説明

グレージングチャンネル付き複層ガラスの組立方法

【課題】本発明は、複層ガラスの寿命に悪影響を与えることなく、グレージングチャンネルと複層ガラスとを強固に係合して、グレージングチャンネルに対する複層ガラスの引き抜き荷重を高めることができるグレージングチャンネル付き複層ガラスの組立方法を提供する。
【解決手段】グレージングチャンネル14の溝の内側隅部14Aに、塗布装置40のノズル42から接着材38を塗布する。接着材38の塗布量は、片側につき、グレージングチャンネル14の長手方向10cm当たり0.45〜1.2gの塗布量で塗布装置40を内側隅部14Aに沿って移動しながら内側隅部14Aの全域に接着材38を塗布する。また、接着材38の塗布位置は、ストッパ片として機能する内部軟質材32の下側にまわり込むように塗布する。接着材38の塗布が終了すると、グレージングチャンネル14の溝に複層ガラス12の端縁部を嵌合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレージングチャンネル付き複層ガラスの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギーや防音の観点から、複層ガラスが窓用ガラスとして多用されている。このような複層ガラスの窓枠(障子、框)への取り付け手法として、複層ガラスの端縁部にグレージングチャンネルを装着し、このグレージングチャンネルを介して複層ガラスを窓枠の溝に取り付ける手法が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1のグレージングチャンネルは、複層ガラスの端縁部を包囲する金属製又は樹脂製の断面凹形状の補強材と、この補強材の複層ガラスに相対する内側面に設けられた樹脂製の内部軟質材と、補強材の窓枠に相対する外側面に設けられた樹脂製の外部軟質材とから構成されている。
【0004】
ところで最近では、窓枠を細くすることにより、複層ガラスの採光面積を広くして断熱性、景観性、及び見栄えを向上させた窓用ガラスが提案されている。ここで、窓枠が細くなるということは、グレージングチャンネル付き複層ガラスの端縁部が挿入される窓枠の溝が浅くなることを意味し、これに付随して、複層ガラスの端縁部が嵌合されるグレージングチャンネルの溝の深さも浅くなる。
【0005】
このため、特許文献1に開示された一般的な形状のグレージングチャンネルでは、グレージングチャンネルに対する複層ガラスの引き抜き荷重が低下するため、グレージングチャンネルと複層ガラスとが分離し易くなり、組立作業性が悪くなるという問題があった。また、窓枠を開閉する際の力によって縦枠を円弧上に変形させる力が作用し、この変形力により、複層ガラスがグレージングチャンネルから外れ、結果として湾曲したまま元に戻らなくなる可能性があった。
【0006】
そこで特許文献2、3には、上記問題を解消するグレージングチャンネル付き複層ガラスが開示されている。すなわち、図5に示す、特許文献2、3に開示されたグレージングチャンネル付き複層ガラス100は、そのグレージングチャンネル102の底部内底面に、先端が矢印形状の突起部104を備えている。この突起部104を複層ガラス106の二次シール材108に押し込んで没入させ、二次シール材108が固化した際に、グレージングチャンネル102を、複層ガラス106の二次シール材108に突起部104を介して保持させている。これによって、グレージングチャンネル102に対する複層ガラス106の引き抜き荷重が高くなり、グレージングチャンネル102と複層ガラス106とが分離し難くなるので、組立作業性が向上する。なお、複層ガラス106を構成する2枚のガラス板110、110は、スペーサ112を介して隔置され、スペーサ112とガラス板110、110とが透湿抵抗が高い一次シール材114、114によって接着されており、さらに、スペーサ112と2枚のガラス板110、110の周縁部とで画成された空間部が二次シール材108によって密閉されるため、複層ガラス106を構成する2枚のガラス板110、110を拘束・保持する剛性が増すため、複層ガラス106の空気層の膨張・収縮によって生ずる複層ガラス106周辺部の一次シール材114の変形歪みが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−71170号公報
【特許文献2】特開平8−199920号公報
【特許文献3】特開平10−299351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献2、3のグレージングチャンネル102は、突起部104が複層ガラス106の二次シール材108に没入されているので、複層ガラス106からの風圧、振動による外的な力が突起部104を介して二次シール材108に常に作用している。また、窓枠を開閉する際の力によって縦枠を円弧上に変形させる力が作用し、この変形力により、グレージングチャンネル102の突起部104を介して二次シール材108にその荷重が断続的に作用する。このため、二次シール材108が劣化して2枚のガラス板110、110を拘束・保持する剛性が低下するので、一次シール材114に変形歪みが生じ、結果として透湿抵抗の低下につながり、気密性、水密性が低下し、複層ガラス106としての寿命が短くなるという懸念があった。
【0009】
また、特許文献2、3のグレージングチャンネル102は、厚さの等しい2枚のガラス板110、110からなる複層ガラス106を想定して製造されたもので、二次シール材108の幅方向中央部に突起部104を没入させるように、突起部104がグレージングチャンネル102の幅方向中央部に備えられている。このため、図6の如く、厚さの異なる2枚のガラス板110、116からなる複層ガラス118には、突起部104Aの位置を中央から片側に変更しなければならず汎用性がない。
【0010】
更に、このグレージングチャンネル付き複層ガラス120では、幅方向の寸法が小さくなった二次シール材108Aに突起部104Aを没入させるため、突起部104Aに対する二次シール材108Aの保持力が低下するので、十分な引き抜き荷重を得ることができない。なお、図6に示したガラス板116は、ガラス板122と網入りガラス板124とが中間シート126を介して接着された合わせガラスである。
【0011】
更にまた、図5、図6に示したグレージングチャンネル付き複層ガラス100、120では、突起部104、104Aを二次シール材108、108Aに没入させた際に、突起部104、104Aの先端矢印部の裏側に二次シール材108、108Aがうまくまわり込まない場合あり、この場合にも十分な引き抜き荷重を得ることができない。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、複層ガラスの寿命に悪影響を与えることなく、グレージングチャンネルと複層ガラスとを強固に係合して、グレージングチャンネルに対する複層ガラスの引き抜き荷重を高めることができるグレージングチャンネル付き複層ガラスの組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記目的を達成するために、スペーサによって隔置された2枚のガラス板が空気層を介して重ねられるとともに該2枚のガラス板がその端縁部でシール材により接着され、該シール材の外表面が前記2枚のガラス板の端面から2枚のガラス板の内側に位置する複層ガラスを準備する工程と、前記複層ガラスの端縁部が嵌合される溝を有し、該溝の側壁部にストッパ片が備えられるとともに前記シール材の外表面に対向する位置に開口部が備えられたグレージングチャンネルを準備する工程と、固化した際に前記ストッパ片と嵌合する接着材を、前記グレージングチャンネルの前記溝の隅部に塗布する工程と、前記グレージングチャンネルの前記溝に複層ガラスの端縁部を嵌合し、前記接着材を前記2枚のガラス板の端縁部に接着する工程と、を有することを特徴とするグレージングチャンネル付き複層ガラスの組立方法を提供する。
【0014】
本発明によれば、まず、グレージングチャンネルの溝の隅部に接着材を塗布する。次に、グレージングチャンネルの前記溝に複層ガラスの端縁部を嵌合して、グレージングチャンネル付き複層ガラスを組み立てる。このようにして組み立てられたグレージングチャンネル付き複層ガラスによれば、固化した接着材が前記2枚のガラス板の端縁部に接着されるとともにグレージングチャンネルのストッパ片に係合しているため、グレージングチャンネルと複層ガラスとの結合が強固になり、よって、グレージングチャンネルに対する複層ガラスの引き抜き荷重が高くなる。
【0015】
また、本発明の組立方法では、特許文献2、3のような突起部を利用せず、複層ガラスとグレージングチャンネルとの間に配置されるストッパ片と、固化した接着材との係合力によって双方の結合を強固にしたので、複層ガラスの寿命に悪影響を与えない。また、汎用性の問題も解消できる。
【0016】
ところで、グレージングチャンネル付き複層ガラスは、複層ガラスとグレージングチャンネルとの間の隙間から雨水等の水分が浸入するが、この水分が、グレージングチャンネルの底部内底面と複層ガラスの端面との間に滞留すると、その水分によって複層ガラスのシール材(二次シール材)が劣化するという問題がある。
【0017】
そこで、本発明の組立方法によって組み立てられたグレージングチャンネル付き複層ガラスは、シール材の外表面が2枚のガラス板の端面から2枚のガラス板の内側に位置した複層ガラスと、前記シール材の外表面に対向する位置に開口部が備えられたグレージングチャンネルとによって構成されている。したがって、複層ガラスとグレージングチャンネルとの間の隙間から浸入してきた水分は、グレージングチャンネルの底部内底面と複層ガラスの端面との間に滞留することなく、グレージングチャンネルの開口部から外部に排水される。これにより、複層ガラスのシール材が劣化するという問題を解消できるので、この点においても複層ガラスの寿命に悪影響を与えない。
【0018】
また、グレージングチャンネルの前記ストッパ片を、ガラス板に当接させるようにその長さを長めにとることが好ましい。これにより、グレージングチャンネルと複層ガラスとの隙間の気密性、及び水密性が向上する。なお、グレージングチャンネルに予め備えられている内側軟質部材を、ストッパ片として兼用してもよい。
【0019】
本発明の前記グレージングチャンネルは樹脂製であり、前記接着材は、前記グレージングチャンネルに対する接着力よりも前記ガラス板に対する接着力が高い接着材であることが好ましい。
【0020】
グレージングチャンネル付き複層ガラスの取り扱い時等に、グレージングチャンネルが損傷すると、そのグレージングチャンネルを複層ガラスから取り外して新たなグレージングチャンネルと交換する作業が必要になる。この際に、特許文献2、3のグレージングチャンネル付き複層ガラスでは、突起部が二次シール材に固着されているため、グレージングチャンネルを複層ガラスから容易に取り外すことができない。また、無理な力を加えて取り外そうとすると、二次シール材が突起部によって破損する上、新しいグレージングチャンネルを装着しようとしても、既に硬化した二次シール材に再度突起部を挿入し、所定の結合力を得ることはできないという不具合があった。
【0021】
これに対して、本発明は、グレージングチャンネルに対する接着力よりもガラス板に対する接着力が高い接着材を使用したので、複層ガラスからグレージングチャンネルを容易に取り外すことができ、複層ガラスに接着されたシール材をカッター等でそぎ落とすことができる。
【0022】
本発明の前記接着材は、シリコーン、ポリサルファイド、ウレタン等の硬化性エラストマを基剤とする接着材であることが好ましい。
【0023】
このような接着材は、ガラス板に対して接着性が高く、樹脂に対して接着性が低い。よって、複層ガラスからグレージングチャンネルを容易に取り外すことが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のグレージングチャンネル付き複層ガラスの組立方法によれば、複層ガラスの寿命に悪影響を与えることなく、グレージングチャンネルと複層ガラスとを強固に結合して、グレージングチャンネルに対する複層ガラスの引き抜き荷重を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の組立方法により組み立てられたグレージングチャンネル付き複層ガラスの第1の形態を示す断面図
【図2】図1に示したグレージングチャンネル付き複層ガラスの組立方法を示す説明図
【図3】本発明の組立方法により組み立てられたグレージングチャンネル付き複層ガラスの第2の形態を示す断面図
【図4】本発明の組立方法により組み立てられたグレージングチャンネル付き複層ガラスの第3の形態を示す断面図
【図5】従来のグレージングチャンネル付き複層ガラスの断面図
【図6】従来のグレージングチャンネル付き複層ガラスの断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面に従って本発明に係るグレージングチャンネル付き複層ガラスの組立方法の好ましい実施の形態を詳説する。なお、本発明は、下記説明に限定して解釈されるものではない。
【0027】
図1は、本発明の組立方法により組み立てられたグレージングチャンネル付き複層ガラス10の第1の形態を示す断面図である。
【0028】
同図には、グレージングチャンネル付き複層ガラス10の一部を断面で示しているが、このグレージングチャンネル付き複層ガラス10は、窓用ガラス板として使用されるもので、全体形状が矩形状のガラスパネルである。また、このグレージングチャンネル付き複層ガラス10は、断熱性、景観性、及び見栄えを向上させるために、細い窓枠(不図示)にその端縁部が嵌め込まれて、建物の壁面に取り付けられる。更に、このグレージングチャンネル付き複層ガラス10は、矩形状の複層ガラス12の4辺の端縁部に、グレージングチャンネル14が装着されて構成されている。すなわち、グレージングチャンネル14は、複層ガラス12の全ての端縁部に取り付けられる。
【0029】
複層ガラス12は、2枚のガラス板16、16が、スペーサ18を介して隔置されることにより、ガラス板16とガラス板16との間に空気層20が形成され、スペーサ18の両側面が一次シール材22、22によってガラス板16、16に接着されている。また、複層ガラス12は、その端縁部が二次シール材(シール材)24によって封止されている。
【0030】
スペーサ18は中空の金属製型材であり、その内部にはシリカゲル等の吸湿材26が収納されている。また、スペーサ18の空気層20側の面には、貫通孔28が開口され、この貫通孔28を介して空気層20の空気が吸湿材26によって乾燥されている。
【0031】
一次シール材22としては、粘着性があり低透湿性の樹脂材料が用いられ、特にブチルゴムが使用される。また、二次シール材24としては、ガラスに対する接着性が高いポリサルファイド系シーラント、又はシリコーン系シーラントが使用される。更に、二次シール材24は、その外表面24Aが2枚のガラス板16、16の端面16A、16Aから2枚のガラス板16、16の内側(複層ガラス12の空気層20側)に位置するように塗布される。これにより、グレージングチャンネル付き複層ガラス10は、二次シール材24の外表面24Aとグレージングチャンネル14の底部内底面との間に隙間が形成され、この空間に侵入した水分が二次シール材24に長期にわたって接触することが避けられる。この観点から、端面16Aと外表面24Aとの隙間dは、後述する補強材30の底部の厚さをtとした場合、d+tが3mm以上となるように設定するのが好ましい。例えば、t=0.5mmの場合、dは2.5mm以上とするのが好ましい。
【0032】
なお、図1では、二次シール材24の外表面24Aを円弧状面としたが、その形状に限定されるものではなく、水平面であってもよい。すなわち、外表面24Aとグレージングチャンネル14の底部内底面との間の隙間を略矩形の断面形状にする等、外表面24Aへの水分接触の影響が低減され、複層ガラスとしての形状保持性能を損なわない限りにおいて、種々の形状を採用することができる。また、図1では、複層ガラス12のガラス板16、16として、厚さが等しい2枚のガラス板を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば一方のガラス板16を他方のガラス板16よりも厚さの厚いガラスとしてもよい。また、ガラス板16としては、通常のフロート板ガラスのほか、型板ガラス、網入りガラス、磨き板ガラス、耐熱強化ガラス、機能性コーティング付きガラス等の各種のガラス板を使用してもよい。同様に、ガラス板16としては、単板ガラスのほか、中間接着層を介して複数枚のガラス板を積層した合わせガラスも使用できる。
【0033】
一方、グレージングチャンネル14は、補強材30、内部軟質材32、及び外部軟質材34から構成されており、補強材30、内部軟質材32、及び外部軟質材34によって複層ガラス12の端縁部を覆う溝が構成されている。
【0034】
補強材30は、硬質塩化ビニル樹脂材等の樹脂製であり、複層ガラス12の端縁部を包囲するように断面凹形状に構成される。内部軟質材32は、軟質塩化ビニル樹脂材等の樹脂製であり、複層ガラス12の周縁部でガラス板16、16に相対して補強材30の内壁面に設けられている。外部軟質材34も同様に軟質塩化ビニル樹脂材等の樹脂製であり、補強材30の上端部に設けられている。外部軟質材34は、窓枠の取り付け開口部の先端部への係止部を有するとともに、ガラス板16、16に密着することで、複層ガラス12の端縁部の気密性、水密性を保持する。補強材30、内部軟質材32、及び外部軟質材34は、例えば押出成形手段等の適宜の成形手段を用いて一体成形される。また、補強材30の底部には、すなわち、二次シール材24の外表面24Aに対向する位置には、排水用の開口部36が備えられている。この開口部36は、グレージングチャンネル14の長手方向に沿って所定の間隔をもって備えられている。
【0035】
なお、このグレージングチャンネル14は、内部軟質材32を後述するストッパ片として兼用しているが、内部軟質材32とは別に専用のストッパ片を設けてもよい。この場合、ストッパ片は、軟質部材に限定されず硬質部材としてもよい。
【0036】
ストッパ片として兼用される内部軟質材32には、グレージングチャンネル14の溝の内側隅部14Aに塗布された接着材38が固化して係合される。接着材38に対する内部軟質材32の係合方向は、グレージングチャンネル14に対して複層ガラス12を引く抜く方向に抵抗を与える方向である。すなわち、接着材38のうち複層ガラス12の表面とグレージングチャンネル14の内壁面とに介在する接着材38Aが固化して内部軟質材32に係合されている。なお、接着材38のうち、ガラス板16の端面16Aとグレージングチャンネル14の底面との間に介在された接着材38Bは、ガラス板16の端面16Aに接着される。
【0037】
接着材38としては、樹脂製のグレージングチャンネル14に対する接着力よりもガラス板16に対する接着力が高い接着材であり、シリコーン、ポリサルファイド、ウレタン等の硬化性エラストマを基剤とする接着材が使用されている。
【0038】
次に、前記の如く構成されたグレージングチャンネル付き複層ガラス10の組立方法について説明する。
【0039】
まず、図2の如く、グレージングチャンネル14の溝の内側隅部14Aに、塗布装置40のノズル42から接着材38を塗布する。接着材38の塗布量は、グレージングチャンネル14のサイズにもよるが、片側につき、グレージングチャンネル14の長手方向10cm当たり0.45〜1.2gの塗布量で塗布装置40を内側隅部14Aに沿って移動しながら内側隅部14Aの全域に接着材38を塗布する。また、接着材38の塗布位置は、ストッパ片として機能する内部軟質材32の下側にまわり込むように塗布する。これにより、内部軟質材32が複層ガラス12に押圧接触されて下側に弾性変形した際に、内部軟質材32の下面全域が接着材38に接触するので、内部軟質材32と接着材38との係合力が高められる。
【0040】
接着材38の塗布が終了すると、次に、グレージングチャンネル14の溝に複層ガラス12の端縁部を嵌合する。これにより、図1に示したグレージングチャンネル付き複層ガラス10が組み立てられる。
【0041】
このようにして組み立てられたグレージングチャンネル付き複層ガラス10によれば、複層ガラス12側に強固に接着し固化した接着材38(38A)が、グレージングチャンネル14の内部軟質材32に係合しているため、グレージングチャンネル14と複層ガラス12との結合が強固になる。よって、グレージングチャンネル14に対する複層ガラス12の引き抜き荷重が高くなる。
【0042】
また、このグレージングチャンネル付き複層ガラス10では、特許文献2、3のような突起部104、104A(図5、図6参照)を利用せず、複層ガラス12とグレージングチャンネル14との間に配置される内部軟質材32と、固化した接着材38(38A)との係合力によって双方の結合を強固にしたので、複層ガラス12の寿命に悪影響を与えない。また、汎用性の問題も解消できる。
【0043】
なお、本例では、グレージングチャンネル14の長手方向にわたって内側隅部14Aの全域に接着材38を塗布したが、複層ガラス12のコーナー部を除いた領域にのみ塗布したり、所定間隔をおいて間欠的に塗布したりする等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更等が可能である。
【0044】
ところで、このように組み立てられたグレージングチャンネル付き複層ガラス10は、二次シール材24の外表面24Aが2枚のガラス板16、16の端面16A、16Aから2枚のガラス板16、16の内側(複層ガラス12の空気層20側)に位置した複層ガラス12と、二次シール材24の外表面24Aに対向する位置に開口部36が備えられたグレージングチャンネル14とによって構成されている。したがって、複層ガラス12とグレージングチャンネル14との間の隙間から浸入してきた水分は、グレージングチャンネル14の底部内底面と複層ガラス12の端面との間に滞留することなく、グレージングチャンネル14の開口部36から外部に排水される。
【0045】
これにより、複層ガラスの二次シール材24が水分の滞留によって劣化するという問題を解消できるので、この点においても複層ガラス12の寿命に悪影響を与えない。
【0046】
ところで、グレージングチャンネル付き複層ガラス10は、その運搬時にグレージングチャンネル付き複層ガラス10を現場で起立させ、面方向に回転させながら搬送する場合がある。この搬送時に、グレージングチャンネル14が損傷すると、そのグレージングチャンネル14を複層ガラス12から取り外して新たなグレージングチャンネル14と交換しなければならない。
【0047】
この際に、図5、図6に示したグレージングチャンネル付き複層ガラス100、120では、突起部104、104Aが二次シール材108、108Aに固着されているため、グレージングチャンネル102を複層ガラス106、118から容易に取り外すことができない。また、無理な力を加えて取り外そうとすると、二次シール材108、108Aが突起部104、104Aによって破損する。
【0048】
これに対して、図1に示した実施の形態のグレージングチャンネル付き複層ガラス10は、グレージングチャンネル14に対する接着力よりもガラス板16に対する接着力が高い接着材38を使用しているので、複層ガラス12からグレージングチャンネル14を容易に取り外すことができる。
【0049】
図3は、本発明の組立方法により組み立てられたグレージングチャンネル付き複層ガラス50の第2の形態を示す断面図、図4は、本発明の組立方法により組み立てられたグレージングチャンネル付き複層ガラス60の第3の形態を示す断面図である。これらのグレージングチャンネル付き複層ガラス50、60を説明するに当たり、図1、図2に示したグレージングチャンネル付き複層ガラス10と同一又は類似の部材について同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0050】
図3に示したグレージングチャンネル付き複層ガラス50は、複層ガラス12の表面とグレージングチャンネル14の内壁面との間にのみ接着材38が介在されたものである。
【0051】
図4に示したグレージングチャンネル付き複層ガラス60は、グレージングチャンネル14に内部軟質材32を備えておらず、補強材30と一体成形された突条のストッパ片62を断面略矩形の接着材38に係合させたものである。ストッパ片62は、複層ガラス12に接触しておらず、この場合には、接着材38がシール材として機能する。また、ストッパ片62は、硬質塩化ビニル樹脂材等の樹脂製であり、軟質の内部軟質材32を接着材38に係合させるものと比較して引き抜き荷重は高くなる。
【0052】
図1、図3、図4に示すように、接着材38の形状は特に限定されるものではなく、内部軟質材32やストッパ片62に係合可能な形状であればよい。また、接着材38の塗布量は、組み立てられたグレージングチャンネル付き複層ガラス10、50、60において、グレージングチャンネル14の内側隅部14Aからグレージングチャンネル14の高さの半分以下となることが好ましい。それ以上の塗布量で接着材38が塗布されると、グレージングチャンネル14を複層ガラス12に装着する際に、接着材38がグレージングチャンネル14の外部にはみ出して外観を損なうことになったり、接着材38が抵抗物となり、グレージングチャンネル付き複層ガラス10、50、60の窓枠への嵌合作業が困難になったりするからである。
【0053】
なお、実施の形態では、接着材38をグレージングチャンネル14に塗布した後、グレージングチャンネル14に複層ガラス12を嵌合させたが、グレージングチャンネル14に複層ガラス12を嵌合させた後に、接着材38が位置する複層ガラス12とグレージングチャンネル14との間の隙間に、細径のノズルを挿入して接着材38を塗布してもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…グレージングチャンネル付き複層ガラス、12…複層ガラス、14…グレージングチャンネル、16…ガラス板、18…スペーサ、20…空気層、22…一次シール材、24…二次シール材、26…吸湿材、28…貫通孔、30…補強材、32…内部軟質材、34…外部軟質材、36…開口部、38…接着材、40…塗布装置、42…ノズル、50…グレージングチャンネル付き複層ガラス、60…グレージングチャンネル付き複層ガラス、62…ストッパ片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペーサによって隔置された2枚のガラス板が空気層を介して重ねられるとともに該2枚のガラス板がその端縁部でシール材により接着され、該シール材の外表面が前記2枚のガラス板の端面から2枚のガラス板の内側に位置する複層ガラスを準備する工程と、
前記複層ガラスの端縁部が嵌合される溝を有し、該溝の側壁部にストッパ片が備えられるとともに前記シール材の外表面に対向する位置に開口部が備えられたグレージングチャンネルを準備する工程と、
固化した際に前記ストッパ片と嵌合する接着材を、前記グレージングチャンネルの前記溝の隅部に塗布する工程と、
前記グレージングチャンネルの前記溝に複層ガラスの端縁部を嵌合し、前記接着材を前記2枚のガラス板の端縁部に接着する工程と、
を有することを特徴とするグレージングチャンネル付き複層ガラスの組立方法。
【請求項2】
前記グレージングチャンネルは樹脂製であり、前記接着材は、前記グレージングチャンネルに対する接着力よりも前記ガラス板に対する接着力が高い接着材である請求項1に記載のグレージングチャンネル付き複層ガラスの組立方法。
【請求項3】
前記接着材は、シリコーン、ポリサルファイド、ウレタン等の硬化性エラストマを基剤とする接着材である請求項2に記載のグレージングチャンネル付き複層ガラスの組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−122230(P2012−122230A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272821(P2010−272821)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】