説明

ケースモールド型コンデンサ

【課題】産業用、自動車用等のインバータ回路に使用されるケースモールド型コンデンサの放熱性、耐湿性を改良した信頼性の高いケースモールド型コンデンサを提供する。
【解決手段】ケースモールド型コンデンサにおいて、ケース12の開口部は、直方体の6面のうち、面の面積が最小となる片面を開口部とし、複数のコンデンサ素子11は、少なくとも小判形の一方の偏平部が露呈するように並列接続され、この偏平部をケース12の面の面積が最大となる面に対向するように配設させ、かつ、コンデンサ素子11の一対の電極をケース12の両側面のそれぞれに対向するように配置させ、コンデンサ素子11の偏平部及び電極をケース12の開口部と対向させないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器、電気機器、産業機器、自動車等に使用されるケースモールド型コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、多くの電気機器がインバータ回路で制御され、省エネルギー化、高効率化が進められている。中でも自動車業界においては、電気モータとガソリンエンジンを使い分けて走行するハイブリッド車(以下、HEVと呼ぶ)が市場導入されるなど、省エネルギー化、高効率化に関する技術の開発が活発化している。
【0003】
このようなHEVで使用される電気モータは、使用電圧領域が数百ボルトと高いため、このような電気モータに関連して使用されるコンデンサとして、高耐電圧で低損失の電気特性を有する金属化フィルムコンデンサが注目されている。さらに、市場におけるメンテナンスフリー化の要望からも、極めて寿命が長い金属化フィルムコンデンサが採用される傾向が目立っている。
【0004】
そして機械的強度や耐湿性能を確保して車載用の厳しい使用条件に耐えるようにするため、このような金属化フィルムコンデンサを外装ケースに収納し、充填樹脂でモールドしたケースモールド型コンデンサが使用されている。
【0005】
金属化フィルムコンデンサの放熱性を向上させるものとして、特許文献1にはコンデンサ素子の小判形に形成された断面の長径をa、同短径をbとした場合のa/b=3以上でa=60mm以上、かつ、上記金属化フィルムを構成する誘電体フィルム厚の3〜10倍厚のポリプロピレンフィルムを5〜10ターン巻回した巻芯を用い、この巻芯からコンデンサ素子の外周面までの寸法を14mm以下とすることにより、生産性、放熱性、信頼性の優れたものが得られるという提案がされている。
【0006】
また、特許文献2のように、コンデンサ素子を収納したポリフェニレンサルファイド(以下、PPSと略す)ケースを、ケース間接合樹脂を介してアルミニウム製ケース内に収納、固定された構造を有する金属化フィルムコンデンサにおいて、前記PPSケースが、グラスファイバーを50〜85重量%含有したPPSから構成され、前記ケース間接合樹脂が、シランカップリング剤を含有したシリコーン樹脂で、前記アルミニウム製ケースの内側底部に充填された金属化フィルムコンデンサとすることにより、PPSケースとアルミニウム製ケースとの接合強度を向上させることができる。また、前記シリコーン樹脂は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂と比較して、耐熱性に優れ、柔軟性もあるため、クラックの発生を防止でき、上記のPPSケースとアルミニウム製ケースとの接合強度向上効果と併せることで、過酷な試験条件(100℃を超える高温度での使用や、85℃、85%の高温高湿条件、−40〜+120℃の温度サイクル)においても、コンデンサ素子を収納したPPSケースがアルミニウム製ケースから脱離することはなく、品質的に安定した金属化フィルムコンデンサの製造が可能であるということが記載されている。
【0007】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1、2に示すものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−81007号公報
【特許文献2】特開2009−81161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
車載用のケースモールド型コンデンサは、使用電圧の高耐電圧化、大電流化、大容量化、小型化が強く要求される。一般的には金属化フィルムコンデンサを3〜12個接続して大容量化を重視して小型化をある程度犠牲にしてきている。
【0010】
また、機械的強度、耐熱性、耐水性にも優れたものでなければならないことから、金属化フィルムコンデンサを充填樹脂でモールドした構成を有している。
【0011】
確かに特許文献1の金属化フィルムコンデンサは、コンデンサ素子の放熱性は優れるものの、複数のコンデンサ素子を用いてケースモールド型にしたときの放熱性能を示唆する記載はされてない。
【0012】
また、特許文献2は、コンデンサ素子を収納したPPSケースをアルミニウム製ケースに収納することにより、コンデンサ素子の発熱をアルミニウム製ケースを通じてケースの外部に放出することはできるが、樹脂ケースと金属ケースの高温度の環境条件化での接着性に課題を有し、低コスト化を図りにくい構造を有している。
【0013】
本発明は、このような従来の課題を解決し、放熱性能に優れ、小型化で信頼性の高いケースモールド型コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、直方体の一面を開口部としたケースと、このケース内に収容され、小判形の形状を有して一対の電極を備えた複数のコンデンサ素子と、この複数のコンデンサ素子の一対の電極にそれぞれ電極接続部を接続して外部接続端子部を有する一対のバスバーと、前記ケース内に充填したモールド樹脂とを備えたケースモールド型コンデンサにおいて、前記ケースの開口部は、直方体の6面のうち、面の面積が最小となる片面を開口部とし、前記複数のコンデンサ素子は、コンデンサ素子の小判形の偏平部の一方が必ず露呈するように並列接続され、この露呈した全ての偏平部がケース面の面積の最大となる面に対して対向するように配設し、コンデンサ素子の一対の電極をケースの両側面のそれぞれに対向するように配置され、かつ、コンデンサ素子の偏平部及び電極をケースの開口部と対向させないようにしたことを特徴とする。
【0015】
また、コンデンサ素子の並列接続は、2個のコンデンサ素子の偏平部同士を接触させたものを複数段に積み重ね、小判形の偏平部の片方がそれぞれ露呈するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によれば、ケースの面の面積が最大となる面に複数のコンデンサ素子の露呈された全ての偏平部を対向するように配置させることにより、コンデンサ素子の発熱がケースの最大面積の面を通じて外部に放熱しやすくなるので、ケースモールド型コンデンサの発熱が抑制され、ケースモールド型コンデンサの小型化が可能となる。
【0017】
また、ケースの開口部を直方体の6面のうち面の面積が最小となる片面を開口部とし、コンデンサ素子の一対の電極をケースの両側面のそれぞれに対向させ、かつ偏平部及び一対の電極をケースの開口部と対向させないようにすることにより、コンデンサ素子の電極がケースの開口部と向き合わない構成となるので、ケースの開口部から浸入する水分が電極に到達しにくくなり、コンデンサ素子を水分から保護することができる。
【0018】
また、外部の水分が進入しやすいとされるケースの開口部の面積を最小にするので、コンデンサ素子の耐湿性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1におけるコンデンサ素子の斜視図
【図2】同実施の形態1におけるケースモールド型コンデンサの斜視図
【図3】同比較例1のケースモールド型コンデンサの断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態1)
図1は本実施の形態1おけるケースモールド型コンデンサに用いたコンデンサ素子の斜視図、図2は同ケースモールド型コンデンサの斜視図である。
【0021】
図1において、コンデンサ素子11はポリプロピレンなどの誘電体フィルムの片面または両面にアルミニウムなどの金属を蒸着させた金属化フィルム(図示せず)を一対とし、この金属化フィルムを誘電体フィルムを介して対向する状態で巻回し、その後小判形にして偏平部11aが形成され、コンデンサ素子11の両端面には亜鉛などを溶射して電極11bが形成されている。
【0022】
小判形のコンデンサ素子11は、小判形の断面の長辺をa、短辺をbとしたとき、a/bが1.5〜3.0の範囲が好ましい。このa/bが1.5未満(偏平率が低い)では発熱した熱が放熱されにくく、小型化及び薄型化ができない。また、a/bが3.0を超える(偏平率が高い)と、コンデンサ素子11の偏平部11aがケース12の面に対向する面積が増えるので放熱されやすくはなるが、コンデンサ素子11を均一に偏平しにくく金属化フィルム同士の密着性が悪く容量変化率が大きくなり、寿命特性に課題を有してくる。
【0023】
図2は前記コンデンサ素子11を収納したケースモールド型コンデンサであり、ケース12は直方体の形状を有し、その直方体の6面のうち、面の面積が最小となる片面を開口部(図1の上面側)としている。
【0024】
コンデンサ素子11は、2個のコンデンサ素子11の偏平部11a同士を接触させたものを3段に積み重ねて配置される。
【0025】
バスバー13は、コンデンサ素子11を積み重ねた3段の片側の電極11bにバスバー13の接続端子13bを接続し、外部接続端子13aが配設され、バスバー14は、バスバー13と同様にコンデンサ素子11を積み重ねた3段の他側の電極にバスバー14の接続端子(図示せず)を接続し、外部接続端子14aが配設されている。
【0026】
コンデンサ素子11のケース12内への収納は、コンデンサ素子11の偏平部11aの片方が必ずケース12の面の最大となる面に対向して配置させる。
【0027】
このとき、コンデンサ素子11の電極11bはケース12の開口部と対向させないようにする。すなわち、コンデンサ素子11の長手方向がケース12の開口部と平行になるように配置する。
【0028】
例えば、ケース12の大きさを縦40mm、横100mm、高さ115mmとした場合、面の面積が最小となるのは縦×横の面積となる。また、面の面積が最大となるのは横×高さの面積となる。
【0029】
このことにより、ケース12内に収納された各々コンデンサ素子11の偏平部11aがケース12の最大となる面にそれぞれ対向して配置されるので、コンデンサ素子11の発熱がケース12の最大面積の面を通じて外部に放熱しやすくなるので、ケースモールド型コンデンサの発熱が抑制され、ケースモールド型コンデンサの小型化が可能となる。
【0030】
また、コンデンサ素子11の偏平部11aがケース12の最大となる面にそれぞれ対向して配置されるときに、偏平部11aをケース12の面に接触させる。このことにより、ケースモールド型コンデンサの発熱がケース12に伝達されて放散するので、全体の温度を抑制することができる。
【0031】
また、ケース12の開口部を直方体の6面のうち面の面積が最小となる片面を開口部とし、コンデンサ素子11の電極11bをケース12の開口部と対向させないようにすることにより、コンデンサ素子11の電極がケース12の開口部と向き合わない構成となるので、ケース12の開口部から浸入する水分が電極に到達しにくくなり、ケースモールド型コンデンサの耐湿性を向上させることができる。
【0032】
以下、具体的な実施例について説明する。
【0033】
(実施例1)
コンデンサ素子として、図1に示す小判形の素子を用いた。このコンデンサ素子の断面の長辺(a)を35mm、短辺(b)を17mm、長さを95mmとした。
【0034】
次に、2個のコンデンサ素子の偏平部同士を接触させたものを3段に積み重ね、素子の電極にバスバー13、14を接続した素子ユニットを作製した。
【0035】
次に、縦40mm、横100mm、高さ115mmのPPSケース(開口部の大きさ40×100mm)を用い、コンデンサ素子の偏平部の片方を必ずケースの最大となる面に対して対向させて素子ユニットを配置させた。このとき、コンデンサ素子の一対の電極はケースの両側面のそれぞれに対向するように配置される。これにより、コンデンサ素子の偏平部及び電極はケースの開口部と対向しないことになる。
【0036】
その後、PPSケース内にバスバー13、14の一部が露出するようにエポキシ樹脂を充填してケースモールド型コンデンサを作製した。
【0037】
(比較例1)
前記実施例1において、PPSケースとして縦115mm、横100mm、高さ40mmのPPSケース(開口部の大きさ115×100mm)を用い、図3に示すようにコンデンサ素子21の偏平部の片方がケース24の底面に対して対向させて素子ユニットを配置させた。これにより、コンデンサ素子21の他方の偏平部はケース24の開口部と対向することになる。
【0038】
その後、PPSケース24内にバスバー22の一部が露出するようにエポキシ樹脂23を充填してケースモールド型コンデンサを作製した。
【0039】
前記実施例1及び比較例1のケースモールド型コンデンサについて、ケースモールド型コンデンサ本体を60℃の恒温槽に設置し、周波数10kHz、電流値140Amsを通電した時のケースモールド型コンデンサの温度を測定した。温度測定場所は、3段重ねの中央部で、通電開始後30分後の温度を測定した。また、耐湿性評価は、コンデンサに定格電圧を印加した状態で、試験環境を湿度85%、温度85℃で100時間行った後、次に温度を100℃まで上げて100時間行うのを10回繰り返した後の容量変化率を測定した。その結果を(表1)に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
(表1)から明らかなように、実施例1のケースモールド型コンデンサは比較例1のケースモールド型コンデンサに比べて温度を低くすることができる。また、耐湿評価においても、実施例1は比較例1に比べて容量変化率を約半分以下に抑制することができる。
【0042】
このように本発明のケースモールド型コンデンサは、コンデンサ素子の発熱をケースの最大面積の面を通じて外部に放熱しやすくなるので、ケースモールド型コンデンサの発熱を抑制することができる。
【0043】
また、ケースの開口部を直方体の6面のうち面の面積が最小となる片面を開口部とし、コンデンサ素子の電極をケースの開口部と対向させないようにすることにより、コンデンサ素子の電極がケースの開口部と向き合わない構成となるので、ケースの開口部から浸入する水分が電極に到達しにくくなり、ケースモールド型コンデンサの耐湿性を向上させることができる。
【0044】
その結果、ケースモールド型コンデンサの小型化が可能となり、信頼性の高いケースモールド型コンデンサを得ることができる。
【0045】
なお、ケースの材質としては、PPS樹脂を用いたが、これに限定するものではなく、他の耐熱性樹脂や、放熱性に優れるアルミニウム等の金属を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によるケースモールド型コンデンサは、複数のコンデンサを1つのケース内に収納して樹脂モールドする場合に、使用電圧の高耐電圧化、大電流化、大容量化の性能を満足して小型化を図ることができるもので、特にハイブリッド自動車のモータ駆動用インバータ回路の平滑用等に有用である。
【符号の説明】
【0047】
11 コンデンサ素子
11a 偏平部
11b 電極
12 ケース
13、14 バスバー
13a、14a 外部接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体の一面を開口部としたケースと、このケース内に収容され、小判形の形状を有して一対の電極を備えた複数のコンデンサ素子と、この複数のコンデンサ素子の一対の電極にそれぞれ電極接続部を接続して外部接続端子部を有する一対のバスバーと、前記ケース内に充填したモールド樹脂とを備えたケースモールド型コンデンサにおいて、前記ケースの開口部は、直方体の6面のうち、面の面積が最小となる片面を開口部とし、前記複数のコンデンサ素子は、コンデンサ素子の小判形の偏平部の一方が必ず露呈するように並列接続され、この露呈した全ての偏平部がケース面の面積の最大となる面に対して対向するように配設し、コンデンサ素子の一対の電極をケースの両側面のそれぞれに対向するように配置され、かつ、コンデンサ素子の偏平部及び電極をケースの開口部と対向させないようにしたことを特徴とするケースモールド型コンデンサ。
【請求項2】
前記コンデンサ素子の並列接続は、2個のコンデンサ素子の偏平部同士を接触させたものを複数段に積み重ね、小判形の偏平部の片方がそれぞれ露呈するようにした請求項1に記載のケースモールド型コンデンサ。
【請求項3】
前記片面が露出した小判形の偏平部を前記ケースの内側面にそれぞれ接触させるようにした請求項1に記載のケースモールド型コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−55095(P2013−55095A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190309(P2011−190309)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】