説明

グリーンカーテンを備えた体育館

【課題】
従来は体育館の室内温度を下げようとすると、窓を開けて換気をしたり冷房を使用し
たりしていた。しかし冷房を使用しても広い室内全体を均一に冷やすことは難しく、夏 季における体育館内は非常に高温多湿となり大変危険で大きな問題となっていた。
また災害時に緊急避難場所となった際も、緊急避難生活は大変過酷なものになってし まうといった問題点もあった。
【解決手段】
プランターや植木鉢を収納する基台は長方形の箱型に作られ、その長さ方向の両側に 横部材が固定できる貫通口が設けられ、これらに縦部材や横部材からなるフレームを構 築し、棒部材間にネットを取付けこれに前記プランターや植木鉢で繁殖させた蔓状植物 で全体を覆うようにしたグリーンカーテンを、少なくとも陽が当る建物の外壁部に取付 け、さらにトラス構造の屋根上面には太陽光発電パネルを設置し太陽光発電パネルから 発生する電力を用いて該建物内の照明ならびに空調や前記グリーンカーテンへの給水を も行うようにしたグリーンカーテンを備えた体育館。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本考案はグリーンカーテンを備えた体育館に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は建物の温暖化対策の考え方においていろいろ調査・検討を重ねた結果、問 題解決への有効性、作業性、効率性を考慮に入れた試行錯誤の結果今回の発明、考案に たどり着き既に出願人は関連出願に実願2008−9061、実願2009−3195 などの出願を完了し今回さらにこれらの集大成として今回の出願に至っている。
従来の体育館は断熱性が低い構造となっており夏季に室内温度を下げようとすると、 窓を開けて換気をしたり冷房を使用したりしていた。しかし広い室内全体を均一に冷や すことが困難であった。そこで本出願人は、軽量で耐地震性能も高いトラス構造の屋根 に目を向け体育館の少なくとも陽の当る壁面をグリーンカーテンで覆い、屋根上面に太 陽光発電パネルを設置して、室内温度の調整や前記グリーンカーテンの維持管理の為の 循環水の供給、照明やポンプの駆動用電力等の全てに活用できるように工夫されたグ
リーンカーテンを備えた体育館を提供しようとするものである。このような構成からな るので非常時における緊急避難場所の活用にも大きく期待できるものである。
なお関連技術に下記の物件がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−328925号公報
【特許文献2】特開2008−228731号公報 上記文献1には高所位置に噴霧器と送風機の一体型装置を設置することを特徴とする ヒートアイランド現象を抑制させるシステム装置との記載があった。 さらに特許文献2には、壁面に取り付け可能なパネルと、該パネルに取り付けられ複数 のプランターを設置可能であると共に該プランター内の植物に灌水可能な灌水路と、雨 水が貯留される雨水タンクと、該雨水タンク及び上水源に接続され前記灌水路に前記雨 水又は上水を循環水として供給する循環水循環機構と、を備え、該循環水循環機構が、 前記貯留された雨水量が所定量より多い場合に前記雨水を循環水として供給すると共 に、前記雨水量が所定量以下の場合に前記上水を循環水として供給する制御を行う循環 水制御部を備えていることを特徴とする壁面緑化システムとの記載があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上に述べたように従来は、陽射しの強い日や夏季などに体育館の室内温度を下げよ うとすると、窓を開けて換気をしたり冷房を使用したりしていた。しかし風の強い日や 弱い日などがありなかなか思うようにいかず、冷房を使用すると冷えすぎてしまう場所 やなかなか温度が下がらない場所もあり室内全体を均一に冷やす事は難しいうえ、冷房 から出る強い冷気の流れにより球技などの競技に影響を及ぼすこともあった。そのため 競技中の冷房の使用を控えたり窓を閉め切っておくこともあり、夏季における体育館内 は非常に高温多湿となり気分が悪くなったり、熱射病を引き起こすこともあり大変危険 で大きな問題となっていた。
また災害時に緊急避難場所となった際も、ライフラインが破断され電気や水道が遮断 されると照明や通信、冷暖房機器や水道、水洗トイレなど全てが使用できなくなり、緊 急避難生活は大変過酷なものになってしまうといった問題点もあった。
【0005】
また、上記特許文献1ではヒートアイランド現象を抑制させるためのシステムで、ビ ルの屋上など高所に霧の出る噴霧器と送風機の一体型装置を設置し、外気温が30度以 上に達した時点で太陽光発電装置を利用し、貯水槽より浄化された雨水や地下水、水道 水を汲み上げ噴霧器により四方八方へと流れ出した霧を送風機により遠方へ散らしなが ら落下させ、大量の霧が気化熱を奪いながら外気温度を低下させ、微風を起こさせなが ら落下し建物その他の構築物などの蓄熱を低下させて行くとあるが、ビルの屋上という 高所より落下してくる霧と発生させた微風のみによって夏季に30度以上に達してし まった外気温を下げ続け、建物その他の構築物の蓄熱を地上部まで低下させ続け、さら に室内温度の上昇を軽減させたうえで電力使用量の抑制もしなければならない。
【0006】
これを実現するためには長時間に及ぶ装置の稼動と相当量の水量が必要と思われるが 水を霧にして利用してしまうため循環などによる再度の利用ができない。また発生させ た霧を地上まで確実に送り届けなければならないが、建物の形状や風の影響を受けて霧 が特定の方向へ流されてしまったり落下中に蒸発してしま事も考えられ目的の建物や構 築物の地上まで送り届けることは大変困難と思われる。またこれらに用いられる電力の 負担も大変大きいものと推測される。
【0007】
また日没後の気温が30度以下に下がらない場合や夜間気温が25度以下に下がらな い熱帯夜でも、太陽光発電だけを利用して水を汲み上げたり、噴霧器や送風機によって 霧を発生させて気温を下げる考え方では夜間の使用が出来ないという問題点もある。
【0008】
さらに特許文献2では、建物の壁面にパネルを取付け植物を植栽したプランターをパ ネルに設置し、雨水を利用しつつ安定して自動的に潅水を行うことができる壁面緑化シ ステムで、太陽光発電から供給される電力を使い商用電源の電気費用を削減することが できるとされるが、建物の壁面を覆うためにはかなりの量の土壌を必要としその為の重 量の負担も大きくなり、使用する水も相当量必要になってくる。
【0009】
また建物のガラス面などにはパネルやプランターの設置が難しく、建物の壁面全体の 緑化が構築されにくく、その際ヒートアイランド現象の緩和は困難である。さらに植物 が枯れてしまった場合プランターの取り外しや植え替えなど、特に高所においての作業 には落下物や転落といった危険も伴い大変困難で大きな問題もある。
【0010】
本考案では上記問題を解決する為に、少なくとも陽が当る建物の外壁部にグリーン カーテンを備え壁面緑化による外断熱と陽射しを遮り植物による蒸散作用によって、体 育館内の温度を外気温に比べて3〜4度下げる事ができ、そのために冷房に特に大きな 電力は必要としない。その電力は屋根上面に設けた太陽光発電パネルで補う事ができ
る。
さらに雨水などを溜めた貯水槽の水をポンプアップすることでグリーンカーテンに水 を供給することでほとんど水道水などの供給が要らない体育館を提供することを目的と するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本考案は上記課題を解決するために、プランターや植木鉢を収納する基台は長方形の 箱型に作られ、その長さ方向の両側に横部材が固定できる貫通口が設けられ、これらに 縦部材や横部材からなるフレームを構築し、棒部材間にネットを取付けこれに前記プラ ンターや植木鉢で繁殖させた蔓状植物で全体を覆うようにしたグリーンカーテンを、少 なくとも陽が当る建物の外壁部に取付け、さらにトラス構造の屋根上面には太陽光発電 パネルを設置し太陽光発電パネルから発生する電力を用いて該建物内の照明ならびに空 調や前記グリーンカーテンへの給水をも行うようにしたグリーンカーテンを備えた体育 館。
【発明の効果】
【0012】
本考案は上記構成から成るので以下に示す効果が期待できる。
1 基台の設置やフレームの組立が簡単なのでいろいろな場所に壁面緑化が出来る。
2 基台内のプランターや植木鉢は、植物の発育状態を見極めいつでも簡単に入れ替 えができる。
3 外壁や窓の外面に設置されたグリーンカーテンの遮光によって、外断熱効果と植 物の蒸散作用により体育館の室内温度の低減がはかられる。
4 フレームを散水用のパイプとしても使用する事もできる。
5 屋上に設置された太陽光発電パネルにより、屋上にあたる直射日光を遮り断熱効 果が得られ体育館の室内温度の更なる低減がはかられる。
6 太陽光発電パネルにより発電された電力によって体育館の照明や空調、散水ポン プなどを稼動させることができる。
7 蓄電池を設置して太陽光発電パネルにより発電された電力を蓄える事もできる。
8 蓄電された電力によって夜間の室内や外灯の照明にも利用できる。
9 発電した電力を売ることもできる。
10 貯水タンクを設ける事で雨水を貯水することができる。
11 貯水された雨水はグリーンカーテンへの給水や水洗トイレなどで利用でき水道 水を節約することができる。
12 災害時にライフラインが遮断されても設備が整っているので非難施設としての 活用ができる。
13 繁殖させる植物を一年草にする事で冬季には室内に充分な陽射しを取り入れる ことができる。
14 繁殖させる植物をきゅうりやゴーヤ、かぼちゃ等にする事で野菜を収穫するこ ともできる。
15 体育館が緑化されることで癒し効果が得られる。
16 体育館そのものをトラス構造にする事で軽量化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】アーチ型屋根構造物の平面図
【図2】A00A矢視図
【図3】アーチ型屋根構造物の正面図
【図4】図5の部分詳細図
【図5】図3の拡大図
【図6】グリーンカーテンの拡大図
【図7】グリーンカーテンの拡大図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本出願人がここで体育館のトラス構造屋根を特にテーマに上げた理由には、一般構造 物に比べ重量が軽く構成される事から建設費用が安く作ることが出来ると共に耐震性能 も容易に達成される事から、特に効果の大きいアーチ型の屋根は身近でも沢山目にする 事もできる。これに太陽光発電パネルや緑化に伴なう配水供給も簡単に出来る事からこ れに基づいた考えで構成をまとめてみたものである。ただしトラス構造の屋根とはアー チ型に限らず山型等でも差し支えない。
【0015】
以下、本考案の実施形態を図面を参照して説明する。
図1から図7に示すように、プランターや植木鉢2を収納する基台3は木製や金属、 陶器などからなり長方形の箱型に作られてあって上部が開口されてあり、その長さ方 向の両側に棒部材が固定できる貫通口4がもうけられてある。
この基台貫通口4には金属や木製、炭素繊維などからなる横部材5Aが通されてあ り、接合部材6Aを介して隣りあう基台3の貫通口4より通された横部材5Aと連結さ れ、さらにその接合部材6Aには縦部材7も連結されてあり縦部材7の上部は接合部材 6Bを介して横部材5Bと連結されてあり、連続したフレームが構築されている。
【0016】
また、このフレームは連続して構築するだけではなく基台3ごとに独立して構築する 事も出来るが、その際は隣り合うフレームどうしの少なくとも上部と下部は固定部材8 を介して固定されていることが好ましい。さらに設置場所に合わせてフレームの角度を 設定した後にフレームの上部は固着手段9をもって固定されてある。また基台3を床面 に固定しておくことも当然考えられる。
【0017】
このフレームには市販の化学樹脂や植物繊維、金属などからなる網目5cmから15 cm位の蔓状植物用のネット10が全面に張られてあって、基台3に収められたプラン ターや植木鉢2にはアサガオやツタ、夕顔などの蔓状植物11が植えられてあり、繁殖 させた蔓状植物11でネット10全面が覆われてグリーンカーテン1が構築されてい る。
このグリーンカーテン1によって建物の外壁部や窓部12に射す直射日光が遮られ、 外断熱効果と植物から発せられる蒸散効果によって、室内温度の上昇が抑えられる。こ のグリーンカーテン1は建物の少なくとも陽が当る外壁部に壁面や窓面12から少なく とも10cm離して隙間なく連続して取り付けられる。
【0018】
また体育館の外壁部に数段のブラケットやベランダ13などを設け、そこに基台3を 設置することで、より短期間に壁面全体を覆うグリーンカーテン1を設置させる事がで きる。また地上部の基台3に植えられた植物11を軒高まで繁殖させたグリーンカーテ ンを設置する場合はネットをロープやワイヤー、アンカー等により固定する事もこの発 明に含まれる。
【0019】
基台3に入れられることでプランターや植木鉢2は夏季の強い直射日光や地面からの 照り返しを遮ることができ、土壌温度の上昇が抑えられ植えられた植物の根にかかる負 担を軽減させることができる。
またプランターや植木鉢2には季節ごとに種を撒いて植物を育てることもでき、入替 えが簡単なので植物を植え替えたり不要時に撤去することも容易で、一年草や冬季に地 上部が枯れてしまう多年草を植栽しておけば冬季には室内に充分な陽射しを取り入れる こともできる。さらにトマトやきゅうり、ゴーヤなどの植物を繁殖させることで野菜を 収穫することも出来る。
特にプランターや植木鉢2を収納できる基台3の為、持ち運びがし易くこれらそれぞ れが分業の作業として行えることでより作業の能率向上も図られる。
【0020】
またフレームに散水用の穴の開いたパイプを用いフレームと給水管を繋ぎフレームパ イプから直接潅水が出来るようにしたり、散水チューブ(商品名)やウォータースプレ イパイプ(商品名)、マカロニホース(商品名)等を使用することで一斉に植物に潅水 することもでき、潅水にかかる労力や手間を軽減しながら土壌の乾き具合や植物の状態 に合わせて容易に効率的に潅水することが出来る。
【0021】
さらにトラス構造の屋根部14には、単結晶や多結晶、薄型シリコンなどで作られた 既製の太陽光発電パネル15が隙間なく全面に配置されてあり、この太陽光発電パネル 15によって建物の屋根部14にあたる陽射しが遮られ断熱効果が得られ、さらなる室 内温度の上昇も抑えられる。
【0022】
また太陽光発電パネル15によって発電された電力は蓄電池に蓄電され、この電力に よって該建物内の照明や空調、散水ポンプなどの稼動に用いられる。この蓄電された電 力は夜間でも使用することができるので外灯や夜間照明などの稼動にも用いられる。
【0023】
また貯水用タンク16に、雨樋から集められた雨水が蓄えられてその水はグリーン カーテン1の為の散水や、水洗トイレに使用することもできる。その為のポンプの稼動 は太陽光発電パネル15による電力を使用することができる。
【0024】
このようなことで作られた体育館は、災害時にライフラインが破談され電気や水道が 遮断された場合でも、体育館で使用する電力とトイレで使用する水が確保されてあるの で緊急避難場所として大きく期待できる。また避難場所である体育館の電力と水の確保 は大変重要で貴重な為、夏季における冷房の使用による電力の消費を最小限にとどめる 為には、グリーンカーテン1や太陽光発電パネル15による外断熱効果や、雨水をトイ レに利用することは大変有効である。さらにトイレの水をより多く確保するためには浄 化槽からの排水を再利用することも考えられる。
また飲料水を確実に確保するためには、上水専用の貯水タンクを設置しておくことも 大変有効である。
【0025】
さらにコントロール室を設ける事で、直流電流を交流電流に変換する為のパワーコン ディショナーや室内分電盤、電力量計や蓄電池、また貯水槽のポンプや潅水用のバルブ 等を一括管理する事ができ更なる効率化が図られる。
また潅水や貯水方法はこれだけに限定されない。
【符号の説明】
【0026】
1 グリーンカーテン
2 プランター、植木鉢
3 基台
4 貫通口
5A 5B 横部材
6A 6B 接合部材
7 縦部材
8 固定部材
9 固着部材
10 ネット
11 蔓性植物ネット
12 壁面、窓面
13 ブラケット、ベランダ
14 屋根部
15 太陽光発電パネル
16 貯水用タンク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランターや植木鉢を収納する基台は長方形の箱型に作られ、その長さ方向の両側に横部材が固定できる貫通口が設けられ、これらに縦部材や横部材からなるフレームを構築し、棒部材間にネットを取付けこれに前記プランターや植木鉢で繁殖させた蔓状植物で全体を覆うようにしたグリーンカーテンを、少なくとも陽が当る建物の外壁部に取付け、さらにトラス構造の屋根上面には太陽光発電パネルを設置し太陽光発電パネルから発生する電力を用いて該建物内の照明ならびに空調や前記グリーンカーテンへの給水をも行うようにしたグリーンカーテンを備えた体育館。
【請求項2】
フレームに基台を複数段取り付けてある事を特徴とする請求項1のグリーンカーテンを備えた体育館。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−265709(P2010−265709A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119499(P2009−119499)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(309003599)
【Fターム(参考)】