説明

グロメット

【課題】ケーブル等の目的物等を、チャンネル型鋼材等の溝部に沿って固定するためのグロメットに関し、チャンネル型鋼材のリップを利用してグロメットを固定若しくはフリーストップすることができるようにした。
【解決手段】グロメット(10)には、基台脚部(50)、フランジ部(40)を備える。基台脚部(50)には、外側に向かって弾性的に突出し、リップ(31)の間隔内への挿入時に、当該リップ(31)に押されて内側に向かって撓み込み、リップ(31)の間隔内を通過後、溝部(32)内で復元し、フランジ部(40)との間でリップ(31)を内外からはさみ持つ弾性脚片(52)を備える。基台脚部(50)とフランジ部(40)とのいずれか少なくとも一方には、目的物(例えばケーブル)又は目的物の固定手段を係止するための係止手段(例えばケーブルクランプ)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばケーブル等の目的物等を、チャンネル型鋼材等の溝部に沿って固定するためのグロメットに関し、チャンネル型鋼材のリップを利用してグロメットを固定若しくはフリーストップすることができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、相手部材の取付穴に挿入可能な頭部と、取付穴より外形の大きい鍔部とを有するクリップが知られている(特許文献1の段落番号「0021」、図1参照)。
上記した従来の頭部には、その外側に向かって弾性的に突出した爪部を設けていた(特許文献1の段落番号「0021」、図1参照)。
上記した従来の鍔部には、相手部材に向かって突出したリブを設けていた(特許文献1の図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-78065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来のクリップは、相手部材の取付穴に固定するものであるので、チャンネル型鋼材のリップを利用した固定した際に、チャンネル型鋼材等の溝部に沿ってクリップが移動するおそれがあるといった問題点があった。
そこで、各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した従来の技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次の点にある。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、次の点を目的とする。
【0005】
すなわち、請求項1に記載の発明は、フランジ部と弾性脚片との間でリップを内外からはさみ持つことで、チャンネル型鋼材のリップを利用してグロメットを固定若しくはフリーストップすることができるようにしたものである。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0006】
すなわち、請求項2に記載の発明は、チャンネル型鋼材等の溝部の長手方向の複数箇所に弾性脚片が作用することで、チャンネル型鋼材等の溝部の長手方向の傾きを防止することができるようにしたものである。
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0007】
すなわち、請求項3に記載の発明は、膨出部がリップに当接することで、チャンネル型鋼材等の溝部の長手方向の移動を防止することができるようにしたものである。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、上記した請求項3に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0008】
すなわち、請求項4に記載の発明は、スリットにより膨出部に弾性力を付与することができるようにしたものである。
その結果、請求項4に記載の発明によれば、チャンネル型鋼材等の溝部の長手方向の移動を防止することができるばかりでなく、基台脚部の挿入力の低減、並びにチャンネル型鋼材等の溝部の長手方向の取付位置の調整を容易化することができるようにしたものである。
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、上記した請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0009】
すなわち、請求項5に記載の発明は、突起と弾性脚片とがリップの表裏面に当接することで、リップの表裏方向のガタ付きを防止することができるようにしたものである。
(請求項6)
請求項6に記載の発明は、上記した請求項5に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0010】
すなわち、請求項6に記載の発明は、切欠部により突起に弾性力を付与することができるようにしたものである。
その結果、請求項6に記載の発明によれば、リップの表裏方向のガタ付きを防止することができるばかりでなく、基台脚部の挿入力を低減することができるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した各目的を達成するためになされたものであり、各発明の特徴点を図面に示した発明の実施の形態を用いて、以下に説明する。
なお、カッコ内の符号は、発明の実施の形態において用いた符号を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
また、図面番号も、発明の実施の形態において用いた図番を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、次の点を特徴とする。
【0012】
第1に、例えば図1及び図9〜13に示すように、リップ(31)付きチャンネル型鋼材(30)等の溝部(32)に沿って目的物(例えばケーブル20)を固定するためのグロメット(10)である。
第2に、グロメット(10)には、例えば図1及び図9〜13に示すように、次の構成を備える。
【0013】
(1)基台脚部(50)
基台脚部(50)は、例えば図1及び図9〜13に示すように、溝部(32)内に配置されるものである。
(2)フランジ部(40)
フランジ部(40)は、例えば図1及び図9〜13に示すように、基台脚部(50)から延設され、溝部(32)の外側に配置されるものである。
【0014】
第3に、基台脚部(50)には、例えば図1、図10及び図11に示すように、外側に向かって弾性的に突出し、リップ(31)の間隔内への挿入時に、当該リップ(31)に押されて内側に向かって撓み込み、リップ(31)の間隔内を通過後、溝部(32)内で復元し、フランジ部(40)との間でリップ(31)を内外からはさみ持つ弾性脚片(52)を備える。
第4に、基台脚部(50)とフランジ部(40)とのいずれか少なくとも一方には、例えば図14及び図15に示すように、目的物(例えばケーブル20)又は目的物(例えばケーブル20)の固定手段(図示せず)を係止するための係止手段(例えばケーブルクランプ60)を備える。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0015】
すなわち、弾性脚片(52)は、例えば図1に示すように、溝部(32)に沿って複数設けた。(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
すなわち、基台脚部(50)には、例えば図1及び図11に示すように、リップ(31)に向かって膨らんだ膨出部(53)を設けた。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、上記した請求項3に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0016】
すなわち、基台脚部(50)には、例えば図1に示すように、膨出部(53)の裏側にスリット(54)を設けた。
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、上記した請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0017】
すなわち、フランジ部(40)には、例えば図1及び図11に示すように、リップ(31)に向かって突出した突起(42)を設けた。
(請求項6)
請求項6に記載の発明は、上記した請求項5に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0018】
すなわち、フランジ部(40)には、例えば図1に示すように、基台脚部(50)との間に、突起(42)に弾性力を付与するための切欠部(43)を設けた。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。(請求項1)
請求項1に記載の発明によれば、次のような効果を奏する。
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、フランジ部と弾性脚片との間でリップを内外からはさみ持つことで、チャンネル型鋼材のリップを利用してグロメットを固定若しくはフリーストップすることができる。
(請求項2)
請求項2に記載の発明によれば、上記した請求項1に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0020】
すなわち、請求項2に記載の発明によれば、チャンネル型鋼材等の溝部の長手方向の複数箇所に弾性脚片が作用することで、チャンネル型鋼材等の溝部の長手方向の傾きを防止することができる。
(請求項3)
請求項3に記載の発明によれば、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0021】
すなわち、請求項3に記載の発明によれば、膨出部がリップに当接することで、チャンネル型鋼材等の溝部の長手方向の移動を防止することができる。
(請求項4)
請求項4に記載の発明によれば、上記した請求項3に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0022】
すなわち、請求項4に記載の発明によれば、スリットにより膨出部に弾性力を付与することができる。
その結果、請求項4に記載の発明によれば、チャンネル型鋼材等の溝部の長手方向の移動を防止することができるばかりでなく、基台脚部の挿入力の低減、並びにチャンネル型鋼材等の溝部の長手方向の取付位置の調整を容易化することができる。
(請求項5)
請求項5に記載の発明によれば、上記した請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0023】
すなわち、請求項5に記載の発明によれば、突起と弾性脚片とがリップの表裏面に当接することで、リップの表裏方向のガタ付きを防止することができる。
(請求項6)
請求項6に記載の発明によれば、上記した請求項5に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0024】
すなわち、請求項6に記載の発明によれば、切欠部により突起に弾性力を付与することができる。
その結果、請求項6に記載の発明によれば、リップの表裏方向のガタ付きを防止することができるばかりでなく、基台脚部の挿入力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】グロメットとチャンネル型鋼材との斜視図である。
【図2】グロメット(フランジ部及び基台脚部)の斜視図である。
【図3】グロメット(フランジ部及び基台脚部)の正面図である。
【図4】グロメット(フランジ部及び基台脚部)の平面図である。
【図5】グロメット(フランジ部及び基台脚部)の底面図である。
【図6】グロメット(フランジ部及び基台脚部)の側面図である。
【図7】図4のA−A線に沿う断面図である。
【図8】図4のB−B線に沿う断面図である。
【図9】グロメットの取付状態を示す分解した側面図である。
【図10】グロメットの取付状態を示す側面図である。
【図11】グロメットの取付状態を示す一部拡大断面図である。
【図12】グロメット(フランジ部及び基台脚部)の取付状態を示す斜視図である。
【図13】グロメット(フランジ部及び基台脚部)の取付状態を示す他の斜視図である。
【図14】ケーブルの保持状態を示すグロメットの側面図である。
【図15】ケーブルの保持状態を示すグロメットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(グロメット10)
図中、10は、グロメット10に関し、図14及び図15に示すように、例えばケーブル20等の目的物を直接、或いはケーブル20の結束バンド等の固定手段(図示せず)を介して間接的に、長尺なチャンネル型鋼材30内の長手方向に延在する溝部32に沿って固定するためのものである。
【0027】
なお、目的物として、ケーブル20を例示したが、これに限定されない。固定手段として、結束バンドを例示したが、これに限定されない。
チャンネル型鋼材30は、図1に示すように、リップ31付きのものであり、下面が開放したC字形、或いはカタカナの「コ」字形の断面形状を有し、長尺に形成されている。
なお、鋼材30の名称として、「チャンネル型」を例示したが、これに限定されず、単に「チャンネル」や、「リップチャンネル」、「C形(型)鋼」、「リップ溝形(型)鋼」等の名称であっても良い。
【0028】
リップ31は、チャンネル型鋼材30の対向する下端部から、断面L字形に折れ曲り、相対向して延びる。相対向するリップ31は、互い離れて位置し、両者の間隔内を通してグロメット10を装着する。
溝部32は、チャンネル型鋼材30の中空内部に位置し、チャンネル型鋼材30内の長手方向に沿って延在する。溝部32の下面は、相対向するリップ31の間隔内を通して開放する。
【0029】
グロメット10は、図1及び図9に示すように、大別すると、次の各部を備える。
なお、次の(1)〜(3)については後述する。
(1)フランジ部40
(2)基台脚部50
(3)ケーブルクランプ60(係止手段)
なお、グロメット10の各部は、上記した(1)〜(3)に限定されない。
(フランジ部40)
フランジ部40は、図1及び図9〜13に示すように、後述する基台脚部50から延設され、チャンネル型鋼材30の溝部32の外側に配置されるものである。フランジ部40は、基台脚部50と一体的に成形され、適度な弾性と剛性とを有する、例えば「PBT」(ポリブチレンテレフタレート)等の熱可塑性合成樹脂により一体的に成形されている。なお、フランジ部40と基台脚部50とを一体的に形成したが、これに限定されず、個別に成形して組み立てても良い。また、フランジ部40の材質として、合成樹脂を例示したが、これに限定されず、金属製としても良い。
【0030】
フランジ部40は、平板状に形成され、その横幅を相対向するリップ31の間隔より幅広に形成している。
フランジ部40は、図1〜8に示すように、大別すると、次の各部を備える。
なお、次の(1)〜(3)については後述する。
(1)取付孔41
(2)突起42
(3)切欠部43
なお、フランジ部40の各部は、上記した(1)〜(3)に限定されない。
(取付孔41)
取付孔41は、図1、図2、図4及び図7に示すように、フランジ部40の略中央に位置し、上下に貫通し、円形に形成されている。取付孔41には、図9及び図10に示すように、ケーブルクランプ60の後述する支持脚80が挿入されて固定される。なお、取付孔41を、円形に形成したが、これに限定されず、方形等のように非円形に形成しても良い。
(突起42)
突起42は、図1及び図4に示すように、フランジ部40の上面からリップ31に向かって突出したものである。
【0031】
突起42は、フランジ部40の上面の四隅に位置し、計4個設けられている。突起42は、上面が扁平な略半球形に形成されている。
なお、突起42の個数として、4個を例示したが、これに限定されず、単数、2個、3個或いは5個以上設けても良い。
突起42は、後述する基台脚部50をチャンネル型鋼材30に装着した状態において、図11に示すように、リップ31の下面に当接する。
(切欠部43)
切欠部43は、図1、図4及び図5に示すように、フランジ部40と基台脚部50とにまたがって位置し、突起42に弾性力を付与するためのものである。
【0032】
切欠部43は、基台脚部50の後述する弾性脚片52の外面をC字形、或いはカタカナの「コ」字形に縁取るように形成され、計4個設けられている。切欠部43は、フランジ部40の上下に貫通する。
なお、切欠部43の個数として、4個を例示したが、これに限定されず、単数、2個、3個或いは5個以上設けても良い。
(基台脚部50)
基台脚部50は、図1及び図9〜13に示すように、溝部32内に配置されるものである。
【0033】
基台脚部50は、フランジ部40の上面から上方に向かって突出し、前述したように、フランジ部40と一体的に成形されている。
基台脚部50は、図1〜8に示すように、大別すると、次の各部を備える。
なお、次の(1)〜(5)については後述する。
(1)ブロック部51
(2)弾性脚片52
(3)膨出部53
(4)スリット54
(5)中空部55
なお、基台脚部50の各部は、上記した(1)〜(5)に限定されない。
(ブロック部51)
ブロック部51は、図1〜4及び図8に示すように、フランジ部40の上面からブロック形に突出し、チャンネル型鋼材30の相対向するリップ31の間隔内を通過し、溝部32内にはまり込むものである。
【0034】
ブロック部51は、フランジ部40の取付孔41を挟んで一対形成されている。
なお、ブロック部51を、一対形成したが、これに限定されず、単数、或いは3個以上設けても良い。
ブロック部51の横幅は、一対のリップ31の間隔以下に設定されている。
(弾性脚片52)
弾性脚片52は、図1〜7に示すように、基台脚部50に位置し、外側に向かって弾性的に突出し、リップ31の間隔内への挿入時に、当該リップ31に押されて内側に向かって撓み込み、リップ31の間隔内を通過後、溝部32内で復元し、フランジ部40との間でリップ31を内外からはさみ持つものである。
【0035】
弾性脚片52は、各ブロック部51の外側面から突出し、計4個設けられている。弾性脚片52は、各ブロック部51の外側面、すなわち幅方向の両側に位置する背向する外側面から外向きに突出し、斜面を上方に向けた略直角三角形形に形成されている。
なお、弾性脚片52の個数として、4個を例示したが、これに限定されず、2個、3個或いは5個以上設けても良い。
【0036】
互いに背向する一対の弾性脚片52の頂点までの間隔は、一対のリップ31の間隔より大きく設定されている。
(膨出部53)
膨出部53は、図1〜4、図6及び図7に示すように、基台脚部50に位置し、リップ31に向かって膨らんだものであり、基台脚部50をチャンネル型鋼材30に装着した状態において、リップ31の先端部の端面に当接する。
【0037】
膨出部53は、各ブロック部51の外側面から突出し、斜面をを上方に向けた略台形形に形成されている。膨出部53は、フランジ部40の4個の突起42に近接して配置され、計4個設けられている。
なお、膨出部53の個数として、4個を例示したが、これに限定されず、単数、2個、3個或いは5個以上設けても良い。
【0038】
互いに背向する一対の膨出部53の頂点までの間隔は、一対のリップ31の間隔以上に設定され、弾性脚片52と比較すると、突出量を少なく設定している。
(スリット54)
スリット54は、図1、図2及び図6に示すように、基台脚部50に位置し、膨出部53の裏側に設けられたものであり、膨出部53に弾性力を付与するためのものである。
【0039】
スリット54は、各ブロック部51に形成され、フランジ部40の下面からブロック部51に向かって上方に延び、下端部が開放した略U字形に形成されている。スリット54は、4個の膨出部53の裏側にそれぞれ位置するように、計4個設けられている。
なお、スリット54の個数として、4個を例示したが、これに限定されず、単数、2個、3個或いは5個以上設けても良い。
(中空部55)
中空部55は、図1、図2、図4、図5及び図7に示すように、各ブロック部51の内部にそれぞれ形成され、弾性脚片52が撓み込むためのものである。
【0040】
中空部55は、ブロック部51からフランジ部40に貫通した筒形に形成され、4個の弾性脚片52に対応させて、計4個設けられている。
なお、中空部55の個数として、4個を例示したが、これに限定されず、弾性脚片52と同数であれば良い。
(ケーブルクランプ60(係止手段))
ケーブルクランプ60は、図9、図10、図14及び図15に示すように、フランジ部40に固定され、ケーブル20(目的物)を係止するためのものであり、係止手段として機能する。
【0041】
ケーブルクランプ60は、フランジ部40及び基台脚部50と別体に成形され、フランジ部40に取り付けられる。ケーブルクランプ60は、適度な弾性と剛性とを有する、例えば「PBT」(ポリブチレンテレフタレート)等の熱可塑性合成樹脂により一体的に成形されている。なお、ケーブルクランプ60を、フランジ部40及び基台脚部50と別体に成形したが、これに限定されず、フランジ部40及び基台脚部50と一体的に成形しても良い。
【0042】
係止手段は、ケーブル20(目的物)を直接、或いはケーブル20の結束バンド等の固定手段(図示せず)を、フランジ部40と基台脚部50とのいずれか少なくとも一方に係止するためのものである。なお、係止手段として、ケーブルクランプ60を例示したが、これに限定されない。また、係止手段であるケーブルクランプ60を、フランジ部40に取り付けて固定したが、これに限定されず、基台脚部50に取り付けて固定しても良いし、或いはフランジ部40と基台脚部50との両者に取り付けて固定しても良い。
【0043】
ケーブルクランプ60は、図9、図10、図14及び図15に示すように、大別すると、次の各部を備える。
なお、次の(1)〜(4)については、後述する。
(1)基部70
(2)支持脚80
(3)クランプ部90
(4)可動アーム100
なお、ケーブルクランプ60の各部は、上記した(1)〜(4)に限定されない。
(基部70)
基部70は、図9、図10、図14及び図15に示すように、チャンネル型鋼材30の幅方向に長い板状に形成され、外形をフランジ部40の取付孔41より大きく設定している。
【0044】
基部70の長さ方向の一端部には、後述する可動アーム100を旋回可能に支持する軸穴71を設けている。
軸穴71は、側方、すなわちチャンネル型鋼材30の長手方向に貫通し、方形に形成されている。
(支持脚80)
支持脚80は、図9に示すように、基部70の長さの途中の上面から上方に向かって円筒形に延び、フランジ部40の取付孔41の内径以下の外径を有する。
【0045】
支持脚80には、外側に向かって弾性的に突出した爪部81を設けている。
爪部81は、基部70の直径方向に一対設けられ、半径方向外向きに互いに背向して一対突出する。爪部81は、取付孔41に挿入時に、当該取付孔41の孔縁に押されて内側に向かって撓み込み、取付孔41を通過後、ブロック部51の間隔内で復元し、基部70との間でフランジ部40を上下からはさみ持つものである。
(クランプ部90)
クランプ部90は、図9、図10、図14及び図15に示すように、基部70の長さ方向の他端部に連接し、ケーブル20を保持可能なものである。
【0046】
クランプ部90は、一端部が基部70に連接し、下方に向かってC字形に湾曲して延び、他端部が自由端部となり、後述する可動アーム100とケーブル20を差し込む隙間を保って下方に離れて位置する。
クランプ部90の自由端部と後述する可動アーム100との間の隙間から差し込んだケーブル20は、クランプ部90の内周面に載置し、仮保持することができるようになっている。
【0047】
クランプ部90には、その湾曲した長さ方向に沿ってラチェット91を設けている。ラチェット91は、後述する可動アーム100のロック爪(図示せず)と噛み合うものである。
(可動アーム100)
可動アーム100は、図9、図10、図14及び図15に示すように、一端部が基部70の軸穴71に支持され、当該軸穴71を中心にクランプ部90に沿って旋回するものである。
【0048】
可動アーム100の一端部には、軸穴71にはまり込む突軸101を設け、他端部が自由端部となり、自由端部には、クランプ部90のラチェット91に噛み合うロック爪(図示せず)を有するロック部102を設けている。
ロック部102は、図示しないが、クランプ部90がはまり込む凹状のガイド溝を有する。ロック爪は、同じく図示しないが、ガイド溝に臨み、当該ガイド溝にはまり込んだクランプ部90のラチェット91の歯に向かって弾性的に突出する。ロック部102は、同じく図示しないが、解除レバーを有し、当該解除レバーを操作することで、ラチェット91の一つの歯に噛み合うロック爪を、当該歯から浮上させることで、ロック状態を解除できるようになっている。
【0049】
可動アーム100は、基部70との間の摩擦抵抗により、基部70と略平行に上方に旋回した状態を維持する。上方に旋回した状態においては、ロック部102は、クランプ部90の先端部に位置する自由端部から、ケーブル20を差し込み可能な隙間を保って上方に離れて位置する。
可動アーム100を、基部70との間の摩擦抵抗に抗して、図14及び図15に示すように、軸穴71を中心に下方に向かって旋回させると、ロック部102のガイド溝(図示せず)にクランプ部90の先端部に位置する自由端部がはまり込み、ケーブル20を差し込み可能な隙間が閉塞され、ケーブル20がクランプ部90の内部空間から抜けなくなる。
【0050】
可動アーム100を更に旋回させると、図14及び図15に示すように、クランプ部90の内部空間が狭まり、クランプ部90の内部空間に入ったケーブル20を、可動アーム100、クランプ部90の内周面及び基部70の下面との間で包み込むようにしてはさみ持つ。
(グロメット10の取付方法)
つぎに、上記した構成を有するグロメット10を、チャンネル型鋼材30に取り付ける方法について説明する。
【0051】
まず、フランジ部40の取付孔41に、ケーブルクランプ60の支持脚80を挿入して固定する(図9、図10参照)。
なお、支持脚80をチャンネル型鋼材30に先に取り付けてから、その後、ケーブルクランプ60を取り付けることも可能である。
つぎに、支持脚80を、図9に示すように、チャンネル型鋼材30のリップ31の間隔内を通して溝部32に向かって下から上に挿入する。
【0052】
支持脚80を挿入すると、ブロック部51の外側面から背向して突出する一対の弾性脚片52が、同じく一対のリップ31に押されて、中空部55内にそれぞれ撓み込む。このため、支持脚80の横幅が狭まり、一対のリップ31の間隔内を通過可能となる。その後、リップ31の間隔内を通過すると、一対の弾性脚片52が、図10及び図11に示すように、樹脂の弾性復元力により、溝部32内で復元する。
【0053】
このため、復元した一対の弾性脚片52と、フランジ部40の上面との間で、図10〜13に示すように、リップ31を上下からはさみ持つことで、グロメット10がチャンネル型鋼材30に固定される。
グロメット10の固定状態において、図11に示すように、ブロック部51の外側面から背向して突出する一対の膨出部53が、リップ31の先端部の端面に当接する。
【0054】
このとき、膨出部53がリップ31の先端部の端面に押され、裏側のスリット54に向かって撓むことで、膨出部53がリップ31の先端部の端面に弾性的に当接する。
このため、膨出部53とリップ31の先端部の端面との間の摩擦力により、チャンネル型鋼材30の長手方向におけるグロメット10の移動を阻止することができる。このため、チャンネル型鋼材30の溝部32の長手方向の任意の位置に、グロメット10を自由に固定でき、いわゆるフリーストップとすることができる。
一方、グロメット10をチャンネル型鋼材30の長手方向に移動する必要性がある場合には、膨出部53とリップ31の先端部の端面との間の摩擦力に抗して、グロメット10をスライドすると、膨出部53がスリット54に向かって撓むことで、摩擦力が低減される。このため、グロメット10を比較的軽い力でスライドすることが可能である。
【0055】
スライドする力を解放すると、樹脂の復元力により、膨出部53がリップ31の先端部の端面に向かって弾性的に突出することで、スライドする力を解放した位置に、グロメット10を再度、固定することができる。
さらに、グロメット10の固定状態において、フランジ部40の上面から突出する突起42が、図11に示すように、リップ31の下面に当接する。
【0056】
このとき、突起42がリップ31の下面に押されることで、フランジ部40と基台脚部50とにまたがって位置する切欠部43により、フランジ部40が下方に向かって撓むことで、突起42がリップ31の下面に弾性的に当接する。
このため、突起42により、チャンネル型鋼材30内におけるグロメット10の上下方向のガタ付きを防止することができる。また、切欠部43により、リップ31の下面に突起42を弾性的に当接させることができるため、チャンネル型鋼材30やグロメット10の部品精度のバラ付きを吸収することができる。
(ケーブル20の保持方法)
ケーブル20を、クランプ部90と可動アーム100との間の隙間内から、クランプ部90の内部空間に差し込み、クランプ部90の内周面に載置することで、仮保持することができる。
【0057】
その後、ケーブル20を保持するには、図14及び図15に示すように、可動アーム100を下方に旋回し、可動アーム100、クランプ部9及び基部70との間で包み込むようにしてはさみ持つ。
このとき、可動アーム100のロック爪(図示せず)が、クランプ部90のラチェット91の一つの歯に噛み合うことで、ロック部102がロック状となる。
【0058】
ロック状態を解除するには、解除レバー(図示せず)を操作することで、ラチェット91の一つの歯に噛み合うロック爪が、当該歯から浮上し、ロック状態が解除される。
このため、可動アーム100を上方に向かって旋回させることで、クランプ部90の内部空間からケーブル20を抜き取ることができる。
【符号の説明】
【0059】
10 グロメット
20 ケーブル(目的物) 30 チャンネル型鋼材
31 リップ 32 溝部
40 フランジ部 41 取付孔
42 突起 43 切欠部
50 基台脚部 51 ブロック部
52 弾性脚片 53 膨出部
54 スリット 55 中空部
60 ケーブルクランプ(係止手段)
70 基部 71 軸穴
80 支持脚 81 爪部
90 クランプ部 91 ラチェット
100 可動アーム
101 突軸 102 ロック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リップ付きチャンネル型鋼材等の溝部に沿って目的物を固定するためのグロメットであって、
前記溝部内に配置される基台脚部と、
前記基台脚部から延設され、前記溝部の外側に配置されるフランジ部とを備え、
前記基台脚部には、
外側に向かって弾性的に突出し、前記リップの間隔内への挿入時に、当該リップに押されて内側に向かって撓み込み、前記リップの間隔内を通過後、前記溝部内で復元し、前記フランジ部との間で前記リップを内外からはさみ持つ弾性脚片を備え、
前記基台脚部と前記フランジ部とのいずれか少なくとも一方には、
前記目的物又は前記目的物の固定手段を係止するための係止手段を備えていることを特徴とするグロメット。
【請求項2】
前記弾性脚片は、溝部に沿って複数設けたことを特徴とする請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記基台脚部には、
前記リップに向かって膨らんだ膨出部を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のグロメット。
【請求項4】
前記基台脚部には、
前記膨出部の裏側にスリットを設けたことを特徴とする請求項3に記載のグロメット。
【請求項5】
前記フランジ部には、
前記リップに向かって突出した突起を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のグロメット。
【請求項6】
前記フランジ部には、
前記基台脚部との間に、前記突起に弾性力を付与するための切欠部を設けたことを特徴とする請求項5に記載のグロメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−96835(P2012−96835A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246552(P2010−246552)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】