グロー放電掘削装置及びグロー放電掘削方法
【課題】 試料の特性に左右されることなく、グロー放電により試料を確実に掘削する。
【解決手段】 グロー放電掘削装置1は、連続的に給電を行う連続モード及び断続的に給電を行う断続モードの切替が可能であり、グロー放電に伴う熱により溶融しやすい試料S、グロー放電に伴うスパッタリングの威力により壊れやすい試料S等に対しては断続モードで給電を行うことで、良好な観察を行える観察面を得られるように試料Sの掘削を行う。試料Sが溶解しやすい及び壊れやすい特性を具備しないときは、連続モードで給電を行うことにより効率良く良好な観察面が得られるように試料Sの掘削を行う。
【解決手段】 グロー放電掘削装置1は、連続的に給電を行う連続モード及び断続的に給電を行う断続モードの切替が可能であり、グロー放電に伴う熱により溶融しやすい試料S、グロー放電に伴うスパッタリングの威力により壊れやすい試料S等に対しては断続モードで給電を行うことで、良好な観察を行える観察面を得られるように試料Sの掘削を行う。試料Sが溶解しやすい及び壊れやすい特性を具備しないときは、連続モードで給電を行うことにより効率良く良好な観察面が得られるように試料Sの掘削を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグロー放電に伴うスパッタリングで試料表面を掘削する場合に、掘削対象の試料の特性に合わせて良好に掘削できるようにしたグロー放電掘削装置及びグロー放電掘削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料の構造及び組織等を視覚的に観察するために二次電子顕微鏡(SEM)が用いられることがある。二次電子顕微鏡で試料の断面構造及び内部構造等を観察するには、観察の前処理として試料の観察面を清浄する必要があり、例えば、試料断面を観察する場合、試料を破断して観察面となる断面を表出させ、その表出させた断面が清浄で且つ一定以上の平滑度になるまで研磨を行う。
【0003】
試料の研磨は研磨剤を用いて行われることが一般的であるが、研磨剤及び研磨作業により発生する研磨粉等の影響で作業環境の悪化が懸念されている。また、研磨作業は手間がかかるので二次電子顕微鏡で試料観察を行うまでの前処理に時間を要する。さらに、観察を行う試料の構造によっては研磨を行っても観察に適した面を得られないこともあり、例えば、ガラス及び金のように硬い材料と軟らかい材料で試料が構成されている場合、研磨により軟らかい材料が変形して流れるような形態となり、良好な観察面を形成することが非常に困難となる。
【0004】
上述した試料研磨による不具合事項を回避して試料の清浄な観察面を得るために、研磨ではなくグロー放電によるスパッタリングの威力で試料の観察対象となる表面を削り取り、試料表面を所望の平滑度に仕上げるようにした装置及び方法が下記の特許文献1乃至特許文献3に開示されている。
【特許文献1】特開昭54−131539号公報
【特許文献2】特開2002−310959号公報
【特許文献3】特開2004−61163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に係る装置では、試料に対して十分大きい真空槽内にグロー放電用の不活性ガス(例えば、アルゴンガス)を導入するので、導入されたアルゴンガスを試料に向けてスムーズに導くことが難しい。そのため、試料の掘削箇所に対するアルゴンガスの供給量が不充分である場合、試料表面を効率良く削り取れるようなスパッタリングを生じさせにくいと云う問題がある。
【0006】
さらに、特許文献2に係る装置では、円筒状の放電電極の端面が試料に対向するように配置されるが、放電電極の端面と試料との間には所定の隙間が設けられているため、その隙間から放電電極内に供給されたアルゴンガスが流れ出るので、グロー放電に伴うスパッタリングの威力を試料表面へ集中させることができず、試料掘削の効率化を図れないと云う問題がある。なお、特許文献3に係る方法は、グロー放電を用いて削り取った面に対して二次イオン質量分析法を用いて元素濃度を測定することが開示されているに留まる。
【0007】
また、掘削対象の試料が各種ゴム、合成樹脂、及び有機ポリマーのような有機物等の融点が低い材料で形成されている場合、グロー放電に伴う発熱により試料が溶融して良好な観察面を形成できないと云う問題がある。さらに、ガラス及びセラミックのような一定以上の外力を受けると壊れやすい材料で形成された試料に対して、グロー放電に伴うスパッタリングの威力により試料を壊さないようにすることは非常に困難である。さらにまた、試料が硬い材料及び軟らかい材料と云うように複数の材料で形成されている場合、種々の材料特性に合わせてグロー放電で最適に掘削することは一般に難しいと云う問題がある。また、結晶構造からなる金属材料等の組織観察は一般的に湿式で行われるが、従来の観察表面の形成方法では結晶による高度差を明確に認識できないと云う問題がある。
【0008】
本発明は、斯かる問題に鑑みてなされたものであり、試料の電極に対向する箇所を囲って小さい空間を形成すると共に、その空間へ不活性ガスを供給することで、不活性ガスの供給量を十分に確保して試料表面を効率良く掘削できるようにしたグロー放電掘削装置及びグロー放電掘削方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、グロー放電を発生させるための給電を断続的に行うことで、グロー放電に対する試料負荷を低減して、融点が低い材料や壊れやすい材料で形成される試料及び結晶構造の金属材料等に対しても良好な観察面を形成できるようにしたグロー放電掘削装置及びグロー放電掘削方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、断続的な給電状態を変更可能にすることで、様々な試料特性に応じた掘削を実現したグロー放電掘削装置及びグロー放電掘削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、第1発明に係るグロー放電掘削装置は、電極に対向配置される試料に対して不活性ガスを供給した雰囲気で、該電極及び試料に給電を行って発生させたグロー放電で試料を掘削するグロー放電掘削装置において、前記電極及び試料が対向する箇所を囲って閉鎖する閉鎖部材と、該閉鎖部材で閉鎖された空間に不活性ガスを供給するガス供給部と、給電を断続的に行う断続給電手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
第2発明に係るグロー放電掘削装置は、給電を連続的に行う連続給電手段と、該連続給電手段が行う連続的な給電及び前記断続給電手段が行う断続的な給電の切替を行う切替手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
第3発明に係るグロー放電掘削装置は、不活性ガスが供給される掘削処理室内に第1電極及び試料が配置される第2電極を備えており、前記第1電極及び第2電極に給電を行って発生させたグロー放電で試料を掘削するグロー放電掘削装置において、給電を断続的に行う断続給電手段と、給電を連続的に行う連続給電手段と、該連続給電手段が行う連続的な給電及び前記断続給電手段が行う断続的な給電の切替を行う切替手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
第4発明に係るグロー放電掘削装置は、前記断続給電手段が行う断続的な給電に係る状態を変更する給電状態変更手段を備えることを特徴とする。
【0014】
第5発明に係るグロー放電掘削装置は、不活性ガスが供給される掘削処理室内に第1電極及び試料が配置される第2電極を備えており、前記第1電極及び第2電極に給電を行って発生させたグロー放電で試料を掘削するグロー放電掘削装置において、給電を断続的に行う断続給電手段と、該断続給電手段が行う断続的な給電に係る状態を変更する給電状態変更手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
第6発明に係るグロー放電掘削装置は、前記給電状態変更手段は、単位時間当たりの給電回数を変更するようにしてあることを特徴とする。
第7発明に係るグロー放電掘削装置は、前記給電状態変更手段は、断続的な給電に係るデューティー比を変更するようにしてあることを特徴とする。
第8発明に係るグロー放電掘削装置は、前記給電状態変更手段は、断続的な給電に係る電力値を変更するようにしてあることを特徴とする。
【0016】
第9発明に係るグロー放電掘削方法は、電極に対向配置される試料に対して不活性ガスを供給し、該電極及び試料に給電を行ってグロー放電を発生し、発生したグロー放電で試料を掘削するグロー放電掘削方法において、前記電極及び試料が対向する箇所を囲って閉鎖し、閉鎖して形成した空間に不活性ガスを供給した雰囲気で断続的に給電を行うことを特徴とする。
第10発明に係るグロー放電掘削方法は、第1電極及び試料が配置される第2電極を備える掘削処理室内に不活性ガスを供給し、前記第1電極及び第2電極に断続的に給電を行ってグロー放電を発生し、発生したグロー放電で試料を掘削するグロー放電掘削方法であって、断続的な給電に係る状態を変更することを特徴とする。
【0017】
第1発明及び第9発明にあっては、電極及び試料が対向する箇所を閉鎖して小さな空間を形成すると共に、その空間に不活性ガスを供給するので、試料に対して確実に不活性ガスを供給できるようになる。その結果、グロー放電に伴うスパッタリングも閉鎖された空間内で試料に対して集中するように発生するため、試料をスパッタリングで効率的に掘削でき、また、掘削に係る精度も向上できる。
【0018】
さらに、第1発明及び第9発明にあっては、給電を断続的に行うので、グロー放電によるスパッタリングの発生も断続的なものになる。そのため、スパッタリングの威力を受ける試料の負荷も低減されるため、試料が溶融しやすい材料で形成されている場合、一定以上の外力で破壊されやすい材料で形成されている場合でも、試料の負荷を低減して良好に試料を掘削して観察に適した表面を形成できるようになる。なお、断続的な給電は、直流電圧と高周波(交流)電圧のいずれを印加する場合にも適用可能である。
【0019】
第2発明にあっては、連続的な給電と断続的な給電とを切り替えることが可能であるので、試料の特性に合わせて給電形態を切り替えて試料を破壊することなく掘削を行い、良好な観察面を形成できる。なお、2通りの給電形態は、掘削中でも切替可能であり、例えば、掘削時間の前半は連続的な給電を行い、後半は断続的な給電を行うようにすることで、表面付近に硬い材料を有する一方、表面から深さ方向に離れた箇所に軟らかい材料を有する構造の試料等に有効となる。
【0020】
第3発明にあっては、掘削処理室内でグロー放電により試料表面を掘削する装置に対しても、連続的な給電と断続的な給電とを切り替えることにより、試料の特性に合わせた掘削処理を実現して、良好な観察面を形成できる。
【0021】
第4発明にあっては、断続的な給電に係る状態を変更するので、より細かく試料の特性に合わせた掘削処理を行えるようになり、二次電子顕微鏡での構造観察等に適した観察面を容易に形成できる。
第5発明及び第10発明にあっては、掘削処理室内でグロー放電により試料表面を掘削する装置に対しても、断続的な給電に係る状態を変更可能にすることで、試料の特性を考慮してグロー放電に係る調整を精細に行って掘削処理を行えるようになる。
【0022】
第6発明にあっては、単位時間当たりの給電回数、即ち、断続的な給電に係る周波数を変更可能であるので、試料の溶解及び破壊等を確実に回避して試料表面を掘削可能となり、複数の材料を含む試料に対しても良好な掘削を行える。なお、給電に係る周波数は、掘削中でも変更可能にすることが好適であり、特に複雑な構造を有する試料に対しては、掘削の程度に応じて周波数を適宜変更し、掘削対象となる材料特性に適応させた掘削処理を行うことが好ましい。
【0023】
第7発明にあっては、断続的な給電に係るデューティー比を変更するので、様々な試料特性に応じて最適なグロー放電を発生できるようになり、試料が溶解又は破壊しないようにデューティー比を調整して掘削処理を行える。なお、デューティー比の変更は、掘削中でも行えるようにすることが好ましい。
第8発明にあっては、断続的な給電に係る電力値を変更するので、試料に応じた電力値に調整してグロー放電を発生させて試料を掘削できるようになる。特に、複数の異なる特性の材料で試料が構成されている場合には、掘削中に電力値を変更することは、良好な掘削を行う上で好適である。
【発明の効果】
【0024】
第1発明及び第9発明にあっては、小さな空間を形成して、その空間に不活性ガスを供給するので、試料に対して確実に不活性ガスを供給でき、良好な試料掘削を実現でき、さらに、給電を断続的に行うことにより、スパッタリングの威力を和らげて、溶融しやすい試料及び壊れやすい試料に対しても不具合無く掘削を行える。
第2発明にあっては、連続的な給電と断続的な給電とを切り替えることが可能であるので、試料の特性に合わせて最適な掘削を行える。
【0025】
第3発明にあっては、掘削処理室内でグロー放電により試料表面を掘削する装置に対しても、連続的な給電と断続的な給電とを切り替えることにより、試料の特性に合わせた掘削処理を実現できる。
【0026】
第4発明にあっては、断続的な給電に係る状態を変更することで、一段と精細に試料の特性に合わせた掘削処理を行える。
第5発明及び第10発明にあっては、掘削処理室内でグロー放電により試料表面を掘削する装置に対しても、断続的な給電に係る状態を変更可能にすることで、試料の特性を考慮してグロー放電に係る調整を細かく行った上で掘削処理を行える。
【0027】
第6発明にあっては、断続的な給電に係る周波数を変更することで、様々な試料特性に柔軟に対応した掘削処理を行える。
第7発明にあっては、断続的な給電に係るデューティー比を変更するので、試料特性に応じた最適な掘削処理を行える。
第8発明にあっては、断続的な給電に係る電力値を変更するので、試料の特性を考慮した掘削処理を行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は本発明の実施形態に係るグロー放電掘削装置1の全体的な構成を示している。グロー放電掘削装置1は、掘削対象の試料Sに対してグロー放電を発生させるグロー放電管2、高周波電力の給電を行う電源部4、及び給電に係る制御を行うコンピュータ7を備えている。
【0029】
なお、電源部4は交流電源AC(本実施形態では220V)に接続されて高周波電力を生成するジェネレータ6及びマッチングボックス5を備えている。また、図1中、破線で囲まれた部分は、グロー放電掘削装置1の本質的な構成に属しない周辺機器類を示し、周辺機器類にはグロー放電管2の内部を真空引きする真空引き装置8と、真空引きした後にグロー放電管2の内部に不活性ガス(アルゴンガス)を供給するためのガス供給調整部9及びガス供給源10とが含まれる。ガス供給調整部9は流量を調整するためのバルブ等を具備し、ガス供給源10はアルゴンガスのような不活性ガス又は不活性ガスの混合ガス等を充填したボンベが相当する。
【0030】
図2は、グロー放電管2の構成を示す断面図である。グロー放電管2は短円柱状のランプボディ11、陽極12、セラミックス部材13、及び押圧ブロック15が組み合わされて構成されている。
【0031】
ランプボディ11は、押圧ブロック15が組み合わされる端面11aの中心箇所に陽極12を取り付けるための窪部11bを凹設すると共に、窪部11bの中心部に中心孔11cを穿設している。また、ランプボディ11は、周壁部11dから中心へ向けて真空引き用の吸引孔11e、11fを複数設け、一部の吸引孔11eは中心孔11cと連通させると共に、他の吸引孔11fは窪部11b側に連通させている。さらに、ランプボディ11は、周壁部11dから中心へ向けて不活性ガスの供給用のガス供給孔11gを中心孔11cと連通するように形成している。
【0032】
ランプボディ11の窪部11bに収められる陽極12は、円板部12aの中心から円筒部12bを突出した形状にしており、円筒部12bの内部から円板部12aを貫通する貫通孔12cを穿設している。また、円板部12にも穴12dが形成されている。陽極12は、ランプボディ11の窪部11bに取り付けられると、ランプボディ11を介してアース電位になる。なお、陽極12が収められた状態でランプボディ11の中心孔11c及び陽極12の貫通孔12cの密閉性を維持するために第1オーリング(シール部材)16がランプボディ11及び陽極12の間に取り付けられている。
【0033】
陽極12を被うように配置されるセラミックス部材13は、厚みのある円板状の部材であり、陽極12の円板部12aを被う突出したフランジ部13dを有すると共に、中心となる箇所には、陽極12の円筒部12bを挿通させる挿通孔13cを形成している。また、セラミックス部材13は表出する側の端面13aにオーリング装着用のリング溝13bを凹設している。セラミックス部材13は、耐熱性の第1絶縁体17を介して陽極12の円板部12aに対して配置され、配置された状態では、セラミックス部材13の挿通孔13cと陽極12の円筒部12bとの間に所定の隙間が形成され、円筒部12aの先端12eはセラミックス部材13の端面13aより突出しないようになっている。なお、第1絶縁体17と陽極12の円板部12aとの間にも密閉性維持のために第2オーリング18が取り付けられている。
【0034】
陽極12及びセラミックス部材13をランプボディ11に固定するための押圧ブロック15は、環状の部材であり、内周縁側の突出部15aでセラミックス部材13のフランジ部13dをランプボディ11側へ押圧するようにしている。なお、押圧ブロック15自体は、ボルトによりランプボディ11の端面11aに取り付けられる。また、押圧ブロック15の突出部15aと、セラミックス部材13のフランジ部13dとの間にも耐熱性の第2絶縁体19を介在させている。
【0035】
一方、グロー放電管2に取り付けられる掘削対象の試料Sは、セラミックス部材13の端面13aに取り付けられた第3オーリング20(閉鎖部材に相当)に試料表面Saが当接するように配置される。さらに、この状態で試料Sの裏面Sdは発振子3が押し当てられて試料Sがグロー放電管2側へ押圧される。これにより試料Sの掘削処理面Saと陽極12の円筒部12bの先端12eとが対向する箇所は第3オーリング20で囲われて閉鎖された空間Kが形成される。なお、発振子3は、図1に示すように電源線Dにより電源部4と接続されており、また、図示しない所定の係止手段で試料Sを最適な押圧力でグロー放電管2へ押圧している。
【0036】
上述した構成のグロー放電管2は、ランプボディ11の各吸引孔11e、11fが図1に示す真空引き装置8と接続され、ガス供給孔11gがガス供給調整部9と接続される。そのため、真空引き装置8が真空引きを行うと、各吸引孔11e、11f、中心孔11c、及び陽極12の貫通孔12cを通じて空間Kが真空にされる。また、空間Kが真空にされた状態で、ガス供給調整部9がガス供給を開始すると、ガス供給孔11g、中心孔11c、及び陽極12の貫通孔12cを通じて空間Kに不活性ガスが供給される。この際、空間Kは第3オーリング20により閉鎖されて小さい体積となっているため、空間Kには十分な不活性ガスが供給されることなる。なお、グロー放電管2では、ガス供給孔11g、中心孔11c、及び陽極12の貫通孔12cが、空間Kへのガス供給部(ガス供給路)として機能する。
【0037】
図3は、電源部4を構成するジェネレータ6の内部構成を示している。ジェネレータ6は、高周波電力生成部6a、制御部6b及び電力計測部6cを具備する。高周波電力生成部6aは交流電源ACと接続されて図4に示す正(+)及び負(−)に変化する交流(高周波)電圧を試料S及び陽極12に印加できるように高周波電力を生成する。また、高周波電力生成部6aは第1内部接続線6dにより制御部6bと接続されており、制御部6bの制御により高周波電力に係る出力モード及び電力値等を調整する。なお、本実施形態の高周波電力生成部6aは13.56MHzの高周波電圧からなる電力を生成している。
【0038】
制御部6bはIC(集積回路)で構成されており、第1接続コードL1を通じてコンピュータ7と接続されており、コンピュータ7から出力される各種信号に基づき連続的な給電を行うか断続的な給電を行うかを判断し、判断結果に基づき高周波電力生成部6aの出力モードを制御する。
【0039】
図5(a)は、制御部6bによる1つ目の出力モードを示すグラフであり、所定の時間内、連続して高周波電力(電力値P)を出力して試料S及び陽極に連続的な高周波電圧の印加を行うモードである(以降、このモードを連続モードと称す)。また、図5(b)は、制御部6bによる2つ目の出力モードを示すグラフであり、所定の時間内、パルス的(オン/オフ的)に高周波電力(電力値P)を出力して試料S及び陽極12に断続的な高周波電圧の印加を行うモードである(以降、このモードを断続モードと称す)。
【0040】
なお、制御部6bは、断続モードでは断続給電手段として内部のICでパルス的な処理を行うことで電力供給及び電力供給休止を交互に行う。このような処理により、図5(b)に示す棒状に突出した部分に対応する給電時間T1で高周波電力が出力され、1回の給電及び給電休止をそれぞれ含む単位時間T2から給電時間T1を引いた時間で高周波電力の出力が休止される。
【0041】
また、制御部6bは切替手段として、上述した連続モードと断続モードとの切替をコンピュータ7から出力される信号に基づき行う。さらに、制御部6bは断続モードでは断続的な給電に係る状態を変更する給電状態変更手段として機能し、単位時間(1秒間)当たりの給電回数(給電周波数)、断続的な給電に係るデューティー比、及び断続的な給電の電力値をそれぞれ変更可能にしている。
【0042】
なお、給電周波数の変更に対して制御部6bは、約30Hz〜約30000Hzの範囲で給電周波数を調整可能にしており、給電周波数が変更されると図5(b)のグラフにおいて、給電の間の時間(T2とT1との差)が変化する。また、デューティー比の変更に関しては、断続給電中の単位時間T2対し1回分の給電時間T1が占める割合(T1/T2)を適宜調節できるようにしている。
【0043】
また、試料Sの掘削が進行するにつれて、試料Sと陽極12の先端12eとの距離が長くなり、試料Sに係るインピーダンス値が随時変化するため、断続モードにおけるインピーダンス値変化に対する調整処理も制御部6bが行っている。
【0044】
具体的に制御部6bは、後述する電力計測部6cから伝送されてきた出力値Pf及び反射値Prとの差を演算し、演算された差に基づき高周波電力生成部6aで生成された高周波電力の試料Sへ給電される進行波の電力値(出力値Pf)を変更する制御を行う。なお、制御部6bは演算された差(Pf−Pr)が一定となるように出力値Pfを調整しており、本実施形態では演算された差(Pf−Pr)が後述するコンピュータ7から伝送されてきた基準電力値と同等となるように高周波電力生成部6aで生成される出力値Pfを制御部6bが内蔵するICのソフト的な処理で調整する。
【0045】
このように制御部6bがソフト的な調整を行うことで、断続モードでの試料Sのインピーダンス値の変化に対応して適切な給電を行える。なお、制御部6bが試料Sのインピーダンス値の変化に対応した調整を行うのは断続モードの場合であり、連続モードでは後述するようにマッチングボックス5が調整を行う。
【0046】
図3に戻りジェネレータ6の電力計測部6cは、第2及び第3内部接続線6e、6fにより制御部6b、高周波電力生成部6aと接続されている。電力計測部6cは、高周波電力生成部6aで生成されて図1に示す発振子3へ向かう高周波電力の進行波の電力値である出力値Pfを検出すると共に、試料Sから反射して戻ってくる反射波の電力値である反射値Prを検出し、検出した値を制御部6bへ伝送している。
【0047】
一方、電源部4のマッチングボックス5は、図6に示すように、連続モードにおいてジェネレータ6で生成された高周波電力の出力形態を調整する可変コンデンサ5a、可変コンデンサ5aの電気容量を調整するモータ5b、モータ5bの駆動等の制御を行うコンデンサ制御部5cを具備する。
【0048】
可変コンデンサ5aはモータ5bの駆動に応じて自身の電気容量を変更でき、電気容量の変更によりモジュール及びフェーズが調節される。また、コンデンサ制御部5cは、第2接続コードL2によりコンピュータ7と接続されており、コンピュータ7からマッチングボックス5へ伝送されてくる断続モードの設定の通知信号に基づいてモータ5bの駆動を制御する。
【0049】
具体的には、断続モードの通知信号を受け付けた場合、可変コンデンサ5aの電気容量が一定に固定されるようにモータ5bを一定の状態に維持する制御をコンデンサ制御部5cは行う。よって、断続モードではマッチングボックス5で高周波電力のモジュール及びフェーズは調整されない。また、断続モードの通知信号を受け付けない場合、即ち、連続モードが設定されたとき、試料Sからの反射値Prが最小となるようにモータ5bの駆動を制御して可変コンデンサ5aの電気容量を変更する制御をコンデンサ制御部5cは行う。なお、反射値Prが最小であれば、コンデンサ制御部5cは可変コンデンサ5aの電気容量を変更する制御は行わない。
【0050】
また、図1に示すコンピュータ7は、ジェネレータ6から延在する第1接続コードL1及びマッチングボックス5から延在する第2接続コードL2が接続されるインタフェース基板7bを設けており、このインタフェース基板7bをCPU7a、RAM7c、ROM7d、及びハードディスク装置7eが接続された内部バス7fに繋げている。なお、内部バス8aにはモニタ接続線L3を介してモニタ部7gが接続されている。また、RAM7cはCPU7aが行う各種制御処理に伴うデータ等を一時的に記憶し、ROM7dにはCPU7aが行う基本的な処理内容を規定したプログラム等が予め記憶されており、ハードディスク装置7eには掘削処理に対してCPU7aが行う制御内容を規定した掘削プログラム21が記憶されている。
【0051】
インタフェース基板7bは連続モード用回路、断続モード用回路を有し、CPU7aの制御により設定されたモードがインタフェース基板7bへ通知されると、通知されたモードに対応する回路が作動し、作動した回路による処理でモード切替の制御信号がジェネレータ6へ出力される。
【0052】
また、インタフェース基板7bの断続モード用回路には、断続モードに対してコンピュータ7で設定された給電周波数、デューティー比、電力値等のパラメータが伝送され、断続モード用回路は伝送された内容を1つにまとめた信号を生成してジェネレータ6へ出力すると共に、断続モードを通知するマニュアル・アダプテーションと云う通知信号をマッチングボックス5へ出力する処理を行う。なお、伝送されるパラメータには、高周波電力のピーク電力値、変動するインピーダンス値に対応した調整処理に用いられる基準電力値(基準値)等も含まれるものとする。
【0053】
CPU7aは、ハードディスク装置7eに記憶された掘削プログラム21に基づいて各種処理を行い、図1で示していないキーボード又はマウス等の操作でユーザにより入力された指示に基づき所定の設定及び制御を行う。
【0054】
例えば、掘削プログラム21が起動すると、図7に示す設定メニュー22をモニタ部7gに表示させる処理をCPU7aは行う。また、設定メニュー22に従い断続モード又は連続モードのいずれかの設定操作を受け付けた場合、CPU7aは受け付けた設定内容に対応するインタフェース基板7b内の回路を作動させる処理を行う。
【0055】
設定メニュー22で断続モードが設定された場合、CPU7aは周波数(給電周波数)及びデューティー比の数値設定もユーザから受け付ける処理を行い、受け付けた内容をインタフェース基板7bへ通知してジェネレータ6へ所定の信号を伝送させる。
なお、デューティー比は、掘削対象の試料Sが特に溶解しやすい場合及び破壊しやすい場合、0.5より低い数値に設定することが好ましい。
【0056】
また、CPU7bは、上述した設定メニュー22以外の別のメニューで、掘削処理に要する時間及び、高周波電力のピーク等の他のパラメータも設定できるようにしており、断続モードが設定されたとき、CPU7aは、断続モードの設定を伝える通知信号をインタフェース基板7bからマッチングボックス5へ出力させる制御を行う。
【0057】
一方、設定メニュー22で連続モードが設定された場合、CPU7aは掘削処理に対して設定された時間の給電を行うようにインタフェース基板7bからジェネレータ6に指示信号を出力させる制御を行う。
【0058】
次に上述した構成のグロー放電掘削装置1を用いたグロー放電掘削方法に係る全体的な処理手順を図8のフローチャートに基づいて説明する。
先ず、図7に示す設定メニュー22等でモード並びに周波数、デューティー比及び掘削時間等の各種パラメータを設定し(S1)、試料Sを図2に示すようにグロー放電管2にセットする(S2)。
【0059】
次に、グロー放電管2の内部を真空引き装置8で真空引きしてから、ガス供給源10よりグロー放電管2の内部へ不活性ガス(アルゴンガス)を供給する(S3)。それから、不活性ガスが空間Kに供給された雰囲気で、設定された内容に応じた給電が行われ(S4)、試料Sの空間Kに表出した試料表面Saが掘削される(S5)。
【0060】
図9は、掘削された試料Sの状態を示す。本実施形態では、第3オーリング20で閉鎖された空間Kに陽極12の貫通孔12cを通じアルゴンガスがスムーズに導かれるので、空間Kには十分なアルゴンガスが随時供給されることになる。また、このアルゴンガスの供給雰囲気で給電されることで、空間K内ではグロー放電が発生し、アルゴンガスに含まれるアルゴンイオンが試料表面Saに向けて飛び出して衝突してスパッタリングが起こる。このスパッタリングでのアルゴンイオンの衝突により試料表面Saが掘削されて凹部Sbが生じるが、本実施形態では十分にアルゴンガスが供給されることから、アルゴンイオンが試料表面Saに衝突する程度も従来の装置に比べて多くなり、効率的な掘削を行えると共に、掘削された箇所も従来に比べて平滑で且つ清浄された面を得られる。
【0061】
即ち、掘削された凹部Sbの底面Scは、陽極12の先端12eの大きさに応じた所定の面積を有し、底面Sc中には所定の平滑度を満たした清浄箇所が生じるので、従来の研磨処理に比べて容易に二次電子顕微鏡に対する観察面(底面Sc)を形成することができ、さらに、従来のグロー放電による掘削に比べて平滑度に優れた観察面(底面Sc)を得られる。
【0062】
また、本実施形態のグロー放電掘削装置1では、連続モード及び断続モードを切り替えて設定できるので、溶解しやすい試料、壊れやすい試料等に対しては断続モードで給電を行うことにより、従来の装置では困難であった種類の試料の掘削も支障無く行えることができる。特に、断続モードでは給電周波数、デューティー比及び電力値等をきめ細かく設定できるので、デリケートな試料も確実に掘削できる。また、上述した特性以外の試料に対しては連続モードを行うことで連続的にアルゴンイオンを試料表面Saに衝突させて効率的な掘削を良好な精度で行える。
【0063】
なお、断続モードで給電を行った場合、スパッタリングの発生による試料Sのインピーダンス値の変動に対して出力値Pfと反射値Prとの差を一定にする場合の全体的な処理は、以下のような流れになる。
【0064】
先ず、給電前の各種パラメータ設定においてコンピュータ7で基準電力値を例えば、Aワットに設定すると、それに連動して、インタフェース基板7bの断続モード用回路が有する所要のICで出力値Pfと反射値Prの差が一定となるように設定されて、ジェネレータ6から試料Sへ給電される高周波電力の出力値Pfがaワットに調整される。なお、このときPf−Pr=c=Aワットになっている。
【0065】
次に、給電による試料Sの掘削でスパッタリングが発生して試料Sのインピーダンス値が変化すると、試料Sからの反射値Prもbワットに変化するので、Pf−Pr=a−bとなり、出力値Pfと反射値Prとの差はAワットと相違する。
【0066】
出力値Pfと反射値Prとの差はAワットと相違すると、ジェネレータ6はPf−Pr=cとなるように、出力値Pfをa′ワットになるように調整し、これによりPf−Pr=a′−b=c=Aワットとなり、出力値Pfと反射値Prの差は一定に維持され、断続モードにおいても安定した給電状態が確保される。
【0067】
なお、本発明に係るグロー放電掘削装置1は、上述した形態に限定されるものではなく、種々の変形例の適用が可能である。例えば、上述した形態では高周波電力を生成して給電する場合で説明したが、高周波ではなく直流の電力を生成して給電を行い、グロー放電を発生させる装置に対しても、本発明に係る上述した処理及び構成は適用可能である。このような直流電力での給電は、試料Sが金属等の伝導体試料であるときに好適である。
【0068】
また、例えば、デリケートな試料を掘削対象にしない場合は、給電周波数、デューティー比、及び電力値等に係る設定処理を省略してコンピュータ7(CPU7a)の処理負担を低減する構成にしてもよい。さらに、掘削対象の試料が溶融しやすいもの又は壊れやすいものである場合、断続モードと連続モードの切替機能を省略して断続モード専用の装置にすることも可能であり、掘削対象の試料が上記以外の特性を有する掘削しやすいものである場合は、連続モード専用の装置にしてもよい。このようにすることでグロー放電掘削装置1に係る種々の処理等を一段と簡素化できる。
【0069】
一方、掘削対象の試料が複数の異なる特性を有する材料で構成されている場合、全掘削時間を複数の時間帯に分けて、ある時間帯は連続モードで給電を行い、他の時間帯は断続モードで給電を行い、掘削処理中にも各モードを切り替えられるようにしてもよい。このように掘削処理中にモードを切り替えることで、硬い材料及び軟らかい材料が階層的に存在する試料等に対して良好な掘削処理を行える。
【0070】
また、断続モードを行う場合でも、全掘削時間における複数の時間帯毎に給電に係る状態を変更して断続給電を行ってもよい。
【0071】
図10は、全掘削処理時間Zを、掘削開始側の時間帯の第1時間z1と掘削終了側の時間帯の第2時間z2とに区分けし、第1時間z1と第2時間z2とでデューティー比を相違させた給電状態を示している。この場合、第1時間z1では図5(b)と同様のデューティー比(T1/T2)であるが、第2時間z2では1回の給電時間をT1′(T1′<T1)にしてデューティー比(T1′/T2)を第1時間z1より小さくしている。
【0072】
その結果、第2時間z2では、第1時間z1に比べて給電による負荷及びスパッタリングの威力が低減されており、複数の材質を積層させると共に深層となる層の材質が表層に比べて破壊されやすい試料等に対し好適な給電形態を確保できる。なお、このような給電形態を実現するには、コンピュータ7で掘削時間を区分けする時間帯の個数、各時間帯が占める時間及び時間帯毎のデューティー比等の設定を図7に示すようなメニューで設定可能にして、これらの設定内容をジェネレータ6へ伝送すると共に、制御部6bで設定された時間に対応した給電制御を行えるようにすることが必要である。
【0073】
また、図11は、全掘削処理時間Zにおける第2時間z2の給電周波数を、第1時間z1に比べて大きくした給電状態を示す。この場合、第2時間z2の単位時間T2′は第1時間z1の単位時間T2より短い。このように、給電周波数を時間帯毎に相違することで、各時間帯毎に給電による負荷及びスパッタリングの威力の程度も相違し、掘削対象の試料特性に応じて詳細な設定が可能になる。また、時間帯毎に給電周波数を相異させる給電形態を実現するには、コンピュータ7で掘削時間を区分け可能にすると共に、区分けした時間帯毎に給電周波数を設定できるようにする必要がある。
【0074】
さらに、図12は、全掘削処理時間Zにおける第2時間z2の電力値P2を第1時間z1の電力値P1に比べて大きくした給電状態を示す。このように電力値を時間帯毎に相違することで、時間帯毎の給電による負荷及びスパッタリングの威力の程度も異なり、掘削対象の試料に応じた給電条件を確保できるようになる。なお、この電力値の時間帯毎に相違した設定は、複数の材質を積層させた試料に好適である。また、時間帯毎に相異する電力値で給電を行うには、コンピュータ7で掘削時間を区分けする時間帯の個数、時間帯毎の電力値設定の受け付け等を可能にすることが必要である。
【0075】
なお、時間帯毎にデューティー比、給電周波数及び電力値を適宜設定することは、これらのいくつか又は全てを組み合わせて設定することも可能であり、このようにすることで、より一層、試料に特性に応じた給電形態を確保でき、試料の溶解、破壊等を確実に防止して安定した掘削を行える。
【0076】
また、掘削対象の試料寸法が小さいときは、図13に示すように試料保持具26を適用することが好適である。図13に示す試料S′は、図中の寸法Mが第3オーリング20の径寸法より小さく、第3オーリング20に直接的に当接させることができないので、ボックス状の試料保持具26を用いることで空間Kを形成している。なお、試料保持具26は、開口した箱部26と、箱部26の開口をふさぐ蓋部27で構成されており、箱部26bの底板部26aの中央箇所には陽極12の円筒部12bの外径より少し大径の穴部26bが形成されている。
【0077】
小さい試料S′は、箱部26の内部で穴部26bを閉鎖するように配置されると共に、発振子3で底板部26aと共に陽極12側へ押圧される。その結果、底板部26aの外面が第3オーリング20に当接して、第3オーリング20、底板部26a及び穴部26bを閉鎖する試料S′で密閉された空間Kが形成され、上記と同様に試料S′の掘削が可能になる。
【0078】
さらに、試料の厚みが薄い場合などには、複数の試料を貼り合わせることでグロー放電管2へのセットが可能になる。例えば、図14(a)に示すような厚みが薄い円板状のシリコンウエハ30の断面を二次電子顕微鏡で観察する場合、先ず、シリコンウエハ30を複数の短冊片に切断する(図中、破線で示す)。次に図14(b)(c)に示すように、各短冊片31〜35を重ね合わせて接着剤で貼り合わせ、セット可能な寸法の試料36を形成する。
【0079】
試料36の掘削対象となる表面36aは各短冊片31〜35の観察対象となる側面31a〜35aを組み合わせたものになっており、表面36aを掘削することで複数の側面31a〜35aが同時に掘削されて複数の観察箇所を形成できるため、良好な観察を行える確率が向上する。なお、厚みが薄い試料を掘削するには、貼り合わせ以外にも、薄い試料を樹脂等でモールドし、グロー放電管2にセットできる大きさにすることが考えられる。
【0080】
図15は、変形例のグロー放電管2′を示し、このグロー放電管2′はランプボディ11′の中心孔11c′の内部に掘削状況を観察するためのスコープ40を配置したことが特徴である。スコープ40を配置するため、ランプボディ11′は外側端面11i′に中心孔11c′と連通する穴部11h′を設け、シール部材41を介して棒状のスコープ40を挿通させて中心孔11c′内に配置している。スコープ40は先端側の延長線上にある対象を観察できる構成になっているため、陽極12の貫通孔12cを通じて試料表面Saに掘削される状況を外部から観察でき、状況を確認しながら掘削処理を行えるようになる。
【0081】
また、図16は、変形例のグロー放電掘削装置50を示し、図1のグロー放電掘削装置1のようにグロー放電管2及び発振子3を用いて試料Sをセットするのではなく、密閉された掘削処理室51の内部に第1電極52及び試料Sを配置する第2電極53を設け、第1電極52を図1と同等の構成の電源部4に接続すると共に、第2電極53を交流電源ACの接地側に接続している。なお、電源部4は図1と同等にコンピュータ7により制御される。
【0082】
掘削処理室51は天板部51aにアルゴンガス供給用のガス供給穴51bを開口し、底板部51cに真空引き用穴51dを開口し、掘削処理室51の内部空間51eを真空引き用穴51dより真空引きしてから、ガス供給穴51bよりアルゴンガス(不活性ガス)を供給して、各電極52、53に給電を行うことになる。なお、給電は、上述した様々な給電形態の適用が可能である。この変形例のグロー放電掘削装置50では、掘削対象の試料Sを掘削処理室51の第2電極53に配置するだけで済むため、試料Sのセットに要する手間が少なく、また、第2電極53に載置できるかぎり、どのような形態の試料Sでも掘削できるため、掘削できる試料形態の自由度が大きいと云う利点がある。
【0083】
次に、上述したグロー放電掘削装置1と同等の構成を有するグロー放電掘削装置(堀場製作所製JY-5000RFの掘削処理に関連する部分のみを利用した装置)を用いて各種試料を実際に掘削した実施例(実験結果)を説明する。
第1の実施例では、試料にシリコン基板を用いて掘削を行った。
図17(a)〜(c)の顕微鏡写真は、掘削前のシリコン基板を示し、図17(a)は共焦点レーザー顕微鏡による全体的なシリコン基板を示す画像であり、図17(b)は共焦点レーザー顕微鏡により基板表面を拡大した画像であり、図17(c)は走査型電子顕微鏡により更に拡大した画像である。掘削前のシリコン基板表面の凹凸状況を粗さ計で測定したところ、基板表面上における一つの箇所では水平距離281.43μmに対して0.84μmの高度差があり、他の箇所では水平距離25.31μmに対して0.70μmの高度差があった。
【0084】
上述したシリコン基板に対して機械鏡面研磨処理を行った後、上述のグロー放電掘削装置を用いて掘削した。掘削の条件は、グロー放電の発生に対するモードは連続モードに設定し、シリコン基板へ供給する電力値を40Wに設定した。
【0085】
図18(a)〜(c)の顕微鏡写真は、掘削後のシリコン基板を示し、掘削前の図17(a)〜(c)の各画像に夫々対応し、上記と同様の顕微鏡を用いて撮影した画像である。図17、18の各顕微鏡写真を比べると、掘削後のシリコン基板は、掘削前の表面に比べて凹凸がなだらかになっていることが確認できた。
【0086】
また、掘削後の基板表面に対して、掘削前に表面粗さを測定した個所と同等の箇所に対して粗さ計で測定したところ、一つの箇所では水平距離281.43μmに対して0.46μmの高度差であり、他の箇所では水平距離62.17μmに対して0.37μmの高度差であった。よって、掘削により高度差が、ほぼ半減して平滑化されたことが判明した。なお、グロー放電掘削装置が掘削を行った実質的な作動時間は約5秒である。このように本発明に係るグロー放電掘削装置を用いて試料表面を掘削することで、非常に短時間でナノレベル的に均一で且つ平滑な表面を形成でき、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡、電子線マイクロプローブアナライザー、及び表面分析機器等を用いて良好な表面画像、分析情報を得ることができる。
【0087】
第2の実施例では、熱に弱くて溶解しやすいプラスチック材料を掘削した。
図19(a)(b)の顕微鏡写真は、掘削前のプラスチック材料の表面を示し、図19(a)は走査型電子顕微鏡により材料表面を拡大した画像であり、図19(b)は原子間力顕微鏡により材料表面を更に拡大した画像である。また、図19(c)のグラフは、図19(b)におけるA−B線で結んだ箇所及びC−D線で結んだ箇所に対して粗さ計で測定した高度差を示し、A−B線の箇所では水平距離が26.71μmに対して160.74nmの高度差があり、C−D線の箇所では29.23μmに対して135.14nmの高度差があった。
【0088】
図20(a)(b)の顕微鏡写真は、上述したプラスチック材料を断続モードで掘削した場合の材料表面を示しており、掘削前の図19(a)(b)の各画像に対応し、上記と同様の顕微鏡を用いて撮影した画像である。なお、断続モードでの掘削は、プラスチック材料へ供給する電力を40W、デューティー比を0.0625、断続給電の周波数を20000Hzに設定し、全体の掘削時間を300秒にした。
【0089】
また、図20(c)のグラフは、図20(b)におけるA−B線で結んだ箇所及びC−D線で結んだ箇所に対して粗さ計で測定した高度差を示し、A−B線の箇所では水平距離が22.31μmに対して56.64nmの高度差があり、C−D線の箇所では28.83μmに対して68.53nmの高度差があった。よって、掘削後は、掘削前に比べて高度差は2分の1以下に低減され、また、図19(c)及び図20(c)の各グラフよりグロー放電で掘削された表面が全体的に平滑化されていることが判明した。
【0090】
なお、図21(a)〜(c)の顕微鏡写真は、上述したプラスチック材料を連続モードで掘削した場合の材料表面を示し、図21(a)は共焦点レーザー顕微鏡による全体的なプラスチック材料を示す画像であり、図21(b)は共焦点レーザー顕微鏡により材料表面を拡大した画像であり、図21(c)は走査型電子顕微鏡により更に拡大した画像である。また、連続モードで掘削したプラスチック材料の表面を粗さ計で測定すると、全体では水平距離281.43μmに対して3.86μmの高度差があり、一部の箇所では水平距離30.81μmに対して4.24μmの高度差があり、断続モードに比べて高度が大きくなっていた。よって、本発明に係るグロー放電掘削装置の連続モードを断続モードに切り替えることで、熱に弱い試料及びスパッタリングの威力により破壊されやすい試料(例えば、有機物等を含むような複合材料等)の表面を平滑に掘削できることが判明した。
【0091】
なお、比較検証のため、上述のグロー放電掘削装置を用いて各種試料に対して連続モードでの掘削実験を行ったので、以下、連続モードの実験結果を挙げる。
層構造をなす試料の表面から深さ方向への構造解析を行う上で、給電条件及び掘削時間の変化により、最表層より一層ずつきれいに剥離できるかを検証した。試料としては層構造の半導体を用いて、半導体の断面に表出する各層の深さ方向に対するパターンの認識できる度合を比較検証した。
【0092】
図22(a)(b)の顕微鏡写真は、掘削前の半導体断面を示し、図22(a)は共焦点レーザー顕微鏡により層構造を断面方向から見た画像であり、図22(b)は共焦点レーザー顕微鏡により層構造を表面から見た画像である。なお、図22(b)の表面の凹凸状況を粗さ計で測定したところ、表面上における全体では水平距離70.74μmに対して1.01μmの高度差があり、一部の箇所では水平距離14.92μmに対して1.00μmの高度差があった。
【0093】
図22(c)(d)の顕微鏡写真は、連続モードにより掘削した半導体断面を示しており、掘削前の図22(a)(b)の各画像に夫々対応し、上記と同様の顕微鏡を用いて撮影した画像である。図22(c)(d)の各画像は、図22(a)(b)の各画像に比べて半導体表面の最表層から優先的に掘削されており、下部にある構造を見ることができる。なお、図22(c)(d)の顕微鏡写真を得るための給電条件として、半導体試料へ供給する電力を40Wに設定し、全体の掘削時間を30秒にした。また、図22(d)の表面の凹凸状況を粗さ計で測定したところ、表面上における全体では水平距離70.74μmに対して0.88μmの高度差があり、一部の箇所では水平距離15.12μmに対して0.76μmの高度差があった。
【0094】
さらに、図22(e)(f)の顕微鏡写真は、図22(c)(d)の場合から、給電条件及び掘削時間を変更して連続モードで掘削した半導体断面を示しており、掘削前の図22(a)(b)の各画像に夫々対応し、上記と同様の顕微鏡を用いて撮影した画像である。図22(e)(f)の各画像は、図22(c)(d)の各画像に比べて半導体表面の構造が一段と掘削されており、基板近傍の構造を見ることができ、給電条件及び掘削時間を変更可能な本発明のグロー放電掘削装置では、給電条件及び掘削時間を変更することで、掘削される表面形態が大きく相異し、適切な給電条件及び掘削時間を設定することで構造解析を行うことができる。なお、図22(e)(f)の各画像を得るための給電条件として、半導体試料へ供給する電力を40W、全体の掘削時間を60秒として設定した。また、図22(f)の表面の凹凸状況を粗さ計で測定したところ、表面上における全体では水平距離70.74μmに対して0.44μmの高度差があり、一部の箇所では水平距離16.42μmに対して0.35μmの高度差があった。
【0095】
また、連続モードによる別の実験では、図14(a)〜(c)に示す内容で作成した試料(シリコンウエハ)に対して、グロー放電掘削装置により連続モードで掘削を行った。
【0096】
図23の3枚の写真は、図14(a)〜(c)に示すように、一枚のシリコンウエハの一部を複数切り出して重ね合わせたものを掘削した表面の写真(顕微鏡写真)の画像である。図23の下の写真は、パターンが設けられたシリコンウエハを複数枚重ねた状態を示す。なお、この下の写真において中央の黒い円状の範囲が掘削した部分である。
【0097】
図23の真ん中の写真は、下の写真の白枠で囲んだ部分を電子顕微鏡により撮像した拡大画像であり、シリコンウエハに設けられたパターンの中に多数のゲートが存在することを確認できた。さらに、図23の上の写真は、真ん中の写真の白枠で囲んだ部分を電子顕微鏡により撮像した拡大画像であり、クリアなゲートの存在を確認できた。このように試料(シリコンウエハ)の一部を複数切り出して重ね合わせてもの掘削することで、ゲート構造のコンディション評価を行えた。なお、図23の3枚の写真を得るための掘削の給電条件としてシリコンウエハへ供給する電力を40Wに設定し、全体の掘削時間を5秒にした。
【0098】
さらに、連続モードによる他の別の実験では、金属材料に対して通常、湿式で行われる組織観察を、連続モードの掘削によりドライプロセスの下で行った。
図24(a)(b)の顕微鏡写真は、掘削前の金属材料(ステンレス鋼)の表面を示し、図24(a)は走査型電子顕微鏡により材料表面を拡大した画像であり、図24(b)は原子間力顕微鏡により材料表面を更に拡大した画像である。また、図24(c)のグラフは、図24(b)におけるA−B線で結んだ箇所及びC−D線で結んだ箇所に対して粗さ計で測定した高度差を示し、A−B線の箇所では水平距離が84.44μmに対して7.44nmの高度差があり、C−D線の箇所では87.11μmに対して10.29nmの高度差があった。
【0099】
図25(a)(b)の顕微鏡写真は、上述した金属材料(ステンレス鋼)を連続モードで掘削した表面を示し、掘削前の図24(a)(b)の各画像に対応し、上記と同様の顕微鏡を用いて撮影した画像である。連続モードでの掘削は、金属材料へ供給する電力を40Wに設定し、全体の掘削時間を10秒にした。
【0100】
また、図25(c)のグラフは、図25(b)におけるA−B線で結んだ箇所及びC−D線で結んだ箇所に対して粗さ計で測定した高度差を示し、A−B線の箇所では水平距離が80.97μmに対して64.67nmの高度差があり、C−D線の箇所では99.91μmに対して85.06nmの高度差があった。このことから、結晶構造を有する金属材料の組織観察に対して、連続モードで掘削した場合でも、試料表面においては結晶方位に依存したエッチング効果が得られ、結晶による高低差を確認できた。よって、試料が単結晶である場合は本発明のグロー放電掘削装置で掘削することで平滑平面が得られ、試料が多結晶である場合は、試料の結晶方位に依存した異方性のエッチング効果が得られ、それぞれの結晶ごとに面方向に依存した向きにエッチングがなされ、組織の観察面を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施形態に係るグロー放電掘削装置の全体的な構成を示す概略図である。
【図2】グロー放電管の断面図である。
【図3】ジェネレータの内部構成を示すブロック図である。
【図4】印加される高周波電圧の形態を示すグラフである。
【図5】(a)は連続モードの給電形態を示すグラフであり、(b)は断続モードの給電形態を示すグラフである。
【図6】マッチングボックスの内部構成を示すブロック図である。
【図7】モード選択及び周波数設定等に係る設定メニューの内容を示す概略図である。
【図8】グロー放電掘削装置を用いたグロー放電掘削方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】試料の掘削状態を示す概略図である。
【図10】時間帯毎にデューティー比を相違させた給電形態を示すグラフである。
【図11】時間帯毎に給電周波数を相違させた給電形態を示すグラフである。
【図12】時間帯毎に電力値を相違させた給電形態を示すグラフである。
【図13】試料保持具を用いて保持した試料に対して掘削を行う状態を示す概略図である。
【図14】(a)はシリコンウエハを示す概略図、(b)は複数の短冊片を示す概略図、(c)は各短冊片を貼り合わせて形成された試料を示す概略図である。
【図15】変形例のグロー放電管を示す断面図である。
【図16】変形例のグロー放電掘削装置の構成を示す概略図である。
【図17】掘削前のシリコン基板の顕微鏡写真であり、(a)は基板の全体的な画像、(b)は基板表面を拡大した画像、(c)は更に拡大した画像である。
【図18】掘削後のシリコン基板の顕微鏡写真であり、(a)は基板の全体的な画像、(b)は基板表面を拡大した画像、(c)は更に拡大した画像である。
【図19】(a)(b)は掘削前のプラスチック材料表面の顕微鏡写真の画像、(c)はプラスチック材料の表面上における2箇所での高度差を示すグラフである。
【図20】(a)(b)は断続モードによる掘削後のプラスチック材料表面の顕微鏡写真の画像、(c)はプラスチック材料の表面上における2箇所での高度差を示すグラフである。
【図21】連続モードによる掘削後のプラスチック材料の顕微鏡写真であり、(a)はプラスチック材料の全体的な画像、(b)は材料表面を拡大した画像、(c)は更に拡大した画像である。
【図22】(a)(b)は半導体断面の掘削前の顕微鏡写真の画像、(c)(d)は連続モードで掘削した顕微鏡写真の画像、(e)(f)は給電条件を変更して連続モードで掘削した顕微鏡写真の画像である。
【図23】一枚のシリコンウエハの一部を複数切り出して重ね合わせたものを連続モードで掘削した表面の写真画像である。
【図24】(a)(b)は掘削前の金属材料表面の顕微鏡写真の画像、(c)は金属材料の表面上における2箇所での高度差を示すグラフである。
【図25】(a)(b)は連続モードで掘削後の金属材料表面の顕微鏡写真の画像、(c)は金属材料の表面上における2箇所での高度差を示すグラフである。
【符号の説明】
【0102】
1 グロー放電掘削装置
2 グロー放電管
3 発振子
4 電源部
5 マッチングボックス
6 ジェネレータ
7 コンピュータ
12 陽極
12b 円筒部
12c 貫通孔
20 第3オーリング
K 空間
S 試料
【技術分野】
【0001】
本発明はグロー放電に伴うスパッタリングで試料表面を掘削する場合に、掘削対象の試料の特性に合わせて良好に掘削できるようにしたグロー放電掘削装置及びグロー放電掘削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料の構造及び組織等を視覚的に観察するために二次電子顕微鏡(SEM)が用いられることがある。二次電子顕微鏡で試料の断面構造及び内部構造等を観察するには、観察の前処理として試料の観察面を清浄する必要があり、例えば、試料断面を観察する場合、試料を破断して観察面となる断面を表出させ、その表出させた断面が清浄で且つ一定以上の平滑度になるまで研磨を行う。
【0003】
試料の研磨は研磨剤を用いて行われることが一般的であるが、研磨剤及び研磨作業により発生する研磨粉等の影響で作業環境の悪化が懸念されている。また、研磨作業は手間がかかるので二次電子顕微鏡で試料観察を行うまでの前処理に時間を要する。さらに、観察を行う試料の構造によっては研磨を行っても観察に適した面を得られないこともあり、例えば、ガラス及び金のように硬い材料と軟らかい材料で試料が構成されている場合、研磨により軟らかい材料が変形して流れるような形態となり、良好な観察面を形成することが非常に困難となる。
【0004】
上述した試料研磨による不具合事項を回避して試料の清浄な観察面を得るために、研磨ではなくグロー放電によるスパッタリングの威力で試料の観察対象となる表面を削り取り、試料表面を所望の平滑度に仕上げるようにした装置及び方法が下記の特許文献1乃至特許文献3に開示されている。
【特許文献1】特開昭54−131539号公報
【特許文献2】特開2002−310959号公報
【特許文献3】特開2004−61163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に係る装置では、試料に対して十分大きい真空槽内にグロー放電用の不活性ガス(例えば、アルゴンガス)を導入するので、導入されたアルゴンガスを試料に向けてスムーズに導くことが難しい。そのため、試料の掘削箇所に対するアルゴンガスの供給量が不充分である場合、試料表面を効率良く削り取れるようなスパッタリングを生じさせにくいと云う問題がある。
【0006】
さらに、特許文献2に係る装置では、円筒状の放電電極の端面が試料に対向するように配置されるが、放電電極の端面と試料との間には所定の隙間が設けられているため、その隙間から放電電極内に供給されたアルゴンガスが流れ出るので、グロー放電に伴うスパッタリングの威力を試料表面へ集中させることができず、試料掘削の効率化を図れないと云う問題がある。なお、特許文献3に係る方法は、グロー放電を用いて削り取った面に対して二次イオン質量分析法を用いて元素濃度を測定することが開示されているに留まる。
【0007】
また、掘削対象の試料が各種ゴム、合成樹脂、及び有機ポリマーのような有機物等の融点が低い材料で形成されている場合、グロー放電に伴う発熱により試料が溶融して良好な観察面を形成できないと云う問題がある。さらに、ガラス及びセラミックのような一定以上の外力を受けると壊れやすい材料で形成された試料に対して、グロー放電に伴うスパッタリングの威力により試料を壊さないようにすることは非常に困難である。さらにまた、試料が硬い材料及び軟らかい材料と云うように複数の材料で形成されている場合、種々の材料特性に合わせてグロー放電で最適に掘削することは一般に難しいと云う問題がある。また、結晶構造からなる金属材料等の組織観察は一般的に湿式で行われるが、従来の観察表面の形成方法では結晶による高度差を明確に認識できないと云う問題がある。
【0008】
本発明は、斯かる問題に鑑みてなされたものであり、試料の電極に対向する箇所を囲って小さい空間を形成すると共に、その空間へ不活性ガスを供給することで、不活性ガスの供給量を十分に確保して試料表面を効率良く掘削できるようにしたグロー放電掘削装置及びグロー放電掘削方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、グロー放電を発生させるための給電を断続的に行うことで、グロー放電に対する試料負荷を低減して、融点が低い材料や壊れやすい材料で形成される試料及び結晶構造の金属材料等に対しても良好な観察面を形成できるようにしたグロー放電掘削装置及びグロー放電掘削方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、断続的な給電状態を変更可能にすることで、様々な試料特性に応じた掘削を実現したグロー放電掘削装置及びグロー放電掘削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、第1発明に係るグロー放電掘削装置は、電極に対向配置される試料に対して不活性ガスを供給した雰囲気で、該電極及び試料に給電を行って発生させたグロー放電で試料を掘削するグロー放電掘削装置において、前記電極及び試料が対向する箇所を囲って閉鎖する閉鎖部材と、該閉鎖部材で閉鎖された空間に不活性ガスを供給するガス供給部と、給電を断続的に行う断続給電手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
第2発明に係るグロー放電掘削装置は、給電を連続的に行う連続給電手段と、該連続給電手段が行う連続的な給電及び前記断続給電手段が行う断続的な給電の切替を行う切替手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
第3発明に係るグロー放電掘削装置は、不活性ガスが供給される掘削処理室内に第1電極及び試料が配置される第2電極を備えており、前記第1電極及び第2電極に給電を行って発生させたグロー放電で試料を掘削するグロー放電掘削装置において、給電を断続的に行う断続給電手段と、給電を連続的に行う連続給電手段と、該連続給電手段が行う連続的な給電及び前記断続給電手段が行う断続的な給電の切替を行う切替手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
第4発明に係るグロー放電掘削装置は、前記断続給電手段が行う断続的な給電に係る状態を変更する給電状態変更手段を備えることを特徴とする。
【0014】
第5発明に係るグロー放電掘削装置は、不活性ガスが供給される掘削処理室内に第1電極及び試料が配置される第2電極を備えており、前記第1電極及び第2電極に給電を行って発生させたグロー放電で試料を掘削するグロー放電掘削装置において、給電を断続的に行う断続給電手段と、該断続給電手段が行う断続的な給電に係る状態を変更する給電状態変更手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
第6発明に係るグロー放電掘削装置は、前記給電状態変更手段は、単位時間当たりの給電回数を変更するようにしてあることを特徴とする。
第7発明に係るグロー放電掘削装置は、前記給電状態変更手段は、断続的な給電に係るデューティー比を変更するようにしてあることを特徴とする。
第8発明に係るグロー放電掘削装置は、前記給電状態変更手段は、断続的な給電に係る電力値を変更するようにしてあることを特徴とする。
【0016】
第9発明に係るグロー放電掘削方法は、電極に対向配置される試料に対して不活性ガスを供給し、該電極及び試料に給電を行ってグロー放電を発生し、発生したグロー放電で試料を掘削するグロー放電掘削方法において、前記電極及び試料が対向する箇所を囲って閉鎖し、閉鎖して形成した空間に不活性ガスを供給した雰囲気で断続的に給電を行うことを特徴とする。
第10発明に係るグロー放電掘削方法は、第1電極及び試料が配置される第2電極を備える掘削処理室内に不活性ガスを供給し、前記第1電極及び第2電極に断続的に給電を行ってグロー放電を発生し、発生したグロー放電で試料を掘削するグロー放電掘削方法であって、断続的な給電に係る状態を変更することを特徴とする。
【0017】
第1発明及び第9発明にあっては、電極及び試料が対向する箇所を閉鎖して小さな空間を形成すると共に、その空間に不活性ガスを供給するので、試料に対して確実に不活性ガスを供給できるようになる。その結果、グロー放電に伴うスパッタリングも閉鎖された空間内で試料に対して集中するように発生するため、試料をスパッタリングで効率的に掘削でき、また、掘削に係る精度も向上できる。
【0018】
さらに、第1発明及び第9発明にあっては、給電を断続的に行うので、グロー放電によるスパッタリングの発生も断続的なものになる。そのため、スパッタリングの威力を受ける試料の負荷も低減されるため、試料が溶融しやすい材料で形成されている場合、一定以上の外力で破壊されやすい材料で形成されている場合でも、試料の負荷を低減して良好に試料を掘削して観察に適した表面を形成できるようになる。なお、断続的な給電は、直流電圧と高周波(交流)電圧のいずれを印加する場合にも適用可能である。
【0019】
第2発明にあっては、連続的な給電と断続的な給電とを切り替えることが可能であるので、試料の特性に合わせて給電形態を切り替えて試料を破壊することなく掘削を行い、良好な観察面を形成できる。なお、2通りの給電形態は、掘削中でも切替可能であり、例えば、掘削時間の前半は連続的な給電を行い、後半は断続的な給電を行うようにすることで、表面付近に硬い材料を有する一方、表面から深さ方向に離れた箇所に軟らかい材料を有する構造の試料等に有効となる。
【0020】
第3発明にあっては、掘削処理室内でグロー放電により試料表面を掘削する装置に対しても、連続的な給電と断続的な給電とを切り替えることにより、試料の特性に合わせた掘削処理を実現して、良好な観察面を形成できる。
【0021】
第4発明にあっては、断続的な給電に係る状態を変更するので、より細かく試料の特性に合わせた掘削処理を行えるようになり、二次電子顕微鏡での構造観察等に適した観察面を容易に形成できる。
第5発明及び第10発明にあっては、掘削処理室内でグロー放電により試料表面を掘削する装置に対しても、断続的な給電に係る状態を変更可能にすることで、試料の特性を考慮してグロー放電に係る調整を精細に行って掘削処理を行えるようになる。
【0022】
第6発明にあっては、単位時間当たりの給電回数、即ち、断続的な給電に係る周波数を変更可能であるので、試料の溶解及び破壊等を確実に回避して試料表面を掘削可能となり、複数の材料を含む試料に対しても良好な掘削を行える。なお、給電に係る周波数は、掘削中でも変更可能にすることが好適であり、特に複雑な構造を有する試料に対しては、掘削の程度に応じて周波数を適宜変更し、掘削対象となる材料特性に適応させた掘削処理を行うことが好ましい。
【0023】
第7発明にあっては、断続的な給電に係るデューティー比を変更するので、様々な試料特性に応じて最適なグロー放電を発生できるようになり、試料が溶解又は破壊しないようにデューティー比を調整して掘削処理を行える。なお、デューティー比の変更は、掘削中でも行えるようにすることが好ましい。
第8発明にあっては、断続的な給電に係る電力値を変更するので、試料に応じた電力値に調整してグロー放電を発生させて試料を掘削できるようになる。特に、複数の異なる特性の材料で試料が構成されている場合には、掘削中に電力値を変更することは、良好な掘削を行う上で好適である。
【発明の効果】
【0024】
第1発明及び第9発明にあっては、小さな空間を形成して、その空間に不活性ガスを供給するので、試料に対して確実に不活性ガスを供給でき、良好な試料掘削を実現でき、さらに、給電を断続的に行うことにより、スパッタリングの威力を和らげて、溶融しやすい試料及び壊れやすい試料に対しても不具合無く掘削を行える。
第2発明にあっては、連続的な給電と断続的な給電とを切り替えることが可能であるので、試料の特性に合わせて最適な掘削を行える。
【0025】
第3発明にあっては、掘削処理室内でグロー放電により試料表面を掘削する装置に対しても、連続的な給電と断続的な給電とを切り替えることにより、試料の特性に合わせた掘削処理を実現できる。
【0026】
第4発明にあっては、断続的な給電に係る状態を変更することで、一段と精細に試料の特性に合わせた掘削処理を行える。
第5発明及び第10発明にあっては、掘削処理室内でグロー放電により試料表面を掘削する装置に対しても、断続的な給電に係る状態を変更可能にすることで、試料の特性を考慮してグロー放電に係る調整を細かく行った上で掘削処理を行える。
【0027】
第6発明にあっては、断続的な給電に係る周波数を変更することで、様々な試料特性に柔軟に対応した掘削処理を行える。
第7発明にあっては、断続的な給電に係るデューティー比を変更するので、試料特性に応じた最適な掘削処理を行える。
第8発明にあっては、断続的な給電に係る電力値を変更するので、試料の特性を考慮した掘削処理を行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は本発明の実施形態に係るグロー放電掘削装置1の全体的な構成を示している。グロー放電掘削装置1は、掘削対象の試料Sに対してグロー放電を発生させるグロー放電管2、高周波電力の給電を行う電源部4、及び給電に係る制御を行うコンピュータ7を備えている。
【0029】
なお、電源部4は交流電源AC(本実施形態では220V)に接続されて高周波電力を生成するジェネレータ6及びマッチングボックス5を備えている。また、図1中、破線で囲まれた部分は、グロー放電掘削装置1の本質的な構成に属しない周辺機器類を示し、周辺機器類にはグロー放電管2の内部を真空引きする真空引き装置8と、真空引きした後にグロー放電管2の内部に不活性ガス(アルゴンガス)を供給するためのガス供給調整部9及びガス供給源10とが含まれる。ガス供給調整部9は流量を調整するためのバルブ等を具備し、ガス供給源10はアルゴンガスのような不活性ガス又は不活性ガスの混合ガス等を充填したボンベが相当する。
【0030】
図2は、グロー放電管2の構成を示す断面図である。グロー放電管2は短円柱状のランプボディ11、陽極12、セラミックス部材13、及び押圧ブロック15が組み合わされて構成されている。
【0031】
ランプボディ11は、押圧ブロック15が組み合わされる端面11aの中心箇所に陽極12を取り付けるための窪部11bを凹設すると共に、窪部11bの中心部に中心孔11cを穿設している。また、ランプボディ11は、周壁部11dから中心へ向けて真空引き用の吸引孔11e、11fを複数設け、一部の吸引孔11eは中心孔11cと連通させると共に、他の吸引孔11fは窪部11b側に連通させている。さらに、ランプボディ11は、周壁部11dから中心へ向けて不活性ガスの供給用のガス供給孔11gを中心孔11cと連通するように形成している。
【0032】
ランプボディ11の窪部11bに収められる陽極12は、円板部12aの中心から円筒部12bを突出した形状にしており、円筒部12bの内部から円板部12aを貫通する貫通孔12cを穿設している。また、円板部12にも穴12dが形成されている。陽極12は、ランプボディ11の窪部11bに取り付けられると、ランプボディ11を介してアース電位になる。なお、陽極12が収められた状態でランプボディ11の中心孔11c及び陽極12の貫通孔12cの密閉性を維持するために第1オーリング(シール部材)16がランプボディ11及び陽極12の間に取り付けられている。
【0033】
陽極12を被うように配置されるセラミックス部材13は、厚みのある円板状の部材であり、陽極12の円板部12aを被う突出したフランジ部13dを有すると共に、中心となる箇所には、陽極12の円筒部12bを挿通させる挿通孔13cを形成している。また、セラミックス部材13は表出する側の端面13aにオーリング装着用のリング溝13bを凹設している。セラミックス部材13は、耐熱性の第1絶縁体17を介して陽極12の円板部12aに対して配置され、配置された状態では、セラミックス部材13の挿通孔13cと陽極12の円筒部12bとの間に所定の隙間が形成され、円筒部12aの先端12eはセラミックス部材13の端面13aより突出しないようになっている。なお、第1絶縁体17と陽極12の円板部12aとの間にも密閉性維持のために第2オーリング18が取り付けられている。
【0034】
陽極12及びセラミックス部材13をランプボディ11に固定するための押圧ブロック15は、環状の部材であり、内周縁側の突出部15aでセラミックス部材13のフランジ部13dをランプボディ11側へ押圧するようにしている。なお、押圧ブロック15自体は、ボルトによりランプボディ11の端面11aに取り付けられる。また、押圧ブロック15の突出部15aと、セラミックス部材13のフランジ部13dとの間にも耐熱性の第2絶縁体19を介在させている。
【0035】
一方、グロー放電管2に取り付けられる掘削対象の試料Sは、セラミックス部材13の端面13aに取り付けられた第3オーリング20(閉鎖部材に相当)に試料表面Saが当接するように配置される。さらに、この状態で試料Sの裏面Sdは発振子3が押し当てられて試料Sがグロー放電管2側へ押圧される。これにより試料Sの掘削処理面Saと陽極12の円筒部12bの先端12eとが対向する箇所は第3オーリング20で囲われて閉鎖された空間Kが形成される。なお、発振子3は、図1に示すように電源線Dにより電源部4と接続されており、また、図示しない所定の係止手段で試料Sを最適な押圧力でグロー放電管2へ押圧している。
【0036】
上述した構成のグロー放電管2は、ランプボディ11の各吸引孔11e、11fが図1に示す真空引き装置8と接続され、ガス供給孔11gがガス供給調整部9と接続される。そのため、真空引き装置8が真空引きを行うと、各吸引孔11e、11f、中心孔11c、及び陽極12の貫通孔12cを通じて空間Kが真空にされる。また、空間Kが真空にされた状態で、ガス供給調整部9がガス供給を開始すると、ガス供給孔11g、中心孔11c、及び陽極12の貫通孔12cを通じて空間Kに不活性ガスが供給される。この際、空間Kは第3オーリング20により閉鎖されて小さい体積となっているため、空間Kには十分な不活性ガスが供給されることなる。なお、グロー放電管2では、ガス供給孔11g、中心孔11c、及び陽極12の貫通孔12cが、空間Kへのガス供給部(ガス供給路)として機能する。
【0037】
図3は、電源部4を構成するジェネレータ6の内部構成を示している。ジェネレータ6は、高周波電力生成部6a、制御部6b及び電力計測部6cを具備する。高周波電力生成部6aは交流電源ACと接続されて図4に示す正(+)及び負(−)に変化する交流(高周波)電圧を試料S及び陽極12に印加できるように高周波電力を生成する。また、高周波電力生成部6aは第1内部接続線6dにより制御部6bと接続されており、制御部6bの制御により高周波電力に係る出力モード及び電力値等を調整する。なお、本実施形態の高周波電力生成部6aは13.56MHzの高周波電圧からなる電力を生成している。
【0038】
制御部6bはIC(集積回路)で構成されており、第1接続コードL1を通じてコンピュータ7と接続されており、コンピュータ7から出力される各種信号に基づき連続的な給電を行うか断続的な給電を行うかを判断し、判断結果に基づき高周波電力生成部6aの出力モードを制御する。
【0039】
図5(a)は、制御部6bによる1つ目の出力モードを示すグラフであり、所定の時間内、連続して高周波電力(電力値P)を出力して試料S及び陽極に連続的な高周波電圧の印加を行うモードである(以降、このモードを連続モードと称す)。また、図5(b)は、制御部6bによる2つ目の出力モードを示すグラフであり、所定の時間内、パルス的(オン/オフ的)に高周波電力(電力値P)を出力して試料S及び陽極12に断続的な高周波電圧の印加を行うモードである(以降、このモードを断続モードと称す)。
【0040】
なお、制御部6bは、断続モードでは断続給電手段として内部のICでパルス的な処理を行うことで電力供給及び電力供給休止を交互に行う。このような処理により、図5(b)に示す棒状に突出した部分に対応する給電時間T1で高周波電力が出力され、1回の給電及び給電休止をそれぞれ含む単位時間T2から給電時間T1を引いた時間で高周波電力の出力が休止される。
【0041】
また、制御部6bは切替手段として、上述した連続モードと断続モードとの切替をコンピュータ7から出力される信号に基づき行う。さらに、制御部6bは断続モードでは断続的な給電に係る状態を変更する給電状態変更手段として機能し、単位時間(1秒間)当たりの給電回数(給電周波数)、断続的な給電に係るデューティー比、及び断続的な給電の電力値をそれぞれ変更可能にしている。
【0042】
なお、給電周波数の変更に対して制御部6bは、約30Hz〜約30000Hzの範囲で給電周波数を調整可能にしており、給電周波数が変更されると図5(b)のグラフにおいて、給電の間の時間(T2とT1との差)が変化する。また、デューティー比の変更に関しては、断続給電中の単位時間T2対し1回分の給電時間T1が占める割合(T1/T2)を適宜調節できるようにしている。
【0043】
また、試料Sの掘削が進行するにつれて、試料Sと陽極12の先端12eとの距離が長くなり、試料Sに係るインピーダンス値が随時変化するため、断続モードにおけるインピーダンス値変化に対する調整処理も制御部6bが行っている。
【0044】
具体的に制御部6bは、後述する電力計測部6cから伝送されてきた出力値Pf及び反射値Prとの差を演算し、演算された差に基づき高周波電力生成部6aで生成された高周波電力の試料Sへ給電される進行波の電力値(出力値Pf)を変更する制御を行う。なお、制御部6bは演算された差(Pf−Pr)が一定となるように出力値Pfを調整しており、本実施形態では演算された差(Pf−Pr)が後述するコンピュータ7から伝送されてきた基準電力値と同等となるように高周波電力生成部6aで生成される出力値Pfを制御部6bが内蔵するICのソフト的な処理で調整する。
【0045】
このように制御部6bがソフト的な調整を行うことで、断続モードでの試料Sのインピーダンス値の変化に対応して適切な給電を行える。なお、制御部6bが試料Sのインピーダンス値の変化に対応した調整を行うのは断続モードの場合であり、連続モードでは後述するようにマッチングボックス5が調整を行う。
【0046】
図3に戻りジェネレータ6の電力計測部6cは、第2及び第3内部接続線6e、6fにより制御部6b、高周波電力生成部6aと接続されている。電力計測部6cは、高周波電力生成部6aで生成されて図1に示す発振子3へ向かう高周波電力の進行波の電力値である出力値Pfを検出すると共に、試料Sから反射して戻ってくる反射波の電力値である反射値Prを検出し、検出した値を制御部6bへ伝送している。
【0047】
一方、電源部4のマッチングボックス5は、図6に示すように、連続モードにおいてジェネレータ6で生成された高周波電力の出力形態を調整する可変コンデンサ5a、可変コンデンサ5aの電気容量を調整するモータ5b、モータ5bの駆動等の制御を行うコンデンサ制御部5cを具備する。
【0048】
可変コンデンサ5aはモータ5bの駆動に応じて自身の電気容量を変更でき、電気容量の変更によりモジュール及びフェーズが調節される。また、コンデンサ制御部5cは、第2接続コードL2によりコンピュータ7と接続されており、コンピュータ7からマッチングボックス5へ伝送されてくる断続モードの設定の通知信号に基づいてモータ5bの駆動を制御する。
【0049】
具体的には、断続モードの通知信号を受け付けた場合、可変コンデンサ5aの電気容量が一定に固定されるようにモータ5bを一定の状態に維持する制御をコンデンサ制御部5cは行う。よって、断続モードではマッチングボックス5で高周波電力のモジュール及びフェーズは調整されない。また、断続モードの通知信号を受け付けない場合、即ち、連続モードが設定されたとき、試料Sからの反射値Prが最小となるようにモータ5bの駆動を制御して可変コンデンサ5aの電気容量を変更する制御をコンデンサ制御部5cは行う。なお、反射値Prが最小であれば、コンデンサ制御部5cは可変コンデンサ5aの電気容量を変更する制御は行わない。
【0050】
また、図1に示すコンピュータ7は、ジェネレータ6から延在する第1接続コードL1及びマッチングボックス5から延在する第2接続コードL2が接続されるインタフェース基板7bを設けており、このインタフェース基板7bをCPU7a、RAM7c、ROM7d、及びハードディスク装置7eが接続された内部バス7fに繋げている。なお、内部バス8aにはモニタ接続線L3を介してモニタ部7gが接続されている。また、RAM7cはCPU7aが行う各種制御処理に伴うデータ等を一時的に記憶し、ROM7dにはCPU7aが行う基本的な処理内容を規定したプログラム等が予め記憶されており、ハードディスク装置7eには掘削処理に対してCPU7aが行う制御内容を規定した掘削プログラム21が記憶されている。
【0051】
インタフェース基板7bは連続モード用回路、断続モード用回路を有し、CPU7aの制御により設定されたモードがインタフェース基板7bへ通知されると、通知されたモードに対応する回路が作動し、作動した回路による処理でモード切替の制御信号がジェネレータ6へ出力される。
【0052】
また、インタフェース基板7bの断続モード用回路には、断続モードに対してコンピュータ7で設定された給電周波数、デューティー比、電力値等のパラメータが伝送され、断続モード用回路は伝送された内容を1つにまとめた信号を生成してジェネレータ6へ出力すると共に、断続モードを通知するマニュアル・アダプテーションと云う通知信号をマッチングボックス5へ出力する処理を行う。なお、伝送されるパラメータには、高周波電力のピーク電力値、変動するインピーダンス値に対応した調整処理に用いられる基準電力値(基準値)等も含まれるものとする。
【0053】
CPU7aは、ハードディスク装置7eに記憶された掘削プログラム21に基づいて各種処理を行い、図1で示していないキーボード又はマウス等の操作でユーザにより入力された指示に基づき所定の設定及び制御を行う。
【0054】
例えば、掘削プログラム21が起動すると、図7に示す設定メニュー22をモニタ部7gに表示させる処理をCPU7aは行う。また、設定メニュー22に従い断続モード又は連続モードのいずれかの設定操作を受け付けた場合、CPU7aは受け付けた設定内容に対応するインタフェース基板7b内の回路を作動させる処理を行う。
【0055】
設定メニュー22で断続モードが設定された場合、CPU7aは周波数(給電周波数)及びデューティー比の数値設定もユーザから受け付ける処理を行い、受け付けた内容をインタフェース基板7bへ通知してジェネレータ6へ所定の信号を伝送させる。
なお、デューティー比は、掘削対象の試料Sが特に溶解しやすい場合及び破壊しやすい場合、0.5より低い数値に設定することが好ましい。
【0056】
また、CPU7bは、上述した設定メニュー22以外の別のメニューで、掘削処理に要する時間及び、高周波電力のピーク等の他のパラメータも設定できるようにしており、断続モードが設定されたとき、CPU7aは、断続モードの設定を伝える通知信号をインタフェース基板7bからマッチングボックス5へ出力させる制御を行う。
【0057】
一方、設定メニュー22で連続モードが設定された場合、CPU7aは掘削処理に対して設定された時間の給電を行うようにインタフェース基板7bからジェネレータ6に指示信号を出力させる制御を行う。
【0058】
次に上述した構成のグロー放電掘削装置1を用いたグロー放電掘削方法に係る全体的な処理手順を図8のフローチャートに基づいて説明する。
先ず、図7に示す設定メニュー22等でモード並びに周波数、デューティー比及び掘削時間等の各種パラメータを設定し(S1)、試料Sを図2に示すようにグロー放電管2にセットする(S2)。
【0059】
次に、グロー放電管2の内部を真空引き装置8で真空引きしてから、ガス供給源10よりグロー放電管2の内部へ不活性ガス(アルゴンガス)を供給する(S3)。それから、不活性ガスが空間Kに供給された雰囲気で、設定された内容に応じた給電が行われ(S4)、試料Sの空間Kに表出した試料表面Saが掘削される(S5)。
【0060】
図9は、掘削された試料Sの状態を示す。本実施形態では、第3オーリング20で閉鎖された空間Kに陽極12の貫通孔12cを通じアルゴンガスがスムーズに導かれるので、空間Kには十分なアルゴンガスが随時供給されることになる。また、このアルゴンガスの供給雰囲気で給電されることで、空間K内ではグロー放電が発生し、アルゴンガスに含まれるアルゴンイオンが試料表面Saに向けて飛び出して衝突してスパッタリングが起こる。このスパッタリングでのアルゴンイオンの衝突により試料表面Saが掘削されて凹部Sbが生じるが、本実施形態では十分にアルゴンガスが供給されることから、アルゴンイオンが試料表面Saに衝突する程度も従来の装置に比べて多くなり、効率的な掘削を行えると共に、掘削された箇所も従来に比べて平滑で且つ清浄された面を得られる。
【0061】
即ち、掘削された凹部Sbの底面Scは、陽極12の先端12eの大きさに応じた所定の面積を有し、底面Sc中には所定の平滑度を満たした清浄箇所が生じるので、従来の研磨処理に比べて容易に二次電子顕微鏡に対する観察面(底面Sc)を形成することができ、さらに、従来のグロー放電による掘削に比べて平滑度に優れた観察面(底面Sc)を得られる。
【0062】
また、本実施形態のグロー放電掘削装置1では、連続モード及び断続モードを切り替えて設定できるので、溶解しやすい試料、壊れやすい試料等に対しては断続モードで給電を行うことにより、従来の装置では困難であった種類の試料の掘削も支障無く行えることができる。特に、断続モードでは給電周波数、デューティー比及び電力値等をきめ細かく設定できるので、デリケートな試料も確実に掘削できる。また、上述した特性以外の試料に対しては連続モードを行うことで連続的にアルゴンイオンを試料表面Saに衝突させて効率的な掘削を良好な精度で行える。
【0063】
なお、断続モードで給電を行った場合、スパッタリングの発生による試料Sのインピーダンス値の変動に対して出力値Pfと反射値Prとの差を一定にする場合の全体的な処理は、以下のような流れになる。
【0064】
先ず、給電前の各種パラメータ設定においてコンピュータ7で基準電力値を例えば、Aワットに設定すると、それに連動して、インタフェース基板7bの断続モード用回路が有する所要のICで出力値Pfと反射値Prの差が一定となるように設定されて、ジェネレータ6から試料Sへ給電される高周波電力の出力値Pfがaワットに調整される。なお、このときPf−Pr=c=Aワットになっている。
【0065】
次に、給電による試料Sの掘削でスパッタリングが発生して試料Sのインピーダンス値が変化すると、試料Sからの反射値Prもbワットに変化するので、Pf−Pr=a−bとなり、出力値Pfと反射値Prとの差はAワットと相違する。
【0066】
出力値Pfと反射値Prとの差はAワットと相違すると、ジェネレータ6はPf−Pr=cとなるように、出力値Pfをa′ワットになるように調整し、これによりPf−Pr=a′−b=c=Aワットとなり、出力値Pfと反射値Prの差は一定に維持され、断続モードにおいても安定した給電状態が確保される。
【0067】
なお、本発明に係るグロー放電掘削装置1は、上述した形態に限定されるものではなく、種々の変形例の適用が可能である。例えば、上述した形態では高周波電力を生成して給電する場合で説明したが、高周波ではなく直流の電力を生成して給電を行い、グロー放電を発生させる装置に対しても、本発明に係る上述した処理及び構成は適用可能である。このような直流電力での給電は、試料Sが金属等の伝導体試料であるときに好適である。
【0068】
また、例えば、デリケートな試料を掘削対象にしない場合は、給電周波数、デューティー比、及び電力値等に係る設定処理を省略してコンピュータ7(CPU7a)の処理負担を低減する構成にしてもよい。さらに、掘削対象の試料が溶融しやすいもの又は壊れやすいものである場合、断続モードと連続モードの切替機能を省略して断続モード専用の装置にすることも可能であり、掘削対象の試料が上記以外の特性を有する掘削しやすいものである場合は、連続モード専用の装置にしてもよい。このようにすることでグロー放電掘削装置1に係る種々の処理等を一段と簡素化できる。
【0069】
一方、掘削対象の試料が複数の異なる特性を有する材料で構成されている場合、全掘削時間を複数の時間帯に分けて、ある時間帯は連続モードで給電を行い、他の時間帯は断続モードで給電を行い、掘削処理中にも各モードを切り替えられるようにしてもよい。このように掘削処理中にモードを切り替えることで、硬い材料及び軟らかい材料が階層的に存在する試料等に対して良好な掘削処理を行える。
【0070】
また、断続モードを行う場合でも、全掘削時間における複数の時間帯毎に給電に係る状態を変更して断続給電を行ってもよい。
【0071】
図10は、全掘削処理時間Zを、掘削開始側の時間帯の第1時間z1と掘削終了側の時間帯の第2時間z2とに区分けし、第1時間z1と第2時間z2とでデューティー比を相違させた給電状態を示している。この場合、第1時間z1では図5(b)と同様のデューティー比(T1/T2)であるが、第2時間z2では1回の給電時間をT1′(T1′<T1)にしてデューティー比(T1′/T2)を第1時間z1より小さくしている。
【0072】
その結果、第2時間z2では、第1時間z1に比べて給電による負荷及びスパッタリングの威力が低減されており、複数の材質を積層させると共に深層となる層の材質が表層に比べて破壊されやすい試料等に対し好適な給電形態を確保できる。なお、このような給電形態を実現するには、コンピュータ7で掘削時間を区分けする時間帯の個数、各時間帯が占める時間及び時間帯毎のデューティー比等の設定を図7に示すようなメニューで設定可能にして、これらの設定内容をジェネレータ6へ伝送すると共に、制御部6bで設定された時間に対応した給電制御を行えるようにすることが必要である。
【0073】
また、図11は、全掘削処理時間Zにおける第2時間z2の給電周波数を、第1時間z1に比べて大きくした給電状態を示す。この場合、第2時間z2の単位時間T2′は第1時間z1の単位時間T2より短い。このように、給電周波数を時間帯毎に相違することで、各時間帯毎に給電による負荷及びスパッタリングの威力の程度も相違し、掘削対象の試料特性に応じて詳細な設定が可能になる。また、時間帯毎に給電周波数を相異させる給電形態を実現するには、コンピュータ7で掘削時間を区分け可能にすると共に、区分けした時間帯毎に給電周波数を設定できるようにする必要がある。
【0074】
さらに、図12は、全掘削処理時間Zにおける第2時間z2の電力値P2を第1時間z1の電力値P1に比べて大きくした給電状態を示す。このように電力値を時間帯毎に相違することで、時間帯毎の給電による負荷及びスパッタリングの威力の程度も異なり、掘削対象の試料に応じた給電条件を確保できるようになる。なお、この電力値の時間帯毎に相違した設定は、複数の材質を積層させた試料に好適である。また、時間帯毎に相異する電力値で給電を行うには、コンピュータ7で掘削時間を区分けする時間帯の個数、時間帯毎の電力値設定の受け付け等を可能にすることが必要である。
【0075】
なお、時間帯毎にデューティー比、給電周波数及び電力値を適宜設定することは、これらのいくつか又は全てを組み合わせて設定することも可能であり、このようにすることで、より一層、試料に特性に応じた給電形態を確保でき、試料の溶解、破壊等を確実に防止して安定した掘削を行える。
【0076】
また、掘削対象の試料寸法が小さいときは、図13に示すように試料保持具26を適用することが好適である。図13に示す試料S′は、図中の寸法Mが第3オーリング20の径寸法より小さく、第3オーリング20に直接的に当接させることができないので、ボックス状の試料保持具26を用いることで空間Kを形成している。なお、試料保持具26は、開口した箱部26と、箱部26の開口をふさぐ蓋部27で構成されており、箱部26bの底板部26aの中央箇所には陽極12の円筒部12bの外径より少し大径の穴部26bが形成されている。
【0077】
小さい試料S′は、箱部26の内部で穴部26bを閉鎖するように配置されると共に、発振子3で底板部26aと共に陽極12側へ押圧される。その結果、底板部26aの外面が第3オーリング20に当接して、第3オーリング20、底板部26a及び穴部26bを閉鎖する試料S′で密閉された空間Kが形成され、上記と同様に試料S′の掘削が可能になる。
【0078】
さらに、試料の厚みが薄い場合などには、複数の試料を貼り合わせることでグロー放電管2へのセットが可能になる。例えば、図14(a)に示すような厚みが薄い円板状のシリコンウエハ30の断面を二次電子顕微鏡で観察する場合、先ず、シリコンウエハ30を複数の短冊片に切断する(図中、破線で示す)。次に図14(b)(c)に示すように、各短冊片31〜35を重ね合わせて接着剤で貼り合わせ、セット可能な寸法の試料36を形成する。
【0079】
試料36の掘削対象となる表面36aは各短冊片31〜35の観察対象となる側面31a〜35aを組み合わせたものになっており、表面36aを掘削することで複数の側面31a〜35aが同時に掘削されて複数の観察箇所を形成できるため、良好な観察を行える確率が向上する。なお、厚みが薄い試料を掘削するには、貼り合わせ以外にも、薄い試料を樹脂等でモールドし、グロー放電管2にセットできる大きさにすることが考えられる。
【0080】
図15は、変形例のグロー放電管2′を示し、このグロー放電管2′はランプボディ11′の中心孔11c′の内部に掘削状況を観察するためのスコープ40を配置したことが特徴である。スコープ40を配置するため、ランプボディ11′は外側端面11i′に中心孔11c′と連通する穴部11h′を設け、シール部材41を介して棒状のスコープ40を挿通させて中心孔11c′内に配置している。スコープ40は先端側の延長線上にある対象を観察できる構成になっているため、陽極12の貫通孔12cを通じて試料表面Saに掘削される状況を外部から観察でき、状況を確認しながら掘削処理を行えるようになる。
【0081】
また、図16は、変形例のグロー放電掘削装置50を示し、図1のグロー放電掘削装置1のようにグロー放電管2及び発振子3を用いて試料Sをセットするのではなく、密閉された掘削処理室51の内部に第1電極52及び試料Sを配置する第2電極53を設け、第1電極52を図1と同等の構成の電源部4に接続すると共に、第2電極53を交流電源ACの接地側に接続している。なお、電源部4は図1と同等にコンピュータ7により制御される。
【0082】
掘削処理室51は天板部51aにアルゴンガス供給用のガス供給穴51bを開口し、底板部51cに真空引き用穴51dを開口し、掘削処理室51の内部空間51eを真空引き用穴51dより真空引きしてから、ガス供給穴51bよりアルゴンガス(不活性ガス)を供給して、各電極52、53に給電を行うことになる。なお、給電は、上述した様々な給電形態の適用が可能である。この変形例のグロー放電掘削装置50では、掘削対象の試料Sを掘削処理室51の第2電極53に配置するだけで済むため、試料Sのセットに要する手間が少なく、また、第2電極53に載置できるかぎり、どのような形態の試料Sでも掘削できるため、掘削できる試料形態の自由度が大きいと云う利点がある。
【0083】
次に、上述したグロー放電掘削装置1と同等の構成を有するグロー放電掘削装置(堀場製作所製JY-5000RFの掘削処理に関連する部分のみを利用した装置)を用いて各種試料を実際に掘削した実施例(実験結果)を説明する。
第1の実施例では、試料にシリコン基板を用いて掘削を行った。
図17(a)〜(c)の顕微鏡写真は、掘削前のシリコン基板を示し、図17(a)は共焦点レーザー顕微鏡による全体的なシリコン基板を示す画像であり、図17(b)は共焦点レーザー顕微鏡により基板表面を拡大した画像であり、図17(c)は走査型電子顕微鏡により更に拡大した画像である。掘削前のシリコン基板表面の凹凸状況を粗さ計で測定したところ、基板表面上における一つの箇所では水平距離281.43μmに対して0.84μmの高度差があり、他の箇所では水平距離25.31μmに対して0.70μmの高度差があった。
【0084】
上述したシリコン基板に対して機械鏡面研磨処理を行った後、上述のグロー放電掘削装置を用いて掘削した。掘削の条件は、グロー放電の発生に対するモードは連続モードに設定し、シリコン基板へ供給する電力値を40Wに設定した。
【0085】
図18(a)〜(c)の顕微鏡写真は、掘削後のシリコン基板を示し、掘削前の図17(a)〜(c)の各画像に夫々対応し、上記と同様の顕微鏡を用いて撮影した画像である。図17、18の各顕微鏡写真を比べると、掘削後のシリコン基板は、掘削前の表面に比べて凹凸がなだらかになっていることが確認できた。
【0086】
また、掘削後の基板表面に対して、掘削前に表面粗さを測定した個所と同等の箇所に対して粗さ計で測定したところ、一つの箇所では水平距離281.43μmに対して0.46μmの高度差であり、他の箇所では水平距離62.17μmに対して0.37μmの高度差であった。よって、掘削により高度差が、ほぼ半減して平滑化されたことが判明した。なお、グロー放電掘削装置が掘削を行った実質的な作動時間は約5秒である。このように本発明に係るグロー放電掘削装置を用いて試料表面を掘削することで、非常に短時間でナノレベル的に均一で且つ平滑な表面を形成でき、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡、電子線マイクロプローブアナライザー、及び表面分析機器等を用いて良好な表面画像、分析情報を得ることができる。
【0087】
第2の実施例では、熱に弱くて溶解しやすいプラスチック材料を掘削した。
図19(a)(b)の顕微鏡写真は、掘削前のプラスチック材料の表面を示し、図19(a)は走査型電子顕微鏡により材料表面を拡大した画像であり、図19(b)は原子間力顕微鏡により材料表面を更に拡大した画像である。また、図19(c)のグラフは、図19(b)におけるA−B線で結んだ箇所及びC−D線で結んだ箇所に対して粗さ計で測定した高度差を示し、A−B線の箇所では水平距離が26.71μmに対して160.74nmの高度差があり、C−D線の箇所では29.23μmに対して135.14nmの高度差があった。
【0088】
図20(a)(b)の顕微鏡写真は、上述したプラスチック材料を断続モードで掘削した場合の材料表面を示しており、掘削前の図19(a)(b)の各画像に対応し、上記と同様の顕微鏡を用いて撮影した画像である。なお、断続モードでの掘削は、プラスチック材料へ供給する電力を40W、デューティー比を0.0625、断続給電の周波数を20000Hzに設定し、全体の掘削時間を300秒にした。
【0089】
また、図20(c)のグラフは、図20(b)におけるA−B線で結んだ箇所及びC−D線で結んだ箇所に対して粗さ計で測定した高度差を示し、A−B線の箇所では水平距離が22.31μmに対して56.64nmの高度差があり、C−D線の箇所では28.83μmに対して68.53nmの高度差があった。よって、掘削後は、掘削前に比べて高度差は2分の1以下に低減され、また、図19(c)及び図20(c)の各グラフよりグロー放電で掘削された表面が全体的に平滑化されていることが判明した。
【0090】
なお、図21(a)〜(c)の顕微鏡写真は、上述したプラスチック材料を連続モードで掘削した場合の材料表面を示し、図21(a)は共焦点レーザー顕微鏡による全体的なプラスチック材料を示す画像であり、図21(b)は共焦点レーザー顕微鏡により材料表面を拡大した画像であり、図21(c)は走査型電子顕微鏡により更に拡大した画像である。また、連続モードで掘削したプラスチック材料の表面を粗さ計で測定すると、全体では水平距離281.43μmに対して3.86μmの高度差があり、一部の箇所では水平距離30.81μmに対して4.24μmの高度差があり、断続モードに比べて高度が大きくなっていた。よって、本発明に係るグロー放電掘削装置の連続モードを断続モードに切り替えることで、熱に弱い試料及びスパッタリングの威力により破壊されやすい試料(例えば、有機物等を含むような複合材料等)の表面を平滑に掘削できることが判明した。
【0091】
なお、比較検証のため、上述のグロー放電掘削装置を用いて各種試料に対して連続モードでの掘削実験を行ったので、以下、連続モードの実験結果を挙げる。
層構造をなす試料の表面から深さ方向への構造解析を行う上で、給電条件及び掘削時間の変化により、最表層より一層ずつきれいに剥離できるかを検証した。試料としては層構造の半導体を用いて、半導体の断面に表出する各層の深さ方向に対するパターンの認識できる度合を比較検証した。
【0092】
図22(a)(b)の顕微鏡写真は、掘削前の半導体断面を示し、図22(a)は共焦点レーザー顕微鏡により層構造を断面方向から見た画像であり、図22(b)は共焦点レーザー顕微鏡により層構造を表面から見た画像である。なお、図22(b)の表面の凹凸状況を粗さ計で測定したところ、表面上における全体では水平距離70.74μmに対して1.01μmの高度差があり、一部の箇所では水平距離14.92μmに対して1.00μmの高度差があった。
【0093】
図22(c)(d)の顕微鏡写真は、連続モードにより掘削した半導体断面を示しており、掘削前の図22(a)(b)の各画像に夫々対応し、上記と同様の顕微鏡を用いて撮影した画像である。図22(c)(d)の各画像は、図22(a)(b)の各画像に比べて半導体表面の最表層から優先的に掘削されており、下部にある構造を見ることができる。なお、図22(c)(d)の顕微鏡写真を得るための給電条件として、半導体試料へ供給する電力を40Wに設定し、全体の掘削時間を30秒にした。また、図22(d)の表面の凹凸状況を粗さ計で測定したところ、表面上における全体では水平距離70.74μmに対して0.88μmの高度差があり、一部の箇所では水平距離15.12μmに対して0.76μmの高度差があった。
【0094】
さらに、図22(e)(f)の顕微鏡写真は、図22(c)(d)の場合から、給電条件及び掘削時間を変更して連続モードで掘削した半導体断面を示しており、掘削前の図22(a)(b)の各画像に夫々対応し、上記と同様の顕微鏡を用いて撮影した画像である。図22(e)(f)の各画像は、図22(c)(d)の各画像に比べて半導体表面の構造が一段と掘削されており、基板近傍の構造を見ることができ、給電条件及び掘削時間を変更可能な本発明のグロー放電掘削装置では、給電条件及び掘削時間を変更することで、掘削される表面形態が大きく相異し、適切な給電条件及び掘削時間を設定することで構造解析を行うことができる。なお、図22(e)(f)の各画像を得るための給電条件として、半導体試料へ供給する電力を40W、全体の掘削時間を60秒として設定した。また、図22(f)の表面の凹凸状況を粗さ計で測定したところ、表面上における全体では水平距離70.74μmに対して0.44μmの高度差があり、一部の箇所では水平距離16.42μmに対して0.35μmの高度差があった。
【0095】
また、連続モードによる別の実験では、図14(a)〜(c)に示す内容で作成した試料(シリコンウエハ)に対して、グロー放電掘削装置により連続モードで掘削を行った。
【0096】
図23の3枚の写真は、図14(a)〜(c)に示すように、一枚のシリコンウエハの一部を複数切り出して重ね合わせたものを掘削した表面の写真(顕微鏡写真)の画像である。図23の下の写真は、パターンが設けられたシリコンウエハを複数枚重ねた状態を示す。なお、この下の写真において中央の黒い円状の範囲が掘削した部分である。
【0097】
図23の真ん中の写真は、下の写真の白枠で囲んだ部分を電子顕微鏡により撮像した拡大画像であり、シリコンウエハに設けられたパターンの中に多数のゲートが存在することを確認できた。さらに、図23の上の写真は、真ん中の写真の白枠で囲んだ部分を電子顕微鏡により撮像した拡大画像であり、クリアなゲートの存在を確認できた。このように試料(シリコンウエハ)の一部を複数切り出して重ね合わせてもの掘削することで、ゲート構造のコンディション評価を行えた。なお、図23の3枚の写真を得るための掘削の給電条件としてシリコンウエハへ供給する電力を40Wに設定し、全体の掘削時間を5秒にした。
【0098】
さらに、連続モードによる他の別の実験では、金属材料に対して通常、湿式で行われる組織観察を、連続モードの掘削によりドライプロセスの下で行った。
図24(a)(b)の顕微鏡写真は、掘削前の金属材料(ステンレス鋼)の表面を示し、図24(a)は走査型電子顕微鏡により材料表面を拡大した画像であり、図24(b)は原子間力顕微鏡により材料表面を更に拡大した画像である。また、図24(c)のグラフは、図24(b)におけるA−B線で結んだ箇所及びC−D線で結んだ箇所に対して粗さ計で測定した高度差を示し、A−B線の箇所では水平距離が84.44μmに対して7.44nmの高度差があり、C−D線の箇所では87.11μmに対して10.29nmの高度差があった。
【0099】
図25(a)(b)の顕微鏡写真は、上述した金属材料(ステンレス鋼)を連続モードで掘削した表面を示し、掘削前の図24(a)(b)の各画像に対応し、上記と同様の顕微鏡を用いて撮影した画像である。連続モードでの掘削は、金属材料へ供給する電力を40Wに設定し、全体の掘削時間を10秒にした。
【0100】
また、図25(c)のグラフは、図25(b)におけるA−B線で結んだ箇所及びC−D線で結んだ箇所に対して粗さ計で測定した高度差を示し、A−B線の箇所では水平距離が80.97μmに対して64.67nmの高度差があり、C−D線の箇所では99.91μmに対して85.06nmの高度差があった。このことから、結晶構造を有する金属材料の組織観察に対して、連続モードで掘削した場合でも、試料表面においては結晶方位に依存したエッチング効果が得られ、結晶による高低差を確認できた。よって、試料が単結晶である場合は本発明のグロー放電掘削装置で掘削することで平滑平面が得られ、試料が多結晶である場合は、試料の結晶方位に依存した異方性のエッチング効果が得られ、それぞれの結晶ごとに面方向に依存した向きにエッチングがなされ、組織の観察面を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施形態に係るグロー放電掘削装置の全体的な構成を示す概略図である。
【図2】グロー放電管の断面図である。
【図3】ジェネレータの内部構成を示すブロック図である。
【図4】印加される高周波電圧の形態を示すグラフである。
【図5】(a)は連続モードの給電形態を示すグラフであり、(b)は断続モードの給電形態を示すグラフである。
【図6】マッチングボックスの内部構成を示すブロック図である。
【図7】モード選択及び周波数設定等に係る設定メニューの内容を示す概略図である。
【図8】グロー放電掘削装置を用いたグロー放電掘削方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】試料の掘削状態を示す概略図である。
【図10】時間帯毎にデューティー比を相違させた給電形態を示すグラフである。
【図11】時間帯毎に給電周波数を相違させた給電形態を示すグラフである。
【図12】時間帯毎に電力値を相違させた給電形態を示すグラフである。
【図13】試料保持具を用いて保持した試料に対して掘削を行う状態を示す概略図である。
【図14】(a)はシリコンウエハを示す概略図、(b)は複数の短冊片を示す概略図、(c)は各短冊片を貼り合わせて形成された試料を示す概略図である。
【図15】変形例のグロー放電管を示す断面図である。
【図16】変形例のグロー放電掘削装置の構成を示す概略図である。
【図17】掘削前のシリコン基板の顕微鏡写真であり、(a)は基板の全体的な画像、(b)は基板表面を拡大した画像、(c)は更に拡大した画像である。
【図18】掘削後のシリコン基板の顕微鏡写真であり、(a)は基板の全体的な画像、(b)は基板表面を拡大した画像、(c)は更に拡大した画像である。
【図19】(a)(b)は掘削前のプラスチック材料表面の顕微鏡写真の画像、(c)はプラスチック材料の表面上における2箇所での高度差を示すグラフである。
【図20】(a)(b)は断続モードによる掘削後のプラスチック材料表面の顕微鏡写真の画像、(c)はプラスチック材料の表面上における2箇所での高度差を示すグラフである。
【図21】連続モードによる掘削後のプラスチック材料の顕微鏡写真であり、(a)はプラスチック材料の全体的な画像、(b)は材料表面を拡大した画像、(c)は更に拡大した画像である。
【図22】(a)(b)は半導体断面の掘削前の顕微鏡写真の画像、(c)(d)は連続モードで掘削した顕微鏡写真の画像、(e)(f)は給電条件を変更して連続モードで掘削した顕微鏡写真の画像である。
【図23】一枚のシリコンウエハの一部を複数切り出して重ね合わせたものを連続モードで掘削した表面の写真画像である。
【図24】(a)(b)は掘削前の金属材料表面の顕微鏡写真の画像、(c)は金属材料の表面上における2箇所での高度差を示すグラフである。
【図25】(a)(b)は連続モードで掘削後の金属材料表面の顕微鏡写真の画像、(c)は金属材料の表面上における2箇所での高度差を示すグラフである。
【符号の説明】
【0102】
1 グロー放電掘削装置
2 グロー放電管
3 発振子
4 電源部
5 マッチングボックス
6 ジェネレータ
7 コンピュータ
12 陽極
12b 円筒部
12c 貫通孔
20 第3オーリング
K 空間
S 試料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極に対向配置される試料に対して不活性ガスを供給した雰囲気で、該電極及び試料に給電を行って発生させたグロー放電で試料を掘削するグロー放電掘削装置において、
前記電極及び試料が対向する箇所を囲って閉鎖する閉鎖部材と、
該閉鎖部材で閉鎖された空間に不活性ガスを供給するガス供給部と、
給電を断続的に行う断続給電手段と
を備えることを特徴とするグロー放電掘削装置。
【請求項2】
給電を連続的に行う連続給電手段と、
該連続給電手段が行う連続的な給電及び前記断続給電手段が行う断続的な給電の切替を行う切替手段と
を備える請求項1に記載のグロー放電掘削装置。
【請求項3】
不活性ガスが供給される掘削処理室内に第1電極及び試料が配置される第2電極を備えており、前記第1電極及び第2電極に給電を行って発生させたグロー放電で試料を掘削するグロー放電掘削装置において、
給電を断続的に行う断続給電手段と、
給電を連続的に行う連続給電手段と、
該連続給電手段が行う連続的な給電及び前記断続給電手段が行う断続的な給電の切替を行う切替手段と
を備えることを特徴とするグロー放電掘削装置。
【請求項4】
前記断続給電手段が行う断続的な給電に係る状態を変更する給電状態変更手段を備える請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のグロー放電掘削装置。
【請求項5】
不活性ガスが供給される掘削処理室内に第1電極及び試料が配置される第2電極を備えており、前記第1電極及び第2電極に給電を行って発生させたグロー放電で試料を掘削するグロー放電掘削装置において、
給電を断続的に行う断続給電手段と、
該断続給電手段が行う断続的な給電に係る状態を変更する給電状態変更手段と
を備えることを特徴とするグロー放電掘削装置。
【請求項6】
前記給電状態変更手段は、単位時間当たりの給電回数を変更するようにしてある請求項4又は請求項5に記載のグロー放電掘削装置。
【請求項7】
前記給電状態変更手段は、断続的な給電に係るデューティー比を変更するようにしてある請求項4乃至請求項6のいずれか1つに記載のグロー放電掘削装置。
【請求項8】
前記給電状態変更手段は、断続的な給電に係る電力値を変更するようにしてある請求項4乃至請求項8のいずれか1つに記載のグロー放電掘削装置。
【請求項9】
電極に対向配置される試料に対して不活性ガスを供給し、該電極及び試料に給電を行ってグロー放電を発生し、発生したグロー放電で試料を掘削するグロー放電掘削方法において、
前記電極及び試料が対向する箇所を囲って閉鎖し、
閉鎖して形成した空間に不活性ガスを供給した雰囲気で断続的に給電を行うことを特徴とするグロー放電掘削方法。
【請求項10】
第1電極及び試料が配置される第2電極を備える掘削処理室内に不活性ガスを供給し、前記第1電極及び第2電極に断続的に給電を行ってグロー放電を発生し、発生したグロー放電で試料を掘削するグロー放電掘削方法であって、
断続的な給電に係る状態を変更することを特徴とするグロー放電掘削方法。
【請求項1】
電極に対向配置される試料に対して不活性ガスを供給した雰囲気で、該電極及び試料に給電を行って発生させたグロー放電で試料を掘削するグロー放電掘削装置において、
前記電極及び試料が対向する箇所を囲って閉鎖する閉鎖部材と、
該閉鎖部材で閉鎖された空間に不活性ガスを供給するガス供給部と、
給電を断続的に行う断続給電手段と
を備えることを特徴とするグロー放電掘削装置。
【請求項2】
給電を連続的に行う連続給電手段と、
該連続給電手段が行う連続的な給電及び前記断続給電手段が行う断続的な給電の切替を行う切替手段と
を備える請求項1に記載のグロー放電掘削装置。
【請求項3】
不活性ガスが供給される掘削処理室内に第1電極及び試料が配置される第2電極を備えており、前記第1電極及び第2電極に給電を行って発生させたグロー放電で試料を掘削するグロー放電掘削装置において、
給電を断続的に行う断続給電手段と、
給電を連続的に行う連続給電手段と、
該連続給電手段が行う連続的な給電及び前記断続給電手段が行う断続的な給電の切替を行う切替手段と
を備えることを特徴とするグロー放電掘削装置。
【請求項4】
前記断続給電手段が行う断続的な給電に係る状態を変更する給電状態変更手段を備える請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のグロー放電掘削装置。
【請求項5】
不活性ガスが供給される掘削処理室内に第1電極及び試料が配置される第2電極を備えており、前記第1電極及び第2電極に給電を行って発生させたグロー放電で試料を掘削するグロー放電掘削装置において、
給電を断続的に行う断続給電手段と、
該断続給電手段が行う断続的な給電に係る状態を変更する給電状態変更手段と
を備えることを特徴とするグロー放電掘削装置。
【請求項6】
前記給電状態変更手段は、単位時間当たりの給電回数を変更するようにしてある請求項4又は請求項5に記載のグロー放電掘削装置。
【請求項7】
前記給電状態変更手段は、断続的な給電に係るデューティー比を変更するようにしてある請求項4乃至請求項6のいずれか1つに記載のグロー放電掘削装置。
【請求項8】
前記給電状態変更手段は、断続的な給電に係る電力値を変更するようにしてある請求項4乃至請求項8のいずれか1つに記載のグロー放電掘削装置。
【請求項9】
電極に対向配置される試料に対して不活性ガスを供給し、該電極及び試料に給電を行ってグロー放電を発生し、発生したグロー放電で試料を掘削するグロー放電掘削方法において、
前記電極及び試料が対向する箇所を囲って閉鎖し、
閉鎖して形成した空間に不活性ガスを供給した雰囲気で断続的に給電を行うことを特徴とするグロー放電掘削方法。
【請求項10】
第1電極及び試料が配置される第2電極を備える掘削処理室内に不活性ガスを供給し、前記第1電極及び第2電極に断続的に給電を行ってグロー放電を発生し、発生したグロー放電で試料を掘削するグロー放電掘削方法であって、
断続的な給電に係る状態を変更することを特徴とするグロー放電掘削方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2006−300673(P2006−300673A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−121473(P2005−121473)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]