説明

グレージングの熱処理に組み込まれた光触媒コーティングの調製法

本発明は、光触媒特性を示し、少なくとも部分的に結晶化された酸化チタン、特にはアナターゼ型の酸化チタンを含む材料を600℃よりも高い温度で調製する方法に関する。本発明はまた、少なくとも一方の面に酸化チタンを含む材料をコーティングし、クエンチング及び/又はボーイングのような方法によって600℃よりも高い温度で熱処理可能であるが、光触媒活性及び清浄表面のグレージングのために必要とされる光学的性質を維持するガラスシートに関する。本発明はまた、単層又は多層の、上記ガラスシートを含むモノリシックな葉状グレージングに関し、建物、輸送車両のための通常のグレージングとしての上記グレージングの使用、インテリア用途、街路備品、鏡、ディスプレイシステムのスクリーン、及び光起電性グレージングのための上記グレージングの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的に結晶化された酸化チタン、特にはアナターゼ型の酸化チタンを含むタイプの光触媒特性を示すコーティングを備えたグレージングに関する。
【背景技術】
【0002】
高い光学品質の製品を得るために、このようなコーティングを特にはガラスシート上に形成するための幾つかの技術が公知である。利用できる技術としては、例えば、ゾル−ゲル法、熱分解法、特にはCVD(化学気相成長)があり、ゾル−ゲル法は、溶液の二酸化チタン前駆体を堆積し、次いでアナターゼ型に結晶化された二酸化物を形成するよう加熱することにあり、熱分解法では、蒸気相の二酸化チタン前駆体を、高温の基材と、任意選択で冷却の際に、特にはフロート出力ガラス(float output glass)の大気側の面と接触させる。
【0003】
国際公開第97/10186号パンフレットにより公知のカソードスパッタリングは、産業上のスケールアップの見地から特に有利であることも示している。これは、特には堆積される層の厚さ及び化学量論量を非常に細かく調整することができる真空技術である。それはより高い効率のため磁界で一般に促進される。それは反応性スパッタリングであることもでき、その場合には、本質的に金属のターゲット、この場合(任意選択で別の金属又はケイ素で合金にされた)チタンに基づいたターゲットを用いて開始され、スパッタリングは、酸化雰囲気中、一般にはAr/O2混合ガス中で行われる。それはまた非反応性スパッタリングであることもでき、その場合には(任意選択で合金にされた)チタンのすでに酸化された形態のセラミックターゲットを用いて開始される。カソードスパッタリングによって生成される二酸化チタンは、一般に非晶質であって結晶化が不十分であり、光触媒的に活性な形態に結晶化するため続いて加熱しなければならない。
【0004】
国際公開第02/24971号パンフレットは、少なくとも2Paの比較的高い使用圧力においてカソードスパッタリングにより部分的に結晶化されたアナターゼ二酸化チタンをガラス上に堆積することを開示しており、第1の変形態様において、堆積の際、基材は例えば220〜250℃であり、次いで、約400℃における通常のアニーリング操作が必要に応じて実施され、第2の変形態様において、堆積は室温で基材上に実施され、次いで、コーティングされた基材が最大550℃に数時間加熱される。
【0005】
これまでの知見では、アニーリング、曲げ、強化、又は600℃を超え、さらに幾つかの場合には最大700℃の他の熱処理を必要とする特定の性質が光触媒TiO2でコーティングされたグレージングに対して必要とされる場合には、当業者はこの熱処理後にTiO2又はその前駆体を堆積させ、次いでより中程度の温度を適用することにより前駆体を活性化するか又は反応させることが不可避であった。とりわけ、600℃を超える温度では、光触媒的にアナターゼ型よりも活性でないルチル型のTiO2の結晶化に有利であると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明では、通常のガラス熱処理の温度で二酸化チタンを結晶化することにより高い光触媒活性と高い光学品質を得、それによって単一の強化又は他の熱処理によりこの結晶化を達成し、その後のより中程度の温度における追加の加熱操作を回避することに成功した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため、本発明の主題は、少なくとも部分的に結晶化された酸化チタン、特にはアナターゼ型の酸化チタンを含む光触媒特性を示す材料を調製する方法であって、600℃を超える温度を使用することを特徴とする方法である。結果として、種々の産業プロセスに本方法がより良く組み込まれ、産業プロセスが比較的低い温度における特定の結晶化操作を削除することにより単純化される。これらプロセスの所要時間はそれに対応して短くなる。加熱手段が同時に2つの機能を果たすため、必要とされる装置もより少なくなる。最終的に、これらプロセスのコストも低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
好ましい実施態様及び/又は本発明を特に促進させる実施態様によれば、
・本方法は、630℃を超える温度を使用する。
・本方法は、(即ち、例えば、場合により最大700℃の温度で)グレージングに関して実施される強化及び/又は曲げ処理を伴う。
【0009】
以下の実例において優れた結果を提供するため、本発明の方法は、任意選択で1つ又は複数の機能多層及び/又は機能層を前もって設けた、ガラス又はガラス−セラミックタイプの第1の透明又は半透明基材の第1面に酸化チタンのコーティングを堆積することを含み、その性質は以下に詳細に記載される。
【0010】
本発明の方法の他の有利な特徴によれば、
・本方法は、前記第1の透明又は半透明基材の第2面、あるいは第2の透明又は半透明基材に属する第2面に1つ又は複数の機能多層及び/又は機能層を堆積することを含み、その性質もまた以下に詳細に説明される(それゆえ、本発明の方法では、比較的高温で熱処理することにより得られる機械的性質を示す透明又は半透明の製品を得ることができ、本発明の方法は、最も幅広い範囲の複合的な機能を有することができる)。
・600℃を超える温度の使用は、前記第1及び第2面への堆積後である(しかしながら、これらの温度が第2面への堆積後に適用されない他の任意の変形態様は、これらの温度が第1面への堆積後に適用される限り本発明から除外されない。言い換えれば、第2面のコーティング製品は、例えば、これらの温度の使用後に第2面への堆積を実施することにより、600℃を超える温度にさらされることはない。即ち、この場合には、第2面は第2の基材に属しており、第2の基材は、第1の基材がこれらの温度にさらされた後にのみ、強化ガラスから作製された第1の基材と非強化ガラスから作製された第2の基材の組み合わせである二重グレージング又は積層グレージングにおいて第1の基材と結合することができる。別の方法では、さらに本発明によれば、第1及び第2面に堆積された製品が600℃を超える温度に同時に加熱される。これは有利でかつ経済的な場合があり、第2の基材自体が、それが存在する場合には同様に熱処理される)。
・前記第1及び第2面への堆積が、カソードスパッタリングによって、有利には、この場合、反対側で実質的に同一の方向に沿って一致してかつ同時又はほぼ同時に実施される(通常「スパッタアップ・アンド・ダウン」と称されるタイプの磁気強化型カソードスパッタリング設備の使用が特に意図され、当該設備では、第1及び第2面は、縦の平均的な方向の円錐型ターゲットをスパッタリングすることにより接触するように水平でかつそれぞれ上方及び下方に向いており、それぞれTiO2の場合に下方で熱制御多層の場合に上方である)。しかしながら、第1及び第2面の他の任意の配向も本発明から除外されず、即ち、その配向は垂直であるか又はより大きく若しくはより小さく傾いている。
【0011】
本発明の主題はまた、少なくとも一方の面に酸化チタンを含む材料のコーティングを備えたガラスシートであって、汚れ防止グレージングに必要とされる光触媒活性及び光学品質を依然として維持しながら、強化及び/又は曲げ操作のような600℃を超える熱処理を受けることができるか又はその熱処理を受けたことを特徴とする、ガラスシートである。
【0012】
第一に、600℃を超える熱処理は、汚れ防止グレージングとして使用するのに適切でなくする程度には製品に影響を及ぼさない。それどころか、驚くべきことに、光触媒活性が前述の国際公開第02/24971号パンフレットの教示に従った熱処理(例えば、500℃1時間のアニーリング)後に得られるものに匹敵するか又は幾つかの場合にはさらに優れていることを見出した。
【0013】
600℃を超える温度の使用は、高い光学品質とも矛盾しない。高い光学品質とは、目に見える欠陥、即ち、曇り、斑点又は点食、亀裂がないことを本質的に意味する。有利には、産業的な見地から、熱処理によって生じるコーティング側の反射における平均比色変化ΔEは、最大2.8、好ましくは最大2.3であり、このことは、最終製品の反射における比色応答が熱処理前のコーティング製品の比色応答に近いという事実を表している。ΔEは、以下の式、即ち、
ΔE=(ΔL2+Δa*2+Δb*21/2
によって計算され、式中、Δは加熱によって生じるパラメータ、明度L、色度座標a*及びb*の変化を表す((L,a*,b*)比色系では、a*が正の値であると赤色のほうに向かい、a*が負の値であると緑色のほうに向かい、b*が正の値であると黄色のほうに向かい、b*が負の値であると青色のほうに向かい、0に近いa*とb*の値の領域は無色である)。
【0014】
本発明の他の主題は、
・上記のガラスシートを含む、単一又は複合の積層されたモノリシックグレージング;
・少なくとも第1の構成要素のガラスシートの少なくとも第1面に、本発明の方法によって得られた光触媒特性を示す材料のコーティングを備えた、単一又は複合の積層されたモノリシックグレージング
からなる。
【0015】
このグレージングの他の好ましい特徴によれば、
・光触媒特性を示す材料のコーティングの下に、前記第1面が、600℃を超える温度の適用によって生じる可能性のあるガラスからのアルカリ金属の移動に対してバリヤーを形成する少なくとも1つの層を含む、1つ又は複数の機能多層及び/又は機能層を備えている(当該バリヤー層については、マグネトロンスパッタリングによって堆積されたSiO2、Si34及びAlN、CVDによって堆積されたSiOCなどが公知であり、他の機能については、大気と接触させることを意図した親水性及び疎水性の層を除外して、前記第2面に関して下に設けられる多層及び層を使用することができる)。
・前記第1のガラスシートの第2面又は第2の構成要素のガラスシートに属する第2面が、太陽熱制御のような熱制御若しくは低放射率の多層;反射防止、光放射のフィルトレーション、着色若しくは散乱のような光学機能を有する多層若しくは層;特に高活性タイプの汚れ防止光触媒材料の層;親水性層;疎水性層;特に加熱のための導電性糸の網目構造体若しくは導電性層;又はアンテナ若しくは帯電防止の層から選択された1つ又は複数の機能多層及び/又は機能層を備え、これらの層が個々に又は組み合わせて用いられる。
【0016】
本発明の別の主題は、このグレージングを「自己洗浄」、特には曇り防止、凝結防止及び汚れ防止グレージング、特には二重グレージングタイプの建築用グレージング、自動車のためのフロントガラス、リアウィンドウ、サイドウィンドウ及びサイドミラータイプの乗物用グレージング、列車、航空機及び船のための窓、水槽のガラス、店の窓ガラス及び温室のガラスのような実用グレージング、インテリア家具、街路備品(バス待合所、広告板など)、鏡、コンピューター、テレビ及び電話タイプのディスプレイシステムのためのスクリーン、液晶若しくはエレクトロルミネセンスタイプのエレクトロクロミックグレージングのような電気制御可能なグレージング、又は光起電性グレージングとして適用することである。
【0017】
本発明は、例によって以下に説明される。
【実施例】
【0018】
[例1]
本例では、マグネトロンスパッタリングによって得られた非晶質TiO2を、一方で産業的な強化操作により、もう一方で500℃1時間のアニーリング操作によりその活性な形態に変換して比較する。
【0019】
2つの処理後の光触媒活性は、ステアリン酸の光分解/赤外透過試験又は略してSATにより決定した。この試験は国際公開第00/75087号パンフレットに記載されている。
【0020】
厚さ60nmのSiOC層を、国際公開第01/32578号パンフレットに記載されているように化学気相成長(CVD)によって厚さ4mmの透明ソーダライムシリケートガラスの3つの試験片に堆積し、厚さ100nmのSiO2層をマグネトロンスパッタリングによって他の3つの試験片に堆積した。
【0021】
種々の厚さのTiO2コーティングを、マグネトロンスパッタリングにより使用圧力26×10-3mbarで6つの試験片に堆積し、次いで、コーティングの光触媒活性を2つの前述した熱処理後に上で示したように決定した。
【0022】
結果を下表1に与える。
【0023】
【表1】

【0024】
予想に反して、産業的な強化操作が光触媒活性を許容できない程に低下させないだけでなく、その光触媒活性は、特にはすでに記載した国際公開第02/24971号パンフレットによって表されているように、従来技術において公知のTiO2の活性化処理から得られる光触媒活性に少なくとも匹敵している。実際、その活性は試験4においてしか強化後にもはや弱くない。
【0025】
結果として、ここで調製したTiO2は、ガラスからのアルカリ金属の拡散に対するバリヤーとして作用する標準的な厚さの下層を使用してさえ光触媒活性の観点から強化することができた。
【0026】
[例2]
上記の試験1、3及び5と、さらに(試験1、3及び5と同じSiO2バリヤー下層及び同じTiO2の形成条件によって)得られた光触媒コーティングの厚さがそれぞれ27nm及び19nmであることを特徴とする試験7及び8は、産業的な強化操作によって生じるコーティング側の反射における平均比色変化ΔEの測定を伴った。(L,a*,b*)比色系の種々のパラメータの意味、並びにΔL、Δa*及びΔb*からΔEを計算するための式については上に記載したとおりである。
【0027】
結果を下表2に与える。
【0028】
【表2】

【0029】
比較的小さい平均比色変化、理想的には2より小さい場合さえある変化は、すべてのコーティングが産業的な強化操作を受けた後の光触媒コーティング側の反射色の変化が小さいことを表している。これによって強化操作の結果として極端に大きな比色変化を受ける強化製品の望ましくない生成が回避される。それにより強化操作の前から最終的な色が何になるかを予測することがより容易になる。
【0030】
[例3]
本例は、その間に厚さ15mmの気孔がある厚さ4mmの2つのガラスシートからなる二重グレージングユニットに関する。本例及び以下の例においては、二重グレージングユニットの面2、即ち、外気の最も近くに設置することを意図したガラスシートの気孔と接触している面(建物の内側にあることを意図した面ではない)が、マグネトロンスパッタリングによって堆積された熱制御多層でコーティングされている。このプロセスは、産業規模でその厚さを変化させかつ正確に制御することにより、最も様々なタイプの層を堆積するのに特に実用的である。
【0031】
ここで、この多層は低放射率の多層、即ち、熱赤外線(10μm程度の波長)を反射し、例えば、建物の内側の熱を保持できる多層であった。
【0032】
光触媒のTiO2層及びアルカリ金属の拡散に対するバリヤーとして作用するSiO2下層を含み、外気に接触することを意図した面1上にマグネトロンスパッタリングにより堆積された多層と面2上の熱制御多層の組み合わせを光学的見地から調査した。
【0033】
以下、X及びYは、それぞれ層(2)の厚さを25nm及び層(2)の厚さを19nm、層(3)の厚さを29nmに変更することのみ欧州特許出願公開第0718250号明細書の例2とは異なる低放射率多層を表す。
【0034】
外側のガラスシートによってのみ下に規定される以下の4つのグレージング組成物を試験した。
3a:4mmガラス/36nmSi34/X
3b:18nmTiO2/150nmSiO2/4mmガラス/X
3c:18nmTiO2/75nmSiO2/9nmSi34/63nmSiO2/4mmガラス/X
3d:(3bと同じ光触媒多層).../4mmガラス/Y
【0035】
本例及び以下の例4〜7においては、すべての多層が産業的な強化操作を受けた。グレージングの光学的な特徴は、建物の「内」側(即ち、その面1及び2のみが上に示すように機能化された二重グレージングユニットの面4)の透過及び反射、建物の「外」側(面1:ガラス又はTiO2)の反射によって決定した(光透過率TL(%)、光反射率RL(%)、前述のように、グレージング両面の透過及び反射における色度座標a*及びb*)。その結果を下表に与える。
【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
【表5】

【0039】
グレージング3aとグレージング3bの比較により、光触媒コーティングを追加することでどのようにグレージングの光学的性質が妨げられる可能性があるかを示す。即ち、したがって、TLの低下、両面のRLの実質的な増加、及び青−緑(負のa*及びb*値)へのグレージング両面の反射における色度の増加が観測されている。
【0040】
グレージング3bと比較すると、グレージング3cにおいては、失われたTLの幾らかが回復し、2つのRL値は、反射における比色値と同様、有利には再びグレージング3aの値に近づいている。
【0041】
[例4]
例3の方法を以下のグレージングに関して採用した(面2上の多層は、1μm程度の平均波長に相当する太陽放射線を反射する)。本例においては、X及びYは、それぞれSGG Coollite ST(登録商標)108でサン−ゴバン・グラス・フランスにより販売されている太陽遮断多層、及び当該太陽遮断多層の最も外側の層の厚さをガラス基材の近位側で3.7、遠位側で2/3だけ増加することにより得られた多層を表す。
4a:6mmガラス/X
4b:18nmTiO2/150nmSiO2/6mmガラス/X
4c:18nmTiO2/50nmSiO2/12nmSi34/71nmSiO2/6mmガラス/X
4d:(4bと同じ光触媒多層)/6mmガラス/Y
【0042】
本例及び以下の例においては、グレージングユニットは、その間に厚さ12mmの気孔がある厚さ6mmの2つのガラスシートから構成した。
【0043】
結果を以下の3つの表に与える。
【0044】
【表6】

【0045】
【表7】

【0046】
【表8】

【0047】
ここで、TLは、TiO2の追加によりほとんど影響を受けておらず、さらに外側のTiO2(4b)/ガラス(4a)の反射において黄色がわずかに低下している。
【0048】
太陽遮断多層の改良(4d)により、TLが増加して内側のRLが実質的に低下し、それに伴って反射における黄色がわずかに増加している。
【0049】
[例5]
例4を繰り返した。ここで、X及びYは、それぞれSGG Coollite ST(登録商標)120でサン−ゴバン・グラス・フランスにより販売されている太陽遮断多層、及びガラス基材の近位層の厚さを2倍に増加したことのみ当該太陽遮断多層と異なる多層を表す。
5a:6mmガラス/X
5b:18nmTiO2/150nmSiO2/6mmガラス/X
5c:18nmTiO2/68nmSiO2/10nmSi34/69nmSiO2/6mmガラス/X
5d:5bと同じ/6mmガラス/Y
【0050】
【表9】

【0051】
【表10】

【0052】
【表11】

【0053】
5bに対して5cは、5aと比べると、失われたTLと2つのRLの値が部分的に回復し、特には、わずかにより中性の呈色で以って、両面の反射色が完全に回復していることを示している。
【0054】
5dにおいては、回復したTLが増加し、内側の反射がわずかにより高い(あまり良くない)のに対し、外側(TiO2)の反射は外側(ガラス)の5aのRLよりもさらに低い(より良い)レベルまで低減されている。
【0055】
[例6]
以下のグレージングユニットに関して先の例を繰り返した。ここで、X及びYは、それぞれSGG Coollite ST(登録商標)136でサン−ゴバン・グラス・フランスにより販売されている太陽遮断多層、及びガラス基材の近位層と遠位層の厚さをそれぞれ1.7倍と0.774倍にしたことのみ当該太陽遮断多層と異なる多層を表す。
6a:6mmガラス/X
6b:18nmTiO2/150nmSiO2/6mmガラス/X
6c:18nmTiO2/66nmSiO2/10nmSi34/57nmSiO2/6mmガラス/X
6d:6bと同じ光触媒多層/6mmガラス/Y
【0056】
【表12】

【0057】
【表13】

【0058】
【表14】

【0059】
6aと6bを比較すると、グレージング外側のRLの増加、及びより小さい程度ではあるが6aに対して6bの色度の増加が特徴的である。
【0060】
光触媒多層を最適化することにより(6c)、失われたTLの幾らかが回復して外側のRLが再び実質的に低下し、同じ面の反射色が(6aよりもさらに中性の比色応答で以って)回復している。
【0061】
太陽遮断多層を改良することにより(6d)、外側(TiO2)のRLがガラス側の6aのRLよりもさらに低いレベルに低下し、グレージング内側の反射における黄色成分が他の3つのグレージングユニットよりも低下している。
【0062】
[例7]
以下のグレージングユニットに関して先の例を繰り返した。ここで、X及びYは、それぞれSGG Coollite ST(登録商標)150でサン−ゴバン・グラス・フランスにより販売されている太陽遮断多層、及びガラス基材の近位層を削除し、中間層の厚さを1.5倍と遠位層の厚さを0.68倍にしたことのみ当該太陽遮断多層と異なる多層を表す。
7a:6mmガラス/X
7b:18nmTiO2/150nmSiO2/6mmガラス/X
7c:18nmTiO2/64nmSiO2/13nmSi34/50nmSiO2/6mmガラス/X
7d:7bと同じ光触媒多層/6mmガラス/Y
【0063】
【表15】

【0064】
【表16】

【0065】
【表17】

【0066】
これによると、特に7cの外側の反射色が7aに近い回復を示している。
【0067】
[例8]
本例は、太陽遮断と低放射率の両方を与え、Planistar(登録商標)でサン−ゴバン・グラス・フランスにより販売されている「フォーシーズンズ」と呼ばれるものに関する。先の例の熱制御多層とは異なるが、以下の例の熱制御多層と同様に、熱制御多層は産業的な強化操作を受けず、それゆえ、強化操作は、必要に応じて、多層が任意選択でTiO2コーティングとバリヤー下層を備えたガラスシート上に堆積される前に実施される。
【0068】
以下のグレージングを試験した。
8a:6mmガラス/Planistar(登録商標)
8b:18nmTiO2/150nmSiO2/6mmガラス/Planistar(登録商標)
8c:18nmTiO2/68nmSiO2/8nmSi34/58nmSiO2/6mmガラス/Planistar(登録商標)
【0069】
【表18】

【0070】
【表19】

【0071】
【表20】

【0072】
グレージング8cは、8bと比べて、8aの内側、さらに外側の反射色が回復し、8bと比べてRLがわずかに低下している。
【0073】
[例9]
熱制御多層は、SKN(登録商標)154でサン−ゴバン・グラス・フランスにより販売されている太陽遮断多層であった。以下のグレージングを試験した。
9a:6mmガラス/SKN(登録商標)154
9b:18nmTiO2/150nmSiO2/6mmガラス/SKN(登録商標)154
9c:18nmTiO2/68nmSiO2/8nmSi34/58nmSiO2/6mmガラス/SKN(登録商標)154
【0074】
【表21】

【0075】
【表22】

【0076】
【表23】

【0077】
ここで、外側においては、9cについて、他の2つのコーティングガラスのRLの中間のRLが得られ、さらにTiO2がない場合(9a)とほぼ同じレベルの反射色の青色成分が得られたことが特に明らかである。
【0078】
[例10]
さらに出願人によって販売されている多層SKN(登録商標)165B、より詳しくは以下のグレージングを試験した。
10a:6mmガラス/SKN(登録商標)165B
10b:18nmTiO2/150nmSiO2/6mmガラス/SKN(登録商標)165B
10c:18nmTiO2/69nmSiO2/9nmSi34/49nmSiO2/6mmガラス/SKN(登録商標)165B
【0079】
【表24】

【0080】
【表25】

【0081】
【表26】

【0082】
欧州特許出願公開第0850204号明細書の例5を再現して、アルカリ金属の移動に対するバリヤーとして作用しかつ厚さ15nmの光触媒TiO2層で被覆された厚さ50nmのSiOC層をCVD法によりガラスシート上に形成した。
【0083】
先に記載したステアリン酸の光分解、続いて赤外透過により決定した光触媒活性は、9×10-3cm-1min-1であり、産業的な強化後で7×10-3cm-1min-1であった。これは十分かつ満足できるほどに保持される機能性に相当している。
【0084】
したがって、本発明により、最適な産業条件下で、使用者により望ましい値に容易に調整することができる光の透過及び反射レベル並びに透過及び反射の比色特性で以って強化できかつ高活性である汚れ防止光触媒コーティングを備えたグレージングを製造することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に結晶化された酸化チタン、特にはアナターゼ型の酸化チタンを含む光触媒特性を示す材料を調製する方法であって、600℃を超える温度を使用することを特徴とする、方法。
【請求項2】
630℃を超える温度を使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
グレージングに関して実施される強化及び/又は曲げ処理を伴うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
任意選択で1つ又は複数の機能多層及び/又は機能層を前もって設けた、ガラス又はガラス−セラミックタイプの第1の透明又は半透明基材の第1面に酸化チタンのコーティングを堆積することを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の透明又は半透明基材の第2面、あるいは第2の透明又は半透明基材に属する第2面に1つ又は複数の機能多層及び/又は機能層を堆積することを含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
600℃を超える温度の使用が、前記第1及び第2面への堆積後であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1及び第2面への堆積が、カソードスパッタリングによって実施されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1及び第2面への堆積が、反対側で実質的に同一の方向に沿って一致して同時又はほぼ同時に実施されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも一方の面に酸化チタンを含む材料のコーティングを備えたガラスシートであって、汚れ防止グレージングに必要とされる光触媒活性及び光学品質を依然として維持しながら、強化及び/又は曲げ操作のような600℃を超える熱処理を受けることができるか又はその熱処理を受けたことを特徴とする、ガラスシート。
【請求項10】
600℃を超える熱処理によって生じるコーティング側の反射における平均比色変化ΔEが、最大2.8、好ましくは最大2.3であることを特徴とする、請求項9に記載のガラスシート。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のガラスシートを含む、単一又は複合の積層されたモノリシックグレージング。
【請求項12】
少なくとも第1の構成要素のガラスシートの少なくとも第1面に、請求項1に記載の方法によって得られた光触媒特性を示す材料のコーティングを備えた、単一又は複合の積層されたモノリシックグレージング。
【請求項13】
光触媒特性を示す材料のコーティングの下に、前記第1面が、600℃を超える温度の適用によって生じる可能性のあるガラスからのアルカリ金属の移動に対してバリヤーを形成する少なくとも1つの層を含む、1つ又は複数の機能多層及び/又は機能層を備えていることを特徴とする、請求項12に記載のグレージング。
【請求項14】
前記第1のガラスシートの第2面又は第2の構成要素のガラスシートに属する第2面が、太陽熱制御のような熱制御若しくは低放射率の多層;反射防止、光放射のフィルトレーション、着色若しくは散乱のような光学機能を有する多層若しくは層;特に高活性タイプの汚れ防止光触媒材料の層;親水性層;疎水性層;特に加熱のための導電性糸の網目構造体若しくは導電性層;又はアンテナ若しくは帯電防止の層から選択された1つ又は複数の機能多層及び/又は機能層を備え、これらの層が個々に又は組み合わせて用いられることを特徴とする、請求項12又は13に記載のグレージング。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか1項に記載のグレージングの、「自己洗浄」、特には曇り防止、凝結防止及び汚れ防止グレージング、特には二重グレージングタイプの建築用グレージング、自動車のためのフロントガラス、リアウィンドウ、サイドウィンドウ及びサイドミラータイプの乗物用グレージング、列車、航空機及び船のための窓、水槽のガラス、店の窓ガラス及び温室のガラスのような実用グレージング、インテリア家具、街路備品、鏡、コンピューター、テレビ及び電話タイプのディスプレイシステムのためのスクリーン、液晶若しくはエレクトロルミネセンスタイプのエレクトロクロミックグレージングのような電気制御可能なグレージング、又は光起電性グレージングとしての適用。

【公表番号】特表2006−528059(P2006−528059A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520861(P2006−520861)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001927
【国際公開番号】WO2005/009914
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】