説明

グローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置

【課題】 インナーリングからグローブを分離させるには、グローブを取り付けているOリングを外さなければならないが、気密性の確保から強固に締め付けられている該Oリングを容易に切断できるグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置を提供する。
【解決手段】 受け台部21aを有する受けレバー21と刃部22bを有する切断レバー22とを、支持ピン23によって互いに揺動自在に連繋させる。インナーリング11に前記受け台部21aを挿入した状態で、切断レバー22を揺動させてその刃部22bをOリング13に押圧すれば、該Oリング13が切断される。これにより、グローブ12をインナーリング11から簡単に取り外すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原子力施設における放射性物質を取り扱う場合の放射能汚染環境を閉じ込めるグローブボックスに用いられるグローブを廃棄する際に、該グローブをインナーリングから分離するため、グローブをインナーリングに固定している固着手段を切断するグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性物質や有毒ガス等の人体に悪影響を及ぼす危険物質は、閉鎖された空間で、作業者がこれら危険物質環境に触れないようにして扱う必要がある。この種の危険物質を閉塞し、外部から扱えるようにした装置にグローブボックスがある。図7は、放射性物質を取り扱う原子力施設で用いられるグローブボックス1の概略構造を示している。このグローブボックス1の内部に放射性物質のための各種の取扱装置2が配置されており、正面壁に運転者Pが該取扱装置2を操作したりするためのグローブポート3が設けられている。なお、正面壁は内部を視認することができる素材によって形成されている。また、グローブボックス1の側壁にはグローブボックス1の内部で必要な工具や装置等を該グローブボックス1内に供給したり、グローブボックス1内の不要な部品や装置等を取り出したりするためのラージポート4が設けられている。また、グローブボックス1内の換気は、給気設備5と排気設備6とによって行われ、排気は浄化されて放射性物質を確実に除去して行われるようにしてある。なお、該グローブボックス1内は負圧に維持されて、内部の環境空気が外部に漏洩しないようにしてある。また、警報盤7が設けられており、異常時には警報を発するようにしてある。
【0003】
図6は、前記グローポート3の構造を示す断面図である。グローブポート3はグローブボックス1の正面壁に固定された樹脂製の円筒物であり、その内周面に沿ってインナーリング11が挿入されている。インナーリング11の外側面であって、中央部からグローブボックス1側となる前側には、2連のリング溝11aが設けられており、該リング溝11aの後方に、カフ取付部11bが形成されている。これらリング溝11aにゴム製のグローブ12が被せられて、該グローブ12のカフ12aが前記カフ取付部11bに当接させてある。そして、グローブ12が前記リング溝11aに係合するように固着部材であるOリング13で固定されている。また、前記カフ取付部11bの後方には適宜数のパッキン溝11cが形成され、このパッキン溝11cにパッキン14が収容され、グローブポート3の内周面に密着させて、該グローブポート3とインナーリング11との間をシールしている。インナーリング11の内側面であって後端部には、係止溝11dが形成されている。他方、グローブポート3の外側面の後端部には係止溝10aが形成されている。そして、前記係止溝11dと係止溝10aとのそれぞれに係止する係合部15a、15bを有する固定環15が設けられる。すなわち、該固定環15は環状で、該環状の軸を含む面で切断した断面がほぼコ字形であって、該コ字形の一方の脚部を長尺にしてあり、これら脚部の先端部に前記係合部15a、15bが形成されている。したがって、該固定環15を、係合部15a、15bによってグローブポート3とインナーリング11とに係合させると、インナーリング11がグローブポート3に連繋して、インナーリング11がグローブポート3から脱落しない状態となる。
【0004】
さらに、インナーリング11を交換するために、固定環15の外側から押し込み治具16が挿入されるようにしてある。この押し込み治具16は底16a付きの筒型で、胴部16bの外側の一部にはフランジ部16cが設けられており、この押し込み治具16をグローブポート3に装着する場合に、該フランジ部16cが前記固定環15の外側面に当接するようにしてある。胴部16bの前側端部の外側面にはリング溝16dが形成されて、Oリング17が嵌装されており、この押し込み治具16を固定環15に挿入した状態で、該押し込み治具16と固定環15との間で滑りが生じないように固定している。グローブポート3を利用するには、図7に示すように、運転者Pが該グローブポート3から腕を差し込めば、前記グローブ12が手及び腕に被せられて、該グローブポート3に臨んでいる放射性物質取扱装置2を操作することができるようになる。
【0005】
前記グローブ12はゴム製のものであり、経年変化によって劣化するおそれがあるから、適時に交換する必要がある。このグローブ12の交換方法として、例えば、特許文献1に開示されたグローブボックス用グローブがある。このグローブボックス用グローブは、グローブボックスのグローブポートに嵌挿可能な筒状のインナーリング本体であって、当該インナーリング本体が装着されている前記グローブポートに他の前記インナーリング本体を嵌挿する際、当該の他の前記インナーリング本体の前端部が既に装着されている前記インナーリング本体の後端部に当接可能な形状を有するインナーリング本体と、該インナーリング本体の内側に配設された筒状のグローブ固定部と、該グローブ固定部に基端部が密着固定されているグローブとを具備し、前記グローブ固定部は前記インナーリング本体と離隔した位置に配設されているものである。すなわち、グローブ12を交換する場合には、固定環15を外し、新たなグローブ12を装着した新たなインナーリング11を、既存のインナーリング12の後端部に当接させた状態で、固定環15を取り付け、この状態で押し込み治具16によりグローブポート3内に押し込み、既存のグローブ12を既存のインナーリング11と共にグローブボックス1内に落下させるのである。
【0006】
【特許文献1】特許第2995627号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、放射能汚染物質の廃棄については厳しい条件があり、不用意に廃棄できない。焼却できるものは焼却により廃棄することになるが、インナーリング11やグローブ12等は焼却できるものではない。これらの放射能汚染物質の廃棄は、例えば深地下に埋設すること等が考えられているが、現時点では埋設の基準等が定められておらず、廃棄できない状況にある。このため、これら焼却に適しない放射能汚染物質は、大気とは隔絶された状態で保管倉庫等に保管されている。特許文献1に開示されているように、交換後の古いインナーリング11とグローブ12とは、これらを切り離して廃棄待ちのものとして保管されている。このため、グローブ12をインナーリング11から分離する必要がある。グローブ12はインナーリング11にOリング13によって固着されているから、このOリング13を取り外してグローブ12を分離する。該Oリング13は、インナーリング11とグローブ12との間の気密性を確保する必要から、大きな力で締め付けてグローブ12を固定しているから、該Oリング13を外すことは容易でない。従来は、ドライバ等を用いて、Oリング13を拡開させながら外しているが、グローブボックス1内の作業であり、繁雑な作業となっている。また、取り外し作業中に誤って運転者Pが使用しているグローブ12を損傷させるおそれがある。
【0008】
そこで、前記Oリングが廃棄品であるため、取り外し時に切断しても構わないことに鑑みて、Oリング等の固着部材を破壊して、グローブをインナーリングから分離させるグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係るグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置は、グローブボックスのグローブポートに取り付けられるインナーリングと、該インナーリングに固着部材によって取り付けられたグローブとを分離するために、前記固着部材を切断するグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置において、前記インナーリングの内面に当接する受け台部を先端に有する受けレバーと、前記固着部材を切断する刃部を有する切断部が先端に具備された切断レバーと、前記受けレバーと切断レバーとを互いに揺動自在に支持する支持部とからなり、前記受けレバーをインナーリングに挿入し、前記切断レバーの切断部を前記固着部材に臨ませ、受けレバーと切断レバーのそれぞれの基端部を把持することにより、前記受け台部と切断部とで固着部材及びインナーリングを挟み、切断部を固着部材に押圧して該固着部材を切断することを特徴としている。
【0010】
すなわち、この切断装置を鋏形式に形成したものであり、一方の先端部にのみ刃部を設けて、該刃部によって固着部材を切断するようにしたものである。前述したように、固着部材としてOリングが用いられる場合には、リング溝が形成されてこれにOリングが嵌着されるから、前記切断部の刃部が形成された部分はこのリング溝に挿入するのに支障がない形状とされている。そして、前記受け台部をインナーリングに挿入して該インナーリングを挟んでOリングと重畳する位置に位置させ、受けレバーと切断レバーの基端部を把持して強く握れば、切断部の刃部がOリングを切断する。これにより、グローブをインナーリングから外すことができる。なお、Oリングはゴム製であるため、刃部の刃厚が薄い場合には該Oリングの抵抗によって絞られて大きな切断力が必要となる。このため、該刃部の刃厚を適宜に厚くすることが好ましい。
【0011】
また、請求項2の発明に係るグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置は、前記受け台部と切断部とを接触させた状態に、前記受けレバーと切断レバーとを拘束し、該拘束を解除するロック手段を設けたことを特徴としている。
【0012】
すなわち、この切断装置の不使用時には前記ロック手段によって受けレバーと切断レバーとを拘束して、受け台部と切断部を接触させた状態にしておく。これにより、他の作業を行っている場合に、この切断装置に触れたとしても、グローブが損傷されることがない。
【0013】
また、請求項3の発明に係るグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置は、前記受け台部と切断部とを、互いに離隔する方向に揺動させる蓄勢力を付勢する付勢手段を、前記受けレバーと切断レバーとに連繋させて設けたことを特徴としている。
【0014】
すなわち、この切断装置で固着部材を切断するには、受けレバーと切断レバーとを把持して、前記蓄勢力に抗する力で握る必要がある。このため、該受けレバーと切断レバーとが不用意に揺動することがない。
【0015】
また、請求項4の発明に係るグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置は、前記切断部の少なくとも刃部を保護する保護カバーを設け、該切断部により前記固着部材を切断する際には、該保護カバーが退避することを特徴としている。
【0016】
前記固着部材の切断作業はグローブボックス内でなされるから、作業勝手が良好ではなく、不測の事態によって作業者のグローブが刃部に接触するおそれがある。このため、保護カバーを設けて、不用意に刃部に接触することがないようにしたものである。
【0017】
また、請求項5の発明に係るグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置は、グローブボックスのグローブポートに取り付けられるインナーリングと、該インナーリングに固着部材によって取り付けられたグローブとを分離するために、前記固着部材を切断するグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置において、前記固着部材を切断する刃部を有する切断刃物であり、前記切断刃物を前記固着部材に押圧して切断することを特徴としている。
【0018】
鋏形式によらず、いわゆる押し切り形式により固着部材を切断するようにしたものである。切断刃物を固着部材に押圧するには、該切断刃物の主体部を把持して切断刃物を固着部材に押圧することによる。なお、主体部に把持部を設けて、該把持部を把持するようにすれば、取り扱いが簡便となって好ましい。
【発明の効果】
【0019】
この発明に係るグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置によれば、グローブを固定しているOリング等の固着部材を容易に切断できるので、グローブとインナーリングとの分離作業が簡便になる。特に、グローブボックス内の作業であるから、従来の分離作業に比べて作業の効率が向上すると共に、作業時に運転者のグローブを損傷させる等の不測の事態が発生することを減じることができる。
【0020】
また、請求項2の発明に係るグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置によれば、この切断装置の不使用時にはロック手段によって受け台部と切断部とが接触して閉じられていて刃部が露呈していない状態にあるから、運転者が他の作業を行っている際に、この切断装置に触れた場合でも運転者のグローブ等を損傷させることがない。
【0021】
また、請求項3の発明に係るグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置によれば、切断装置が不用意に閉じてしまうことがなく、使用に際して、運転者のグローブを損傷される等の不測の事態の発生が防止される。
【0022】
また、請求項4の発明に係るグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置によれば、保護カバーによって運転者が誤って刃部に接触することが防止される。
【0023】
また、請求項5の発明に係るグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置によれば、いわゆる押し切りによるもので、構造の簡単な切断装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係るグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置を具体的に説明する。なお、グローブボックス1とグローブポート3等を構成する構造部分については、図6及び図7に示す符号を使用する。
【0025】
図1〜図4に、第1の実施形態に係る切断装置を示してある。図1及び図2に示すように、この切断装置20は、受けレバー21と切断レバー22とを支持部の支持ピン23によって互いに揺動自在に支持させた、いわゆる鋏形式の構造とされている。
【0026】
前記受けレバー21の先端部には、適宜な肉厚の受け台部21aが形成されている。また、前記切断レバー22の先端部には切断部22aが形成され、この切断部22aの前記受け台部21aと対向する位置に刃部22bが設けられている。この刃部22bは前記11aに挿入するのに適宜な外形とされている。他方、これら受けレバー21と切断レバー22は、中央部よりも先端部側に偏倚した位置において前記支持ピン23により互いに揺動自在に支持されており、この揺動によって、図1に示すように受け台部21aと刃部22bとが離隔した状態となる開放位置と、図2に示すように受け台部21aと刃部22bとが重なった状態となる閉成位置とに位置するよう、これら受けレバー21と切断レバー22とが開閉する。なお、閉成位置にある状態では、刃部22bと受け台部21aとのそれぞれの側面が接触するようにしてある。また、受けレバー21の基端部21bと切断レバー22の基端部22cのそれぞれと、前記支持ピン23との間の距離を、図1に示すように、開放位置にある状態で運転者Pが把持するのに適宜に拡開するようにしてある。
【0027】
また、受けレバー21の前記支持ピン23の支持位置の近傍にはロック手段としての係止部材24が、軸24aによって該受けレバー21に対して回動可能に支持されている。この係止部材24の前記支持ピン23を臨む部分には係止突起24bが形成されている。他方、前記切断レバー22の前記刃部22bが設けられている面と反対側、すなわち背面側の面には平面によって係止受け面22dが形成されている。そして、図2に示すように、切断装置20が閉成位置にある状態で、該係止部材24を回動させると、係止突起24bが係止受け面22dと係合した状態となり、この状態で切断レバー22を拘束して、該切断レバー22と受けレバー21とが開放位置とならないように拘束される。また、前記支持ピン23から基端部21b、22c側に偏倚した位置には付勢手段として圧縮コイルバネからなる拡開バネ25が、受けレバー21と切断レバー22とに掛け渡されているのが好ましい。これにより拡開バネ25の復元力が受けレバー21と切断レバー22とが開放位置に揺動するように付勢される。
【0028】
以上により構成されたこの発明の第1実施形態に係るグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置の作用を、以下に説明する。
【0029】
不使用時には、この切断装置20は、グローブボックス1内の適宜な位置に保管されている。保管の際には、前記係止部材24の係止突起24bを切断レバー22の係止受け面22dに係合させた状態として、該切断装置20が不用意に開放しないようにしてある。
【0030】
前述したように、グローブ12を交換する場合には、既存のグローブ12を該グローブ12が取り付けられたインナーリング11と共にグローブボックス1内に落下させる。この落下したインナーリング11に対して切断装置20を用いることになる。図3に示すように、グローブ12を反転させてインナーリング11の内側に位置させる。切断装置20の前記係止部材24を回動させて係止突起24bを係止受け面22dから離脱させると、受けレバー21と切断レバー22の拘束が解除されてこれらが揺動可能になるから、前記拡開バネ25の復元力を受けてこれら受けレバー21と切断レバー22とが、図1に示すように拡開する。そして、図3に示すように、受けレバー21の受け台部21aをインナーリング12の内側に挿入して、該インナーリング12を挟んで固着部材であるOリング13の反対側に位置させる。この状態で、受けレバー21と切断レバー22の基端部を21b、22cを把持して握ると、拡開バネ25の復元力に抗して開放位置から閉成位置に、切断レバー22が受けレバー21に対して揺動する。これにより、切断レバー22の刃部22bがOリング13に当接し、さらに押し込まれることにより該Oリング13が切断される。Oリング13が切断されることにより、グローブ12をインナーリング11から容易に外すことができる。
【0031】
Oリング13の切断が完了したならば、受けレバー21と切断レバー22とを閉成位置まで揺動させ、前記係止部材24を回動させて、係止突起24bを係止受け面22dに係合させると、図2に示すように、刃部22bが受け台部21aと重なった位置となる。この状態で、受けレバー21と切断レバー22が不用意に拡開することが防止される。
【0032】
図4には、前記刃部22bを通常時には露呈させないようにした保護カバーを示している。同図(a)に示す保護カバー31は蛇腹状に形成されているもので、該保護カバー31の基端部が前記支持ピン23に取り付けられており、先端部が受けレバー21と切断レバー22の先端部を覆う位置まで伸長させてある。そして、切断装置20でOリング13を切断しようと、受け台部21aをインナーリング11に挿入すると、該インナーリング11の端部に押し付けられながら蛇腹状の保護カバー31が収縮して刃部22b及び受け台部21aとが露呈するようにしてある。
【0033】
また、図4(b)に示す保護カバー32は、刃部22aの背面側に引っ張りコイルバネからなる復帰バネ33を介して取り付けられている。この保護カバー32は断面ほぼコ字形で、該コ字形の内側に切断レバー22の切断部22aと刃部22bとを収容するようにし、コ字形の中央の内側部分と切断レバー22との間に前記復帰バネ33を掛け渡してある。この保護カバー32のコ字形の先端部を刃部22bをほぼ隠す位置まで伸長させてある。そして、前記受け台部21aをインナーリング11に挿入し、刃部22bを閉成位置まで揺動させると、その途中で保護カバー32の先端がインナーリング11の外側面に当接し、さらに刃部22bを押し込むと、復帰バネ33の復元力に抗して、保護カバー32が後退して刃部22bを露呈させる。Oリング13の切断後に受け台部21aをインナーリング11から引き抜けば、復帰バネ33の復元力によって保護カバー32が前進し、刃部22bを覆う状態となる。
【0034】
また、図4(c)に示す保護カバー34は、いわゆる簾式のもので、基端部が切断部22aの側面に取り付けられており、先端部が自由端とされている。この先端部が、刃部22bの側方を覆うように垂下されている。受け台部21aをインナーリング11に挿入して刃部22bを揺動させると、保護カバー34がインナーリング11に当接し、さらに刃部22bをOリング13に押圧すると、該保護カバー34がその自在性によって側方に退避することになり、切断の支障とならない。切断後に切断レバー22を開放すると、保護カバー34は刃部22bを覆う位置まで復帰して垂下された状態となる。
【0035】
図5に、この発明の第2の実施形態に係る切断装置40を示してある。この第2実施形態に係る切断装置40は、主体部41の一面に刃部42が形成された切断刃物とされているものである。そして、運転者Pは、一方の手で主体部41を把持し、他方の手でインナーリング11を把持して、前記刃部42をOリング13に押し付け、押圧することにより該Oリング13を切断する。なお、主体部41には、図示しない把持部を設けて切断装置40を確実に把持できるようにすることが好ましい。また、この実施形態では、固着部材としてOリング13が用いられている場合について説明したが、Oリング13に限らず、例えばゴムベルト等グローブ12をインナーリング11に固定しているものであれば、この切断装置を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明に係るグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置によれば、グローブをインナーリングに取り付けている固着部材を容易に切断できる。このため、グローブボックス内における作業の効率を向上させると共に、作業時間の短縮を図り、簡便な操作によって、放射能汚染物質の処理の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明に係るグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置の第1実施形態を示す図で、開放位置にある状態を示している。
【図2】第1実施形態に係る切断装置の閉成位置にある状態を示している。
【図3】第1実施形態に係る切断装置の使用状態を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る切断装置に取り付ける保護カバーの実施例を示す図で、(a)は一の実施例を、(b)は他の実施例を、(c)は別の実施例を、それぞれ示している。
【図5】この発明に係るグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置の第2実施形態を説明する図で、該切断装置の使用状態を示している。
【図6】グローブポートの構造を説明する断面図である。
【図7】グローブボックスの概略構造を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
P 運転者
1 グローブボックス
3 グローブポート
11 インナーリング
11a リング溝
12 グローブ
12a カフ
13 Oリング(固着手段)
14 パッキン
20 切断装置
21 受けレバー
21a 受け台部
21b 基端部
22 切断レバー
22a 切断部
22b 刃部
22c 基端部
22d 係止受け面
23 支持ピン(支持部)
24 係止部材(ロック手段)
24b 係止突起
25 拡開バネ(付勢手段)
31 保護カバー
32 保護カバー
33 復帰バネ
40 切断装置(切断刃物)
41 主体部
42 刃部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グローブボックスのグローブポートに取り付けられるインナーリングと、該インナーリングに固着部材によって取り付けられたグローブとを分離するために、前記固着部材を切断するグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置において、
前記インナーリングの内面に当接する受け台部を先端に有する受けレバーと、
前記固着部材を切断する刃部を有する切断部が先端に具備された切断レバーと、
前記受けレバーと切断レバーとを互いに揺動自在に支持する支持部とからなり、
前記受けレバーをインナーリングに挿入し、前記切断レバーの切断部を前記固着部材に臨ませ、受けレバーと切断レバーのそれぞれの基端部を把持することにより、前記受け台部と切断部とで固着部材及びインナーリングを挟み、切断部を固着部材に押圧して該固着部材を切断することを特徴とするグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置。
【請求項2】
前記受け台部と切断部とを接触させた状態に、前記受けレバーと切断レバーとを拘束し、該拘束を解除するロック手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載のグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置。
【請求項3】
前記受け台部と切断部とを、互いに離隔する方向に揺動させる蓄勢力を付勢する付勢手段を、前記受けレバーと切断レバーとに連繋させて設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置。
【請求項4】
前記切断部の少なくとも刃部を保護する保護カバーを設け、該切断部により前記固着部材を切断する際には、該保護カバーが退避することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置。
【請求項5】
グローブボックスのグローブポートに取り付けられるインナーリングと、該インナーリングに固着部材によって取り付けられたグローブとを分離するために、前記固着部材を切断するグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置において、
前記固着部材を切断する刃部を有する切断刃物であり、
前記切断刃物を前記固着部材に押圧して切断することを特徴とするグローブボックス用インナーリングとグローブとの固着部材の切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−246920(P2006−246920A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63372(P2005−63372)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】