説明

ケーブルクランプ構造

【課題】ケーブルの抜け止め作業の簡略化を図り易いケーブルクランプ構造を提供する。
【解決手段】ケーブルAを挿通するケーブル挿通部4を備えたスペーサー部材5と、ケーブルAの長手方向に沿ってスペーサー部材5をスライド装着するボックス本体部3と、スペーサー部材5から突出したケーブルAの端部側に外挿され、スペーサー部材5とボックス本体部3とによって圧縮保持されるシール部材6と、ケーブルAが挿通されたスペーサー部材5をボックス本体部3に装着した状態で、スペーサー部材5及びボックス本体部3、ケーブルAに対して、ケーブルAの長手方向に交差する方向から係合可能なクランプ部材7とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャンクションボックスなどのボックス本体部にケーブル導入孔を形成し、そのケーブル導入孔を通してボックス内に導入したケーブルを抜け止めしてあるケーブルクランプ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ジャンクションボックスとしては例えば太陽電池パネル用の端子ボックスがあり、従来の端子ボックスにおけるケーブルクランプ構造では、ケーブルに外嵌してあるキャップのボックス本体部に対するねじ込み操作で、ケーブル導入孔を通してボックス内に導入したケーブルを抜け止めするとともに、シール部材を圧縮保持してケーブル導入孔とケーブルとの隙間を密封してある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−18674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャップのボックス本体部に対するねじ込み操作でケーブルを確実に抜け止めし、かつ、ケーブル導入孔とケーブルとの隙間を確実に密封するには、例えば、ねじピッチが小さくて緩み難いねじ部をキャップとボックス本体部とに亘って形成する必要がある。
このため、従来のケーブルクランプ構造では、確実に抜け止めし、かつ、密封するには、キャップを何度も回転させてボックス本体部にねじ込む必要があり、ケーブルの抜け止め作業が煩雑化するおそれがある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、ケーブルの抜け止め作業の簡略化を図り易いケーブルクランプ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるケーブルクランプ構造の第1特徴構成は、ケーブルを挿通するケーブル挿通部を備えたスペーサー部材と、前記ケーブルの長手方向に沿って前記スペーサー部材をスライド装着するボックス本体部と、前記スペーサー部材から突出した前記ケーブルの端部側に外挿され、前記スペーサー部材と前記ボックス本体部とによって圧縮保持されるシール部材と、前記ケーブルが挿通された前記スペーサー部材を前記ボックス本体部に装着した状態で、前記スペーサー部材及び前記ボックス本体部、前記ケーブルに対して、前記ケーブルの長手方向に交差する方向から係合可能なクランプ部材とを備えた点にある。
【0006】
本構成のケーブルクランプ構造は、ケーブルを挿通するケーブル挿通部を備えたスペーサー部材と、ケーブルの長手方向に沿ってスペーサー部材をスライド装着するボックス本体部と、スペーサー部材から突出したケーブルの端部側に外挿され、スペーサー部材とボックス本体部とによって圧縮保持されるシール部材とを備えている。
このため、ケーブルがケーブル挿通部に挿通されたスペーサー部材を、そのケーブルのスペーサー部材からの突出端部側にシール部材を外挿した状態で、ケーブルの長手方向に沿ってボックス本体部にスライド装着することによって、シール部材がスペーサー部材とボックス本体部とによって圧縮される。
また、ケーブルが挿通されたスペーサー部材をボックス本体部に装着した状態で、スペーサー部材及びボックス本体部、ケーブルに対して、ケーブルの長手方向に交差する方向から係合可能なクランプ部材を備えている。
このため、クランプ部材をスペーサー部材及びボックス本体部、ケーブルに対して、ケーブルの長手方向に交差する方向から係合させる操作で、ケーブルを抜け止めするとともに、シール部材を圧縮した状態に保持してケーブル導入孔とケーブルとの隙間を密封することができる。
したがって、本構成のケーブルクランプ構造であれば、従来のようなキャップを何度も回転させてボックス本体部にねじ込むという煩雑な操作によらずに、クランプ部材をケーブルの長手方向に交差する方向からスペーサー部材及びボックス本体部、ケーブルに対して係合させる操作で、ケーブルを抜け止めすることができるとともに、ケーブル導入孔とケーブルとの隙間も密封することができ、ケーブルの抜け止め作業の簡略化を図り易い。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記ボックス本体部は、前記スペーサー部材をボックス外方側からケーブル長手方向に嵌入可能な第1嵌入部を備え、前記スペーサー部材と前記第1嵌入部とをケーブル径方向に互いに係合してある点にある。
【0008】
本構成であれば、スペーサー部材を第1嵌入部に対してボックス外方側からケーブル長手方向に嵌入する操作で、スペーサー部材とボックス本体部とをケーブル径方向に互いに係合して、スペーサー部材のケーブル径方向への移動を規制することができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、前記クランプ部材は、前記ケーブルに対してケーブル径方向から係入してケーブル長手方向に係合可能なケーブル係合部を備え、前記ケーブル係合部は、前記ケーブルの外周面を囲む断面U字状のクランプ溝を前記クランプ部材に形成するとともに、前記ケーブルに対してケーブル径方向から係入させる複数の係合爪を前記クランプ溝の内面に一体形成して構成してある点にある。
【0010】
本構成であれば、ケーブルを抜け止めするにあたって、クランプ部材に断面U字状のクランプ溝を形成して、その内面に一体形成してある複数の係合爪を、ケーブルに対してケーブル径方向から係入させることができる。
このため、ケーブルをクランプ溝の内面に対して、局所的ではなく、複数の係合爪で複数箇所に係合させて、クランプ溝の内面全体でケーブルを押さえることができ、ケーブルが破損し難い。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、前記クランプ部材は、前記ボックス本体部に対してケーブル径方向から係入してケーブル長手方向に係合可能な本体係合部を備え、前記本体係合部は、前記ボックス本体部に対してケーブル径方向から係入する係入部を前記クランプ部材に一体形成して構成してある
【0012】
本構成であれば、クランプ部材に形成した係入部をボックス本体部に対してケーブル径方向から係入することにより、クランプ部材のケーブル長手方向への移動を規制することができる。
【0013】
本発明の第5特徴構成は、前記ボックス本体部は、前記スペーサー部材をボックス外方側からケーブル長手方向に嵌入可能な第1嵌入部と、前記シール部材をボックス外方側からケーブル長手方向に嵌入可能な第2嵌入部とを一連に備え、前記シール部材は、前記第1嵌入部に嵌入された前記スペーサー部材で圧縮保持してある点にある。
【0014】
本構成であれば、ケーブルのスペーサー部材からの突出端部側に外挿したシール部材を、ボックス本体部に形成した第2嵌入部の内部においてケーブル径方向への変形を規制しながら、第1嵌入部に嵌入されたスペーサー部材で圧縮保持して、ケーブル導入孔とケーブルとの隙間を確実に密封することができる。
【0015】
本発明の第6特徴構成は、前記スペーサー部材は、前記クランプ部材をケーブル径方向から嵌入可能なクランプ嵌入部を備えている点にある。
【0016】
本構成であれば、クランプ部材とスペーサー部材とのケーブル長手方向に沿う相対移動も、クランプ部材がケーブルに係合することによる当該クランプ部材のケーブル長手方向に沿う相対移動も規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ケーブルクランプ構造を示し、(a)は端子ボックス上面側から見た斜視図、(b)は端子ボックス下面側から見た斜視図、(c)は横断面図である。
【図2】ケーブルクランプ構造の分解斜視図である。
【図3】ボックス本体部を示し、(a)は端子ボックス上面側から見た斜視図、(b)は端子ボックス下面側から見た斜視図、(c)は縦断面図である。
【図4】スペーサー部材を示し、(a)は端子ボックス上面側から見た斜視図、(b)は端子ボックス下面側から見た斜視図、(c)は縦断面図である。
【図5】クランプ部材を示し、(a)は端子ボックス上面側から見た斜視図、(b)は平面図、(c)は底面図である。
【図6】ケーブルクランプ構造の組み付け方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図5は、太陽電池パネル用の端子ボックス(ジャンクションボックスの一例)に設けてある本発明によるケーブルクランプ構造を示す。
【0019】
端子ボックスは、図1に示すように、太陽電池モジュールの出力端子(図示せず)と、その出力端子からの電力を外部に取り出すケーブルAの芯線A1とを互いに電気的に接続する端子板1や、逆流防止用のバイパスダイオード(図示せず)などを樹脂製ボックス本体Bに内装してある周知の構成を有している。
【0020】
図1,図2に示すように、ボックス本体Bはケーブル導入孔2を形成してあるボックス本体部3を一体に有し、ケーブル導入孔2に通してボックス本体B内に導入したケーブルAを本発明によるケーブルクランプ構造で抜け止めしてある。
【0021】
ケーブルクランプ構造は、ケーブルAを挿通するケーブル挿通部4を備えた樹脂製スペーサー部材5と、スペーサー部材5をケーブル長手方向に沿ってスライド装着する樹脂製ボックス本体部3と、ケーブルAとケーブル導入孔2との隙間を密封する円筒状の弾性シール部材6と、ケーブルAを抜け止めするための樹脂製クランプ部材7とを備えている。
【0022】
ボックス本体部3は、図3に示すように、スペーサー部材5をボックス外方側からケーブル長手方向に嵌入可能な第1嵌入部8と、シール部材6をボックス外方側からケーブル長手方向に嵌入可能な横断面形状が円形の第2嵌入部9とを一連に備えた左右対称の形状に形成されている。
【0023】
第1嵌入部8は、ケーブル長手方向に沿って長い左右対称の溝状に形成してあり、端子ボックスの下方側に向けて開口する下向きコの字形の横断面形状を有している。
第1嵌入部8を形成している左右の溝側面の上下方向(端子ボックスの深さ方向)中間位置の夫々に、ケーブル長手方向に沿って長い横リブ10を形成してある。
【0024】
スペーサー部材5は、第1嵌入部8にケーブル長手方向に沿って装脱自在にスライド装着されて、ケーブル導入孔2に挿通したケーブルAをボックス本体部3の外方側においてケーブル導入孔2の軸芯と同芯状に保持する。
【0025】
スペーサー部材5は、図4に示すように、ケーブル長手方向で前後一対のケーブル挿入孔11と、クランプ部材7を端子ボックス下面側から上面側に向かう方向、つまり、ケーブル径方向から嵌入する空間を形成するクランプ嵌入部12とを備え、ケーブル長手方向に沿って長い凹溝部13が左右両側に形成されている。
【0026】
クランプ嵌入部12は、前後のケーブル挿入孔11に亘って挿入したケーブルAの外周面側を受け止める横断面形状が円弧状のケーブル受け面14と、端子ボックス下面側に向けて開口する矩形のクランプ部材嵌入口15と、クランプ部材7の嵌入方向先端部分16が嵌入する一対の先端嵌入孔17とを備えている。
【0027】
クランプ嵌入部12は、凹溝部13の底部側に開口する状態で設けてある。
スペーサー部材5と第1嵌入部8は、凹溝部13の夫々に横リブ10を嵌入させてケーブル径方向に互いに係合してある。
したがって、凹溝部13の夫々に横リブ10を嵌入させた状態で、横リブ10の突出端部が凹溝部13の底部側からクランプ嵌入部12に入り込んでいる。
【0028】
シール部材6は、第2嵌入部9に予め嵌入してある状態で、ケーブルAがケーブル挿入孔11に挿通されたスペーサー部材5を第1嵌入部8に嵌入することにより、スペーサー部材5から突出しているケーブルAの端部側に外挿されて、スペーサー部材5とボックス本体部3とによって圧縮保持されている。
【0029】
クランプ部材7は、ケーブルAが挿通されたスペーサー部材5を第1嵌入部8に嵌入してボックス本体部3に装着した状態で、スペーサー部材5及びボックス本体部3、ケーブルAに対して、ケーブルAの長手方向に直交する方向から係合可能に設けてある。
【0030】
このために、クランプ部材7は、図5に示すように、ケーブルAに対してケーブル径方向から係入してケーブル長手方向に係合可能なケーブル係合部18と、ボックス本体部3に対してケーブル径方向から係入してケーブル長手方向に係合可能な本体係合部19とを備えた、横断面形状が上向きコの字形の二股形状に形成されている。
【0031】
ケーブル係合部18は、ケーブルAの外周面を囲む断面U字状のクランプ溝20をクランプ部材7に形成するとともに、ケーブルAに対してケーブル径方向から係入させる複数の係合爪21をクランプ溝20の内面に一体形成して構成してある。
複数の係合爪21は、クランプ部材7のクランプ嵌入部12に対する嵌入方向(以下、クランプ嵌入方向という)に沿って長い横断面形状が三角形の突条部をケーブル長手方向で隣り合う鋸歯状に配置して設けてある。
【0032】
本体係合部19は、クランプ嵌入方向に沿って長い横断面形状が矩形の複数の係入部22をクランプ部材7の左右両側にケーブル長手方向に間隔を隔てて一体形成すると共に、これらの係入部22がクランプ嵌入方向から入り込む複数の本体係入溝23を第1嵌入部8に形成した横リブ10の突出端部に一体形成して構成してある。
【0033】
上記ケーブルクランプ構造の組み付け方法を説明する。
図6(a)に示すように、シール部材6を第2嵌入部9に予め嵌入した後、スペーサー部材5を第1嵌入部8に嵌入する。
次に、芯線A1を露出させたケーブルAを、スペーサー部材5の前後一対のケーブル挿入孔11と、シール部材6の内周側と、ボックス本体部3のケーブル導入孔2とに順に挿入して、ボックス本体B内に導入する。
【0034】
次に、図6(b)に示すように、クランプ部材7をスペーサー部材5のクランプ嵌入部12に嵌入することにより、複数の係合爪21をケーブルAに係合させると共に、係入部22を本体係入溝23に係合させる。
【0035】
したがって、クランプ部材7は、ケーブルAが挿通されたスペーサー部材5をボックス本体部3に装着した状態で、スペーサー部材5及びボックス本体部3、ケーブルAに対して、ケーブルAの長手方向に直交する方向から係合して、ケーブルAがケーブル導入孔2との隙間を密封した状態で抜け止めされる。
【0036】
〔その他の実施形態〕
1.本発明によるケーブルクランプ構造は、スペーサー部材5及びボックス本体部3、ケーブルAに対して、ケーブルAの長手方向に対して斜めに交差する方向から係合可能なクランプ部材7を備えていてもよい。
2.本発明によるケーブルクランプ構造は、太陽電池パネル用の端子ボックス以外の各種ジャンクションボックスに設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0037】
3 ボックス本体部
4 ケーブル挿通部
5 スペーサー部材
6 シール部材
7 クランプ部材
8 第1嵌入部
9 第2嵌入部
12 クランプ嵌入部
18 ケーブル係合部
19 本体係合部
20 クランプ溝
21 係合爪
22 係入部
A ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを挿通するケーブル挿通部を備えたスペーサー部材と、
前記ケーブルの長手方向に沿って前記スペーサー部材をスライド装着するボックス本体部と、
前記スペーサー部材から突出した前記ケーブルの端部側に外挿され、前記スペーサー部材と前記ボックス本体部とによって圧縮保持されるシール部材と、
前記ケーブルが挿通された前記スペーサー部材を前記ボックス本体部に装着した状態で、前記スペーサー部材及び前記ボックス本体部、前記ケーブルに対して、前記ケーブルの長手方向に交差する方向から係合可能なクランプ部材とを備えたケーブルクランプ構造。
【請求項2】
前記ボックス本体部は、前記スペーサー部材をボックス外方側からケーブル長手方向に嵌入可能な第1嵌入部を備え、
前記スペーサー部材と前記第1嵌入部とをケーブル径方向に互いに係合してある請求項1記載のケーブルクランプ構造。
【請求項3】
前記クランプ部材は、前記ケーブルに対してケーブル径方向から係入してケーブル長手方向に係合可能なケーブル係合部を備え、
前記ケーブル係合部は、前記ケーブルの外周面を囲む断面U字状のクランプ溝を前記クランプ部材に形成するとともに、前記ケーブルに対してケーブル径方向から係入させる複数の係合爪を前記クランプ溝の内面に一体形成して構成してある請求項1又は2記載のケーブルクランプ構造。
【請求項4】
前記クランプ部材は、前記ボックス本体部に対してケーブル径方向から係入してケーブル長手方向に係合可能な本体係合部を備え、
前記本体係合部は、前記ボックス本体部に対してケーブル径方向から係入する係入部を前記クランプ部材に一体形成して構成してある請求項1〜3のいずれか1項記載のケーブルクランプ構造。
【請求項5】
前記ボックス本体部は、前記スペーサー部材をボックス外方側からケーブル長手方向に嵌入可能な第1嵌入部と、前記シール部材をボックス外方側からケーブル長手方向に嵌入可能な第2嵌入部とを一連に備え、
前記シール部材は、前記第1嵌入部に嵌入された前記スペーサー部材で圧縮保持してある請求項1〜4のいずれか1項記載のケーブルクランプ構造。
【請求項6】
前記スペーサー部材は、前記クランプ部材をケーブル径方向から嵌入可能なクランプ嵌入部を備えている請求項1〜5のいずれか1項記載のケーブルクランプ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−27158(P2013−27158A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159877(P2011−159877)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】