説明

ケイ素化合物の製造方法

【課題】 α−ハロエステル基を官能基として有するシルセスキオキサン誘導体を得るための従来の製造方法は、末端が水酸基である有機基を有するシルセスキオキサン誘導体を原料とし、これにα−ハロカルボニルハライドを反応させてエステル化する方法であった。しかしながらこの方法は、末端が水酸基である有機基を有するシルセスキオキサン誘導体を得るのに長い工程が必要であるため効率的でなかった。本発明の目的は、このシルセスキオキサン誘導体を効率的に製造する方法を提供することである。
【解決手段】 化合物(3)又は化合物(4)に化合物(5)を反応させることを特徴とする式(1)で示されるケイ素化合物の製造方法。Rは水素、アルキル、アリール又はアリールアルキルであり、Aはα−ハロエステル基を有する基であり、Mは1価のアルカリ金属原子である。








【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加重合性単量体に対して重合開始能を有することを特徴とするケイ素化合物の新規な製造方法に関する。なお、「シルセスキオキサン」は、各ケイ素原子が3個の酸素原子と結合し、各酸素原子が2個のケイ素原子と結合している化合物を示す類名であるが、本発明においてはシルセスキオキサン構造およびその一部が変形したシルセスキオキサン類似構造の総称として、「シルセスキオキサン」を用いることがある。
【背景技術】
【0002】
重合体は、汎用的な構造形成材料としてのみならず、高度な機能や性能を有する高付加価値型材料として様々な分野で利用されるようになってきた。それに伴い、高分子材料を精密な設計のもとに製造することの重要性が増している。シルセスキオキサンを無機成分として含む有機−無機複合材料の分野においても、新しい機能性高分子材料を創成することは極めて重要である。このような材料を得るためには、構造の明確な重合体を合成することが必要である。構造の明確な重合体でなければ、重合体の分子的な性質や分子集合体としての性質を精密に解析することができないので、高分子材料の機能を目的に合わせて最適化することができない。しかしながら、従来の有機−無機複合材料のほとんどは、構造制御された有機重合体を含んでいなかった。これらの多くはシルセスキオキサンと有機ポリマーとの機械的なブレンドにより得られているので、複合体の分子集合体としての構造を制御することは極めて困難であった。
そこで、重合開始剤を用いることによって重合体の構造を制御することが試みられるようになった。文献1には、α−ハロエステル基がスチレン系単量体およびメタクリル酸系単量体に対して良好なリビングラジカル重合開始能を有する基であることが開示されている。文献2には、クロロメチルフェネチル基を有するシルセスキオキサン誘導体が、スチレン系単量体に対する比較的良好なリビングラジカル重合の開始剤であることが開示されている。しかしながら、α−ハロエステル基を有するシルセスキオキサン誘導体は知られてはいなかった。そこで本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、α−ハロエステル基を官能基として有する、新規なシルセスキオキサン誘導体を見いだした。そして、この化合物がスチレン系単量体および(メタ)アクリル酸系単量体に対する、リビングラジカル重合の良好な開始剤であることも見出した。
【非特許文献1】Chem. Rev., 101, 2921-2990 (2001)
【非特許文献2】Chem. Mater., 13, 3436-3448 (2001)
【0003】
しかしながら、この新規なシルセスキオキサン誘導体を得るための製造方法は、末端が水酸基である有機基を有するシルセスキオキサン誘導体を原料とし、これにα−ハロカルボニルハライドを反応させてエステル化する方法であったため、この原料を得るのに複数の工程を有し、効率的でなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、α−ハロエステル基を官能基として有するシルセスキオキサン誘導体を、効率的に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
α−ハロエステル基を官能基として有するシルセスキオキサン誘導体を製造する上記の方法は、α位のハロゲンが下記の式(3)または式(4)で示されるシルセスキオキサン誘導体と反応するのを避けるために考え出された方法であるが、本発明者らは、α−ハロエステル基を官能基として有するトリクロロシラン化合物を用いるときには、α位のハロゲンよりもSiに結合する塩素の方が早く反応することを知り、α−ハロエステル基を官能基として有するシルセスキオキサン誘導体を効率的に製造する方法を見出した。即ち、本発明は下記の構成を有する。
【0006】
[1] 式(3)で示される化合物または式(4)で示される化合物に式(5)で示される化合物を反応させることを特徴とする、式(1)で示されるケイ素化合物の製造方法:


ここに、Rは水素、炭素数1〜40のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および置換もしくは非置換のアリールアルキルから独立して選択される基であり;この炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく;このアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;そして、Aはα−ハロエステル基を有する基である:




式(3)および式(4)において、Rは式(1)中のRと同一の意味を有する基であり、Mは1価のアルカリ金属原子である:


式(5)において、A1は式(1)中のA1と同一の意味を有する基である。
【0007】
[2] 式(3)で示される化合物または式(4)で示される化合物に式(6)で示される化合物を反応させることを特徴とする、式(1−1)で示されるケイ素化合物の製造方法:


ここに、Rは水素、炭素数1〜40のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および置換もしくは非置換のアリールアルキルから独立して選択される基であり;この炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく;このアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;そして、Aは式(2)で示される基である:


式(2)において、Xはハロゲンであり;RおよびRは独立して水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数7〜20のアリールアルキルであるが、共に水素であることはなく;Zは炭素数3〜12のアルキレン、または少なくとも1つのエーテル結合と複数のアルキレンとで構成される炭素数4〜300の2価の脂肪族基である:




式(3)および式(4)において、Rは式(1−1)中のRと同一の意味を有する基であり、Mは1価のアルカリ金属原子である:


式(6)におけるX、R、RおよびZは、式(2)におけるX、R、RおよびZとそれぞれ同一の意味を有する基である。
【0008】
[3] 式(3)で示される化合物とこの化合物に対するモル比で1〜5倍量の式(6)で示される化合物とを、溶剤としてテトラヒドロフラン、トルエン、メチレンクロライドまたはジメチルホルムアミドを用い、有機塩基の存在下で反応させることを特徴とする、[2]項に記載の製造方法。
【0009】
[4] 溶剤としてテトラヒドロフランまたはメチレンクロライドを用い、有機塩基として式(3)で示される化合物に対するモル比で9〜15倍量のトリエチルアミンを用いる、[3]項に記載の製造方法。
【0010】
[5] 式(4−1)で示される化合物とこの化合物に対するモル比で1〜5倍量の式(6)で示される化合物とを、溶剤としてテトラヒドロフラン、トルエン、メチレンクロライドまたはジメチルホルムアミドを用い、有機塩基の存在下で反応させることを特徴とする、[2]項に記載の製造方法:


式(4−1)において、Rは式(4)におけるRと同一の意味を有する基である。
【0011】
[6] 溶剤としてテトラヒドロフランまたはメチレンクロライドを用い、有機塩基として式(4)で示される化合物に対するモル比で0.6〜6倍量のトリエチルアミンを用いる、[5]項に記載の製造方法。
【0012】
[7] すべてのRがエチル、2−メチルプロピル、2,4,4−トリメチルペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、非置換のフェニル、3,3,3−トリフルオロプロピル、ノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシルおよびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルから選択される同一の基である、[2]〜[6]のいずれか1項に記載の製造方法。
【0013】
[8] すべてのRが非置換のフェニル、3,3,3−トリフルオロプロピルおよびノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシルから選択される同一の基である、[2]〜[6]のいずれか1項に記載の製造方法。
【0014】
[9] すべてのRがエチル、2−メチルプロピル、2,4,4−トリメチルペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、非置換のフェニル、3,3,3−トリフルオロプロピル、ノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシルおよびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルから選択される同一の基であり;Zが−C−、−C−、−C10−、−C−(OC−、−C−(OC−、−C−(OC−(OC−、または−C−(OC−(OC−であり;ここに、hが1〜40であり、k、mおよびnが独立して1〜30であり、mとnの合計が2〜30であり、そしてm/nが1/29〜29/1である、[2]〜[6]のいずれか1項に記載の製造方法。
【0015】
[10] すべてのRが非置換のフェニル、3,3,3−トリフルオロプロピルおよびノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシルから選択される同一の基であり;Zが−C−O−C−または−C−であり;RおよびRが独立して水素、メチルまたはエチルであるが、共に水素であることはなく;そして、Xが臭素または塩素である、[2]〜[6]のいずれか1項に記載の製造方法。
【0016】
[11] すべてのRが非置換のフェニル、3,3,3−トリフルオロプロピルおよびノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシルから選択される同一の基であり;Zが−C−O−C−または−C−であり;RおよびRが共にメチルであり;そして、Xが臭素である、[2]〜[6]のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
α−ハロエステル基を官能基として有するシルセスキオキサン誘導体に関して本発明が提供する製造方法は、従来の複数の工程からなる製造方法に比べ、簡便且つ効率的な方法であり、工業レベルでの製造において低コスト化が実現できるものと期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
はじめに、本発明で用いる用語について説明する。本発明において、アルキル、アルキレン、アルケニルおよびアルケニレンは、いずれも直鎖の基であってよいし分岐された基であってもよい。シクロアルキル、シクロアルキレン、シクロアルケニルおよびシクロアルケニレンは、どちらも架橋環構造の基であってもよいし、そうでなくてもよい。本発明で用いる「任意の」は、位置だけでなく個数についても任意に選択できることを示す。そして、「任意のAはBまたはCで置き換えられてもよい」という表現は、少なくとも1つのAがBで置き換えられる場合と少なくとも1つのAがCで置き換えられる場合とに加えて、少なくとも1つのAがBで置き換えられると同時に、別の少なくとも1つのAがCで置き換えられる場合をも含むことを意味する。例えば、任意の−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキルには、アルキル、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシアルキル、アルケニル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルおよびアルケニルオキシアルケニルのような基が含まれる。しかしながら本発明においては、エステル基に結合する−CH−が−O−で置き換えられる場合および連続する複数の−CH−が−O−で置き換えられる場合は含まない。(メタ)アクリル酸はアクリル酸およびメタクリル酸の総称である。(メタ)アクリレートはアクリレートおよびメタクリレートの総称である。そして、(メタ)アクリロイルオキシは、アクリロイルオキシおよびメタアクリロイルオキシの総称である。式(1)で示される化合物を化合物(1)と表記することがある。他の式で表される化合物についても、同様の簡略化法によって表記することがある。
【0019】
α−ハロエステル基を有する基は、末端基としてα−ハロカルボニルオキシを有する基を意味する。このα−ハロカルボニルオキシをラジカル重合の開始基とする重合方法として、原子移動ラジカル重合(Atom transfer radical polymerization)法が知られている。この重合法はリビングラジカル重合法の1つであり、有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルフォニル化合物を開始剤として付加重合性単量体をラジカル重合する方法である。この方法は、J. Am. Chem. Soc., 1995, 117, 5614、Macromolecules, 1995, 28, 7901、Science, 1996, 272, 866などに開示されている。この方法で用いられる重合触媒は、周期律表第8族、9族、10族または11族元素を中心の金属原子とする金属錯体である。この原子移動ラジカル重合において、α−ハロカルボニルオキシを有する基が優れた重合開始能を有することが知られている。この重合がリビング重合的であることもよく知られている。即ち、α−ハロエステル基を官能基として有するシルセスキオキサン誘導体は、遷移金属錯体の存在下で優れた重合開始能を有し、リビング重合性を維持し続けることができる。そしてこのシルセスキオキサン誘導体は、あらゆるラジカル重合性単量体に対して重合を開始させることが可能であり、特にスチレン系誘導体に対して優れたリビング重合性を発現させることが可能である。
【0020】
本発明の製造方法は、式(1)で示されるケイ素化合物の製造方法であり、式(3)で示される化合物または式(4)で示される化合物に式(5)で示されるα−ハロエステル基を有するトリクロロシラン化合物を反応させることを特徴とする。








式(1)および式(5)におけるAは、α−ハロエステル基を有する基である。式(4)におけるMは1価のアルカリ金属原子である。Rについては後述する。
【0021】
本発明の好ましい態様は、α−ハロエステル基を有するトリクロロシラン化合物として式(6)で示される化合物を用い、これと化合物(3)または化合物(4)とを反応させる方法である。このとき、式(1−1)で示されるケイ素化合物が得られる。式(1−1)におけるAは式(2)で示される基である。即ち、式(2)におけるX、R、RおよびZは、式(6)におけるX、R、RおよびZとそれぞれ同一の意味を有する。










【0022】
式(6)における記号の意味を説明する。Xはハロゲンである。ハロゲンの例は、塩素、臭素、およびヨウ素である。原子移動ラジカル重合の開始基としては、塩素および臭素がより好ましい。RおよびRは独立して水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリール、または炭素数7〜20のアリールアルキルである。しかしながら、RおよびRが共に水素であることはない。RまたはRの好ましい例は水素、メチルおよびエチルである。そして、RおよびRが共にメチルであることがより好ましい。Zは炭素数3〜12のアルキレン、または少なくとも1つのエーテル結合と複数のアルキレンとで構成される炭素数4〜300の2価の脂肪族基である。Zの好ましい例は、−C−、−C−、−C10−、−C−(OC−、−C−(OC−、−C−(OC−(OC−、または−C−(OC−(OC−である。これらの式におけるh、k、mおよびnは独立して1〜100であって、m+nは2〜100である。hの好ましい範囲は1〜40である。kの好ましい範囲は1〜30である。そして、mおよびnの好ましい範囲はそれぞれ独立して1〜30であり、このときmとnの合計は2〜30であり、m/nは1/29〜29/1である。なお、これらの基においては、左側の遊離基がSiと結合する。そして、Zのより好ましい例は、−C−O−C−および−C−である。
【0023】
次に、上記の式(1)、式(1−1)、式(3)および式(4)におけるRについて説明する。式(1)および式(1−1)におけるRは、いずれも式(3)または式(4)に由来する基であり、これらの式におけるRと同一の意味を有する基である。そして、式(3)または式(4)におけるRは、水素、アルキル、置換もしくは非置換のアリールおよび置換もしくは非置換のアリールアルキルから選択される基である。すべてのRが同じ基であることが好ましいが、異なる2つ以上の基で構成されていてもよい。7個のRが異なる基で構成される場合の例は、2つ以上のアルキルで構成される場合、2つ以上のアリールで構成される場合、2つ以上のアリールアルキルで構成される場合、水素と少なくとも1つのアリールとで構成される場合、少なくとも1つのアルキルと少なくとも1つのアリールとで構成される場合、少なくとも1つのアルキルと少なくとも1つのアリールアルキルとで構成される場合、少なくとも1つのアリールと少なくとも1つのアリールアルキルとで構成される場合である。これらの例以外の組み合わせでもよい。少なくとも2つの異なるRを有する化合物(3)または化合物(4)は、これを製造する際に2つ以上の原料を用いることにより得ることができる。この原料については後に述べる。
【0024】
がアルキルであるとき、その炭素数は1〜40である。好ましい炭素数は1〜30である。より好ましい炭素数は1〜8である。そして、その任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH−は−O−、−CH=CH−、炭素数3〜8のシクロアルキレンまたは炭素数3〜8のシクロアルケニレンで置き換えられてもよい。このようなアルキルの好ましい例は、炭素数1〜30の非置換のアルキル、炭素数2〜30のアルコキシアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数3〜8のシクロアルキレンと炭素数1〜6のアルキレンとで構成される1価の基、炭素数2〜20のアルケニル、炭素数3〜20のアルケニルオキシアルキル、炭素数3〜20のアルキルオキシアルケニル、炭素数3〜8のシクロアルケニル、炭素数3〜8のシクロアルケニレンと炭素数1〜6のアルキレンとで構成される1価の基、およびここに挙げたこれらの基において任意の水素がフッ素で置き換えられた基である。炭素数3〜8のシクロアルキルは、メチルにおける−CH−が炭素数3〜8のシクロアルキレンで置き換えられた例である。炭素数3〜8のシクロアルケニルは、メチルにおける−CH−が炭素数3〜8のシクロアルケニレンで置き換えられた例である。シクロアルキレンおよびシクロアルケニレンにおいては、隣り合わない2つの炭素が架橋されていてもよい。
【0025】
非置換のアルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、ヘキシル、1,1,2−トリメチルプロピル、ヘプチル、オクチル、2,4,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル、ドコシルおよびトリアコンチルである。
【0026】
フッ素化アルキルの例は、3,3,3−トリフルオロプロピル、ノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシル、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル、パーフルオロ−1H,1H,2H,2H−ドデシルおよびパーフルオロ−1H,1H,2H,2H−テトラデシルである。
【0027】
アルコキシアルキルの例は、3−メトキシプロピル、メトキシエトキシウンデシルおよび3−ヘプタフルオロイソプロポキシプロピルである。
【0028】
シクロアルキルの例は、シクロペンチル、シクロヘキシル、2−ビシクロヘプチルおよびシクロオクチルである。シクロアルキレンとアルキレンとで構成される1価の基の例は、シクロヘキシルメチルおよびアダマンチルエチルである。シクロヘキシルメチルは、エチルのβ位の−CH−がシクロへキシレンで置き換えられた例である。
【0029】
アルケニルの例は、ビニル、2−プロペニル、3−ブテニル、5−ヘキセニル、7−オクテニル、10−ウンデセニルおよび17−オクタデセニルである。
【0030】
アルケニルオキシアルキルの例はアリルオキシウンデシルである。
【0031】
シクロアルケニルの例は、2−シクロペンテニル、3−シクロヘキセニル、5−ノルボルネン−2−イルおよび4−シクロオクテニルである。シクロアルケニレンとアルキレンとで構成される1価の基の例は、2−(3−シクロヘキセニル)エチルおよび5−(ビシクロヘプテニル)エチルである。
【0032】
が置換もしくは非置換のアリールである場合の例は、任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニルおよび非置換のナフチルである。ハロゲンの好ましい例はフッ素、塩素および臭素である。炭素数1〜10のアルキルにおいては、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−が−O−、−CH=CH−またはフェニレンで置き換えられてもよい。Rが置換もしくは非置換のアリールである場合の好ましい例は、非置換のフェニル、非置換のナフチル、アルキルフェニル、アルキルオキシフェニル、アルケニルフェニル、炭素数1〜10のアルキルにおいて任意の−CH−がフェニレンで置き換えられた基を置換基として有するフェニル、およびこれらの基において任意の水素がハロゲンで置き換えられた基である。
【0033】
ハロゲン化フェニルの例はペンタフルオロフェニル、4−クロロフェニルおよび4−ブロモフェニルである。
【0034】
アルキルフェニルの例は4−メチルフェニル、4−エチルフェニル、4−プロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−ペンチルフェニル、4−ヘプチルフェニル、4−オクチルフェニル、4−ノニルフェニル、4−デシルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,4,6−トリエチルフェニル、4−(1−メチルエチル)フェニル、4−(1,1−ジメチルエチル)フェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニルおよび2,4,6−トリス(1−メチルエチル)フェニルである。
【0035】
アルキルオキシフェニルの例は(4−メトキシ)フェニル、(4−エトキシ)フェニル、(4−プロポキシ)フェニル、(4−ブトキシ)フェニル、(4−ペンチルオキシ)フェニル、(4−ヘプチルオキシ)フェニル、(4−デシルオキシ)フェニル、(4−オクタデシルオキシ)フェニル、4−(1−メチルエトキシ)フェニル、4−(2−メチルプロポキシ)フェニルおよび4−(1,1−ジメチルエトキシ)フェニルである。アルケニルフェニルの例は4−ビニルフェニル、4−(1−メチルビニル)フェニルおよび4−(3−ブテニル)フェニルである。
【0036】
炭素数1〜10のアルキルにおいて任意の−CH−がフェニレンで置き換えられた基を置換基として有するフェニルの例は、4−(2−フェニルエチル)フェニル、4−フェノキシフェニル、3−(フェニルメチル)フェニル、ビフェニルおよびターフェニルである。4−(2−フェニルビニル)フェニルは、エチルフェニルのエチル基において、1つの−CH−がフェニレンで置き換えられ、もう1つの−CH−が−CH=CH−で置き換えられた例である。
【0037】
フェニルの水素の一部がハロゲンで置き換えられ、さらに他の水素がアルキル、アルキルオキシまたはアルケニルで置き換えられたフェニルの例は、3−クロロ−4−メチルフェニル、2,5−ジクロロ−4−メチルフェニル、3,5−ジクロロ−4−メチルフェニル、2,3,5−トリクロロ−4−メチルフェニル、2,3,6−トリクロロ−4−メチルフェニル、3−ブロモ−4−メチルフェニル、2,5−ジブロモ−4−メチルフェニル、3,5−ジブロモ−4−メチルフェニル、2,3−ジフルオロ−4−メチルフェニル、3−クロロ−4−メトキシフェニル、3−ブロモ−4−メトキシフェニル、3,5−ジブロモ−4−メトキシフェニル、2,3−ジフルオロ−4−メトキシフェニル、2,3−ジフルオロ−4−エトキシフェニル、2,3−ジフルオロ−4−プロポキシフェニルおよび2,3,5,6−テトラフルオロ−4−ビニルフェニルである。
【0038】
次に、式(1)中のRが置換もしくは非置換のアリールアルキルである場合の例を挙げる。アリールアルキルを構成するアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよい。アリールアルキルの好ましい例はフェニルアルキルである。このとき、アルキレンの好ましい炭素数は1〜12であり、より好ましい炭素数は1〜8である。非置換のフェニルアルキルの例は、フェニルメチル、2−フェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル、6−フェニルヘキシル、11−フェニルウンデシル、1−フェニルエチル、2−フェニルプロピル、1−メチル−2−フェニルエチル、1−フェニルプロピル、3−フェニルブチル、1−メチル−3−フェニルプロピル、2−フェニルブチル、2−メチル−2−フェニルプロピルおよび1−フェニルヘキシルである。
【0039】
フェニルアルキルにおいて、フェニルの任意の水素はハロゲンまたは炭素数1〜12のアルキルで置き換えられてもよい。この炭素数1〜12のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはフェニレンで置き換えられてもよい。フェニルの任意の水素がフッ素で置き換えられたフェニルアルキルの例は、4−フルオロフェニルメチル、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニルメチル、2−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)エチル、3−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)プロピル、2−(2−フルオロフェニル)プロピルおよび2−(4−フルオロフェニル)プロピルである。
【0040】
フェニルの任意の水素が塩素で置き換えられたフェニルアルキルの例は、4−クロロフェニルメチル、2−クロロフェニルメチル、2,6−ジクロロフェニルメチル、2,4−ジクロロフェニルメチル、2,3,6−トリクロロフェニルメチル、2,4,6−トリクロロフェニルメチル、2,4,5−トリクロロフェニルメチル、2,3,4,6−テトラクロロフェニルメチル、2,3,4,5,6−ペンタクロロフェニルメチル、2−(2−クロロフェニル)エチル、2−(4−クロロフェニル)エチル、2−(2,4,5−トリクロロフェニル)エチル、2−(2,3,6−トリクロロフェニル)エチル、3−(3−クロロフェニル)プロピル、3−(4−クロロフェニル)プロピル、3−(2,4,5−トリクロロフェニル)プロピル、3−(2,3,6−トリクロロフェニル)プロピル、4−(2−クロロフェニル)ブチル、4−(3−クロロフェニル)ブチル、4−(4−クロロフェニル)ブチル、4−(2,3,6−トリクロロフェニル)ブチル、4−(2,4,5−トリクロロフェニル)ブチル、1−(3−クロロフェニル)エチル、1−(4−クロロフェニル)エチル、2−(4−クロロフェニル)プロピル、2−(2−クロロフェニル)プロピルおよび1−(4−クロロフェニル)ブチルである。
【0041】
フェニルの任意の水素が臭素で置き換えられたフェニルアルキルの例は、2−ブロモフェニルメチル、4−ブロモフェニルメチル、2,4−ジブロモフェニルメチル、2,4,6−トリブロモフェニルメチル、2,3,4,5−テトラブロモフェニルメチル、2,3,4,5,6−ペンタブロモフェニルメチル、2−(4−ブロモフェニル)エチル、3−(4−ブロモフェニル)プロピル、3−(3−ブロモフェニル)プロピル、4−(4−ブロモフェニル)ブチル、1−(4−ブロモフェニル)エチル、2−(2−ブロモフェニル)プロピルおよび2−(4−ブロモフェニル)プロピルである。
【0042】
フェニルの任意の水素が炭素数1〜12のアルキルで置き換えられたフェニルアルキルの例は、2−メチルフェニルメチル、3−メチルフェニルメチル、4−メチルフェニルメチル、4−ドデシルフェニルメチル、3,5−ジメチルフェニルメチル、2−(4−メチルフェニル)エチル、2−(3−メチルフェニル)エチル、2−(2,5−ジメチルフェニル)エチル、2−(4−エチルフェニル)エチル、2−(3−エチルフェニル)エチル、1−(4−メチルフェニル)エチル、1−(3−メチルフェニル)エチル、1−(2−メチルフェニル)エチル、2−(4−メチルフェニル)プロピル、2−(2−メチルフェニル)プロピル、2−(4−エチルフェニル)プロピル、2−(2−エチルフェニル)プロピル、2−(2,3−ジメチルフェニル)プロピル、2−(2,5−ジメチルフェニル)プロピル、2−(3,5−ジメチルフェニル)プロピル、2−(2,4−ジメチルフェニル)プロピル、2−(3,4−ジメチルフェニル)プロピル、2−(2,5−ジメチルフェニル)ブチル、(4−(1−メチルエチル)フェニル)メチル、2−(4−(1,1−ジメチルエチル)フェニル)エチル、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)プロピルおよび2−(3−(1−メチルエチル)フェニル)プロピルである。
【0043】
フェニルの任意の水素が炭素数1〜12のアルキルで置き換えられたフェニルアルキルであって、このアルキル中の水素がフッ素で置き換えられた場合の例は、3−(トリフルオロメチル)フェニルメチル、2−(4−トリフルオロメチルフェニル)エチル、2−(4−ノナフルオロブチルフェニル)エチル、2−(4−トリデカフルオロヘキシルフェニル)エチル、2−(4−ヘプタデカフルオロオクチルフェニル)エチル、1−(3−トリフルオロメチルフェニル)エチル、1−(4−トリフルオロメチルフェニル)エチル、1−(4−ノナフルオロブチルフェニル)エチル、1−(4−トリデカフルオロヘキシルフェニル)エチル、1−(4−ヘプタデカフルオロオクチルフェニル)エチル、2−(4−ノナフルオロブチルフェニル)プロピル、1−メチル−1−(4−ノナフルオロブチルフェニル)エチル、2−(4−トリデカフルオロヘキシルフェニル)プロピル、1−メチル−1−(4−トリデカフルオロヘキシルフェニル)エチル、2−(4−ヘプタデカフルオロオクチルフェニル)プロピルおよび1−メチル−1−(4−ヘプタデカフルオロオクチルフェニル)エチルである。
【0044】
ベンゼン環の任意の水素が炭素数1〜12のアルキルで置き換えられたフェニルアルキルであって、このアルキル中の−CH−が−CH=CH−で置き換えられた場合の例は、2−(4−ビニルフェニル)エチル、1−(4−ビニルフェニル)エチルおよび1−(2−(2−プロペニル)フェニル)エチルである。
【0045】
フェニルの任意の水素が炭素数1〜12のアルキルで置き換えられたフェニルアルキルであって、このアルキル中の−CH−が−O−で置き換えられた場合の例は、4−メトキシフェニルメチル、3−メトキシフェニルメチル、4−エトキシフェニルメチル、2−(4−メトキシフェニル)エチル、3−(4−メトキシフェニル)プロピル、3−(2−メトキシフェニル)プロピル、3−(3,4−ジメトキシフェニル)プロピル、11−(4−メトキシフェニル)ウンデシル、1−(4−メトキシフェニル)エチル、2−(3−(メトキシメチル)フェニル)エチルおよび3−(2−ノナデカフルオロデセニルオキシフェニル)プロピルである。
【0046】
フェニルの任意の水素が炭素数1〜12のアルキルで置き換えられたフェニルアルキルであって、このアルキル中の−CH−の1つがシクロアルキレンで置き換えられた場合の例は、もう1つの−CH−が−O−で置き換えられた場合も含めて例示すると、シクロペンチルフェニルメチル、シクロペンチルオキシフェニルメチル、シクロヘキシルフェニルメチル、シクロヘキシルフェニルエチル、シクロヘキシルフェニルプロピルおよびシクロヘキシルオキシフェニルメチルである。
【0047】
フェニルの任意の水素が炭素数1〜12のアルキルで置き換えられたフェニルアルキルであって、このアルキル中の−CH−の1つがフェニレンで置き換えられた場合の例は、もう1つの−CH−が−O−で置き換えられた場合も含めて例示すると、2−(4−フェノキシフェニル)エチル、2−(4−フェノキシフェニル)プロピル、2−(2−フェノキシフェニル)プロピル、4−ビフェニリルメチル、3−ビフェニリルエチル、4−ビフェニリルエチル、4−ビフェニリルプロピル、2−(2−ビフェニリル)プロピルおよび2−(4−ビフェニリル)プロピルである。
【0048】
フェニルの少なくとも2つの水素が異なる基で置き換えられたフェニルアルキルの例は、3−(2,5−ジメトキシ−3,4,6−トリメチルフェニル)プロピル、3−クロロ−2−メチルフェニルメチル、4−クロロ−2−メチルフェニルメチル、5−クロロ−2−メチルフェニルメチル、6−クロロ−2−メチルフェニルメチル、2−クロロ−4−メチルフェニルメチル、3−クロロ−4−メチルフェニルメチル、2,3−ジクロロ−4−メチルフェニルメチル、2,5−ジクロロ−4−メチルフェニルメチル、3,5−ジクロロ−4−メチルフェニルメチル、2,3,5−トリクロロ−4−メチルフェニルメチル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−メチルフェニルメチル、2,3,4,6−テトラクロロ−5−メチルフェニルメチル、2,3,4,5−テトラクロロ−6−メチルフェニルメチル、4−クロロ−3,5−ジメチルフェニルメチル、2−クロロ−3,5−ジメチルフェニルメチル、2,4−ジクロロ−3,5−ジメチルフェニルメチル、2,6−ジクロロ−3,5−ジメチルフェニルメチル、2,4,6−トリクロロ−3,5−ジメチルフェニルメチル、3−ブロモ−2−メチルフェニルメチル、4−ブロモ−2−メチルフェニルメチル、5−ブロモ−2−メチルフェニルメチル、6−ブロモ−2−メチルフェニルメチル、3−ブロモ−4−メチルフェニルメチル、2,3−ジブロモ−4−メチルフェニルメチル、2,3,5−トリブロモ−4−メチルフェニルメチル、2,3,5,6−テトラブロモ−4−メチルフェニルメチルおよび11−(3−クロロ−4−メトキシフェニル)ウンデシルである。
【0049】
フェニルアルキルを構成するフェニルの特に好ましい例は、非置換のフェニル、並びに置換基としてフッ素、炭素数1〜4のアルキル、ビニルおよびメトキシの少なくとも1つを有するフェニルである。
【0050】
アルキレンの−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられたフェニルアルキルの例は、3−フェノキシプロピル、1−フェニルビニル、2−フェニルビニル、3−フェニル−2−プロペニル、4−フェニル−4−ペンテニルおよび13−フェニル−12−トリデセニルである。
【0051】
フェニルの水素がフッ素またはメチルで置き換えられたフェニルアルケニルの例は、4−フルオロフェニルビニル、2,3−ジフルオロフェニルビニル、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニルビニル、4−メチルフェニルビニルである。
【0052】
そして、Rの好ましい例は、エチル、イソブチル、イソオクチル、非置換のフェニル、シクロペンチル、シクロへキシル、3,3,3−トリフルオロプロピル、ノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシル、およびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルであり、特に好ましい例は非置換のフェニル、3,3,3−トリフルオロプロピルおよびノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシルである。
【0053】
以下の説明においては、本発明の製造方法によって得られるケイ素化合物をケイ素化合物(α)と表記することがある。ケイ素化合物(α)は、末端基としてα−ハロカルボニルオキシを有するので、各種の有機反応を適用して多数の誘導体に導くことが可能である。例えば、リチウム、マグネシウムまたは亜鉛などとケイ素化合物(α)とを反応させることにより、有機金属官能基を有するシルセスキオキサンに誘導することができる。具体的には、ケイ素化合物(α)に亜鉛を反応させて、有機亜鉛官能基を有するシルセスキオキサンに誘導した後、アルデヒドやケトンを付加させることによって、アルコール類に変換させることができる。即ち、有機亜鉛官能基を有するシルセスキオキサンは、いわゆるリフォマッキー反応に用いる中間原料として有用である。
【0054】
ケイ素化合物(α)におけるα−ハロカルボニルオキシ基は強い求電子性を有するので、種々の求核試薬を用いてアミノ基、メルカプト基などに変換することが可能である。さらに、ケイ素化合物(α)をエナミンで処理してイミン塩とし、このイミン塩を加水分解することによってケトンに変換させることができる。即ち、ケイ素化合物(α)はストーク−エナミン反応に用いる中間原料としても有用である。ケイ素化合物(α)を脂肪族または芳香族系のグリニヤール試薬と反応させることにより、種々の有機官能基や重合性官能基を有するシルセスキオキサン誘導体とすることも可能である。従って、本発明のケイ素化合物は、重合開始剤としてだけでなく、種々の有機合成に有用な中間体として利用することができる。
【0055】
次に、本発明の製造方法について具体的に説明する。化合物(3)は、トリクロロシラン誘導体を加水分解し、さらに熟成させることで合成することができる。例えば、Frank J. Feherらは、シクロペンチルトリクロロシランを水−アセトン混合溶剤中で、室温下または環流温度下で反応させ、さらに2週間熟成させることにより、式(3)においてRがシクロペンチルである化合物を得ている(Organometallics, 10,2526-(1991)、Chemical European Journal, 3,No.6,900-(1997))。化合物(3)は、米国ハイブリッドプラスチックス社より市販品として入手することもできる。化合物(3)にα−ハロエステル基を有するトリクロロシラン化合物を反応させることによって、ケイ素化合物(α)を製造することができる。前記のように、α−ハロエステル基を有するトリクロロシラン化合物の好ましい例は化合物(6)である。
【0056】
がBrである化合物(6)についてその製造方法を説明する。化合物(6)は、スキーム1に示される合成経路によって製造することができる。スキーム1において、TEA、DCCおよびDMAPは、それぞれトリエチルアミン、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドおよび4−ジメチルアミノピリジンである。
<スキーム1>


【0057】
まず第一段階として、トリエチルアミンの存在下、2−ブロモイソブチリルブロマイドとアリルアルコールとの反応により、2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸アリルエステルを合成する。この合成経路以外では、2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸とアリルアルコールとをDCC―DMAPの存在下、脱水縮合によっても、2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸アリルエステルに誘導することができる。さらに、これを原料とし、Pt触媒の存在下、Si−H官能のトリクロロシランとヒドロシリル化反応させることにより、目的とする化合物(6)を容易に得ることができる。スキーム1と同様の方法によって得られる化合物(6)の例を次に示す。
【0058】


式(6−4)中のhは1〜40である。式(6−5)中のkは1〜30である。式(6−6)および式(6−7)において、mおよびnは独立して1〜30であって、mとnの合計は2〜30であり、そしてm/nは1/29〜29/1である。
【0059】
化合物(3)と化合物(6)から化合物(1−1)を合成するには、“Corner-capping reaction”と称される方法を採用することができる。これは、所謂、求核置換を利用する反応であり、例えば、Macromolecules, 28, 8435- (1995)に記載されている。この求核置換反応に用いる溶剤の選択条件は、化合物(3)および化合物(6)と反応しないこと、並びに充分脱水されていることである。溶剤の例は、テトラヒドロフラン、トルエン、メチレンクロライドおよびジメチルホルムアミドである。特に好ましい溶剤は、よく脱水されたメチレンクロライドおよびテトラヒドロフランである。化合物(1−1)におけるR1がフッ素置換された有機基である場合は、必要に応じてフッ素系溶剤が選択されてもよい。特に好ましいフッ素系溶剤は、良く脱水されたハイドロクロロフルオロカーボン系溶剤(HCFC−141b、HCFC−225)、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)系溶剤(炭素数2〜4、5および6以上のHFCs)、パーフルオロカーボン系溶剤(パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン)、脂環式ハイドロフルオロカーボン系溶剤(フルオロシクロペンタン、フルオロシクロブタン)、酸素含有フッ素系溶剤(フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、フルオロケトン、フルオロアルコール)および芳香族フッ素系溶剤(α,α,α−トリフルオロトルエン)である。これらはいずれもよく脱水されていることが好ましい。上記の溶剤は単独で用いても良いし、2種類以上の混合物として用いることもできる。化合物(6)の好ましい使用量は、化合物(3)に対するモル比で1〜5倍である。そして、この反応時においては塩化水素が発生するため、この塩化水素を反応系から除去する必要がある。塩化水素を除去する方法に制限はないが、各種の有機塩基を用いることが好ましい。有機塩基としては、副反応を抑制し、目的とする反応が速やかに進行させることができるのであれば、特に限定されるものではないが、ピリジン、ジメチルアニリン、およびテトラメチル尿素が挙げられる。そして、有機塩基の特に好ましい例はトリエチルアミンである。トリエチルアミンの好ましい使用量は、Si−OHに対する当量比で3〜5倍である。この量は、化合物(3)に対するモル比で9〜15倍に相当する。反応温度は、副反応が併発せず、定量的な求核置換反応を進行させることができる温度である。ただ、原料の仕込み時においては、低温条件下、例えば氷浴中で行うことが最も好ましく、その後は室温下で行ってもよい。反応時間は、定量的な求核置換反応が進行するに充分な時間であれば特に制限はなく、通常13時間で目的のケイ素化合物を得ることができる。
【0060】
本発明で用いるもう1つの好ましい原料は、式(4)で示されるシルセスキオキサン化合物である。化合物(4)は、加水分解性基を3つ有するシラン化合物を加水分解することにより得られるシルセスキオキサンオリゴマーを、有機溶剤中で1価のアルカリ金属水酸化物と反応させることにより得られる。加水分解性基を3つ有するシラン化合物を、有機溶剤、水およびアルカリ金属水酸化物の存在下で、加水分解、縮合させることによっても得られる。いずれの方法の場合も、短時間、且つ高収率で化合物(4)を製造することができる(国際公開パンフレットWO02/094839を参照)。化合物(4)は、化合物(3)のシラノール基よりも高い反応性を示す。従って、この化合物を原料として用いれば、容易かつ高収率でその誘導体を合成することができる。さらに、反応活性基として−ONaを有するため、誘導体の合成反応にクロロシラン類を用いても、塩化水素を発生しない。従って、反応操作を容易にすることができ、完全に反応させることが可能である。即ち、ケイ素化合物(α)を製造する原料としては、化合物(3)よりも化合物(4)の方が好ましい。
【0061】
式(4)中のMは1価のアルカリ金属原子である。そして、アルカリ金属の好ましい例はナトリウムおよびカリウムであり、特に好ましい例はナトリウムである。化合物(4)に化合物(6)を反応させて化合物(1−1)とする反応も、化合物(3)を用いる場合と同様にして実施することができる。化合物(6)の好ましい使用量は、Si−ONaに対する当量比で化合物(4)に対するモル比で1〜5倍である。この反応においては、塩化水素除去を目的として有機塩基などを使用する必要はない。しかしながら、反応の進行を速やかに行うための触媒的な役割として、有機塩基を用いてもよい。有機塩基としては、副反応を抑制し、目的とする反応が速やかに進行させることができるのであれば、特に限定されるものではない。有機塩基の例はピリジン、ジメチルアニリン、トリエチルアミンおよびテトラメチル尿素である。有機塩基のより好ましい例はトリエチルアミンである。トリエチルアミンを用いる場合には、Si−ONaに対する当量比で0.2〜2倍量が好ましい。これは化合物(4)に対するモル比で0.6〜6倍に相当する。反応に際して用いる溶剤、反応温度および反応時間については、化合物(3)を用いる反応の場合と同様である。
【0062】
未反応の原料化合物や溶剤(以下、併せて「不純物」と称することがある。)を除去するために蒸留法を適用すると、長時間高温条件下に保持されることによって、目的とする化合物が分解される恐れがある。従って、化合物(1−1)の純度を損ねることなく、不純物を効率的に除去するためには、再結晶操作による精製法や有機溶剤による不純物の抽出法の利用が好ましい。再結晶による精製法は次のように行われる。まず、化合物(1−1)と不純物との混合物を、これらをともに溶解する溶剤に溶解させる。このときの化合物(1−1)の好ましい濃度は、1〜15重量%である。次に、上記溶液を濃縮装置、例えばロータリーエバポレータによって、減圧条件下、結晶が析出し始めるまで濃縮する。その後、大気圧に戻し、室温または低温条件下に保持する。その後、濾過や遠心分離に付することで、不純物を含む溶剤と析出した固体成分とを分離することができる。もちろん不純物を含む溶剤中には、目的とする化合物も含まれるため、上記操作を繰り返し行うことで、化合物(1−1)の回収率を上げることも可能である。
【0063】
再結晶に用いる好ましい溶剤の選択条件は、化合物(1−1)と反応しないこと、濃縮前の段階において化合物(1−1)および不純物を溶解させること、濃縮時において不純物のみを溶解し化合物(1−1)を効率よく析出させること、比較的低い沸点を有することなどである。このような条件を満足させる好ましい溶剤の例はエステル類や芳香族類である。特に好ましい溶剤は酢酸エチルとトルエンである。そして、さらに精製度をあげるためには、再結晶操作の繰り返し回数を多くすればよい。
【0064】
有機溶剤による不純物の抽出法は次のように行われる。まず、化合物(1−1)と不純物との混合物を不純物のみを溶解する有機溶剤に分散させて、撹拌しながら不純物のみを抽出する。その後濾過または遠心分離により固−液を分離して、化合物(1−1)を得る。化合物(1−1)を溶解せず、不純物のみを溶解する有機溶剤であれば特に制限はないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素類が好ましい。抽出時間は、不純物が効率的に除去できるのであれば特に制限はないが、1〜5時間の範囲であることが好ましい。抽出温度は、不純物が効率的に除去できるのであれば特に制限はないが、10〜150℃の範囲が好ましく、より好ましくは10〜50℃であり、最も好ましくは10〜40℃である。そして、さらに精製度をあげるためには、有機溶剤による不純物の抽出操作の繰り返し回数を多くすればよい。
【0065】
次に、化合物(1−1)の例を、表1で定義される記号を用いて具体的に示す。表2〜表6に示される例は、式(1−2)において、R12がエチル、2−メチルプロピル、2,4,4−トリメチルペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、3,3,3-トリフルオロプロピルまたはフェニルであり、Zが−(CH−、−(CH−、−(CH−、または−C−O−C−である場合の例である。なお、化合物(1−1)は、これらの例によって制限されない。


【0066】
以下の表におけるT8は、下記のシルセスキオキサン骨格を有する8価の基を意味する記号である。


【0067】
<表1>

【0068】
<表2>

【0069】
<表3>

【0070】
<表4>

【0071】
<表5>

【0072】
<表6>

【0073】
表2〜表6の例は、本発明の製造法によって得られるケイ素化合物の好ましい例である。これらに加えて、式(1−2)におけるR12が、ノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシルまたはトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルであり、Zが−(CH−、−(CH−、−(CH−または−C−O−C−である化合物も同様に好ましい。そして、式(1−2)において、R12が非置換のフェニル、3,3,3−トリフルオロプロピルまたはノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシルであり、Zが−C−O−C−または−C−であり、RおよびRが共にメチルであり、そして、Xが臭素である化合物が特に好ましい。
【0074】
次に、ケイ素化合物(α)を重合開始剤として用いることができる付加重合性単量体について説明する。この付加重合性単量体は、付加重合性の二重結合を少なくとも1つ有する単量体である。付加重合性の二重結合を1つ有する単官能の単量体の例の1つは、(メタ)アクリル酸系単量体である。この具体例は(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トルイル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3−エチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリレート−2−アミノエチル、2−(2−ブロモプロピオニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブロモイソブチリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、1−(メタ)アクリロキシ−2−フェニル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ)エタン、1−(4−((4−(メタ)アクリロキシ)エトキシエチル)フェニルエトキシ)ピペリジン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチル−ペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2−トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジパーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレートおよび2−パーフルオロヘキサデシルエチル(メタ)アクリレートである。
【0075】
単官能の単量体のもう1つの例はスチレン系単量体である。その具体例は、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−クロルスチレン、p−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、o−アミノスチレン、p−スチレンクロロスルホン酸、スチレンスルホン酸およびその塩、ビニルフェニルメチルジチオカルバメート、2−(2−ブロモプロピオニルオキシ)スチレン、2−(2−ブロモイソブチリルオキシ)スチレン、1−(2-((4−ビニルフェニル)メトキシ)−1−フェニルエトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン、3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン、3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン、3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレンおよび3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレンである。
【0076】
その他の単官能性単量体の例は、フッ素含有ビニル単量体(パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなど)、ケイ素含有ビニル系単量体(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなど)、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、マレイミド系単量体(マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなど)、ニトリル基含有単量体(アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど)、アミド基含有単量体(アクリルアミド、メタクリルアミドなど)、ビニルエステル系単量体(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなど)、オレフィン類(エチレン、プロピレンなど)、共役ジエン系単量体(ブタジエン、イソプレンなど)、ハロゲン化ビニル(塩化ビニルなど)、ハロゲン化ビニリデン(塩化ビニリデンなど)、ハロゲン化アリル(塩化アリルなど)、アリルアルコール、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、メチルビニルケトンおよびビニルイソシアナートである。さらに、重合性二重結合を1分子中に1つ有し、主鎖がスチレン、(メタ)アクリル酸エステル、シロキサンなどから誘導されたマクロ単量体も挙げられる。
【0077】
付加重合性二重結合を2つ有する多官能単量体の例は、1,3−ブタンジオール ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール ジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール ジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン ジ(メタ)アクリレート、ビス〔(メタ)アクリロイルオキシエトキシ〕ビスフェノールA、ビス〔(メタ)アクリロイルオキシエトキシ〕テトラブロモビスフェノールA、ビス〔(メタ)アクロキシポリエトキシ〕ビスフェノールA、1,3−ビス(ヒドロキシエチル)5,5−ジメチルヒダントイン、3−メチルペンタンジオール ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール誘導体のジ(メタ)アクリレートおよびビス〔(メタ)アクリロイルオキシプロピル〕テトラメチルジシロキサン等のジ(メタ)アクリレート系単量体、ジビニルベンゼンである。さらに、分子中に重合性二重結合を2つ有し、主鎖がスチレン、(メタ)アクリル酸エステル、シロキサンなどから誘導されたマクロ単量体もあげられる。
【0078】
付加重合性二重結合を3つ以上有する多官能単量体の例は、トリメチロールプロパン トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール テトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール モノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチルイソシアネート) トリ(メタ)アクリレート、トリス(ジエチレングリコール)トリメレート トリ(メタ)アクリレート、3,7,14−トリス[(((メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ)]−1,3,5,7,9,11,14−ヘプタエチルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン、3,7,14−トリス[(((メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ)]−1,3,5,7,9,11,14−ヘプタイソブチルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン、3,7,14−トリス[(((メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ)]−1,3,5,7,9,11,14−ヘプタイソオクチルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン、3,7,14−トリス[(((メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ)]−1,3,5,7,9,11,14−ヘプタシクロペンチルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン、3,7,14−トリス[(((メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ)]−1,3,5,7,9,11,14−ヘプタフェニルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン、オクタキス(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサンおよびオクタキス(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)オクタシルセスキオキサンである。更に、分子中に重合性二重結合を2個以上を有し、主鎖がスチレン、(メタ)アクリル酸エステル、シロキサンなどから誘導されたマクロ単量体も挙げられる。
【0079】
これらの単量体は単独で用いてもよいし、複数を共重合させてもよい。共重合させる際にはランダム共重合でも、ブロック共重合でもよい。
【0080】
次に、ケイ素化合物(α)を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒として、付加重合性単量体を原子移動ラジカル重合させる方法について説明する。重合触媒として用いられる遷移金属錯体の好ましい例は、周期律表第7族、8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体である。更に好ましい触媒は、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄または2価のニッケル錯体である。なかでも、銅の錯体が好ましい。1価の銅化合物の例は、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅である。銅化合物を用いる場合には、触媒活性を高めるために、2,2’−ビピリジルもしくはその誘導体、1,10−フェナントロリンもしくはその誘導体、ポリアミン(テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミンなど)、またはL−(−)−スパルテイン等の多環式アルカロイドが配位子として添加される。2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl(PPh)も触媒として好適である。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合には、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類が添加される。更に、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl(PPh)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl(PPh)、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr(PBu)なども、触媒として好適である。
【0081】
この様にして得られたケイ素化合物含有高分子材料は、単独で用いてもよいし、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂と混合させて、その樹脂本来の特性改質剤(力学物性改質剤、表面・界面特性改質剤、相溶化剤など)としても有用である。熱可塑性樹脂の具体例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、超高分子量ポリエチレン、ポリ−4−メチルペンテン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,T、ナイロンMXD6、など)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシラート、など)、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、フッ素樹脂(ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、など)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリラート(Uポリマー、ベクトラ、など)、ポリイミド(カプトン、AURUM、など)、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどである。熱可塑性樹脂の具体例は、フェノール樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ビスマレイミド樹脂、シリコン樹脂などである。このケイ素化合物含有高分子材料は、これらの樹脂の1つに加えてもよいし、複数の樹脂の混合物に加えてもよい。ケイ素化合物含有高分子材料を含む樹脂組成物は、必要に応じてフィラー(シリカ、マイカ、アルミナなど)、顔料(金属酸化物など)または染料(ロイコ染料など)、体質顔料、界面活性剤(シリコン系、フッ素系界面活性剤など)などをこれに添加することにより、材料の特性(力学物性、着色など)や材料の加工性を調整することも可能である。この本樹脂組成物は、各種の成形加工(プレス成形、押出成形、射出成形、圧縮成形、など)により成形することも出来るし、各種の有機溶媒に溶解または分散させ、コーティング材料として用いることも出来る。
【実施例】
【0082】
実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。実施例における分子量のデータは、GPC(ゲルパ−ミエーションクロマトグラフィ−法)によって求めたポリスチレン換算値である。以下に、GPCの測定条件を示す。
装置:日本分光株式会社製、JASCO GULLIVER 1500 (インテリジェント示差屈折率計 RI-1530)
溶剤:テトラヒドロフラン
流速:1ml/min
カラム温度:40℃
使用カラム:実施例1〜90:東ソー株式会社製、TSKguardcolumn HXL-L(GUARDCOLUMN)+TSKgel G1000HxL(排除限界分子量(ポリスチレン):1,000)+TSkgel G2000HxL(排除限界分子量(ポリスチレン):10,000)
較正曲線用標準試料:Polymer Laboratories社製、Polymer Standards (PL), Polystyrene
【0083】
実施例で用いられる記号の意味は次の通りである。
Ph:フェニル
Ch:シクロヘキシル
Cp:シクロペンチル
Et:エチル
iBu:イソブチル
iOc:イソオクチル
TFPr:3,3,3−トリフルオロプロピル
NFHe:ノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシル
TDFOc:トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル
TMS:トリメチルシリル
Mn:数平均分子量
Mw:重量平均分子量
【0084】
[実施例1]
<ポリフェニルシルセスキオキサン(化合物A)の合成>
攪拌機、還流冷却器、温度計および滴下漏斗を取り付けた2,000ml−セパラブル4つ口フラスコに、氷水(640.7g)およびトルエン(200g)を仕込み、撹拌しながらフラスコ内を0℃に冷却した。次に、フェニルトリクロロシラン(211.5g)とモレキュラシーブスで1昼夜乾燥したトルエン(130g)との混合溶液を、フラスコ内の温度が2℃を超えないようにしながら1時間掛けて滴下した。その後、室温で30分間撹拌してから純水で水洗し、減圧下でトルエンを溜去して、固体状の化合物A(120.7g)を得た。化合物Aの重量平均分子量は約3,100であった。
【0085】
[実施例2]
<ナトリウム結合フェニルシルセスキオキサン化合物(化合物B)の合成(1)>
還流冷却器、温度計を取り付けた500mlの4つ口フラスコに、実施例1で得られた化合物A(12.9g)、モレキュラシーブスで1昼夜乾燥したテトラヒドロフラン(250ml)および水酸化ナトリウム(4.0g)を仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、67℃に加熱して還流状態にした。約4時間後、微粉の析出により溶液が白濁し始め、そのまま1時間還流を続けて反応を終了させた。析出した固体をテトラヒドロフランで洗浄し、濾過によりテトラヒドロフランを分離した後、真空乾燥して化合物B(10.1g)を得た。




【0086】
[実施例3]
<ナトリウム結合フェニルシルセスキオキサン化合物(化合物B)の合成(2)>
還流冷却器、温度計および滴下漏斗を取り付けた1000ml−4つ口フラスコに、フェニルトリメトキシシラン(99g)、水酸化ナトリウム(10g)および2−プロパノール(500ml)を仕込み撹拌子を投入した。室温にてマグネチックスターラーで攪拌しながら滴下漏斗より脱イオン水11gを約2分間で滴下し、その後、2−プロパノールが還流する温度までオイルバスにて加熱した。還流が開始してから1.5時間撹拌を継続し反応を完結させた。その後、フラスコをオイルバスより引き上げ、室温で1晩静置して生成した固体を完全に析出させた。析出した固体は孔径0.1マイクロメートルのメンブランフィルターを具備した加圧濾過器により濾過した。次いで得られた固体を2−プロパノールで1回洗浄し、減圧乾燥機にて70℃、4時間乾燥を行い、白色固体の化合物B(66g)を得た。
【0087】
[実施例4]
<化合物Bへのトリメチルシリル基の導入(化合物C)>
滴下漏斗、還流冷却器および温度計を取り付けた50ml−4つ口フラスコに、撹拌子、実施例3で得られた化合物B(1.2g)、テトラヒドロフラン(12g)、トリエチルアミン(1.8g)を仕込み、乾燥窒素にてシールした。マグネチックスターラーで撹拌しながら室温で滴下漏斗よりクロロトリメチルシラン(2.3g)を約1分間で滴下した。滴下終了後、室温で3時間撹拌を継続し反応を完結させた。ついで純水10g投入し、生成した塩化ナトリウムおよび未反応のクロロトリメチルシランを加水分解した。このようにして得られた反応混合物を分液漏斗に移し有機相と水相とに分離し、得られた有機相を脱イオン水により洗浄液が中性になるまで水洗を繰り返した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮して白色固体の化合物C(1.2g)を得た。
【0088】
化合物Cについて、1H−NMR、13C−NMR、29Si−NMR、質量分析、X線結晶構造解析およびIR分析により構造解析を行った。1H−NMRチャートおよび13C−NMRチャートから、フェニル基とトリメチルシリル基が7:3の積分比で存在することが確認された。29Si−NMRから、トリメチルシリル基を示唆する11.547ppm、フェニル基を有しT構造を示唆する−77.574ppm、−78.137ppm、−78.424ppm(いずれもテトラメチルシランを基準)のピークが1:3:3の比で3種類存在することが確認された。質量分析スペクトルの測定結果から、絶対分子量は式(9)に示す構造体の理論分子量と一致した。X線結晶構造解析による結晶構造解析の結果から、前記式(9)に示す構造体であることが確認された。IR分析スペクトルの測定結果から、1430,1590cm-1にSi−Phの変角振動、1960〜1760cm-1に置換ベンゼン環の倍振動、1200〜950cm-1にSi−O−Siの伸縮振動、1250cm-1にSi−CH3の振動にそれぞれ帰属される吸収が確認された。これらの結果は、トリメチルシリル基で置換した化合物(化合物C)が前記式(9)で表される構造であることを支持しており、このことから、得られたナトリウム結合フェニルシルセスキオキサン化合物(化合物B)は前記式(10)で表される構造を有していることが分かった。なお、T構造はSi原子に3個の酸素原子が結合している構造のことである。
【0089】
[実施例5]
<シクロヘキシルトリメトキシシランを原料としたナトリウム結合シクロヘキシルシルセスキオキサン化合物の合成>
フェニルトリメトキシシランの代わりにシクロヘキシルトリメトキシシランを用いる以外は、実施例3と同様の操作を行うことにより、式(11)で示されるナトリウム結合シクロヘキシルシルセスキオキサン化合物を得ることができる。


【0090】
[実施例6]
<化合物(11)へのトリメチルシリル基の導入>
化合物(10)の代わりに化合物(11)を用いる以外は、実施例4と同様の操作を行うことにより、式(12)で示されるトリメチルシリル基を有するシクロヘキシルシルセスキオキサン化合物を得ることができる。さらに、実施例4と同様の操作により化合物(12)の構造解析を行うことで、前記化合物(11)の生成を確認することができる。


【0091】
[実施例7]
<シクロペンチルトリメトキシシランを原料としたナトリウム結合シクロペンチルシルセスキオキサン化合物の合成>
還流冷却器、温度計および滴下漏斗を取り付けた200ml−4つ口フラスコに、シクロペンチルトリメトキシシラン(19.0g)、THF(100ml)、水酸化ナトリウム(1.7g)および脱イオン水(2.3g)を仕込み、マグネチックスターラーで攪拌しながら加熱した。67℃で還流が開始してから10時間撹拌を続けて、反応を終了させた。その後、フラスコをオイルバスから引き上げ、室温で1晩静置して生成した固体を完全に析出させた。析出した固体を濾過、真空乾燥して粉末状固体の化合物(4.2g)を得た。
【0092】
[実施例8]
<トリメチルシリル基の導入>
環流冷却器を取り付けた100ml−4つ口フラスコに、実施例7で得られた化合物(1.0g)、THF(30ml)、トリエチルアミン(0.5g)およびトリメチルクロロシラン(0.7g)を仕込み、マグネチックスターラーで攪拌しながら室温で2時間撹拌した。反応終了後、実施例4の構造確認における場合と同様に処理して、粉末状固体の化合物(0.9g)を得た。
得られた化合物を、1H−NMR、29Si−NMRおよびX線結晶構造解析により分析した。1H−NMRから、シクロペンチル基とトリメチルシリル基が7:3の積分比で存在することが確認された。29Si−NMRから、トリメチルシリル基を示唆する8.43ppm、シクロペンチル基を有しT構造を示唆する−66.37ppm、−67.97ppm、−67.99ppmの3種類のピークが確認された。−67.97ppm、−67.99ppmのピーク強度の和と、−66.37ppmのピーク強度の比は6:1であった。これらの結果とX線結晶構造解析による結晶構造とから、分析の対象である粉末状固体の化合物は式(13)で示されるケイ素化合物であると確認された。従って、実施例7で得られた化合物は、式(14)で示される構造を有すると示唆された。




【0093】
[実施例9]
<エチルトリメトキシシランを原料としたナトリウム結合エチルシルセスキオキサン化合物の合成>
フェニルトリメトキシシランの代わりにエチルトリメトキシシランを用いる以外は、実施例3と同様の操作を行うことにより、式(15)で示されるナトリウム結合エチルシルセスキオキサン化合物を得ることができる。


【0094】
[実施例10]
<化合物(15)へのトリメチルシリル基の導入>
化合物(10)の代わりに化合物(15)を用いる以外は、実施例4と同様の操作を行うことにより、式(16)で示されるトリメチルシリル基を有するエチルシルセスキオキサン化合物を得ることができる。さらに、実施例4と同様の操作により化合物(16)の構造解析を行うことで、前記化合物(15)の生成を確認することができる。


【0095】
[実施例11]
<イソブチルトリメトキシシランを原料としたナトリウム結合イソブチルシルセスキオキサン化合物の合成>
還流冷却器、温度計および滴下漏斗を取り付けた200ml−4つ口フラスコに、イソブチルトリメトキシシラン(18.7g)、THF(100ml)、水酸化ナトリウム(1.8g)および脱イオン水(2.4g)を仕込み、マグネチックスターラーで攪拌しながら加熱した。67℃で還流が開始してから10時間撹拌を続けて、反応を終了させた。定圧下で固体が析出するまで反応液を濃縮した後、得られた濃縮液を室温で1晩静置して、固体を完全に析出させた。これを濾過し、真空乾燥して粉末状固体の化合物(5.1g)を得た。
【0096】
[実施例12]
<トリメチルシリル基の導入>
環流冷却器を取り付けた200ml−4つ口フラスコに、実施例11で得られた粉末状固体の化合物(1.0g)、THF(20ml)、トリエチルアミン(0.5g)およびトリメチルクロロシラン(0.8g)を仕込み、マグネチックスターラーで攪拌しながら室温で2時間撹拌した。反応終了後、実施例4の構造確認における場合と同様に処理して、粉末状固体の化合物(0.9g)を得た。
上記の粉末状固体について、1H−NMRおよび29Si−NMRにより構造解析を行った。1H−NMRチャートから、イソブチル基とトリメチルシリル基が7:3の積分比で存在することが確認された。29Si−NMRから、トリメチルシリル基を示唆する8.72ppm、イソブチル基を有しT構造を示唆する−67.38ppm、−68.01ppm、−68.37ppmのピークが1:3:3の比で3種類存在することが確認された。これらの結果から、分析の対象である粉末状固体の化合物は、式(17)で示されるケイ素化合物であると確認された。従って、実施例11で得られた化合物は、式(18)で示される構造を有すると示唆された。




【0097】
[実施例13]
<イソオクチルトリメトキシシランを原料としたナトリウム結合イソオクチルシルセスキオキサン化合物の合成>
フェニルトリメトキシシランの代わりにイソオクチルトリメトキシシランを用いる以外は、実施例3と同様の操作を行うことにより、式(19)で示されるナトリウム結合イソオクチルシルセスキオキサン化合物を得ることができる。


【0098】
[実施例14]
<化合物(19)へのトリメチルシリル基の導入>
化合物(10)の代わりに化合物(19)を用いる以外は、実施例4と同様の操作を行うことにより、式(20)で示されるトリメチルシリル基を有するイソオクチルシルセスキオキサン化合物を得ることができる。さらに、実施例4と同様の操作により化合物(20)の構造解析を行うことで、前記化合物(19)の生成を確認することができる。


【0099】
[実施例15]
<トリフルオロプロピルトリメトキシシランを原料としたナトリウム結合トリフルオロプロピルシルセスキオキサン化合物の合成>
還流冷却器、温度計および滴下漏斗を取り付けた1,000ml−4つ口フラスコに、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(100g)、THF(500ml)、脱イオン水(10.5g)および水酸化ナトリウム(7.9g)を仕込み、マグネチックスターラーで攪拌しながら、室温からTHFが還流する温度までオイルバスにより加熱した。還流開始から5時間撹拌を継続して反応を完結させた。その後、フラスコをオイルバスから引き上げ、室温で1晩静置した後、再度オイルバスにセットし固体が析出するまで定圧下で加熱濃縮した。析出した生成物は孔径0.5μmのメンブランフィルターを備えた加圧濾過器を用いて濾過した。次いで、得られた固形物をTHFで1回洗浄し、減圧乾燥機にて80℃、3時間乾燥を行い、74gの無色粉末状の固形物を得た。
【0100】
[実施例16]
<トリメチルシリル基の導入>
滴下漏斗、還流冷却器および温度計を取り付けた50ml−4つ口フラスコに、実施例15で得られた無色粉末状の固形物(1.0g)、THF(10g)およびトリエチルアミン(1.0g)を仕込み、乾燥窒素にてシールした。マグネチックスターラーで撹拌しながら、室温でクロロトリメチルシラン(3.3g)を約1分間で滴下した。滴下終了後、室温で、さらに3時間撹拌を継続して反応を完結させた。ついで純水10g投入し生成した塩化ナトリウムおよび未反応のクロロトリメチルシランを加水分解した。このようにして得られた反応混合物を分液漏斗に移し有機相と水相とに分離し、得られた有機相を脱イオン水により洗浄液が中性になるまで水洗を繰り返した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮して白色固体の化合物(0.9g)を得た。
得られた白色粉末状の固形物について、GPC、H−NMR、29Si−NMRおよび13C−NMRにより構造解析を行った。GPCチャートから白色粉末状の固形物は単分散性を示し、その分子量はポリスチレン換算で重量平均分子量1570であり、純度98重量%であることが確認された。H−NMRチャートから、トリフルオロプロピル基とトリメチルシリル基が7:3の積分比で存在することが確認された。29Si−NMRチャートから、トリフルオロプロピル基を有しT構造を示唆するピークが1:3:3の比で3つ、トリメチルシリル基を示唆するピークが12.11ppmに1つ存在することが確認された。13C−NMRチャートでも131〜123ppm、28〜27ppm、6〜5ppmにトリフルオロプロピル基を示唆するピークが存在し、1.4ppmにトリメチルシリル基を示唆するピークが存在することが確認された。質量分析スペクトルの測定結果から、絶対分子量は式(21)に示す構造体の理論分子量と一致した。X線構造解析による結晶構造解析の結果から、式(21)に示す構造体であることが確認された。これらの結果は、構造解析の対象である無色粉末状の固形物が式(21)の構造を有することを示している。従って、トリメチルシリル化される前の化合物は、式(22)の構造であると判断される。




【0101】
[実施例17]
<ノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシルトリメトキシシラン原料としたナトリウム結合ノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシルシルセスキオキサン化合物の合成>
還流冷却器、温度計および滴下漏斗を取り付けた200ml−4つ口フラスコに、ノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシルトリメトキシシラン(20.00g)、THF(93.74g)、水酸化ナトリウム(0.93g)および脱イオン水(1.26g)を仕込み、マグネチックスターラーで攪拌しながら加熱した。64.0℃で還流が開始してから5時間撹拌を続けて、反応を終了させた。常圧下で固体が析出するまで反応液を濃縮し、さらに真空乾燥して粘ちょう性の化合物(17.83g)を得た。


【0102】
[実施例18]
<化合物(23)へのトリメチルシリル基の導入>
化合物(10)の代わりに化合物(23)を用いる以外は、実施例4と同様の操作を行うことにより、式(24)で示されるトリメチルシリル基を有するエチルシルセスキオキサン化合物を得ることができる。さらに、実施例4と同様の操作により化合物(24)の構造解析を行うことで、前記化合物(23)の生成を確認することができる。


【0103】
[実施例19]
<トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン原料としたナトリウム結合トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルシルセスキオキサン化合物の合成>
還流冷却器、温度計および滴下漏斗を取り付けた50ml−4つ口フラスコに、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン(4.9g)、THF(15ml)、水酸化ナトリウム(0.2g)、イオン交換水(0.2g)と仕込み撹拌子を投入し、75℃で加熱還流した。還流開始から5時間撹拌を継続して反応を完結させた。その後、定圧下で加熱濃縮し、減圧乾燥機にて80℃、3時間乾燥を行い、4.0gの粘ちょう性液体を得た。
実施例20
<トリメチルシリル基の導入>
50ml−3つ口フラスコに、上記の粘ちょう性液体(2.6g)、THF(10g)、トリエチルアミン(1.0g)およびトリメチルクロロシラン(3.3g)を仕込み、マグネチックスターラーで攪拌しながら室温で3時間撹拌した。反応終了後、実施例16の構造確認における場合と同様に処理して、1.3gの粘ちょう性液体を得た。
得られた化合物を、GPCにより分析した。測定を行った結果、粘ちょう性液体は単分散であり、その分子量はポリスチレン換算で重量平均分子量3650で純度100%であることが確認された。この結果と実施例3〜18の結果とから総合的に判断して、分析の対象である粘ちょう性液体は式(25)で示されるケイ素化合物であると推定された。従って、実施例19で得られた化合物は、式(26)で示される構造を有することが示唆される。




【0104】
[実施例21]
<化合物(27):2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸アリルエステルの合成>
Ar雰囲気下、環流冷却器、温度計、滴下漏斗を取り付けた500ml−4つ口フラスコに、2−プロペン−1−オール(10.7g)、メチレンクロライド(240g)およびトリエチルアミン(21.7g)を仕込み、溶液をドライアイス−メタノール浴を用いて冷却し、液温を約−55℃に保持した。次いで、この溶液に2−ブロモ−2−メチルプロピオニルブロマイド(40.6g、2−プロペン−1−オールに対して0.96当量)を速やかに加え、−37℃にて1時間撹拌した後、室温下で更に4時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン−HBr塩を濾過により除去した。得られた反応液にメチレンクロライド(20ml)を加え、炭酸水素ナトリウム水溶液(3%、400ml)による3回の洗浄、水(400ml)による2回の洗浄を順次行ってから、無水硫酸マグネシウム(15g)にて乾燥した。その後、ロータリーエバポレータを用い、この溶液を濃縮した。得られた液体成分を減圧蒸留(74℃、520Pa)して、透明な液体を得た(29.6g、収率:81%)。
【0105】
得られた液体のガスクロマトグラフィー分析を行った結果、単一ピークを確認し、不純物等の存在は殆ど確認されなかった。下記に示すIR、H−NMRおよび13C−NMRの結果から、得られた透明な液体が式(27)で示される構造を有することが分かった。なお、実施例中のNMRデータにおける下線は、そのデータが下線が付されている原子に基づくケミカルシフトであることを示す。
GC純度:99.7%
IR (KBr法):ν=3010(H2C=C-)、2980(-CH3)、2936(-CH2-)、1738(C=O)、1651(C=C-)、1464(-CH2-)、1390(-CH3)、1373(-CH3)、1276(C-O-C)、1164(C-O-C)、640(C-Br).
1H-NMR (400MHz, TMS 標準:δ=0.0 ppm): 5.94(tt、1H、CH2=CH-CH2-)、5.39(dd、1H、CH2=CH-CH2-)、5.33(dd、1H、CH2=CH-CH2-)、4.67(d、2H、CH2=CH-CH2-)、1.95(s、6H、-C(CH3)2).
13C-NMR (100MHz, TMS 標準:δ=0.0 ppm): 171.2(C=O)、131.4(C=C-CH2-)、118.5(C=C-CH2-)、66.4(C=C-CH2-)、55.7(-C(Br))、30.8(-C(CH3)2).


【0106】
[実施例22]
<化合物(28):2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−2−アリロキシ−エチルエステルの合成>
Ar雰囲気下、環流冷却器、温度計、滴下漏斗を取り付けた500ml−4つ口フラスコに、2−(アリルオキシ)エタノール(21.0g)、メチレンクロライド(250ml)およびトリエチルアミン(22.5g)を仕込み、溶液をドライアイス−メタノール浴を用いて冷却し、液温を約−37℃に保持した。次いで、この溶液に2−ブロモ−2−メチルプロピオニルブロマイド(41.5g、2−(アリルオキシ)エタノールに対して0.88当量)を速やかに加え、―10℃にて1時間撹拌した後、室温下で更に1.5時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン−HBr塩を濾過により除去した。得られた反応液に炭酸水素ナトリウム水溶液(濃度3重量%、300ml)による3回の洗浄、水(300ml)による3回の洗浄を順次行ってから、無水硫酸マグネシウム(15g)にて乾燥した。得られた液体成分を、シリカゲルカラムを用いて精製を行った後、その後、ロータリーエバポレータを用い、この溶液を濃縮し、透明な液体を得た(36.7g、収率:85%)。
【0107】
得られた透明な液体のガスクロマトグラフィー分析を行った結果、単一ピークを確認し、不純物等の存在は殆ど確認されなかった。下記に示すIRおよびH−NMRの結果から、得られた透明な液体が式(28)で示される構造を有することがわかった。
GC純度:98.8%
IR (KBr法):ν=3008(H2C=C-), 2980(-CH3), 2936(-CH2-), 2866(-CH2-O-), 1738(C=O)、1649(C=C-), 1464(-CH2-), 1408(-CH3), 1390(-CH3), 1278(C-O-C), 1170(C-O-C), 1110(C-O-C), 646(C-Br).
1H NMR (400MHz, TMS 標準:δ=0.0 ppm): 5.90(tt, 1H, CH2=CH-CH2-), 5.31(dd, 1H, CH2=CH-CH2-), 5.27(dd, 1H, CH2=CH-CH2-), 4.33(t, 2H, -O-CH2-CH2-O-C=O), 4.04(d, 2H, CH2=CH-CH2-), 3.70(t, 2H, -O-CH2-CH2-O-C=O), 1.95(s, 6H, -C(CH3)2).


【0108】
[実施例23]
<化合物(44):2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−3−トリクロロシラニル−プロピルエステルの合成>
雰囲気下、環流冷却器、温度計、滴下漏斗を取り付けた200ml−4つ口フラスコに、実施例21で得られた化合物(27)(27.0g)およびトリクロロシラン(TCS,34ml、TCS/化合物(27)モル比=2.6)を仕込み、溶液を氷浴を用いて冷却した。これに、Pt触媒/キシレン溶液(123μl,Pt含有量:3重量%,Pt/Si−Hモル比=5.6×10−5)を添加し、氷浴温度で約35分攪拌を行った後、室温まで温度を上昇させた。反応は発熱を伴って進行し、ガスクロマトグラフィーにおけるTCS/化合物(31)とのピーク強度比が飽和に達したところで、反応終点とした(約20時間)。その後、真空ポンプを用いて、反応液中に残留する未反応のTCSおよび化合物(27)を減圧溜去して、無色透明の液体(42.2g,収率:98.1%)を得た。
【0109】
得られた透明な液体のガスクロマトグラフィー分析を行った結果、単一ピークを確認し、不純物等の存在は殆ど確認されなかった。下記に示すIR、H−NMRおよび13C−NMRの結果から、得られた透明な液体が式(29)で示される構造を有することがわかった。
GC純度:98.1%
IR (KBr法):ν=2980(-CH3), 2936(-CH2-), 2900(-CH2-), 1738(C=O), 1464(-CH2-), 1392(-CH3), 1373(-CH3), 1282(Si-CH2-), 1164(C-O-C), 1110(C-O-C), 698(C-Br), 590(Si-Cl), 567(Si-Cl).
1H-NMR (400MHz, TMS 標準:δ=0.0 ppm): 4.24(t, 2H, -CH2-O-), 2.00(m, 2H, -CH2-CH2-CH2-), 1.95(s, 6H, -C(Br)(CH3)2), 1.52(t, 2H, -CH2-Si).
13C-NMR (100MHz, TMS 標準:δ=0.0 ppm): 171.7(C=O), 66.2(-CH2-O-), 55.6(-C(Br)), 30.7((-CH3)2), 21.7(Si-CH2-CH2-), 20.7 (Si-CH2-).


【0110】
[実施例24]
<化合物(30):2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸2−{3−トリクロロシラニル−プロポキシ}−エチルエステルの合成>
雰囲気下、環流冷却器、温度計、滴下漏斗を取り付けた100ml−4つ口フラスコに、実施例22で得られた化合物(28)(24.3g)およびトリクロロシラン(TCS,20ml、TCS/化合物(34)モル比=1.95)を仕込んだ。これに、Pt触媒/キシレン溶液(630μl,Pt含有量:3重量%,Pt/Si−Hモル比=4.9x10−4)を添加した。反応は発熱を伴って進行し、ガスクロマトグラフィーにおけるTCS/化合物(28)とのピーク強度比が飽和に達したところで、反応終点とした(約4時間)。その後、真空ポンプを用いて、反応液中に残留する未反応のTCSを減圧溜去した後、ロータリーエバポレータを用いて、低沸点化合物を減圧溜去し、粘ちょう性液体(434.88g,収率:91.8%)を得た。
【0111】
得られた透明な液体のガスクロマトグラフィー分析を行った結果、純度:94.0%であった。下記に示すIR、H−NMRおよび13C−NMRの結果から、粘ちょう性液体が式(30)で示される構造を有することがわかった。
IR (KBr法):ν=2938(-CH3)、2878(-CH2-)、1738(C=O)、1464(-CH2-)、1392(-CH3)、1373(-CH3)、1278(Si-CH2-)、1168(C-O-C)、1110(C-O-C)、696(C-Br)、588(Si-Cl)、565(Si-Cl)
1H-NMR (400MHz, TMS 標準:δ=0.0 ppm): 4.32(t, 2H, -CH2-O-C=O-), 3.69(t, 2H, -CH2-O-CH2-CH2-C=O-), 3.55(t, 2H, -CH2-O-CH2-CH2-C=O-), 1.95 (s, 6H, -C(Br)(CH3)2), 1.85(q, 2H, -CH2-CH2-CH2-), 1.52(t, 2H, -CH2-Si).
13C-NMR (100MHz, TMS 標準:δ=0.0 ppm): 171.4(C=O), 71.4(-CH2-O-CH2-CH2-C=O-), 68.2(-CH2-O-C=O-), 64.9(-CH2-O-CH2-CH2-C=O-), 55.5(-C(Br)), 30.7((-CH3)2), 22.6(Si-CH2-CH2-), 20.9(Si-CH2-).


【0112】
[実施例25]
<化合物(10)および化合物(29)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルプロピル−ヘプタフェニルオクタシルセスキオキサンの合成>
窒素雰囲気下、300ml−3つ口フラスコに化合物(10)(3.00g)、モレキュラーシーブス(4A)によって乾燥したトリエチルアミン(0.46g)および乾燥テトラヒドロフラン(110ml)を仕込んだ。マグネチックスターラーを用い、室温で攪拌しながら化合物(10)を溶解させた後、この溶液に(3−(ブロモイソブチリル)プロピル)トリクロロシラン(1.53g、化合物(10)に対して1.5当量)を速やかに加え、室温にて14時間攪拌した。反応終了後、NaClを濾過により除去した。得られた反応液は、ロータリーエバポレーターを用いて溶剤を除去し、白色の粘ちょう物を得た。ここにメタノール300mlを加えて、固体成分を析出させた。一晩、室温にて静置し、固体成分を十分析出させた後、濾過によって固−液分離を行った。得られた固体を減圧乾燥(60℃、3時間)して、白色固体を得た(0.5g、収率14%)。
【0113】
得られた固体のGPC測定を行った結果、単一ピークを確認し、不純物等の存在は確認されなかった。以下に示すIR、H−NMR、13C−NMRおよび29Si−NMRの結果から得られた固体が式(31)で示される構造を有することがわかった。
IR(KBr法)ν=2998(-HC=CH-), 2958(-CH3), 2918(-CH2-), 1742(C=O), 1452(-CH2-), 1398(-CH3), 1377(-CH3), 1272(C-O-C), 1122(Si-0-Si), 708(Si-Ph), 640(C-Br).
1H-NMR(400MHz、TMS標準:δ=0.0ppm):7.77-7.51(m, C6H5-), 7.12-7.26(m, C6H5-), 4.14(t, CH2-CH2-CH2-O), 1.86-1.76(m, CH2-CH2-CH2-O, -C(CH3)2), 0.94(t, CH2-CH2-CH2-O).
13C-NMR(100MHz、TMS標準:δ=0.0ppm):171.3(C=O), 133.8(C6H5‐), 130.5(C6H5‐), 130.0(C6H5‐), 127.5(C6H5‐), 67.4(-Si-CH2-CH2-CH2-O-), 55.8(-C(CH3)2), 30.6(-C(CH3)2), 22.0(-Si-CH2-CH2-CH2-O-), 8.07(-Si-CH2-CH2-CH2-O-).
29Si-NMR(79MHz、TMS標準:δ=0.0ppm):-68.9, -78.3, -78.5.


【0114】
[実施例26]
<化合物(11)および化合物(29)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルプロピル−ヘプタシクロヘキシルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(10)の代わりに実施例5で得られる化合物(11)を用いる以外は、実施例25と同様の操作を行うことにより、式(32)で示される化合物を得ることができる。


【0115】
[実施例27]
<化合物(14)および化合物(29)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルプロピル−ヘプタシクロペンチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(10)の代わりに実施例7で得られる化合物(14)を用いる以外は、実施例25と同様の操作を行うことにより、式(33)で示される化合物を得ることができる。


【0116】
[実施例28]
<化合物(15)および化合物(29)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルプロピル−ヘプタエチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(10)の代わりに実施例9で得られる化合物(15)を用いる以外は、実施例25と同様の操作を行うことにより、式(34)で示される化合物を得ることができる。


【0117】
[実施例29]
<化合物(18)および化合物(29)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルプロピル−ヘプタイソブチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(10)の代わりに実施例11で得られる化合物(18)を用いる以外は実施例25と同様の操作を行うことにより、式(35)で示される化合物を得ることができる。


【0118】
[実施例30]
<化合物(19)および化合物(29)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルプロピル−ヘプタイソオクチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(10)の代わりに実施例13で得られる化合物(19)を用いる以外は実施例25と同様の操作を行うことにより、式(36)で示される化合物を得ることができる。


【0119】
[実施例31]
<化合物(22)および化合物(29)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルプロピル−ヘプタトリフルオロプロピルオクタシルセスキオキサンの合成>
窒素雰囲気下、500ml−4つ口フラスコに化合物(22)(10.0g)、モレキュラーシーブス(4A)によって乾燥したトリエチルアミン(1.33g)および乾燥テトラヒドロフラン(220ml)を仕込んだ。マグネチックスターラーを用い、室温で攪拌しながら化合物(22)を溶解させた後、この溶液に(3−(ブロモイソブチリル)プロピル)トリクロロシラン(4.60g、化合物(22)に対して1.5当量)を速やかに加え、室温にて16時間攪拌した。反応終了後、NaClを濾過により除去した。得られた反応液は、ロータリーエバポレーターを用いて溶剤を除去し、白色固体を得た。ここにメタノール150mlを加えて、固体成分を完全に溶解させた。一晩、室温にて静置し、固体成分を十分析出させた後、濾過によって固−液分離を行った。得られた固体を減圧乾燥(60℃、3時間)して白色固体を得た(2.25g、収率20%)。
【0120】
得られた固体のGPC測定を行った結果、単一ピークを確認し、不純物等の存在は確認されなかった。以下に示すIR、H−NMR、13C−NMRおよび29Si−NMRの結果から得られた固体が式(37)で示される構造を有することがわかった。
IR(KBr法) ν=3076(-CH2-), 1713(C=O), 1468(-CH2-), 1433(-CH3), 1391(-CH3), 1139(-CF3), 1106(Si-0-Si), 700(C-Br).
1H-NMR(400MHz、TMS標準:δ=0.0ppm):4.16(t, 2H, -Si-CH2-CH2-CH2-O-), 2.14(m、14H, -CH2-CH2-CF3), 1.93(s, 6H, -C(CH3)2), 1.78(q, 2H, -Si-CH2-CH2-CH2-O-), 0.94(t, 14H, -CH2-CH2-CF3), 0.79(t, 2H, -Si-CH2-CH2-CH2-O-).
13C-NMR(100MHz、TMS標準:δ=0.0ppm): 171.4(C=O), 126.9(-CH2-CH2-CF3), 67.0(-Si-CH2-CH2-CH2-O-), 55.8(-C(CH3)2), 30.8(-C(CH3)2), 27.6(-CH2-CH2-CF3), 21.8(-Si-CH2-CH2-CH2-O-), 7.58(-Si-CH2-CH2-CH2-O-), 4.03(-CH2-CH2-CF3).
29Si-NMR(79MHz、TMS標準:δ=0.0ppm):-66.1, -67.4, -67.6.


【0121】
[実施例32]
<化合物(23)および化合物(29)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルプロピル−ヘプタ(ノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシル)オクタシルセスキオキサンの合成>
窒素雰囲気下、300ml−フラスコに化合物(23)(17.8g)、モレキュラーシーブス(4A)によって乾燥したトリエチルアミン(1.22g)および脱水メチレンクロライド(190ml)を仕込んだ。マグネチックスターラーを用い、室温で攪拌しながら化合物(23)を溶解させた後、氷浴を用いて系内温度を4℃にした。この溶液に(3−(ブロモイソブチリル)プロピル)トリクロロシラン(4.16g、化合物(23)に対して1.5当量)を速やかに加え、氷浴で15分攪拌した後、室温でさらに5時間攪拌した。反応終了後、NaClを濾過により除去した。得られた反応液にメチレンクロライド100mlを加え、分液ロートを用いて、純水350mlで3回洗浄した後、下層は無水硫酸マグネシウムを加え乾燥した。濾過により硫酸マグネシウムを除去後、ロータリーエバポレーターを用いて溶剤を除去し、白色粘ちょう物を得た。ここにメタノール250mlを加えて、1時間攪拌した後、不溶成分を濾過によって固−液分離を行った。得られた粘ちょう物を減圧乾燥(450Pa、3時間)して、粘ちょう物を得た(6.29g、収率33%)。
【0122】
得られた固体のGPC測定を行った(GPC純度97.3%、Mn=2600、Mw/Mn=1.07)。以下に示すIR、H−NMR、13C−NMRおよび29Si−NMRの結果から得られた固体が式(38)で示される構造を有することがわかった。
IR (KBr法):ν=2956(-CH3), 2926(-CH2-), 1740(C=O), 1446(-CH2-), 1357(-CH3), 1323(-CH3), 1270(C-O-C), 1212(-CF3), 1129(Si-0-Si), 698(C-Br).
1H-NMR(400MHz、TMS標準:δ=0.0ppm):4.17(t, 2H, -Si-CH2-CH2-CH2-O-), 2.21-2.27(m, 14H, -CH2-CH2- CF2‐), 1.80-1.90(m, 8H, -C(CH3)2, -Si-CH2-CH2-CH2-O-), 1.04(t, 14H, -CH2-CH2-CF2‐), 0.86(t, 2H, ‐Si‐CH2‐CH2‐CH2‐O‐).
13C-NMR(100MHz、TMS標準:δ=0.0ppm): 171.9(C=O), 118.8(-CH2-CH2-C4F9), 116.4(-CH2-CH2-C4F9), 110.0(-CH2-CH2-C4F9), 109.1(-CH2-CH2-C4F9), 67.4(-Si-CH2-CH2-CH2-O-), 56.1(-C(CH3)2), 30.7(-C(CH3)2), 25.3(-CH2-CH2-CF3), 22.2(-Si-CH2-CH2-CH2-O-), 7.94(-Si-CH2-CH2-CH2-O-), 2.73(-CH2-CH2-CF3).
29Si-NMR(79MHz、TMS標準:δ=0.0ppm):-65.4, -66.6, -66.7.


【0123】
[実施例33]
<化合物(26)および化合物(29)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルプロピル−ヘプタ(トリデカフルオロ−1,1,2,2,−テトラヒドロオクチル)オクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(22)の代わりに実施例19で得られる化合物(26)を用いる以外は実施例31と同様の操作を行うことにより、式(39)で示される化合物を得ることができる。


【0124】
[実施例34]
<化合物(40)および化合物(29)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルプロピル−ヘプタフェニルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(10)の代わりに式(40)で示される化合物(トリシラノールフェニルPOSS、米国Hybrid Plastics社製)を用い、トリエチルアミン/化合物(40)のモル比を9以上とする以外は、実施例25と同様の操作を行うことにより、実施例25に記載の化合物(31)を得ることができる。


【0125】
[実施例35]
<化合物(41)および化合物(29)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルプロピル−ヘプタシクロヘキシルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(11)の代わりに式(41)で示される化合物(シクロヘキシルPOSS、米国Hybrid Plastics社製)を用い、トリエチルアミン/化合物(41)のモル比を9以上とする以外は、実施例25と同様の操作を行うことにより、実施例26に記載の化合物(32)を得ることができる。


【0126】
[実施例36]
<化合物(42)および化合物(29)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルプロピル−ヘプタシクロペンチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(14)の代わりに式(42)で示される化合物(トリシラノールシクロペンチルPOSS、米国Hybrid Plastics社製)を用い、トリエチルアミン/化合物(42)のモル比を9以上とする以外は、実施例25と同様の操作を行うことにより、実施例27に記載の化合物(33)を得ることができる。


【0127】
[実施例37]
<化合物(43)および化合物(29)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルプロピル−ヘプタエチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(15)の代わりに式(43)で示される化合物(トリシラノールエチルPOSS、米国Hybrid Plastics社製)を用い、トリエチルアミン/化合物(43)のモル比を9以上とする以外は、実施例25と同様の操作を行うことにより、実施例28に記載の化合物(34)を得ることができる。


【0128】
[実施例38]
<化合物(44)および化合物(29)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルプロピル−ヘプタイソブチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(18)の代わりに式(44)で示される化合物(トリシラノールイソブチルPOSS、米国Hybrid Plastics社製)を用い、トリエチルアミン/化合物(44)のモル比を9以上とする以外は、実施例25と同様の操作を行うことにより、実施例29に記載の化合物(35)を得ることができる。


【0129】
[実施例39]
<化合物(45)および化合物(29)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルプロピル−ヘプタイソオクチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(19)の代わりに式(45)で示される化合物(トリシラノールイソオクチルPOSS、米国Hybrid Plastics社製)を用い、トリエチルアミン/化合物(45)のモル比を9以上とする以外は、実施例25と同様の操作を行うことにより、実施例30に記載の化合物(36)を得ることができる。


【0130】
[実施例40]
<化合物(22)を原料としたシラノール含有ヘプタトリフルオロプロピルシルセスキオキサン化合物の合成>
滴下ロート、還流冷却器、温度計および攪拌子を備えた300ml−4つ口フラスコを氷浴中に設置した。この4つ口フラスコに実施例15で得られた化合物(22)5gを入れ、酢酸ブチル(50g)に溶解させた後、酢酸(0.5g)を滴下した。氷浴のまま1時間撹拌した。室温に戻した後、反応液を脱イオン水(100ml)にて洗浄(3回)した。ロータリーエバポレータを用いて溶剤を溜去し、そのまま減圧乾燥(50℃、1時間)を行なって、粘ちょう性の液体を得た(4.3g)。得られた化合物のGPC測定を行った結果、単一ピークを示し、不純物等の存在は確認されなかった。さらにIRを用いて解析した結果、化合物(22)では観測されなかったシラノール基の存在を示唆する吸収(3400cm−1付近)を確認した。従って、得られた化合物は式(46)で示される構造を有することが示唆された。


【0131】
上記の化合物(46)を出発原料とし、前記実施例34〜39に記載の方法に準じて、トリエチルアミンの存在下、化合物(29)を反応させることで、化合物(37)を誘導することができる。
【0132】
[実施例41]
<化合物(10)および化合物(30)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルエトキシプロピル−ヘプタフェニルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(29)の代わりに実施例24で得られる化合物(30)を用い、実施例25と同様の操作によって、化合物(10)と反応させることにより、式(47)で示される化合物を得ることができる。


【0133】
[実施例42]
<化合物(11)および化合物(30)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルエトキシプロピル−ヘプタシクロヘキシルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(10)の代わりに実施例5で得られる化合物(11)を用いる以外は、実施例41と同様の操作を行うことにより、式(48)で示される化合物を得ることができる。


【0134】
[実施例43]
<化合物(14)および化合物(30)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルエトキシプロピル−ヘプタシクロペンチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(10)の代わりに実施例7で得られる化合物(14)を用いる以外は、実施例41と同様の操作を行うことにより、式(49)で示される化合物を得ることができる。


【0135】
[実施例44]
<化合物(15)および化合物(30)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルエトキシプロピル−ヘプタエチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(10)の代わりに実施例9で得られる化合物(15)を用いる以外は、実施例41と同様の操作を行うことにより、式(50)で示される化合物を得ることができる。


【0136】
[実施例45]
<化合物(18)および化合物(30)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルエトキシプロピル−ヘプタイソブチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(10)の代わりに実施例11で得られる化合物(18)を用いる以外は実施例41と同様の操作を行うことにより、式(51)で示される化合物を得ることができる。


【0137】
[実施例46]
<化合物(19)および化合物(30)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルエトキシプロピル−ヘプタイソオクチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(10)の代わりに実施例13で得られる化合物(19)を用いる以外は実施例41と同様の操作を行うことにより、式(52)で示される化合物を得ることができる。


【0138】
[実施例47]
<化合物(22)および化合物(30)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルエトキシプロピル−ヘプタトリフルオロプロピルオクタシルセスキオキサンの合成>
窒素雰囲気下、100ml−3つ口フラスコに化合物(22)(2.30g)、モレキュラーシーブス(4A)によって乾燥したトリエチルアミン(0.61g)および乾燥テトラヒドロフラン(40ml)を仕込んだ。マグネチックスターラーを用い、室温で攪拌しながら化合物(22)を溶解させた後、氷浴を用いて系内温度を4℃にした。この溶液に化合物(30)(1.06g、化合物(22)に対して1.4当量)を速やかに加えた。氷浴にて30分間攪拌した後、室温にてさらに4.5時間攪拌した。反応終了後、NaClを濾過により除去した。得られた反応液は、ロータリーエバポレーターを用いて溶剤を除去し、淡黄色の粘ちょう物を得た。ここにメタノール50mlを加え、室温にてマグネチックスターラーを用いて、40分攪拌した。不溶固体成分を濾過によって固−液分離を行い、得られた固体を減圧乾燥(60℃、3時間)して、白色固体を得た(0.27g、収率10%)。
【0139】
得られた個体のGPC測定を行った結果、GPC純度99.9%、Mn=1564、Mw/Mn=1.05であった。そして、以下に示すH−NMRの結果から、得られた固体が式(53)で示される構造を有することがわかった。
1H-NMR (400MHz, TMS 標準:δ=0.0 ppm): 4.29(t、-CH2-O-C=O-), 3.61(t, -CH2-O-CH2-CH2-C=O-), 3.46(t, -CH2-O-CH2-CH2-C=O-), 2.24-2.17(m, -CH2-CH2- CF2‐), 1.91-1.70(m, -C(CH3)2, -Si-CH2-CH2-CH2-O-), 1.02-0.98(m, -CH2-CH2-CF2‐), 0.87(t, ‐Si‐CH2‐CH2‐CH2‐O‐).


【0140】
[実施例48]
<化合物(23)および化合物(30)を原料とする2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルエトキシプロピル−ヘプタ(ノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシル)オクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(22)の代わりに実施例17で得られる化合物(23)を用いる以外は実施例47と同様の操作を行うことにより、式(54)で示される化合物を得ることができる。


【0141】
[実施例49]
<化合物(26)および化合物(30)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルエトキシプロピル−ヘプタ(トリデカフルオロ−1,1,2,2,−テトラヒドロオクチル)オクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(22)の代わりに実施例19で得られる化合物(26)を用いる以外は実施例47と同様の操作を行うことにより、式(55)で示される化合物を得ることができる。


【0142】
[実施例50]
<化合物(40)および化合物(30)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルエトキシプロピル−ヘプタフェニルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(10)の代わりに実施例34の式(40)で示される化合物(トリシラノールフェニルPOSS、米国Hybrid Plastics社製)を用い、トリエチルアミン/化合物(40)のモル比を9以上とする以外は、実施例47と同様の操作を行うことにより、実施例41に記載の化合物(47)を得ることができる。
【0143】
[実施例51]
<化合物(41)および化合物(30)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルエトキシプロピル−ヘプタシクロヘキシルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(11)の代わりに実施例35の式(41)で示される化合物(トリシラノールシクロヘキシルPOSS、米国Hybrid Plastics社製)を用い、トリエチルアミン/化合物(41)のモル比を9以上とする以外は、実施例47と同様の操作を行うことにより、実施例42に記載の化合物(48)を得ることができる。
【0144】
[実施例52]
<化合物(42)および化合物(30)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルエトキシプロピル−ヘプタシクロペンチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(14)の代わりに式(42)で示される化合物(トリシラノールシクロペンチルPOSS、米国Hybrid Plastics社製)を用い、トリエチルアミン/化合物(42)のモル比を9以上とする以外は、実施例47と同様の操作を行うことにより、実施例43に記載の化合物(49)を得ることができる。
【0145】
[実施例53]
<化合物(43)および化合物(30)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルエトキシプロピル−ヘプタエチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(15)の代わりに式(43)で示される化合物(トリシラノールエチルPOSS、米国Hybrid Plastics社製)を用い、トリエチルアミン/化合物(43)のモル比を9以上とする以外は、実施例47と同様の操作を行うことにより、実施例44に記載の化合物(50)を得ることができる。
【0146】
[実施例54]
<化合物(44)および化合物(30)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルエトキシプロピル−ヘプタイソブチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(18)の代わりに式(44)で示される化合物(トリシラノールイソブチルPOSS、米国Hybrid Plastics社製)を用い、トリエチルアミン/化合物(44)のモル比を9以上とする以外は、実施例47と同様の操作を行うことにより、実施例45に記載の化合物(51)を得ることができる。
【0147】
[実施例55]
<化合物(45)および化合物(30)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルエトキシプロピル−ヘプタイソオクチルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(19)の代わりに式(45)で示される化合物(トリシラノールイソオクチルPOSS、米国Hybrid Plastics社製)を用い、トリエチルアミン/化合物(45)のモル比を9以上とする以外は、実施例47と同様の操作を行うことにより、実施例46に記載の化合物(52)を得ることができる。
【0148】
[実施例56]
<化合物(46)および化合物(30)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルエトキシプロピル−ヘプタヘプタトリフルオロプロピルオクタシルセスキオキサンの合成>
化合物(22)の代わりに実施例40で得られる式(46)で示される化合物を用い、トリエチルアミン/化合物(46)のモル比を9以上とする以外は、実施例47と同様の操作を行うことにより、実施例47に記載の化合物(53)を得ることができる。
【0149】
[実施例57]
<2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸3−ブテニルエステルの合成>
Ar雰囲気下、還流冷却器、温度計、滴下漏斗を取り付けた内容積500mlの4つ口フラスコに、3−ブテン−1−オール(12.0g)、メチレンクロリド(240ml)およびトリエチルアミン(19.5g)を仕込み、溶液をドライアイス−メタノール浴を用いて冷却し、液温を約−45℃に保持した。次いで、この溶液に2−ブロモ−2−メチルプロピオニルブロミド(37.3g、3−ブテン−1−オールに対して0.98当量)を速やかに加え、−40℃にて30分間撹拌した後、室温で更に60分間撹拌した。反応終了後、生成したトリエチルアミン−臭酸塩を濾過により除去した。得られた濾液にメチレンクロリド(20ml)を加え、炭酸水素ナトリウム水溶液(3%、400ml)で2回、水(400ml)で3回洗浄してから、無水硫酸マグネシウム(15g)で乾燥した。ロータリーエバポレーターを用い、この濾液を濃縮した。得られた液体を減圧蒸留(79℃、1.1×10Pa)して、透明な液体を得た(30.0g、収率:82%)。
【0150】
得られた液体のガスクロマトグラフィー分析を行った結果、単一ピークを確認し、不純物等の存在はほとんど確認されなかった。下記に示すIRおよびH−NMRの結果から、得られた液体が式(56)で示される構造を有することがわかった。
IR (KBr法):ν=3008(H2C=C-)、2982(-CH3)、2934(-CH2-)、1738(C=O)、1644(C=C-)、1464(-CH2-)、1392(-CH3)、1373(-CH3)、1280(C-0-C)、1168(C-0-C)、652(C-Br).
1H NMR (400MHz, TMS 標準:δ=0.0 ppm): 5.85-5.75(m、1H、CH2=CH-CH2-)、5.16-5.07(m、2H、CH2=CH-CH2-)、4.22(t、2H、CH2=CH-CH2-CH2-)、2.44(q、2H、CH2=CH-CH2-)、1.92(s、6H、-C(CH3)2).


【0151】
[実施例58]
<2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸−3−トリクロロシラニルプロピルエステルの合成>
雰囲気下、還流冷却器、温度計、滴下漏斗を取り付けた内容積100mlの4つ口フラスコに、化合物(56)(27.0g)およびトリクロロシラン(TCS,15.0ml、TCS/化合物(56)モル比=1.2)を仕込み、溶液を氷浴を用いて冷却した。これに、Pt(dvds) (dvds:ジビニルテトラメチルジシロキサン)/キシレン溶液(200μl,Pt含有量:3wt.%,Pt/Si−Hモル比=2.1×10−4)を発熱を確認しながら30分かけて氷浴温度で添加した後、室温まで温度を上昇させた。ガスクロマトグラフィーで反応を追跡し、TCS/化合物(56)とのピーク強度比が飽和に達したところで、反応終点とした(約2.5時間)。その後、真空ポンプを用いて、反応混合物中に残留する未反応のTCSを減圧留去し、得られた液体を減圧蒸留(120℃、400Pa)して、透明な液体を得た(37.7g、収率:86%)。
【0152】
得られた透明な液体のガスクロマトグラフィー分析を行った結果、不純物等の存在はほとんど確認されなかった。下記に示すIR、H−NMRおよび13C−NMRの結果から、得られた液体が式(57)で示される構造を有することがわかった。
IR (KBr法):ν=2980(-CH3)、2938(-CH2-)、2874(-CH2-)、1738(C=O)、1464(-CH2-)、1392(-CH3)、1373(-CH3)、1280(Si-CH2-)、1166(C-0-C)、1110(C-0-C)、694(C-Br)、588(Si-Cl)、565(Si-Cl).
1H NMR (400MHz, TMS 標準:δ=0.0 ppm): 4.22 (t, 2H, -CH2-O-)、 1.94 (s, 6H, -C(Br)(CH3)2)、1.83 (q, 2H, Si-CH2-CH2-CH2-CH2-O)、 1.73(q, 2H, Si-CH2-CH2-CH2-CH2-O)、 1.47 (t, 2H, -CH2-Si).
13C NMR (100MHz, TMS 標準:δ=0.0 ppm): 171.2 (C=O)、 64.7 (-CH2-O-)、55.6 (-C(Br))、 30.6 ((-CH3)2)、30.2 (Si-CH2-CH2-CH2-CH2-O)、23.6 (Si-CH2-CH2-CH2-CH2-O)、18.7 (Si-CH2-).


【0153】
[実施例59]
<化合物(10)および化合物(57)を原料とした2−ブロモ−2−メチル−プロピオニルブチル−ヘプタフェニルオクタシルセスキオキサンの合成>
窒素雰囲気下、100ml三口フラスコに化合物(10)(6.00g)、モレキュラーシーブス(4A)によって乾燥したトリエチルアミン(1.81g)および乾燥テトラヒドロフラン(70ml)を仕込んだ。マグネチックスターラーを用い、室温で攪拌しながら化合物(10)を溶解させた後、この溶液に(4−(ブロモイソブチリル)ブチル)トリクロロシラン(3.10g、化合物(10)に対して1.4当量)を速やかに加え、室温にて5時間攪拌した。反応終了後、生成したトリエチルアミン−臭酸塩を濾過により除去した。得られた反応混合物は、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去し、白色の粘ちょう物を得た。これに、ジクロロメタン250mlを加え、1000ml分液ロートを用いて純水450mlで4回洗浄した。有機層は無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥したのち、濾過により硫酸マグネシウムを除去し、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去した。これにメタノール300ml/トルエン20mlを加えて、固体を析出させた。濾過して得た固体を減圧乾燥(60℃、3時間、400Pa)した(0.7g、収率10%、無色)。
【0154】
得られた固体のGPC測定を行った結果、単一ピークを確認し、不純物等の存在は確認されなかった。以下に示すH−NMR、および29Si−NMRの結果から得られた固体が式(58)で示される構造を有することがわかった。
1H-NMR(400MHz、TMS標準:δ=0.0ppm):7.71-7.75(m, 14H,C6H5-), 7.31-7.47(m, 21H,C6H5-), 4.09(t, 2H,CH2-CH2-CH2-CH2-O), 1.82(s, 6H, -C(CH3)2), 1.71(q, 2H,CH2-CH2-CH2-CH2-O), 1.61(q, 2H,CH2-CH2-CH2-CH2-O), 0.88(t, CH2-CH2-CH2-CH2-O).
29Si-NMR(79MHz、TMS標準:δ=0.0ppm):-65.3, -78.2, -78.6.




【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(3)で示される化合物または式(4)で示される化合物に式(5)で示される化合物を反応させることを特徴とする、式(1)で示されるケイ素化合物の製造方法:


ここに、Rは水素、炭素数1〜40のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および置換もしくは非置換のアリールアルキルから独立して選択される基であり;この炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく;このアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;そして、Aはα−ハロエステル基を有する基である:




式(3)および式(4)において、Rは式(1)中のRと同一の意味を有する基であり、Mは1価のアルカリ金属原子である:


式(5)において、A1は式(1)中のA1と同一の意味を有する基である。
【請求項2】
式(3)で示される化合物または式(4)で示される化合物に式(6)で示される化合物を反応させることを特徴とする、式(1−1)で示されるケイ素化合物の製造方法:


ここに、Rは水素、炭素数1〜40のアルキル、置換もしくは非置換のアリール、および置換もしくは非置換のアリールアルキルから独立して選択される基であり;この炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく;このアリールアルキル中のアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;そして、Aは式(2)で示される基である:


式(2)において、Xはハロゲンであり;RおよびRは独立して水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数7〜20のアリールアルキルであるが、共に水素であることはなく;Zは炭素数3〜12のアルキレン、または少なくとも1つのエーテル結合と複数のアルキレンとで構成される炭素数4〜300の2価の脂肪族基である:




式(3)および式(4)において、Rは式(1−1)中のRと同一の意味を有する基であり、Mは1価のアルカリ金属原子である:


式(6)におけるX、R、RおよびZは、式(2)におけるX、R、RおよびZとそれぞれ同一の意味を有する基である。
【請求項3】
式(3)で示される化合物とこの化合物に対するモル比で1〜5倍量の式(6)で示される化合物とを、溶剤としてテトラヒドロフラン、トルエン、メチレンクロライドまたはジメチルホルムアミドを用い、有機塩基の存在下で反応させることを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
溶剤としてテトラヒドロフランまたはメチレンクロライドを用い、有機塩基として式(3)で示される化合物に対するモル比で9〜15倍量のトリエチルアミンを用いる、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
式(4−1)で示される化合物とこの化合物に対するモル比で1〜5倍量の式(6)で示される化合物とを、溶剤としてテトラヒドロフラン、トルエン、メチレンクロライドまたはジメチルホルムアミドを用い、有機塩基の存在下で反応させることを特徴とする、請求項2に記載の製造方法:


式(4−1)において、Rは式(4)におけるRと同一の意味を有する基である。
【請求項6】
溶剤としてテトラヒドロフランまたはメチレンクロライドを用い、有機塩基として式(4)で示される化合物に対するモル比で0.6〜6倍量のトリエチルアミンを用いる、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
すべてのRがエチル、2−メチルプロピル、2,4,4−トリメチルペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、非置換のフェニル、3,3,3−トリフルオロプロピル、ノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシルおよびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルから選択される同一の基である、請求項2〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
すべてのRが非置換のフェニル、3,3,3−トリフルオロプロピルおよびノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシルから選択される同一の基である、請求項2〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
すべてのRがエチル、2−メチルプロピル、2,4,4−トリメチルペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、非置換のフェニル、3,3,3−トリフルオロプロピル、ノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシルおよびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルから選択される同一の基であり;Zが−C−、−C−、−C10−、−C−(OC−、−C−(OC−、−C−(OC−(OC−、または−C−(OC−(OC−であり;ここに、hが1〜40であり、k、mおよびnが独立して1〜30であり、mとnの合計が2〜30であり、そしてm/nが1/29〜29/1である、請求項2〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
すべてのRが非置換のフェニル、3,3,3−トリフルオロプロピルおよびノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシルから選択される同一の基であり;Zが−C−O−C−または−C−であり;RおよびRが独立して水素、メチルまたはエチルであるが、共に水素であることはなく;そしてXが臭素または塩素である、請求項2〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
すべてのRが非置換のフェニル、3,3,3−トリフルオロプロピルおよびノナフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロヘキシルから選択される同一の基であり;Zが−C−O−C−または−C−であり;RおよびRが共にメチルであり;そしてXが臭素である、請求項2〜6のいずれか1項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2006−96735(P2006−96735A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−364427(P2004−364427)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】