説明

ケラチン医用生体材料を含有する凝固および治癒用組成物

医療用途での使用に最適なケラチン調製品を開示する。生物医学用途での使用に、特に、出血の治療におよび創傷の治療に、最適なケラチン調製品の製造方法を提供する。また、基体上にケラチン調製品を有する基体、および滅菌形態で包装されているケラチン誘導体を含むキットを含む、外科用または救急医療士用補助具を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2006年2月17日に出願された米国仮特許出願第60/774,442号、2006年2月17日に出願された米国仮特許出願第60/774,587号、および2006念2月17日に出願された米国仮特許出願第60/774,920号の恩典を合衆国法典35巻119条(e)項に従って請求するものである(前記米国仮特許出願のそれぞれの開示は、その全体が本明細書に参照により組み込まれる)。
【0002】
本出願は、2005年8月17に出願されたAmbient Stored Blood Plasma Expandersと題するMark E.Van Dykeの米国特許出願第11/205,800号、2007年2月9日に出願された(出願番号が付与された)Nerve Regeneration Employing Keratin Biomaterialsと題するMark E.Van Dykeの米国特許出願、ならびに2007年2月16日に出願された(出願番号が付与された)Coatings and Biomedical Implants Formed from Keratin Biomaterialsと題するMark E.Van DykeのPCT出願に関する。
【0003】
[政府支援]
本発明は、米国陸軍からの契約番号W81XWH−04−1−0105のもとでの政府支援を受けて行ったものである。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0004】
[発明の分野]
本発明は、一般に、ケラチン医用生体材料、および生物医学用途でのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0005】
急速な多量出血は、即時の有効な介入がなければ、ほぼ取り返しがつかない一連の事象を引き起こす。米国疾病管理センター(the Centers for Disease control)によると、自動車による外傷は、64歳未満の米国人の主な死因であり、犠牲者は、年間40,000人を超える(National Vital Statistics System.National Center for Health Statistics.CDC(2003))。自動車関連傷害による死者の数は、過去10年間、変わっていない。歴史的に見ると、付随出血を伴う重症患者のうちの半数より多くが死亡している。即時介入が患者の死亡率を抑える最良の方法であることは証明されているが(Regel G et al.,Acta Anaesthesiol Scand Suppl 1997;110:71−6)、病院前設定での出血制御方法は、何世紀もの間、実質的に変わっていない(Zimmerman LM and Veith I.Great ideas in the history of surgery.Norman Publishing,San Francisco,CA(1993))。止血帯、および止血用圧迫包帯における最近の新製品は、表面および体肢創傷の治療に有効であったが、頭部、頚部、胸部および腹部出血にはほとんど選択されない。
【0006】
戦場では、弾道兵器負傷者の70パーセントが負傷から1時間以内に死亡する。これは、主として、穿通損傷に関連した大量失血に起因する。ベトナムでは、体肢からの出血に起因して5000人が死亡した。これらの惨事の20パーセントは、よりよい応急処置で回避できたと予測された(Neel,S.,“Medical Support of the U.S.Army in Vietnam 1965−1970,”Department of the Army,Washington D.C.(1991))。驚くべきことに、負傷後1時間、生き延びる負傷者の割合は、米国南北戦争以来、変わっていない。イラクおよびアフガニスタンにおいても、すべての以前の戦争の場合と同様に、体肢創傷は最も多い傷害である。出血に起因する死亡は、イラクにおける戦死者の過半数に相当する(Peake JB.N Engl J Med 2005;352(3):219−22)。
【0007】
体肢からの出血を有効に治療する多くの製品(例えば、止血帯および止血用圧迫包帯)、ならびに全身に作用する多くの製品が、存在する。非常に多数の動物前臨床およびヒト臨床試験が行われ、公表され、ならびに止血薬の多くの比較調査が企てられてきた(Pusateri AE et al.,J Trauma 2003;55(3):518−26;Alam HB et al.,J Trauma 2003;54(6):1077−82;King K et al.,Mil Med 2004;169(9):716−20)。凝固アジュバントとしては、鉱物系顆粒(例えば、QuikClot(登録商標)止血剤)(Turner SA et al.,J Biomed Mater Res.2002;63(1)37−47;Pusateri AE et al.,J Trauma 2004;57(3):555−62;Robinson K,J Emerg Nurs 2004;30(2):160−1;Alam HB et al.,J Trauma 2004;56(5):974−83)、非常に多数の包帯剤(Rothwell SW et al.,Thromb Res 2003;108(5−6);335−40;Alencar de Queiroz AA et al.,J Biomed Mat Res A 2003;64(1):147−54;Vournakis JN et al.,J Surg Res 2003;113(1):1−5;Connolly RJ,J Trauma 2004;57(1 Suppl):S26−8;King DR et al.,J Trauma 2004;57(4):756−9)、凝固因子(Martinowitz U et al.,J Trauma 2001;50(4):721−9;Schreiber MA et al.,J Trauma 2002;53(2):252−9)、および外科的アプローチ(Jaskille A et al.,J Trauma 2005;59(6):1305−8;Takasu A et al.,J Trauma 2004;56(5):984−90)が挙げられる。結果はまちまちであったし、使用したモデルに依存する。ゼオライト系QuikClot(登録商標)止血剤材料は、幾つかの大型動物試験において成功し、キトサン系バンデージ、HemCon(登録商標)止血バンデージも成功した。1つの広範囲の比較試験では、フィブリン包帯が明らかに優れていた(Pusateri AE et al.,J Trauma 2003;55(3):518−26)。しかし、これらの各止血物質には、課題および制限がある。QuikClot(登録商標)止血剤は、局所的加熱を生じさせることが知られており、この加熱は、組織を損傷させることが証明された。HemCon(登録商標)止血バンデージおよびQuikClot(登録商標)止血剤は、両方とも、内部損傷のためのものではなく、創傷部位から取り外さなければならず、ならびにフィブリンバンデージは、高価であり、まだ米国食品医薬品局(the Food and Drug Administration)により認可されていない。
【0008】
これらの材料はいずれも、いまだ開発中であるフィブリンフォーム製品を除き、出血部位に近づく明確な手段なしに適用すること(ファーストレスポンダーの主目標)ができない。従って、重症出血を制御することができ、創傷治癒を促進することができる最適な材料が、依然として、大いに必要とされている。
【0009】
ケラチンから誘導される材料の医療における使用は、新しいものではない。医療におけるケラチンの使用を最も早く文献に記載したのは、Li Shi−Zhenという名の中国人植物学者である(Li Shi Zhenによって書かれた、Ben Cao Gang Mu.Materia Medica,a dictionary of Chinese herbs(1518−1593))。38年の時をかけて、彼は、Ben Cao Gang Muとして知られている800冊の本の山を書き上げた。これらの本は、彼の死の3年後、1596年に出版された。これらの書物に記載された11,000を超える処方の中に、熱分解された人毛からの粉砕された灰からなる、血余炭(Xue Yu Tan)として知られている、Crinis Carbonisatusとしても知られている、物質がある。血余炭について述べられている効能は、創傷治癒および血液凝固の促進であった。
【0010】
タンパク質がまだアルブミノイドと呼ばれていた1800年代初期(アルブミンは、その当時、周知のタンパク質であった)、多くの異なる種類のタンパク質が発見された。1849年ごろ、動物の角および蹄などの硬質組織を構成する物質を記述するために、文献に「ケラチン」という語が出現した(ケラチンは、角を意味するギリシャ語「kera」に由来する)。この新たなタンパク質は、他のタンパク質のように動作しないので、科学者たちの興味をそそった。例えば、タンパク質を溶解するために用いられる通常の方法がケラチンには無効であった。燃焼および粉砕などの方法が、暫くの間、知られていたが、多くの科学者および発明者たちは、より良い製品を造るために毛および角を溶解することに、より大きな関心をもった。
【0011】
1905年から1935年までの数年間に、酸化および還元化学を用いてケラチンを抽出する多数の方法が開発された(Breinl F and Baudisch O,Z physiol Chem 1907;52:158−69;Neuberg C,米国特許第926,999号,1909年7月6日;Lissizin T,Biochem Bull 1915;4:18−23;Zdenko S,Z physiol Chem 1924;136:160−72;Lissizin T,Z physiol Chem 1928;173:309−11)。1920年代後期までに、毛、角および蹄の構造を分解する多くの技術が開発されたが、科学者たちは、これらの精製タンパク質の一部についての動作に困惑した。すぐに、科学者たちは、多くの異なる形態のケラチンがこれらの抽出物中に存在する、および毛髪繊維は複雑な構造であるに違いなく、単純なタンパク質鎖であるはずがない、という結論に達した。1934年、異なる分子量を有することで主として区別された異なるタイプのケラチンを記載した重要な研究論文が公表された(Goddard DR and Michaelis L,J Biol Chem 1934;106:605−14)。この独創性に富んだ論文は、多くの異なるケラチン同族体があること、およびそれぞれが、毛包の構造および機能に関して異なる役割を果すことを論証した。
【0012】
英国のリーズ大学(University of Leeds)および羊毛産業研究協会(the Wool Industries Research Association)における以前の研究は、羊毛および他の繊維が、外側のキューティクルと中心の皮質からなることを証明した。この情報に基づいて、CSIROの科学者たちは、羊毛の構造および組成に関する多くの最も基本的な研究を行った。酸化および還元化学法と併せて、X線回折および電子顕微鏡法を用いて、CSIROは、毛髪繊維についての最初の完全な図を作った(Rivett DE et al.,“Keratin and Wool Research,”The Lennox Legacy,CSIRO Publishing;Collingwood,VIC,Australia,1996)。
【0013】
1965年、CSIRO科学者W.Gordon Crewtherおよび彼の同僚は、ケラチンの化学に関する決定版を出版した(Crewther WG et al.,The Chemistry of Keratins.Anfinsen CB Jr et al.,editors.Advances in Protein Chemistry 1965.Academic Press.New York:191−346)。Advances in Protein Chemistryにおけるこのチャプターは、ケラチンに関する640を超える公表された研究への参照を含んでいた。科学者たちが、毛髪繊維からケラチンを抽出し、それらを精製および特性付けする方法を知るやいなや、ケラチンを用いて製造することができる誘導材料の数は、指数関数的に増大した。1970年から10年の間に、いくつかの研究グループによって世界中で抽出ケラチンを粉末、フィルム、ゲル、コーティング、繊維およびフォームにする方法が、開発され、公表された(Anker CA,米国特許第3,642,498号,1972年2月15日;Kawano Y and Okamoto S,Kagaku To Seibutsu 1975;13(5):291−223;Okamoto S,Nippon Shokuhin Kogyo Gakkaishi 1977;24(1):40−50)。これらの方法のすべてが、数十年前に開発された酸化および還元化学を利用していた。
【0014】
1982年、日本の科学者は、血液凝固の排除方法として人工血管に対するケラチンコーティングの使用を説明する最初の研究(Noishiki Y et al.,Kobunshi Ronbunshu 1982;39(4):221−7)、ならびにケラチンの生体適合性に関する実験(Ito H et al.,Kobunshi Ronbunshu 1982:39(4):249−56)を公表した。その後、間もなく、1985年に、英国からの2人の研究者が、新たな医用生体材料開発のための構成単位としてケラチンを使用する見通しを思索する総説を公表した(Jarman T and Light J,World Biotech Rep 1985;1:505−12)。1992年、ケラチンに基づく医用生体材料の開発および宿主の試験は、フランス人学士Isabelle Valherieの博士論文の主題であった(Valherie I and Gagnieu C.Chemical modifications of keratins:Preparation of biomaterials and study of their physical,physiochemical and biological properties.Doctoral thesis.Inst Natl Sci Appl Lyon,France 1992)。その後、間もなく、日本の科学者たちは、ケラチンが就くことのできる医用生体材料開発の最前線の卓越した位置に関する具体例を1993年に公表した(Various Authors,Kogyo Zairyo 1993;41(15)Special issue 2:106−9)。
【0015】
考えあわせると、前述の公表された研究の主要部分は、ケラチンのユニークな化学的、物理的および生物学的特性を例証するものである。しかし、生物医学用途での使用に、特に出血の治療におよび創傷の治療に、最適なケラチン調製品は、依然として大いに必要とされている。
【発明の開示】
【0016】
本発明の態様は、ケラチン誘導体(例えば、ケラトース、ケラテインまたはそれらの組み合わせ)と、場合によっては少なくとも1つの追加の活性成分とを含む、医薬組成物である。
【0017】
本発明のもう1つの態様は、出血創傷に苦しむ被検者において出血を治療する方法であり、この方法は、正電荷を有する組成物を、該出血を治療するために有効な量で、該創傷に適用することを含む。一部の実施形態において、前記正電荷を有する組成物は、ケラチン、コラーゲン、ムチン、エラスチン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチンおよびラミニンの誘導体、を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0018】
本発明のさらなる態様は、出血創傷に苦しむ被検者において出血を治療する方法であり、この方法は、ケラチン誘導体を、その出血を治療するために有効な量で、その創傷に適用することを含む。一部の実施形態において、前記ケラチン誘導体は、αケラトース、γケラトース、酸性αケラトース、塩基性αケラトース、酸性γケラトース、塩基性γケラトース、αケラテイン、γケラテイン、酸性αケラテイン、塩基性αケラテイン、酸性γケラテイン、塩基性γケラテインまたはそれらの組み合わせ、を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0019】
本発明のさらにもう1つの態様は、必要とする被検者において創傷を治療する方法であり、この方法は、ケラチン誘導体を、その創傷を治療するために有効な量で、その創傷に局所適用することを含む。一部の実施形態において、前記ケラチン誘導体は、αケラトース、γケラトース、酸性αケラトース、塩基性αケラトース、酸性γケラトース、塩基性γケラトース、αケラテイン、γケラテイン、酸性αケラテイン、塩基性αケラテイン、酸性γケラテイン、塩基性γケラテインまたはそれらの組み合わせ、を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0020】
本発明のもう1つの態様は、固体で生理学的に許容される基体とその基体上のケラチン誘導体とを含む、外科用または救急医療士用補助具である。一部の実施形態において、前記ケラチン誘導体は、αケラトース、γケラトース、酸性αケラトース、塩基性αケラトース、酸性γケラトース、塩基性γケラトース、αケラテイン、γケラテイン、酸性αケラテイン、塩基性αケラテイン、酸性γケラテイン、塩基性γケラテインまたはそれらの組み合わせ、を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0021】
本発明の尚、さらなる態様は、ケラチン誘導体と該ケラチン誘導体が滅菌形態で包装されている容器とを含むキットである。一部の実施形態において、前記ケラチン誘導体は、αケラトース、γケラトース、酸性αケラトース、塩基性αケラトース、酸性γケラトース、塩基性γケラトース、αケラテイン、γケラテイン、酸性αケラテイン、塩基性αケラテイン、酸性γケラテイン、塩基性γケラテインまたはそれらの組み合わせ、を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0022】
本発明のもう1つの態様は、本明細書に記載するとおりの治療方法を行うための組成物もしくは薬物を調製するための、または本明細書に記載するとおりの製品を製造するための、本明細書に記載するとおりのケラチン誘導体の使用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本明細書に引用するすべての米国特許参考文献の開示は、本明細書に参照により組み込まれる。
【0024】
本明細書に記載する方法および組成物で治療される「被検者」(または「患者」)は、ヒト被験者と、獣医学的目的で動物被検者(特に、他の哺乳動物被検者、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、サルなど)の両方を含む。ヒト被験者が特に好ましい。被検者は、男性であってもよいし、または女性であってもよく、ならびにいずれの年齢であってもよく、新生児、乳児、青少年、成人および老人被検者を含む。
【0025】
マイクロメートル規模で自然に自己組織化する抽出ケラチン溶液の能力は、1986年および1987年に2つの論文において発表された(Thomas H et al.,Int J Biol Macromol 1986;8:258−64;van de Locht M,Melliand Textilberichte 1987;10:780−6)。この現象は、毛髪ケラチンが得られる高度に制御された高次構造を考えると、意外ではない。適切に加工すると、この自己組織化能力を保つことができ、この能力を用いて、細胞浸潤に導くことができるサイズ規模で規則正しい構築物を作ることができる。ケラチンが、(例えば、酸または塩基で)加水分解されると、それらの分子量は低減され、それらは自己組織化能力を喪失する。従って、加水分解を最小にする加工条件が好ましい。
【0026】
この自己組織化能力は、2つの理由で組織工学スキャホールドの特に有用な特徴である。第一に、自己組織化は、再現性のある構築物、寸法および気孔率を伴う高規則構造を生じさせる。第二に、これらの構築物が良性条件下で自発的に形成することにより、マトリックスが形成されたとき、細胞の組み込みが可能となる。これら2つの特徴は、天然細胞外マトリックス(ECM)の模倣を試みるいずれのシステムにとっても極めて重要である。
【0027】
細胞認識も、ECMを模倣しようと努める医用生体材料の重要な特性である。そうした認識は、構成要素ECMタンパク質によって提示される特異的アミノ酸モチーフへの細胞表面インテグリンの結合によって助長される。主なタンパク質としては、コラーゲンおよびフィブロネクチンが挙げられ、これらの両方が、細胞結合について広範に研究されている。両方のタンパク質は、多種多様な細胞タイプによる付着を支持する幾つかの領域を含有する。広く知られているアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)モチーフに加えて、フィブロネクチン上の「X」−アスパラギン酸−「Y」モチーフもインテグリンα4β1によって認識される(この場合、Xは、グリシン、ロイシンまたはグルタミン酸に相当し、Yは、セリンまたはバリンに相当する)ことが証明された。人毛から誘導されるケラチン医用生体材料は、これらの同じ結合モチーフを含有する。NCBIタンパク質データベースの検索により、71の別個の固有人毛ケラチンタンパク質についての配列が判明した。これらのうちの55は、高分子量、低硫黄、αヘリカルファミリーからのものである。タンパク質のこのグループは、多くの場合、αケラチンと呼ばれ、人毛繊維に靭性を付与する要因である。これらのαケラチンは、40kDaより大きい分子量、および4.8モルパーセントの平均システイン(分子間および分子内タンパク質結合の責任を負う主アミノ酸)含有率を有する。さらに、これらのαケラチンタンパク質のアミノ酸配列の分析により、78%が少なくとも1つのフィブロネクチン様インテグリン受容体結合モチーフを含有し、25%が、少なくとも2つ以上を含有することが証明された。2つの最近の論文は、加工ケラチンフォーム上への優れた細胞付着を実証することにより、これらの結合部位がケラチン医用生体材料の表面に存在する可能性が高いことを強調した(Tachibana A et al.,J Biotech 2002;93:165−70;Tachibana A et al.,Biomaterials 2005;26(3):297−302)。
【0028】
本開示ケラチン調製品と同様に利用することができる天然ポリマーの他の例としては、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、フィブリン、ムチン、エラスチン、ニドジェン(エンタクチン)、プロテオグリカンなどが挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Katsuen et al.への米国特許第5,691,203号参照)。
【0029】
人毛抽出物の生物活性については2つの学説がある。第一は、人毛ケラチン(「HHK」)それら自体が生物活性であるという説である。70を超える人毛ケラチンが知られており、それらのcDNA由来配列が公表されている。しかし、HHKの全補体は分かっておらず、100を超える推定値が提案されている(Gillespie JM,The structural proteins of hair:isolation characterization,and regulation of biosynthesis.Goldsmith LA(editor),Biochemistry and physiology of the skin (1983),Oxford University Press.New York;475−510)。HHKの全範囲の中の少数は、創傷拘縮および細胞移動に関与することが証明された(Martin,P,Science 197;276:75−81)。特に、ケラチンK−6およびK−16は、創傷治癒中に表皮で発現され、毛包の外毛根鞘においても見出される(Bowden PE,Molecular Aspects of Dermatology(1993),John Wiley & Sons,Inc.,Chichester:19−54)。人毛抽出物中のこれらのHHKの存在、およびその後のそれらの創傷床への直接投与は、そうしなければ非常に長い分化、移動および増殖プロセスを「ショートカットする」要因となる場合があり、または何らかの生化学物質の欠乏を解消し、その結果、組織修復および再生プロセスを促進する要因となる場合がある。
【0030】
形質転換増殖因子−β(TGF−β)スーパーファミリーの骨形態発生タンパク質−4(BMP−4)および他のメンバーなどの増殖因子が発育中の毛包に存在することは、10より長きにわたって知られている(Jones CM et al.,Development 1991;111:531−42;Lyons KM et al.,Development 1990;109:833−44;Blessings M et al.,Genes and Develop 1993;7:204−15)。実際、30を超える増殖因子およびサイトカインが、周期的毛包増殖に関与する(Hardy MH,Trends Genet 1992;8(2):55−61;Stenn KS et al.,J Dermato Sci 1994;7S:S109−24;Rogers GE,Int J Dev Biol 2004;48(2−3):163−70)。これらの分子の多くは、様々な組織再生の際に重要な役割を果す。サイトカインが毛包の膨らんだ領域にある幹細胞に結合すると、多数の増殖因子が人毛の中に運び込まれてくる可能性が高い(Panteleyev AA et al.,J Cell Sci 2001;114:3419−31)。これらの増殖因子は、毛先をカットした人毛からケラチンと一緒に、ほぼ間違いなく、抽出される。多くの異なるタイプの増殖因子が様々な組織の抽出物に存在すること、およびそれらの活性が化学的な抽出後であっても残存することは以前に証明されているが、この所見は、前例がない。これらのような所見は、毛先をカットした人毛の中に多数の増殖因子が存在し得る、およびケラチンが、とりわけこれらの増殖因子の非常に有効な送達マトリックスとして動作し得るという証拠の漸増を示す。
【0031】
ケラチンは、脊椎動物の毛、皮膚および他の組織において見出されるタンパク質の1ファミリーである。毛は、容易に入手でき、高価でない、数少ないヒト組織の1つであるため、ユニークなヒトケラチン源である。他のケラチン源は、本発明に許容される原料ではあるが、(例えば、羊毛、毛皮、角、蹄、くちばし、羽、うろこなど)、ヒト被験者での使用には、人毛が、その生体適合性の故に好ましい。
【0032】
ケラチンは、当分野において公表された方法を用いる酸化または還元により、人毛繊維から抽出することができる(例えば、Crewther WG et al.The chemistry of keratins,in Advances in protein chemistry 1965;20:191−346参照)。これらの方法は、ケラチンの架橋構造を酸化または還元のいずれかによって破壊する二段法を一般に利用する。これらの反応では、システインアミノ酸残基におけるジスルフィド結合を切断して、ケラチンを可溶性にする(スキーム1)。そのキューティクルは、この処理による影響を本質的に受けず、そのため、大部分のケラチンは、キューティクルの保護構造の中に捕捉されたままである。これらのケラチンを抽出するために、変性溶液を使用する第二段階を用いなければならない。あるいは、還元反応の場合にはこれらの段階を組み合わせることができる。当分野において公知の変性溶液としては、尿素、遷移金属水酸化物、界面活性剤溶液、およびこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい方法は、0.1Mと1.0Mの間の濃度のトリスの水溶液、および0.1Mと10Mの間の尿素溶液を酸化反応および還元反応のためにそれぞれ使用する。
【化1】


スキーム1.ケラチンにおけるジスルフィド架橋の(a)酸化および(b)還元の一般図。これらの反応は、シスチン残基における硫黄−硫黄結合を切断し、それによってその高次構造を破壊し、ケラチンを反応媒質に可溶性にする。結果として生ずる画分は、ケラトース(a)およびケラテイン(b)である。
【0033】
酸化処理を利用する場合、結果として生ずるケラチンは、「ケラトース」と呼ばれる。還元反応を用いる場合、結果として生ずるケラチンは、「ケラテイン」と呼ばれる(スキーム1参照)。
【0034】
ケラチンの粗抽出物は、酸化還元状態にかかわらず、例えば等電沈殿により、さらに「γ」および「α」画分へと精製することができる。高分子量ケラチン、すなわち「αケラチン」、(αヘリックス状)、は、毛包のミクロフィブリル領域に由来すると考えられ、一般に、分子量は約40〜85キロダルトンの範囲である。低分子量ケラチン、すなわち「γケラチン」、(球状)、は、毛包の細胞外マトリックス領域に由来すると考えられ、一般に、分子量は約10〜15キロダルトンの範囲である。(Crewther WG et al.The chemistry of keratins,in Advances in Protein Chemistry 1965;20:191−346参照)。
【0035】
αおよびγケラチンはユニークな特性を有するにもかかわらず、より高度な精製手段によってしか、αケラチンとγケラチン両方のサブファミリーの特性を明らかにすることができない。例えば、ケラチンは、「酸性」タンパク質画分および「塩基性」タンパク質画分に分画することができる。好ましい分画方法は、イオン交換クロマトグラフィーである。これらの画分は、ユニークな特性、例えば、血球凝集に対するそれらの異なる効果、を有する(下の表1参照;および米国特許出願公開第2006/0051732号参照)。
【0036】
本明細書で用いる場合、「ケラチン誘導体」は、単独または他のケラチン誘導体または他の成分との組み合わせでの、任意のケラチン分画物、誘導体、またはそれらの混合物を指し、αケラトース、γケラトース、αケラテイン、γケラテイン、メタケラチン、ケラチン中間径フィラメント、およびこれらの組み合わせ(本開示にかんがみて当業者には明らかとなるそれらの変形に加えて、特にそれ以外の指定がない限りそれらの酸性および塩基性成分を含む)を含むが、それらに限定されない。一部の実施形態において、ケラチン誘導体は、ケラチンの特定の画分または亜画分、を含む、からなる、またはから本質的になる。前記誘導体は、少なくとも80、90、95もしくは99(またはそれ以上の)重量パーセントの前記画分または亜画分、を含む、からなる、またはから本質的になることがある。
【0037】
一部の実施形態において、ケラチン誘導体は、酸性αケラトース、を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0038】
一部の実施形態において、ケラチン誘導体は、αケラトース、を含む、からなる、またはから本質的になり、この場合、該αケラトースは、少なくとも80、90、95もしくは99(またはそれ以上の)重量パーセントの酸性αケラトース、を含む、からなる、またはから本質的になり、ならびに前記αケラトースは、20、10、5もしくは1重量パーセント(またはそれ以下)より少ない塩基性αケラトース、を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0039】
一部の実施形態において、ケラチン誘導体は、塩基性αケラトース、を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0040】
一部の実施形態において、ケラチン誘導体は、αケラトース、を含む、からなる、またはから本質的になり、この場合、該αケラトースは、少なくとも80、90、95もしくは99(またはそれ以上の)重量パーセントの塩基性αケラトース、を含む、からなる、またはから本質的になり、ならびに前記αケラトースは、20、10、5もしくは1重量パーセント(またはそれ以下)より少ない酸性αケラトース、を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0041】
一部の実施形態において、ケラチン誘導体は、酸性αケラテイン、を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0042】
一部の実施形態において、ケラチン誘導体は、αケラテイン、を含む、からなる、またはから本質的になり、この場合、該αケラテインは、少なくとも80、90、95もしくは99(またはそれ以上の)重量パーセントの酸性αケラテイン、を含む、からなる、またはから本質的になり、ならびに前記αケラテインは、20、10、5もしくは1重量パーセント(またはそれ以下)より少ない塩基性αケラテイン、を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0043】
一部の実施形態において、ケラチン誘導体は、塩基性αケラテイン、を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0044】
一部の実施形態において、ケラチン誘導体は、αケラテイン、を含む、からなる、またはから本質的になり、この場合、該αケラテインは、少なくとも80、90、95もしくは99(またはそれ以上の)重量パーセントの塩基性αケラテイン、を含む、からなる、またはから本質的になり、ならびに前記αケラテインは、20、10、5もしくは1重量パーセント(またはそれ以下)より少ない酸性αケラテイン、を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0045】
一部の実施形態において、ケラチン誘導体は、未分画α+γケラテイン、を含む、からなる、またはから本質的になる。一部の実施形態において、ケラチン誘導体は、酸性α+γケラテイン、を含む、からなる、またはから本質的になる。一部の実施形態において、ケラチン誘導体は、塩基性α+γケラテイン、を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0046】
一部の実施形態において、ケラチン誘導体は、未分画α+γケラトース、を含む、からなる、またはから本質的になる。一部の実施形態において、ケラチン誘導体は、酸性α+γケラトース、を含む、からなる、またはから本質的になる。一部の実施形態において、ケラチン誘導体は、塩基性α+γケラトース、を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0047】
一部の実施形態において、ケラチン誘導体は、未分画βケラトース(例えば、キューティクルに由来するもの)、を含む、からなる、またはから本質的になる。一部の実施形態において、ケラチン誘導体は、塩基性βケラトース、を含む、からなる、またはから本質的になる。一部の実施形態において、ケラチン誘導体は、酸性βケラトース、を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0048】
塩基性αケラトースは、酸性および塩基性αケラトースを含む混合物から、例えばイオン交換クロマトグラフィーにより、塩基性αケラトースを分離することによって好ましくは製造され、この塩基性αケラトースは、場合によっては10から100または200キロダルトンの平均分子量を有する。さらに好ましくは、前記平均分子量は、30または40から、90または100キロダルトンである。場合により、しかし好ましくは、前記プロセスは、前記塩基性αケラトースを変性および/または緩衝溶液に、場合によっては、微量金属と錯体を形成するキレート剤の存在下で、再び溶解する段階、およびその後、その変性溶液から塩基性αケラトースを再び沈殿させる段階をさらに含む。この組成物が、好ましくは、5、2、1または0.1重量パーセント、またはそれ以下、より少ない酸性αケラトースを含有することは、理解される。
【0049】
酸性αケラトースは、上述のものとは逆の技法によって、すなわち、酸性ケラトースと塩基性αケラトースの混合物から、例えばイオン交換クロマトグラフィーにより、酸性αケラトースを分離し、保持することによって好ましくは製造され、この酸性αケラトースは、場合によっては、10から100または200キロダルトンの平均分子量を有する。さらに好ましくは、前記平均分子量は、30または40から、90または100キロダルトンである。場合によっては、しかし好ましくは、前記プロセスは、前記酸性αケラトースを変性溶液および/または緩衝溶液に、場合によっては、微量金属と錯体を形成するキレート剤の存在下で、再び溶解する段階、およびその後、その変性溶液から塩基性αケラトースを再び沈殿させる段階をさらに含む。この組成物が、好ましくは、5、2、1または0.1重量パーセント、またはそれ以下、より少ない塩基性αケラトースを含有することは、理解される。
【0050】
他のケラトースの塩基性および酸性画分は、塩基性および酸性αケラトースについて上で説明したのと同様の手法で調製することができる。
【0051】
塩基性αケラテインは、酸性および塩基性αケラテインの混合物から、例えばイオン交換クロマトグラフィーにより、塩基性αケラテインを分離することによって好ましくは製造され、この塩基性αケラテインは、場合によっては、10から100または200キロダルトンの平均分子量を有する。場合により、しかし好ましくは、前記プロセスは、前記塩基性αケラテインを変性および/または緩衝溶液に、場合によっては、微量金属と錯体を形成するキレート剤の存在下で、再び溶解する段階、およびその後、その変性溶液から塩基性αケラテインを再び沈殿させる段階をさらに含む。この組成物が、好ましくは、5、2、1または0.1重量パーセント、またはそれ以下、より少ない酸性αケラテインを含有することは、理解される。
【0052】
酸性αケラテインは、上述のものとは逆の技法によって、すなわち、酸性ケラテインと塩基性αケラテインの混合物から、例えばイオン交換クロマトグラフィーにより、酸性αケラテインを分離し、保持することによって好ましくは製造され、この酸性αケラテインは、場合によっては、10から100または200キロダルトンの平均分子量を有する。さらに好ましくは、前記平均分子量は、30または40から、90または100キロダルトンである。場合によっては、しかし好ましくは、前記プロセスは、前記酸性αケラテインを変性溶液および/または緩衝溶液に、場合によっては、微量金属と錯体を形成するキレート剤の存在下で、再び溶解する段階、およびその後、その変性溶液から塩基性αケラテインを再び沈殿させる段階をさらに含む。この組成物が、好ましくは、5、2、1または0.1重量パーセント、またはそれ以下、より少ない塩基性αケラテインを含有しないことは、理解される。
【0053】
他のケラテインの塩基性および酸性画分は、塩基性および酸性αケラテインについて上で説明したのと同様の手法で調製することができる。
【0054】
ケラチン材料は、羊毛および人毛をはじめとする(しかし、これらに限定されない)任意の適する源から得られる。1つの実施形態において、ケラチンは、理髪店および美容院から入手した、毛先をカットした人毛から得られる。その材料を熱水およびマイルドな洗浄剤で洗浄し、乾燥させ、非極性有機溶媒(一般に、ヘキサンまたはエーテル)で抽出して、残留油を除去した後、使用する。
【0055】
ケラトース。ケラトース画分は、任意の適する技法によって得られる。1つの実施形態において、それらは、Alexanderおよび同僚の方法(P.Alexander et al.,Biochem.J.46,27−32(1950))を用いて得られる。基本的には、室温で24時間、10パーセント未満の濃度の過酢酸の水溶液と毛を反応させる。その溶液を濾過し、約4のpHまで無機酸を添加することによって、αケラトース画分を沈殿させる。そのαケラトースを濾過によって分離し、追加の酸で洗浄し、続いてアルコールで脱水し、その後、フリーズドライする。純度上昇は、ケラトースを変性溶液、例えば7M 尿素、水酸化アンモニウム水溶液、または20mM トリス塩基緩衝溶液(例えば、Trizma(登録商標)塩基)に再び溶解し、再び沈殿させ、再び溶解し、脱イオン水に対して透析し、pH4で再び沈殿させることによって達成することができる。
【0056】
ケラトースの好ましい製造方法は、過酸化水素、過酢酸または過ギ酸での酸化による方法である。最も好ましい酸化剤は、過酢酸である。好ましい濃度は、1から10重量/容量パーセント(w/v %)の範囲であり、約2w/v %が最も好ましい。濃度へのわずかな修飾を行って酸化度を変化させることができ、同時に反応時間、温度および液体対固体比の変更を行うこともできることは、当業者には理解される。過ギ酸は、過酢酸と比較して、ほとんどペプチド結合を切断しないという点で有利であることも、Crewther et al.によって論じられている。しかし、コストおよび入手可能性の点では、過酢酸が有利である。好ましい酸化温度は、0と100摂氏度(℃)の間である。最も好ましい酸化温度は、37℃である。好ましい酸化時間は、0.5時間と24時間の間である。最も好ましい酸化時間は、12時間である。好ましい液体対固体比は、5から100:1である。最も好ましい比は、20:1である。酸化後、大量の蒸留水を使用してその毛をすすいで、残留酸化剤をなくす。
【0057】
変性剤の水溶液を使用して、ケラトースを酸化された毛から抽出することができる。タンパク質変性剤は、当分野において周知であるが、好ましい溶液としては、尿素、遷移金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウムおよびカリウム)、水酸化アンモニウム、およびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス塩基)が挙げられる。好ましい溶液は、0.01から1Mの濃度範囲でのTrizma(登録商標)塩基(トリス塩基の商標)である。最も好ましい濃度は、0.1Mである。濃度へのわずかな修飾を行って抽出度を変化させることができ、同時に反応時間、温度および液体対固体比の変更を行うこともできることは、当業者には理解される。好ましい抽出温度は、0摂氏度と100摂氏度の間である。最も好ましい抽出温度は、37℃である。好ましい抽出時間は、0.5時間と24時間の間である。最も好ましい抽出時間は、3時間である。好ましい液体対固体比は、5から100:1である。最も好ましい比は、40:1である。トリス塩基または脱イオン(DI)水の希釈液でのその後の抽出で、追加の収量を獲得することができる。抽出後、遠心分離および/または濾過によって溶液から残留固体を除去する。
【0058】
その粗抽出物は、先ず、その溶液を7.0と7.4の間のpHに中和することによって、単離することができる。最も好ましいpHは、7.4である。残留変性剤は、DI水に対する透析によって除去する。透析保持液を濃縮し、続いて、凍結乾燥または噴霧乾燥させて、γケラトースとαケラトース両方の乾燥粉末混合物を得る。あるいは、溶液のpHが約4.2に達するまで酸を1滴ずつ添加することによって抽出溶液からαケラトースを単離する。好ましい酸としては、硫酸、塩酸および酢酸が挙げられる。最も好ましい酸は、濃塩酸である。pH6.0付近でそのα画分の沈殿が始まり、約4.2まで続く。分別沈殿法を用いて、異なる等電特性を有する異なる範囲のタンパク質を単離することができる。固体αケラトースは、遠心分離または濾過によって回収することができる。
【0059】
αケラトースは、それらの固体を変性溶液に再び溶解させることによって、さらに精製することができる。抽出に利用したものと同じ変性溶液を使用できるが、好ましい変性溶液は、トリス塩基である。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を添加して、毛の中にある微量金属を錯化させ、除去することができる。好ましい変性溶液は、20mM トリス塩基と20mM EDTA、またはDI水と20mM EDTAである。微量金属の存在が、所期の用途に有害でない場合、EDTAは、省いてもよい。約4.2の最終pHまで塩酸を1滴ずつ添加することにより、この溶液からαケラトースを再び沈殿させる。固体の単離は、遠心分離または濾過による。このプロセスを数回繰り返して、αケラトースをさらに精製してもよい。
【0060】
γケラトース画分は、pH4で溶液中に残存し、これを、アルコールなどの水混和性有機溶媒への添加、続いての濾過によって単離し、追加のアルコールで脱水し、フリーズドライする。純度上昇は、ケラトースを変性溶液、例えば7M 尿素、水酸化アンモニウム水溶液、または20mM トリス緩衝溶液に再び溶解し、無機酸の添加によりそのpHを4に低下させ、形成される一切の固体を除去し、上清を中和し、アルコールでそのタンパク質を再び沈殿させ、再び溶解し、脱イオン水に対して透析し、アルコールへの添加により再び沈殿させることによって達成することができる。これらの段階で消費されるアルコールの量は、最初に蒸留によってケラトース溶液を濃縮することにより、最小限にすることができる。
【0061】
αケラトースの除去後、一般的な抽出溶液からのγケラトースの濃度は、約1〜2%である。このγケラトース画分は、水混和性非溶媒への添加によって単離することができる。沈殿させるために、過剰な水を蒸発させることによってそのγケラトース溶液を濃縮してもよい。この溶液は、90%の水を除去することにより、約10〜20%に濃縮することができる。これは、真空蒸留を用いて、または流下薄膜型蒸発によって、行うことができる。濃縮後、そのγケラトース溶液を、過剰な冷非溶媒に1滴ずつ添加する。適する非溶媒としては、エタノール、メタノール、アセトンなどが挙げられる。最も好ましい非溶媒は、エタノールである。最も好ましい方法は、γケラトース溶液を約10w/v % タンパク質に濃縮し、それを8倍過剰な冷エタノールに1滴ずつ添加する方法である。沈殿したγケラトースは、遠心分離または濾過によって単離し、乾燥させることができる。適する乾燥方法としては、フリーズドライ(凍結乾燥)、空気乾燥、真空乾燥、または噴霧乾燥が挙げられる。最も好ましい方法は、フリーズドライである。
【0062】
ケラテイン。ケラテイン画分は、BradburyおよびChapmanの方法(J.Bradbury et al.,Aust.J.Biol.Sci.17,960−72(1964))とGoddardおよびMichaelisの方法(D.Goddard et al.,J.Biol.Chem.106,605−14(1934))を併用することによって得ることができる。本質的には、超音波を用いて毛髪繊維のキューティクルを除去して過度の加水分解を回避し、第二段階で、皮質のジスルフィド結合を効率的に還元することができる。その毛をジクロロ酢酸の溶液に入れ、超音波プローブでの処理に付す。この方法のさらなる改良により、80%ジクロロ酢酸、1:16の固体対液体比および180ワットの超音波出力を用いる条件が最適であることが示されている(H.Ando et al.,Sen’i Gakkaishi 31(3),T81−85(1975))。固体画分を濾過によって溶液から除去し、すすぎ、空気乾燥させ、その後、篩にかけて、除去されたキューティクル細胞から毛髪繊維を分離する。
【0063】
一部の実施形態において、キューティクルの超音波除去後、それらの表皮剥離繊維とメルカプトエタノールの反応によって、αおよびγケラテインが得られる。具体的には、低加水分解法を酸性pHで用いる(E.Thompson et al.,Aust.J.Biol.Sci.15,757−68(1962))。典型的な反応では、0.02M 酢酸緩衝液および0.001M 界面活性剤を含有する脱酸素水中の水酸化カリウムの少量を添加することによってpH5に調整した4M メルカプトエタノールで、24時間、毛を抽出する。
【0064】
その溶液を濾過し、約4のpHまで無機酸を添加することによってαケラテイン画分を沈殿させる。そのαケラテインを濾過によって分離し、追加の酸で洗浄し、続いてアルコールで脱水し、その後、真空下で乾燥させる。純度上昇は、ケラテインを変性溶液、例えば7M 尿素、水酸化アンモニウム水溶液、または20mM トリス緩衝溶液に再び溶解し、再び沈殿させ、再び溶解し、脱イオン水に対して透析し、pH4で再び沈殿させることによって達成される。
【0065】
γケラテイン画分は、pH4では溶液中に残存し、これを、アルコールなどの水混和性有機溶媒への添加、続いての濾過によって単離し、追加のアルコールで脱水し、真空下で乾燥させる。純度上昇は、ケラテインを変性溶液、例えば7M 尿素、水酸化アンモニウム水溶液、または20mM トリス緩衝溶液に再び溶解し、無機酸の添加によりそのpHを4に低下させ、形成される一切の固体を除去し、上清を中和し、アルコールでそのタンパク質を再び沈殿させ、再び溶解し、脱イオン水に対して透析し、アルコールへの添加により再び沈殿させることによって達成することができる。これらの段階で消費されるアルコールの量は、最初に蒸留によってケラテイン溶液を濃縮することにより、最小限にすることができる。
【0066】
代替法では、チオグリコール酸ナトリウムの水溶液と毛を反応させることによって、ケラテイン画分が得られる。
【0067】
ケラテインの好ましい製造方法は、チオグリコール酸またはβメルカプトエタノールでの毛の還元による方法である。最も好ましい還元剤は、チオグリコール酸(TGA)である。好ましい濃度は、1から10Mの範囲であり、約1.0Mが、最も好ましい。濃度へのわずかな修飾を行って還元度を変化させることができ、同時にpH、反応時間、温度および液体対固体比の変更を行うこともできることは、当業者には理解される。好ましいpHは、9と11の間である。最も好ましいpHは、10.2である。還元溶液のpHは、塩基の添加によって変えられる。好ましい塩基としては、遷移金属水酸化物、水酸化ナトリウム、および水酸化アンモニウムが挙げられる。最も好ましい塩基は、水酸化ナトリウムである。pH調整は、水中の水酸化ナトリウムの飽和溶液を還元剤溶液に1滴ずつ添加することによって行う。好ましい還元温度は、0℃と100℃の間である。最も好ましい還元温度は、37℃である。好ましい還元時間は、0.5時間と24時間の間である。最も好ましい還元時間は、12時間である。好ましい液体対固体比は、5から100:1である。最も好ましい比は、20:1である。前に説明した酸化反応とは異なり、還元は、塩基性pHで行う。そうした訳で、ケラチンは、還元媒質に非常に溶けやすく、抽出されると予想される。従って、還元溶液は、後続の抽出溶液と併せ、しかるべく加工する。
【0068】
還元されたケラチンは、それらの酸化された対照物ほど親水性ではない。それ故、還元された毛髪繊維は、酸化された毛のように膨潤したり、裂けて開いたりせず、その結果、比較的低収率となる。還元/抽出プロセスの動態に影響を及ぼすもう1つの因子は、ケラテインの相対溶解度である。水への相対溶解度の格付けは、最大可溶性から最小可溶性へと、γケラトース>αケラトース>γケラテイン>αケラテインである。従って、還元された毛髪繊維からの抽出収率は、然程高くない。こうした訳で、後続の抽出は、追加の還元剤+変性剤溶液を用いて行う。後続の抽出に好ましい溶液としては、TGA+尿素、TGA+トリス塩基、またはTGA+水酸化ナトリウムが挙げられる。抽出後、ケラトースについて説明した手順を用いて、αおよびγケラテインの粗画分を単離することができる。しかし、γおよびαケラテンの沈殿は、酸素に暴露されるとそれらのシスチン架橋を再び形成する。従って、沈殿を迅速に再溶解して、精製段階中の不溶を回避するか、酸素が不在の状態で沈殿させる。
【0069】
残留還元剤および変性剤は、透析によって溶液から除去することができる。典型的な透析条件は、24から72時間、DI水に対して透析される、ケラテインの1から2%溶液である。透析に加えて、低分子量不純物の他の除去方法(例えば、マイクロフィルター法、クロマトグラフィーなど)が存在することは、当業者には理解される。トリス塩基の使用は、ケラテインの最初の可溶化にしか必要でない。一旦、溶解すると、変性剤がなくとも、ケラテインは溶液中で安定している。従って、pHが中性以上のままである限り、ケラテインの沈殿を生じさせることなく、変性剤を除去することができる。これらの精製溶液中のケラテインの最終濃度は、水の添加/除去によって調整することができる。
【0070】
ケラチンの形態(すなわち、ケラトースまたはケラテイン)に関係なく、さらなる精製に向けての幾つかの異なるアプローチをケラチン溶液に対して用いることができる。しかし、ケラチンのユニークな溶解特性にそれらを導く技法を選択するように注意しなければならない。最も簡単な分離法の1つは、等電沈殿法である。この方法では、溶液のpHを調整し、沈殿した材料を除去することによって、様々な等電点のタンパク質を単離することができる。ケラチンの場合、γ形態とα形態の両方が、pH>6.0では可溶性である。しかし、pHが6より下に低下すると、αケラチンは沈殿し始める。所与のpHで沈殿を停止させ、その沈殿を遠心分離および/または濾過により分離することによって、ケラチン画分を単離することができる。約4.2のpHで、本質的にすべてのαケラチンは、沈殿している。これらの別個の画分を中性pHの水に再び溶解し、透析し、濃縮し、凍結乾燥または噴霧乾燥によって粉末にすることができる。しかし、ケラテイン画分は、架橋を回避するために、酸素不在下でまたは希薄溶液で保管しなければならない。
【0071】
もう1つの一般的なケラチン分離方法は、クロマトグラフィーである。サイズ排除またはゲル濾過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、等電収束法、ゲル電気泳動法、イオン交換クロマトグラフィーおよびイムノアフィニティークロマトグラフィーをはじめとする幾つかのタイプのクロマトグラフィーを用いて、ケラチン溶液を分画することができる。これらの技法は、当分野において周知であり、ならびに分子量、化学官能基、等電点、電荷または特異的抗体との相互作用の特徴によってタンパク質をはじめとする化合物を分離することができ、ならびに単独で、または高い分離度および結果として高い純度をもたらす任意の組み合わせで、用いることができる。
【0072】
好ましい精製方法は、イオン交換(IEx)クロマトグラフィーである。IExクロマトグラフィーは、一般にはタンパク質および特にケラチンの両親媒性によるタンパク質分離に特に適する。溶液の出発pH、および保持する予定の所望画分に依存して、カチオン性またはアニオン性いずれかのIEx(それぞれ、CIExまたはAIEx)技術を用いることができる。例えば、6以上のpHでは、γケラチンとαケラチンの両方が、可溶性であり、それらの等電点より上である。それ故、それらはアニオン性であり、アニオン交換樹脂に結合させることができる。しかし、ケラチンの亜画分は、弱アニオン交換樹脂に結合せず、それどころか、そうした樹脂が充填されたカラムを通過することがわかった。AIExクロマトグラフィーに好ましい溶液は、精製水中、0重量/容量%と5重量/容量%の間の濃度の、前に説明したとおり単離された精製または分画ケラチンである。好ましい濃度は、0w/v %と4w/v %の間である。最も好ましい濃度は、約2w/v %である。AIExカラムへの結合を助長するために、前記溶液のイオン強度を最初は相当低く保つほうが好ましい。これは、ケラチンの精製水溶液をpH6とpH7の間に滴定するために最少の量の酸を使用することによって達成される。最も好ましいpHは、6である。この溶液をAIExカラム、例えば、DEAE−Sepharose(登録商標)樹脂またはQ−Sepharose(登録商標)樹脂カラムに充填することができる。好ましいカラム樹脂は、DEAE−Sepharose(登録商標)樹脂である。カラムを通過する溶液を回収し、前に説明したとおりさらに加工して、酸性ケラチン粉末の画分を単離することができる。
【0073】
一部の実施形態では、ケラチンを製造するためにAIExカラムを使用することによってケラチンマトリックスの活性を強化して、その結果、細胞付着を促進する。いずれの特定の理論にも拘束されることを望まないが、アニオンカラムを通過する画分、すなわち、酸性ケラチンは、細胞付着を促進すると考えられる。
【0074】
もう1つの画分は、容易に結合し、これは、当分野において公知の塩析技術を用いてカラムから洗い出すことができる。好ましい溶離媒質は、塩化ナトリウム溶液である。好ましい塩化ナトリウム濃度は、0.1Mと2Mの間である。最も好ましい濃度は、2Mである。この溶液のpHは、6と12の間であることが好ましい。最も好ましいpHは、12である。溶離プロセス中、安定なpHを維持するために、緩衝塩を添加してもよい。好ましい緩衝塩は、Trizma(登録商標)塩基である。その塩濃度およびpHへのわずかな修飾を行って、様々な特性を有するケラチン画分の溶離を行うことができることは、当業者には理解される。異なる画分を生じさせるために、異なる塩濃度およびpHを順次使用すること、または塩および/またはpH勾配の使用を用いることも可能である。しかし、採用するアプローチに関係なく、カラム溶離液を回収し、前に説明したとおりさらに加工して、塩基性ケラチン粉末の画分を単離することができる。
【0075】
CIEx技術を用いて、相補的手順を実行することもできる。すなわち、ケラチン溶液をカチオン交換樹脂、例えば、SP Sepharose(登録商標)樹脂(強カチオン性)またはCM Sepharose(登録商標)樹脂(弱カチオン性)に添加し、塩基性画分を通過させて回収することができる。保持された酸ケラチン画分は、前に説明したとおり塩析によって単離することができる。
【0076】
メタケラチン:メタケラチンは、ケラテインのαとγ、両方の画分から、実質的に同じ手順を用いて合成する。基本的には、ケラテインを変性溶液、例えば7M 尿素、水酸化アンモニウム水溶液、または20mM トリス緩衝溶液に溶解する。純粋な酸素でその溶液をバブリングして、システイン基の酸化カップリング反応を開始させる。SDS−PAGEを用いて測定される分子量の増加によって、その反応の進行をモニターする。分子量が二倍または三倍に達するまで、その反応溶液を酸素でバブリングし続ける。無機酸の添加により、変性溶液のpHを中性に調整して、タンパク質の加水分解を回避することができる。
【0077】
ケラチン中間径フィラメント(Intermediate Filaments)。Thomasおよび同僚の方法(H.Thomas et al.,Int.J.Biol.Macromol.8,258−64(1986))を用いて、人毛繊維の中間径フィラメントを得る。本質的に、これは、中間径フィラメントを適所に「接着する」(それによって中間径フィラメントを残す)役割を果すケラチンマトリックスを反応させて除去する、化学的エッチング法である。典型的な抽出プロセスでは、0.2M NaSO、8M 尿素中の0.1M Na、およびpH9の0.1M トリス−HCl緩衝液を使用して、キューティクルの膨潤およびマトリックスタンパク質の亜硫酸分解を達成する。この抽出は、室温で24時間、行われる。濃縮後、溶解したマトリックスケラチンおよび中間径フィラメントを、約6のpHまで酢酸亜鉛溶液を添加することによって、沈殿させる。その後、0.05M 四ホウ酸塩溶液に対して透析することによって、そのマトリックスケラチンから中間径フィラメントを分離する。その透析溶液を酢酸亜鉛で沈殿させ、中間径フィラメントをクエン酸ナトリウムに再び溶解し、蒸留水に対して透析し、その後、そのサンプルをフリーズドライすることによって、純度上昇を達成する。
【0078】
ケラチン調製についてのさらなる考察は、米国特許出願公開第2006/0051732号(Van Dyke)において見出される(前記公開出願は、本明細書に参照により組み込まれる)。
【0079】
組成物および製剤。フリーズドライ(凍結乾燥)などの公知の技術に従って、上で説明したとおりのケラチン誘導体の乾燥粉末を作ることができる。一部の実施形態において、本発明の組成物は、そうした乾燥粉末組成物形を水溶液と混合して、可溶化された前記ケラチン誘導体を有する電解質溶液を含む組成物を製造することによって、製造することができる。前記混合段階は、任意の適する温度、一般には室温で行うことができ、ならびに任意の適する技法、例えば、攪拌(stirring)、振盪、かき混ぜ(agitation)などによって行うことができる。前記電解質溶液の塩および他の構成成分(例えば、ケラチン誘導体および水を除くすべての成分)は、乾燥粉末にすべて含まれている場合もあり、水性組成物の中にすべて含まれている場合もあり、または乾燥粉末と水性組成物とで分配されている場合もある。例えば、一部の実施形態において、前記電解質溶液の構成要素の少なくとも一部分は、乾燥粉末に含有されている。
【0080】
上に記載したものなどのケラチン材料を含むマトリックスの形成は、当業者には明らかである、当分野において確立されてから久しい技術またはその変形に従って行うことができる。一部の実施形態において、ケラチン調製品は、使用前に乾燥および脱水させる。例えば、Lustig et al.への米国特許第2,413,983号、Schollkipf et al.への米国特許第2,236,921号、およびAnkerへの米国特許第3,464,825号参照。好ましい実施形態において、マトリックス、すなわちヒドロゲルは、凍結乾燥された材料を適する溶媒、例えば水またはリン酸緩衝食塩水(PBS)で再び水和することによって形成する。例えばCo60源を使用するγ線(800krad)によって、そのゲルを滅菌することができる。他の適するケラチンマトリックス形成方法としては、米国特許第6,270,793号(Van Dyke et al.)、同第6,274,155号(Van Dyke et al.)、同第6,316,598号(Van Dyke et al.)、同第6,461,628号(Blanchard et al.)、同第6,544,548号(Siller−Jackson et al.)および、同第7,01,987号(Van Dyke)において見出されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
一部の組成物実施形態において、ケラチン誘導体(特に、αおよび/またはγケラテインならびにαおよび/またはγケラトース)は、約10から70または85または100キロダルトンの平均分子量を有する。他のケラチン誘導体、特に、メタ−ケラチンは、例えば200または300キロダルトン以下の、より高い平均分子量を有することがある。一般に、ケラチン誘導体(この用語は、誘導体の組み合わせを含む)は、約0.1、0.5または1重量パーセントから、3、4、5または10重量パーセントの量で、組成物に含めることができる。組成物は、混合された場合、好ましくは、約1または1.5から、4、8、10または20センチポアズの粘度を有する。いずれの濃度での粘度も、αケラトースのγケラトースに対する比を変えることによって調節することができる。
【0082】
ケラチン誘導体組成物または製剤は、増殖もしくは治癒を助長する、疼痛寛解をもたらす、細菌などの微生物の増殖を抑制する、凝固を助長もしくは抑制する、または細胞もしくは組織付着を助長もしくは抑制するなどのために、1つ以上の活性成分、例えば1つ以上の増殖因子、鎮痛剤、抗菌剤、追加の血液凝固剤などを(例えば、ケラチン誘導体(単数または複数)を含む組成物の0.0000001から1または5重量パーセントの範囲の量で)場合によっては含有することがある。適する増殖因子の例としては、神経成長因子、血管内皮細胞増殖因子、フィブロネクチン、フィブリン、ラミニン、酸性および塩基性線維芽細胞増殖因子、テストステロン、ガングリオシドGM−1、カタラーゼ、インスリン様増殖因子−I(IGF−I)、血小板由来増殖因子(PDGF)、神経細胞増殖因子ガレクチン−1、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。例えば、Hansson et al.への米国特許第6,506,727号およびHorie et al.への米国特許第6,890,531号参照。
【0083】
本明細書で用いる場合、「増殖因子」は、組織の再生、増殖および生存を促進する分子を含む。本発明の一部の実施形態において使用する増殖因子は、ケラチン抽出物中に自然に見出されるものであってもよいし、またはケラチン抽出物に添加されるもしくはケラチンマトリックスを形成する添加剤の形態であってもよい。増殖因子の例としては、神経成長因子(NGF)および他のニューロトロフィン、血小板由来増殖因子(PDGF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、ミオスタチン(GDF−8)、増殖分化因子−9(GDF9)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGFまたはFGF2)、上皮細胞増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)が挙げられるが、これらに限定されない。増殖因子の大きなファミリーを構成する、多くの構造的および進化的に関連したタンパク質があり、非常に多数の神経細胞増殖因子ファミリー、例えばニューロトロフィン(NGF、BDNFおよびNT3)がある。ニューロトロフィンは、とりわけ神経組織の、増殖および生存を促進する分子の1ファミリーである。ニューロトロフィンの例としては、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン3(NT−3)、およびニューロトロフィン4(NT−4)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Johnson,Jr et al.への米国特許第5,843,914号、Persson et al.への米国特許第5,488,099号、Barde et al.への米国特許第5,438,121号、Collins et al.への米国特許第5,235,043号、およびBurton et al.への米国特許第6,005,081号参照。
【0084】
例えば、増殖因子は、様々な組織の再生、増殖および生存を促進するために有効な量で、ケラチンマトリックス組成物に添加することができる。増殖因子は、0.1ng/mLから1000ng/mLの範囲の濃度で供給される。さらに好ましくは、増殖因子は、1ng/mLから100ng/mL、および最も好ましくは、10ng/mLから100ng/mLの範囲の濃度で供給される。Ursoへの米国特許第6,063,757号参照。
【0085】
本組成物は、好ましくは、無菌であり、非発熱性である。本組成物は、予備成形し、軟質ポリマーバッグもしくはボトルまたはホイル容器などの適する容器内に無菌包装して提供することができ、あるいは使用直前に混合するために、1つの容器の中の滅菌乾燥粉末と別の容器の中の滅菌水溶液とのキットとして提供することができる。予備成形し、滅菌容器内に包装して提供するときの組成物は、ケラチン誘導体の実質的な(例えば、10もしくは20パーセントを超える)粘度喪失および/または実質的な沈殿(例えば、目視検査で検出可能な沈降)前に、室温で少なくとも4または6ヶ月(2または3年まで、またはそれ以上)の貯蔵寿命を好ましくは有する。前記キットは、活性ケラチン誘導体の単回単位用量を収容することができる。単回単位用量は、その所期の使用に依存して、ケラチン誘導体0.1または0.5または1から、100または200または300グラム、またはそれ以上であり得る。
【0086】
本開示ケラチン調製品と同様に利用することができる天然ポリマーの他の例としては、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、フィブリン、ムチン、エラスチン、ニドジェン(エンタクチン)、プロテオグリカンなど(例えば、Katsuen et al.への米国特許第5,691,203号参照)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
ケラチン医用生体材料を含有する出血を制御するための凝固組成物および方法。本発明の1つの態様は、出血創傷に苦しむ被検者における出血を治療するための方法であり、この方法は、ケラチン誘導体を出血創傷にその出血を治療するために有効な量で適用することを含む。一部の実施形態において、前記ケラチン誘導体は、ケラテイン、αケラテイン、γケラテイン、酸性αケラテイン、塩基性αケラテイン、またはそれらの組み合わせ、例えば上で説明したもの、を含む、からなる、またはから本質的になる。前記出血は、例えば、出血部位に近づく明確な手段があるまたはない、外科手術;穿通損傷、例えば刺創および銃創;自動車による外傷;ならびに頭部、頚部、胸部および腹部出血をはじめとする(しかし、これらに限定されない)、急速な多量出血を生じさせる重症外傷に関連したものであり得る。
【0088】
多くの異なる組成物が、ケラチン誘導体をはじめとする(しかし、これに限定されない)止血剤を含み得る。止血剤の他の例としては、フィブリンまたはフィブリノゲン、トロンビン、第XIII因子、カルシウム、キトサン(脱アセチル化ポリ−N−アセチルグルコサミン)、ゼオライト(ケイ素、アルミニウム、ナトリウム、マグネシウムおよび石英の酸化物)、キチン(アセチル化ポリ−N−アセチルグルコサミン)、ウシ凝固因子、非ゼオライト鉱物(例えば、疎水性ポリマーおよびカリウム塩)、および植物源からのモレキュラーシーブ材料(例えば、TraumaDEX(商標)、Arista(商標)AHなど、ミネソタ州、ミネアポリスのMedafor,Inc.)が挙げられるが、これらに限定されない。しかし、これらの止血剤のすべてが、すべてのタイプの出血治療に推奨されるとは限らず、当業者は、本開示組成物および方法において使用するための止血剤をしかるべく選択しなければならないことに、留意しなければならない。例えば、ゼオライトは、体外使用しか考えられない。
【0089】
ケラチン医用生体材料を含有する創傷治癒用組成物および治癒を促進する方法。本発明のもう1つの態様は、必要とする被検者において創傷(例えば、やけど、擦過傷、切創、褥瘡など)を治療する方法であり、この方法は、ケラチン誘導体をその創傷の治療に有効な量でその創傷に局所適用することを含む。一部の実施形態において、前記ケラチン誘導体は、ケラトース、αケラトース、酸性αケラトース、ケラテイン、αケラテイン、酸性αケラテインなど、またはそれらの組み合わせ、例えば、上に記載したもの、を含む、からなる、またはから本質的になる。前記ケラチン誘導体は、乾燥粉末製剤として、または一部の実施形態では水性担体中のものを、局所適用することができる。
【0090】
前期ケラチン材料の用量は、個々の疾患または創傷、被検者の年齢および状態、投与経路などに依存し、ならびに公知技術に従って最適化することができる。一部の実施形態において、その投薬量は、その所期の使用に依存して、そのケラチン誘導体 0.1または0.5または1から、100または200または300グラム、またはそれ以上である。
【0091】
外科用または救急医療士用補助具(Paramedic Aid)。本発明のもう1つの態様は、固体で生理学的に許容される基体と、該基体上のケラチン誘導体とを含む、外科用または救急医療士用補助具である。「基体」としては、スポンジ、パッキング、創傷被覆材(例えば、ガーゼまたはバンデージ)、縫合糸、布、および補綴具が挙げられる。
【0092】
本発明の実施形態を以下の非限定的実施例においてさらに説明する。
【実施例1】
【0093】
ケラチン誘導体/画分
ケラトース画分は、Alexanderおよび同僚の方法に基づく方法を用いて得た。しかし、実質的には、ペプチド結合の加水分解を最小にするようにその方法を修正した。簡単に言うと、地元の理髪店から収集した50グラムの清浄な乾燥した毛髪を、室温で12時間、2w/v % 過酢酸(PAA)の水溶液(1000mL)と反応させた。500マイクロメートルの篩を使用してその酸化された毛髪を回収し、大量のDI水ですすぎ、過剰な水を除去した。1000mLの100mM Trizma(登録商標)塩基を用いて、その酸化された毛髪繊維からケラトースを抽出した。3時間後、篩によって毛髪を分離し、塩酸(HCl)を1滴ずつ添加することによってその液体を中和した。1000mLの0.1M Trizma(登録商標)塩基および1000mLのDI水をそれぞれ使用する後続の2回の抽出で、残っている毛髪から追加のケラトースを抽出した。各回、毛髪を篩で分離し、その液体をHClで中和した。3つすべての抽出物を併せ、遠心分離し、濾過によって一切の残留固形物を除去した。併せた抽出物を、1KDa公称低分子量カットオフ膜でのDI水に対する剪断流式透析によって精製した。その溶液を濃縮し、凍結乾燥させて、粗ケラトース粉末を製造した。
【0094】
ケラテイン画分は、GoddardおよびMichaelisによって記載された方法の改良法を用いて得た。簡単に言うと、毛髪を、37℃で24時間、1M TGAの水溶液と反応させた。そのTGA溶液のpHは、飽和NaOH溶液を1滴ずつ添加することにより、pH10.2に調整しておいた。その抽出溶液を濾過して、還元された毛髪繊維を除去し、保持した。1000mLの100mM TGAでpH10.2で24時間、1000mLの10mM TGAでpH10.2で24時間、およびDI水でpH10.2で24時間、順次抽出することによって、追加のケラチンを繊維から抽出した。各抽出後、溶液を遠心分離し、濾過し、透析システムに添加した。最後に、すべての抽出物を併せ、1kDaの公称低分子量カットオフ膜でDI水に対して透析した。その溶液を濃縮し、pH7に滴定し、約5%の全タンパク質濃度で、4℃で保管した。あるいは、濃縮した溶液を凍結乾燥させ、窒素下で冷凍保存した。
【0095】
分画直前に、ケラトースサンプルを超純水に再び溶解し、希HClの添加によってpH6に滴定した。ケラテインサンプルも、希HClを注意深く添加することによってpH6に滴定した。それらのサンプルを、DEAE−Sepharose(弱アニオン性)またはQ−Sepharose(強アニオン性)交換樹脂(50〜100メッシュ;ウィスコンシン州、ミルウォーキーのSigma−Aldrich)のいずれかが入っている200mLフラッシュクロマトグラフィーカラムに、穏やかな圧力で負荷し、フロースルー(酸性ケラチン)を回収した。pH6の少量の10mM Trizma(登録商標)塩基(約200mL)を使用して、そのサンプルを完璧に洗浄した。pH12の100mM トリス塩基+2M NaClでそのカラムから塩基性ケラチンを溶出させた。それぞれのサンプルを別々に中和し、1KDaのLMWCOでの剪断流式透析を用いてDI水に対して透析し、回転蒸発によって濃縮し、フリーズドライした。
【0096】
前に説明したとおり、αケラトースのサンプルを製造し、DEAE−Sepharose IExカラムで酸性および塩基性画分に分離し、PBSに溶解し、そのpHを7.4に調整した。これらの溶液を5重量パーセント濃度で調製し、それらのRBC凝集特性を、1:1比で混合することにより、新鮮なヒト全血で肉眼的に評価した。20分後、サンプルを取り、光学顕微鏡によって評価した。イオン交換クロマトグラフィーは、凝集現象の分離に非常に有効であった(データは示さない)。塩基性αケラトースには、血球との相互作用が本質的になく、一方、酸性αケラトースは、過度の凝集を生じさせた。
【0097】
酸性および塩基性αケラトース、未分画α+γケラテイン、未分画α+γケラトースおよびβケラトース(キューティクルから得たもの)のサンプルを、リン酸緩衝食塩水(PBS)中、約4w/v %およびpH7.4で調製した。サンプルを粘度および赤血球(RBC)凝集について試験した。これらの結果を表1に示す。
【表1】

【実施例2】
【0098】
動物モデル
ケラチンゲルの止血能力を、低攻撃動物モデルにおいて評価した。ケラチンゲルは、未分画ケラテイン(α+γ)を含むものだった。肝臓損傷は、肝臓と創傷の両方の寸法が増すほど、解決しにくいことは周知である。このウサギモデルは、大量でもあり、致命的でもある出血を生じ得る。治療不在の状態(陰性対照)では放血を生じるが、従来の止血剤を適用したとき(陽性対照)には試験動物の回復をもたらす、一貫した条件設定を確立するための手段として、制御された肝離断を用いた。この試験において陽性対照として使用した止血剤が、局部創傷に対して指示されるものであり、付随して圧迫を必要とすることに留意しなければならず、それらをこの試験では加圧せずに適用した。これは、ケラチンゲルと共に使用しなかった場合、加わる、混乱を招く寄与加圧を回避するために行った。
【0099】
合計16匹のニュージーランドラビット(平均3.7kg)をこの試験では使用した。これらの動物に左中葉の約3分の1の離断からなる標準肝臓損傷を施し、その後、それらを4つの群のうちの1つに無作為に割り付けた。4匹の動物は、陰性対照としての役割を果し、それらには治療を施さず、4匹の動物をQuikClot(登録商標)止血剤で治療し、HemCon(登録商標)止血バンデージで治療し、および4匹の動物をケラチンゲルで治療した。蘇生液は与えず、外科手術の間、すべての動物を綿密にモニターした。1時間後、手術創を縫合し、それらの動物を収容施設に移した。すべての生存動物を72時間後に犠牲にした。犠牲にした時点で、肝臓組織を組織分析のために回収した。
【実施例3】
【0100】
外科手術および術後治療
すべての手順は、規制および認定機関のガイドラインを包含する、ウェークフォレスト大学(Wake Forest University)の動物管理使用委員会ガイドライン(Animal Care and Use Committee guidelines)に従って行った。外科手術直前に動物を計量した。ケタミン10mg/kgおよびキシラジン 4mg/kgの併用剤を用いて筋肉内注射によりすべての動物を鎮静させ、挿管し、残りの手順の間、2〜3% Isofluraneで維持した。その後、動物を仰臥位で配置し、毛を剃り、モニター装置に接続した。すべての動物を、ECGリード、パルス酸素濃度計カフ(尾に)、および体温モニタリング用の食道内プローブに接続した。滅菌プレプを施し、滅菌した布で覆った後、腹部切開を行い、肝臓を露出させた。肝臓損傷前、それらの動物の腹部大動脈を露出させ、データ収集用のPowerLab(登録商標)(ADInstruments)システムに接続された圧変換器(Lab−stat、オールトラリア、キャッスル・ヒルのADInstruments Pty.Ltd.)に接続された23ゲージの針を使用してカニューレを挿入した。この手順を通して継続的に平均動脈圧(MAP)を記録した。すべての動物を数分間モニターし、肝臓損傷前に確実に安定な状態であるようにした。寸法が十分であり、容易に接近できるため、この損傷には肝臓の正中葉を用いた。
【0101】
モデル開発中の予備データは、未治療で放置した場合には結果として死亡するが、対照材料で治療した場合には動物を救うことができる、一貫した肝臓損傷断面積を作ることができることを示した。2.0cmの表面積のリングを使用して、そのリングを通して左中葉を引き寄せ、外科用刀を用いてそのリングにすぐ隣接して切断することによって、肝臓に一貫したサイズの損傷を負わせた。この手順を通して、30秒、5、15、30、45および60分の時点で、MAP、体温、心拍数、O飽和、および脱血血液を記録した。脱血血液は、肝臓損傷の下に置いた、事前に計量した滅菌外科用ガーゼを用いて、各時点で測定した。加えて、耳静脈から血液サンプルをCBCのために採取した。
【0102】
すべての動物を前述の4つの実験群にランダムに割り付けた。陰性対照群には治療を一切施さず、損傷を負わせた後、分単位で死亡時を記録した。他の実験群については、MAPが出発値の半分に低下しない限り、5分の時点で治療を施した。正規化のために、適用した止血材料を測定または計量した。ケラチンゲルは加圧する必要がないので、結果を混乱させないために他のいずれの治療群においても加圧を用いなかった。HemCon(登録商標)止血バンデージ治療群では、4.5×2.5cmのバンデージ片を、その手順を通して肝臓の出血面の上に置き、縫合前に取り外した。QuikClot(登録商標)止血剤治療群では、動物1匹当たり2.5グラムのオートクレーブ滅菌材料を使用した。その材料を出血面の上に広げ、縫合後もそれらの生存動物の体内に放置した。ケラチン治療群の場合、動物1匹当たり2mLのゲルを使用した。滅菌ケラチンゲルを1mL注射器によって出血面に適用した。
【0103】
ケラチンも、動物縫合後に適所に放置した。これらのパラメータを、創傷部位の完全な被覆に基づいて最初のモデル開発中に決定した。生存動物については、60分間モニターし続け、その後、それらの動物を、最初の外傷を生き残り、出血が停止したとみなした。HemCon(登録商標)止血バンデージで治療した動物は、その製造業者による指示として腹腔内に放置することができなかったので、その材料を取り外さねばなければならなかった。大動脈カニューレを取り外し、挿入部位の止血を確認した。大動脈出血は、剖検の時点でいずれの動物においても観察されなかった。腹部の筋膜および皮膚を2層で縫合した。腹部の完全縫合後、動物を回復させ、収容施設に移し、そこでそれらの動物を、麻酔から完全に回復するまでは15分おきに、その後3日間は1日3回モニターした。CBC分析のために、すべての生存動物から、毎日、血液サンプルを採取した。72時間の時点で犠牲にし次第、それぞれの動物の肝臓を組織評価のために回収した。
【0104】
すべての提示データを平均値および対応する標準偏差として提示する。統計学的分析にはSPSS v.11(イリノイ州、シカゴのSPSS Inc.)を使用した。異常値は、修正zスコア(絶対偏差の中央値)を用いて、+3.0より大きいまたは−3.0より小さいzスコアを有するものと定義した。すべての時間点でのデータを片側分散分析(ANOVA)によって分析した。有意なF値が見出された場合、それらの群をフィッシャーの最小有意差検定(LDS)によってさらに分析した。p<0.05のαは、有意と見なした。タイプI誤差の確度を、限定比較によって最小にし、陰性対照対3治療群のみを行った。死亡動物(すなわち、60分の手術期間終了前に放血した動物)の早期脱落によって生じた偏りを補償するために、既知病態終点への多項式回帰を用いて、最初の60分の間の値を推定した。幾つかの群で統計学的関連に至った失血パーセントグラフデータ(図2)についての値を、平均とそれらの対応する標準誤差として提示する。
【0105】
陰性対照動物(すなわち、治療なし)は、予想通り、60分の手術期間内に放血した(31±19分)。QuikClot(登録商標)止血剤群の中の2匹の動物およびHemCon(登録商標)止血バンデージ群の中の1匹は、最初の60分の手術期間を生き延びられなかった。また、HemCon(登録商標)止血バンデージ群における1匹の動物は、獣医スタッフのアドバイスに基づいて、手術後24時間の時点で安楽死させた。この動物は、歩行することができず、飲食できなかった。ケラチン群の1匹の動物も48時間の時点で犠牲にした。この動物は、そのカゴの中を自由に動いていたが、飲食しなかった。剖検時、これらの動物は、手術期間後にさらに出血した形跡を示さなかった。無事に回復した他のすべての生存動物は、24時間以内にカゴの中を自由に動き回っており、72時間までに正常なCBCを有した(データは示さない)。これらの生存データの概要を図1に示す。
【0106】
平均動脈圧。平均動脈圧(MAP)は、腹部大動脈の下部に配置した23ゲージ針を使用して記録した。その針をPE 50チューブに接続し、それをまた、圧力記録用PowerLabシステムに接続された圧変換器(Lab−stat)に接続した。この処置の全過程中、またはその動物が死亡するまで、MAPを継続的にモニターした。MAPおよび心拍数の変化の有意性をさらに評価するために、ショック係数を用いた。ショック係数は、外傷患者の迅速な評価のための十分に確立された臨床採点システムである。心拍数をMAP(mmHg)で割ることにより、修正ショック係数を計算した。
【0107】
腹部大動脈の平均動脈圧を60分間記録した。ケラチンおよびHemCon(登録商標)止血バンデージ群の動物は、75%の出発値で5分後、安定なMAPを達成することができた。QuikClot(登録商標)止血剤および対照群は、MAPを安定させることができず、60分後、出発値の45%に降下した(図3)。しかし、これらのデータは、群間の統計学的有意性には達しなかった。
【0108】
ショック係数(SI)、失血の重症度についての予測スコア格付システムは、最初の60分を通して低い値を有するケラチン群についての有益な成果を示した(図4)。QuikClot(登録商標)止血剤の高い値は、最初の20分の観察中の2匹の早期死亡と合致した。これは、この測定の予測的性質を支持している。傾向を述べたが、これらのデータは、本試験において統計学的有意性に達しなかった。
【0109】
体温、ECGおよび心拍数。手術室モニターに接続した食道プローブを用いて、中枢温度を記録した。この手順を通して動物の体温を継続的にモニターし、前述の時間点で記録した。ECGおよび心拍数は、手術室モニターに接続された3つのリードシステムを使用してモニターし、全手順を通して維持した。まっすぐな直線、または電気機械解離での不規則電気活動を用いて、死亡時間を定義した。
【0110】
この試験において用いた肝臓傷害モデルは、有意で急速な失血を伴う重症外傷を象徴するものであった。一般に、直径約1mmの大血管1または2本および直径0.5から1.0mm範囲のもの数本を含む、肝離断によって、致死的損傷を生じさせた。この損傷の重症度は、未治療のウサギが、すべて、60分の手術期間内に放血するような重症度であった。これらの動物はいずれも、心拍数の増加に伴う血液量の喪失を補償することができなかった。すべての動物が、263bpmから、30分後には188bpmおよび1時間後には154bpmへの同等の低下を示した。群間に統計学的な有意差はなかった。しかし、ケラチン群は、補償および回復に向かう傾向を示し、30分から60分の手術期間後半に心拍数が増加した。すべての動物の体温は、最初の5分間に0.8℃および60分を通して合計2.7℃の段階的降下で、同様に降下した。実験群間に統計学的な有意差はなかった。
【0111】
脱血血液。脱血血液は、事前に計量したガーゼの重量を引いた後の重量によって測定した。各時点で重量を記録し、肝臓損傷の下に新しいガーゼを置いた。脱血血液は、それぞれの動物のもとの体重に対するパーセントとして表した。CBCは、HEMAVet(登録商標)多種血液学検査システム(Model 950FS、テキサス州、ダラスのDrew Scientific)を用いて、耳静脈より採取したサンプルから決定した。
【0112】
失血は、損傷した肝葉の下に置いた外科用ガーゼを計量することによって測定した。失血は、出発体重に対する百分率として表示した。無制御出血試験では、予想どおり、すべての動物が、初期大量出血期、その後、MAP降下につれて、より低い出血速度での線形期を示した(図2)。ケラチンおよびQuikClot(登録商標)止血剤群の陰性対照に対する比較は、30、45および60分の時間点での失血量の有意な減少を示す(それぞれ、ケラチン対陰性対照についてのp値は、0.018、0.011および0.007であり、QuikClot(登録商標)止血剤対陰性対照についてのp値は、0.009、0.005および0.004であった)。
【0113】
予想どおり、動物の生存性は、損傷部位の血管の解剖学的構造に依存するようであり、これは、離断された全表面積を制御したとしても動物によって異なった。単一の非常に大きな出血血管(>1mm)、または多数の大きな出血血管(1mサイズ範囲のもの、>2から3)が損傷領域内に発生した場合、その動物が生存する可能性は、QuikClot(登録商標)止血剤およびHemCon(登録商標)止血バンデージ群ではごくわずかであった。特にQuikClot(登録商標)止血剤群では、単一の非常に大きな出血血管または2から3本を越える大きな出血血管は、確実に致命的である。しかし、圧力併用で、製造業者の指示に従って使用したとき、他の試験は、QuikClot(登録商標)止血剤およびHemCon(登録商標)止血バンデージを使用して、より良好な生存率を示した。一切加圧することもなく使用したケラチンゲルでの治療に関するすべての場合、動物は、切断された血管のサイズに関係なく、少なくとも24時間生存した。すべての試験群において少数の動物(n=4)を使用したが、これらの成果は、有望である。
【0114】
それぞれの成果測定、特に、脱血血液量、MAPおよび(重要なことには)生存によると、ケラチン止血ゲルは、一貫してよく機能した。1つの特に顕著な成果は、ショック係数であった。出血のほとんどの症例では、心送血量が増加されて、血圧の降下を補償する。このメカニズムが優性になると、ショック係数の値が急速に増加し、生存性が疑わしくなる。注目すべきことに、ケラチン治療群におけるショック係数は、早期有効止血と一致して、試験したすべての材料の最低にとどまった。
【実施例4】
【0115】
組織学
傷害を受けた肝臓表面を含む組織サンプルを、安楽死から1時間以内にそれぞれの動物から取り出した。それぞれのサンプルをTissue−Tek(登録商標)O.C.T.Compound 4583(Sakura(登録商標))に入れ、液体窒素の中で凍結させた。クリオスタット(Model CM 1850、イリノイ州、バノックバーンのLeica Microsystems)を使用して、それらの凍結ブロックを、その肝臓の離断部分を含むように8μm切片に切断し、顕微鏡スライドガラスの上に載せた。それらのスライドガラスを固定し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。QuikClot(登録商標)止血剤切片とHemCon(登録商標)止血バンデージ切片の両方に関して切断の点で技術的困難が発生した。脆性のQuikClot(登録商標)止血剤は、水平に切断することが難しく、切片に空隙を作ってしまった。HemCon(登録商標)止血バンデージバンデージは、腹部縫合前に取り外し、それ故、凝固した血液を部分的にしか見ることができなかった。デジタル画像を様々な倍率で撮って(Zeiss Axio Imager M1 Microscope、ニューヨーク州、ソーンウッドのCarl Zeiss)、止血剤と肝臓の傷害領域との相互作用を観察した。100倍の倍率によって組織の応答全体を示し、一方、その細胞応答を視覚化するために200倍および400倍の倍率を用いた。
【0116】
離断した肝臓表面を、H&E染色切片の光学顕微鏡検査によって調査した。陰性対照群は、組織応答または壊死のない明瞭なカットを示した(図5A)。さらに、機能性凝固は観察されず、表面に付着した血栓もほとんどなかった。QuikClot(登録商標)止血剤サンプルは、血餅中のこの硬い粒状ゼオライトの存在のため、加工が難しかった。組織構造は、血餅と混ざった壊死組織を示した(図5B)。透明領域は、加工中に除去されたQuikClot(登録商標)止血剤粒子に相当する。HemCon(登録商標)止血バンデージ群は、血餅を有する一部の領域と隣接する細胞浸潤を示した(図5C)。HemCon(登録商標)止血バンデージは、60分後に除去したので、大部分の肝臓表面は、血餅の薄層しか有さなかった。ケラチン群は、傷害を受けた肝臓表面に付着した医用生体材料の厚い層を示した(図5D)。細胞浸潤を伴う肉芽様組織が、ケラチン医用生体材料ゲルの細孔内で形成された(図6)。
【0117】
ケラチン止血ゲルは、組織への付着力があり、親水性であった。出血している肝臓表面に堆積させると、大量出血が存在する状態でさえ、洗い流されない十分な付着力があった。このゲルは、血液からの液体を吸収し、適用から数分以内にさらにいっそう付着した。凝固および付着は、ほぼ接触と同時に起こった。興味深いことに、ケラチンゲルは、72時間までに創傷部位上に肉芽様組織の厚いシールを形成した。組織切片を検査すると、損傷から3日後、そのゲルに浸潤している宿主細胞を見ることができた。これらの実験において使用したケラチンゲルは、2つの目的に役立つと考えられる。第一に、このゲルと全血の接触は、おそらく血小板活性化または凝固因子の濃縮により、血栓形成を引き起こす。第二に、この付着性ゲルは、凝固血に非常に似て、創傷部位に対する物理的シールを形成し、細胞浸潤および肉芽様組織形成のための多孔質スキャホールドとなる。
【0118】
上述したことは、本発明の実例となるものであり、本発明を限定するものと解釈すべきではない。本発明は、後続の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲と等価のものは、本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】Kaplan−Mayer生存グラフ。時間は、対数目盛り上の分で提示する。対照群におけるすべての動物は、60分以内に死亡した。ケラチンからの1匹の動物およびHemCon(登録商標)止血バンデージ群からの1匹は、動物飼育スタッフの助言をもとに犠牲にした。全般的に、ケラチンは、他の群より性能が優れており、QuikClot(登録商標)止血剤およびHemCon(登録商標)止血バンデージ群において2匹死亡したのに比べ、1匹しか死亡しなかった。
【図2】脱血血液。失血を体重に対して正規化し、体重に対する百分率として表示する。ケラチンおよびQuikClot(登録商標)止血剤群は、対照およびHemCon(登録商標)止血バンデージ群より血液の喪失が有意()に少なかった。
【図3】平均動脈圧(MAP)。血圧は、初期血圧に対する百分率で表示する。陰性対照およびQuikClot(登録商標)止血剤群は、初期MAPの40%への急激な血圧降下を示した。ケラチンまたはHemCon(登録商標)止血バンデージで治療した動物は、初期血圧の80%付近でMAPを安定させることができた。これらの差は、対照群と比較して統計学的に差はなかった。
【図4】ショック係数(SI)。心拍数をMAPで割ることにより、修正ショック係数を計算した。この係数を臨床使用して、ショックの重症度を評定する。値が低いほど良好である。ケラチン群の動物は、全試験期間にわたって補償的な低い値を示し、一方、QuikClot(登録商標)止血剤およびHemCon(登録商標)止血バンデージ群は、陰性対照と同様の値を有した。これらの群の間に統計学的な有意性は無かった。
【図5】組織学的評定。ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した代表組織切片、50倍。A)陰性対照群は、広い中空の洞様毛細血管を伴う劣った潅流の徴候を示した。その表面には、機能性血餅はない。B)QuikClot(登録商標)止血剤治療サンプルの表面は、壊死(矢印)および凝固領域を示す。最小限の細胞浸潤および組織再生しか見ることができない。白抜きの領域は、除去されたQuikClot(登録商標)止血剤顆粒に相当する。C)HemCon(登録商標)止血バンデージ治療動物からの組織サンプルは、低レベルの細胞浸潤がある、凝固血が付着した斑状領域を示した。D)ケラチンで治療した動物からの肝臓サンプルは、負傷面に付着したケラチン医用生体材料の厚い層を示す。高い細胞活性およびケラチン間の空間における早期肉芽組織形成(大きな矢印)を伴う卓越した生体適合性の徴候があった。さらに、ケラチン医用生体材料と肝細胞の高レベルの直接接触がある(小さな矢印)。
【図6】ケラチン治療群、高倍率。A)ケラチンゲルの空間内の早期肉芽様組織形成、200倍。B)医用生体材料と組織の同化および早期細胞浸潤を示す、ケラチンゲルと肝臓組織の界面、400倍。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ケラチン誘導体;および
b)場合により、少なくとも1つの追加の活性成分
を含み、
前記ケラチン誘導体が、ケラトース、ケラテインまたはそれらの組み合わせを含む、
医薬組成物。
【請求項2】
前記ケラチン誘導体が、ケラテインを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ケラチン誘導体が、ケラトース、ケラテインまたはそれらの組み合わせから本質的になる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ケラチン誘導体が、ケラテインから本質的になる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ケラチン誘導体が、酸性ケラテインから本質的になる、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ケラチン誘導体が、酸性αケラテインから本質的になる、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ケラチン誘導体が、酸性γケラテインから本質的になる、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの追加の活性成分が、鎮痛剤、抗菌剤、および追加の血液凝固剤からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記追加の活性成分が、ゼオライト系血液凝固剤およびキトサン系血液凝固剤からなる群より選択される血液凝固剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
出血創傷に苦しむ被検者において出血を治療する方法であって、正電荷を有する組成物を、前記出血を治療するために有効な量で、前記創傷に適用することを含む方法。
【請求項11】
前記正電荷を有する組成物が、ケラチン、コラーゲン、ムチン、エラスチン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチンおよびラミニンを含む誘導体からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
出血創傷に苦しむ被検者において出血を治療する方法であって、ケラチン誘導体(前記ケラチン誘導体は、ケラトース、ケラテインまたはそれらの組み合わせから本質的になる)を、該出血を治療するために有効な量で、前記創傷に適用することを含む方法。
【請求項13】
前記ケラチン誘導体が、ケラテインから本質的になる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ケラチン誘導体が、αケラテインから本質的になる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ケラチン誘導体が、酸性αケラテインから本質的になる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記酸性αケラテインが、酸性および塩基性αケラテインを含む混合物をイオン交換クロマトグラフィーによって分画するプロセスによって製造される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ケラチン誘導体が、塩基性αケラテインから本質的になる、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記塩基性αケラテインが、酸性および塩基性αケラテインを含む混合物をイオン交換クロマトグラフィーによって分画するプロセスによって製造される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
必要とする被検者において創傷を治療する方法であって、ケラチン誘導体(該ケラチン誘導体は、ケラトース、ケラテインまたはそれらの組み合わせから本質的になる)を、前記創傷を治療するために有効な量で、前記創傷に局所適用することを含む方法。
【請求項20】
前記ケラチン誘導体が、ケラテインから本質的になる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ケラチン誘導体が、αケラテインから本質的になる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記ケラチン誘導体が、酸性αケラテインから本質的になる、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記酸性αケラテインが、酸性および塩基性αケラテインを含む混合物をイオン交換クロマトグラフィーによって分画するプロセスによって製造される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ケラチン誘導体が、ケラトースから本質的になる、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記ケラチン誘導体が、αケラトースから本質的になる、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記ケラチン誘導体が、酸性αケラトースから本質的になる、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記酸性αケラトースが、酸性および塩基性αケラトースを含む混合物をイオン交換クロマトグラフィーによって分画するプロセスによって製造される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
固体で生理学的に許容される基体;および
該基体上のケラチン誘導体
を含み、
前記ケラチン誘導体が、ケラトース、ケラテインまたはそれらの組み合わせから本質的になる、
外科用または救急医療士用補助具。
【請求項29】
前記基体が、スポンジ、パッキング、創傷被覆材、縫合糸、布、および補綴具からなる群より選択される、請求項28に記載の外科用または救急医療士用補助具。
【請求項30】
滅菌されている、および滅菌容器の中に包装されている、請求項28に記載の外科用または救急医療士用補助具。
【請求項31】
前記ケラチン誘導体が、ケラテインから本質的になる、請求項28に記載の外科用または救急医療士用補助具。
【請求項32】
前記ケラチン誘導体が、αケラテインから本質的になる、請求項28に記載の外科用または救急医療士用補助具。
【請求項33】
前記ケラチン誘導体が、酸性αケラテインから本質的になる、請求項28に記載の外科用または救急医療士用補助具。
【請求項34】
前記酸性αケラテインが、酸性および塩基性αケラテインを含む混合物をイオン交換クロマトグラフィーによって分画するプロセスによって製造される、請求項33に記載の外科用または救急医療士用補助具。
【請求項35】
前記ケラチン誘導体が、ケラトースから本質的になる、請求項28に記載の外科用または救急医療士用補助具。
【請求項36】
前記ケラチン誘導体が、αケラトースから本質的になる、請求項28に記載の外科用または救急医療士用補助具。
【請求項37】
前記ケラチン誘導体が、酸性αケラトースから本質的になる、請求項28に記載の外科用または救急医療士用補助具。
【請求項38】
前記酸性αケラトースが、酸性および塩基性αケラトースを含む混合物をイオン交換クロマトグラフィーによって分画するプロセスによって製造される、請求項28に記載の外科用または救急医療士用補助具。
【請求項39】
a)ケラチン誘導体;および
b)容器
を含むキットであって、前記ケラチン誘導体は、ケラトース、ケラテインまたはそれらの混合物を含み、前記容器の中に、前記ケラチン誘導体が、滅菌形態で包装されているキット。
【請求項40】
前記ケラチン誘導体が、水和形態または脱水形態で供給される、請求項39に記載のキット。
【請求項41】
前記容器が、ホイル容器を含む、請求項39に記載のキット。
【請求項42】
前記容器が、真空包装されている、請求項39に記載のキット。
【請求項43】
前記ケラチン誘導体が、単回単位用量を含む、請求項39に記載のキット。
【請求項44】
前記ケラチン誘導体が、0.5から200グラムの脱水ケラトース、ケラテインまたはそれらの混合物を含む、請求項39に記載のキット。
【請求項45】
前記ケラチン誘導体が、0.5から200ミリリットルの水和ケラトース、ケラテインまたはそれらの混合物を含む、請求項39に記載のキット。
【請求項46】
生理学的に許容される基体をさらに含む、請求項39に記載のキット。
【請求項47】
前記基体が、滅菌されており、および前記基体が、前記容器の中に滅菌形態で包装されている、請求項46に記載のキット。
【請求項48】
前記基体が、スポンジ、パッキング、創傷被覆材、縫合糸、布、および補綴具からなる群より選択される、請求項46に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−527481(P2009−527481A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555408(P2008−555408)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/004283
【国際公開番号】WO2007/098114
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(507189574)ウェイク・フォレスト・ユニヴァーシティ・ヘルス・サイエンシズ (14)
【Fターム(参考)】