説明

ケモカイン受容体に関連する疾患および状態を検出および処置するための組成物および方法

CCX-CKR2のリガンドおよび癌におけるCCX-CKR2の生物学的役割を記載する。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年10月30日出願の米国特許出願第10/698,541号の一部係属出願であり、同出願は、2003年5月30日出願の米国特許出願第10/452,015号の一部係属出願であり、同出願は、2002年9月16日出願の米国特許出願第10/245,850号の一部係属出願であり、同出願は、2001年11月30日出願の米国特許出願第60/338,100号および2001年11月30日出願の米国特許出願第60/337,961号の優先権を主張するものであり、これらの出願それぞれが全体としてすべての趣旨で参照により明示的に本明細書に組み入れられる。本発明はまた、全体としてすべての趣旨で参照により明示的に本明細書に組み入れられる、2002年12月20日出願の米国仮特許出願第60/434,912号の優先権の恩典を主張する。
【0002】
発明の背景
ケモカインは、炎症の際に産生されて白血球の動員、活性化、および増殖を調節する、低分子サイトカインのファミリーを構成している(Baggiolini, M.ら、Adv. Immunol. 55: 97-179 (1994);Springer, T. A., Annu. Rev. Physiol. 57: 827-872 (1995);ならびにSchall, T. J.およびK. B. Bacon、Curr. Opin. Immunol. 6: 865-873 (1994))。ケモカインは、好中球、単球、マクロファージ、好酸球、好塩基球、マスト細胞、およびリンパ球(T細胞およびB細胞を含む)などの白血球を含む、生物学的特徴を備えた血液要素(赤血球を除く)の走化性を選択的に誘導することができる。走化性を誘発することに加えて、反応性細胞におけるその他の変化もケモカインによって選択的に誘導可能であり、これには細胞の形状の変化、細胞内遊離カルシウムイオン(Ca2+)の濃度の一過性上昇、顆粒のエキソサイトーシス、インテグリンのアップレギュレーション、生理活性脂質(例えば、ロイコトリエン)の形成、および白血球活性化に伴う呼吸バーストが含まれる。すなわち、ケモカインは、炎症メディエーターの放出、感染部位または炎症部位への走化性および血管外遊走を引き起こす、炎症反応の初期誘因である。
【0003】
ケモカインにはCXCケモカインおよびCCケモカインと命名された2つのサブファミリーがあり、これらは、保存的な4つのシステイン残基のうち最初の2つの配置が1つのアミノ酸によって隔てられているか(CXCケモカインであるSDF-1、IL-8、IP-10、MIG、PF4、ENA-78、GCP-2、GROα、GROβ、GROγ、NAP-2、NAP-4、I-TACのように)、それとも隣接した残基であるか(CCケモカインであるMIP-1α、MIP-1β、RANTES、MCP-1、MCP-2、MCP-3、I-309のように)によって区別される。ほとんどのCXCケモカインは好中性白血球を誘引する。例えば、CXCケモカインであるインターロイキン8(IL-8)、血小板因子4(PF4)、および好中球活性化ペプチド2(NAP-2)は好中球に対する強力な化学誘引物質かつ活性化物質である。MIG(γインターフェロンによって誘導されるモノカイン)およびIP-10(インターフェロン-γにより誘導されうる10kDaタンパク質)と命名されたCXCケモカインは、活性化された末梢血リンパ球の走化性を誘導する活性が特に高い。CCケモカインは一般に選択性が相対的に低く、単球、好酸球、好塩基球、Tリンパ球、およびナチュラルキラー細胞を含む、さまざまな種類の白血球細胞を誘引しうる。ヒト単球走化性タンパク質1〜3(MCP-1、MCP-2、およびMCP-3)、RANTES(Regulated on Activation, Normal T Expressed and Secreted)、ならびにマクロファージ炎症タンパク質1αおよび1β(MIP-1αおよびMIP-1β)などのCCケモカインは、単球またはリンパ球に対する化学誘引物質および活性化物質として特徴づけられているが、好中球に対する化学誘引物質ではないように思われる。
【0004】
CCケモカインおよびCXCケモカインは、7回膜貫通型Gタンパク質共役受容体のスーパーファミリーに属する受容体を介して作用する(Murphy, P. M., Pharmacol Rev. 52: 145-176 (2000))。Gタンパク質共役受容体のこのファミリーは、7回膜貫通領域を含む内在性膜タンパク質の大規模な群を構成する。これらの受容体は、GTPと結合して(例えば細胞内メディエーターの産生によって)共役受容体からのシグナル伝達を媒介することができるヘテロ三量体性調節タンパク質であるGタンパク質と共役している。
【0005】
一般的に言って、ケモカインとケモカイン受容体との相互作用は、1種類のケモカインが数多くのケモカイン受容体と結合可能であり、その反対に単一のケモカイン受容体が複数のケモカインと相互作用しうるという点で、乱交雑性である。この原則に反する例外が少数あり;このような例外の一つは、SDF-1とCXCR4との相互作用である(Bleulら、J Exp Med, 184(3) : 1101-9 (1996);Oberlinら、Nature, 382(6594) : 833-5 (1996))。SDF-1は当初、プレB細胞増殖刺激因子として同定され(Nagasawaら、Proc Natl Acad Sci USA, 91(6) : 2305-9 (1994))、CXCR4に対するリガンドとして報告されている唯一のものである。SDF-1遺伝子は、選択的スプライシングにより、SDF-1αおよびSDF-1βと命名された2種類のタンパク質をコードする。これらの2つのタンパク質は、SDF-1βのカルボキシ末端には存在するがSDF-1αには存在しない4アミノ酸残基を除いて同一である。
【0006】
以前には理解されていなかったリガンドのためのケモカイン受容体シグナル伝達および選択性の多くの局面がある。たとえば、以前には機能が決定されていなかった数多くのオーファン受容体がある。たとえば、RDC1は、初期には血管作用性腸管ペプチド(VIP)の受容体であると考えられていたが、今は、その内在性リガンドが同定されていないため、オーファン受容体であると考えられている。たとえば、Cook et al., FEBS Letts. 300(2):149-152 (1992)を参照。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、これらの問題および他の問題に対処する。
【0008】
発明の簡単な概要
本発明は、細胞上でCCX-CKR2に結合する作用物質を同定する方法を提供する。いくつかの態様で、方法は、複数の作用物質を、配列番号:2の細胞外ドメインと少なくとも95%同一である細胞外ドメインを含むCCX-CKR2ポリペプチド、またはそのSDF1もしくはI-TAC結合性断片に接触させる段階、およびCCX-CKR2ポリペプチドまたはその断片への結合に関してI-TACまたはSDF1と競合する作用物質を選択し、それによって細胞上でCCX-CKR2に結合する作用物質を同定する段階を含む。
【0009】
いくつかの態様では、細胞は癌細胞である、いくつかの態様では、方法はさらに、選択された作用物質を、細胞に結合する能力または細胞の増殖を阻害する能力に関して試験する段階を含む。いくつかの態様では、細胞は癌細胞である。
【0010】
いくつかの態様では、方法はさらに、選択された作用物質を、腎機能を変化させる能力に関して試験する段階を含む。いくつかの態様では、方法はさらに、選択された作用物質を、脳または神経細胞機能を変化させる能力に関して試験する段階を含む。いくつかの態様では、方法はさらに、選択された作用物質を、内皮細胞への細胞接着を変化させる能力に関して試験する段階を含む。
【0011】
いくつかの態様では、作用物質は1,500ダルトン未満である。いくつかの態様では、作用物質は抗体である。いくつかの態様では、作用物質はポリペプチドである。いくつかの態様では、CCX-CKR2ポリペプチドは、配列番号:2で示される配列を含む。
【0012】
本発明はまた、癌細胞の有無を決定する方法を提供する。いくつかの態様では、方法は、細胞を含む試料を、配列番号:2と特異的に結合する作用物質と接触させる段階、および試料中のポリペプチドへの作用物質の結合を検出する段階を含み、ここで試料への作用物質の結合が癌細胞の存在を示す。
【0013】
いくつかの態様では、作用物質は抗体である。いくつかの態様では、作用物質は1,500ダルトン未満である。いくつかの態様では、作用物質はポリペプチドである。いくつかの態様では、検出されるポリペプチドは配列番号:2である。いくつかの態様では、試料はヒト由来の試料である。いくつかの態様では、方法は、ヒトにおける癌を診断するために使用される。いくつかの態様では、方法は、ヒトにおける癌の予後を提供するために使用される。いくつかの態様では、癌は、子宮頸癌、乳癌、リンパ腫、グリア芽細胞腫、前立腺癌および白血病からなる群より選択される。いくつかの態様では、癌は、カポジ肉腫、多中心性キャッスルマン病またはエイズ関連の原発性滲出液リンパ腫(primary effusion lymphoma)ではない。いくつかの態様では、抗体は、配列番号:2への結合に関してSDF1およびI-TACと競合する。
【0014】
本発明はまた、癌を有する個体の診断または予後を提供する方法を提供する。いくつかの態様では、方法は、個体の細胞においてCCX-CKR2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現の有無を検出する段階を含み、ここでCCX-CKR2ポリペプチドはI-TACおよび/またはSDF1に結合し、CCX-CKR2ポリペプチドは配列番号:2と少なくとも95%同一であり、それによって個体における癌を診断する。
【0015】
いくつかの態様では、CCX-CKR2ポリペプチドは配列番号:2で示される。いくつかの態様では、癌は、子宮頸癌、乳癌、リンパ腫、グリア芽細胞腫、前立腺癌および白血病からなる群より選択される。いくつかの態様では、癌は、カポジ肉腫、多中心性キャッスルマン病またはエイズ関連の原発性滲出液リンパ腫ではない。
【0016】
本発明はまた、配列番号:2への結合に関してSDF-1およびI-TACと特異的に競合する抗体を提供する。いくつかの態様では、抗体はモノクロナール抗体である。いくつかの態様では、抗体はヒト化抗体である。
【0017】
本発明はまた、細胞を、配列番号:2と特異的に結合する作用物質と接触させる段階を含み、ここで作用物質はCCX-CKR2ポリペプチドへの結合に関してSDF-1およびI-TACと競合し、細胞は配列番号:2の細胞外ドメインと少なくとも95%同一である細胞外ドメインを含むCCX-CKR2ポリペプチドを発現し、それにより作用物質を細胞上でCCX-CKR2ポリペプチドに結合させる方法を提供する。
【0018】
いくつかの態様では、作用物質は1,500ダルトン未満である。いくつかの態様では、作用物質は抗体である。いくつかの態様では、作用物質はポリペプチドである。いくつかの態様では、CCX-CKR2ポリペプチドは、配列番号:2で示されるとおりである。いくつかの態様では、作用物質を、複数の作用物質を、配列番号:2の細胞外ドメインと少なくとも95%同一である細胞外ドメインを含むCCX-CKR2ポリペプチド、またはそのSDF1もしくはI-TAC結合性断片に接触させる段階、およびCCX-CKR2ポリペプチドまたはその断片への結合に関してI-TACまたはSDF-1と競合する作用物質を選択し、それによって癌細胞に結合する作用物質を同定する段階を含む方法によって同定する。
【0019】
本発明はまた、個体における癌を処置する方法を提供する。いくつかの態様では、方法は、個体に対し、CCX-CKR2ポリヌクレオチドの発現を阻害する治療有効量のポリヌクレオチドを投与する段階を含む。いくつかの態様では、CCX-CKR2ポリヌクレオチドは配列番号:2をコードする。いくつかの態様では、CCX-CKR2ポリヌクレオチドは配列番号:1を含む。いくつかの態様では、投与されるポリヌクレオチドは、siRNAを介して発現を阻害する。
【0020】
本発明はまた、個体における癌を処置する方法を提供する。いくつかの態様では、方法は、個体に対し、配列番号:2への結合に関してSDF1およびI-TACと競合する治療有効量の作用物質を投与する段階を含む。いくつかの態様では、作用物質は1,500ダルトン未満である。いくつかの態様では、作用物質は抗体である。いくつかの態様では、作用物質はポリペプチドである。いくつかの態様では、作用物質を、複数の作用物質を、配列番号:2の細胞外ドメインと少なくとも95%同一である細胞外ドメインを含むCCX-CKR2ポリペプチド、またはそのSDF1もしくはI-TAC結合性断片に接触させる段階、およびCCX-CKR2ポリペプチドまたはその断片への結合に関してI-TACまたはSDF-1と競合する作用物質を選択し、それによって癌細胞に結合する作用物質を同定する段階を含む方法によって同定する。いくつかの態様では、癌は、子宮頸癌、乳癌、リンパ腫、グリア芽細胞腫、前立腺癌および白血病からなる群より選択される。いくつかの態様では、癌は、カポジ肉腫、多中心性キャッスルマン病またはエイズ関連の原発性滲出液リンパ腫ではない。
【0021】
定義
「ケモカイン」または「ケモカインリガンド」とは、約50〜110アミノ酸から構成され、他の既知のケモカインと配列相同性がある低分子タンパク質のことを指す(例えば、Murphy, P.M., Pharmacol Rev. 52: 145-176 (2000)を参照されたい)。ケモカインは、アミノ酸一次配列に存在するシステイン(C)の第1の対の相対位置に従って分類される。CXCLケモカインでは、システインの第1の対は任意の単一のアミノ酸によって区分されている。CCLケモカインではシステインが隣接している。CX3CLケモカインでは、第1のシステイン対は3アミノ酸によって区分されている。CLケモカインは、相同な位置の内部にシステインを1つしか含んでいない。ケモカインは、ケモカイン受容体と結合してそれを活性化することにより、生体機能を誘発することができる。
【0022】
「ケモカイン受容体」とは、ケモカイン分子と特異的に相互作用するポリペプチドのことを指す。ケモカイン受容体は典型的に、7回膜貫通ドメインを備えたGタンパク質共役受容体である。ケモカイン受容体には共通した構造上の特徴がいくつかあり、これには、酸性度の高いN末端ドメイン;多くのケモカイン受容体の第2の細胞外ループに存在するアミノ酸配列DRYLAIVHA(またはその配列が少々変化したもの);全体として塩基性電荷を有する短い第3の細胞内ループ;4つの細胞外ドメインのそれぞれの内部のシステイン残基が含まれる可能性がある。通常、ケモカイン受容体の全体のサイズは約340〜370アミノ酸残基である。例えば、Murphy, P.M.、「Chemokine Receptors; Overview」、Academic Press 2000;ならびにLoetscher P.およびClark-Lewis I. J. Leukocyte Biol. 69: 881 (2001)における総説を参照されたい。代表的なケモカイン受容体には、例えば、CCケモカイン受容体(CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、およびCCR10を含む)、CXCケモカイン受容体(CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、およびCCX-CKR2(例えば配列番号:2)を含む)、CX3CR1、CXR1、CCXCKR(CCR11)、ウイルスにコードされたケモカイン受容体であるUS28、ECRF3、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスGPCR(ORF74)、ポックスウイルス膜結合Gタンパク質共役受容体;D6およびDARCが含まれる。
【0023】
ケモカイン受容体によって刺激することができる所定の応答は、膜貫通シグナル伝達、細胞質シグナル伝達カスケードの活性化、細胞骨格再編成、接着、走化性、侵襲、転移、サイトカイン産生、遺伝子誘導、遺伝子抑制、タンパク質発現の誘導または癌の発生をはじめとする細胞成長および分化の変調を含む。
【0024】
本明細書では「CCX-CKR2」と指定する「RDC1」は、7回膜貫通型ドメイン推定Gタンパク質結合受容体(GPCR)をいう。CCX-CKR2イヌ相同分子種が1991年にはじめて同定された。Libert et al. Science 244:569-572 (1989)を参照。イヌ配列は、Libert et al. Nuc. Acids Res 18(7):1917 (1990)に記載されている。マウス配列は、たとえば、Heesen et al., Immunogenetics 47:364-370 (1998)に記載されている。ヒト配列は、たとえば、Sreedharan et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:4986-4990 (1991)に記載されているが、タンパク質を血管作用性腸管ペプチドの受容体と誤って記載している。「CCX-CKR2」は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9または配列番号:10と実質的に類似しているか、それらの保存的に修飾された変異体である配列を含む。
【0025】
「ペプチド模倣物」および「模倣物」という用語は、ケモカイン受容体のアンタゴニストまたはアゴニストと実質的に同じ構造的および機能的な特徴を有する合成化合物のことを指す。ペプチド類似体は一般に、テンプレートペプチドと類似した特性を備えた非ペプチド薬として製薬産業で用いられている。この種の非ペプチド化合物は「ペプチド模倣物(peptide mimetic)」または「ペプチド模倣物(peptidomimetic)」と呼ばれる(Fauchere, J. Adv. Drug Res. 15: 29 (1986);VeberおよびFreidinger、TINS p. 392 (1985);ならびにEvansら、J. Med. Chem. 30: 1229 (1987)、これらは参照として本明細書に組み入れられる)。治療的に有用なペプチドと構造的に類似しているペプチド模倣物は、同等または向上した治療効果または予防効果を得るために用いることができる。一般に、ペプチド模倣物は模範ポリペプチド(すなわち、生物活性または薬理活性を有するポリペプチド)と構造的に類似しているが、例えばCH2NH-、-CH2S、-CH2-CH2-、-CH=CH-(シスおよびトランス)、-COCH2-、-CH(OH)CH2-、およびCH2SO-などからなる群より選択される連鎖によって随意に置換された1つまたは複数のペプチド連鎖を有する。模倣物は合成性で非天然性のアミノ酸類似体からすべて構成されてもよく、または、一部が天然ペプチドアミノ酸で一部が非天然性のアミノ酸類似体であるキメラ分子であってもよい。模倣物はまた、天然アミノ酸の保存的置換物の任意の量を、このような置換が模倣物の構造および/または活性を実質的に変化させない限り、包含しうる。模倣物は、例えばSDF-1またはI-TACのCCX-CKR2への結合を模倣することができる。例えば、模倣性組成物は、それがCCX-CKR2の活性または機能を阻害または増強しうるならば、本発明の範囲に含まれる。
【0026】
「抗体」とは、免疫グロブリン遺伝子またはその断片によって実質的にコードされた、分析対象物(抗原)と特異的に結合し、それを認識するポリペプチドをいう。認識される免疫グロブリン遺伝子は、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμ定常領域遺伝子ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖はκまたはλとして分類される。重鎖はγ、μ、α、δまたはεとして分類され、これらが他方で免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEをそれぞれ定義する。
【0027】
例示的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は四量体を含む。各四量体は、二つの同一のポリペプチド鎖の対で構成され、各対が1本の「軽」鎖(約25kD)および1本の「重」鎖(約50〜70kD)を有する。各鎖のN末端が、主として抗原認識を担う、約100〜110以上のアミノ酸の可変領域を画定する。可変性軽鎖(VL)および可変性重鎖(VH)という用語は、これらの軽鎖および重鎖をそれぞれ指す。
【0028】
抗体は、たとえば、完全な免疫グロブリンとして、または様々なペプチダーゼによる消化によって生成される十分に特性付けされた多数の断片として存在する。したがって、たとえば、ペプシンは、ヒンジ領域のジスルフィド結合の下方で抗体を消化して、Fabの二量体である、そのものがジスルフィド結合によってVH-CH1に結合した軽鎖であるF(ab)'2を生成する。F(ab)'2を穏やかな条件下で還元してジスルフィド結合をヒンジ領域で切断すると、それによって、F(ab)'2 二量体をFab'単量体に転換することができる。Fab'単量体は、本質的には、ヒンジ領域の一部を含むFabである(Paul (Ed.) Fundamental Immunology, Third Edition, Raven Press, NY (1993)を参照)。様々な抗体断片が無傷の抗体の消化に関して定義されているが、当業者は、そのような断片を、化学的に、または組み換えDNA法を使用することによってデノボ合成することができることを理解するであろう。したがって、本明細書で使用する用語「抗体」はまた、抗体全体の改変によって生成された抗体断片または組み換えDNA法を使用してデノボ合成された抗体断片(たとえば、単鎖Fv)を含む。
【0029】
「ヒト化」抗体とは、非ヒト種の免疫グロブリンから実質的に誘導される、抗原結合部位を有する分子であって、分子の残りの免疫グロブリン構造がヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づく分子をいう。抗原結合部位は、定常性ドメインに融合した完全な可変性ドメインまたは可変性ドメイン中の適切なフレームワーク領域にグラフトした相補性決定領域(CDR)のみを含むことができる。抗原結合部位は、野生型であってもよいし、ヒト免疫グロブリンをより近似するように一つまたは複数のアミノ酸置換によって改変されていてもよい。ヒト化抗体のいくつかの形態はすべてのCDR配列を保存する(たとえば、マウス抗体からの6個のCDRすべてを含むヒト化マウス抗体)。ヒト化抗体の他の形態は、元の抗体に対して変化している一つまたは複数のCDR(1個、2個、3個、4個、5個、6個)を有する。
【0030】
タンパク質またはペプチドを指していう場合の「抗体に特異的(または選択的)に結合する」または「〜と特異的(または選択的)に免疫反応性」とは、タンパク質および他の生物学的物質の異質性集団の存在でタンパク質の存在を決定する結合反応をいう。したがって、指定のイムノアッセイ条件下、指定の抗体は特定のタンパク質に結合し、試料中に存在する有意量の他のタンパク質には結合しない。そのような条件下での抗体への特異的結合は、特定のタンパク質への特異性に関して選択される抗体を要するかもしれない。たとえば、本発明のポリヌクレオチドのいずれかによってコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質に対して産生された抗体は、そのタンパク質とで特異的に免疫反応性であり、多形変異体、たとえば配列番号:2とで少なくとも80%、85%、90%、95%または99%同一であるタンパク質を除き、他のタンパク質とで免疫反応性ではない抗体を得るように選択することができる。特定のタンパク質とで特異的に免疫反応性である抗体を選択するためには、多様なイムノアッセイフォーマットを使用することができる。たとえば、タンパク質と特異的に免疫反応性であるモノクロナール抗体を選択するためには、固相ELISAイムノアッセイ、ウェスタンブロットまたは免疫組織化学が日常的に使用される。特異的免疫反応性を決定するために使用することができるイムノアッセイフォーマットおよび条件の記載に関しては、Harlow and Lane Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, NY (1988)を参照。特異的または選択的反応は、一般的には、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍、より一般的には、バックグラウンドの10〜100倍である。
【0031】
「リガンド」とは、ケモカイン受容体と結合しうる作用物質、例えば、ポリペプチドまたは別の分子を指す。
【0032】
本明細書で用いる場合、「ケモカイン受容体と結合する作用物質」とは、高い親和性でケモカイン受容体と結合する作用物質のことを指す。「高親和性」とは、薬理的に意味のある応答を誘導するのに十分な親和性、例えば、ケモカイン受容体に対する結合に関して、薬学的に意味のある濃度(例えば、約10−5M未満の濃度)で、天然のケモカインリガンドと競合しうることを指す。例えば、実施例1および図5を参照されたい。高親和性を備えた代表的な作用物質のいくつかは、ケモカイン受容体と、10−6Mを上回る親和性で、時には10−7Mまたは10−8Mを上回る親和性で結合すると考えられる。作用物質が10−4M未満の濃度である場合に、天然の受容体リガンドと結合に関して競合することができない作用物質は、本発明の目的に関しては「結合しない」とみなされる。
【0033】
「核酸」または「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、および、一本鎖または二本鎖の形態にあるそれらの重合体のことを指す。特に限定されない限り、この用語には、参照核酸と同程度の結合特性を有し、天然ヌクレオチドと類似した様式で代謝される、天然ヌクレオチドの既知の類似体が含まれる。別に指示しない限り、個々の核酸配列には、明示的に指定された配列のほかに、保存的に改変されたその変種(例えば、縮重コドン置換物)および相補的配列が暗黙的に含まれる。詳細には、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択した(またはすべての)コドンの第3の位置が、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基によって置換された配列を生じさせることによって行いうる(Batzerら、Nucleic Acids Res. 19: 5081 (1991);Ohtsukaら、J. Biol. Chem. 260: 2605-2608 (1985);およびCassolら(1992);Rossoliniら、Mol. Cell. Probes 8: 91-98 (1994))。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、および遺伝子によってコードされるmRNAと互換的に用いられる。
【0034】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書において、アミノ酸残基の重合体を指す目的で互換的に用いられる。これらの用語は、天然アミノ酸重合体および非天然アミノ酸重合体のほか、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的な化学的模倣物であるアミノ酸重合体に対しても適用される。本明細書で用いる場合、これらの用語には、アミノ酸残基が共有ペプチド結合によって連結された、完全長タンパク質(すなわち、抗原)を含む任意の長さのアミノ酸鎖が含まれる。
【0035】
「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸および合成アミノ酸のほか、天然のアミノ酸と類似した様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物のことも指す。天然のアミノ酸とは、遺伝暗号によってコードされるもののほか、その後に調節されたアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリンなどのアミノ酸もいう。アミノ酸類似体とは、天然のアミノ酸と同じ基本的な化学構造を有する、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基と結合したα炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムのことを指す。この種の類似体は、改変されたR基(例えば、ノルロイシン)または改変されたペプチド骨格を有するが、天然アミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持している。「アミノ酸模倣物」とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが天然アミノ酸と類似した様式で機能する化合物のことを指す。
【0036】
本明細書ではアミノ酸を、一般的に知られた三文字記号、またはIUPAC-IUBの生化学物質命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)が推奨している一文字記号のいずれかによって参照する。ヌクレオチドも同じく、一般的に認められている一文字記号によって参照する。
【0037】
「保存的に改変された変種」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。個々の核酸配列に関して、「保存的に改変された変種」とは、同一もしくは本質的に同一なアミノ酸配列をコードする核酸のことを指し、または、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には本質的に同一な配列のことを指す。遺伝暗号の縮重性のために、任意の蛋白質は多数の機能的に同一な核酸によってコードされうる。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべてアラニンというアミノ酸をコードする。このため、コドンによってアラニンが指定されるあらゆる位置で、コードされるポリペプチドを変化させずに、そのコドンを対応する上記のコドンのいずれかに変化させることができる。このような核酸変形物は「サイレント変形物」であり、保存的に改変された変形物の一種である。何らかのポリペプチドをコードする本明細書のあらゆる核酸配列は、その核酸のあらゆる可能なサイレント変形物についても述べている。当業者は、核酸内の各コドン(通常はメチオニンに対する唯一のコドンであるAUG、および通常はトリプトファンに対する唯一のコドンであるTGGを除く)を改変して、機能的に同一な分子を作製しうることを理解すると考えられる。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各々のサイレント変形物は、記載する各配列に黙示的に含まれる。
【0038】
アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされる配列中の単一のアミノ酸または少数のアミノ酸が改変、付加、たは除去される、核酸、ペプチド、ポリペプチド、または蛋白質の配列に対する個々の置換物、欠失物、または付加物が、改変によってアミノ酸が化学的に類似したアミノ酸に置換されるような「保存的に改変された変種」であることを理解すると考えられる。機能的に類似したアミノ酸が得られる保存的置換の表も当技術分野で周知である。このような保存的に改変された変種は、本発明の多型変種、種間相同体、および対立遺伝子に加わるものであり、それらが除外されるわけではない。
【0039】
以下の8つの群はそれぞれ、互いに保存的なアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、トレオニン(T);および
8)システイン(C)、メチオニン(M)
(例えば、Creighton、「Proteins」(1984)を参照されたい)。
【0040】
「配列一致率」は、最適なアラインメントがなされた2つの配列を比較域(comparison window)にわたって比較することによって決定され、この際、比較域中のポリヌクレオチド配列の一部分は、2つの配列の最適なアラインメントのために、参照配列(これは付加も欠失も含まない)と比較して付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでよい。この率は、両方の配列に同一の核酸塩基または残基が存在する位置の数を決定して一致する位置の数を求め、一致した位置の数を比較域における位置の総数で除算し、その結果に100を掛けて配列一致率を求めることによって算出される。
【0041】
2つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈において、「同一である」または「一致」率という用語は、一定の比較域にわたって、または以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いるかもしくは手作業によるアラインメントおよび目視検査によって指定された領域にわたって、最大の対応関係が得られるように比較およびアラインメントを行った場合に、同じである、または同じアミノ酸残基もしくはヌクレオチドが指定された比率である(すなわち、例えば本発明のポリペプチド配列全体または本発明のポリペプチドの細胞外ドメインの指定された領域にわたって60%の同一性、任意で65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性)、2つまたはそれ以上の配列または部分配列のことを指す。このような配列を「実質的に同一である」と言う。この定義は、被験配列の相補物のことも指す。任意で、同一性は、少なくとも約50ヌクレオチド長の領域にわたって、またはより好ましくは少なくとも100〜500もしくは1000ヌクレオチド長もしくはそれ以上の領域にわたって存在する。
【0042】
2つまたはそれ以上のポリペプチド配列の文脈において、「類似性」または「類似」率という用語は、一定の比較域にわたって、または以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いるかもしくは手作業によるアラインメントおよび目視検査によって指定された領域にわたって、最大の対応関係が得られるように比較およびアラインメントを行った場合に、同じである、または上に定義した8種の保存的アミノ酸置換の定義による類似性のあるアミノ酸残基が指定された比率である(すなわち、ポリヌクレオチド、例えばCCX-CKR2(例えば配列番号:2)のような本発明のポリペプチド配列全体または本発明のポリペプチドの細胞外ドメインの特定の領域または配列全体にわたって60%、任意で65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の類似性)、2つまたはそれ以上の配列または部分配列のことを指す。このような配列を「実質的に類似している」と言う。任意で、この類似性は、少なくとも約50アミノ酸長の領域にわたって、またはより好ましくは少なくとも約100〜500もしくは1000アミノ酸長もしくはそれ以上の領域にわたって存在する。
【0043】
配列比較に関しては、1つの配列を、被験配列と比較するための参照配列として用いることが一般的である。配列比較アルゴリズムを用いる場合には、被験配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分配列の座標を指定して、配列アルゴリズムプログラムのパラメーターを指定する。デフォールトのプログラムパラメーターを用いることもでき、別のパラメーターを指定することもできる。続いて、プログラムのパラメーターに基づいて、参照配列に対する被験配列の配列一致率または類似率を配列比較アルゴリズムで計算する。
【0044】
本明細書で用いる「比較域(comparison window)」は、2つの配列の最適なアラインメントを行った後に、ある配列を同じ数の連続した位置を持つ参照配列と比較しうるような、20〜600個、約50〜約200個、または約100〜約150個のアミノ酸またはヌクレオチドからなる群から選択される数の連続した位置のいずれか1つの区域に対する言及を含んでいる。比較のための配列のアラインメントの方法は当技術分野で周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、SmithおよびWaterman (1970) Adv. Appl. Math. 2: 482cの局所的相同性アルゴリズムにより、NeedlemanおよびWunsch (1970) J. Mol. Biol. 48: 443の相同性アラインメントアルゴリズムにより、PearsonおよびLipman (1988) Proc. Nat'l. Acad Sci.USA 85: 2444の類似性検索法により、これらのアルゴリズムのコンピュータ・インプリメンテーション(Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)により、または手作業によるアラインメントおよび目視検査によって行うことができる(例えば、Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」(1995年補遺)を参照されたい)。
【0045】
配列一致率および配列類似性の決定のために適したアルゴリズムの一例はBLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これはそれぞれAltschulら(1977)、Nuc. Acids Res. 25: 3389-3402およびAltschulら(1990)、J. Mol. Biol. 215: 403-410に記載されている。BLAST解析を行うためのソフトウエアは米国国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(http://www.ncbi.n1m.nih.gov/)に公開されている。このアルゴリズムでは、データベース配列中の同じ長さのワードとアラインメントを行った場合に何らかの正値の閾値スコアTと一致する、またはそれを満たす、長さWの短いワードを検索配列中に同定することにより、高スコア配列ペア(HSP)をまず同定する。Tは近隣ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschulら、前記)。これらの初期の近隣ワードでのヒットは、それらを含む長いHSPを見いだすための検索を開始する源となる。ワードの検索は、累積アラインメントスコアが増加する限り、各配列の両方向に対して延長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合にはパラメーターM(一致する残基対に関する報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基に関するペナルティスコア;常に<0)を用いて算出する。アミノ酸配列の場合には、累積スコアの算出にスコア行列を用いる。各方向へのワード検索の延長は以下の場合に停止する:累積アラインメントスコアが最大達成値に比べて量X以上低くなった場合:1つもしくは複数の負スコアの残基アラインメントの蓄積のために累積スコアがゼロまたはそれ未満になった場合;または配列のいずれかの端に達した場合。BLASTアルゴリズムのパラメーターであるW、T、およびXはアラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラムは(ヌクレオチド配列の場合)、デフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4、および両ストランドの比較を用いる。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムはデフォルトとしてワード長3および期待値(E)10、ならびにBLOSUM62スコア行列(HenikoffおよびHenikoff (1989)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915を参照)のアラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4、および両ストランドの比較を用いる。
【0046】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列の間の類似性に関する統計分析も行う(例えば、KarlinおよびAltschul (1993)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5787を参照)。BLASTアルゴリズムによって得られる類似性の指標の1つは最小合計確率(smallest sum probability)(P(N))であり、これは2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間の一致が偶然に起こる確率の指標となる。例えば、ある核酸は、被験核酸と参照核酸との比較による最小合計確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満の場合に、参照配列と類似しているとみなされる。
【0047】
2つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であるという指標の1つは、以下に述べるように、第1の核酸によってコードされるポリペプチドが、第2の核酸によってコードされるポリペプチドに対して産生された抗体と免疫学的に交差反応することである。したがって、例えば、2つのペプチドが保存的置換のみの点で異なる場合、ポリペプチドは一般に第2のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であるというもう1つの指標は、以下に述べるように、2つの分子またはその相補物がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。2つの核酸配列が実質的に同一であるというさらにもう1つの指標は、配列の増幅に同じプライマーを用いうることである。
【0048】
CCX-CKR2活性の「修飾物質」は、CCX-CKR2活性を直接的または間接的に増減する分子をいうために使用され、CCX-CKR2結合またはシグナル伝達に関するインビトロおよびインビボアッセイを使用して同定される分子を含む。CCX-CKR2活性は、たとえば、CCX-CKR2ポリペプチドをアゴニストと接触させることおよび/または場合によってはCCX-CKR2を細胞中で発現させることによって高めることができる。アゴニストとは、CCX-CKR2の活性を高める分子をいう。アゴニストは、たとえば、CCX-CKR2の活性に結合、CCX-CKR2の活性を刺激、増大、開放、活性化、促進、活性化増強、増感または上方制御する作用物質である。修飾物質は、CCX-CKR2への結合に関して公知のCCX-CKR2リガンド、たとえばSDF-1およびI-TACならびに本明細書に記載する小分子とで競合することができる。
【0049】
アンタゴニストとは、たとえば、I-TACまたはSDF-1のようなアゴニストの結合をブロックすることによってCCX-CKR2活性を阻害する分子をいう。アンタゴニストは、たとえば、CCX-CKR2に結合、刺激を部分的または完全にブロック、活性化を低下、防止、遅延、CCX-CKR2の活性を不活性化、感度低下または下方制御する作用物質である。
【0050】
修飾物質は、たとえば、CCX-CKR2と、活性化物質または阻害物質、Gタンパク質結合受容体(GPCR)をはじめとする受容体、キナーゼなどと結合するタンパク質との相互作用を変化させる作用物質を含む。修飾物質は、天然に存在するケモカイン受容体リガンドの遺伝子改変形態、たとえば活性を変化させた形態ならびに天然に存在するリガンドおよび合成リガンド、アンタゴニスト、アゴニスト、小さな化学分子、siRNAなどを含む。阻害物質および活性化物質のアッセイは、たとえば、CCX-CKR2を発現する細胞に推定修飾物質化合物を適用したのち、CCX-CKR2シグナル伝達に対する機能効果、たとえば、ERK1またはERK2シグナル伝達経路の要素のERK1および/またはERK2リン酸化または活性化および/または本明細書で記載する他の効果を決定することを含む。潜在的な活性化物質、阻害物質または修飾物質で処理されたCCX-CKR2を含む試料またはアッセイを、阻害物質、活性化物質または修飾物質なしの対照試料と比較して阻害の程度を審査する。対照試料(阻害物質で処理されていない)には、100%の相対ケモカイン受容体活性値を割り当てる。対照に対するCCX-CKR2活性または発現値が約95%未満、場合によっては約90%、場合によっては約80%、場合によっては約50%または約25〜0%である場合に、CCX-CKR2の阻害が達成されたものとする。対照に対するCCX-CKR2活性または発現値が少なくとも約105%、約110%、場合によっては少なくとも約105%、約150%、場合によっては少なくとも約105%、約200〜500%または少なくとも約105%、約1000〜3000%またはそれを超える場合に、CCX-CKR2の活性化が達成されたものとする。
【0051】
「siRNA」は、遺伝子発現の干渉を生じさせることができ、細胞、たとえば哺乳動物細胞(ヒト細胞を含む)および身体、たとえば哺乳動物身体(ヒトを含む)において特定の遺伝子の転写後サイレンシングを生じさせることができる小さな干渉性RNAをいう。RNA干渉の現象は、Bass, Nature 411:428-29 (2001); Elbahir et al., Nature 411:494-98 (2001)およびFire et al., Nature 391:806-11 (1998)ならびに干渉性RNAを製造する方法が論じられているWO01/75164で記載され、論じられている。本明細書で開示する遺伝子産物をコードする配列および核酸に基づくsiRNAは、一般に、100未満の塩基対(bp)を有し、たとえば、約30bp以下の長さであることができ、相補的DNA鎖の使用をはじめとする当技術分野で公知の手法または合成法によって製造することができる。siRNAは、干渉を生じさせることができ、細胞、たとえば哺乳動物細胞(ヒト細胞を含む)および身体、たとえば哺乳動物身体(ヒトを含む)において特定の遺伝子の転写後サイレンシングを生じさせることができる。本発明の例示的なsiRNAは、29bpまで、25bp、22bp、21bp、20bp、15bp、10bp、5bpまたはそれらの周辺もしくはそれらの間の任意の整数個の塩基対を有することができる。最適な阻害siRNAを設計するためのツールは、DNAengine, Inc.(Seattle, WA)およびAmbion, Inc.(Austin, TX)から市販されているものを含む。
【0052】
あるRNAi技術は、センス配列およびアンチセンス配列が、介在配列に隣接する領域に、供与体および受容体スプライシング部位とで正しいスプライシング配向で配置されている遺伝子コンストラクトを使用する。または、様々な長さのスペーサ配列を用いてコンストラクト中の配列の自己相補領域を分離してもよい。遺伝子コンストラクト転写物の処理中、介在配列をスプライスアウトして、センスおよびアンチセンス配列ならびにスプライス接合配列を結合させて二本鎖RNAを形成する。リボニクレアーゼを選択し、次にその二本鎖RNAに結合し、それを切断し、それによって特定のmRNA遺伝子配列の分解および特定の遺伝子のサイレンシングを招く一連の事象を開始させる。
【0053】
用語「化合物」は、特定の分子をいい、その鏡像異性体、ジアステレオ異性体、多形および塩を含む。
【0054】
用語「ヘテロ原子」は、結合した窒素、酸素または硫黄原子をいう。
【0055】
用語「置換」は、親分子または基に結合している基をいう。したがって、メチル置換基を有するベンゼン環はメチル置換ベンゼンである。同様に、5個の水素置換基を有するベンゼン環は、親分子に結合している場合、非置換フェニル基となる。
【0056】
用語「置換ヘテロ原子」は、ヘテロ原子が置換されている基をいう。ヘテロ原子は、水素、ハロゲン、アルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニル、アリール、アリーレン、シクロアルキル、シクロアルキレン、ヘテロアリール、ヘテロアリーレン、ヘテロシクリル、炭素環、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシおよびスルホニルを含むが、これらに限定されない基または原子で置換されることができる。代表的な置換ヘテロ原子は、例として、シクロプロピルアミニル、イソプロピルアミニル、ベンジルアミニルおよびフェノキシを含む。
【0057】
用語「アルキル」は、直鎖状または分岐鎖状であることができる一価の飽和炭化水素基をいう。断りない限り、このようなアルキル基は通常、炭素原子1〜10個を含む。代表的なアルキル基は、例として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルなどを含む。
【0058】
用語「アルキレン」は、直鎖状または分岐鎖状であることができる二価の飽和炭化水素基をいう。断りない限り、このようなアルキレン基は通常、炭素原子1〜10個を含む。代表的なアルキレン基は、例として、メチレン、エタン-1,2-ジイル(「エチレン」)、プロパン-1,2-ジイル、プロパン-1,3-ジイル、ブタン-1,4-ジイル、ペンタン-1,5-ジイルなどを含む。
【0059】
用語「アルケニル」は、直鎖状または分岐鎖状であることができ、少なくとも1個、一般には1、2または3個の炭素−炭素二重結合を有する一価の不飽和炭化水素基をいう。断りない限り、このようなアルケニル基は通常、炭素原子2〜10個を含む。代表的なアルケニル基は、例として、エテニル、n-プロペニル、イソプロペニル、n-ブト-2-エニル、n-ヘキス-3-エニルなどを含む。
【0060】
用語「アルキニル」は、直鎖状または分岐鎖状であることができ、少なくとも1個、一般には1、2または3個の炭素−炭素三重結合を有する一価の不飽和炭化水素基をいう。断りない限り、このようなアルキニル基は通常、炭素原子2〜10個を含む。代表的なアルキニル基は、例として、エチニル、n-プロピニル、n-ブト-2-イニル、n-ヘキス-3-イニルなどを含む。
【0061】
用語「アリール」は、単一環(すなわちフェニル)または縮合環(すなわちナフタレン)を有する一価の芳香族炭化水素をいう。断りない限り、このようなアリール基は通常、炭素環原子6〜10個を含む。代表的なアリール基は、例として、フェニルおよびナフタレン-1-イル、ナフタレン-2-イルなどを含む。
【0062】
用語「アリーレン」は、単一環(すなわちフェニレン)または縮合環(すなわちナフタレンジイル)を有する二価の芳香族炭化水素をいう。断りない限り、このようなアリーレン基は通常、炭素環原子6〜10個を含む。代表的なアリーレン基は、例として、1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-1,5-ジイル、ナフタレン-2,7-ジイルなどを含む。
【0063】
用語「アラルキル」は、アリール置換アルキル基をいう。代表的なアラルキル基はベンジルを含む。
【0064】
用語「シクロアルキル」は、単一環または縮合環を有する一価の飽和炭素環式炭化水素基をいう。断りない限り、このようなシクロアルキル基は通常、炭素原子3〜10個を含む。代表的なシクロアルキル基は、例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを含む。
【0065】
用語「シクロアルキレン」は、単一環または縮合環を有する二価の飽和炭素環式炭化水素基をいう。断りない限り、このようなシクロアルキレン基は通常、炭素原子3〜10個を含む。代表的なシクロアルキレン基は、例として、シクロプロパン-1,2-ジイル、シクロブチル-1,2-ジイル、シクロブチル-1,3-ジイル、シクロペンチル-1,2-ジイル、シクロペンチル-1,3-ジイル、シクロヘキシル-1,2-ジイル、シクロヘキシル-1,3-ジイル、シクロヘキシル-1,4-ジイルなどを含む。
【0066】
用語「ヘテロアリール」は、単一環または縮合環を有し、窒素、酸素または硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子(一般には1〜3個のヘテロ原子)を環中に含む置換または非置換の一価の芳香族基をいう。断りない限り、このようなヘテロアリール基は通常、合計5〜10個の環原子を含む。代表的なヘテロアリール基は、例として、ピロール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、フラン、チオフェン、トリアゾール、ピラゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、トリアジン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリンなどの一価種を含み、その場合、結合点は、利用可能な任意の炭素または窒素環原子のところである。
【0067】
用語「ヘテロアリーレン」は、単一環または縮合環を有し、窒素、酸素または硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子(一般には1〜3個のヘテロ原子)を環中に含む二価の芳香族基をいう。断りない限り、このようなヘテロアリーレン基は通常、合計5〜10個の環原子を含む。代表的なヘテロアリーレン基は、例として、ピロール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、フラン、チオフェン、トリアゾール、ピラゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、トリアジン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリンなどの二価種を含み、その場合、結合点は、利用可能な任意の炭素または窒素環原子のところである。
【0068】
用語「ヘテロシクリル」または「複素環式基」は、単一環または多数の縮合環を有し、窒素、酸素または硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子(一般には1〜3個のヘテロ原子)を環中に含む、置換または非置換の、一価の飽和または不飽和(非芳香族)基をいう。断りない限り、このような複素環式基は通常、合計2〜9個の環原子を含む。代表的な複素環式基は、例として、ピロリジン、モルホリン、イミダゾリン、ピラゾリジン、ピペリジン、1,4-ジオキサン、チオモルホリン、ピペラジン、3-ピロリンなどの一価種を含み、その場合、結合点は、利用可能な任意の炭素または窒素環原子のところである。
【0069】
用語「炭素環」は、環中の各原子が炭素である芳香環または非芳香環をいう。代表的な炭素環は、シクロヘキサン、シクロヘキセンおよびベンゼンを含む。
【0070】
用語「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ−(-F)、クロロ−(-Cl)、ブロモ−(-Br)およびヨード−(-I)をいう。
【0071】
用語「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は、-OH基をいう。
【0072】
用語「アルコキシ」は、-OR基をいい、その場合、Rは、置換または非置換のアルキル、アルキレン、シクロアルキルまたはシクロアルキレンであることができる。適当な置換基は、ハロ、シアノ、アルキル、アミノ、ヒドロキシ、アルコキシおよびアミドを含む。代表的なアルコキシ基は、例として、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシおよびトリフルオロメトキシを含む。
【0073】
用語「アリールオキシ」は、-OR基をいい、その場合、Rは、置換または非置換のアリールまたはヘテロアリール基であることができる。代表的なアリールオキシ基はフェノキシを含む。
【0074】
用語「スルホニル」は、-S(O)2-基または-S(O)2R-基をいい、その場合、Rは、アルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルキレン、ヘテロアリール、ヘテロアリーレン、複素環式またはハロゲンであることができる。代表的なスルホニル基は、例として、スルホネート、スルホンアミド、スルホニルハライドおよびジプロピルアミドスルホネートを含む。
【0075】
用語「縮合」は、2個以上の分子が共有結合する反応をいう。同様に、縮合物は、縮合反応によって形成された生成物である。
【0076】
発明の詳細な説明
I. 序
本発明は、本明細書ではCCX-CKR2と呼ぶオーファン受容体RDC1がケモカインリガンドSDF1およびI-TACに結合するという発見を提供する。そのうえ、本発明は、癌におけるCCX-CKR2の関与の驚くべき発見を提供する。したがって、本発明は、CCX-CKR2を検出する段階によって癌を診断する方法を提供する。本発明はまた、癌を有する個体にCCX-CKR2の修飾物質を投与することによって癌を抑制する方法を提供する。
【0077】
II. CCX-CKR2ポリペプチドおよびポリヌクレオチド
本発明の多数の態様で、対象のCCX-CKR2ポリペプチドをコードする核酸を単離し、組み換え法を使用してクローン化する。このような態様は、たとえば、タンパク質発現のために、または変異体、誘導体、発現カセットもしくはCCX-CKR2ポリペプチドに由来する他の配列(たとえば、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8および配列番号:10)の生成の際にCCX-CKR2ポリヌクレオチド(たとえば、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7および配列番号:9))を単離するために、様々な種におけるCCX-CKR2配列の単離または検出のためにCCX-CKR2遺伝子発現をモニタするために、患者における診断目的のために、たとえばCCX-CKR2における突然変異を検出する、またはCCX-CKR2核酸もしくはCCX-CKR2ポリペプチドの発現を検出するために使用される。いくつかの態様では、CCX-CKR2をコードする配列は、異種プロモータと作用的にリンクしている。いくつかの態様では、本発明の核酸は、特にたとえばヒト、マウス、ラット、イヌなどを含む哺乳動物からの核酸である。
【0078】
場合によっては、本発明のCCX-CKR2ポリペプチドは、ヒトCCX-CKR2配列(たとえば、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8および配列番号:10)の細胞外アミノ酸を含み、他の残りは変化しているか、不在である。他の態様では、CCX-CKR2ポリペプチドは、CCX-CKR2のリガンド結合性断片を含む。たとえば、場合によっては、断片は、I-TACおよび/またはSDF1に結合する。7回膜貫通型受容体(そのうち、CCX-CKR2が一つである)の構造は当業者には周知であり、したがって、膜貫通ドメインは容易に決定することができる。たとえば、容易に入手可能な疎水性アルゴリズムは、インターネット上、Gタンパク質結合受容体データベース(GPCRDB)、たとえばhttp://www.gpcr.org/7tm/seq/DR/RDC1_HUMAN.TABDR.htmlまたはhttp://www.gpcr.org/7tm/seq/vis/swac/P25106.htmlで見いだすことができる。
【0079】
本発明は、組み換え遺伝子学の分野の常用技術に基づく。本発明における一般的な使用方法を開示する基本教書は、Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (3rd ed. 2001); Kriegler, Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual (1990)およびCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds., 1994)を含む。
【0080】
哺乳動物組織からのCCX-CKR2をコードする遺伝子を同定するのに適切なプライマーおよびプローブは、本明細書で提供する配列(たとえば配列番号:1)に由来することができる。PCRの概説に関しては、Innis et al., PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press, San Diego (1990)を参照。
【0081】
III. 具体的な治療法の開発
CCX-CKR2機能の修飾物質、すなわちアゴニストもしくはアンタゴニストまたはCCX-CKR2活性の作用物質を含む、CCX-CKR2に結合する分子は、癌を含む多数の哺乳動物疾患を処置するのに有用である。
【0082】
ケモカイン受容体のアンタゴニストまたは他のケモカイン受容体機能の阻害物質で処置することができるヒトまたは他の種の疾患または状態は、たとえば、癌、グリオーム、中皮腫、メラノーマ、リンパ腫、白血病、腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、グリア芽細胞腫、白血病、リンパ腫、前立腺癌およびバーキットリンパ腫、頭部および頸部の癌、大腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝胆管癌、胆嚢癌、小腸癌、直腸癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、陰茎癌、尿道癌、睾丸癌、子宮頸癌、膣癌、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、膵臓内分泌癌、カルチノイド腫瘍、骨腫、皮膚癌、網膜芽細胞腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(さらなる癌に関しては、CANCER:PRINCIPLES AND PRACTICE (DeVita, V. T. et al. eds 1997)を参照)ならびに脳および神経細胞機能不全、たとえばアルツハイマー病および多発性硬化症、腎機能不全、リューマチ関節炎、心臓同種異系移植片拒絶反応、アテローム硬化症、ぜん息、腎炎、接触性皮膚炎、炎症性腸疾患、大腸炎、乾癬、再かん流傷害ならびに本明細書に記載する他の障害および疾患を含むが、これらに限定されない。
【0083】
または、CCX-CKR2のアゴニストは、たとえば腎、脳または神経細胞機能不全および幹細胞動員が治療性である症例で疾患を処置するために使用することができる。
【0084】
A. ケモカイン受容体の修飾物質を同定する方法
細胞、特に哺乳動物細胞、特にヒト細胞におけるCCX-CKR2の活性または機能のレベルを変調する作用物質を同定するためには多数の異なるスクリーニングプロトコルを使用することができる。概して、スクリーニング法は、複数の作用物質をスクリーニングして、たとえばCCX-CKR2に結合してリガンド(たとえばI-TACおよび/またはSDF1)がCCX-CKR2に結合する、またはCCX-CKR2を活性化することを防ぐことによってCCX-CKR2(またはその細胞外ドメイン)と相互作用する作用物質を同定する段階を含む。いくつかの態様では、作用物質は、別のタンパク質のための作用物質の親和性の少なくとも約1.5、2、3、4、5、10、20、50、100、300、500または1000倍の親和性でCCX-CKR2と結合する。
【0085】
1. ケモカイン受容体結合アッセイ
いくつかの態様では、CCX-CKR2修飾物質は、CCX-CKR2のリガンド、たとえばSDF1またはI-TACと競合する分子を求めてスクリーニングすることによって同定される。当業者は、競合分析を実施する方法が数多くあることを認識するであろう。いくつかの態様では、CCX-CKR2を有する試料を、標識CCX-CKR2リガンドとともにプレインキュベートしたのち、潜在的な競合分子と接触させる。CCX-CKR2に結合したリガンドの量の変化(たとえば減少)が、その分子が潜在的なCCX-CKR2修飾物質であることを示す。
【0086】
CCX-CKR2に結合することができる作用物質を求めてスクリーニングすることによって予備的なスクリーニングを実施して、そのようにして同定される作用物質の少なくともいくつかがケモカイン受容体修飾物質である可能性を高めることができる。結合アッセイは普通、CCX-CKR2を一つまたは複数の被験作用物質と接触させ、タンパク質と被験作用物質とが結合複合体を形成するのに十分な時間を許すことを含む。形成する結合複合体は、多数の確立された分析技術のいずれかを使用して検出することができる。タンパク質結合アッセイは、免疫組織化学的結合アッセイ、フローサイトメトリー、放射性リガンド結合、ユーロピウム標識リガンド結合、ビオチン標識リガンド結合またはCCX-CKR2のコンホメーションを維持する他のアッセイを含むが、これらに限定されない。このようなアッセイで使用されるケモカイン受容体は、自然に発現させることもできるし、クローン化させることもできるし、合成することもできる。たとえば、CCX-CKR2を潜在的アゴニストと接触させ、CCX-CKR2活性を計測することにより、CCX-CKR2活性を刺激する分子を同定することが可能である。
【0087】
2. 細胞および試薬
本発明のスクリーニング法は、インビトロとして実施することもできるし、細胞ベースのアッセイとして実施することもできる。インビトロアッセイは、たとえば、CCX-CKR2を含む膜画分または細胞全体を使用して実施される。細胞ベースのアッセイは、CCX-CKR2が発現するいかなる細胞ででも実施することができる。
【0088】
細胞系アッセイ法では、作用物質の結合、または作用物質によるCCX-CKR2の活性の調節に関するスクリーニングのために、全細胞、またはCCX-CKR2を含む細胞画分を用いる。本発明の方法に従って用いうる細胞種の例には、例えば、白血球、例えば好中球、単球、マクロファージ、好酸球、好塩基球、マスト細胞、およびリンパ球(T細胞およびB細胞など)、白血病細胞、バーキットリンパ腫細胞、腫瘍細胞、内皮細胞、線維芽細胞、心筋細胞、筋細胞、乳房腫瘍細胞、卵巣癌細胞、子宮頸癌細胞、膠芽腫、肝細胞、腎細胞、および神経細胞を含む任意の哺乳動物細胞、さらには酵母を含む真菌細胞が含まれる。細胞は初代細胞でも腫瘍細胞でもよく、またはその他の種類の不死細胞株でもよい。当然ながら、CCX-CKR2を、CCX-CKR2の内因性型を発現しない細胞で発現させることができる。
【0089】
場合によっては、CCX-CKR2の断片およびタンパク質融合物をスクリーニングに使用することができる。CCX-CKR2リガンドとの結合に関して競合する分子が望まれる場合、使用されるCCX-CKR2断片は、リガンドと結合することができる(たとえば、I-TACまたはSDF1と結合することができる)断片である。または、CCX-CKR2の任意の断片を、CCX-CKR2に結合する分子を同定するための標的として使用することができる。CCX-CKR2断片は、たとえば少なくとも20、30、40、50アミノ酸の断片から、CCX-CKR2の1個のアミノ酸を除くすべてを含有するタンパク質までを含むことができる。一般に、リガンド結合性断片は、CCX-CKR2の膜貫通領域および/または細胞外ドメインの大部分もしくはすべてを含む。
【0090】
3. シグナル伝達活性
いくつかの態様では、CCX-CKR2活性化によって誘発されるシグナル伝達を使用してCCX-CKR2修飾物質を識別する。ケモカイン受容体のシグナル伝達活性は、多くの方法で測定することができる。たとえば、シグナル伝達は、ケモカイン受容体媒介細胞接着を検出することによって測定することができる。ケモカインとケモカイン受容体との間の相互作用が、インテグリン親和性および結合力の変調を介して速やかな接着を生じさせることができる。たとえば、Laudanna, Immunological Reviews 186:37-46 (2002)を参照。
【0091】
シグナル伝達はまた、二次メッセンジャ、たとえばサイクリックAMPまたはイノシトールリン酸を定性または定量することによって計測することもできし、リン酸化または脱リン酸化事象をモニタすることもできる。たとえば、Premack, et al. Nature Medicine 2:1174-1178 (1996)およびBokoch, Blood 86:1649-1660 (1995)を参照。
【0092】
実施例は、CCX-CKR2活性がMAPK経路によって媒介されること、具体的にはCCX-CKR2がMAPKタンパク質ERK1およびERK2のリン酸化を促進することを実証する結果を提供する。例示的な天然配列ERK1は、GenBankアクセッション番号p27361で提供されている。例示的な天然配列ERK2は、GenBankアクセッション番号p28482で提供されている。したがって、一部のアッセイは、MAPK経路中のシグナルを検出するように設計されている。MAPK経路に関して使用する用語「シグナル」は、経路および/または経路に伴う何らかの活性もしくは発現の一部である成分をいう。この成分は、MAPKシグナル伝達経路で関与する(たとえば生成、利用または変調される)任意の分子(たとえばタンパク質)であることができる。シグナルは、場合によっては、MAPKタンパク質、たとえばERK1またはERK2のリン酸化の検出である。検出することができる他のシグナルは、ERK1またはERK2のリン酸化の下流で形成および/または利用される成分ならびにそれらの成分の形成および利用に伴う活性を含む。一部のアッセイは、ERK1またはERK2のリン酸化の上流で形成および/または利用される成分ならびにそのような上流成分の生成または利用に伴う活性を検出するために実施することができる。前記のように、ERK1またはERK2の場合、上流成分は、たとえば、Ras、MKKK(たとえばc-Raf1、B-RafおよびA-Raf)およびMKK(たとえばMKK1およびMKK2)を含む。下流成分は、たとえば、タンパク質p90RSK、c-JUN、c-FOS、CREBおよびSTATを含む。したがって、これらの成分それぞれは、特定のアッセイおよび/またはこれらの成分の変調(たとえばリン酸化)で検出することができる。加えて、遺伝子発現プロファイリングおよびタンパク質分泌を検出することもできる。
【0093】
提供されるスクリーニングアッセイのいくつかは、ERK1および/またはERK2のリン酸化を検出する段階を含む。これらのタンパク質のリン酸化は、リガンド(たとえばSDF1、ITAC)依存性である。したがって、特定のスクリーニング法におけるアッセイは、ERK1およびERK2のリン酸化を促進するため、ITACまたはSDF1の存在で実施される。アッセイがITACおよびSDF1とで実施される場合、上記の理由のため、CXCR3またはCXCR4を発現しない細胞を使用してアッセイを簡素化することができる。
【0094】
ERK1またはERK2がリン酸化されているかどうかの決定は、様々な手法を使用して実施することができる。一つの選択は、細胞をCCX-CKR2リガンドおよび被験作用物質とともにインキュベートしたのち溶解させることである。そして、得られた溶解産物を、ウェスタンブロットにより、溶解産物をゲル電気泳動させてタンパク質を分離し、さらにリン酸化形態のERK1またはERK2に特異的に結合する抗体でゲルをプロービングすることよって分析することができる。このような抗体は、Cell Signaling Technologies, Beverly, MAから市販されている。存在するERK1またはERK2の合計量は、任意で、ERK1およびERK2のリン酸化および非リン酸化両形態に特異的に結合する抗体を使用して決定することもできる。この手法に関するさらなる詳細は実施例で記載する。高スループットスクリーニングに適したもう一つの選択は、ERK1およびERK2のリン酸化形態に特異的に結合する抗体を使用するELISA法を使用することである。高スループットフォーマットでこのようなアッセイを実施するためのキットもまた、Cell Signaling Technologies, Beverly, MAから市販されている(たとえばPathScan(商標)Phospho-p44/42 MAPK(T202/Y204)サンドイッチELISAキットを参照)。
【0095】
同様のウェスタンブロットおよびELISA技術を使用して、経路に関与する成分を特異的に認識する抗体を使用して、ERK1およびERK2のリン酸化の下流のMAPK経路の成分であるタンパク質の存在を検出することもできる。たとえば、p90RSKのリン酸化は、リン酸化ERK2またはERK2のウェスタン検出と同様に、市販のリン光体特異的抗体を使用して評価することができる。
【0096】
加えて、CCX-CKR2活性化の下流の他の事象をモニタしてシグナル伝達活性を測定することもできる。下流の事象は、ケモカイン受容体の刺激の結果として起こる活性または徴候を含む。例示的な下流事象は、たとえば細胞の変化状態(たとえば正常な状態から癌細胞への変化または癌細胞から非癌性細胞への変化)を含む。細胞応答は、細胞の接着(たとえば内皮細胞への)を含む。また、CCX-CKR2修飾物質によって生じる効果に関して、血管形成に関与する確立されたシグナル伝達カスケード(たとえばVEGF媒介シグナル伝達)をモニタすることもできる。たとえば漿尿膜アッセイ(CAM)を使用して血管形成に対する効果をアッセイすることもできるし、たとえばMilesアッセイを使用して血管透過性に対する効果を研究することができる。
【0097】
もう一つの例では、CCX-CKR2活性の代わりに細胞生存を計測することもできる。実施例でさらに詳細に記載するように、CCX-CR2の発現は、低血清条件で増殖させたCCX-CR2を発現しない細胞と比較して、同じ条件で増殖させたCCX-CR2発現性細胞の生存延長を生じさせる。したがって、CCX-CR2の拮抗作用は細胞生存を下げると予想されるが、活性化(たとえばアゴニストによる)は細胞生存を高めると予想される。その結果、細胞生存およびアポトーシスがCCX-CR2活性の尺度として働くことができる。
【0098】
多様な細胞死およびアポトーシスアッセイをスクリーニング法に組み込んでCCX-CR2の修飾物質を同定することができる。一般に、このタイプのアッセイは通常、細胞集団を、細胞死またはアポトーシスの潜在的な修飾物質である被験化合物の存在および非存在で、細胞死またはアポトーシスを誘発する条件に付すことを含む。そして、細胞またはその抽出物を用いてアッセイを実施して、細胞死またはアポトーシスの程度を被験作用物質の存在下と非存在下とで比較することによって被験作用物質が細胞死またはアポトーシスに対してどのような影響を及ぼすのかを評価する。細胞死またはアポトーシスをアッセイする代わりに、反対のタイプのアッセイ、すなわち、細胞生存ならびに関連する活性、たとえば細胞成長および細胞増殖のアッセイを実施することもできる。具体的なアッセイのタイプにかかわらず、一部のアッセイは、CCX-CR2を活性化するリガンド、たとえばI-TACまたはSDF-1の存在で実施される。
【0099】
細胞死およびアポトーシスに特徴的である多様な異なるパラメータを本スクリーニング法でアッセイすることができる。そのようなパラメータの例は、遺伝子またはタンパク質発現分析による毒物学的反応の細胞経路の活性化のモニタリング、DNA断片化、細胞膜の組成における変化、膜透過性、死受容体または下流シグナル伝達経路の成分(たとえばカスパーゼ)の活性化、ジェネリックストレス反応、NF-κB活性化および分裂応答を含むが、これらに限定されない。
【0100】
アポトーシスを減らす際にCCX-CKR2が演じる役割を考慮すると、もう一つの手法は、アポトーシスおよび細胞死の反対をアッセイする、すなわち細胞生存または細胞増殖を検出するスクリーニングを実施することである。細胞生存は、たとえば、細胞が生育可能な状態にとどまる時間の長さ、原細胞の一定の割合が生きた状態にとどまる時間の長さまたは細胞数の増大をモニタすることによって検出することができる。これらのパラメータは、確立された技術を使用して視覚的にモニタすることができる。
【0101】
アポトーシスを評価するためのもう一つのアッセイは、細胞をアネキシンV(Alexa Fluor(登録商標)488色素とコンジュゲート)およびヨウ化プロピジウム(PI)(Molecular Probes, Eugene, Oregon)で標識することを含む。核酸結合性の赤い蛍光色素であるPIは、生きた細胞およびアポトーシス細胞の両方に対して不透過性である。PIは、細胞中の核酸に強く結合することにより、壊死細胞だけを標識する。アネキシンVは、アポトーシス細胞がホスファチジルセリン(PS)を細胞の外面に転位させるという事実を利用する。アネキシンVは、PSに対して高い親和性を有するヒト抗凝血剤である。アポトーシス細胞はその外面にPSを発現するが、生きた細胞はそれを発現しない。アネキシンV(Alexa Fluor(登録商標)488色素で標識)はこれらの細胞を緑の蛍光で標識する。そして、蛍光標示式細胞分取器(FACS)で細胞を分析して、赤および緑のチャネルの蛍光を評価することができる。アポトーシス細胞は緑のチャネルの中だけで蛍光を発し(アネキシン陽性、PI陰性)、生きた細胞は赤および緑両方のチャネルの中で低い蛍光を示し(アネキシン陰性、PI陰性)、壊死または死細胞は赤および緑両方のチャネルの中で強く陽性である(アネキシン陽性、PI陽性)。
【0102】
他のスクリーニング法は、CCX-CR2の存在または活性化によって特定の制御タンパク質の発現が誘発されるという観測に基づく。したがって、このようなタンパク質の検出を使用して、CCX-CR2の活性を間接的に測定することができる。以下の実施例でさらに詳細に記載するように、一連のELISA研究を実施して、CCX-CR2を形質移入された細胞およびそれを形質移入されていない細胞に関して細胞培地中で分泌される種々のタンパク質の相対濃度を比較した。これら一連の研究を通じて、CCX-CR2が、成長因子、ケモカイン、メタロプロテイナーゼおよびメタロプロテイナーゼの阻害物質をはじめとする多種多様な制御タンパク質の産生を誘発すると判断した。したがって、提供されるスクリーニング法のいくつかは、被験作用物質が、CCX-CR2による成長因子、ケモカイン、メタロプロテイナーゼおよびメタロプロテイナーゼの阻害物質の産生を変調するかどうかを決定することを含む。いくつかの例では、CCX-CR2誘発タンパク質の産生を増すことがわかったため、制限的な血清条件下で増殖させた細胞(またはその抽出物)を用いてアッセイを実施した(実施例を参照)。
【0103】
以下のタンパク質は、検出されたタンパク質の種々のクラスおよび各クラス内の具体的なタンパク質の例である。(1)成長因子(たとえばGM-CSF)、(2)ケモカイン(たとえばRANTES、MCP-1)、(3)メタロプロテイナーゼ(たとえばMMP3)および(4)メタロプロテイナーゼの阻害物質(たとえばTIMP-1)。これら種々のクラスの他のタンパク質を検出することもできると予想される。
【0104】
これら特定のタンパク質は、当技術分野で公知である標準の免疫学的検出法を使用して検出することができる。高スループットフォーマットで使用するのに適した一つの手法は、たとえば、マルチウェルプレートで実施されるELISAである。TIMP-1を検出するためのELISAキットは、DakoCytomationから市販されている(製品コード番号EL513)。上記タンパク質に特異的に結合する抗体の供給元のさらなる例が以下の実施例に提供されている。また、酵素であるメタロプロテイナーゼのようなタンパク質は、公知の酵素アッセイによって検出することができる。
【0105】
他の態様では、CCX-CK2の潜在的修飾物質を、細胞接着を変調する能力に関して試験する。内皮細胞単層への腫瘍細胞接着が転移性侵入のモデルとして研究されている(たとえば、Blood and Zetter, Biovhem. Biophys. Acta, 1032, 89-119 (1990)を参照)。内皮細胞のこれらの単層は、リンパ管系を模倣するものであり、種々のサイトカインおよび成長因子(たとえばTNFαおよびIL-1β)で刺激することができる。CCX-CKR2を発現する細胞は、この単層に接着する能力に関して、静的接着アッセイおよび細胞がインビボでの血管系の力を模倣する流れ条件下にあるアッセイの両方で評価することができる。さらには、接着を評価するためのアッセイは、インビボで実施することもできる(たとえば、von Andrian, U. H. Microcirculation. 3(3):287-300 (1996)を参照)。
【0106】
4.バリデーション
前記のいずれかのスクリーニング方法によって当初同定された作用物質を、明らかな活性のバリデーションを行うためにさらに試験することができる。このような試験は、適した動物モデルを用いて行うことが好ましい。このような方法の基本形式は、初期スクリーニングの際に同定されたリード化合物を、ヒトの疾患モデルとして役立つ動物に投与し、その後に、疾患(例えば癌)が実際に調節作用を受けるか、および/または疾患もしくは状態が改善されるかを判定する工程を含む。バリデーション試験に用いられる動物モデルは一般に、何らかの種類の哺乳動物である。適した動物の具体的な例には、霊長動物、マウス、ラット、およびゼブラフィッシュが非制限的に含まれる。
【0107】
B. CCX-CKR2と相互作用する作用物質
CCX-CKR2の修飾物質(たとえばアンタゴニストまたはアゴニスト)は、たとえば、抗体(当技術分野で公知であるモノクロナール、ヒト化または他のタイプの結合性タンパク質を含む)、小さな有機分子、siRNA、CCX-CKR2ポリペプチドまたはそれらの変異体、ケモカイン(SDF-1および/またはI-TACを含むが、これらに限定されない)、ケモカイン模倣物、ケモカインポリペプチドなどを含むことができる。
【0108】
CCX-CKR2に対する修飾物質として試験される作用物質は、ポリペプチド、糖、核酸、または脂質などの任意の低分子化合物または生物的実体でよい。または、修飾物質は遺伝的に改変された型もしくはペプチド模倣型のケモカインまたは他のリガンドでもよい。一般に、被験化合物は低分子の化合物およびペプチドであると考えられる。本質的にあらゆる化合物を、本発明のアッセイ法におけるリガンドまたは修飾物質の候補として用いることができるが、水性溶液または有機溶液(特にDMSOをベースとするもの)中に溶解しうる化合物を用いることが最も多い。アッセイ法は、アッセイ法の工程を自動化し、任意の好都合な源から化合物をアッセイ法に提供し、一般にはそれを平行して稼働させることにより(例えば、自動化アッセイ法でのマイクロタイタープレート上でのマイクロタイター形式による)、大規模化学ライブラリーをスクリーニングするように設計する。化合物の供給元が、Sigma社(St. Louis, MO)、Aldrich社(St. Louis, MO)、Sigma-Aldrich社(St. Louis, MO)、Fluka Chemika-Biochemica Analytika社(Buchs, Switzerland)などを含め、数多くあることは知られていると考えられる。
【0109】
いくつかの態様において、作用物質の分子量は1,500ダルトン未満であり、いくつかの場合には1,000、800、600、500、または400ダルトン未満である。比較的サイズの小さい作用物質が望ましいと考えられるが、これは小さい分子の方が分子量の高い分子よりも、作用物質の経口吸収性を含む、優れた薬物動態特性に適合する物理化学特性を有する可能性が高いためである。例えば、透過性および溶解性の点から薬剤として好成績を上げる可能性が低いと考えられる作用物質は、Lipinskiらによって以下の通りに記載されている:水素結合のドナーの数(OHおよびNHの合計として表現)が5つを上回る;分子量が500を上回る;LogPが5を上回る(もしくはMLogPが4.15を上回る);ならびに/または水素結合のアクセプターの数(NおよびOの合計として表現)が10を上回る。例えば、Lipinskiら、Adv Drug Delivery Res 23: 3-25 (1997)を参照されたい。生物学的輸送体の基質である化合物クラスはこの規則の例外であることが一般的である。
【0110】
1つの態様において、ハイスループットスクリーニング方法は、数多くの治療的化合物の候補(修飾物質またはリガンド化合物の候補)を含むコンビナトリアル化学ライブラリーまたはペプチドリガンドライブラリーを提供する工程を含む。続いて、このような「コンビナトリアル化学ライブラリー」または「リガンドライブラリー」を、望ましい特徴的な活性を示すライブラリーのメンバー(特定の化学種またはサブクラス)を同定するために、本明細書に記載するような1つまたは複数のアッセイ法においてスクリーニングする。このようにして同定された化合物は、通常の「リード化合物」として役立ち、またはそれ自体を治療薬の候補もしくは実際の治療薬として用いることができる。
【0111】
コンビナトリアル化学ライブラリーは、試薬などの多数の化学的「構成単位(building block)」を組み合わせることにより、化学合成または生物的合成によって生成された多様な化合物からなる集成物である。例えば、ポリペプチドライブラリーなどの直鎖状コンビナトリアル化学ライブラリーは、一群の構成化学単位(アミノ酸)を所定の化合物の長さ(すなわち、ポリペプチド化合物におけるアミノ酸の数)に関して考えられるすべてのやり方で組み合わせることによって生成される。構成化学単位のこのようなコンビナトリアル混合により、何百万もの化合物を合成することができる。
【0112】
コンビナトリアル化学ライブラリーの調製およびスクリーニングは当業者に周知である。このようなコンビナトリアル化学ライブラリーには、ペプチドライブラリー(例えば、米国特許第5,010,175号、Furka, Int. J. Pept. Prot. Res. 37: 487-493 (1991)およびHoughtonら、Nature 354: 84-88 (1991)を参照)が非制限的に含まれる。多様な化学物質ライブラリーを作製するためにその他の化学物質を用いることもできる。このような化学物質には、ぺプトイド(例えば、国際公開公報第91/19735号)、コード化ペプチド(例えば、国際公開公報第93/20242号)、ランダムバイオオリゴマー(例えば、国際公開公報第92/00091号)、ベンゾジアゼピン(例えば、米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピン、およびジペプチドなどのディベルソマー(diversomer)(Hobbsら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6909-6913 (1993))、ビニル性ポリペプチド(Hagiharaら、J. Amer. Chem. Soc. 114: 6568 (1992))、グルコーススカフォールディングを有する非ペプチド性ペプチド模倣物(Hirschmannら、J. Amer. Chem. Soc. 114: 9217-9218 (1992))、低分子化合物ライブラリーの類似の有機合成(Chenら、J. Amer. Chem. Soc. 116: 2661 (1994))、オリゴカルバメート(Choら、Science 261: 1303 (1993))、および/またはペプチジルホスホネート(Campbellら、J. Org. Chem. 59: 658 (1994))、核酸ライブラリー(Ausubel、BergerおよびSambrook、いずれも前記、を参照)、ペプチド核酸ライブラリー(例えば、米国特許第5,539,083号を参照)、抗体ライブラリー(例えば、Vaughnら、Nature Biotechnology, 14(3): 309-314 (1996)およびPCT/US96/10287号を参照)、炭水化物ライブラリー(例えば、Liangら、Science, 274: 1520-1522 (1996)および米国特許第5,593,853号を参照)、有機低分子ライブラリー(例えば、ベンゾジアゼピン、Baum C&EN, Jan 18, 33ページ (1993);イソプレノイド、米国特許第5,569,588号;チアゾリジノンおよびメタチアザノン、米国特許第5,549,974号;ピロリジン、米国特許第5,525,735号および第5,519,134号;モルフィノ化合物、米国特許第5,506,337号;ベンゾジアゼピン、米国特許第5,288,514号などを参照)が非制限的に含まれる。
【0113】
コンビナトリアルライブラリーの調製用の装置は市販されている(例えば、357 MPS, 390 MPS, Advanced Chem Tech, Louisville KY, Symphony, Rainin, Woburn, MA, 433A Applied Biosystems, Foster City, CA, 9050 Plus, Millipore, Bedford, MAを参照)。加えて、数多くのコンビナトリアルライブラリーがそれ自体、市販されている(例えば、ComGenex, Princeton, N.J., Tripos, Inc., St. Louis, MO, 3D Pharmaceuticals, Exton, PA, Martek Biosciences, Columbia, MIDなど)。
【0114】
CCX7923(図4を参照)は市販されており、当技術分野で公知の方法によってN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミンをブロモメチル−ビシクロ(2,2,1)ヘプト-2-エンと縮合させることによって製造することができる。CCX0803(図4を参照)は市販されており、当技術分野で周知の方法によって3-(2-ブロモエチル)-5-フェニルメトキシ−インドールを2,4,6-トリフェニルピリジンと縮合させることによって製造することができる。たとえば、Organic Function Group Preparations, 2nd Ed. Vol. 1, (S.R. Sandler & W. Karo 1983); Handbook of Heterocyclic Chemistry (A.R. Katritzky, 1985); Encyclopedia of Chemical Technology, 4th Ed. (J.I. Kroschwitz, 1996) を参照。
【0115】
一つの態様で、本発明の活性化合物(すなわちCCX-CKR2修飾物質)は、一般構造(I)

を有し、式中、
mは、1〜5の整数であり、ベンジル環を置換する各Yは、独立して、水素、アルキル、ハロ置換アルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキレン、ハロゲン、複素環式、アリール、アリーレン、ヘテロアリール、ヘテロアリーレン、ヒドロキシ、アルコキシおよびアリールオキシからなる群より選択され、
nは、0、1、2または3であり、
Zは、-CH-または-N-であり、
R1およびR2は、それぞれ独立して、アルキルまたは水素であるか、ZがR1およびR2といっしょになって、少なくとも1個の窒素を含み、一つまたは複数のさらなるヘテロ原子を含んでいてもよい五または六員環を形成し、
五または六員環が、独立して、アルキル、アルケニル、フェニル、ベンジル、スルホニルおよび置換ヘテロ原子からなる群より選択される一つまたは複数の基で置換されていてもよく、
R3、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素、アルキル、ハロ置換アルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキレン、複素環式、アリール、アリーレン、ヘテロアリール、ヘテロアリーレン、ヒドロキシ、アルコキシおよびアリールオキシからなる群より選択され、
R6は、アルキルまたは水素であり、
ただし、Zが窒素であり、R1およびR2がZといっしょになってモルホリニル基を形成するならば、nは3であり、R3、R4およびR5の少なくとも一つはヒドロキシ、アルコキシまたはアリールオキシであり、あるいは
n=1であるならば、Zは炭素であり、R1およびR2がいっしょになって-CH2CH2NCH2CH2-ではなく、あるいは
R1がR2といっしょになって-CH(CH3)(CH2)4-であるならば、Zは-CH-であり、あるいは
R5がt-ブチルであるならば、R3は水素であり、あるいは
R4およびR5がいっしょになって五員環を形成するならば、フェニル環に結合した原子の少なくとも1個は炭素である。2002年12月20日出願の米国仮特許出願第60/434,912号および2003年12月20日出願の米国仮特許出願第60/516,151号を参照。
【0116】
オレフィンを置換フェニル環に結合する波形の結合は、その環がR6に対してシスまたはトランスのいずれであってもよいことを意味する。好ましい態様では、nは1、2または3である。もう一つの好ましい態様では、nは2または3である。さらに好ましい態様では、nは3である。
【0117】
もう一つの態様では、好ましい化合物は、R6が水素である一般構造(I)を有する。さらなる態様では、好ましい化合物は、R6がメチルである一般構造(I)を有する。
【0118】
もう一つの態様では、好ましい化合物は、R3、R4およびR5が独立して水素、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アリールオキシおよびハロ置換アルキルである一般構造(I)を有する。より好ましくは、R3、R4およびR5は独立してアルコキシまたは水素である。もう一つの態様では、好ましい化合物は、R4が水素であり、R3およびR5が、トリフルオロアルコキシ基、たとえばトリフルオロメトキシを含むアルコキシ(-OR)および(-OCH2CF3)である一般構造(I)を有する。さらなる態様では、R3は水素であり、R4およびR5はアルコキシである。これらの態様のいずれでも、アルコキシ基はメトキシ(-OCH3)またはエトキシ(-OCH2CH3)であることができる。
【0119】
もう一つの態様では、好ましい化合物は、R4およびR5がいっしょになって複素環式、アリールまたはヘテロアリール環を形成する一般構造(I)を有する。もう一つの好ましい態様では、R3は水素であり、R4およびR5はいっしょになって-O(CH2)3O-、-(CH)4-または-N(CH)2N-である。
【0120】
もう一つの態様では、好ましい化合物は、Zが窒素であり、ZがR1およびR2といっしょになってヘテロアリールまたは複素環式基を形成する一般構造(I)を有する。好ましい態様では、化合物は、ZがCHであり、ZがR1およびR2といっしょになってヘテロアリールまたは複素環式基を形成する一般構造(I)を有する。より好ましい化合物は、ZがCHであり、ZがR1およびR2といっしょになって、窒素を含む複素環式基を形成する一般構造(I)を有する。さらなる態様では、ZがR1およびR2といっしょになって置換または非置換のモルホリニル、ピロリジニル、ピペリジニルまたはピペラジニル基を形成する。
【0121】
ヘテロアリールまたは複素環式基に好ましい置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、アルコキシ、ヒドロキシ、ヘテロ原子およびハロゲン化物を含む。特に好ましい態様では、ヘテロアリールまたは複素環式基は、ベンジル、フェニル、メチル、エチル、シクロヘキシル、メトキシ-メチル(-CH2OCH3)またはシクロヘキシル-メチル(-CH2(C6H11))基で置換されている。
【0122】
一つの態様では、好ましい化合物は、ZがR1およびR2といっしょになってアルキル−もしくはメトキシ−メチル置換ピロリジニル基、ベンジル−、フェニル−、メチル−、エチル−もしくは置換ヘテロ原子置換ピペリジニル基またはベンジル−、フェニル−もしくはスルホニル置換ピペラジニル基である一般構造(I)を有する。特に好ましい置換ヘテロ原子基は、アルコキシ、アミニル、シクロアルキルアミニル、アルキルアミニル、シクロプロピルアミニル、イソプロピルアミニル、ベンジルアミニルおよびフェノキシを含む。好ましくは、置換ヘテロ原子はピペリジニル環の3位置にある。
【0123】
もう一つの局面で、好ましい化合物は、ZがR1およびR2といっしょになって

である一般構造(I)を有する。
【0124】
一般構造(I)を有する好ましい化合物はまた、窒素原子としてZを有することもできるし、それぞれアルキルまたはメチル基としてR1およびR2を有することもできるし、いっしょになって-C(C(O)N(CH3)2)(CH2)3-を形成するR1およびR2を有することもできる。
【0125】
もう一つの態様では、Zは、R1およびR2といっしょになって、窒素を含み、一つまたは複数のさらなるヘテロ原子を含んでもよい五員環を形成する。この態様では、nは好ましくは1であり、Zは好ましくは-CH-である。このタイプの特に好ましい態様では、Zは、R1およびR2といっしょになって、

であり、式中、R7は、好ましくは水素、アルキル、アリールまたはアラルキルである。
【0126】
もう一つの好ましい態様で、R7は、ハロゲン化ベンジルまたはフェニル基であることができる。さらなる態様で、R7は、好ましくは水素、メチル、エチル、ベンジルまたはパラフルオロフェニルである。
【0127】
もう一つの態様で、本発明の活性化合物は、一般構造(II)

を有し、式中、
mは、1〜5の整数であり、
ベンジル環を置換する各Yは、独立して、水素、アルキル、ハロ置換アルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキレン、ハロゲン、複素環式、アリール、アリーレン、ヘテロアリール、ヘテロアリーレン、ヒドロキシおよびアルコキシからなる群より選択され、
nは、1、2または3であり、
R3、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素、アルキル、ハロ置換アルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキレン、複素環式、アリール、アリーレン、ヘテロアリール、ヘテロアリーレン、ヒドロキシ、アルコキシおよびアリールオキシからなる群より選択される。
【0128】
上記構造(I)におけるように、オレフィンを置換フェニル環に結合する波形の結合は、その環がシスまたはトランスのいずれであってもよいことを意味する。
【0129】
もう一つの態様で、好ましい化合物は、nが3である一般構造(II)を有することができる。もう一つの好ましい態様では、好ましい化合物は、R3、R4およびR5が、上記構造(I)で記したように置換されている一般構造(II)を有することができる。現在、特に好ましい化合物は、R3、R4およびR5がアルコキシまたはメトキシである一般構造(II)を有する。
【0130】
当業者に公知である多くの合成経路を使用して本発明の活性化合物を合成することができるが、一般的な合成法を、以下、スキームIに示す。
スキームI

【0131】
スキームIでは、アルデヒド(2)が還元アミノ化によって第一級アミン(3)とで縮合反応を起こす。適当な第一級アミンは、たとえばAldridch, Milwaukee, WIから市販されているし、当業者に公知の化学的経路によって合成することもできる。
【0132】
アミノ化反応を、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタンまたはメタノールを含むが、これらに限定されない任意の適当な溶媒中、還元剤を用いて実施すると、中間体(4)を形成することができる。縮合反応に適した還元剤は、シアノホウ水素化ナトリウム(Mattson, et al., J. Org. Chem. 1990, 55, 2552およびBarney, et al., Tetrahedron Lett. 1990、31,5547に記載のとおり)、トリアセトキシホウ水素化ナトリウム(Abdel-Magid, et al., Tetrahedron Lett. 31:5595 (1990)に記載のとおり)、ホウ水素化ナトリウム(Gribble; Nutaitis Synthesis. 709 (1987)に記載のとおり)、鉄ペンタカルボニルおよびアルコールKOH(Watabane, et al., Tetrahedron Lett. 1879 (1974)に記載のとおり)ならびにBH3-ピリジン(Pelter, et al., J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1:717 (1984)に記載のとおり)を含むが、これらに限定されない。
【0133】
中間体(4)から化合物(5)への転換は、適当な溶媒、たとえばテトラヒドロフランまたはジクロロメタン中、塩基の存在下、適当に置換された塩化アシルを用いて実施することができる。第三級アミン塩基が好ましい。特に好ましい塩基は、トリエチルアミンおよびHunnings塩基を含む。
【0134】
または、中間体(4)から化合物(5)への転換は、触媒、たとえば4-N,N-ジメチルアミノ-ピリジンの存在下またはヒドロキシベンゾトリアゾールの存在下(K. Horiki, Synth. Commun. 7:251に記載のとおり)、適当なカップリング試薬、たとえば1-エチル-3-(3-ジメチルブチルプロピル)カルボジイミドまたはジシクロヘキシル−カルボジイミド(B. Neises and W. Steglich, Angew. Chem., Int. Ed. Engl. 17:522 (1978)に記載のとおり)を用いて得ることもできる。
【0135】
上記化合物がSDF-1およびI-TACケモカインに有効なアンタゴニストであることを実証するため、化合物をインビトロでスクリーニングして、多数の濃度でCCX-CKR2受容体からSDF-1およびI-TACを押し退けるそれらの能力を決定した。化合物を、125I標識SDF-1および/または125II-TACケモカインの存在でCCX-CKR2受容体部位を発現する乳腺細胞と合わせた。そして、多数の濃度でCCX-CKR2受容体部位から標識SDF-1またはI-TACを押し退ける化合物の能力をスクリーニング法で決定した。
【0136】
効果的なSDF-1およびI-TACアンタゴニストとみなされた化合物は、1.1マイクロモル(μM)以下の濃度、より好ましくは300ナノモル(nM)以下の濃度で、SDF-1および/またはI-TACケモカインの少なくとも50%をCCX-CKR2受容体から押し退けることができた。場合によっては、化合物が、200nM以下の濃度で、SDF-1および/またはI-TACの少なくとも50%をCCX-CKR2受容体から押し退けることができることが望ましい。これらの規準を満たす例示的な化合物を以下の表Iに再現する。
【0137】
(表I)






【0138】
C.固相および溶質のハイスループットアッセイ法
本発明のハイスループットアッセイ法では、最大で数千種もの異なる修飾物質またはリガンドを1日でスクリーニングすることが可能である。詳細には、マイクロタイタープレートの各ウェルを、選択した修飾物質の候補に対して別々のアッセイ法を実行するために用い、または、濃度もしくはインキュベーション時間の影響を観察しようとする場合には、単一の修飾物質を試験するためにウェルを5〜10個ずつ用いることができる。このため、1枚の標準的なマイクロタイタープレートで、約100種(例えば、96種)の修飾物質をアッセイすることが可能である。1536穴のウェルプレートを用いれば、1枚のプレートで約100〜約1500種の異なる化合物をアッセイすることができる。1日当たり数枚の異なるプレートをアッセイできれば、本発明の統合システムを用いて最大で約6,000〜20,000種類の化合物をアッセイ法でスクリーニングすることが可能である。さらに最近では、試薬操作のための微少流体アプローチが開発されている。
【0139】
本発明は、CCX-CKR2の機能または活性を調節しうる化合物をハイスループット形式で同定するためのインビトロアッセイ法を提供する。アッセイ系が高度に均一であるため、修飾物質の候補を含まない反応における細胞のCCX-CKR2活性を測定する対照反応を随意に選択してもよい。このような随意選択的な対照反応は、しかしながらアッセイ法の信頼性を高める。
【0140】
いくつかのアッセイ法においては、アッセイ法の成分が適切に作用していることを確認するための陽性対照を用いることが望ましいと考えられる。少なくとも2種類の陽性対照が適している。第1に、CCX-CKR2の既知の活性化物質またはリガンドを1つのアッセイ試料とインキュベートし、CCX-CKR2の活性上昇(例えば本明細書に記載の方法に従って決定)に起因する信号を増加させる。第2に、CCX-CKR2に対する阻害物質またはアンタゴニストを添加し、ケモカイン受容体の活性に関する結果としての信号の低下を同様に検出することができる。それ以外であればCCX-CKR2の既知の修飾物質の存在によって引き起こされる上昇または存在を阻害する修飾物質を見つけ出すために、修飾物質を活性化物質または阻害物質と混ぜ合わせてもよいことは理解されると考えられる。
【0141】
IV. 対象におけるCCX-CKR2の発現
いくつかの態様で、CCX-CKR2を対象中で発現させ、それによってCCX-CKR2の発現を増大させる。または、たとえばsiRNAまたはアンチセンス配列を含む抑制性ポリヌクレオチドをインビトロまたはインビボで発現させてCCX-CKR2の発現を阻害することもできる。場合によっては、CCX-CKR2をコードするポリヌクレオチドをインビトロで細胞に導入し、次いでその細胞を対象に導入する。これらの場合のいくつかで、細胞を、まず対象から単離し、次いで、ポリヌクレオチドを導入したのち、対象に再導入する。他の態様では、CCX-CKR2をコードするポリヌクレオチドをインビボで対象中の細胞に直接導入する。
【0142】
場合によっては、CCX-CKR2をコードするポリヌクレオチドは、(i)対象の組織、(ii)組織に導入された外来性細胞、または(iii)組織の中にはないが隣接する細胞から、細胞に導入される。いくつかの態様では、本発明のポリヌクレオチドは内皮細胞に導入される。内皮細胞が関連する組織は、内皮の移動または拡大を増強することが望まれる任意の組織である。
【0143】
本発明の操作ポリペプチドをコードする核酸を導入するためには、従来のウイルスおよび非ウイルスベースの遺伝子移入法を使用することができる。このような方法は、本発明のポリペプチド(たとえばCCX-CKR2)をコードする核酸をインビトロで細胞に投与するために使用することができる。いくつかの態様では、本発明のポリペプチドをコードする核酸は、インビボまたはエクスビボ遺伝子治療用に投与される。非ウイルスベクター送達系は、DNAプラスミド、裸の核酸および送達賦形剤、たとえばリポソームとで複合化した核酸を含む。ウイルスベクター送達系は、細胞への送達ののちエピソームまたは組み込みゲノムを有するDNAおよびRNAウイルスを含む。遺伝子治療法の考察に関しては、Anderson, Science 256:808-813 (1992); Nabel & Felgner, TIBTECH 11:211-217 (1993); Mitani & Caskey, TIBTECH 11:162-166 (1993); Dillon, TIBTECH 11:167-175 (1993); Miller, Nature 357:455-460 (1992); Van Brunt, Biotechnology 6(10):1149-1154 (1998); Vigne, Restorative Neurology and Neuroscience 8:35-36 (1995); Kremer & Perricaudet, British Medical Bulletin 51(1):31-44 (1995); Haddada et al., in Current Topics in Microbiology and Immunology Doerfler and Bohm (eds)(1995)およびYu et al., Gene Therapy 1:13-26 (1994)を参照。
【0144】
本発明の操作ポリペプチドをコードする核酸の非ウイルス送達の方法は、リポフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃、ビロゾーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸コンジュゲート、裸DNA、人造ビリオンおよびDNAの薬剤増強取り込みを含む。リポフェクションは、たとえば米国特許第5,049,386号、米国特許第4,946,787号および米国特許第4,897,355号に記載され、リポフェクション試薬は市販されている(たとえばTransfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適したカチオン性および中性脂質は、FelgnerのWO91/17424、WO91/16024のものを含む。送達は、細胞(エクスビボ投与)または標的組織(インビボ投与)に対して実施することができる。
【0145】
標的化リポソームを含む脂質:核酸複合体、たとえば免疫脂質複合体の調製は当業者に周知である(たとえば、Crystal, Science 270:404-410 (1995); Blaese et al., Cancer Gene Ther. 2:291-297 (1995); Behr et al., Bioconjugate Chem. 5:382-389 (1994); Remy et al., Bioconjugate Chem. 5:647-654 (1994); Gao et al., Gene Therapy 2:710-722 (1995); Ahmad et al., Cancer Res. 52:4817-4820 (1992);米国特許第4,186,183号、第4,217,344号、第4,235,871号、第4,261,975号、第4,485,054号、第4,501,728号、第4,774,085号、第4,837,028号および第4,946,787号を参照)。
【0146】
本発明の操作ポリペプチドをコードする核酸の送達のためのRNAまたはDNAウイルスベースの系の使用は、ウイルスの標的を体内の特定の細胞にし、核へのウイルスペイロードを転送する非常に進化したプロセスを利用する。ウイルスベクターは、患者に直接投与することもできるし(インビボ)、細胞をインビトロで処理するために使用し、改変した細胞を患者に投与することもできる(エクスビボ)。本発明のポリペプチドの送達のための従来のウイルスベースの系は、遺伝子移入のための、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連および単純ヘルペスウイルスベクターを含むことができる。ウイルスベクターは、現在、標的細胞および組織における遺伝子移入のもっとも効率的で用途の広い方法である。宿主ゲノムへの組み込みは、レトロウイルス、レンチウイルスおよびアデノ関連ウイルス遺伝子移入法で可能であり、しばしば、挿入された導入遺伝子の長期的発現を生じさせる。さらには、多くの異なる細胞型および標的組織で高い形質導入効率が認められている。
【0147】
レトロウイルスの走性は、異種エンベロープタンパク質を組み込んで標的細胞の潜在的標的集団を拡大させることによって変化させることができる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞を形質導入または感染させることができるレトロウイルスベクターであり、一般に高いウイルス価を生じさせる。したがって、レトロウイルス遺伝子移入系の選択は標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、6〜10kbまでの異種配列のためのパッケージング能力を有するシス作用性の長い末端反復で構成されている。最小のシス作用性LTRがベクターの複製およびパッケージングに十分であり、そして、このベクターが、治療用遺伝子を標的細胞に組み込んで永久的な導入遺伝子発現を提供するために使用される。広く使用されているレトロウイルスベクターは、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)およびそれらの組み合わせに基づくものを含む(たとえば、Buchscher et al., J. Virol. 66:2731-2739 (1992); Johann et al., J. Virol. 66:1635-1640 (1992); Sommerfelt et al., Virol. 176:58-59 (1990); Wilson et al., J. Virol. 63:2374-2378 (1989); Miller et al., J. Virol. 65:2220-2224 (1991); PCT/US94/05700を参照)。
【0148】
本発明のポリペプチドの一過性発現が望まれる用途では、アデノウイルスベースの系が一般に使用される。アデノウイルスベースのベクターは、多くの細胞型で非常に高い形質導入効率が可能であり、細胞分裂を要しない。このようなベクターを用いて、高い力価およびレベルの発現が得られている。このベクターは、比較的簡単な系で多量に産生することができる。アデノ関連ウイルス(「AAV」)ベクターはまた、たとえば核酸およびペプチドのインビトロ産生ならびにインビボおよびエクスビボ遺伝子治療処置で、細胞を標的核酸とともに形質導入するために使用される(たとえば、West et al., Virology 160:38-47 (1987);米国特許第4,797,368号;WO93/24641;Kotin, Human Gene Therapy 5:793-801 (1994); Muzyczka, J. Clin. Invest. 94:1351 (1994)を参照)。組み換えAAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号、Tratschin et al., Mol. Cell. Biol. 5:3251-3260 (1985); Tratschin et al., Mol. Cell. Biol. 4:2072-2081 (1984); Hermonat & Muzyczka, PNAS 81:6466-6470 (1984)およびSamulski et al., J. Virol. 63:03822-3828 (1989)をはじめとする多数の刊行物に記載されている。
【0149】
pLASNおよびMFG-Sが、臨床試験で使用されているレトロウイルスベクターの例である(Dunbar et al., Blood 85:3048-305 (1995); Kohn et al., Nat. Med. 1:1017-102 (1995); Malech et al., PNAS 94:22 12133-12138 (1997))。PA317/pLASNは、遺伝子治療試験で使用された最初の治療用ベクターであった(Blaese et al., Science 270:475-480 (1995))。MFG-Sパッケージベクターの場合、50%以上の形質導入効率が認められている(Ellem et al., Immunol Immunother. 44(1):10-20 (1997); Dranoff et al., Hum. Gene Ther. 1:111-2 (1997))。
【0150】
組み換えアデノ関連ウイルスベクター(rAAV)は、欠陥のある非病原性パルボウイルス科アデノ関連2型ウイルスに基づく有望な代替遺伝子送達系である。すべてのベクターは、導入遺伝子発現カセットに隣接するAAV145bp逆方向末端反復のみを保持するプラスミドから派生する。形質導入細胞のゲノムへの組み込みによる効率的な遺伝子移入および安定な導入遺伝子送達がこのベクター系の主要な特徴である(Wagner et al., Lancet 351:9117 1702-3 (1998), Kearns et al., Gene Ther. 9:748-55 (1996))。
【0151】
複製欠損組み換えアデノウイルスベクター(Ad)は、導入遺伝子がAd E1aおよびE3遺伝子に取って代わるように操作することができる。その後、複製欠損ベクターを、欠失した遺伝子機能をイントランスで供給するヒト293細胞中で増殖させる。Adベクターは、肝臓、腎臓および筋系組織で見られるような非分裂性分化細胞をはじめとする多数のタイプの組織をインビボで形質導入することができる。一般的なAdベクターは大きな保有能力を有する。臨床試験におけるAdベクターの使用の一例は、筋内注射による抗腫瘍免疫化のためのポリヌクレオチド治療を含むものであった(Sterman et al., Hum. Gene Ther. 7:1083-9 (1998))。臨床試験における遺伝子移入のためのアデノウイルスベクターの使用のさらなる例は、Rosenecker et al., Infection 24:1 5-10 (1996); Sterman et al., Hum. Gene Ther. 9:7 1083-1089 (1998); Welsh et al., Hum. Gene Ther. 2:205-18 (1995); Alvarez et al., Hum. Gene Ther. 5:597-613 (1997); Topf et al., Gene Ther. 5:507-513 (1998); Sterman et al., Hum. Gene Ther. 7:1083-1089 (1998)を含む。
【0152】
宿主細胞に感染することができるウイルス粒子を形成するためにパッケージング細胞が使用される。このような細胞は、アデノウイルスをパッケージングする293細胞およびレトロウイルスをパッケージングするψ2細胞またはPA317細胞を含む。遺伝子治療に使用されるウイルスベクターは通常、核酸ベクターをウイルス粒子中にパッケージングする産生細胞株によって産生される。ベクターは通常、パッケージングしたのち宿主に組み込むのに必要な最小のウイルス配列を含み、他のウイルス配列は、発現されるタンパク質のための発現カセットによって取って代わられている。喪失したウイルス機能はパッケージング細胞株によってイントランスで供給される。たとえば、遺伝子治療で使用されるAAVベクターは通常、パッケージングおよび宿主ゲノムへの組み込みに必要な、AAVゲノムからのITR配列のみを所有する。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子、すなわちrepおよびcapをコードするヘルパープラスミドを含有するが、ITR配列を欠く細胞株にパッケージングされる。細胞株はまた、ヘルパーとしてのアデノウイルスに感染する。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製およびヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列の欠失のせいで、有意な量ではパッケージングされない。アデノウイルスによる汚染は、たとえば、アデノウイルスがAAVよりも影響を受けやすい熱処理によって減らすことができる。
【0153】
多くの遺伝子治療用途では、遺伝子治療用ベクターを高い特異性で特定の組織型に送達することが望ましい。ウイルスベクターは通常、ウイルスコートタンパク質をウイルス外面に有する融合タンパク質としてリガンドを発現することによって所与の細胞型に特異性を有するように改変される。リガンドは、対象の細胞型に存在することが知られる受容体に対して親和性を有するように選択される。たとえば、Han et al., PNAS 92:9747-9751 (1995)は、モロニーマウス白血病ウイルスを、gp70に融合したヒトヘレグリンを発現するように改変することができ、組み換えウイルスが、ヒト上皮成長因子受容体を発現する特定のヒト乳癌細胞に感染すると報告した。この原理を、リガンド融合タンパク質を発現するウイルスと受容体を発現する標的細胞との他の対に拡張することができる。たとえば、繊維状ファージを操作して、実質的にいかなる選択された細胞受容体にも特異的結合親和性を有する抗体断片(たとえばFABまたはFv)を示すようにすることができる。上記説明は主としてウイルスベクターに当てはまるが、同じ原理を非ウイルスベクターにも応用することができる。このようなベクターは、特定の標的細胞による取り込みを好むと考えられる特異的取り込み配列を含むように操作することができる。
【0154】
遺伝子治療用ベクターは、以下に記すように、一般的には全身投与(たとえば静脈内、腹腔内、筋内、皮下または頭蓋内注入)または局所投与による患者個体への投与によってインビボで送達することができる。または、ベクターは、エクスビボで細胞、たとえば患者個体から抽出した細胞(たとえばリンパ球、骨髄吸引液、組織バイオプシー)または万能供血者造血性幹細胞に送達したのち、その細胞を、通常はベクターを組み込んだ細胞の選択ののち、患者に再移植することもできる。
【0155】
診断、研究または遺伝子治療のためのエクスビボ細胞形質移入(たとえば形質移入された細胞の宿主生物への再注入)は当業者に周知である。好ましい態様では、細胞は、対象生物から単離され、本発明のポリペプチドをコードする核酸(遺伝子またはcDNA)を形質移入され、対象生物(たとえば患者)に再び注入されて戻される。エクスビボ形質移入に適した種々の細胞型が当業者に周知である(細胞を患者から単離し、培養する方法に関しては、たとえば、Freshney et al., Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique (3rd ed. 1994))およびその中で引用されている文献を参照)。
【0156】
一つの態様では、細胞形質移入および遺伝子治療のために幹細胞がエクスビボ手法で使用される。幹細胞を使用する利点は、幹細胞が、インビトロで他の細胞型に分化させることもできるし、哺乳動物(たとえば細胞の供与体)に導入して骨髄に移植することもできるということである。GM-CSF、IFN-γおよびTNF-αのようなサイトカインを使用してCD34+細胞をインビトロで臨床的に重要な免疫細胞型に分化させる方法が公知である(Inaba et al., J. Exp. Med. 176:1693-1702 (1992)を参照)。
【0157】
幹細胞は、形質導入および分化のために公知の方法を使用して単離される。たとえば、幹細胞は、不要な細胞、たとえばCD4+およびCD8+(T細胞)、CD45+(panB細胞)、GR-1(顆粒細胞)ならびにIad(分化抗原提示細胞)に結合する抗体で骨髄細胞をパニングすることによって骨髄細胞から単離される(Inaba et al., J. Exp. Med. 176:1693-1702 (1992)を参照)。
【0158】
治療用核酸を含有するベクター(たとえばレトロウイルス、アデノウイルス、リポソームなど)はまた、インビボでの細胞の形質導入のために生物に直接投与することができる。または、裸のDNAを投与することもできる。投与は、分子を導入して血液または組織細胞と最終的に接触させるために一般に使用される経路のいずれかによる。このような核酸を投与する適当な方法は利用可能であり、当業者に周知であり、複数の経路を使用して特定の組成物を投与することができるが、多くの場合、一つの特定の経路が別の経路よりも迅速で効果的な反応を提供することができる。
【0159】
薬剤学的に許容される担体は、一部には、投与される具体的な組成物および組成物を投与する特定の方法によって決まる。したがって、以下に記すように、本発明の医薬組成物に適当な処方は多様にある(たとえば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., 1989を参照)。
【0160】
V. 診断および予後
本発明は、癌の予後または診断を提供する方法を含め、癌細胞を検出する方法を提供する。本明細書で実証するように、CCX-CKR2は、今日まで試験されているほぼすべての癌細胞で発現するが、CCX-CKR2の正常な(非癌)発現は、腎臓および一部の脳細胞ならびに胎児肝臓の特定の発育段階に限定されると思われている。したがって、細胞、特に非胎児細胞および/または腎臓もしくは脳細胞以外の細胞におけるCCX-CKR2の発現は、高い可能性の癌細胞の存在を示唆する。いくつかの症例で、CCX-CKR2発現細胞を含有する試料が、当技術分野で公知の他の方法を使用して、癌細胞の存在を確認されている。
【0161】
本発明のさらに別の局面によると、癌を有するまたは有すると疑われる対象の処置の過程を選択する方法が提供される。方法は、対象から生物学的試料を得ることと、その試料を、CCX-CKR2に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片と接触させる段階と、抗体結合の有無を検出する段階と、対象の癌に適切な処置の過程を選択する段階とを含む。いくつかの態様では、処置は、CCX-CKR2アンタゴニストを対象に投与することである。
【0162】
タンパク質に結合する作用物質を使用する検出法は周知であり、たとえば、種々のイムノアッセイ、フローサイトメトリーなどを含む。フローサイトメトリーを使用すると、細胞の混合種個体群の中で、対象の特異的抗原を発現する細胞を特定することができる。簡潔にいうと、細胞を、対象のタンパク質(たとえばCCX-CKR2)に特異的な抗体と反応させる。抗体は、蛍光標識することもできるし(直接染色法)、標識されないならば、第一の抗体と反応する第二の抗体を蛍光標識することもできる(間接染色法)。そして、細胞を、蛍光シグナルを検出することができる計器に通す。細胞を吸引し、単細胞懸濁液にする。この細胞懸濁液を、今や細胞に結合した蛍光色素標識抗体を励起し、このデータを取得するレーザに通す。色が鮮やかである(すなわち、蛍光標識抗体と反応する)ことがわかった細胞は対象のタンパク質を発現し、色がさえない(すなわち、蛍光標識抗体と反応しない)細胞は対象のタンパク質を発現しない。
【0163】
本発明は、癌、たとえばカルチノーマ、グリオーム、中皮腫、メラノーマ、リンパ腫、白血病、腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、グリア芽細胞腫、白血病、リンパ腫、前立腺癌およびバーキットリンパ腫、頭部および頸部の癌、大腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝胆管癌、胆嚢癌、小腸癌、直腸癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、陰茎癌、尿道癌、睾丸癌、子宮頸癌、膣癌、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、膵臓内分泌癌、カルチノイド腫瘍、骨腫、皮膚癌、網膜芽細胞腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(さらなる癌に関しては、CANCER: PRINCIPLES AND PRACTICE (DeVita, V. T. et al. eds 1997)を参照)ならびに脳および神経細胞機能不全、たとえばアルツハイマー病および多発性硬化症、腎機能不全、リューマチ関節炎、心臓同種異系移植片拒絶反応、アテローム硬化症、ぜん息、腎炎、接触性皮膚炎、炎症性腸疾患、大腸炎、乾癬、再かん流傷害ならびに本明細書に記載する他の障害および疾患を含むが、これらに限定されないヒト疾患を診断する方法を提供する。いくつかの態様では、対象は、カポジ肉腫、多中心性キャッスルマン病またはエイズ関連の原発性滲出液リンパ腫を有しない。実施例を含む本明細書で提供するように、正常な細胞および組織と罹患した細胞および組織とは、抗CCX-CKR2モノクロナール抗体またはSDF-1およびI-TACに対する反応性に基づいて区別することができる。たとえば、癌細胞は、SDF-1αおよびI-TACが結合を求めて競合するケモカイン受容体を細胞上で検出することによって検出される。
【0164】
加えて、ケモカイン受容体の間のリガンド結合の差違を検出することができ、そのような差違を使用してCCX-CKR2を発現する細胞を検出することができる。たとえば、SDF-1およびI-TACをリガンドとして有するケモカイン受容体は他にない。ケモカイン結合は、組織試料を使用して判定することもできるし(たとえばバイオプシー)、組織中、インサイチューで直接モニタすることもできる(たとえば、放射線標識ケモカインイメージングを使用)。
【0165】
また、イムノアッセイを使用してCCX-CKR2を定性的または定量的に分析することもできる。応用可能な技術の概説は、Harlow & Lane, Antibodies: A Laboratory Manual (1988)に見いだすことができる。または、CCX-CKR2に対して親和性を有する非抗体分子を使用して受容体を検出することもできる。
【0166】
目的のタンパク質と特異的に反応するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を作製するための方法は当業者に周知である(例えば、Coligan、Current Protocols in Immunology(1991);HarlowおよびLane、Antibodies、A Laboratory Manual(1988);Goding、Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (2nd ed. 1986);ならびにKohlerおよびMilstein、Nature, 256: 495-497 (1975)を参照されたい)。このような技法には、ファージベクターまたは類似のベクターにおける組換え抗体のライブラリーからの抗体の選択による抗体の調製が含まれる。例えば、イムノアッセイ法に用いるための抗血清を作製するためには、本明細書の記載のように、目的のタンパク質またはその抗原性断片を単離する。例えば、組換えタンパク質を形質転換細胞系において産生させる。マウス、ラット、モルモット、またはウサギの近交系に対して、フロイントアジュバントなどの標準的アジュバントおよび標準的な免疫処置プロトコールを用いてタンパク質の免疫処置を行う。または、本明細書に開示する配列に由来し、担体タンパク質と結合させた合成ペプチドを免疫原として用いることもできる。もう1つの選択肢は、そのタンパク質を発現する細胞、またはCCX-CKR2もしくはその断片を含む膜画分もしくはリポソームを抗原として用いることである。続いて、細胞、膜画分、またはリポソームに対して産生された抗体を、タンパク質との結合に関して選択することができる。
【0167】
ポリクローナル血清を収集し、イムノアッセイ法、例えば、固体支持体上に固定した免疫原を用いる固相イムノアッセイ法において、免疫原に対する力価測定を行う。力価が10またはそれ以上であるポリクローナル抗血清を選択し、競合結合イムノアッセイ法を用いて、異なるタンパク質および時にはには相同なタンパク質との交差反応性を調べる。特異的なポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体は通常、少なくとも約0.1mMのKD、より一般的には少なくとも約1μM、好ましくは少なくとも約0.1μMまたはそれ未満、最も好ましくは0.01μMまたはそれ未満のKDでCCX-CKR2に結合すると考えられる。
【0168】
抗体、例えば組換え抗体、モノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体の調製には、当技術分野で知られた多くの技法を用いることができる(例えば、Kohler & Milstein, Nature 256: 495-497 (1975);Kozborら、Immunology Today 4: 72 (1983);Coleら、pp.77-96、「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」、Alan R. Liss, Inc. (1985);Coligan、「Current Protocols in Immunology」(1991);Harlow & Lane、「Antibodies, A Laboratory Manual」(1988);ならびにGoding、「Monoclonal Antibodies: PrinciplesおよびPractice」(第2版、1986)を参照されたい)。目的の抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を細胞からクローニングし、例えば、モノクローナル抗体をコードする遺伝子をハイブリドーマからクローニングして、組換えモノクローナル抗体の作製に用いることができる。モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子ライブラリーをハイブリドーマまたは形質細胞から作製することもできる。重鎖および軽鎖の遺伝子産物のランダムな組み合わせにより、抗原特異性の異なる抗体の大規模プールが生じる(例えば、Kuby, 「Immunology」(第3版、1997)を参照)。一本鎖抗体または組換え抗体の作製のための技法(米国特許第4,946,778号、米国特許第4,816,567号)は、本発明のポリペプチドに対する抗体の作製に応用しうる。また、トランスジェニックマウスまたは他の哺乳動物などの他の生物を、ヒト化抗体またはヒト抗体を発現させるために用いることもできる(例えば, 米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号、Marksら、Bio/Technology 10: 779-783 (1992);Lonbergら、Nature 368: 856-859 (1994);Morrison, Nature 368: 812-13 (1994);Fishwildら、Nature Biotechnology 14: 845-51 (1996);Neuberger, Nature Biotechnology 14: 826 (1996);およびLonberg & Huszar、Intern. Rev. Immunol. 13: 65-93 (1995)を参照されたい)。または、選択した抗原と特異的に結合する抗体およびヘテロメリックFab断片を同定するためにファージディスプレイ技術を用いることもできる(例えば、McCaffertyら、Nature 348: 552-554 (1990);Marksら、Biotechnology 10: 779-783 (1992)を参照されたい)。抗体を二重特異性のあるもの、すなわち、2つの異なる抗原を認識しうるものとして作製することもできる(例えば、国際公開公報第93/08829号、Trauneckerら、EMBO J. 10: 3655-3659 (1991);およびSureshら、Methods in Enzymology 121: 210 (1986)を参照のこと)。抗体が、ヘテロ結合物(heteroconjugate)、例えば共有結合した2つの抗体、または免疫毒素であってもよい(例えば、米国特許第4,676,980号、国際公開公報第91/00360号;国際公開公報第92/200373号;および欧州特許第03089号を参照のこと)。
【0169】
非ヒト抗体のヒト化または霊長類化のための方法は当技術分野で周知である。このような抗体は検出および治療用途の両方に有用である。一般に、ヒト化抗体は、ヒト以外の源から導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒト性アミノ酸残基はしばしば移入残基と呼ばれ、これらは移入可変ドメインから採られることが一般的である。ヒト化は、齧歯類のCDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列の代わりに用いることにより、本質的にはWinterらの方法に従って行いうる(例えば、Jonesら、Nature 321: 522-525 (1986);Riechmannら、Nature 332: 323-327 (1988);Verhoeyenら、Science 239: 1534-1536 (1988)およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2: 593-596 (1992)を参照)。したがって、この種のヒト化抗体は、完全なヒト可変ドメインとはほど遠い箇所が非ヒト種由来の対応する配列によって置換されたキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。実際には、ヒト化抗体はいくつかのCDR残基、およびおそらくはいくつかのFR残基が、齧歯類抗体における類似部位からの残基によって置換されたヒト抗体であることが一般的である。
【0170】
VI. 処置方法、投与および医薬組成物
CCX-CKR2の修飾物質(たとえばアンタゴニストまたはアゴニスト)は、インビボでのケモカイン受容体シグナル伝達の変調のために哺乳動物対象に直接投与することができる。いくつかの態様では、修飾物質は、CCX-CKR2への結合に関してSDF-1および/またはI-TACと競合する。CCX-CKR2の変調は、たとえば抗体(当技術分野で公知であるモノクロナール、ヒト化または他のタイプの結合タンパク質)、小さな有機分子、siRNAなどを含むことができる。
【0171】
いくつかの態様では、CCX-CKR2修飾物質は、癌を有する対象に投与される。場合によっては、CCX-CKR2修飾物質は、癌、たとえばカルチノーマ、グリオーム、中皮腫、メラノーマ、リンパ腫、白血病、腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、グリア芽細胞腫、白血病、リンパ腫、前立腺癌およびバーキットリンパ腫、頭部および頸部の癌、大腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝胆管癌、胆嚢癌、小腸癌、直腸癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、陰茎癌、尿道癌、睾丸癌、子宮頸癌、膣癌、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、膵臓内分泌癌、カルチノイド腫瘍、骨腫、皮膚癌、網膜芽細胞腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(さらなる癌に関しては、CANCER: PRINCIPLES AND PRACTICE (DeVita, V.T. et al. eds 1997)を参照)ならびに脳および神経細胞機能不全、たとえばアルツハイマー病および多発性硬化症、腎機能不全、リューマチ関節炎、心臓同種異系移植片拒絶反応、アテローム硬化症、ぜん息、腎炎、接触性皮膚炎、炎症性腸疾患、大腸炎、乾癬、再かん流傷害ならびに本明細書に記載する他の障害および疾患を処置するために投与される。いくつかの態様では、対象は、カポジ肉腫、多中心性キャッスルマン病またはエイズ関連の原発性滲出液リンパ腫を有しない。CCX-CKR2は多くの場合、癌細胞で発現し、非癌細胞では発現しないため、通常、癌を有する対象を処置するためにCCX-CKR2のアンタゴニストを投与することが望ましい。場合によっては、修飾物質は、1,500ダルトン未満の分子量を有し、場合によっては、1,000、800、600、500または400ダルトン未満の分子量を有する。
【0172】
修飾物質の投与は、修飾物質化合物を導入して処置される組織と最終的に接触させるために一般に使用され、当業者に周知である経路のいずれかによることができる。複数の経路を使用して特定の組成物を投与することができるが、多くの場合、一つの特定の経路が別の経路よりもより迅速でより効果的な反応を提供することができる。
【0173】
本発明の医薬組成物は、薬剤学的に許容される担体を含むことができる。薬剤学的に許容される担体は、一部には、投与される具体的な組成物および組成物を投与する特定の方法によって決まる。したがって、本発明の医薬組成物に適当な処方は多様にある(たとえば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., 1985を参照)。
【0174】
CCX-CKR2の発現または活性の修飾物質(たとえばアゴニストまたはアンタゴニスト)は、単独で、または他の適当な成分と組み合わさって、吸入によって投与されるエアロゾル製剤(すなわち、「噴霧」することができる)に製造することができる。エアロゾル製剤は、加圧された許容される推進剤、たとえばジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などに入れることができる。
【0175】
投与に適した製剤は、水性および非水性溶液、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤および製剤を等張性にする溶質を含有することができる等張無菌溶液ならびに沈殿防止剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤および保存剤を含むことができる水性および非水性無菌懸濁液を含む。本発明の実施では、組成物は、経口、経鼻、局所、静脈内、腹腔内または鞘内投与することができる。化合物の製剤は、単一用量または多用量封止容器、たとえばアンプルおよびバイアルに入れて提示することができる。溶液および懸濁液は、先に記載した種の無菌の粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。修飾物質はまた、調製食品または薬物の一部として投与することもできる。
【0176】
いくつかの態様では、本発明のCCX-CKR2修飾物質は、たとえば化学療法剤、放射線などをはじめとする他の適切な治療剤と組み合わせて投与することができる。組み合わせ治療で使用するのに適した薬剤の選択は、当業者により、従来の薬剤学的原則にしたがって実施することができる。治療剤の組み合わせが相乗的に作用して、種々の障害、たとえば癌、腎機能不全、脳機能不全または神経細胞機能不全の処置または予防を生じさせることができる。この手法を使用すると、各薬剤の用量を減らして治療効能を達成することができ、それによって副作用の危険性を減らすことができる。
【0177】
本発明に関連して患者に投与される量は、時間とともに対象において有益な応答を生じさせる(たとえば腫瘍の大きさまたは腫瘍の負荷を減らす)のに十分な量であるべきである。いかなる患者にとっても最適な用量レベルは、用いられる具体的な修飾物質の効力、患者の年齢、体重、肉体的活性および食事、他の薬物との可能な組み合わせならびに具体的な疾患の重篤度を含む多様な要因に依存する。用量のサイズはまた、特定の対象における特定の化合物またはベクターの投与に伴う副作用の存在、性質および程度によって決まる。
【0178】
投与される修飾物質の有効量を決定する際には、医師は、修飾物質の循環血漿レベル、修飾物質毒性および抗修飾物質抗体の産生を評価することができる。一般に、修飾物質の用量当量は、一般的な対象の場合で約1ng/kg〜10mg/kgである。
【0179】
投与の場合、本発明のケモカイン受容体修飾物質は、修飾物質のLD50ならびに対象の質量および全般的な健康状態に適用される様々な濃度での修飾物質の副作用によって決まる割合で投与することができる。投与は、一回服用または分割服用で達成することができる。
【0180】
VII.組成物、キット、統合システム、およびプロテオミクス応用
本発明は、抗CCX-CKR2抗体またはCCX-CKR2を特異的に検出するその他の作用物質を用いて、本明細書に記載したアッセイ法を実施するための、組成物、キット、および統合システムを提供する。
【0181】
本発明は、固相アッセイ法に用いるためのアッセイ法組成物を提供する;このような組成物は、例えば、CCX-CKR2ポリペプチド(例えば、細胞の一部、膜画分、またはリポソームとして(例えば、Babcokら、J. Biol. Chem. 276(42) : 38433-40 (2001);Mirzabekovら、Nat. Biotechnol. 18(6) : 649-54 (2000)を参照)を含む)が固体支持体上に固定化されたもの、および標識試薬を含みうる。それぞれの場合に、アッセイ法組成物は、ハイブリダイゼーションのために望ましい別の試薬も含みうる。例えば、固体支持体は、ペトリ皿、マルチウェルプレート、またはマイクロアレイなどでありうる。さらに、CCX-CKR2と特異的に結合するペプチド配列を同定するために、ペプチドライブラリーのマイクロアレイを用いることもできる。
【0182】
CCX-CKR2と特異的に結合する作用物質をアッセイ法組成物に含めることもできる。例えば、CCX-CKR2と特異的に結合する抗体を固体支持体上に固定化することができる。これらの態様のいくつかにおいて、作用物質は、CCX-CKR2またはCCX-CKR2を発現する細胞の有無を検出するために用いられる。例えば、固体支持体はペトリ皿、マルチウェルプレート、またはマイクロアレイでありうる。
【0183】
本発明はまた、本発明のアッセイ法を行うためのキットも提供する。本キットは一般に、CCX-CKR2と特異的に結合する作用物質(例えば、抗体またはその他の低分子)および作用物質の存在を検出するための標識を含む。本キットは1つまたは複数の他のケモカイン受容体ポリペプチドを含みうる。キットは上記の組成物のいずれかを含むことができ、任意でさらに、ケモカイン受容体の活性または機能に対する影響に関するハイスループットアッセイ方法を行うための指示書といった別の構成要素、1つまたは複数の容器または区画(例えば、プローブ、標識などを保持するための)、ケモカイン受容体の機能または活性の対照修飾物質、キットの成分を混合するためのロボット型アーマチュアなども含む。
【0184】
いくつかの態様において、キットはSDF1および/またはI-TACを含む。いくつかの態様において、キットは、標識もしくはタグ付加がなされたSDF-1および非放射性競合I-TAC、または標識もしくはタグ付加がなされたI-TACおよび非放射性競合SDF-1を含む。標識またはタグ付加がなされたケモカインには、当業者に知られた任意の様式で標識またはタグの付加を行いうる。いくつかの態様において、標識ケモカインはビオチンまたは蛍光性標識による放射標識もしくはタグ付加を受けている。代替的または追加的に、キットは、I-TAC検出用の抗I-TAC結合試薬(例えば、抗体)を含みうる。キットはまた、無傷細胞または細胞膜などに対して競合結合アッセイ法を行うための適切な塩緩衝液および他の試薬も含みうる。この種の試薬は例えば、以下の実施例に記載されている。いくつかの面において、本キットは、CCX-CKR2へのリガンドの結合を測定するための固体支持体または容器も含む(例えば、シンチレーションカウンターまたは自動プレートリーダーとの適合性がある反応用のプレート形式)。いくつかの面において、キットは、キットを例えば本発明の方法に用いるための指示書を含む。
【0185】
本発明はまた、潜在的なCCX-CKR2修飾物質の活性または機能に対する影響に関する、修飾物質候補のハイスループットスクリーニングのための統合システムも提供する。本システムは一般に、液体を源から目的地まで移動させるためのロボット型アーマチュア、ロボット型アーマチュアを制御するための制御装置、標識検出器、標識検出を記録するデータ記憶装置、および、反応混合物を有するウェルを含むマイクロタイターディッシュまたは固定された核酸もしくは固定化部分を含む基質などのアッセイ成分を含む。
【0186】
カメラまたはその他の記録装置(例えば、光ダイオードおよびデータ記憶装置)によって観測された(および、任意で記録された)光学画像は、任意で、さらに本明細書における態様のいずれかにより、例えば、画像のデジタル化ならびにコンピュータ上での画像の記録および分析などによって処理される。デジタル化されたビデオ画像またはデジタル化された光学画像のデジタル化、保存、および分析を行うための、さまざまな市販の周辺機器およびソフトウエアが入手可能である。
【0187】
実施例
実施例1
本実施例は、SDF-1およびI-TACが新規なケモカイン受容体への結合に関して競合することを示す。
【0188】
材料および方法
試薬および細胞
ヒト、ウイルスおよびマウスの組換えケモカインを、指示の通りに、R&D Systems(Minneapolis, MN)およびPeproTech(Rocky Hill, NJ)から入手した。125I標識SDF-1αはPerkinElmer Life Sciences, Inc.(Boston, MA)から購入し、125I標識I-TACはAmersham Pharmacia Biotech(Buckinghamshire, UK)から入手した。フローサイトメトリーおよびリガンド結合競合に用いたモノクローナル抗体はR&D Systems(Minneapolis, MN)から入手した:抗CXCR4クローン12G5、44708.111(171)、44716.111(172)、44717.111(173)、nmIgG2a、およびnmIgG2b。フローサイトメトリーによる抗体結合の検出には二次抗体、ヤギ抗マウスIgG PE結合物(Coulter Immunotech, Miami, FL)を用いた。以下の細胞株はAmerican Type Culture Collection(Manassas, VA)から入手した:MCF-7(腺癌;乳腺)、MDA MB-231(腺癌;乳腺)、MDA MB-435s(乳管癌;乳腺)、DU 4475(乳腺)、ZR 75-1(乳管癌;乳腺)、HEK 293(ヒト胎児腎臓)、HUV-EC-C(ヒト臍静脈;血管内皮;正常)。CEM-NKr(急性リンパ性白血病;末梢血;Tリンパ芽球)細胞はNIHのAIDS Research and Reference Reagent Programから入手した。細胞株は、5%CO/空気混合ガスを満たした加湿インキュベーター内で、10%ウシ胎仔血清(FBS)(HyClone Logan, UT)を添加したDMEM(Mediatech, Herndon, VA)中にて37℃で培養した。ヒト末梢血単核細胞(PBMC)は、Ficoll-Hypaque密度勾配下での遠心処理により、健常ドナーのバフィコートから入手した(Stanford Blood Center, Palo Alto, CA)。単離したPBMCを、5%CO/空気混合ガスを満たした加湿インキュベーター内で、10%FBSを添加した37℃のRPMI-1640(Mediatech、Herndon、VA)中にて、2.5ug/mlフィトヘマグルチニン(PHA)(Sigma Chemical Company, St. Louis, MO)および10ng/ml組換えヒトIL-2(R&D Systems, Minneapolis, MN)により3日間にわたり活性化した。活性化の後に細胞を洗浄し、10%FBSおよび10ng/ml IL-2を添加したRPMI中にて、細胞を用いる日まで3〜4日毎に培地を交換しながら培養した。
【0189】
結合性解析
本発明者らは、SDF1レセプトロン(receptoron)MCF-7およびCEM-NKr細胞との相互作用の全体的プロフィールの検討に、独自の技法である「DisplaceMax(商標)」を用いた。この技術では、以前に記載したように(Dairaghiら、J Biol Chem 274: 21569-74 (1999);Gosling, J.ら、J Immunol 164: 2851-6 (2000))、濾過プロトコールを用いる、拡張され、効率が最大限に高められた放射性リガンド結合を利用する。これらのアッセイ法において、DisplaceMax(商標)は、記載したプロトコールを用いて(Dairaghiら、J Biol Chem 274: 21569-74 (1999);Gosling, J.ら、J Immunol 164: 2851-6 (2000))、125I放射標識したSDF-1αまたはI-TAC(指定の通り)を置換する能力に関して、110種を上回る別個の精製ケモカインによる、MCF-7細胞またはCEM-NKr細胞(指定通り)の同時インタロゲーションを用いる。簡潔に述べると、ケモカイン因子を細胞とともにインキュベートした後に、放射標識ケモカイン(125I SDF-1αまたは125I h I-TAC)を添加し、以下の結合培地(25mM HEPES、140mM NaCl、1mM CaCl、5mM MgCl、および0.2%ウシ血清アルブミン、pH 7.1に調整)中にて4℃で3時間おく。指定したいくつかのアッセイ法には低分子を含めた。これらのアッセイ法では、化合物を指定濃度でプレートに添加し、その後に放射標識ケモカインを添加した。続いて全アッセイ物を静かに攪拌しながら4℃で3時間インキュベータした。すべての結合アッセイ法において、インキュベーションの後に、反応物を吸引し、細胞収集装置(Packard)を用いてPEI処理GF/Bガラスフィルター(Packard)上に収集した上で2回洗った(25mM HEPES、500mM NaCl、1mM CaCl、5mM MgCl、pH 7.1に調整)。シンチラント(MicroScint 10, Packard)をウェルに添加し、フィルターをPackard Topcountシンチレーションカウンターでカウントした。データの解析およびプロットには、Prism(GraphPad Prismバージョン3.0a、マッキントッシュ用、GraphPad Software)を用いた。
【0190】
125I SDF-1α受容体結合性の決定
上記の濾過利用アッセイ法を用いて、細胞を1)緩衝液のみ、2)過剰量のSDF-1β(最終90nM)、または3)MIG(最終175nM)のいずれかと指定の通りに4℃で30分間プレインキュベートした。このインキュベーション後に、指定した規定濃度の非放射性ケモカイン競合物質および125I h I-TACを結合反応物に添加した。続いて上記の通りにすべてのアッセイ物をインキュベートし、収集した上で分析した。
【0191】
RT PCR
標準的な技法を用いてmRNAを細胞から単離した。PCRにより、CXCR3およびCXCR4の発現に関して相補的DNAを分析した。特異的プライマーはIntegrated DNA Technologies(Coralville, IA)から入手した。35サイクルの間の特異的PCR産物をHybaid Omn-E(E&K Scientific Products, Inc., Saratoga, CA)によって測定した。GAPDHを対照として測定した。
【0192】
接着アッセイ
HUVEC細胞を、組織培養物で処理したスライド上、TNF-α(25ng/ml)およびIFNγ(50ng/ml)の存在で終夜増殖させた。翌日、NSO形質移入CCX-CKR2細胞および野生型対照をカルセインAMで標識した。そして、カルセイン標識した細胞を、内皮単層上、CCX-CKR2アンタゴニスト(CCX3451)の存在および非存在でプレーティングした。スライドを37℃で40分間インキュベートしたのち、PBSで洗浄して非接着細胞を除去した。接着NSO細胞を蛍光顕微鏡検査法によって可視化した。化合物または賦形剤で処理した細胞を三つの視野(fov)から肉眼で計数し、プロットした。
【0193】
結果
最近の報告で、いくつかの腫瘍細胞種上でのCXCR4発現が同定されており(Sehgalら、J Surg Oncol 69: 99-104 (1998);Sehgal, A.ら、J Surg Oncol 69: 239-48 (1998);Burgerら、Blood 94: 3658-67 (1999);Rempelら、Clin Cancer Res 6: 102-11 (2000);Koshiba, T.ら、Clin Cancer Res 6: 3530-5 (2000);Muller, A.ら、Nature 410: 50-6 (2001);Robledoら、J Biol Chem 276: 45098-45105 (2001))、その一例ではこの発現が乳房腫瘍細胞の転移と関連づけられている(Muller, A.ら、Nature 410: 50-6 (2001))。腫瘍細胞表面のケモカイン受容体の役割をさらに検討するために、本発明者らはいくつかのヒト乳房腫瘍細胞株上でのCXCR4の発現の評価に着手した。最初に、CXCR4発現パターンをフローサイトメトリーによって評価した。抗CXCR4染色のT細胞性表現型を決定するために、初代IL-2培養Tリンパ球、ならびにCEM-NKrおよびジャーカットという2つのT細胞系を検討した。3種の乳房腫瘍細胞株MCF7、MDA MB-231、およびMDA MB-435sも検討した。検討した4種の抗CXCR4クローンはすべてT細胞を染色した。驚いたことに、乳房腫瘍細胞はCXCR4を発現すると報告されているが、広く用いられているクローン12G5では乳房腫瘍細胞上にCXCR4が検出されなかった。検討した他の3種のクローンでは乳房腫瘍細胞上に弱くかつ程度の異なる反応性が検出された。乳房腫瘍細胞株DU 4475およびZR 75-1もこのアッセイ法で検討したところ(非提示データ)、検討した他の乳房腫瘍細胞類似の抗体染色プロフィールが見いだされた。このため、CXCR4に対する一群のmAbの染色パターンからは、「白血球」性CXCR4表現型(CEM-NKr、ジャーカット、およびIL-2リンパ球の染色に代表される)および乳房腫瘍細胞性表現型(MCF-7およびMDA MB-231乳房腫瘍細胞株上での弱い染色に代表される)という異なる2種類の反応性が示唆されるように思われる。
【0194】
最も広く用いられている抗CXCR4mAbであるクローン12G5を用いた場合に乳房腫瘍細胞上での反応性が常に認められなかったことから、本発明者らはRT PCRによってこれらの細胞におけるCXCR4発現を検討した。フローサイトメトリーで調べた3種の乳房腫瘍株のほか、CXCR4発現に関する陽性対照としてのIL-2培養リンパ球ならびにT細胞系CEM-NKrおよびジャーカットからmRNAを単離した。12G5では反応性がなく、検討した他の抗CXCR4クローンではさまざまな程度の反応性が得られたものの、乳房腫瘍細胞株MCF7およびMDA MB231はCXCR4 mRNAを発現した;しかし、MDA MB-435sはCXCR4発現に関して陰性であることが判明した。いずれの場合にもGAPDHを対照として測定した。mAb反応性の違いが、配列に違いがあり、そのために種々の細胞系でCXCR4におけるエピトープの差異が生じているためか否かを検討するために、本発明者らは次に、代表的なCXCR4+乳房腫瘍細胞としてのMCF-7および代表的なT細胞としてのCEM-NKrから得られたPCR産物の配列を決定した。これらの2つの細胞系から得られた配列は発表されているCXCR4配列と同一であり、このことは、CXCR4抗体プロフィールは異なるものの、この2つの細胞種におけるCXCR4の遺伝子構造、すなわちポリペプチド構造が同一であることを示唆する。
【0195】
本発明者らは、広範囲にわたる一群のケモカインリガンドに対する受容体結合を同時に評価しうる一連の技法を以前に報告している(Dairaghiら、J Biol Chem 274: 21569-74 (1999);Gosling, J.ら、J Immunol 164: 2851-6 (2000))。本発明者らはこの手法によってCEM-NKr上でのCXCR4結合プロフィールを調べ、MCF-7細胞と比較した。90種を上回るケモカイン因子を、CEM-NKr細胞(図1)またはMCF-7細胞(図1)に対する結合に関して指標ケモカイン125I SDF-1αを置換する能力について調べた。予想された通り、CEM-NKr上での125I SDF-1αの高親和性競合物質の候補にはhSDF-1βおよびmSDF-1が含まれ、一方、hSDF-1αおよびHHV8 vMIP-IIは中等度の親和性競合と考えられるものを示した。これは、CXCR4に対する唯一の非ウイルス性リガンドであるという、SDF-1についてこれまでに報告されたすべての結果と一致する。しかし、MCF-7細胞上での競合の全体的パターンは著しく異なっていた。この細胞種では、hI-TACおよびmI-TACは同じ指標リガンドSDF-1に対して高親和性競合を示した。この特異な結果についてさらに検討するために、125I I-TACをMCF-7細胞上での指標リガンドとして調べた(図1)。MCF-7上で125I I-TACを用いた高親和性置換プロフィールは125I SDF-1αを用いて得られたプロフィールと同一であった。すなわち、MCF-7細胞上でI-TACおよびSDF-1は結合の点で区別なく振る舞い、同じ受容体部位に対して競合する。
【0196】
I-TACおよびSDF-1の結合の特徴をさらに明らかにするために、CEM-NKrおよびMCF-7に対して選択した高親和性リガンド候補を用いる競合結合実験で用量反応曲線を作成した。DisplaceMax(商標)のデータによって示唆された通り、I-TACはMCF-7に対する結合については125I SDF-1αと競合したが、CEM-NKrに対してはそうではなかった(図2)。125I SDF-1αと、SDF-1アイソフォームSDF-1αまたはSDF-1βのいずれかとの同族性競合は、CEM-NKrおよびMCF-7上での完全競合をもたらした(図2)。注目すべきことに、MCF-7上に発現された受容体に対するSDF-1の親和性はCEM-NKr上のものに対するよりも高かった。すなわち、CXCR4の配列はこの2つの細胞種で同一であるが、リガンド結合特異性および親和性はT細胞と乳房腫瘍細胞では異なる。
【0197】
CXCR3はI-TACの主な受容体であることが以前から確立されているため(Cole, K. E.ら、J Exp Med 187: 2009-21. (1998))、本発明者らは次に、MCF-7細胞上で検出されるI-TAC結合がCXCR3を介する事ができるかをどうかを検討した。この目的のために、「古典的な」CXCR3を介した結合(すなわち、報告されているCXCR3リガンドMIG、I-TAC、およびIP-10とCXCR3との結合)が阻害され、そのために「古典的な」CXCR4を介した結合(すなわち、報告されているCXCR4リガンドSDF-1とCXCR4との結合)が許容されると考えられる条件下、ならびにその反対の状況下で、125I I-TACの結合について検討した。MCF-7細胞を、培地のみ、過剰量のMIG(〜175nM;CXCR3を介した結合を阻害するため)を含む培地中、または過剰量のSDF-1β(〜90nM;CXCR4を介した結合を阻害するため)を含む培地中のいずれかでプレインキュベートした。I-TACはMCF-7細胞との結合に関して125I I-TACと競合し、IC50は1nMであり(図3)、このことから、これがこれらの細胞上のこの受容体に対する高親和性リガンドであることが裏づけられた。同様に、過剰量のMIGと最初にプレインキュベートした細胞からも同じ同族性I-TAC/125I I-TAC結合曲線が得られ、この場合もIC50は1nMであった(図3)。しかしながら、細胞を最初に過剰量のSDF-1βとプレインキュベートした場合には、すべての125I I-TAC結合が阻害され(図3)、このことから乳房腫瘍細胞で観察された125I I-TAC結合はこれらの細胞上で発現するSDF1受容体により媒介されることが示唆された。同様に、IP-10を非放射性ケモカイン競合物質として検討した場合には、MCF-7細胞に対する125I I-TAC結合は阻害されなかった。この場合も、過剰量のMIGとのプレインキュベーションはこの結合プロフィールに影響を及ぼさなかった;しかし、細胞をSDF-1βとプレインキュベートすると125I I-TAC結合は完全に阻害された。CXCR3リガンドであるMIGを非放射性競合物質として検討した場合には、細胞に対する125I I-TAC結合は阻害されなかった(図3)。図1に示したDisplaceMax(商標)データから予想された通り、SDF-1βはこれらの細胞に対する結合に関して125I I-TACと競合し、高親和性であった(IC50が1nM)。細胞の過剰量のMIGとのプレインキュベーションはSDF-1β/125I I-TACの競合に影響を及ぼさず、このことからも、検出された結合はCXCR3により媒介されないことが示唆された。
【0198】
この仮説をPCRによってさらに検証した。以前に用いた単離mRNA(上記)を、CXCR3転写物の証拠に関するプローブとして用いた。IL-2培養リンパ球はCXCR3を発現したが、検討した他の細胞はいずれもCXCR3を発現しなかった。RT PCRによってCXCR3発現が検出されなかったことは図3のデータを裏づけるものであり、これもMCF-7細胞上でのI-TAC結合がCXCR3を介していないことを示唆している。
【0199】
変化した抗CXCR-4抗体反応性ならびに変化したリガンド結合特異性および親和性が、本発明者らをして、この受容体が典型的なCXCR4ではないと考えさせるに至った。同定されてはいるが、ケモカインリガンドが特定されていない「オーファン」ケモカイン受容体がいくつかある。本発明者らはいくつかのオーファン受容体を考察した。一つのそのような受容体はRDC1と呼ばれる(以下、CCX-CKR2と呼ぶ)。RDC1のタンパク質配列がMDA MB435s(CXCR4、CXCR3またはCCX-CKR2を内因的に発現しない細胞株)に形質移入されると、特徴的な放射性リガンド結合表現型が反復される(図4)。MDA MB435sで発現したCCX-CKR2は、放射標識SDF-1に結合する。この結合は、非放射性競合相手SDF-1およびI-TACによって競合される。
【0200】
小分子量有機化合物(SMC)治療でこの受容体を標的化しようとして、二つの高スループットスクリーニングを使用して小分子(ほぼ135,000)をスクリーニングした。一つは、CXCR-4媒介白血球SDF-1結合表現型を評価するように設計され、一つは、CCX-CKR2媒介乳癌SDF-1結合表現型をプロービングするように設計されていた。これらのスクリーニングの結果は、二つの結合表現型の明確な薬理学的区別が可能であることを示した(図5)。たとえば、CCX0803と指定された小分子は、46nMのIC50でMCF-7への結合に関して125I SDF-1αと競合するが(図5)、この小分子は、CEM-NKrへの125I SDF-1α結合をまったく阻害しない(図5)。対照的に、異なる小分子アンタゴニスト、CCX7923は、106nMのIC50でCEM-NKrへの125I SDF-1α結合を阻害するが(図5)、MCF-7細胞への125I SDF-1α結合を阻害しない(図5)。これら二つの化合物は、二つの受容体へのリガンドの非相互的結合阻害の顕著で明瞭なパターンを明らかにする(乳癌株vs白血球)。
【0201】
乳癌細胞が、他の非腫瘍組織または非癌性組織に認められるものとは異なるSDF-1への結合親和性を示すことをまず明らかにした後に、さらなる試験に着手した。これらの表現型判定試験(抗体反応性、リガンド結合プロフィール、および薬理学的識別を用いる。本明細書に記載の方法を参照のこと)により、多くの癌(または腫瘍)細胞種も、胸部腫瘍細胞に初期に相関ししたがってCCX-CKR2発現に相関する結合親和性(例えば抗体反応性、リガンド結合、および薬理学的識別)を示すことが明らかに示された。以下の腫瘍細胞を検討したところ、癌と相関する結合親和性を示した:ヒト卵巣癌、ヒト子宮頸部腺癌、ヒトバーキットリンパ腫、ヒト乳腺癌、ヒト乳管癌、ヒト膠芽腫、およびマウス乳房腫瘍。
【0202】
腫瘍およびその他の癌は治療が困難であり、これは一部には細胞増殖の速度が急速なためである。この点に関して、腫瘍は、急速に分裂する初期胚組織と共通する増殖特性をいくつか有することが知られている。ある学派は、成体における腫瘍は胚の増殖表現型への「復帰変異体」ではないかと推測している。SDF-1およびCXCR4の遺伝子ノックアウトマウスはいずれも胚致死性であり、このことはこのリガンド受容体の対が成長および発生の必須の要素であることを示唆する。ホモ接合性変異型SDF-1胚の約50%は18.5までに周産期死亡する;残りのホモ接合性同腹仔は生後1時間以内に死亡する(Kishimotoら、Nature 382: 635-638 (1996))。同様に、ホモ接合性CXCR4ノックアウトマウスの約3分の1はE18.5の時点で周産期死亡する(Maら、Proc. Nati. Acad. Sci. USA 95: 9448-9453 (1998))。受容体ノックアウト体およびリガンドノックアウト体のいずれにもリンパ球新生および骨髄造血の欠陥が観察された。胎仔肝臓は11日齢マウスにおける主な造血部位であり、生後第1週までそれが続く。このため、本発明者らは、CCX-CKR2のこの区画における発現を検討することとした。本発明者らは、E17(ノックアウト動物が死亡する時点に近い発生時期)およびE13(ノックアウト動物が死亡する時点とは異なるものの、造血は開始した後の発生時期)の野生型マウス胚でのCCX-CKR2発現を検討した。
【0203】
SDF-1結合アッセイ法において、放射標識したヒト-SDF-1はE13胎仔肝細胞と結合し、SDFおよびI-TAC(マウスタンパク質およびヒトタンパク質)はいずれもこの放射標識トレーサーと結合に関して競合可能であった。SDF-1受容体に対するI-TAC結合に代表されるこの変化したリガンド特異性は、本発明者らが最初に癌細胞と関連づけ、現在CCX-CKR2であることを実証している結合表現型の顕著な特徴である。さらに、CCX-CKR2アンタゴニストはE13胎児肝臓においてSDF-1結合と競合することができるが、CXCR4アンタゴニストは競合することができない。
【0204】
展開のその後において、E17の胎児肝細胞はCXCR4を発現し、これらの細胞は、細胞内カルシウムを動員することによってSDF-1に応答する。CXCR4アンタゴニストは、このSDF-1媒介カルシウム動員を阻害するが、CCX-CKR2アンタゴニストはそのような効果を有しない。したがって、これらのデータは、E13およびE17における野生型胎児肝細胞がいずれもCXCR4を発現するが、CCX-CKR2は早期(E11)に発現され、その後の時点(E15)では発現されないということを示唆する。
【0205】
胎生マウスモデルの結合研究はヒト研究からのデータと良好に相関するが、CXCR4遺伝子の標的化破損を有するマウスを使用する予備的実験は、胎生13日目(E13)胎児肝細胞で観察されたSDF-1およびI-TAC結合プロフィールが変化のないままであることを示唆する。これは、癌関連SDF-1結合親和性を有するポリペプチドをコードする遺伝子がCXCR4ではないというさらなる証拠を提供する。
【0206】
これらの実験は、CCX-CKR2受容体が増殖中の腫瘍細胞に対して刺激シグナルを付与しうることも示している。腫瘍細胞は、SDF-1刺激に応答して、細胞周期または転写に関与するある種の遺伝子をアップレギュレートすることができる。さらに重要なことに、腫瘍細胞を血清除去下で一晩培養したところ、それらはアポトーシス(細胞死)への移行を開始した。SDF-1をこれらの培養物に添加した場合には、細胞は非投与対照に比して飢餓状態からの回復が可能である。すなわち、SDF-1は抗アポトーシスシグナルとして作用する。癌細胞はしばしば、アポトーシスを起こす能力を失った細胞として特徴づけられている。
【0207】
実施例2
この実施例は、実施例1で論じた癌関連の結合表現型がCCX-CKR2(以前はオーファン受容体RDC1として知られていた)によって媒介されるということを実証する。
【0208】
一般に、CCX-CKR2は、形質転換細胞で優先的に発現する。表1(左側の欄)に示すように、試験した多様な異なる癌細胞がCCX-CKR2の発現に関して陽性であった。対照的に、大部分の正常(非腫瘍)細胞はCCX-CKR2を発現しなかった。表1(右側の欄)を参照。
【0209】
(表1)

*放射性リガンド結合シグナルによる測定では、これらの器官における発現は弱い。
【0210】
それにもかかわらず、一部の正常な細胞の中でもCCX-CKR2の役割があるように思われる。CCX-CKR2受容体は、胎児発育における一定期間発現する。CCX-CKR2は、胚発生から11日目(E11)までにマウス胎児肝臓で発現するが、E15までにもはや検出されなくなる(放射標識SDF1結合およびI-TAC置換によって測定)ならびにノーザン分析によって検出されるCCX-CKR2転写物。成体マウスでは、正常な腎臓で発現する。腎臓発現と比較すると、正常な脳における発現は低めである。検査は全脳ホモジネートを用いて実施されるため、放射性リガンド結合アッセイにおけるこの低いシグナルは、CCX-CKR2を発現する脳における細胞集団の小ささと合致している。
【0211】
癌におけるCCX-CKR2の役割の証拠をさらに裏付けるため、癌細胞中のCCX-CKR2を拮抗することによって癌細胞増殖を阻害することができることを実証した。CCX-CKR2アンタゴニストによって乳癌細胞で発現したCCX-CKR2の拮抗が細胞増殖をインビトロで阻害した。インビトロで処理された細胞は、非処理の対照と比較して細胞増殖の減少を示した。図6を参照。
【0212】
CCX-CKR2は接着にも関与する。白血球移動は、細胞接着およびその後の所与の組織への移出を含むいくつかのステップを含む。インビトロ静的接着アッセイがこの事象をモデル化する。血管内皮細胞の単層を表面で増殖させる。そして、CCX-CKR2を発現する細胞を蛍光色素で標識して可視化する。CCX-CKR2細胞を内皮表面に接着させると、CCX-CKR2-細胞対照よりも多くのCCX-CKR2発現細胞が内皮層に付着する。さらには、CCX-CKR2アンタゴニストの添加が、賦形剤処理された対照に比べて接着を阻害する。図7を参照。
【0213】
インビボの証拠は、腫瘍成長におけるCCX-CKR2の役割をさらに支持する。腫瘍は、CCX-CKR2を発現するヒトB細胞リンパ腫細胞が免疫不全マウスに注入されると、形成する。CCX-CKR2アンタゴニストによるこれらのマウスの処理が血管化腫瘍形成を阻害した。一つのこのような実験で、CCX-CKR2アンタゴニストで処理された17匹のマウスのうち1匹が、被包性血管化腫瘍を発症し、賦形剤処理グループの17匹のマウスのうち11匹が被包性血管化腫瘍を発症した。これらのデータは、CCX-CKR2が、腫瘍が分化し、血管床を確立する能力に関与するかもしれないことを示し、CCX-CKR2の拮抗が有用な癌治療である証拠を提供する。
【0214】
また、CCX-CKR2の拮抗の効果を乳癌モデルで試験した。乳癌成長のモデルでは、免疫不全マウスにヒト乳癌を注入した。週3回腫瘍の計測を実施し、体積をプロットした。CCX-CKR2アンタゴニストで処理したマウスは、賦形剤対照グループに比較して腫瘍体積の減少を示し、CCX-CKR2が腫瘍成長に役割を有することを実証した。図8を参照。
【0215】
実施例3
この実施例は、CCX-CKR2がアポトーシスを減らすことによって細胞生存を促進することを実証する。
【0216】
ケモカインとケモカイン受容体との相互作用は通常、細胞内カルシウム動員および走化性を計測することによって評価される。しかし、CCX-CKR2は、一過性のカルシウム動員を生じさせることもないし、細胞を、そのリガンドCXCL12またはCXCL11に応答して移動させることもない。しかし、CCX-CKR2を発現する細胞は、活性化内皮細胞単層への接着の増大を示す。さらには、培地の低血清捕捉の条件(すなわち、通常の10%ではなく1%)の下、3日後の生きた接着細胞の回収は、形質移入されないWT細胞(WT435s)に対し、CCX-CKR2- MDA MB435s形質移入体(CCX-CKR2 435sと指定)の場合ではるかに大きかった。この観測と合致して、これらの培養物から収集された上澄み中に回収された死細胞の頻度は、CCX-CKR2-形質移入体に対し、WTの場合ではるかに大きかった。この効果は、DNA挿入色素7AAD(7アミノアクチノマイシンD)を使用して蛍光的に可視化することができた。CCX-CKR2-435s形質移入体または野生型435s細胞を異なる血清濃度で増殖させたのち、収穫し、7AAD(DMSO中1ug/ml)とともに室温で15〜30分間インキュベートした。FACS分析がさらに、CCX-CKR2-435s形質移入体に対し、野生型435s細胞中で多くの死/アポトーシス細胞(すなわち、7AAD陽性)を明らかにした。
【0217】
本発明者らは、これらの所見を、培養したCCX-CKR2形質移入体または非形質移入WT細胞を、アポトーシス細胞のみを検出するアネキシンおよび死細胞を検出するが、アポトーシス細胞を検出しないヨウ化プロプリジウム(PI)で同時に染色する一連の実験で展開した。この手法は、細胞アポトーシスを誘発することが知られ、これらのアッセイで優れた制御を提供する薬剤、たとえばカンプトテシン(CMP)またはTNFαプラスシクロヘキシミド(CHX)を使用して実証されるように、細胞集団におけるアポトーシス細胞の割合を容易に特定する。
【0218】
このアッセイを使用して、本発明者らは、最適(10%)または限られた(1%)血清中で増殖させたCCX-CKR2-435s形質移入体または野生型435s細胞の細胞アポトーシス細胞の時間的な発生を計測した。10%血清中で増殖させた両方の細胞型は、4日間の培養期間にわたって優れた生存能力を示した。対照的に、1%血清中で増殖させたWT細胞は、3および4日間の培養ののち、生存可能な細胞の劇的な減少を示した。アネキシンおよびPIでの同時染色は、アポトーシス細胞および死細胞のこの反映された発生を明らかにした。興味深いことに、1%血清中で増殖させたCCX-CKR2-435s細胞は、同じ4日間の培養期間で優れた生存能力を示し、435sへのCCX-CKR2の導入がこれらの細胞を、最適以下の血清捕捉の条件で起こる急速な細胞アポトーシスから保護するということを示唆した。
【0219】
同じCCX-CKR2-435s形質移入体を使用し、さらに、CCX-CKR2を形質移入された435s細胞の別個の非クローン集団を使用する第二の実験でも同一の結果が得られた。後者の結果は、初期のクローン形質移入体のアポトーシス節約性が、その一つの形質移入体クローンの特定の異常の結果としてではなく、CCX-CKR2発現の結果として起こるということを示した。
【0220】
実施例4
この実施例は、CCX-CKR2がp44/42 MAPK(ERK1およびERK2)のリン酸化を媒介したことを実証する。
【0221】
CCX-CR2は、リガンド結合(たとえばITACまたはSDF1による)が、多くのケモカイン受容体に一般的であるカルシウムの動員を生じさせないという点で異例の受容体である。これが、CCX-CR2活性がERKリン酸化によって媒介されるかどうかの調査を含め、他の潜在的なシグナル伝達経路の評価を促進した。ITACまたはSDF1で刺激した、CCX-CR2を発現するMCF7細胞株からの溶解産物を用いて実施した実験は、ERK1およびERK2(文献ではp44/42 MAPKと呼ぶこともある)のリガンド依存性のリン酸化があるということを実証した。リン酸化ERK1およびERK2は、MCF7細胞株からの溶解産物を用いて、はじめに電気泳動に付して溶解産物中のタンパク質を分離させたのち、ウェスタンブロット分析によって検出した。電気泳動ゲル上のリン酸化ERK1およびERK2は、これらのタンパク質のリン酸化形態に特異的な抗体を用いるプロービングによって検出した。これらの抗体は、Cell Signaling Technologies, Beverly, MAから市販されている。
【0222】
CCX-CR2を発現するHela細胞を用いて同様な実験を実施した。これらの細胞をITACまたはSDF1で刺激した場合、同じ結果が得られた。
【0223】
ITACおよびSDF1は、他のケモカイン受容体、たとえばITACの場合にはCXCR3およびSDF1の場合にはCXCR4に結合するため、MCF7細胞中のこれらのリガンドによって誘発されるERKリン酸化へのこれらの受容体の潜在的寄与を考慮することが重要であった。CXCR3またはCXCR4に特異的な抗体を使用するMCF7細胞のFACS分析は、MCF7細胞におけるこれらの受容体の完全な不在を明らかにした。CXCR3またはCXCR4を発現する細胞株を使用する陽性対照は、これらの実験で使用される抗体がこれらの受容体に結合することができることを立証した。したがって、これらのデータは、CCX-CR2に結合するITACまたはSDF1のようなリガンドがERKのリン酸化を介して細胞内シグナル伝達を生じさせ、それがさらなる下流成分の活性化を生じさせる可能性が高いことを示す。ERKリン酸化が細胞増殖および細胞分化の調節を媒介することが実証されているため、CCX-CR2がERK1およびERK2のリン酸化を媒介するという発見は、CCX-CR2が多様な生物学的プロセスと関連するということを示す。
【0224】
実施例5
この実施例は、CCX-CKR2の細胞発現が多数の調節タンパク質の誘導を生じさせることを実証する。
【0225】
CCX-CKR2媒介信号伝達事象を調査する代替手法として、CCX-CKR2形質移入MDA MB 435s細胞から収集した上澄みを、野生型MDA MB 435s(435s)細胞から収集した上澄みと比較し、分泌タンパク質の大きなファミリーの存在に関して特異的ELISAによって評価した。CCX-CKR2を発現する435s細胞は、特に限られた血清条件下で増殖させた場合、野生型435s細胞よりも実質的に多量のGM-CSF、RANTES、MCP-1、TIMP-1およびMMP3を産生した。興味深いことに、これらすべての因子が、腫瘍形成に関連する成長、血管リモデリングおよび走化性に関与すると報告されている。これらはまた、上記CCX-CKR2のアポトーシス節約性表現型に関与するかもしれない。
【0226】
実施例6
この実施例は、siRNAベースのCCX-CKR2阻害を実証する。
【0227】
本発明者らは、CXCR4またはCCX-CKR2のいずれかに特異的なSMARTpool(商標)siRNA(Dharmacon)を得た。SMARTpool(商標)siRNAは、それぞれが指定されたmRNAの異なる領域を標的化する四つの異なるsiRNA配列のプールである。これらのsiRNAプールをHeLa細胞で試験した。CXCR4発現は、12G5または173Mab染色およびFACSによって評価し、CCX-CKR2発現は、125I-SDF1を使用する結合アッセイで計測した。CXCR4は、HeLa細胞中で、検出可能な125I-SDF1結合を示さないコンホメーションで発現し、それにより、CCX-CKR2発現の検出を可能にする。CCX-CKR2 SMARTpool(商標)siRNA(25〜100nM)は、125I-SDF1結合の有意な(≧50%)阻害を生じさせ、一方、CXCR4 SMARTpool(商標)siRNAはそれを生じさせなかった。293-CCX-CKR2形質移入体を用いて同様な結果が得られた。
【0228】
加えて、以下の三つのsiRNA配列それぞれは、4nMの低さの濃度で細胞に導入された場合、SDF-1結合を減らすことがわかった。

【0229】
実施例7
この実施例は、脳におけるCCX-CKR2の発現を実証する。
【0230】
CCX-CKR2は、多数の腫瘍細胞株で発現するが、正常な組織ではほとんど発現しない。後者のパターンの一つの例外は、正常な成体マウスからの脳細胞がCCX-CKR2を発現するという結合実験における実証によって提供された。これらの観測を拡張するため、CCX-CKR2特異的プローブを使用してCCX-CKR2発現の領域を脳内に限局化することにより、インサイチューハイブリダイゼーション実験を実施した。脳試料は、正常な成体マウスから収集し、PBS中4%PFAによって4℃で終夜固定したのち、PBS中30%スクロースによって4℃で固定した。そして、組織をOCTに包埋し、20umスライスに切断したのち、スーパーフロスト+スライド上に収集した。インサイチューハイブリダイゼーション実験の場合、直線化後、DIG cRNA標識キット(Roche)を使用して、アンチセンスおよびセンスリボプローブを、それぞれT7およびSP6 RNAポリメラーゼでのインビトロ転写によって調製した。20um凍結切片を新鮮な4%PFA中で固定したのち、プロテアーゼK処理を実施した(2ug/ml、37℃で20分間)。スライドを55℃で1時間プレハイブリダイズさせたのち、封止された容器中55℃ O/Nでハイブリダイズさせる。そして、スライドを50%ホルムアルデヒド、5x SSC pH4.5および1%SDSで65℃で洗浄したのち、5%ヒツジ血清で1時間ブロッキングし、1%ヒツジ血清中1:1000抗Dig抗体とともにO/Nで4℃でインキュベートした。スライドをTBSTで洗浄し、NBT/BCIPで検出した。
【0231】
結果は、小脳、海馬および皮質中の神経細胞によるCCX-CKR2の強い発現を明らかに実証する。グリア細胞を含有する区域、たとえば小脳内の白質路および脳梁で検出可能な発現はほとんどまたはまったくなかった。プルキニエ細胞は、均一に強く陽性のシグナルを示し、内部顆粒細胞層中の下流細胞のサブセットは陽性シグナルを示した。加えて、皮質は、一般に非常に陽性であり、皮質内の個々の神経細胞は明確な陽性染色を示した。海馬は、歯状回おおびCA1-3の神経細胞中で強いCCX-CKR2シグナルを示した。加えて、上にある皮質もまた陽性であった。
【0232】
これらのデータは、CCX-CKR2と脳腫瘍との潜在的関連性に関する何らかの洞察を提供する。CCX-CKR2は、心室ゾーン細胞、すなわち、星状細胞腫が発生すると考えられているグリア細胞では発現しない。対照的に、小脳顆粒細胞、すなわち骨芽細胞腫が誘導される細胞型のサブセットであると思われるものではいくらかの発現がある。CCX-CKR2の発現プロフィールは、他者によって記載されているように、他のSDF-1受容体CXCR4で見られるものとは非常に異なる。
【0233】
実施例8
この実施例は、肺癌のマウス異種移植片モデルにおけるCCX-CKR2リガンド競合相手の効力を実証する。
【0234】
肺癌は、米国における癌死因の第一位である。肺癌および活性化内皮でCCX-CKR2が発現する。肺癌の異種移植片モデルにおけるCCX-CKR2リガンド競合相手である700系化合物の投与の効果を評価した。
【0235】
肺癌異種移植片実験では、A549腫瘍断片(30〜40mg)をヌードマウスの皮下空間に移植した。腫瘍を約150mgの大きさ(100〜200mg)まで成長させ、その時点でマウスを実験に参加させ、処置を開始した。マウスをCCX-CKR2リガンド競合相手(25mpk、皮下投与、Q1D)または賦形剤対照で処置した。メルファランを陽性対照として含めた(9mpk/服用、腹腔内投与、Q4Dx3)。週2回、腫瘍をキャリパーで二つの寸法で計測し、長楕円の式(a x b2/2)(aは、長い方の寸法であり、bは、短い方の寸法であり、単位密度(1mm3=1mg)を仮定した)を使用して腫瘍質量に変換した。また、週2回、体重を計測して、化合物投薬の副作用を評価した。賦形剤処置対照グループと比較した処置グループの腫瘍成長の遅れによって抗腫瘍活性を評価した。
【0236】
競合相手を投与されたマウスは、賦形剤処置グループと比較して腫瘍負荷の減少を示した。腫瘍体積におけるこの差違は、これらのグループの間で統計的に有意であり、平均腫瘍体積の32%の減少を表した。またメルファランは腫瘍体積を平均腫瘍体積の60%減少させた。さらには、この実験では、賦形剤処置されたマウスの体重増と合致する化合物処置された動物の体重増によって判断されるように、競合相手による毎日の処置は十分に耐容された。
【0237】
化合物処置の最終日(49日目)に腫瘍重量を評価した。CCX-CKR2競合相手で処置されたマウスは、賦形剤対照グループの腫瘍よりも統計的に小さい腫瘍を示した。同様に、メルファランを投与されたマウスは、賦形剤処置グループよりも有意に小さな腫瘍を示した。
【0238】
本明細書中に引用したすべての刊行物および特許出願は、それぞれの個々の刊行物または特許出願が参照として組み込まれるように詳細かつ個別に示されている場合と同程度に参照として本明細書に組み込まれる。
【0239】
理解を容易にする目的で、上記の本発明を図面および実施例によってある程度詳細に説明してきたが、本発明の教示に鑑みて、添付する特許請求の範囲の精神または範囲を逸脱することなく、ある種の変更または修正を加えうることは当業者には容易に明らかになると考えられる。
【0240】
配列表
配列番号:1 CCX-CKR2コード配列

配列番号:2 CCX-CKR2アミノ酸配列

配列番号:3 CCX-CKR2.2コード配列

配列番号:4 CCX-CKR2.2アミノ酸配列

配列番号:5 CCX-CKR2.3コード配列

配列番号:6 CCX-CKR2.3アミノ酸配列

配列番号:7 CCX-CKR2.4コード配列

配列番号:8 CCX-CKR2.4アミノ酸配列

配列番号:9 CCX-CKR2.5コード配列

配列番号:10 CCX-CKR2.5アミノ酸配列

【図面の簡単な説明】
【0241】
【図1】図1A〜Iは、異なる細胞型における別個のSDF-1押し退け結合「フィンガプリント」を実証する結合データを示す。>90種の別個のウイルス、ヒトおよびマウスケモカインならびにケモカイン変異体の包括的アレイを非放射性競合相手として用いる結合押し退け実験において(a)CEM-NKr(図1A〜C)および(b)MCF-7(図1D〜F)において125I SDF-1αを放射性リガンドプローブとして使用し、(c)MCF-7において125II-TAC(図1G〜I)を放射性リガンドプローブとして使用した結合競合プロフィール。放射性リガンド結合の阻害率が棒グラフとして示され、SDF-1αおよびI-TACがMCF-7では交さ押し退けされるが、CEM-NKr細胞では交さ押し退けされないことを明らかにする。白い棒、高い潜在的親和性(阻害率>80%);灰色の棒、中程度ないし低い潜在的親和性(阻害率60〜79%);黒い棒、親和性ほとんどまたはまったくなし(阻害率<60%)。結果は3回の測定の平均である。見やすくするため、エラーバーは省略した。
【図2】CEM-NKrおよびMCF-7におけるリガンド結合親和性および特異性の比較を示す。図2で同定される、選択された潜在的高親和性リガンドを、CEM-NKr(□)およびMCF-7(■)における用量応答競合のために選択した。各競合で、125I SDF-1αを標記非放射性競合相手ケモカインと競合させている。
【図3】MCF-7細胞への125II-TAC結合が典型的なCXCR3結合相互作用によるものではないことを示す。125I-TACが標記ケモカインと競合する能力を、緩衝剤のみ(■)、過剰なMIG(CXCR3媒介結合を阻害するため、△)または過剰なSDF-1α(*)の存在で試験した。
【図4】本明細書に記載する結合表現型を、この受容体を内在的に発現しない細胞株で反復させることができることを示す。CCX-CKR2を安定に形質移入された乳癌細胞株MDA MB435sが125I SDF-1α結合を示す。この結合への競合は、非放射性SDF-1αおよびI-TACとの間で起こることができる。対照的に、野生型細胞(非形質移入)は、生産的な125I SDF-1α結合シグナルを与えない。
【図5】競合結合データを示す。二つの小分子CCX0803(●)およびCCX7923(○)が別個の細胞型で125I SDF-1αと特異的に競合しており、交さ競合は検出されない。また、SDF-1α(*)をMCF-7およびCEM-NKr上の125I SDF-1α結合の非放射性競合相手として含めた。CCX0803およびCCX7923の化学構造を脇に示す。SDF-1αおよびCXCR4アンタゴニスト競合の予想IC50値が添付の表に提供されている。
【図6】CCX-CKR2を発現する乳癌細胞を小分子CCX-CKR2アンタゴニストで処理した効果を、アンタゴニストで処理されない細胞と比較して示す。
【図7】CCX-CKR2アンタゴニスト3451(表1、化合物49を参照)が血管内皮単層へのCCX-CKR2発現細胞の接着を阻害することを示す。
【図8】乳癌細胞に対するCCX-CKR2の拮抗作用が腫瘍体積を減らすことを示す。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】

【図1G】

【図1H】

【図1I】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞上でCCX-CKR2に結合する作用物質を同定する方法であって、
複数の作用物質を、配列番号:2の細胞外ドメインと少なくとも95%同一である細胞外ドメインを含むCCX-CKR2ポリペプチド、またはそのSDF1もしくはI-TAC結合性断片に接触させる段階、および
CCX-CKR2ポリペプチドまたはその断片への結合に関してI-TACまたはSDF1と競合する作用物質を選択し、それによって細胞上でCCX-CKR2に結合する作用物質を同定する段階
を含む方法。
【請求項2】
細胞が癌細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
選択された作用物質を、細胞に結合する能力または細胞の増殖を阻害する能力に関して試験する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
細胞が癌細胞である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
選択された作用物質を、腎機能を変化させる能力に関して試験する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
選択された作用物質を、脳または神経細胞機能を変化させる能力に関して試験する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
選択された作用物質を、内皮細胞への細胞接着を変化させる能力に関して試験する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
作用物質が1,500ダルトン未満である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
作用物質が抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
作用物質がポリペプチドである、請求項1記載の方法。
【請求項11】
CCX-CKR2ポリペプチドが配列番号:2に示される配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
癌細胞の有無を決定する方法であって、
細胞を含む試料を、配列番号:2と特異的に結合する作用物質と接触させる段階、および
試料中のポリペプチドへの作用物質の結合を検出する段階であって、ここで試料への作用物質の結合が癌細胞の存在を示すものである段階
を含む方法。
【請求項13】
作用物質が抗体である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
作用物質が1,500ダルトン未満である、請求項12記載の方法。
【請求項15】
作用物質がポリペプチドである、請求項12記載の方法。
【請求項16】
検出されるポリペプチドが配列番号:2である、請求項12記載の方法。
【請求項17】
試料がヒト由来の試料である、請求項12記載の方法。
【請求項18】
ヒトにおける癌を診断するために使用される、請求項12記載の方法。
【請求項19】
ヒトにおける癌の予後を提供するために使用される、請求項12記載の方法。
【請求項20】
癌が、子宮頸癌、乳癌、リンパ腫、グリア芽細胞腫、前立腺癌および白血病からなる群より選択される、請求項12記載の方法。
【請求項21】
癌が、カポジ肉腫、多中心性キャッスルマン病またはエイズ関連の原発性滲出液リンパ腫(primary effusion lymphoma)ではない、請求項12記載の方法。
【請求項22】
抗体が、配列番号:2への結合に関してSDF1およびI-TACと競合する、請求項12記載の方法。
【請求項23】
癌を有する個体の診断または予後を提供する方法であって、
個体の細胞においてCCX-CKR2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現の有無を検出する段階を含み、ここでCCX-CKR2ポリペプチドはI-TACおよび/またはSDF1に結合し、CCX-CKR2ポリペプチドは配列番号:2と少なくとも95%同一であり、それによって個体における癌を診断する方法。
【請求項24】
CCX-CKR2ポリペプチドが配列番号:2で示される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
癌が、子宮頸癌、乳癌、リンパ腫、グリア芽細胞腫、前立腺癌および白血病からなる群より選択される、請求項23記載の方法。
【請求項26】
癌が、カポジ肉腫、多中心性キャッスルマン病またはエイズ関連の原発性滲出液リンパ腫ではない、請求項23記載の方法。
【請求項27】
配列番号:2への結合に関してSDF1およびI-TACと特異的に競合する抗体。
【請求項28】
モノクロナール抗体である、請求項27記載の抗体。
【請求項29】
ヒト化抗体である、請求項27記載の抗体。
【請求項30】
細胞を、配列番号:2に特異的に結合する作用物質と接触させる段階を含み、ここで作用物質はCCX-CKR2ポリペプチドへの結合に関してSDF-1およびI-TACと競合し、細胞は配列番号:2の細胞外ドメインと少なくとも95%同一である細胞外ドメインを含むCCX-CKR2ポリペプチドを発現し、それにより作用物質を細胞上でCCX-CKR2ポリペプチドに結合させる方法。
【請求項31】
作用物質が1,500ダルトン未満である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
作用物質が抗体である、請求項30記載の方法。
【請求項33】
作用物質がポリペプチドである、請求項30記載の方法。
【請求項34】
CCX-CKR2ポリペプチドが配列番号:2で示されるとおりである、請求項30記載の方法。
【請求項35】
作用物質を、
複数の作用物質を、配列番号:2の細胞外ドメインと少なくとも95%同一である細胞外ドメインを含むCCX-CKR2ポリペプチド、またはそのSDF1もしくはI-TAC結合性断片に接触させる段階、および
CCX-CKR2ポリペプチドまたはその断片への結合に関してI-TACまたはSDF-1と競合する作用物質を選択し、それによって癌細胞に結合する作用物質を同定する段階
を含む方法によって同定する、請求項30記載の方法。
【請求項36】
個体における癌を処置する方法であって、個体に対し、CCX-CKR2ポリヌクレオチドの発現を阻害する治療有効量のポリヌクレオチドを投与する段階を含む方法。
【請求項37】
CCX-CKR2ポリヌクレオチドが配列番号:2をコードする、請求項36記載の方法。
【請求項38】
CCX-CKR2ポリヌクレオチドが配列番号:1を含む、請求項36記載の方法。
【請求項39】
個体における癌を処置する方法であって、個体に対し、配列番号:2への結合に関してSDF1およびI-TACと競合する治療有効量の作用物質を投与する段階を含む方法。
【請求項40】
作用物質が1,500ダルトン未満である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
作用物質が抗体である、請求項39記載の方法。
【請求項42】
作用物質がポリペプチドである、請求項39記載の方法。
【請求項43】
作用物質を、
複数の作用物質を、配列番号:2の細胞外ドメインと少なくとも95%同一である細胞外ドメインを含むCCX-CKR2ポリペプチド、またはそのSDF1もしくはI-TAC結合性断片に接触させる段階、および
CCX-CKR2ポリペプチドまたはその断片への結合に関してI-TACまたはSDF-1と競合する作用物質を選択し、それによって癌細胞に結合する作用物質を同定する段階
を含む方法によって同定する、請求項39記載の方法。
【請求項44】
癌が、子宮頸癌、乳癌、リンパ腫、グリア芽細胞腫、前立腺癌および白血病からなる群より選択される、請求項39記載の方法。
【請求項45】
癌が、カポジ肉腫、多中心性キャッスルマン病またはエイズ関連の原発性滲出液リンパ腫ではない、請求項39記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−514651(P2007−514651A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538100(P2006−538100)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/034807
【国際公開番号】WO2005/044792
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マッキントッシュ
【出願人】(504208887)ケモセントリックス インコーポレーティッド (8)
【Fターム(参考)】