説明

ケーブル保持構造及び画像形成装置

【課題】ケーブルによって接続された電子部品間の相対的位置が変化しても、ケーブルを交換したり、中継基板等を設けたりする必要のないケーブル保持構造を提供する。
【解決手段】互いに複数の位置関係に配設することが可能な第1の電子部品と第2の電子部品との間で接続されるケーブル2を保持するケーブル保持構造において、第1の電子部品と第2の電子部品との位置関係に応じて、ケーブル2を保持する向きと位置の少なくとも一方を変更可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に設けられた電子部品同士を接続するケーブルの保持構造、及びそのケーブル保持構造を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置などの電子機器において、電子部品相互間を電気的に接続する方法としては、フラットケーブルなどのケーブルを用いる方法が一般的である。例えば、特許文献1に、フラットケーブルの配線作業の作業性を向上させるための技術が提案されている。
【0003】
具体的には、ケーブルの配線経路上に、ケーブルを収容する開閉可能なケーブルケース部と、ケーブルに取り付けられたノイズ抑制部材としてのフェライトコアを収容する開閉可能なコアケース部を設ける。そして、配線作業時に、各ケース部を開いた状態にし、ケーブルをケーブルケース部に収容すると共にフェライトコアをコアケース部に収容した後、各ケース部を閉じることで、容易にケーブルとフェライトコアを所定の位置に取り付けることができる。
【0004】
ところで、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置には、種々のオプションユニットを装置本体に増設し、様々な複合機能を付与できるものがある。例えば、プリンタとその上方に配設されたスキャナとの間の排紙空間に、第2の排紙トレイとしての1ビントレイオプション装置を増設することで、混在させたくない用紙を振り分けて積載することができるようになる。
【0005】
また、この種の画像形成装置において、スキャナの高さを調整可能に構成することで、オプションユニットを増設しない場合は、スキャナを低い位置に配設しておくことにより、装置全体の高さを抑えることが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようにスキャナの高さを調整可能に構成された装置では、スキャナの高さを変更すると、スキャナ内に設けられた電子部品とプリンタや電装ボックスなどに設けられた電子部品との相対的距離が変化するため、スキャナの高さ調整に応じてこれらを接続するケーブルの長さを変える必要が生じる。通常、ケーブルを交換するには、プリンタやスキャナを一旦分解しなければならないため、その作業に多くの手間と時間を要する。また、中継コネクタや中継基板を設けてケーブルを延長することにより対応する方法もあるが、この場合は、コストアップの他、信号接点が増えることによる信号劣化やノイズ増大などの問題が生じる。
【0007】
また、特許文献1に記載のケーブルの配線方法を用いたとしても、上記と同様に、ケーブルの交換作業、あるいは中継基板等の接続作業を行う必要があり、作業性が良くないといった問題や、コストアップ、ノイズ増大等の問題がある。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑み、ケーブルによって接続された電子部品間の相対的位置が変化しても、ケーブルを交換したり、中継基板等を設けたりする必要のないケーブル保持構造、及びそれを用いた画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、互いに複数の位置関係に配設することが可能な第1の電子部品と第2の電子部品との間で接続されるケーブルを保持するケーブル保持構造において、前記第1の電子部品と前記第2の電子部品との位置関係に応じて、前記ケーブルを保持する向きと位置の少なくとも一方を変更可能に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1の電子部品と第2の電子部品の位置関係に応じて、ケーブルを保持する向きと位置の少なくとも一方を変更することで、ケーブルを交換したり、中継基板等を設けたりすることなく、ケーブルを適切な向き又は位置で保持することができるようになる。このように、本発明によれば、ケーブルの交換作業や中継基板等の付設作業を行わなくてもよいので、作業性が向上し、その作業時間を短縮することができる。また、交換用のケーブルや中継基板等を用意する必要がないため、低コストで作業を行うことが可能である。さらに、中継基板等を介してケーブルを接続しなくてよいので、これによる信号劣化やノイズ増大などの問題も生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の一形態に係る画像形成装置としての複合機の概略図である。
【図2】前記複写機に1ビントレイオプション装置を増設した状態の概略図である。
【図3】1ビントレイオプション装置を装着していない状態での前記複写機の背面側の概略断面図である。
【図4】1ビントレイオプション装置を装着した状態での前記複写機の背面側の概略断面図である。
【図5】スキャナ部内の読取ユニットへのケーブルの接続状態を示す図である。
【図6】取付部材を第1の位置で保持した状態のケーブル保持手段の拡大断面図である。
【図7】取付部材を第2の位置で保持した状態のケーブル保持手段の拡大断面図である。
【図8】取付部材の斜視図である
【図9】取付部材を第1の位置で保持した場合の斜視図である。
【図10】取付部材を第2の位置で保持した場合の斜視図である。
【図11】保持部材の斜視図である。
【図12】電装ボックスの取付部の斜視図である。
【図13】スキャナ部を組み付ける際のケーブルの配線処理方法を説明するための図である。
【図14】スキャナ部を組み付ける際のケーブルの配線処理方法を説明するための図である。
【図15】取付部材を第1の位置で保持した状態で、1ビントレイオプション装置を装着していない状態を示す図である。
【図16】取付部材を常に第1の位置で保持した状態で、1ビントレイオプション装置を装着した状態を示す図である。
【図17】取付部材を第2の位置で保持した状態で、1ビントレイオプション装置を装着していない状態を示す図である。
【図18】取付部材を第2の位置で保持した状態で、1ビントレイオプション装置を装着した状態を示す図である。
【図19】ケーブル保持手段の他の実施形態の構成を示す図である。
【図20】ケーブル保持手段のさらに別の実施形態の構成を示す図である。
【図21】ケーブル保持手段で他のケーブルを保持した状態を示す図である。
【図22】ケーブル保持手段で他のケーブルを保持していない状態を示す図である。
【図23】フラットケーブルを折り畳み可能に構成した例を示す図である。
【図24】ケーブル保持手段の配設箇所を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置としての複合機(MFP)の概略図である。
図1に示すように、この複合機1は、用紙やOHPフィルム等の記録媒体に画像を形成する画像形成部としてのプリンタ部100と、このプリンタ部100の上方に配設された画像読取部としてのスキャナ部200とを備える。プリンタ部100では、スキャナ200部で読み取られた原稿の画像、又は外部のパーソナルコンピュータ、ファクシミリなどから入力された画像情報に基づき、記録媒体に画像を形成する。そして、画像が形成された記録媒体は、プリンタ部100とスキャナ部200との間に設けられている胴内排紙部300に排出されるようになっている。また、プリンタ部100の背面側(図1の手前側)には、制御基板等を収容した電装ボックス400が設けられている。
【0014】
また、図2に示すように、複写機1は、プリンタ部100とスキャナ部200との間に、追加オプションユニットとしての1ビントレイオプション装置500を装着できるように構成されている。ここでは、スキャナ部200の高さ(配設位置)を高くし、スキャナ部200とプリンタ部100との間を拡張することで、これらの間に1ビントレイオプション装置500を装着できるようにしている。この1ビントレイオプション装置500を装着することで、胴内排紙部300に複数の排紙先を設けることできる。そして、これらの排紙先に選択的に排紙することにより、複写又はプリンタ出力用紙とファクシミリ受信の用紙とが混在しないようにすることができるようになる。一方、1ビントレイオプション装置500が必要ない場合は、図1に示すように、スキャナ部200の高さ(配設位置)を低くすることで、装置全体の高さを抑え省スペース化できるようになっている。
【0015】
図3と図4に、本実施形態に係る複写機の背面側の概略断面図を示す。特に、図3は、1ビントレイオプション装置を装着していない状態を示し、図4は、1ビントレイオプション装置を装着している状態を示している。
図3及び図4において、符号2は、スキャナ部200内に収容されている電子部品と、電装ボックス400内に収容されている電子部品とを接続しているケーブルである。
【0016】
詳しくは、ケーブル2の一端は、図5に示すように、スキャナ部200内に設けられた読取ユニット(キャリッジ)20を構成する電子部品に接続されている。図5(a)〜(c)に示すように、読取ユニット20は、スキャナ部200内を水平方向に移動しつつ、コンタクトガラス22の上に載置された原稿5の画像情報を読み取る。このとき、ケーブル2を介して、読取ユニット20で読み取った画像情報の伝達や、読取ユニット20の図示しない駆動モータへの電力供給などが行われる。
【0017】
また、ケーブル2は、読取ユニット20の移動に追従する際にその移動を邪魔しないようにスキャナ部200の底面に固定されている。そして、ケーブル2の他端は、スキャナ部200に設けられたケーブル通過口21(図3又は図4参照)から外部へ出され、電装ボックス400内に配設された電子部品としての制御基板40にコネクタ41を介して接続されている。また、ケーブル2は、電装ボックス400の上面に設けられたケーブル保持手段(ケーブル保持構造)3によって保持されている。
【0018】
図6と図7に、上記ケーブル保持手段の拡大断面図を示す。
図6又は図7に示すように、ケーブル保持手段3は、ケーブル2に取り付けられる取付部材4と、その取付部材4を保持する保持部材6とを備える。取付部材4は、図6に示すように斜めに配設された第1の位置、又は図7に示すように鉛直方向に配設された第2の位置で、保持されるようになっている。一方、保持部材6は、電装ボックス400の上面に固定して取り付けられている。
【0019】
続いて、図8〜図12に基づいて、取付部材4、保持部材6、及び支持部材6を取り付ける電装ボックス400の取付部の構成について詳しく説明する。
図8は、取付部材の斜視図、図9は、取付部材を上記第1の位置で保持した場合の斜視図、図10は、取付部材を上記第2の位置で保持した場合の斜視図、図11は、保持部材の斜視図、図12は、電装ボックスの取付部の斜視図である。
【0020】
図8に示すように、取付部材4は、その中央部にケーブル挿通孔4aが形成されたフェライトコアである。フェライトコアは、ケーブル2に生じる電気的ノイズを抑制するものであり、ケーブル挿通孔4aにケーブル2を挿通することによってフェライトコア(取付部材4)がケーブル2に取り付けられる。また、本実施形態では、ケーブル2を、絶縁性樹脂により芯線を被覆して成るリード線(ハーネス)を複数並列させて纏めたフラットケーブルとしている。
【0021】
フェライトコアによるノイズ抑制効果をより良く発揮させるには、フェライトコアと上記制御基板40に設けたコネクタ41との距離が近い方がよい。そのため、本実施形態では、図3に示すように、制御基板40を電装ボックス400の上部側へ配設し、さらに、コネクタ41を制御基板40の上部側に配設することで、コネクタ41とフェライトコア(取付部材4)との距離をなるべく近づけるようにしている。また、本実施形態では、フェライトコア(取付部材4)が保持部材6によって保持され、その位置が不測に変動することがないので、安定した性能の発揮が可能である。
【0022】
保持部材6は、図9に示す第1の位置と図10に示す第2の位置とで、取付部材4の向きと位置を異ならせ取付部材4を保持可能な2つの保持部C,Dを有する。具体的に、第1の位置で取付部材4を保持する第1の保持部Cには、一対の上部ガイド11a,11bと、一対の下部ガイド12a,12bと、一対の爪13a,13bと、一対の受け部14a,14b(図11参照)が設けられている。一対の上部ガイド11a,11bは、保持部材6の一対の側面部7a、7bに設けられ、一対の下部ガイド12a,12bは、保持部材6の底面部8に設けられている。図9において、保持部材6の図の左手前側を正面側とし、反対側の図の右奥側を背面側とすると、一対の爪13a,13bは、保持部材6の正面側に設けられ、一対の受け部14a,14bは保持部材6の背面側に配設されている。また、ガイド面として機能する上部ガイド11a,11bの下面と下部ガイド12a,12bの上面は、保持部材6を電装ボックス400に取り付けた状態で、それぞれ、水平方向又は鉛直方向に対して傾斜するように配設されている。
【0023】
取付部材4を第1の保持部Cに装着する場合は、取付部材4を、上部ガイド11a,11bと下部ガイド12a,12bとの間に、図9の左手前側から右奥側に向かって挿入する。このとき、取付部材4の挿入方向の先端が一対の爪13a,13bに当接するが、爪13a,13bは弾性変形可能となっているので、取付部材4は爪13a,13bの間を押し広げながら、上部ガイド11a,11bと下部ガイド12a,12bに沿って挿入される。そして、取付部材4の後端が爪13a,13bを通過し、取付部材4の先端が一対の受け部14a,14bに当接した時点で、取付部材4の挿入が停止され、第1の保持部Cへの取付部材4の装着が完了する。
【0024】
一方、第2の位置で取付部材4を保持する第2の保持部Dには、一対の正面側ガイド15a、15bと、一対の背面側ガイド16a,16bと、一対の爪17a,17bと、複数の受け部18a〜18d(図11参照)が設けられている。一対の正面側ガイド15a,15bと一対の背面側ガイド16a,16bは、それぞれ、保持部材6の一対の側面部7a,7bに設けられている。なお、背面側ガイド16a,16bは、保持部材6の背面部9の一部を構成している(図11参照)。また、一対の爪17a,17bは、背面側ガイド16a,16bの上部に設けられている。複数の受け部18a〜18dのうち、図の奥側の2つの受け部18a,18bは背面部9に設けられ、図の手前側の2つの受け部18c,18dは正面側ガイド15a,15bの下端に設けられている。また、ガイド面として機能する正面側ガイド15a,15bと背面側ガイド16a,16bとの互いに対向する面は、保持部材6を電装ボックス400に取り付けた状態で、それぞれ、鉛直方向に配設されている。
【0025】
取付部材4を第2の保持部Dに装着する場合は、取付部材4を、正面側ガイド15a,15bと背面側ガイド16a,16bとの間に、上方から挿入する。このとき、取付部材4の挿入方向の先端が一対の爪17a,17bに当接するが、爪17a,17bは弾性変形可能となっているので、取付部材4は爪17a,17bの間を押し広げながら、正面側ガイド15a,15bと背面側ガイド16a,16bに沿って挿入される。そして、取付部材4の後端が爪17a,17bを通過し、取付部材4の先端が複数の受け部18a〜18dに当接した時点で、取付部材4の挿入が停止され、第2の保持部Dへの取付部材4の装着が完了する。
【0026】
また、図11に示すように、保持部材6の底面部8の背面側には、下方へ突出したケーブル保護部30が設けられている。このケーブル保護部30には、ケーブル2を通過させるためのケーブル通過孔31が形成されている。さらに、保持部材6の背面部9には、ケーブル2をガイドする一対のケーブルガイド32a,32bが設けられている。
【0027】
また、保持部材6の各側面部7a,7bの下部には、それぞれ、保持部材6を電装ボックス400に取り付けるための突片33a,33bが設けられている。各突片33a,33bは、各側面部7a,7bの下部から下方へ突出し、さらに横方向に伸びたL字型に形成されている。また、保持部材6の底面部8の正面側中央には、保持部材6を電装ボックス400に取り付けた際に保持部材6の前後方向の移動を規制する一対の突起部34a,34bが設けられている。
【0028】
一方、図12に示すように、電装ボックス400の上面には、上記突片33a,33bを挿入して固定するための2つの固定孔42a,42bと、上記突起部34a,34bを挿入するための挿入孔43と、上記下方へ突出したケーブル保護部30を挿入するための孔部44とが形成されている。
【0029】
保持部材6を電装ボックス400へ取り付けるには、まず、保持部材6の一対の突片33a,33bを各固定孔42a,42bの幅の広い部分に挿入すると共に、ケーブル保護部30を孔部44に挿入する。なお、この状態で、保持部材6の突起部34a,34bは、電装ボックス400の挿入孔43に挿入されていない。このため、突起部34a,34bは電装ボックス400の上面に当接しており、この当接による反力で保持部材6の底面部8は上方へ多少弾性変形した状態となっている。
【0030】
次いで、保持部材6を背面側へスライドさせ、突片33a,33bを固定孔42a,42bの幅の狭い端部側へ移動させる。そして、突片33a,33bの背面側の端部35a,35b(図11参照)が、固定孔42a,42bの幅の狭い端部45a,45b(図12参照)に突き当たることで、突片33a,33bが固定孔42a,42bに固定される。この状態で、突片33a,33bの横方向へ伸びる部分が電装ボックス400の上面と干渉するようになるため、突片33a,33bの上方への抜けが防止される。
【0031】
また、保持部材6の背面側へのスライド移動に伴い、突起部34a,34bが挿入孔43に挿入される。これにより、保持部材6の前後方向の移動が規制されるようになり、突片33a,33bが固定孔42a,42bの幅の広い部分へ移動して脱落するのが防止される。このようにして、保持部材6の電装ボックス400への取付が完了する。
【0032】
また、図6又は図7に示すように、ケーブル2を挿通させた取付部材4を第1の位置又は第2の位置で保持した状態では、ケーブル2は、保持部材6に設けられたケーブルガイド32a,32bによってガイドされ、ケーブル保護部30に形成されたケーブル通過孔31から電装ボックス400内に挿入される。ここで、ケーブル2に生じるノイズを抑制するには、ケーブル2を金属製の電装ボックス400に接触させずに配設することが重要である。この点、本実施形態では、電装ボックス400内へ挿入されたケーブル保護部30を介してケーブル2を電装ボックス400内に挿入しているため、ケーブル2の電装ボックス400への接触が防止され、ケーブル2に生じるノイズが抑制される。
【0033】
以下、プリンタ部100にスキャナ部200を組み付ける際のケーブル2の配線処理方法について説明する。
図13に示すように、スキャナ部200に接続されたケーブル2は、初め、スキャナ部200のケーブル通過口21から外部へ垂らされた状態(図13の点線で示す状態)で保持されている。そして、その状態で、スキャナ部200をプリンタ部100の上方に組み付けた後、ケーブル2の外部へ垂らされている部分を、保持部材6によって保持された取付部材4へ挿通し、ケーブルガイド32a,32bでガイドしつつ、ケーブル通過孔31から電装ボックス400内へ挿入する。このとき、ケーブル保護部30が電装ボックス400内に挿入されているため、上述のように、ケーブル2を電装ボックス400に接触させることなく這い回すことができる。
【0034】
そして、電装ボックス400内に挿入したケーブル2の端部を、制御基板40に設けられたコネクタ41に接続する。ケーブル2をコネクタ41に接続すると、ケーブル2は、自身が有するコシによって、取付部材4のケーブル挿通孔4aの延伸方向(図13の矢印Aで示す方向)に伸びるような力を受け、スキャナ部200の背面側(図13の左側)で撓んだ状態となる。
【0035】
このままではケーブル2がスキャナ部200の背面側で突出した状態となっているので、図14に示すように、そのケーブル2の突出している部分を、スキャナ部200の背面側に設けられた収納部23に押し込んで収納する。収納部23内に収納されたケーブル2は、そのコシによって、収納部23を形成する壁面に接触又は密着した状態で保持される。このように、ケーブル2が壁面に接触又は密着した状態で保持されることで、ケーブル2同士を接触させずに収納することができ、ケーブル2同士が接触することによるノイズの発生を抑制することができる。なお、図13及び図14に示す例では、収納部23を平面状の壁面で形成しているが、収納部23は連続した曲面などで形成されていてもよい。
【0036】
上述のように、本実施形態では、取付部材4を第1の位置又は第2の位置で保持することができるように構成されているが、図13及び図14に示すプリンタ部100の上方にスキャナ部200を組み付けるときは、取付部材4を斜めに配設した第1の位置で保持する。また、これに限らず、図3に示すように、両者の間に1ビントレイオプション装置500を装着していない基本状態においては、取付部材4を第1の位置で保持するようにする。一方、図4に示すように、1ビントレイオプション装置500を増設した場合は、取付部材4を鉛直方向に向けた第2の位置で保持するようにする。
【0037】
ここで、取付部材4の保持位置を変更しない場合における不具合について説明する。
まず、図15と図16に示すように、1ビントレイオプション装置500を装着するか否かにかかわらず、取付部材4を斜めに配設した第1の位置で保持する場合について説明する。
この場合、図16に示すように、1ビントレイオプション装置500を装着した状態で、取付部材4が斜めに保持されていると、図4に示す取付部材4を鉛直方向に向けて保持する場合に比べて、ケーブル2を長くする必要がある。その結果、図15に示す1ビントレイオプション装置500を装着していない状態では、収納部23内に収納されるケーブル2の弛みが過剰になり、ケーブル2同士が互いに接触してしまう。このように、取付部材4を常に第1の位置で保持する場合は、収納部23内でケーブル2同士が接触することによってノイズが増加するといった不具合が生じる。また、この場合、ケーブル2が長くなること自体もノイズ増加の要因となる。
【0038】
次に、図17と図18に示すように、1ビントレイオプション装置500を装着するか否かにかかわらず、取付部材4を鉛直方向に向けた第2の位置で保持する場合について説明する。
この場合、図18に示すように、1ビントレイオプション装置500を装着した状態では、上記のように取付部材4を斜めに向けて保持する場合に比べて、ケーブル2の長さを短くすることができる。しかし、図17に示すように、1ビントレイオプション装置500を装着していない状態では、ケーブル2を収納部23にうまく収納することができない。このように、取付部材4を常に第2の位置で保持する場合は、収納部23にケーブル2をうまく収納することができず、結果としてケーブル2同士が接触することになるので、これによるノイズ増加の不具合が生じる。また、この場合は、スキャナ部200の組み付け時におけるケーブル2の配線作業も困難となる。
【0039】
以上のように、取付部材4の保持位置を変更しない場合は、いずれの場合もノイズが増加するなどの不具合が発生する。これに対し、図3及び図4に示すように、1ビントレイオプション装置500の有無に応じて取付部材4の保持位置を変更する場合は、ケーブル2の長さを短くすることができ、かつ、ケーブル2同士を接触させずに収納部23に収納することが可能である。
【0040】
すなわち、図4に示すように、1ビントレイオプション装置500を増設した場合は、取付部材4を鉛直方向に向けて保持することで、プリンタ部100とスキャナ部200との間隔を広げた方向にケーブル2を伸ばし、ケーブル2の長さを最短で最適な長さにすることができる。その結果、収納部23内でのケーブル2の弛みが過剰になるのを防止できるようになり、ケーブル2同士が互いに接触した状態で収納されるのを抑制することが可能となる。また、図3に示すように、1ビントレイオプション装置500を装着していない状態では、取付部材4を斜めに向けて保持することで、ケーブル2をそのコシによってスキャナ部200の背面側で撓んだ状態とすることができる(図13参照)。これにより、ケーブル2を収納部23に収納した状態では、ケーブル2同士が互いに接触しないようにすることが可能となる。また、スキャナ部200の組み付け時におけるケーブル2の配線作業も容易となる。
【0041】
また、本実施形態では、図11に示す保持部材6の上部ガイド11a,11b同士の間隔と正面側ガイド15a,15b同士の間隔を、それぞれ、ケーブル2の幅よりも広くしている。このため、取付部材4にケーブル2を挿通させた状態で、その保持位置を第1の位置と第2の位置との間で変更しても、ケーブル2が各ガイドと干渉するのを回避又は抑制することができる。これにより、取付部材4の保持位置を変更する際に、ケーブル2をコネクタ41から外す必要がないので、短時間で容易に取付部材4の保持位置の変更作業を行うことができる。
【0042】
また、同様に、背面側ガイド16a,16b同士の間隔もケーブル2の幅よりも広くなっているので、図3に示すように、取付部材4を第1の位置で保持した場合に、ケーブル2が正面側ガイド15a,15bの間と背面側ガイド16a,16bの間を通ることができる。これにより、ケーブル2の這い回しを省スペースで行うことができ、装置の小型化が可能となる。
【0043】
図19は、上記ケーブル保持手段の他の実施形態の構成を示す図である。
図19(a)〜(c)に示すように、この実施形態では、取付部材4としてのフェライトコアを保持する保持部材6が回動可能に構成されており、さらに、その保持部材6の回動位置を所望の位置で固定する固定手段が設けられている。
【0044】
具体的に、保持部材6の両側面に設けられた各回動軸61,62が、支持部材としての2つの支持板46,47に形成された軸孔に挿通されていることで、保持部材6は回動軸61,62を中心に回動可能となっている。また、本実施形態では、各支持板46,47を、電装ボックス400の上面に形成された開口部内に配設している。
【0045】
また、保持部材6の一方の側面には、保持部材6を回動操作するための摘み63が設けられている。さらに、その摘み63の近傍には、位置固定用の凸部64が設けてある。また、摘み63を設けた側の支持板46には、前記凸部64を嵌め込むことが可能な凹部48が、保持部材6の回動する方向に沿って複数並設されている。すなわち、これらの複数の凹部48のいずれかに凸部64を嵌め込むことで、保持部材6の回動位置を所望の位置で固定できるようになっている(凸部64と凹部48が保持部材6の回動位置を固定する固定手段として機能する)。
【0046】
また、摘み63は、凸部64の突出方向とその反対方向に弾性変形可能に構成されている。これにより、摘み63を凸部64の突出方向とは反対側へ弾性変形させることで、凸部64を凹部48から離脱させて、その嵌め合いを解除することができ、保持部材6を回動させることができるようになる。そして、保持部材6を所望の位置へ回動させた後、摘み63を放すと、その弾性復元力によって凸部64が対応する凹部48に嵌り込み、保持部材6の位置が固定される。
【0047】
また、この構成では、凹部48が3つ以上設けられているので、取付部材4の保持位置を3段階以上に変更することができる。従って、この構成によれば、スキャナ部200の高さが3段階以上に調整可能であって、2種類以上のオプションユニットを増設することが可能な画像形成装置においても、対応がしやすくなる。
【0048】
なお、図19に示す実施形態において、凹部48の個数を2つにし、上記実施形態と同様に、取付部材4の保持位置を2段階のみに変更可能に構成することも可能である。反対に、上記実施形態において、保持部材6が3つ以上の保持部を有するように構成することも可能である。
【0049】
また、図20〜図22に、上記ケーブル保持手段のさらに別の実施形態の構成を示す。
図20に示すように、この実施形態では、上記図19に示す保持部材6に他のケーブルを引っ掛けて保持するためのL字型又はフック状の引っ掛け部65を追加して設けている。それ以外は、図19に示す構成と同様である。
【0050】
図21及び図22に示すように、キャナ部200と電装ボックス400との間で、フラットケーブル2以外のケーブル10が接続されている場合、そのケーブル10の長さは、オプションユニット増設時にスキャナ部200と電装ボックス400との間隔を広げた場合(図22に示す場合)でも、両者間を十分に接続できるだけの長さが必要である。しかし、オプションユニットを装着せず、スキャナ部200と電装ボックス400との間隔が狭い状態(図21に示す状態)では、ケーブル10に弛みが生じる。このときのケーブル10の弛んだ部分を引っ掛け部65で引っ掛けておくことにより、電装ボックス400内でのケーブル10の弛みを防止できる。
【0051】
電装ボックス400内でケーブル10の弛みが生じると、その弛んだ部分が電装ボックス400内の制御基板の近くに配設されることにより、制御基板から放出されるノイズによって画像異常や動作異常が生じる虞がある。また、電装ボックス400内でケーブル10が弛んだ状態で配設されていると、それが電装ボックス400内の部品の交換作業の邪魔になり、作業性が低下することも考えられる。そこで、上記のように、引っ掛け部65によってケーブル10の弛んだ部分を引っ掛けておくことで、電装ボックス400内でケーブル10が弛まないようにすることができ、画像異常や動作異常の発生、作業性の低下を防止できるようになる。
【0052】
一方、図22に示すように、オプションユニットを増設するために、スキャナ部200と電装ボックス400との間隔を広げた場合は、引っ掛け部65によってケーブル10を引っ掛けないことにより、電装ボックス400からスキャナ部200へ向かってケーブル10を伸ばすことができる。
【0053】
なお、引っ掛け部65を設けた保持部材6は、図20に示す構成に限定されるものではない。例えば、図11に示す構成の保持部材6に引っ掛け部65を設けることによっても、上記と同様の作用・効果を得ることができる。また、保持部材6と引っ掛け部65は、一体的に構成されていてもよいし、別体で構成されていてもよい。
【0054】
また、上述の実施形態では、フラットケーブル2を撓ませて収納部23に収納するようにしているが、図23(a)〜(c)に示すように、フラットケーブル2を折り畳み可能に構成することにより、オプションユニット増設時における装置間の間隔の変化に対応するようにしてもよい。
【0055】
以下、上記ケーブル保持手段3の配設箇所について説明する。
図24において、(a)はスキャナ部の概略平面図であり、(b)はその概略側面図である。
本実施形態のスキャナ部200の内部空間は、図24(a)に示すように、読取ユニット20の移動エリア201と、スキャナ部200の上部に設けられた図示しない圧板を開閉させるヒンジ機構を設けるエリア202と、圧板の開閉を検知するための図示しないセンサを配設するエリア203に使用されている。
【0056】
しかし、図24(b)に示すように、ヒンジ機構配設エリア202の間であって、センサ配設エリア203の下方は、デッドスペース(図の斜線で示すエリア)となっている。本実施形態では、このデッドスペースとなっているエリアに、上記ケーブル保持手段3を配設することで、装置の小型化を図っている。
【0057】
以上のように、本発明の上記実施形態によれば、取付部材4の保持位置を変更するだけで、オプションユニットの増設の有無に対応して、ケーブル2を適切な向き又は位置で保持することができる。このため、従来のように、ケーブルを交換したり、中継基板等を設けたりする必要がない。このように、本発明の実施形態によれば、オプションユニットの増設時に、ケーブルの交換作業や中継基板等の付設作業を行わなくてもよいので、オプションユニットの増設作業の作業性が向上し、その作業時間を短縮することができる。また、交換用のケーブルや中継基板等を用意する必要がないため、低コストでオプションユニットの増設を行うことが可能である。さらに、中継基板等を介してケーブルを接続しなくてよいので、これによる信号劣化やノイズ増大などの問題も生じることがない。
【0058】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。例えば、画像形成装置に増設するオプションユニットは、上記1ビントレイオプション装置に限らず、パンチ(穴あけ)機構、ステープラ(綴じ)機構、ソータ(仕分け)機構などの後処理機能を備えたフィニッシャーや、その他のオプションユニットであってもよい。それらのオプションユニットを胴内に増設する場合においても同様の効果を得ることは可能である。
【0059】
また、本発明の構成は、画像形成装置に限らず、その他の電子機器においても適用可能である。すなわち、電子機器が、ケーブルによって接続された第1の電子部品と第2の電子部品を有し、それらが互いに複数の位置関係に配設可能に構成されていれば、本発明の構成を適用することで、ケーブルの交換等を行わずに電子部品間の位置関係に応じたケーブルの保持が可能となる。
【符号の説明】
【0060】
1 複合機
2 ケーブル(フラットケーブル)
3 ケーブル保持手段
4 取付部材(フェライトコア)
6 保持部材
10 ケーブル
23 収納部
65 引っ掛け部
100 プリンタ部
200 スキャナ部
400 電装ボックス
500 1ビントレイオプション装置(オプションユニット)
C 第1の保持部
D 第2の保持部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特開2007−317776号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに複数の位置関係に配設することが可能な第1の電子部品と第2の電子部品との間で接続されるケーブルを保持するケーブル保持構造において、
前記第1の電子部品と前記第2の電子部品との位置関係に応じて、前記ケーブルを保持する向きと位置の少なくとも一方を変更可能に構成したことを特徴とするケーブル保持構造。
【請求項2】
前記ケーブルに取り付けられる取付部材と、
前記取付部材を保持する保持部材とを備え、
前記保持部材は、前記第1の電子部品と前記第2の電子部品との位置関係に応じて、前記取付部材の向きと位置の少なくとも一方を変更して保持可能に構成された請求項1に記載のケーブル保持構造。
【請求項3】
前記保持部材は、前記取付部材を保持可能な複数の保持部を有する請求項2に記載のケーブル保持構造。
【請求項4】
前記保持部材を回動可能に構成し、当該保持部材の回動位置を所望の位置で固定する固定手段を設けた請求項2に記載のケーブル保持構造。
【請求項5】
前記取付部材がフェライトコアである請求項2から4のいずれか1項に記載のケーブル保持構造。
【請求項6】
前記保持部材に他のケーブルを引っ掛けて保持する引っ掛け部を設けた請求項2から5のいずれか1項に記載のケーブル保持構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のケーブル保持構造を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
スキャナ部とプリンタ部とを備え、前記スキャナ部と前記プリンタ部との間隔を広げることでそれらの間にオプションユニットを配設可能に構成された画像形成装置であって、
前記スキャナ部と前記プリンタ部との間隔の変化に伴って互いの相対的位置が変化する第1の電子部品と第2の電子部品との間を接続するケーブルの保持構造に、請求項1から6のいずれか1項に記載のケーブル保持構造を用いた請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記スキャナ部と前記プリンタ部との間隔を広げた場合、その間隔の広げた方向に前記ケーブルが伸びるようにケーブルを保持するようにした請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記ケーブルを収納可能な収納部を設け、
前記スキャナ部と前記プリンタ部との間隔を狭くした場合、ケーブルの撓んだ部分を互いに接触させずに前記収納部に収納できるようにケーブルを保持するようにした請求項8又は9に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−54225(P2013−54225A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192769(P2011−192769)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】