ケイ化物を燃料とする発電機及びそれに関わる方法
【課題】エネルギー密度が高いアルカリ金属ケイ化物を含む燃料を備えている燃料電池を提供する。
【解決手段】燃料電池14はカソード16と、アルカリ金属ケイ化物を含んでいる燃料12に接触しているアノード18と、前記カソードと前記アノードの両方に接触しながら両者を分離している電解質膜と、を備えている。前記アルカリ金属ケイ化物は、シリコンと、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びフランシウムから成る群より選択される1つ又はそれ以上のアルカリ金属と、を備えている。
【解決手段】燃料電池14はカソード16と、アルカリ金属ケイ化物を含んでいる燃料12に接触しているアノード18と、前記カソードと前記アノードの両方に接触しながら両者を分離している電解質膜と、を備えている。前記アルカリ金属ケイ化物は、シリコンと、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びフランシウムから成る群より選択される1つ又はそれ以上のアルカリ金属と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ケイ化物を燃料とする水素発生器及び発電機に関する。より具体的には、本発明の実施形態は、アルカリ金属ケイ化物を燃料とする発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は非仮特許出願であり、35U.S.C.第119(e)条に基づき、2006年4月10日出願の米国仮特許出願第60/790,681号に対する優先権を主張し、同出願を参考文献としてここに援用する。
【0003】
PEM燃料電池の様な燃料電池は、水素と水を化合させて水にするという単純な化学反応を利用して、その過程で電流を作り出している。従来より、水素は、水素化アルミニウムリチウムの様な燃料と水蒸気の間の化学反応により作り出されている。アノードでは、水素分子が白金触媒によりイオン化し電子を放出する。陽子交換膜(PEM)は、陽子は通過させるが電子は通さない。その結果、水素イオンは、PRMを通過してカソードに到るが、一方、電子は外部回路を通って流れる。電子は、外部回路を通って流れる際に、電気モーター、電球、又は電子回路の様な電気装置に電力を供給することで有用な仕事を行うことになる。カソードで、電子と水素イオンは酸素と化合して水になる。この反応の副産物は水と熱である。
【0004】
発電機で現在使用されている金属水素化物の様な燃料は、エネルギー密度が低い。燃料として使用される純粋なアルカリ金属類は、理論的には燃料のエネルギー密度を改善するが、自然発火性があり、取り扱い及び貯蔵が難しい。従来の燃料は、大容量の及び/又は手が掛かる貯蔵容器を必要とし、このことも多くの用途で安全上の懸念となっている。
【特許文献1】米国仮特許出願第60/790,681号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、1つ又は複数の燃料電池を備えている発電機及び燃料に関し、この燃料はアルカリ金属ケイ化物を含んでいる。実施形態は、カソード集電器と、このカソード集電器に電気的に接続されたカソードと、燃料に接触しているアノードと、を備えている燃料電池にも関する。燃料はアルカリ金属ケイ化物を含んでいる。燃料電池は、アノードに電気的に接続されたアノード集電器と、カソードとアノードの両方と接触しながら両者を分離している電解質膜も含んでいる。
【0006】
実施形態は、アルカリ金属ケイ化物を取り囲んでいる燃料キャビティと、キャビティ壁の少なくとも一部を形成している膜と、を備えている水素発生器にも関する。アルカリ金属ケイ化物が膜を介して水に接触すると、水素が発生する。発電機を製造する方法も説明している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下の説明では、説明の一部を構成する添付図面を参照するが、各図には実施される特定の実施形態を例示的に示している。それら実施形態は、当業者が本発明を実施できるようにするほどに詳しく説明しているが、他の実施形態も活用することができ、本発明の範囲から逸脱することなく、構造的、論理的、及び電気的な変更を加えることができるものと理解されたい。よって、以下の説明は、限定的な意味に解釈されるべきではなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲の内容によって定義される。
【0008】
燃料電池を使用している発電機に用いられる燃料のエネルギー密度を上げるため、アルカリ金属ケイ化物を水又は水蒸気と反応させて水素を発生させる。アルカリ金属ケイ化物の中には、自然発火性を持たず、純粋なアルカリ金属に比べて使用や取り扱いが安全に行えるものもある。
【0009】
燃料は、1つ又はそれ以上のアルカリ金属ケイ化物を含んでおり、例えば水素と混ぜ合わせられる。アルカリ金属ケイ化物は、アルカリ金属とシリコンを含んでいる化合物である。アルカリ金属の例として、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)が挙げられる。1つ又はそれ以上のシリコン原子と結合した1つ又はそれ以上のアルカリ金属原子を保有している結合としては、例えば、共有結合、イオン結合、又は金属引力が挙げられる。アルカリ金属ケイ化物の一例にNaxSiyがあり、ここに、xとyは、安定した錯体を形成するNa及びSi原子の可能な組み合わせを表す整数である。他の例としては、シリコンとのNaK合金がある。化合物の特定の例としては、ニューヨーク州10021、530E.76番街、9E号室、有限責任会社 SiGNa Chemistryから購入できるStage II Na-SGのようなM−SG粉末がある。アルカリ金属ケイ化物は、例えば、粉末又はゲルの形態をしている。例示した化合物は、空気中で発火又は酸化することはないので、開放環境で容易に取り扱うことができる。更に、それら化合物は、相当な時間が経過しても劣化しない。アルカリ金属ケイ化物は、水又は水蒸気と素早く効率的に反応して水素気体を発生する。また、水素を発生させるための触媒は一切不要である。アルカリ金属ケイ化物燃料は、ここに開示している実施形態の何れでも使用することができる。
【0010】
発電機は、水蒸気とアルカリ金属ケイ化物燃料の反応を通して内部で水素気体を発生させ、この水素気体が燃料電池で周囲の空気中の酸素と反応して電気エネルギーを発生させる。水素と酸素の反応からは、燃料電池の副産物として水の分子も作り出される。この発生した水は燃料電池から水蒸気として受動的に拡散され、燃料室又は燃料物質を入れたキャビティに入り、そこで燃料物質と反応して水素気体を発生させる。発生した電気エネルギーは、発電機の大きさにもよるが、発電機に接続されている大型又は小型の装置へ、電力を供給するのに使用される。本発明の実施形態の発電機は、無線センサー、携帯電話、又は発電機の1つ又は複数の燃料電池のアノードとカソードに電気的に接続されている他の手持ち式電子機器の様な小型の装置に電力を供給するのにとりわけ有用である。
【0011】
ケイ化物燃料は、発電機から独立した又はこれと一体化された水素発生器にも使用される。水素発生器の一例として、少なくとも一部が透過性の膜を含んでいるキャビティに、ケイ化物燃料を封入しているものがある。膜は、例えば、水と水素に対し透過性である。雰囲気中の水は膜を透過し吸湿性のケイ化物と反応して水素を発生させる。この過程は、規制しなくともよいし、例えば弁で圧力調整してもよい。水素が、1つ又は複数の燃料電池に接触すると、これで、例えば、発電機が完成する。
【0012】
図1と図2は、本発明の方法を実施するための代わりの発電機装置の断面図を示している。図1と図2に示すように、電力発生器10は、ハウジング36、ハウジング36内に取り付けられた少なくとも1つの燃料電池14、ハウジング36に取り付けられ燃料物質44を貯蔵するための少なくとも1つの燃料室12、ハウジング36内で少なくとも1つの燃料電池14から燃料室12に伸張しているキャビティ24、を含んでいる。キャビティ24は、燃料室12から燃料電池14への水素気体の流れを許容し、燃料電池14から燃料室12への水蒸気の流れを許容する。燃料電池14では、水素気体と空気中の酸素気体の反応により、電気と燃料電池水が発生する。雰囲気中の酸素は、少なくとも1つの吸気口20を通ってハウジング36に入る。酸素気体は、その後、燃料電池14まで進み、そこで水素気体と反応し、電気と水分子を発生させる。ここで使用されている燃料電池の種類は陽子交換膜(PEM)燃料電池と呼ばれ、この膜は、高分子電解質膜としても知られている。
【0013】
図4に示すように、代表的なPEM燃料電池は、電解質膜42の、一方の側に負に帯電した電極又はカソード16を、他方の側に正に帯電した電極又はアノード18を配した構造になっている。代表的な水素−酸素式PEM燃料電池の挙動では、水素燃料(例えば、水素気体)は流れ場プレートを通ってアノードまで運ばれ、一方、酸素は燃料電池のカソードに運ばれる。アノードでは、水素は、正の水素イオン(陽子)と負に帯電した電子とに分割される。電解質膜は、正に帯電したイオンのみを通過させてカソードに送る。負に帯電した電子は、そうではなくて外部回路に沿ってカソードに進み、電流を作り出す。カソードでは、電子と正に帯電した水素イオンが酸素と化合し、水の分子が形成される。
【0014】
発生器の内部では、燃料電池のアノード18側に水素気体の初期噴流が流され、発電機内から残留空気が取り除かれる。この水素気体の初期噴流は、二つの目的に供され、燃料電池で雰囲気中の酸素と反応して、或る初期量の電気エネルギーを生成すると共に、燃料電池カソード16で或る初期量の燃料電池水を生成する働きをする。この初期量の燃料電池水は、その後、再利用され、燃料物質44と反応する。代わりに、本発明のこの過程は、発電機外部の雰囲気中の水分からの水の分子を、吸気口20を通して発電機内に浸透させることにより開始してもよい。燃料電池により生成される燃料電池水の量よりも実質的に少ない量の初期の非燃料電池水の量を発生器に添加して、燃料物質44と反応させ、水素気体の生成を開始させることもできる。このような開始水は、例えば、燃料室12内の入口46のような開口部を通して、又は吸気口20の様な別の適した手段を介して発生器に添加してもよい。しかしながら、本発明の過程及び装置は、外からの水の供給無しに稼動するように設計されており、即ち、システムは、燃料電池によって作り出される水と、発電機の外部雰囲気中に存在する水の分子を除けば、水無し式である。水素燃料物質と反応させる水を提供するための、水室又は貯水部の様な水供給部は、組み込まれ又は接続されていない。その結果、この発電機では、従来のシステムと比較して、エネルギー密度及び比エネルギーが著しく改善された。而して、本発電機では、水素−酸素反応により、生成される電力に対応する必要な水を正確に作り出すことができ、化学量論的量の再循環水及び燃料が使用されることから、連続的自己制御過程が可能になった。
【0015】
この過程は、能動的制御式の弁やポンプ無しに、受動的に実行される。より具体的には、一旦、燃料電池14で酸素−水素反応の副産物として水が作られると、発生した水は燃料電池14を通って受動的に拡散しキャビティ24に入り燃料室12に至る。この受動拡散は、一部には1つ又は複数の保水帯域22の存在により、また一部にはキャビティ24内部の湿度が低いことにより、可能になる。保水帯域22は、図3Aと図3Bに強調して示しており、図面には、図1と図2に示す発電機の角部の図を載せている。ここでは、図3Aと図3Bに示すように、保水帯域22は、吸気口20から各燃料電池カソード16まで伸張する流路を含んでいる。保水帯域22は、燃料電池水を生成する各燃料電池14に存在している。保水帯域22の幾何学的形状により、燃料電池で生成された水の分子の内、吸気口から出て行く拡散水損失は抑制されるので、燃料電池カソード16では水蒸気を高濃度に維持することができる。水の分子を雰囲気中に失ってしまうのではなく、保水帯域22は、生成された水の分子をカソード16に蓄積させ、カソード16と吸気口20の間に湿度の高い領域を作り出す。このモル流量について、図6を参照しながら以下の数式により更に具体的に説明する。
【0016】
【数1】
【0017】
カソード16から雰囲気中への水蒸気の運搬、及び雰囲気中からカソード16への酸素の運搬は、両方とも、拡散制御過程である。Aのモル流束又はモル流量は、JAであり、ここに、Aは、望ましい種、即ち水か酸素の何れかである。水又は酸素のモル流束は、拡散率DABと、点1と点2の間の分圧差(PA1−PA2)と、気体定数Rと、ケルビン温度Tと、点1と点2の間の距離(Z1−Z2)の関数である。また、流束は、単位
【0018】
【数2】
【0019】
(m2秒当たりAのキログラム)で、面積当たりに定義される。
拡散係数は、濃度勾配に対する種の流束の間の比例定数である。拡散係数DABは、種B中の種Aの拡散係数を指す。本例では、これは、空気中の水蒸気の拡散係数、又は空気中の酸素の拡散係数を指す。拡散係数が大きいほど流束値は大きく、拡散係数が小さければ流束値は小さい。空気中の酸素の拡散係数は、室温、通常の室湿度で約0.21cm2/秒であり、一方、空気中の水蒸気の拡散係数は、室温、室湿度で0.24cm2/秒である。
【0020】
分圧は、気体の混合物の全圧に占める、混合物内の一組成分による圧力の部分である。分圧差が大きいと、当該種の流束は相対的に大きくなり、一方、分圧差が小さいと、相対的に小さい流束になる。保水帯域は、分圧差を小さく、例えば、雰囲気中の酸素分圧を10%から20%程度にして、所望の電力レベルに必要な酸素流束が得られるように設計されている。
【0021】
気体定数は、ボルツマン定数とアボガドロ数の積である。ケルビン温度は、対象の種の流束に影響する。温度が高ければ流束は小さくなり、一方、温度が低いと流束が大きくなる傾向にある。而して、気体の拡散、及びその延長線上にある分圧差は、流路の幾何学的形状を調整することにより制御することができる。
【0022】
図6に示すように、点1と点2の間の気体の拡散を制御するには、二点を分離している流路の幾何学的形状を変えることができる。例えば、点1と点2を分離している流路の面積が大きくなると、点1と点2の間の拡散は増加し、反対に、面積が小さくなると、拡散は低下する。点1と点2の間の距離については逆で、点1と点2の間の距離が長くなると拡散は低下し、点1と点2の間の距離が短くなると吸気口20を出る拡散が増加する。
【0023】
図1と図2に示す本発明の発電機は、雰囲気中の酸素圧力を少し、例えば10%から20%しか降下させずに、雰囲気中から十分な酸素を、吸気口20を通してカソード16に拡散できるよう設計されている。発電機は、水素透過損失が高いので、高圧で運転した場合は寿命が短くなる。
【0024】
水素と酸素を水に変換する化学反応(2H2+O2→2H2O)では、酸素の分子を1モル消費する毎に水が2モル作られる。また、空気中の水蒸気の拡散率と空気中の酸素の拡散率は同じである。よって、平衡を維持するには、水蒸気の分圧差は、酸素の分圧差の凡そ2倍でなくてはならない。従って、上記比率を有する本発明の発電機では、生成された水の分子を発生器の外の雰囲気中に失うのではなくて、湿潤環境が維持される。
【0025】
キャビティ24内の、燃料電池14のアノード18側には、燃料物質44の吸水性、吸湿性により、比較的湿度の低い領域が存在する。従って、カソード16での水の生成と保持により、水分濃度勾配と気体圧力差が発生し、これにより水の分子が拡散して燃料電池14を通ってキャビティ24内に戻り、水蒸気の形態で燃料室12に至る。この水蒸気は、次に燃料物質44と反応して水素気体を作り出す。発生した水素気体は、次にキャビティ24を通って燃料電池アノード18に進み、そこで酸素と反応し、再度水の分子を作り出す。この循環は、全ての燃料物質44が消費されるまで、随意的に継続される。
【0026】
発電機の作動中は、拡散してキャビティ内に戻る生成水蒸気の量の方が吸気口から失われるものよりも多い。更に、燃料電池の出力は、酸素及び水素反応物質の燃料電池への流量、つまり燃料室への水蒸気の流量に直接依存している。従って、燃料電池出力は、保水帯域の面積対長さの比に比例する。本発明の或る実施形態では、単位出力当たりの帯域面積対帯域長さの比は、燃料電池1個の場合、電力出力約0.01cm/mWから約0.05cm/mWである。複数の燃料電池を組み込んでいる場合、単位出力当たりの帯域面積対帯域長さのこの比は、反応物質を分け合う燃料電池の個数で割られる。
【0027】
保水帯域22の幾何学的形状が、燃料電池14に十分な酸素を拡散させるのに制約を掛けすぎる場合には、発生器は低い出力で作動することになる。具体的には、帯域面積対長さの比が面積0.05cm2/長さ1cmより大きい場合は、過剰な水蒸気は吸気口から拡散し、帯域面積対長さの比が面積0.01cm2/長さ1cmよりも小さい場合は、高効率で作動するのに十分な量の酸素が燃料電池に到達することはできない。燃料室から燃料電池への水素気体の流れを許容し、燃料電池から燃料室への水蒸気の流れを許容する、ハウジング内の燃料電池から燃料室まで伸張するキャビティの幾何学的形状についても同じことが当てはまる。
【0028】
別の実施形態では、発電機10は、燃料室12から燃料電池14への水素気体の流を規制するため、及び燃料電池14から燃料室12への水蒸気の通過を規制するため、少なくとも1つの弁26を更に含んでいる。図1と図2に示すように、弁26は、燃料室12と燃料電池14の間のキャビティ24内に配置されている。本発明の或る実施形態では、弁26は、前記キャビティ24内の気体圧力により制御される空圧弁を含んでおり、水蒸気の燃料室12への伝導性を空圧的に調整する。弁26は、周囲が発電機ハウジング36に支持部50で固定された空圧作動式可撓隔膜30と、隔膜30に対向して配置された弁円板28と、弁円板28と隔膜30を繋いでいるロッドコネクタ、を含んでいる。弁26は、弁円板28がシール38と接触したいるときは閉じ位置にあり、水蒸気が燃料室12に到達しないようにしている。代わりに、弁は、弁円板がシール38から離れているときは開き位置にあり、水蒸気が燃料室12に到達し、発生した水素気体が燃料電池14に到達できるようにしている。シール38は、ハウジング36の一部を含んでいる。支持部50も、ハウジング36の一部を含んでいる。図1と図2に示すように、単数又は複数の燃料電池14は、支持部50によりハウジングの内部に取り付けられている。
【0029】
弁の構成部品の寸法は、非常に小さいが、弁の具体的な用途に応じて変動する。隔膜の厚さと直径は、所望の電力出力次第で或る一定の範囲内になければならない。本発明の或る実施形態では、隔膜30は、直径が約1cmから3cm、約1cmから2cmの円形の薄いプレートを含んでいる。弁円板28は、直径が約0.2cmから約1cm、約0.2cmから約0.5cmである。本発明の或る実施形態では、ロッドコネクタは、スクリュー又はボルトを含んでいるが、隔膜30を弁円板28に接続する手段としては、弁を開き位置と閉じ位置の間で変えることができるのであれば他のどの様な手段でも適している。
【0030】
弁の動作は、隔膜30に作用する内部気体圧力によって制御される。装置の内部気体圧力は、水素気体の発生により上昇するので、隔膜30は、外向きに僅かに曲り又は押し出される。これにより、コネクタは、弁円板28を引いてシール38に押し付け、弁を閉じて水蒸気がそれ以上燃料室12に流入しないようにする。弁が閉じると、水素の発生が止む。これにより、内部気体圧力が更に上昇しないようになる。燃料電池14などにより水素が消費されると、内部気体圧力は低下し、弁円板28とシール38の係合が解かれ、弁が開く。而して、水素気体は、それが消費される速度で自動的に生成されることになる。
【0031】
本発明の或る実施形態では、発電機10は、空圧弁26を介して、一定の圧力を維持することにより作動する。発電機10は、低い電力出力では雰囲気圧力を下げ、最大電力出力では雰囲気圧力を理論的に無制限に上げて、作動させることができる。本発明の或る実施形態では、閉じ位置のとき、装置の内部H2圧力は、約0kPaから約1000kPaの範囲にある。燃料電池に使用される水素気体が無くなると弁は完全に閉じ、水素気体の消費速度に見合うのに必要な量だけ開く。本発明の或る実施形態では、発電機の内部圧力は、何時も約100kPaに維持されており、圧力が約10kPa未満に下がると、弁は僅かに開き、内部圧力が約500kPa以上に上昇すると、弁が閉じる仕組みである。作動圧力は、携帯式電子装置や無線センサーのような小型の機器では、約0.5atm(約50kPa)から約2atm(約202kPa)の範囲にある。
【0032】
一般に、発電機10は、空圧弁6を使用して、雰囲気よりも数psiだけ高い一定の圧力を維持することにより作動する。発生器10は、低い電力出力では雰囲気圧力を下げ、最大電力出力では雰囲気圧力を理論的に無制限に上げて作動する。
【0033】
電力発生器10は、使用時、例えば、約−40℃から約85℃、約−20℃から約50℃、約0℃から約50℃、約20℃から約50℃の範囲の運転温度に維持される。
本発明で使用する「水蒸気」という用語は、蒸気を含まない。「水蒸気」も「蒸気」も共に水の一形態ではあるが、特性と用途は非常に異なる。例えば、機関車は蒸気で運転されるが、本発明でのような湿潤空気中に存在する水蒸気では作動しない。「水蒸気」はそれ自体単独では、氷を含めあらゆる温度の水の形態に亘って自然に形成される、又は周囲の空気中に自然に存在する、個々の水の分子の気体である。水蒸気は分圧が低く、従って、水蒸気になる水が熱せられない限り、含有される水の分子は比較的少量である。一方、「蒸気」は、水を加熱して沸騰させることにより発生する小さくて熱い水滴で構成されている。蒸気は、15℃の水蒸気の約100倍以上の水分子を含んでおり、必然的に大きな力と速度で膨張し、大量の水を沸騰させて、水蒸気として輸送することができる。水蒸気は、日常の空気中に存在しており、含有される水の分子の個数は、蒸気や液体の水よりも遙かに少なく、自然な拡散では非常にゆっくりと移動する。水蒸気の形態では、極少量の水しか輸送されない。これを説明すると、一滴の水が室温で気化するのに通常1時間かかるが、一方、やかん一杯の水は約20分で沸騰して蒸気になる。また、蒸気を動力源とする発電機は、蒸気を発生させる水の供給又は水源を必要とする。対照的に、本発明は、そのような水源を無くすことにより、関連技術に改良を加えた。従って、本発明の装置と過程は、蒸気を使用して高い作動温度で機能するのではなく、水蒸気を使用して低い作動温度で機能するように設計されている。
【0034】
図1と図2に示すように、発電機10は、吸気口20と一体化され、雰囲気中の酸素と雰囲気中の水の分子の発電機内への拡散を規制する絞り32を更に備えている。絞りは、カソード16で発生する水蒸気を外向きに拡散させる際のインピーダンスによる、燃料電池カソード16での湿度の上昇を支援する働きもする。この湿度の上昇は、燃料電池の作動を改善する。絞りは、雰囲気中の酸素気体には実質的に透過性であるが水蒸気には実質的に不透過性である疎水性の膜を含んでおり、この膜は燃料電池水が雰囲気に流れ込むのを実質的に妨害する。望ましい特性を有するこの酸素透過性で水蒸気不透過性の膜に適した材料としては、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)の様な材料を含有しているフルオロポリマー、ペルフルオロアルコキシ、及び、配向ポリプロピレン(OPP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及び環状オレフィンコポリマー(COC)の様な材料を含有している非フルオロポリマーが挙げられる。酸素透過性で水蒸気不透過性の膜材は、例えば、フッ素化エチレンプロピレンから製造される。また、膜単独ではカソードに対する十分な酸素透過性を許容しない実施形態もある。従って、絞り32に小さい開口部48(図2参照)を設けて、雰囲気中の酸素と雰囲気中の水の分子を余分にキャビティに流入させて、単数又は複数の燃料電池カソードに拡散させるようにしている。しかしながら、この開口部は、同時に、水蒸気の一部を発電機10から外に拡散させてしまうことにもなる。要求される開口部の大きさは、出力レベルと、拡散経路長と、所望の分圧降下の関数である。この開口部の大きさは非常に小さく、膜全体の面積の約0.001%から約1%を含んでいる。
【0035】
燃料室12内の実質的に非液体の物質には、粉末、顆粒、又はペレットの形態をした物質が含まれ、アルカリ金属ケイ化物である。アルカリ金属ケイ化物は、アルカリ金属又はシリコンを含んでいる化合物である。アルカリ金属の例として、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びフランシウム(Fr)がある。1つ又はそれ以上のシリコン原子と結合した1つ又はそれ以上のアルカリ金属原子を保有している結合としては、例えば、共有結合、イオン結合、又は金属引力が挙げられる。アルカリ金属ケイ化物の一例にNaxSiyがあり、ここに、xとyは、安定した錯体を形成するNa及びSi原子の可能な組み合わせを表す整数である。他の例としては、シリコンとのNaK合金がある。化合物の特定の例としては、ニューヨーク州10021、530E.76番街、9E号室、有限責任会社 SiGNa Chemistryから購入できるStage II Na-SGのようなM−SG粉末がある。アルカリ金属ケイ化物は、例えば、粉末又はゲルの形態をしている。例示した化合物は、空気中で発火又は酸化することはないので、開放環境で容易に取り扱うことができる。更に、それら化合物は、相当な時間が経過しても劣化しない。アルカリ金属ケイ化物は、水又は水蒸気と素早く効率的に反応して水素気体を発生する。また、水素を発生させるための触媒は一切不要である。アルカリ金属ケイ化物燃料は、ここに開示している実施形態の何れでも使用することができる。
【0036】
図1及び図2に示すように、燃料室12は、多孔質気相膜34により境界が画定されている。ハウジング36に取り付けられ燃料室12と並列に配置されているこの膜34は、水蒸気に対する透過性を有していて、水蒸気が燃料室12に浸透し、燃料物質と反応して水素気体を発生することができるようになっていなければならない。膜34は、水素気体に対しても透過性を有していて、発生した水素気体がキャビティ24に入り燃料電池14に戻ることができるようになっていなければならない。このような二重の特性を有するこの気相膜34に適した材料としては、排他的にではなく、フルオロポリマーを含む多孔質ポリマー類があり、発泡Teflon(登録商標)の様な発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)積層材を挙げることができる。ePTFE積層物の例としては、デラウェア州のW.L.Gore&Associates,Incにより製造されているGORETEX(登録商標)、及びデラウェア州のBHA technologiesにより製造されているeVENT(登録商標)が挙げられる。
【0037】
図2は、具体的に、図1の発生器と比較して表面積を広くした吸気口を有する本発明の代わりの発電機の断面概略図である。この実施形態でも、同様に、雰囲気中の酸素気体は実質的に透過させるが水蒸気は透過させない疎水性膜32が、吸気口20に配置されている。しかしながら、雰囲気中の自然な空気湿気から水の分子を取り込むことができるように、小さい開口部48(例えば、約0.008cm2)の孔が膜32に切り込まれている。この開口部48は、余分な酸素が燃料電池カソードまで拡散できるようにもしている。本発明の或る実施形態では、本発明の発電機は、少なくとも約5%の相対湿度を有する環境に置かれた場合に、最高の機能を発揮することができ、湿度が上がるに伴って性能が向上する。
【0038】
図2の実施形態は、空圧弁26も含んでおり、この弁は、メッシュ隔膜30と、弁26のメッシュ隔膜30に並列して配置された透水性で水素不透過性の膜40と、を含んでいる。メッシュ隔膜30は、水蒸気には透過性であり、ポリエチレンテレフタレートの様なポリマー金属又はステンレス鋼のような金属で形成されている。この透水膜40に適した透水性材料には、ペルフルオロスルホネート・イオノマーの様な過フッ素化ポリマーが含まれている。エポキシド及びクロロプレンゴムも適している。透水膜としては、デラウェア州のEI DuPont de Nemours&Co.から登録商標Nafionの名称で市販されているペルフルオロスルホネート・イオノマーが挙げられる。Nafionは、優れた安定性を実現するフッ素化主鎖と、高いイオン伝導性を支援するスルホン酸側鎖を有していることから、利用されている。透水性で水素不透過性の膜40は、水蒸気が、電解質膜42を通ることなく、燃料室12へ拡散できるようにする。これにより、水蒸気が燃料室に浸透するための経路の面積が広くなり、燃料電池14が、燃料電池だけで水を回収する場合よりも高い電流密度で運転できるようになる。同様な材料で、少なくとも1つの燃料電池14の電解質膜42は形成されている。
【0039】
従って、図2から分かるように、この発電機10は、燃料電池で発生した水の分子を、燃料電池カソード16から燃料室12まで輸送するための二重の大通りを提供している。具体的には、図2の実施形態では、水素気体と雰囲気中の酸素が燃料電池14で反応した結果、燃料電池カソード16で燃料電池水が作られ、これにより電気が発生する。この発生した燃料電池水は保水帯域22に保持され、燃料電池14を通って拡散して戻るか、又は、保水帯域22から拡散してメッシュ隔膜30と透水膜40を通って浸透するか、の何れかによりキャビティ24に再度進入する。
【0040】
図7は、複数の燃料電池を有する本発明の円筒形の発電機10の上面図である。図7に示すように、複数の燃料電池14は、発電機10の円周に沿って配置されている。本発明の発電機10は、燃料物質44を随意的に補給するための入口46も含んでいる。代わりに、電池同様に、燃料物質44が消費されてしまったら発電機を廃棄処分にしてもよい。発電機10の組み立てられた構成部分のそれぞれは、ポリエチレンテレフタレート(図示せず)の様な適した材料で形成されたチューブの様な適した中空構造に更に封入されるが、この囲いには、上面及び/又は底面に適した蓋(図示せず)を設け、この蓋は、取り外し可能とし、囲いと同じ材料で形成してもよいし、異なる材料で形成してもよい。発電機10は、装置を発電機10に電気的に接続する少なくとも1つの電気コネクタを更に含んでいる。図1に示すように、装置52(概略図示、縮尺不整合)は、電気コネクタ54と56を通して発電機10に電気的に接続されており、これら電気コネクタ54と56は、燃料電池のカソードとアノードに接続されている。電気コネクタ54と56は、図7にも示している。複数の燃料電池を組み込んでいる各実施形態では、複数の燃料電池は直列に接続され、発生器ハウジング36から突き出ている一組の電気コネクタ54と56に接続されている。本発明の或る実施形態では、発電機10は相互接続された8個の燃料電池を含んでいる。
【0041】
発電機10と弁26の各部分は、適したポリマー材料、金属、又は発生器と弁の意図される用途の要件によって決まる他の材料で製作される。材料としては、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。発電機10の構成部分の寸法は、大きさが非常に小さいが、発電機10の用途に応じて変わる。この様な水無しの小型発電機の外側寸法は、長さが1mmから約100mm、幅が約1mmから約100mm、深さが約1mmから約100mmであり、例えば、長さが1mmから約25mm、幅が約1mmから約25mm、深さが約1mmから約25mmである。この様な水無しの小型発電機には、大きさが約0.1mm2から約5,000mm2の範囲にある1つ又は複数の燃料電池14を組み込むことができる。本発明の水無しの小型発電機は、約0.1mm3から約15,625mm3の体積容量を備えることができる。大型発電機は、長さ、幅、深さ共に少なくとも約50cm以上、燃料電池面積が少なくとも5000cm2以上、発電機容積が少なくとも約0.125cm3以上、という大きい寸法を有している。これら寸法は、広い範囲で変えてもよく、限定されるものではない。発電機の構成部品それぞれの寸法も、同様に、発電機を意図したように運転することができるやり方で、当業者が決める通りに変えてもよい。
【0042】
図1と図2に示す実施形態は、それぞれ、設けられている非燃料電池水源を欠いても電気伝導性を示すことが分かっている。図5及び下の実施例1は、本発明の小規模小型発電機についての電力出力対時間のグラフの一例を提供している。本発明の小型発電機は、電力出力約1マイクロワットから約100ミリワット、約1マイクロワットから約1000ミリワット、エネルギー密度約0.1W−時/ccから約10W−時/ccを作り出す。本発明の大型発電機は、電力出力レベル約0.1Wから約100W、エネルギー密度約0.1W−時/ccから約10W−時/ccを作り出す。
【0043】
また、例示している図1と図2の実施形態は、本発明の電力発生装置を示しているが、そのような構造は限定を意図するものではないものと理解されたい。実質的に同じやり方、即ち、アルカリ金属ケイ化物を含んでいる水素−酸素燃料電池で有用レベルの電気を作り出すことができる水無し発電機、を実施する他の様々な設計形式は、本発明の範囲に包含される。
【0044】
本発明を説明するため以下の実施例を供する。
【実施例1】
【0045】
図1に示す発電機に、水素気体の初期噴流を用意して与えた。初期噴流により発生器キャビティから空気を排出し、その後その水素を燃料電池によって消費して、電気と副産物の水とを発生させた。この初期水素噴流の消費に引き続き、水素気体を内部で連続的に発生させ、同様に電気も発生させた。発電器の電力出力を時間経過に亘って測定した。結果を、発電機の電力出力対時間のグラフとして図5に示す。電力出力は、最初50マイクロワットに設定したが、その後、170マイクロワットまで上げ、更に210マククロワットまで上げて、30日間の試験期間中その出力を維持した。試験開始から20日間は、実験室雰囲気の相対湿度は約10パーセントから20パーセントまで変動した。実験室の空気の温度は約23℃であった。水素の初期噴流は、運転開始の初日だけで概ね消費されたと推定される。この無水運転では、必要な水分は、燃料電池自身を通して逆に浸透している。内部の気体圧力は、作動電力レベルに亘って安定しており、カソード水の量は、どの出力レベルでも正確に正しい量であった。装填せねばならなかった液体の水を無くすことができたために、水循環による可能な正味利得としては、システム容積及び重量の縮小幅、費用及び複雑性の縮小幅、及び安全性、がそれぞれ約2倍に増加した。カソード上の空気中の湿気によりPEMの更に良好な水和も実現できる。
【0046】
図8は、燃料容器811と、感圧隔膜813に接続されたメッシュ多孔質プレート又は層、又は格子、又は類似の種類の弁812とを有し、電力を提供するように設計されている燃料電池814用の複数の要素を有している、燃料電池発電機システム810を示している。各要素には、カソード電極816、カソード気体拡散層815、膜817、アノード気体拡散層820、及びアノード電極181が含まれる。本例では、燃料電池は、図8のブロック様構成810の一方の側(図8の上側)に在る。燃料電池アッセンブリ810の下部分には、或る量の水素化アルミニウムリチウム又は他の燃料電池を入れておく燃料容器811が在る。分圧によって雰囲気中の酸素がキャビティ826に引き込まれる。雰囲気中の窒素の分圧は存在しない。雰囲気は乾燥しており、水分を幾らか吸収する。酸素は、複数の要素又は電池814のカソード816側に流れ込む。陽子は、アノード818からカソード16に移動する。分圧を有する水蒸気が在るかもしれないが、蒸気は膜により閉じ込められる。電子がH2から剥がれて陽子となり、これが、アノード電極18からアノード気体拡散層820、膜817、そしてカソード拡散層815を通って、カソード816に進む。電子は電流を構成し、この電流はアノード818からインピーダンス負荷819を通ってカソード816に流れ、そこで、電子、陽子、酸素は水蒸気を形成する。層817は、水蒸気透過性の電解質膜である。カソード側は、酸素透過性で水蒸気不透過性の膜である。燃料電池814の設計には様々な方式がある。
【0047】
弁812は、図8のアッセンブリ810の配向に関して、水が下に落ちるのは規制するが、H2が上に行くのは妨げないないようにするため設置されている。水は、カソードで発生する産物である。複数の要素又は電池814には、水又は蒸気の通過を妨げ、一方で陽子が電池を通って移動することを許容するために、気体不透過層が設けられている。水蒸気が容器811からの燃料に遭遇すると、水素が発生する。
【0048】
図9a、図9b、図9cは、本燃料電池設計における弁の作動を示している。図9aの弁は開いている。隔膜913は、弁912を開き位置に動かし、一方では、弁912を図9cに示す閉じ位置に動かす。弁は、図9bで確認されるように部分的開き位置を有している。弁912は、2つのメッシュ、格子、又はプレート様部品921と922を有している。それらの部品は、ここで説明する動作を行えるのであれば他の形態又は設計でもよい。部品921は、燃料電池アッセンブリ又はシステム810に対して静止している。部品22は、部品921上に又はこれに隣接して配置されている。これらの部品921と922は、複数の開口部923を有するプレートなどである。開口部は、例えば、プレート921と922の両方に、小さな矩形の形状を対称模様に並べた形態をしている。プレート922をプレート921に重ねた状態では、図9aに示すように、物質が一対のプレート921と922を通過できるように開口部923は整列している。プレート922をプレート921に対して左に動かすと、開口部923は、図9bに示すように部分的に閉じた状態になる。プレート922を更に左に動かすと、開口部923は、図9cに示すように、プレート921とプレート922の各部分が互いの開口部に重なった状態で閉じる。
【0049】
プレート922は、感圧性の隔膜913によって動かされる。図9a、図9b、図9cに示すように、電池アッセンブリのプレート922付近の容積926の部分にある物質の圧力が増すと、隔膜913はプレート922付近の室容積926から張り出す。隔膜913の中心924付近にはリンク機構925が取り付けられており、このリンク機構925はプレート922に取り付けられている。圧力によって中心924が(各図左側に)張り出すと、リンク機構925は、同様にプレート922を(各図内の)左側に引っ張り、プレートを通る物質又は気体の流量を圧力の上昇に応じて減少させる。圧力が更に上昇すると、隔膜913は、停止位置まで更に膨らんで、プレート922の開口部以外の領域をプレート921の開口部923に重ならせ、プレート921の開口部以外の領域をプレート922の開口部に重ならせて、プレート921と922を通る物質(例えば、水蒸気)の流れを効果的に止める。圧力が、室926のプレート922付近で低下すると、隔膜913は張り出しの少ない状態に戻り始め、リンク機構925を介してプレート922を押して、プレート921と922両方の開口部923の一部の覆いを解き又は開く。室926内の圧力が更に低下すると、隔膜913は初期の開き位置に戻ってプレート922を動かすので、プレート921と922の開口部923は整列し、どちらのプレートの開口部923ももはや相手のプレートで隠されなくなる。再度、室926の圧力が上昇すると、弁912が閉じ始め、室926の圧力が低下すると、弁912が開き始める。而して、弁912を通る流れの量は、室926の圧力により決まる。この方式では、室926からの弁を通る気体の流れ又は体積を規制することができる。
【0050】
図9a、図9b、図9cで説明した弁機構は、図10に示す円筒形燃料電池装置1030に設計することができる。この機構は、何らかの他の形状を有する燃料電池発電器アッセンブリに設計することもできる。図10では、燃料容積又は供給部は、円筒の中心に在る。電池1014と燃料供給容器又は室1011の間には、円筒状の滑動弁1012が在る。弁は、互いに同心に且つ隣接して配置された2つの円筒状の格子、メッシュ、穴あき材料などのスリーブである。円筒形の弁の部品1021と1022は、互いに滑動して弁1012を開閉する(図9a−9cの部品921と922と同様)。円周滑動弁1012の外側には、単数又は複数の燃料電池1014が在る(図8の燃料電池814と同様)。
【0051】
円筒形の弁1012を作動させるための隔膜1013は、円筒形の室1026の端部に設置されており、弁1012の部品1021又は1022に連結されている。隔膜1013は室1026内の圧力に応答して、圧力が上昇すると、連接されている隔膜1013により、弁1012の部品1021と1022の内の一方が他方に対して動いて弁1012を閉じ、圧力が低下すると、弁1012は少なくとも徐々に開いて、或る蒸気量が1つ又は複数の燃料電池1014に流れるのを監視する。燃料電池アッセンブリ810及び1030のここに例示している実施例と同じ設計及び動作を、他の形状の燃料電池アッセンブリに適用してもよい。
【0052】
燃料電池アッセンブリ810、910、及び1030の室826、926及び1026は密封されており、燃料は、燃料室1011に隣接しているか又はその一部であって所定の位置に在るときには室1026を密封している取り外し可能なカバー1027を有する開口部を通して加えられる。
【0053】
燃料電池1014は、陰極又はカソード16と陽極又はアノード1018の間に配置されている電解質膜1017を有している。水素燃料(即ち、水素気体)は、流れ場プレート1021及び1022を通ってアノード1018に送られ、一方、酸素は燃料電池のカソード1016に送られる。アノード1018で、水素は、正の水素イオン(陽子)と負の電子に分割される。電解質膜は、陽子だけを通してカソード1016に送る。電子は、そうではなくて、電流として外部回路1019を通ってカソード1016に進む。カソード1016で、電子と陽子は酸素と結合して水の分子になる。
【0054】
一旦、燃料電池1014での酸素−水素反応の副産物として水ができると、発生した水は受動的に拡散して燃料電池を通ってキャビティ1026に進み、燃料室又は容器1011に戻る。燃料電池1014のアノード1018側のキャビティ1026内には、燃料容器1011内の燃料物質の吸水性のせいで比較的湿度の低い領域が存在する。而して、カソード1016の保水性により、水分濃度勾配と気体圧力差が発生し、それにより水の分子が拡散して、燃料電池1014を通ってキャビティ1026へ、そして燃料室1012へと水蒸気の形態で戻る。この水蒸気が、容器1011の燃料と反応して、水素気体が発生する。発生した水素気体は、その後、キャビティ1026を通って燃料電池アノード1018に進み、そこで酸素と反応して再度水の分子を発生させる。この循環は、室1011内の燃料が消費されてしまうまで続く。
【0055】
燃料電池発電機システム1030は、燃料電池1014から容器1011までの水蒸気の通過を規制すると共に、燃料容器1011からの水素気体の発生を規制するために、弁1012を使用している。弁1012は、キャビティ1026の燃料容器1011と燃料電池1014の間に配置されている。弁1012は、キャビティ1026内の気体圧力により制御される空圧弁であり、空気圧により調整され、水蒸気の燃料容器1011への運搬を制御する。弁1012は、上記説明文中の他の箇所に記載したように、開口部付きの滑動可能なプレート1022を同様の開口部1023を有する別のプレート1021に隣接して配置し、弁1012の開閉に際して互いに重なり合わせるようになっている。弁1012が閉じ位置に在るときには、水蒸気が燃料容器1011に到達できないようにしている。これに対し、弁1012が開き位置に在るときには、水蒸気が燃料容器1011に到達できるようにして、発生した水素気体が燃料電池1014に到達できるようにする。この説明は単一の燃料電池1014に関するものであるが、複数の電池にも当てはまるものと解釈されたい。
【0056】
弁1012の作動は、隔膜1013に働く内部圧力により制御される。キャビティ1026の内部気体圧力が、水素気体の発生により上昇すると、隔膜1013は外向きに僅かに曲がり又は押し出される。これにより、リンク機構1025は、滑動可能な弁プレート1022を引っ張り、プレート1021に対して動かして弁1012を閉じ、水蒸気がそれ以上燃料室1011に流入しないようにする。弁1012が閉じると、水素の発生が止まる。これは、内部気体圧力が更に上昇するのを防ぐ。燃料電池1014などにより水素が消費されると、内部気体圧力は低下し、膜1013がより弛緩した状態に復帰し、弁を開く。滑動弁1012のプレート1022は、全開位置から全閉位置まで約1ミリメートル動く。弁1012を完全に閉じるのに、膜又は隔膜1013には、約4psi(27kPa)から6psi(42kPa)の圧力を掛ける必要がある。而して、水素気体は、消費される速度で自動的に生成されることになる。
【0057】
図11は、或る実施形態による、アルカリ金属ケイ化物燃料を使用している燃料電池システム1100の概略図を示している。アルカリ金属ケイ化物燃料1108は、可動弁プレート1118(拡大断面図に図示)に接触している固定弁プレート1110により、システム1100で取り囲まれている。可動弁プレート1118は、燃料1108を、アノード層1112、燃料電池積層1114、及びカノード層1116に放出することができるように操作される。可動弁プレート1118は、システム1100内の水の管理も支援する。燃料電池システム1100は、アノード出力電極1106と、カソード出力電極1104を更に含んでいる。可動弁プレート1118の動きを制御するために可撓隔膜1102が使用されている。可撓隔膜1102は、燃料1108が封入されているキャビティの内部気体圧力に応答する。
【0058】
図12は、例示の実施形態による発電機を使用する方法1200を説明している。アルカリ金属ケイ化物1202を、水素1206を発生させるのに十分な水又は水蒸気に触れさせ又は反応させる1204。次いで、電気1210と副産物の水1212と熱1214を発生させるために、水素1206を1つ又は複数の燃料電池に接触させる1208。発生した電気1210は、外部装置によって蓄電され又は使用される。副産物の水1212と熱1214は、廃棄処分されるか以降の処理に再利用される。
【0059】
図13は、例示の実施形態による発電機を製作する方法1300を説明している。1つ又は複数の燃料電池を作る1302。1つ又は複数の燃料電池に接触する燃料貯蔵区域を形成する1304。燃料貯蔵区域内にアルカリ金属ケイ化物燃料を配置する1306。
【0060】
以上、本発明を多くの実施形態に関連付けながら具体的に示し説明してきたが、当業者には容易に理解頂けるように、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正を加えることができる。従って、特許請求の範囲は、ここで開示している実施形態、これまで論じてきた実施形態の代替例、及びそれらの等価物全てを対象として含むものと解釈されたい。
【0061】
読み手が技術的開示内容の性質と要旨を迅速に解明できるようにするために、37C.F.R.第1.72(b)条に則り、要約書を提示している。要約書は、特許請求の範囲による範囲と意味を解釈し又は制限するために使用されるものではないとの了解の下に提出している。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】或る実施形態による、発生器の吸気口に一体化された酸素透過性で水蒸気不透過性の膜の無い、本発明の発電機の断面概略図を示している。
【図2】或る実施形態による、発生器の吸気口に一体化された酸素透過性で水蒸気不透過性の膜を有する、本発明の発電機の断面概略図である。
【図3】図3Aは、図1に示す発電機の角部の断面概略図であり、或る実施形態による、吸気口と燃料電池カソードの間の保水帯域を示す図である。
【0063】
図3Bは、図2に示す発電機の角部の断面概略図であり、或る実施形態による、吸気口と燃料電池カソードの間の保水帯域を示す図である。
【図4】或る実施形態による、燃料電池の概略図を示している。
【図5】或る実施形態による、本発明の発電機の電力出力対時間のグラフを示している。
【図6】或る実施形態による、或る場所から別の場所への水蒸気のモル流束の概略図を示している。
【図7】或る実施形態による、複数の燃料電池を内蔵した本発明の円筒形発電機の上面図を示している。
【図8】或る実施形態による、燃料電池の側部断面図を示している。
【図9】図9a、図9b、図9cは、或る実施形態による、燃料電池に使用されている格子様弁の3通りの位置を示している。
【図10】或る実施形態による、図9a、図9b、図9cの弁を使用している円筒形状の燃料電池を示している。
【図11】或る実施形態による、アルカリ金属ケイ化燃料を使用している燃料電池システムの概略図を示している。
【図12】或る実施形態による、発電機を使用する方法を示している。
【図13】或る実施形態による、発電機を作る方法を示している。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ケイ化物を燃料とする水素発生器及び発電機に関する。より具体的には、本発明の実施形態は、アルカリ金属ケイ化物を燃料とする発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は非仮特許出願であり、35U.S.C.第119(e)条に基づき、2006年4月10日出願の米国仮特許出願第60/790,681号に対する優先権を主張し、同出願を参考文献としてここに援用する。
【0003】
PEM燃料電池の様な燃料電池は、水素と水を化合させて水にするという単純な化学反応を利用して、その過程で電流を作り出している。従来より、水素は、水素化アルミニウムリチウムの様な燃料と水蒸気の間の化学反応により作り出されている。アノードでは、水素分子が白金触媒によりイオン化し電子を放出する。陽子交換膜(PEM)は、陽子は通過させるが電子は通さない。その結果、水素イオンは、PRMを通過してカソードに到るが、一方、電子は外部回路を通って流れる。電子は、外部回路を通って流れる際に、電気モーター、電球、又は電子回路の様な電気装置に電力を供給することで有用な仕事を行うことになる。カソードで、電子と水素イオンは酸素と化合して水になる。この反応の副産物は水と熱である。
【0004】
発電機で現在使用されている金属水素化物の様な燃料は、エネルギー密度が低い。燃料として使用される純粋なアルカリ金属類は、理論的には燃料のエネルギー密度を改善するが、自然発火性があり、取り扱い及び貯蔵が難しい。従来の燃料は、大容量の及び/又は手が掛かる貯蔵容器を必要とし、このことも多くの用途で安全上の懸念となっている。
【特許文献1】米国仮特許出願第60/790,681号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、1つ又は複数の燃料電池を備えている発電機及び燃料に関し、この燃料はアルカリ金属ケイ化物を含んでいる。実施形態は、カソード集電器と、このカソード集電器に電気的に接続されたカソードと、燃料に接触しているアノードと、を備えている燃料電池にも関する。燃料はアルカリ金属ケイ化物を含んでいる。燃料電池は、アノードに電気的に接続されたアノード集電器と、カソードとアノードの両方と接触しながら両者を分離している電解質膜も含んでいる。
【0006】
実施形態は、アルカリ金属ケイ化物を取り囲んでいる燃料キャビティと、キャビティ壁の少なくとも一部を形成している膜と、を備えている水素発生器にも関する。アルカリ金属ケイ化物が膜を介して水に接触すると、水素が発生する。発電機を製造する方法も説明している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下の説明では、説明の一部を構成する添付図面を参照するが、各図には実施される特定の実施形態を例示的に示している。それら実施形態は、当業者が本発明を実施できるようにするほどに詳しく説明しているが、他の実施形態も活用することができ、本発明の範囲から逸脱することなく、構造的、論理的、及び電気的な変更を加えることができるものと理解されたい。よって、以下の説明は、限定的な意味に解釈されるべきではなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲の内容によって定義される。
【0008】
燃料電池を使用している発電機に用いられる燃料のエネルギー密度を上げるため、アルカリ金属ケイ化物を水又は水蒸気と反応させて水素を発生させる。アルカリ金属ケイ化物の中には、自然発火性を持たず、純粋なアルカリ金属に比べて使用や取り扱いが安全に行えるものもある。
【0009】
燃料は、1つ又はそれ以上のアルカリ金属ケイ化物を含んでおり、例えば水素と混ぜ合わせられる。アルカリ金属ケイ化物は、アルカリ金属とシリコンを含んでいる化合物である。アルカリ金属の例として、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)が挙げられる。1つ又はそれ以上のシリコン原子と結合した1つ又はそれ以上のアルカリ金属原子を保有している結合としては、例えば、共有結合、イオン結合、又は金属引力が挙げられる。アルカリ金属ケイ化物の一例にNaxSiyがあり、ここに、xとyは、安定した錯体を形成するNa及びSi原子の可能な組み合わせを表す整数である。他の例としては、シリコンとのNaK合金がある。化合物の特定の例としては、ニューヨーク州10021、530E.76番街、9E号室、有限責任会社 SiGNa Chemistryから購入できるStage II Na-SGのようなM−SG粉末がある。アルカリ金属ケイ化物は、例えば、粉末又はゲルの形態をしている。例示した化合物は、空気中で発火又は酸化することはないので、開放環境で容易に取り扱うことができる。更に、それら化合物は、相当な時間が経過しても劣化しない。アルカリ金属ケイ化物は、水又は水蒸気と素早く効率的に反応して水素気体を発生する。また、水素を発生させるための触媒は一切不要である。アルカリ金属ケイ化物燃料は、ここに開示している実施形態の何れでも使用することができる。
【0010】
発電機は、水蒸気とアルカリ金属ケイ化物燃料の反応を通して内部で水素気体を発生させ、この水素気体が燃料電池で周囲の空気中の酸素と反応して電気エネルギーを発生させる。水素と酸素の反応からは、燃料電池の副産物として水の分子も作り出される。この発生した水は燃料電池から水蒸気として受動的に拡散され、燃料室又は燃料物質を入れたキャビティに入り、そこで燃料物質と反応して水素気体を発生させる。発生した電気エネルギーは、発電機の大きさにもよるが、発電機に接続されている大型又は小型の装置へ、電力を供給するのに使用される。本発明の実施形態の発電機は、無線センサー、携帯電話、又は発電機の1つ又は複数の燃料電池のアノードとカソードに電気的に接続されている他の手持ち式電子機器の様な小型の装置に電力を供給するのにとりわけ有用である。
【0011】
ケイ化物燃料は、発電機から独立した又はこれと一体化された水素発生器にも使用される。水素発生器の一例として、少なくとも一部が透過性の膜を含んでいるキャビティに、ケイ化物燃料を封入しているものがある。膜は、例えば、水と水素に対し透過性である。雰囲気中の水は膜を透過し吸湿性のケイ化物と反応して水素を発生させる。この過程は、規制しなくともよいし、例えば弁で圧力調整してもよい。水素が、1つ又は複数の燃料電池に接触すると、これで、例えば、発電機が完成する。
【0012】
図1と図2は、本発明の方法を実施するための代わりの発電機装置の断面図を示している。図1と図2に示すように、電力発生器10は、ハウジング36、ハウジング36内に取り付けられた少なくとも1つの燃料電池14、ハウジング36に取り付けられ燃料物質44を貯蔵するための少なくとも1つの燃料室12、ハウジング36内で少なくとも1つの燃料電池14から燃料室12に伸張しているキャビティ24、を含んでいる。キャビティ24は、燃料室12から燃料電池14への水素気体の流れを許容し、燃料電池14から燃料室12への水蒸気の流れを許容する。燃料電池14では、水素気体と空気中の酸素気体の反応により、電気と燃料電池水が発生する。雰囲気中の酸素は、少なくとも1つの吸気口20を通ってハウジング36に入る。酸素気体は、その後、燃料電池14まで進み、そこで水素気体と反応し、電気と水分子を発生させる。ここで使用されている燃料電池の種類は陽子交換膜(PEM)燃料電池と呼ばれ、この膜は、高分子電解質膜としても知られている。
【0013】
図4に示すように、代表的なPEM燃料電池は、電解質膜42の、一方の側に負に帯電した電極又はカソード16を、他方の側に正に帯電した電極又はアノード18を配した構造になっている。代表的な水素−酸素式PEM燃料電池の挙動では、水素燃料(例えば、水素気体)は流れ場プレートを通ってアノードまで運ばれ、一方、酸素は燃料電池のカソードに運ばれる。アノードでは、水素は、正の水素イオン(陽子)と負に帯電した電子とに分割される。電解質膜は、正に帯電したイオンのみを通過させてカソードに送る。負に帯電した電子は、そうではなくて外部回路に沿ってカソードに進み、電流を作り出す。カソードでは、電子と正に帯電した水素イオンが酸素と化合し、水の分子が形成される。
【0014】
発生器の内部では、燃料電池のアノード18側に水素気体の初期噴流が流され、発電機内から残留空気が取り除かれる。この水素気体の初期噴流は、二つの目的に供され、燃料電池で雰囲気中の酸素と反応して、或る初期量の電気エネルギーを生成すると共に、燃料電池カソード16で或る初期量の燃料電池水を生成する働きをする。この初期量の燃料電池水は、その後、再利用され、燃料物質44と反応する。代わりに、本発明のこの過程は、発電機外部の雰囲気中の水分からの水の分子を、吸気口20を通して発電機内に浸透させることにより開始してもよい。燃料電池により生成される燃料電池水の量よりも実質的に少ない量の初期の非燃料電池水の量を発生器に添加して、燃料物質44と反応させ、水素気体の生成を開始させることもできる。このような開始水は、例えば、燃料室12内の入口46のような開口部を通して、又は吸気口20の様な別の適した手段を介して発生器に添加してもよい。しかしながら、本発明の過程及び装置は、外からの水の供給無しに稼動するように設計されており、即ち、システムは、燃料電池によって作り出される水と、発電機の外部雰囲気中に存在する水の分子を除けば、水無し式である。水素燃料物質と反応させる水を提供するための、水室又は貯水部の様な水供給部は、組み込まれ又は接続されていない。その結果、この発電機では、従来のシステムと比較して、エネルギー密度及び比エネルギーが著しく改善された。而して、本発電機では、水素−酸素反応により、生成される電力に対応する必要な水を正確に作り出すことができ、化学量論的量の再循環水及び燃料が使用されることから、連続的自己制御過程が可能になった。
【0015】
この過程は、能動的制御式の弁やポンプ無しに、受動的に実行される。より具体的には、一旦、燃料電池14で酸素−水素反応の副産物として水が作られると、発生した水は燃料電池14を通って受動的に拡散しキャビティ24に入り燃料室12に至る。この受動拡散は、一部には1つ又は複数の保水帯域22の存在により、また一部にはキャビティ24内部の湿度が低いことにより、可能になる。保水帯域22は、図3Aと図3Bに強調して示しており、図面には、図1と図2に示す発電機の角部の図を載せている。ここでは、図3Aと図3Bに示すように、保水帯域22は、吸気口20から各燃料電池カソード16まで伸張する流路を含んでいる。保水帯域22は、燃料電池水を生成する各燃料電池14に存在している。保水帯域22の幾何学的形状により、燃料電池で生成された水の分子の内、吸気口から出て行く拡散水損失は抑制されるので、燃料電池カソード16では水蒸気を高濃度に維持することができる。水の分子を雰囲気中に失ってしまうのではなく、保水帯域22は、生成された水の分子をカソード16に蓄積させ、カソード16と吸気口20の間に湿度の高い領域を作り出す。このモル流量について、図6を参照しながら以下の数式により更に具体的に説明する。
【0016】
【数1】
【0017】
カソード16から雰囲気中への水蒸気の運搬、及び雰囲気中からカソード16への酸素の運搬は、両方とも、拡散制御過程である。Aのモル流束又はモル流量は、JAであり、ここに、Aは、望ましい種、即ち水か酸素の何れかである。水又は酸素のモル流束は、拡散率DABと、点1と点2の間の分圧差(PA1−PA2)と、気体定数Rと、ケルビン温度Tと、点1と点2の間の距離(Z1−Z2)の関数である。また、流束は、単位
【0018】
【数2】
【0019】
(m2秒当たりAのキログラム)で、面積当たりに定義される。
拡散係数は、濃度勾配に対する種の流束の間の比例定数である。拡散係数DABは、種B中の種Aの拡散係数を指す。本例では、これは、空気中の水蒸気の拡散係数、又は空気中の酸素の拡散係数を指す。拡散係数が大きいほど流束値は大きく、拡散係数が小さければ流束値は小さい。空気中の酸素の拡散係数は、室温、通常の室湿度で約0.21cm2/秒であり、一方、空気中の水蒸気の拡散係数は、室温、室湿度で0.24cm2/秒である。
【0020】
分圧は、気体の混合物の全圧に占める、混合物内の一組成分による圧力の部分である。分圧差が大きいと、当該種の流束は相対的に大きくなり、一方、分圧差が小さいと、相対的に小さい流束になる。保水帯域は、分圧差を小さく、例えば、雰囲気中の酸素分圧を10%から20%程度にして、所望の電力レベルに必要な酸素流束が得られるように設計されている。
【0021】
気体定数は、ボルツマン定数とアボガドロ数の積である。ケルビン温度は、対象の種の流束に影響する。温度が高ければ流束は小さくなり、一方、温度が低いと流束が大きくなる傾向にある。而して、気体の拡散、及びその延長線上にある分圧差は、流路の幾何学的形状を調整することにより制御することができる。
【0022】
図6に示すように、点1と点2の間の気体の拡散を制御するには、二点を分離している流路の幾何学的形状を変えることができる。例えば、点1と点2を分離している流路の面積が大きくなると、点1と点2の間の拡散は増加し、反対に、面積が小さくなると、拡散は低下する。点1と点2の間の距離については逆で、点1と点2の間の距離が長くなると拡散は低下し、点1と点2の間の距離が短くなると吸気口20を出る拡散が増加する。
【0023】
図1と図2に示す本発明の発電機は、雰囲気中の酸素圧力を少し、例えば10%から20%しか降下させずに、雰囲気中から十分な酸素を、吸気口20を通してカソード16に拡散できるよう設計されている。発電機は、水素透過損失が高いので、高圧で運転した場合は寿命が短くなる。
【0024】
水素と酸素を水に変換する化学反応(2H2+O2→2H2O)では、酸素の分子を1モル消費する毎に水が2モル作られる。また、空気中の水蒸気の拡散率と空気中の酸素の拡散率は同じである。よって、平衡を維持するには、水蒸気の分圧差は、酸素の分圧差の凡そ2倍でなくてはならない。従って、上記比率を有する本発明の発電機では、生成された水の分子を発生器の外の雰囲気中に失うのではなくて、湿潤環境が維持される。
【0025】
キャビティ24内の、燃料電池14のアノード18側には、燃料物質44の吸水性、吸湿性により、比較的湿度の低い領域が存在する。従って、カソード16での水の生成と保持により、水分濃度勾配と気体圧力差が発生し、これにより水の分子が拡散して燃料電池14を通ってキャビティ24内に戻り、水蒸気の形態で燃料室12に至る。この水蒸気は、次に燃料物質44と反応して水素気体を作り出す。発生した水素気体は、次にキャビティ24を通って燃料電池アノード18に進み、そこで酸素と反応し、再度水の分子を作り出す。この循環は、全ての燃料物質44が消費されるまで、随意的に継続される。
【0026】
発電機の作動中は、拡散してキャビティ内に戻る生成水蒸気の量の方が吸気口から失われるものよりも多い。更に、燃料電池の出力は、酸素及び水素反応物質の燃料電池への流量、つまり燃料室への水蒸気の流量に直接依存している。従って、燃料電池出力は、保水帯域の面積対長さの比に比例する。本発明の或る実施形態では、単位出力当たりの帯域面積対帯域長さの比は、燃料電池1個の場合、電力出力約0.01cm/mWから約0.05cm/mWである。複数の燃料電池を組み込んでいる場合、単位出力当たりの帯域面積対帯域長さのこの比は、反応物質を分け合う燃料電池の個数で割られる。
【0027】
保水帯域22の幾何学的形状が、燃料電池14に十分な酸素を拡散させるのに制約を掛けすぎる場合には、発生器は低い出力で作動することになる。具体的には、帯域面積対長さの比が面積0.05cm2/長さ1cmより大きい場合は、過剰な水蒸気は吸気口から拡散し、帯域面積対長さの比が面積0.01cm2/長さ1cmよりも小さい場合は、高効率で作動するのに十分な量の酸素が燃料電池に到達することはできない。燃料室から燃料電池への水素気体の流れを許容し、燃料電池から燃料室への水蒸気の流れを許容する、ハウジング内の燃料電池から燃料室まで伸張するキャビティの幾何学的形状についても同じことが当てはまる。
【0028】
別の実施形態では、発電機10は、燃料室12から燃料電池14への水素気体の流を規制するため、及び燃料電池14から燃料室12への水蒸気の通過を規制するため、少なくとも1つの弁26を更に含んでいる。図1と図2に示すように、弁26は、燃料室12と燃料電池14の間のキャビティ24内に配置されている。本発明の或る実施形態では、弁26は、前記キャビティ24内の気体圧力により制御される空圧弁を含んでおり、水蒸気の燃料室12への伝導性を空圧的に調整する。弁26は、周囲が発電機ハウジング36に支持部50で固定された空圧作動式可撓隔膜30と、隔膜30に対向して配置された弁円板28と、弁円板28と隔膜30を繋いでいるロッドコネクタ、を含んでいる。弁26は、弁円板28がシール38と接触したいるときは閉じ位置にあり、水蒸気が燃料室12に到達しないようにしている。代わりに、弁は、弁円板がシール38から離れているときは開き位置にあり、水蒸気が燃料室12に到達し、発生した水素気体が燃料電池14に到達できるようにしている。シール38は、ハウジング36の一部を含んでいる。支持部50も、ハウジング36の一部を含んでいる。図1と図2に示すように、単数又は複数の燃料電池14は、支持部50によりハウジングの内部に取り付けられている。
【0029】
弁の構成部品の寸法は、非常に小さいが、弁の具体的な用途に応じて変動する。隔膜の厚さと直径は、所望の電力出力次第で或る一定の範囲内になければならない。本発明の或る実施形態では、隔膜30は、直径が約1cmから3cm、約1cmから2cmの円形の薄いプレートを含んでいる。弁円板28は、直径が約0.2cmから約1cm、約0.2cmから約0.5cmである。本発明の或る実施形態では、ロッドコネクタは、スクリュー又はボルトを含んでいるが、隔膜30を弁円板28に接続する手段としては、弁を開き位置と閉じ位置の間で変えることができるのであれば他のどの様な手段でも適している。
【0030】
弁の動作は、隔膜30に作用する内部気体圧力によって制御される。装置の内部気体圧力は、水素気体の発生により上昇するので、隔膜30は、外向きに僅かに曲り又は押し出される。これにより、コネクタは、弁円板28を引いてシール38に押し付け、弁を閉じて水蒸気がそれ以上燃料室12に流入しないようにする。弁が閉じると、水素の発生が止む。これにより、内部気体圧力が更に上昇しないようになる。燃料電池14などにより水素が消費されると、内部気体圧力は低下し、弁円板28とシール38の係合が解かれ、弁が開く。而して、水素気体は、それが消費される速度で自動的に生成されることになる。
【0031】
本発明の或る実施形態では、発電機10は、空圧弁26を介して、一定の圧力を維持することにより作動する。発電機10は、低い電力出力では雰囲気圧力を下げ、最大電力出力では雰囲気圧力を理論的に無制限に上げて、作動させることができる。本発明の或る実施形態では、閉じ位置のとき、装置の内部H2圧力は、約0kPaから約1000kPaの範囲にある。燃料電池に使用される水素気体が無くなると弁は完全に閉じ、水素気体の消費速度に見合うのに必要な量だけ開く。本発明の或る実施形態では、発電機の内部圧力は、何時も約100kPaに維持されており、圧力が約10kPa未満に下がると、弁は僅かに開き、内部圧力が約500kPa以上に上昇すると、弁が閉じる仕組みである。作動圧力は、携帯式電子装置や無線センサーのような小型の機器では、約0.5atm(約50kPa)から約2atm(約202kPa)の範囲にある。
【0032】
一般に、発電機10は、空圧弁6を使用して、雰囲気よりも数psiだけ高い一定の圧力を維持することにより作動する。発生器10は、低い電力出力では雰囲気圧力を下げ、最大電力出力では雰囲気圧力を理論的に無制限に上げて作動する。
【0033】
電力発生器10は、使用時、例えば、約−40℃から約85℃、約−20℃から約50℃、約0℃から約50℃、約20℃から約50℃の範囲の運転温度に維持される。
本発明で使用する「水蒸気」という用語は、蒸気を含まない。「水蒸気」も「蒸気」も共に水の一形態ではあるが、特性と用途は非常に異なる。例えば、機関車は蒸気で運転されるが、本発明でのような湿潤空気中に存在する水蒸気では作動しない。「水蒸気」はそれ自体単独では、氷を含めあらゆる温度の水の形態に亘って自然に形成される、又は周囲の空気中に自然に存在する、個々の水の分子の気体である。水蒸気は分圧が低く、従って、水蒸気になる水が熱せられない限り、含有される水の分子は比較的少量である。一方、「蒸気」は、水を加熱して沸騰させることにより発生する小さくて熱い水滴で構成されている。蒸気は、15℃の水蒸気の約100倍以上の水分子を含んでおり、必然的に大きな力と速度で膨張し、大量の水を沸騰させて、水蒸気として輸送することができる。水蒸気は、日常の空気中に存在しており、含有される水の分子の個数は、蒸気や液体の水よりも遙かに少なく、自然な拡散では非常にゆっくりと移動する。水蒸気の形態では、極少量の水しか輸送されない。これを説明すると、一滴の水が室温で気化するのに通常1時間かかるが、一方、やかん一杯の水は約20分で沸騰して蒸気になる。また、蒸気を動力源とする発電機は、蒸気を発生させる水の供給又は水源を必要とする。対照的に、本発明は、そのような水源を無くすことにより、関連技術に改良を加えた。従って、本発明の装置と過程は、蒸気を使用して高い作動温度で機能するのではなく、水蒸気を使用して低い作動温度で機能するように設計されている。
【0034】
図1と図2に示すように、発電機10は、吸気口20と一体化され、雰囲気中の酸素と雰囲気中の水の分子の発電機内への拡散を規制する絞り32を更に備えている。絞りは、カソード16で発生する水蒸気を外向きに拡散させる際のインピーダンスによる、燃料電池カソード16での湿度の上昇を支援する働きもする。この湿度の上昇は、燃料電池の作動を改善する。絞りは、雰囲気中の酸素気体には実質的に透過性であるが水蒸気には実質的に不透過性である疎水性の膜を含んでおり、この膜は燃料電池水が雰囲気に流れ込むのを実質的に妨害する。望ましい特性を有するこの酸素透過性で水蒸気不透過性の膜に適した材料としては、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)の様な材料を含有しているフルオロポリマー、ペルフルオロアルコキシ、及び、配向ポリプロピレン(OPP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及び環状オレフィンコポリマー(COC)の様な材料を含有している非フルオロポリマーが挙げられる。酸素透過性で水蒸気不透過性の膜材は、例えば、フッ素化エチレンプロピレンから製造される。また、膜単独ではカソードに対する十分な酸素透過性を許容しない実施形態もある。従って、絞り32に小さい開口部48(図2参照)を設けて、雰囲気中の酸素と雰囲気中の水の分子を余分にキャビティに流入させて、単数又は複数の燃料電池カソードに拡散させるようにしている。しかしながら、この開口部は、同時に、水蒸気の一部を発電機10から外に拡散させてしまうことにもなる。要求される開口部の大きさは、出力レベルと、拡散経路長と、所望の分圧降下の関数である。この開口部の大きさは非常に小さく、膜全体の面積の約0.001%から約1%を含んでいる。
【0035】
燃料室12内の実質的に非液体の物質には、粉末、顆粒、又はペレットの形態をした物質が含まれ、アルカリ金属ケイ化物である。アルカリ金属ケイ化物は、アルカリ金属又はシリコンを含んでいる化合物である。アルカリ金属の例として、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びフランシウム(Fr)がある。1つ又はそれ以上のシリコン原子と結合した1つ又はそれ以上のアルカリ金属原子を保有している結合としては、例えば、共有結合、イオン結合、又は金属引力が挙げられる。アルカリ金属ケイ化物の一例にNaxSiyがあり、ここに、xとyは、安定した錯体を形成するNa及びSi原子の可能な組み合わせを表す整数である。他の例としては、シリコンとのNaK合金がある。化合物の特定の例としては、ニューヨーク州10021、530E.76番街、9E号室、有限責任会社 SiGNa Chemistryから購入できるStage II Na-SGのようなM−SG粉末がある。アルカリ金属ケイ化物は、例えば、粉末又はゲルの形態をしている。例示した化合物は、空気中で発火又は酸化することはないので、開放環境で容易に取り扱うことができる。更に、それら化合物は、相当な時間が経過しても劣化しない。アルカリ金属ケイ化物は、水又は水蒸気と素早く効率的に反応して水素気体を発生する。また、水素を発生させるための触媒は一切不要である。アルカリ金属ケイ化物燃料は、ここに開示している実施形態の何れでも使用することができる。
【0036】
図1及び図2に示すように、燃料室12は、多孔質気相膜34により境界が画定されている。ハウジング36に取り付けられ燃料室12と並列に配置されているこの膜34は、水蒸気に対する透過性を有していて、水蒸気が燃料室12に浸透し、燃料物質と反応して水素気体を発生することができるようになっていなければならない。膜34は、水素気体に対しても透過性を有していて、発生した水素気体がキャビティ24に入り燃料電池14に戻ることができるようになっていなければならない。このような二重の特性を有するこの気相膜34に適した材料としては、排他的にではなく、フルオロポリマーを含む多孔質ポリマー類があり、発泡Teflon(登録商標)の様な発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)積層材を挙げることができる。ePTFE積層物の例としては、デラウェア州のW.L.Gore&Associates,Incにより製造されているGORETEX(登録商標)、及びデラウェア州のBHA technologiesにより製造されているeVENT(登録商標)が挙げられる。
【0037】
図2は、具体的に、図1の発生器と比較して表面積を広くした吸気口を有する本発明の代わりの発電機の断面概略図である。この実施形態でも、同様に、雰囲気中の酸素気体は実質的に透過させるが水蒸気は透過させない疎水性膜32が、吸気口20に配置されている。しかしながら、雰囲気中の自然な空気湿気から水の分子を取り込むことができるように、小さい開口部48(例えば、約0.008cm2)の孔が膜32に切り込まれている。この開口部48は、余分な酸素が燃料電池カソードまで拡散できるようにもしている。本発明の或る実施形態では、本発明の発電機は、少なくとも約5%の相対湿度を有する環境に置かれた場合に、最高の機能を発揮することができ、湿度が上がるに伴って性能が向上する。
【0038】
図2の実施形態は、空圧弁26も含んでおり、この弁は、メッシュ隔膜30と、弁26のメッシュ隔膜30に並列して配置された透水性で水素不透過性の膜40と、を含んでいる。メッシュ隔膜30は、水蒸気には透過性であり、ポリエチレンテレフタレートの様なポリマー金属又はステンレス鋼のような金属で形成されている。この透水膜40に適した透水性材料には、ペルフルオロスルホネート・イオノマーの様な過フッ素化ポリマーが含まれている。エポキシド及びクロロプレンゴムも適している。透水膜としては、デラウェア州のEI DuPont de Nemours&Co.から登録商標Nafionの名称で市販されているペルフルオロスルホネート・イオノマーが挙げられる。Nafionは、優れた安定性を実現するフッ素化主鎖と、高いイオン伝導性を支援するスルホン酸側鎖を有していることから、利用されている。透水性で水素不透過性の膜40は、水蒸気が、電解質膜42を通ることなく、燃料室12へ拡散できるようにする。これにより、水蒸気が燃料室に浸透するための経路の面積が広くなり、燃料電池14が、燃料電池だけで水を回収する場合よりも高い電流密度で運転できるようになる。同様な材料で、少なくとも1つの燃料電池14の電解質膜42は形成されている。
【0039】
従って、図2から分かるように、この発電機10は、燃料電池で発生した水の分子を、燃料電池カソード16から燃料室12まで輸送するための二重の大通りを提供している。具体的には、図2の実施形態では、水素気体と雰囲気中の酸素が燃料電池14で反応した結果、燃料電池カソード16で燃料電池水が作られ、これにより電気が発生する。この発生した燃料電池水は保水帯域22に保持され、燃料電池14を通って拡散して戻るか、又は、保水帯域22から拡散してメッシュ隔膜30と透水膜40を通って浸透するか、の何れかによりキャビティ24に再度進入する。
【0040】
図7は、複数の燃料電池を有する本発明の円筒形の発電機10の上面図である。図7に示すように、複数の燃料電池14は、発電機10の円周に沿って配置されている。本発明の発電機10は、燃料物質44を随意的に補給するための入口46も含んでいる。代わりに、電池同様に、燃料物質44が消費されてしまったら発電機を廃棄処分にしてもよい。発電機10の組み立てられた構成部分のそれぞれは、ポリエチレンテレフタレート(図示せず)の様な適した材料で形成されたチューブの様な適した中空構造に更に封入されるが、この囲いには、上面及び/又は底面に適した蓋(図示せず)を設け、この蓋は、取り外し可能とし、囲いと同じ材料で形成してもよいし、異なる材料で形成してもよい。発電機10は、装置を発電機10に電気的に接続する少なくとも1つの電気コネクタを更に含んでいる。図1に示すように、装置52(概略図示、縮尺不整合)は、電気コネクタ54と56を通して発電機10に電気的に接続されており、これら電気コネクタ54と56は、燃料電池のカソードとアノードに接続されている。電気コネクタ54と56は、図7にも示している。複数の燃料電池を組み込んでいる各実施形態では、複数の燃料電池は直列に接続され、発生器ハウジング36から突き出ている一組の電気コネクタ54と56に接続されている。本発明の或る実施形態では、発電機10は相互接続された8個の燃料電池を含んでいる。
【0041】
発電機10と弁26の各部分は、適したポリマー材料、金属、又は発生器と弁の意図される用途の要件によって決まる他の材料で製作される。材料としては、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。発電機10の構成部分の寸法は、大きさが非常に小さいが、発電機10の用途に応じて変わる。この様な水無しの小型発電機の外側寸法は、長さが1mmから約100mm、幅が約1mmから約100mm、深さが約1mmから約100mmであり、例えば、長さが1mmから約25mm、幅が約1mmから約25mm、深さが約1mmから約25mmである。この様な水無しの小型発電機には、大きさが約0.1mm2から約5,000mm2の範囲にある1つ又は複数の燃料電池14を組み込むことができる。本発明の水無しの小型発電機は、約0.1mm3から約15,625mm3の体積容量を備えることができる。大型発電機は、長さ、幅、深さ共に少なくとも約50cm以上、燃料電池面積が少なくとも5000cm2以上、発電機容積が少なくとも約0.125cm3以上、という大きい寸法を有している。これら寸法は、広い範囲で変えてもよく、限定されるものではない。発電機の構成部品それぞれの寸法も、同様に、発電機を意図したように運転することができるやり方で、当業者が決める通りに変えてもよい。
【0042】
図1と図2に示す実施形態は、それぞれ、設けられている非燃料電池水源を欠いても電気伝導性を示すことが分かっている。図5及び下の実施例1は、本発明の小規模小型発電機についての電力出力対時間のグラフの一例を提供している。本発明の小型発電機は、電力出力約1マイクロワットから約100ミリワット、約1マイクロワットから約1000ミリワット、エネルギー密度約0.1W−時/ccから約10W−時/ccを作り出す。本発明の大型発電機は、電力出力レベル約0.1Wから約100W、エネルギー密度約0.1W−時/ccから約10W−時/ccを作り出す。
【0043】
また、例示している図1と図2の実施形態は、本発明の電力発生装置を示しているが、そのような構造は限定を意図するものではないものと理解されたい。実質的に同じやり方、即ち、アルカリ金属ケイ化物を含んでいる水素−酸素燃料電池で有用レベルの電気を作り出すことができる水無し発電機、を実施する他の様々な設計形式は、本発明の範囲に包含される。
【0044】
本発明を説明するため以下の実施例を供する。
【実施例1】
【0045】
図1に示す発電機に、水素気体の初期噴流を用意して与えた。初期噴流により発生器キャビティから空気を排出し、その後その水素を燃料電池によって消費して、電気と副産物の水とを発生させた。この初期水素噴流の消費に引き続き、水素気体を内部で連続的に発生させ、同様に電気も発生させた。発電器の電力出力を時間経過に亘って測定した。結果を、発電機の電力出力対時間のグラフとして図5に示す。電力出力は、最初50マイクロワットに設定したが、その後、170マイクロワットまで上げ、更に210マククロワットまで上げて、30日間の試験期間中その出力を維持した。試験開始から20日間は、実験室雰囲気の相対湿度は約10パーセントから20パーセントまで変動した。実験室の空気の温度は約23℃であった。水素の初期噴流は、運転開始の初日だけで概ね消費されたと推定される。この無水運転では、必要な水分は、燃料電池自身を通して逆に浸透している。内部の気体圧力は、作動電力レベルに亘って安定しており、カソード水の量は、どの出力レベルでも正確に正しい量であった。装填せねばならなかった液体の水を無くすことができたために、水循環による可能な正味利得としては、システム容積及び重量の縮小幅、費用及び複雑性の縮小幅、及び安全性、がそれぞれ約2倍に増加した。カソード上の空気中の湿気によりPEMの更に良好な水和も実現できる。
【0046】
図8は、燃料容器811と、感圧隔膜813に接続されたメッシュ多孔質プレート又は層、又は格子、又は類似の種類の弁812とを有し、電力を提供するように設計されている燃料電池814用の複数の要素を有している、燃料電池発電機システム810を示している。各要素には、カソード電極816、カソード気体拡散層815、膜817、アノード気体拡散層820、及びアノード電極181が含まれる。本例では、燃料電池は、図8のブロック様構成810の一方の側(図8の上側)に在る。燃料電池アッセンブリ810の下部分には、或る量の水素化アルミニウムリチウム又は他の燃料電池を入れておく燃料容器811が在る。分圧によって雰囲気中の酸素がキャビティ826に引き込まれる。雰囲気中の窒素の分圧は存在しない。雰囲気は乾燥しており、水分を幾らか吸収する。酸素は、複数の要素又は電池814のカソード816側に流れ込む。陽子は、アノード818からカソード16に移動する。分圧を有する水蒸気が在るかもしれないが、蒸気は膜により閉じ込められる。電子がH2から剥がれて陽子となり、これが、アノード電極18からアノード気体拡散層820、膜817、そしてカソード拡散層815を通って、カソード816に進む。電子は電流を構成し、この電流はアノード818からインピーダンス負荷819を通ってカソード816に流れ、そこで、電子、陽子、酸素は水蒸気を形成する。層817は、水蒸気透過性の電解質膜である。カソード側は、酸素透過性で水蒸気不透過性の膜である。燃料電池814の設計には様々な方式がある。
【0047】
弁812は、図8のアッセンブリ810の配向に関して、水が下に落ちるのは規制するが、H2が上に行くのは妨げないないようにするため設置されている。水は、カソードで発生する産物である。複数の要素又は電池814には、水又は蒸気の通過を妨げ、一方で陽子が電池を通って移動することを許容するために、気体不透過層が設けられている。水蒸気が容器811からの燃料に遭遇すると、水素が発生する。
【0048】
図9a、図9b、図9cは、本燃料電池設計における弁の作動を示している。図9aの弁は開いている。隔膜913は、弁912を開き位置に動かし、一方では、弁912を図9cに示す閉じ位置に動かす。弁は、図9bで確認されるように部分的開き位置を有している。弁912は、2つのメッシュ、格子、又はプレート様部品921と922を有している。それらの部品は、ここで説明する動作を行えるのであれば他の形態又は設計でもよい。部品921は、燃料電池アッセンブリ又はシステム810に対して静止している。部品22は、部品921上に又はこれに隣接して配置されている。これらの部品921と922は、複数の開口部923を有するプレートなどである。開口部は、例えば、プレート921と922の両方に、小さな矩形の形状を対称模様に並べた形態をしている。プレート922をプレート921に重ねた状態では、図9aに示すように、物質が一対のプレート921と922を通過できるように開口部923は整列している。プレート922をプレート921に対して左に動かすと、開口部923は、図9bに示すように部分的に閉じた状態になる。プレート922を更に左に動かすと、開口部923は、図9cに示すように、プレート921とプレート922の各部分が互いの開口部に重なった状態で閉じる。
【0049】
プレート922は、感圧性の隔膜913によって動かされる。図9a、図9b、図9cに示すように、電池アッセンブリのプレート922付近の容積926の部分にある物質の圧力が増すと、隔膜913はプレート922付近の室容積926から張り出す。隔膜913の中心924付近にはリンク機構925が取り付けられており、このリンク機構925はプレート922に取り付けられている。圧力によって中心924が(各図左側に)張り出すと、リンク機構925は、同様にプレート922を(各図内の)左側に引っ張り、プレートを通る物質又は気体の流量を圧力の上昇に応じて減少させる。圧力が更に上昇すると、隔膜913は、停止位置まで更に膨らんで、プレート922の開口部以外の領域をプレート921の開口部923に重ならせ、プレート921の開口部以外の領域をプレート922の開口部に重ならせて、プレート921と922を通る物質(例えば、水蒸気)の流れを効果的に止める。圧力が、室926のプレート922付近で低下すると、隔膜913は張り出しの少ない状態に戻り始め、リンク機構925を介してプレート922を押して、プレート921と922両方の開口部923の一部の覆いを解き又は開く。室926内の圧力が更に低下すると、隔膜913は初期の開き位置に戻ってプレート922を動かすので、プレート921と922の開口部923は整列し、どちらのプレートの開口部923ももはや相手のプレートで隠されなくなる。再度、室926の圧力が上昇すると、弁912が閉じ始め、室926の圧力が低下すると、弁912が開き始める。而して、弁912を通る流れの量は、室926の圧力により決まる。この方式では、室926からの弁を通る気体の流れ又は体積を規制することができる。
【0050】
図9a、図9b、図9cで説明した弁機構は、図10に示す円筒形燃料電池装置1030に設計することができる。この機構は、何らかの他の形状を有する燃料電池発電器アッセンブリに設計することもできる。図10では、燃料容積又は供給部は、円筒の中心に在る。電池1014と燃料供給容器又は室1011の間には、円筒状の滑動弁1012が在る。弁は、互いに同心に且つ隣接して配置された2つの円筒状の格子、メッシュ、穴あき材料などのスリーブである。円筒形の弁の部品1021と1022は、互いに滑動して弁1012を開閉する(図9a−9cの部品921と922と同様)。円周滑動弁1012の外側には、単数又は複数の燃料電池1014が在る(図8の燃料電池814と同様)。
【0051】
円筒形の弁1012を作動させるための隔膜1013は、円筒形の室1026の端部に設置されており、弁1012の部品1021又は1022に連結されている。隔膜1013は室1026内の圧力に応答して、圧力が上昇すると、連接されている隔膜1013により、弁1012の部品1021と1022の内の一方が他方に対して動いて弁1012を閉じ、圧力が低下すると、弁1012は少なくとも徐々に開いて、或る蒸気量が1つ又は複数の燃料電池1014に流れるのを監視する。燃料電池アッセンブリ810及び1030のここに例示している実施例と同じ設計及び動作を、他の形状の燃料電池アッセンブリに適用してもよい。
【0052】
燃料電池アッセンブリ810、910、及び1030の室826、926及び1026は密封されており、燃料は、燃料室1011に隣接しているか又はその一部であって所定の位置に在るときには室1026を密封している取り外し可能なカバー1027を有する開口部を通して加えられる。
【0053】
燃料電池1014は、陰極又はカソード16と陽極又はアノード1018の間に配置されている電解質膜1017を有している。水素燃料(即ち、水素気体)は、流れ場プレート1021及び1022を通ってアノード1018に送られ、一方、酸素は燃料電池のカソード1016に送られる。アノード1018で、水素は、正の水素イオン(陽子)と負の電子に分割される。電解質膜は、陽子だけを通してカソード1016に送る。電子は、そうではなくて、電流として外部回路1019を通ってカソード1016に進む。カソード1016で、電子と陽子は酸素と結合して水の分子になる。
【0054】
一旦、燃料電池1014での酸素−水素反応の副産物として水ができると、発生した水は受動的に拡散して燃料電池を通ってキャビティ1026に進み、燃料室又は容器1011に戻る。燃料電池1014のアノード1018側のキャビティ1026内には、燃料容器1011内の燃料物質の吸水性のせいで比較的湿度の低い領域が存在する。而して、カソード1016の保水性により、水分濃度勾配と気体圧力差が発生し、それにより水の分子が拡散して、燃料電池1014を通ってキャビティ1026へ、そして燃料室1012へと水蒸気の形態で戻る。この水蒸気が、容器1011の燃料と反応して、水素気体が発生する。発生した水素気体は、その後、キャビティ1026を通って燃料電池アノード1018に進み、そこで酸素と反応して再度水の分子を発生させる。この循環は、室1011内の燃料が消費されてしまうまで続く。
【0055】
燃料電池発電機システム1030は、燃料電池1014から容器1011までの水蒸気の通過を規制すると共に、燃料容器1011からの水素気体の発生を規制するために、弁1012を使用している。弁1012は、キャビティ1026の燃料容器1011と燃料電池1014の間に配置されている。弁1012は、キャビティ1026内の気体圧力により制御される空圧弁であり、空気圧により調整され、水蒸気の燃料容器1011への運搬を制御する。弁1012は、上記説明文中の他の箇所に記載したように、開口部付きの滑動可能なプレート1022を同様の開口部1023を有する別のプレート1021に隣接して配置し、弁1012の開閉に際して互いに重なり合わせるようになっている。弁1012が閉じ位置に在るときには、水蒸気が燃料容器1011に到達できないようにしている。これに対し、弁1012が開き位置に在るときには、水蒸気が燃料容器1011に到達できるようにして、発生した水素気体が燃料電池1014に到達できるようにする。この説明は単一の燃料電池1014に関するものであるが、複数の電池にも当てはまるものと解釈されたい。
【0056】
弁1012の作動は、隔膜1013に働く内部圧力により制御される。キャビティ1026の内部気体圧力が、水素気体の発生により上昇すると、隔膜1013は外向きに僅かに曲がり又は押し出される。これにより、リンク機構1025は、滑動可能な弁プレート1022を引っ張り、プレート1021に対して動かして弁1012を閉じ、水蒸気がそれ以上燃料室1011に流入しないようにする。弁1012が閉じると、水素の発生が止まる。これは、内部気体圧力が更に上昇するのを防ぐ。燃料電池1014などにより水素が消費されると、内部気体圧力は低下し、膜1013がより弛緩した状態に復帰し、弁を開く。滑動弁1012のプレート1022は、全開位置から全閉位置まで約1ミリメートル動く。弁1012を完全に閉じるのに、膜又は隔膜1013には、約4psi(27kPa)から6psi(42kPa)の圧力を掛ける必要がある。而して、水素気体は、消費される速度で自動的に生成されることになる。
【0057】
図11は、或る実施形態による、アルカリ金属ケイ化物燃料を使用している燃料電池システム1100の概略図を示している。アルカリ金属ケイ化物燃料1108は、可動弁プレート1118(拡大断面図に図示)に接触している固定弁プレート1110により、システム1100で取り囲まれている。可動弁プレート1118は、燃料1108を、アノード層1112、燃料電池積層1114、及びカノード層1116に放出することができるように操作される。可動弁プレート1118は、システム1100内の水の管理も支援する。燃料電池システム1100は、アノード出力電極1106と、カソード出力電極1104を更に含んでいる。可動弁プレート1118の動きを制御するために可撓隔膜1102が使用されている。可撓隔膜1102は、燃料1108が封入されているキャビティの内部気体圧力に応答する。
【0058】
図12は、例示の実施形態による発電機を使用する方法1200を説明している。アルカリ金属ケイ化物1202を、水素1206を発生させるのに十分な水又は水蒸気に触れさせ又は反応させる1204。次いで、電気1210と副産物の水1212と熱1214を発生させるために、水素1206を1つ又は複数の燃料電池に接触させる1208。発生した電気1210は、外部装置によって蓄電され又は使用される。副産物の水1212と熱1214は、廃棄処分されるか以降の処理に再利用される。
【0059】
図13は、例示の実施形態による発電機を製作する方法1300を説明している。1つ又は複数の燃料電池を作る1302。1つ又は複数の燃料電池に接触する燃料貯蔵区域を形成する1304。燃料貯蔵区域内にアルカリ金属ケイ化物燃料を配置する1306。
【0060】
以上、本発明を多くの実施形態に関連付けながら具体的に示し説明してきたが、当業者には容易に理解頂けるように、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正を加えることができる。従って、特許請求の範囲は、ここで開示している実施形態、これまで論じてきた実施形態の代替例、及びそれらの等価物全てを対象として含むものと解釈されたい。
【0061】
読み手が技術的開示内容の性質と要旨を迅速に解明できるようにするために、37C.F.R.第1.72(b)条に則り、要約書を提示している。要約書は、特許請求の範囲による範囲と意味を解釈し又は制限するために使用されるものではないとの了解の下に提出している。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】或る実施形態による、発生器の吸気口に一体化された酸素透過性で水蒸気不透過性の膜の無い、本発明の発電機の断面概略図を示している。
【図2】或る実施形態による、発生器の吸気口に一体化された酸素透過性で水蒸気不透過性の膜を有する、本発明の発電機の断面概略図である。
【図3】図3Aは、図1に示す発電機の角部の断面概略図であり、或る実施形態による、吸気口と燃料電池カソードの間の保水帯域を示す図である。
【0063】
図3Bは、図2に示す発電機の角部の断面概略図であり、或る実施形態による、吸気口と燃料電池カソードの間の保水帯域を示す図である。
【図4】或る実施形態による、燃料電池の概略図を示している。
【図5】或る実施形態による、本発明の発電機の電力出力対時間のグラフを示している。
【図6】或る実施形態による、或る場所から別の場所への水蒸気のモル流束の概略図を示している。
【図7】或る実施形態による、複数の燃料電池を内蔵した本発明の円筒形発電機の上面図を示している。
【図8】或る実施形態による、燃料電池の側部断面図を示している。
【図9】図9a、図9b、図9cは、或る実施形態による、燃料電池に使用されている格子様弁の3通りの位置を示している。
【図10】或る実施形態による、図9a、図9b、図9cの弁を使用している円筒形状の燃料電池を示している。
【図11】或る実施形態による、アルカリ金属ケイ化燃料を使用している燃料電池システムの概略図を示している。
【図12】或る実施形態による、発電機を使用する方法を示している。
【図13】或る実施形態による、発電機を作る方法を示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機において、
1つ又は複数の燃料電池と、
アルカリ金属ケイ化物を含んでいる燃料と、を備えている発電機。
【請求項2】
前記アルカリ金属ケイ化物は、シリコンと、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びフランシウムから成る群より選択される1つ又はそれ以上のアルカリ金属と、を備えている、請求項1に記載の発電機。
【請求項3】
前記アルカリ金属ケイ化物は、シリコンとナトリウムの化合物を備えている、請求項1に記載の発電機。
【請求項4】
前記アルカリ金属ケイ化物は、ナトリウム−カリウム合金と、シリコンを備えている、請求項1に記載の発電機。
【請求項5】
前記アルカリ金属ケイ化物は、粉末を備えている、請求項1に記載の発電機。
【請求項6】
前記アルカリ金属ケイ化物は、ゲルを備えている、請求項1に記載の発電機。
【請求項7】
前記燃料を前記1つ又は複数の燃料電池から分離している1つ又は複数の弁を備えている、請求項1に記載の発電機。
【請求項8】
燃料電池において、
カソード集電器と、
前記カソード集電器に電気的に接続されているカソードと、
アルカリ金属ケイ化物を含んでいる燃料に接触しているアノードと、
前記アノードに電気的に接続されているアノード集電器と、
前記カソードと前記アノードの両方に接触しながら両者を分離している電解質膜と、を備えている燃料電池。
【請求項9】
前記アルカリ金属ケイ化物は、シリコンと、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びフランシウムから成る群より選択される1つ又はそれ以上のアルカリ金属と、を備えている、請求項8に記載の燃料電池。
【請求項10】
前記アルカリ金属ケイ化物は、シリコンとナトリウムの化合物を備えている、請求項8に記載の燃料電池。
【請求項11】
前記アルカリ金属ケイ化物は、ナトリウム−カリウム合金と、シリコンを備えている、請求項8に記載の燃料電池。
【請求項12】
前記アルカリ金属ケイ化物は、粉末を備えている、請求項8に記載の燃料電池。
【請求項13】
前記アルカリ金属ケイ化物は、ゲルを備えている、請求項8に記載の燃料電池。
【請求項14】
前記燃料が更に、水素を有することを特徴とする請求項8に記載の燃料電池。
【請求項15】
水素発生器において、
アルカリ金属ケイ化物を取り囲んでいる燃料キャビティと、
前記キャビティ壁の少なくとも一部を形成している膜と、を備えており、
前記アルカリ金属ケイ化物が前記膜を介して水に触れると、水素が発生する、水素発生器。
【請求項16】
前記アルカリ金属ケイ化物は、シリコンと、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びフランシウムから成る群より選択される1つ又はそれ以上のアルカリ金属と、を備えている、請求項15に記載の水素発生器。
【請求項17】
前記アルカリ金属ケイ化物は、シリコンとナトリウムの化合物を備えている、請求項15に記載の水素発生器。
【請求項18】
発電機を使用する方法において、
ケイ化物アルカリ金属燃料を、水素を発生させるのに十分な水と反応させる段階と、
前記水素を、産物である電気と副産物である水と熱とを発生させるのに十分な1つ又は複数の燃料電池に接触させる段階と、から成る方法。
【請求項19】
前記反応させる段階は、接触させることを含んでいる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
発電機を製作する方法において、
1つ又は複数の燃料電池を形成する段階と、
前記1つ又は複数の燃料電池と接触する燃料貯蔵区域を形成する段階と、
アルカリ金属ケイ化物燃料を前記燃料貯蔵区域内に配置する段階と、から成る方法。
【請求項1】
発電機において、
1つ又は複数の燃料電池と、
アルカリ金属ケイ化物を含んでいる燃料と、を備えている発電機。
【請求項2】
前記アルカリ金属ケイ化物は、シリコンと、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びフランシウムから成る群より選択される1つ又はそれ以上のアルカリ金属と、を備えている、請求項1に記載の発電機。
【請求項3】
前記アルカリ金属ケイ化物は、シリコンとナトリウムの化合物を備えている、請求項1に記載の発電機。
【請求項4】
前記アルカリ金属ケイ化物は、ナトリウム−カリウム合金と、シリコンを備えている、請求項1に記載の発電機。
【請求項5】
前記アルカリ金属ケイ化物は、粉末を備えている、請求項1に記載の発電機。
【請求項6】
前記アルカリ金属ケイ化物は、ゲルを備えている、請求項1に記載の発電機。
【請求項7】
前記燃料を前記1つ又は複数の燃料電池から分離している1つ又は複数の弁を備えている、請求項1に記載の発電機。
【請求項8】
燃料電池において、
カソード集電器と、
前記カソード集電器に電気的に接続されているカソードと、
アルカリ金属ケイ化物を含んでいる燃料に接触しているアノードと、
前記アノードに電気的に接続されているアノード集電器と、
前記カソードと前記アノードの両方に接触しながら両者を分離している電解質膜と、を備えている燃料電池。
【請求項9】
前記アルカリ金属ケイ化物は、シリコンと、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びフランシウムから成る群より選択される1つ又はそれ以上のアルカリ金属と、を備えている、請求項8に記載の燃料電池。
【請求項10】
前記アルカリ金属ケイ化物は、シリコンとナトリウムの化合物を備えている、請求項8に記載の燃料電池。
【請求項11】
前記アルカリ金属ケイ化物は、ナトリウム−カリウム合金と、シリコンを備えている、請求項8に記載の燃料電池。
【請求項12】
前記アルカリ金属ケイ化物は、粉末を備えている、請求項8に記載の燃料電池。
【請求項13】
前記アルカリ金属ケイ化物は、ゲルを備えている、請求項8に記載の燃料電池。
【請求項14】
前記燃料が更に、水素を有することを特徴とする請求項8に記載の燃料電池。
【請求項15】
水素発生器において、
アルカリ金属ケイ化物を取り囲んでいる燃料キャビティと、
前記キャビティ壁の少なくとも一部を形成している膜と、を備えており、
前記アルカリ金属ケイ化物が前記膜を介して水に触れると、水素が発生する、水素発生器。
【請求項16】
前記アルカリ金属ケイ化物は、シリコンと、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びフランシウムから成る群より選択される1つ又はそれ以上のアルカリ金属と、を備えている、請求項15に記載の水素発生器。
【請求項17】
前記アルカリ金属ケイ化物は、シリコンとナトリウムの化合物を備えている、請求項15に記載の水素発生器。
【請求項18】
発電機を使用する方法において、
ケイ化物アルカリ金属燃料を、水素を発生させるのに十分な水と反応させる段階と、
前記水素を、産物である電気と副産物である水と熱とを発生させるのに十分な1つ又は複数の燃料電池に接触させる段階と、から成る方法。
【請求項19】
前記反応させる段階は、接触させることを含んでいる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
発電機を製作する方法において、
1つ又は複数の燃料電池を形成する段階と、
前記1つ又は複数の燃料電池と接触する燃料貯蔵区域を形成する段階と、
アルカリ金属ケイ化物燃料を前記燃料貯蔵区域内に配置する段階と、から成る方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−317649(P2007−317649A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−102784(P2007−102784)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102784(P2007−102784)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】
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