドを化学処理で除去することができる。使用可能な反応物は特許文献14に記載のアミン、特に特許文献15に記載のヒドラジン誘導体ファミリー、例えばグリシン、または特許文献16、17に記載のヒドラジン水化物または特許文献18に記載のアミノグアニジン等である。
【特許文献14】米国特許第US 3 725 208号明細書
【特許文献15】日本特許第7.500.014号公報
【特許文献16】米国特許第US 3 725 208号明細書
【特許文献17】日本特許第7.430.312号公報
【特許文献18】欧州特許第EP 270 999号公報
【0051】
これらの化合物は塩の形で使用することもできる。これらに記載の全ての化学処理はアミノ反応物質とアルデヒドとの反応で水を生じるという欠点がある。アクリル酸中のこの不純物の存在はポリマー製造に有害になる。この理由から特許文献19に記載のように、重質化合物を分離するための最上部で軽質化合物を分離するためのアクリル酸の蒸留段階の前に、水を除去するための蒸留段階で化学処理を実行するのが有利である。
【特許文献19】日本特許第7.495.920号公報
【0052】
本発明保法の好ましい実施例では、テクニカルグレードのアクリル酸流を2×103〜2×104Pa程度の最上部圧力下で運転される蒸留塔へ、ヒドラジン誘導体から選ばれるアルデヒドの除去するためのアミノ反応物質、好ましくはヒドラジン水化物との混合物として、テクニカルアクリル酸中に存在するアルデヒドに対して2〜10のモル比でフィードとして供給する。基本的にアクリル酸と、水と、低濃度の酢酸とから成るカラム最上部流はプロセスの上流側、例えば粗アクリル酸流中またはトッピング・カラムのフィードとして再循環して、アクリル酸を回収することができる。カラム底部流は103〜2×104Pa程度の最上部圧力下で運転される第2カラムの底部へ送られ、そこで重質化合物は底部で除去され、最上部で「ポリマーグレード」のアクリル酸が蒸留で得られる。
【0053】
アクリル酸は容易に重合できる生成物であり、特に重合の開始に有利な比較的高い温度条件にあるこのモノマーがリッチ流の精製段階で容易に重合できる生成物である。アクリル酸のポリマーはモノマーに不溶であるので、精製プロセスの全ての装置中のアクリル酸リッチ流に重合禁止剤を導入することが重要である。
【0054】
アクリル酸の精製段階で一般に使用される重合禁止剤はフェノール系化合物、例えばハイドロキノンまたはハイドロキノンジメチルエーテル、フェノチアジン誘導体、チオカルバミド酸エステルのファミリー、銅(n-ブチル)ジチオカーバメートのような化合物、アミノ誘導体、例えばヒドロキシルアミン誘導体、ヒドロキシジフェニルアミンまたはフェニレンジアミンのファミリー、4-ヒドロキシ2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)のニトロオキシド誘導体、例えば4-ヒドロキシ-TEMPO または4-オキソ-TEMPOまたは金属塩、例えば酢酸マンガン等がある。これらの重合禁止剤はそれ単独または組み合わせて使用でき、また、酸素-含有ガスと一緒に導入できる。
【0055】
これらの重合禁止剤は一般にアクリル酸より揮発性が低い重質化合物で、カラム底部から除去される。一方、蒸留塔内部の気相のその濃度は低いが、重合の開始を防ぐには充分である。ポリマーの出現および蓄積を防ぐためのこれらの添加剤は一般に液体流の供給装置と一緒に導入するか、最上部およびカラムの各種位置および危惧の所で導入して、装置の全ての部品で重合禁止剤リッチな溶液が連独的かつ均一に還流されるようにする。一般に、精製段階を水溶流で行う場合、液体溶液中、例えばアクリル酸中または水中で入れる。
【0056】
最終蒸留塔(段階vii)の最上位で得られるポリマーグレードのアクリル酸は200+/-20ppmの濃度でハイドロキノン・ジメチルエーテル(HQME)が添加され、最終生産物はこの重合防止剤の添加によってカラム最上部流が安定する。
【0057】
本発明はさらに、超吸収剤(superabsorbents)製造での上記ポリマーグレードのアクリル酸の使用にも関するものである。この場合には、部分的に中和された酸を重合するかこのアクリル酸を重合してから得られたポリアクリル酸を部分的に中和する。
【0058】
本発明はさらに、ポリマーグレードのバイオ-アクリル酸の重合で得られる超吸収剤にも関するものである。
【0059】
本発明のさらに他の対象は、エステルまたはアミド形の酸の誘導体の重合による、ポリマーまたはコポリマー製造での生物起源の上記ポリマーグレードのアクリル酸の使用にある。
本発明のさらに他の対象は、生物起源のポリマーグレードのアクリル酸のエステルまたはアミド形の誘導体の重合で得られるポリマーまたはコポリマーにある。
【実施例】
【0060】
以下、本発明アクリル酸と、その製造方法の実施例を示す。
実施例1は粗グリセリンを精製する予備的段階、
実施例2はグリセリンをアクロレインの変換とその脱水段階、
実施例3はアクロレインの酸化でアクリル酸にする段階、
実施例4は水溶液の形で粗アクリル酸を回収する段階、
実施例5は粗アクリル酸を精製してアクリル酸を得る段階、
実施例6はテクニカルアクリル酸を精製してポリマーグレードのアクリル酸を得る段階、
実施例7は比較例である。
【0061】
以下の実施例では、テクニカルアクリル酸流およびポリマーグレードのアクリル酸流中の極めて低濃度の不純物を以下の測定方法で測定した(括弧中は精度、定量限界を示す):
(1)Lichrospher 100-RP-18カラムを用いた高速液クロマトグラフィと、UVスペクトロメトリ検出および外部較正による定量:プロトアネモニン(3%、0.1 ppm)、フルフラル(1.4%、0.1 ppm)、ベンズアルデヒド(0.2%、0.25 ppm)、無水マレイン酸、マイレン酸の形で分析(1.5%、0.1 ppm)、フェノチアジン系(2%、0.2 ppm)
(2)ジニトロフェニルヒドラジン存在下での同じ方法による予備的誘導体化:ホルムアルデヒド(3%、0.1 ppm)
(3)UV/可視スペクトロメトリ、アクロレインをエタノール/トリクロロ酢酸中酸性溶媒中の4- ヘキシルレソルシノールと塩化水銀(II)による触媒反応をさせた後に603ナノメートルで最大吸光指数を示す青い着色を現像:アクロレイン(5%、0.1 ppm)
(3)FFAPカラムでのガスクロマトグラフィ、フレームイオン化による検出、内部較正による定量:酢酸(3%、10ppm)
【0062】
実施例1
第1相は植物油のメタノール分解で得られる粗グリセリンから塩を除去して精製することに本質がある。粗グリセリン溶液は88.5重量%のグリセリンと、5.1重量%の水と、5.1重量%の塩化ナトリウムとから成る。外部電気加熱器で加熱した2リットル容積の撹拌反応器に8642gのフィード流を連続的に供給した。グリセリンと水蒸気は還流凝縮器で復水しレシーバに回収した。この精製は670Pa.の圧力下で行い、塩化ナトリウムを除去した7695gのグリセリン溶液を得た。
【0063】
実施例2
第2相ではグリセリンの脱水反応でアクロレインとし、水の一部を凝結する。この脱水反応は固定層反応器で気相でタングステン酸ジルコニアZr02/W03から成る固体触媒の存在下で320℃の温度で大気圧下で実行する。グリセリン(20重量%)と水(80重量%)の混合物を空気の存在下でO2/グリセリンのモル比を0.6/1に蒸発器へ送る。気体媒体は290℃で蒸発器から出て、反応装置に導入される。反応装置は30mmの直径を有するチューブに400mlの触媒を充填したもので、320℃の温度に維持された塩水浴(KNO3、NaNO3とNaNO2の共融混合物)中に浸してある。気体反応混合物は反応装置の出口で凝縮カラムの底部へ送る。この凝縮カラムの下側部分にはラシヒリングが充填され、その上に冷たい熱交換液が循環するコンデンサが載っている。熱交換器の温度はカラム最上部で大気圧で72℃の温度の蒸気を得るように調整する。この条件下での凝縮カラム底部でのアクロレインのロスは5%以下である。
【0064】
実施例3
第3相では、6.5mol%のアクロレイン濃度を得るのに必要な量の空気および窒素(O2/アクロレイン・モル比=0.8/1)を添加した後に、1.75mol/hのアクロレインから成るガス混合物を、アクロレインを酸化してアクリル酸にする反応装置のフィードとして導入する。この酸化反応装置はMo/V混合酸化物をベースにした480mlの触媒が充填された30mmの直径を有する管から成り、この管は250℃の温度に維持された塩浴(実施例2と同じもの)中に浸してある。触媒ベッドへ導入する前にガス混合物は塩水浴中に静めた管中で予熱する。
【0065】
実施例4
第4相はガス混合物中に存在するアクリル酸を水溶液の形(粗アクリル酸)で回収することに本質がある。第2反応装置の出口からのガス混合物を大気圧で運転される水がとカウンターフローで流れる吸収カラムの底部に導入する。このカラムにはProPakタイプのランダムパッキンが充填されている。このカラムの最上部から水を外界温度で110グラム/時で導入する。カラムの高さ全体の下側1/3の部分に冷却部を有し、この冷却部の下に150℃で反応ガスを導入する。カラム底部の液体の一部を抜き出し、外部熱交換体で冷却してからこの冷却部の最上部へ再循環する。カラム最上部の蒸気温度は75℃である。カラム底で得られる粗アクリル酸水溶液は80℃である。底部で得られる生成物(粗アクリル酸)は50重量%のアクリル酸と、6.5重量%の酢酸と、43重量%の水とから成る。
【0066】
実施例5
第5相は粗アクリル酸を精製してテクニカルグレードのアクリル酸を得ることに本質がある。そのために一連の連続した蒸留を行う。上記で得られた水溶液をメチルイソブチルケトン(MIBK)と共沸混合物の形で水を除去するために最初に蒸留する。カラムにはProPakエレメント(理論段15の交換効率)を充填し、その中央に粗アクリル酸を送り、最上部へMIBKIを送る。粗アクリル酸中のMIBK/水の重量比は3/1にする。共沸混合物は45℃の最上部温度で、1.2×104Paの圧力で留出させる。カラム底部で回収される脱水済のアクリル酸は1重量%以上の水は含まない。これを最上部で軽質化合物(基本的に酢酸)を除去するためのトッピング・カラムのフィードとして送る。トッピング・カラムにはProPakエレメント(理論段20の交換効率)を充填し、その中央に脱水されたアクリル酸の流れを入れる。最上部では最上部温度38℃で5.3×103Paの圧力で「酢酸リッチ」流が留出させる。このカラムの底部で回収された頂部アクリル酸の酢酸含有量は0.1重量%である。これは17段の多孔板を備えたテーリング・カラムのフィードとして送られ、その底部で重質化合物を除去する。テーリング・カラムは最上部温度81℃で1.2×104Paの圧力で還流比1で運転される。カラム最上部で得られるアクリル酸はテクニカルアクリル酸(TAA)を構成する。テクニカルグレードのアクリル酸の分析から、生成物は0.0005重量%のプロトアネモニンと、0.0032重量%のフルフラールと、0.0005重量%のベンズアルデヒドと、0.005重量%のアクロレインと、0.11重量%の酢酸と、0.0019重量%の無水マレイン酸とから成る。
【0067】
実施例6
テクニカルグレードのアクリル酸にヒドラジン水化物を加える。その割合は存在するアルデヒド(フルフラール、ベンズアルデヒド、アクロレイン等)に対して7/1の比である。この流れを17段の多孔板を備えたカラムで最上部温度69℃で9×103Pa圧力の蒸留する。
上記の全ての蒸留段階で、ポリマーの生成を避けるために重合禁止剤をカラム最上位に導入する。重合禁止剤としてはフェノチアジン系(PTZ)、ハイドロキノンおよびハイドロキノン・ジメチルエーテル(HQME)を当業者に公知の含有量で使用する。
最終蒸留塔では最上部から数えて5番目のプレートにフェノチアジン系を導入し、ポリマーグレードアクリル酸の溶液としてのHQMEを最上部に導入する。最後にHQMEを導入してポリマーグレードアクリル酸のこの重合禁止剤の濃度を0.02%にする。
得られたポリマーグレードのアクリル酸の分析から、生成物は1.5ppmのプロトアネモニンと、0.8ppmのフルフラールと、0.5ppmのベンズアルデヒドと、0.2ppmのアクロレインと、4ppmのアセトアルデヒドと、0.6ppmのホルムアルデヒドと、0.15%の酢酸と、12ppmの無水マレイン酸と、0.2ppmのPTZとから成る。得られた生成物はヒドラジンを全く含まない。さらに、質量分析による方法に従ったASTM D 6866-06規格でサンプルの14C含有量は14C/12C比が0.9×10-12より大きいことが測定された。
【0068】
実施例7(比較例)
実施例4で得られたアクリル酸水溶液(粗アクリル酸)(540g)を、国際特許出願第W02006 092272号公報に記載の実施例2と同様に、その重量の50%のトルエンと混合する。この混合物は0℃に冷却されたジャケット付き容器中で強く撹拌する。撹拌は停止し、1時間放置すると互いに不溶な2相に分離する。トルエンリッチな有機相(61.%)が上相である。この有機相(307g)を分離する。これは30%のAA、すなわち開始混合物中に存在するAAの34.7%だけを含む。この溶液を5段の理論段を有する交換効率を有するProPakエレメントを充填したカラムで蒸留する。初留液は226gのトルエンと水の共沸混合物リッチに対応し、31〜43℃の最上部温度かつ9.1×103Paの圧力で蒸留し、18.6gのAA(すなわち開始溶液中に存在するAAの6.9%のロス)から成る。純粋生成物に対応する第2のフラクションは最上部温度76℃で蒸留する。この含有量は97.6%のAAと、0.11%の水である。この52gの精製生成物は開始溶液中に存在するAAの19.3%のみを有する。従って、回収収率が極めて悪く、経済的に許容されるプロセスにはならない。しかも、この生成物の分析結果からポリマー生産の用途には不適当な1.47%の酢酸、75ppmのフルフラール、41ppmのベンズアルデヒド、17ppmのプロトアネモニンおよび8ppmの無水マレイン酸といった不純物濃度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリンから、アクリル酸の含有量が>99重量%で、不純物の重量含有量が下記:
プロトアネモニン< 5ppm、
全アルデヒド< 10ppm、
無水マレイン酸< 30ppm、
非フェノール性重合禁止剤< 10ppm、
で且つ14Cの含有量が14C/12Cの比が>0.8×10-12となる量である、生物起源のポリマーグレードのアクリル酸の製造方法であって、
下記の(i)〜(vii)の段階を有することを特徴とする方法:
(i) グリセリンの脱水でアクロレインを作り、
(ii) アクロレインの酸化でアクリル酸を作り、
(iii)得られたアクリル酸をアクリル酸の水溶液の形でカウンターフロー吸収で抽出し、
(iv) 水と共沸混合物を形成する水に不溶な溶剤の存在下で上記溶液を脱水し、
(y) 軽質化合物、特に酢酸および蟻酸を蒸留で除去し、
(vi) 重質不純物を蒸留で除去して「テクニカル」グレードのアクリル酸とし、
(vii)存在しているアルデヒドと化学反応可能なアミノ化合物をアクリル酸に添加した後に「テクニカル」グレードのアクリル酸を蒸留で精製して「ポリマー」グレードのアクリル酸とする。
【請求項2】
段階(iii)の吸収溶剤として水を使用する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階(iii)での吸収塔をアクロレインのような非常に軽い化合物を蒸留するための塔と連結する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
溶剤を使用する段階(iv)を液/液抽出によって行い、その後に蒸留によって有機相中に存在するアクリル酸を分離する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
溶剤を使用する段階(iv)を共沸蒸留で行う請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
溶剤を使用する段階(iv)を溶剤回収用の第2のカラムに連結する請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
溶剤がMIBKである請求項4〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
「テクニカル」グレードのアクリル酸の精製段階(vii)を2つの蒸留塔を使用して実行する請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
アミノ化合物がヒドラジン誘導体、好ましくはヒドラジン水加物である請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
プロトアネモニンの含有量が<3ppmである請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法で得られるアクリル酸。
【請求項11】
全アルデヒドの含有量が<3ppmである請求項1〜90のいずれか一項に記載の方法で得られるアクリル酸。
【請求項12】
無水マレイン酸の含有量が<15ppm である請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法で得られるアクリル酸。
【請求項13】
非フェノール性重合禁止剤の含有量が<3ppm である請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法で得られるアクリル酸。
【請求項14】
部分的に中和したアクリル酸を重合するか、アクリル酸を重合し、得られたポリアクリル酸を部分的に中和するアクリル酸の超吸収材(superabsorbents)の製造での請求項10〜13のいずれか一項に記載のアクリル酸の使用。
【請求項15】
請求項10〜13のいずれか一項に記載のアクリル酸の重合で得られる超吸収材(superabsorbents)。
【請求項16】
エステルまたはアミドの形の誘導体の重合で得られるポリマーまたはコポリマーの製造での請求項10〜13のいずれか一項に記載のアクリル酸の使用。
【請求項17】
請求項10〜13のいずれか一項に記載のアクリル酸のエステルまたはアミドの形の誘導体の重合で得られるポリマーまたはコポリマー。

【公表番号】特表2012−502893(P2012−502893A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526546(P2011−526546)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051718
【国際公開番号】WO2010/031949
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】