説明

ケーブル牽引端末構造及び光ケーブル

【課題】ケーブル牽引端末構造9の部品点数を減らして、ケーブル牽引端末構造9の構成の簡略化及びケーブル牽引端末構造9の製造コストの低減化を図る。
【解決手段】
保持具13に光ファイバの導出部分を挿通可能な光ファイバ挿通穴17が形成され、保持具13にテンションメンバ5の導出部分を挿入可能なテンションメンバ挿入穴19が形成され、保持具13外周面におけるテンションメンバ挿入穴19の外側にテンションメンバ5の導出部分をかしめる薄肉部21が形成され、保持具13の先端側に保護チューブ25が螺合して設けられ、保護チューブ25の先端側に被牽引具33が螺合して設けられたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末から光ファイバ及びテンションメンバを導出してなる光ケーブルを牽引部材によって牽引する際に用いられるケーブル牽引端末構造等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ファイバを利用した光通信技術の発達に伴い、光ケーブルにおけるケーブル牽引端末構造について種々の開発がなされており、ケーブル牽引端末構造の先行技術として特許文献1に示すもがある。そして、先行技術に係るケーブル牽引端末構造の構成等について簡単に説明すると、次のようになる。
【0003】
即ち、光ケーブルの端末側には、保持具(特許文献1における円筒部材(11))が保持するように設けられている。また、保持具の先端側には、保護チューブ(特許文献1における可撓性チューブ(16))が設けられており、この保護チューブは、可撓性を有してあって、光ファイバの導出部分及びテンションメンバの導出部分を収納するものである。そして、保護チューブの先端側には、被牽引具(特許文献1におけるエンドキャップ(12))が設けられており、この被牽引具には、テンションメンバの導出部分が一体的に固定されてあって、先端側に、牽引ロープ(牽引部材の一例)の先端部と連結可能な連結部(特許文献1におけるアイナット(15))を備えている。
【0004】
従って、牽引ロープの先端部を被牽引具の連結部に連結して、ウインチ等の巻取り機の駆動により牽引ロープを巻取ることにより、牽引ロープの牽引力を被牽引具からテンションメンバに直接伝達させつつ、光ケーブルを所定の牽引方向へ牽引する。これにより、巻取り機に離隔した位置に配設されたケーブルドラムから光ケーブルを引き出して、所定の布設箇所に布設することができる。
【0005】
なお、本発明に関連する先行技術としては、特許文献1の他に、特許文献2及び特許文献3に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−321473号公報
【特許文献2】特開2002−333561号公報
【特許文献3】特開平9−197183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光ケーブルの牽引中において、テンションメンバの導出部分との干渉による光ファイバの導出部分の損傷を防止するには、光ファイバの導出部分を案内する光ファイバガイド部(特許文献1における溝部(80))及びテンションメンバの導出部分を案内するテンションメンバガイド部(特許文献1における貫通孔(81))を備えた干渉回避部材(特許文献1における円柱状の弾性部材(8))を保護チューブの内側に配設することが必要である。そのため、ケーブル牽引端末構造の部品点数が増えて、ケーブル牽引端末構造の製造コストの増大を招くという大きな問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成のケーブル牽引端末構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の端末側の特徴(請求項1に記載の発明に特徴)は、端末から光ファイバ及びテンションメンバを導出してなる光ケーブルを牽引部材によって牽引する際に用いられるケーブル牽引端末構造において、前記光ケーブルの端末側に保持するように設けられ、外周面にねじ部(例えば保持具用雄ねじ部)が形成され、前記光ファイバの導出部分を挿通可能な光ファイバ挿通穴が形成され、前記テンションメンバの導出部分を挿入可能なテンションメンバ挿入部が形成され、外周面における前記テンションメンバ挿入部の外側に前記テンションメンバの導出部分をかしめる薄肉部が形成された保持具と、内周面に前記保持具のねじ部(例えば雌ねじ部)に螺合可能なねじ部が形成され、前記保持具の先端側に螺合して設けられ、前記光ファイバの導出部分を収納する可撓性を有する保護チューブと、外周面に前記保護チューブのねじ部に螺合可能なねじ部(例えば牽引具用雄ねじ部)が形成され、前記保護チューブの先端側に螺合して設けられ、先端側に前記牽引部材を備えた被牽引具と、を具備したことを要旨とする。
【0010】
第1の特徴によると、前記牽引部材を前記被牽引具の前記連結部に連結して、巻取り機の駆動により前記牽引部材を巻取ることにより、前記牽引部材の牽引力を前記保護チューブから前記連結部に対して直接、或いは前記保護チューブから前記保持具の前記薄肉部を経由して前記テンションメンバに伝達させつつ、前記光ケーブルを所定の牽引方向へ牽引する。これにより、前記巻取り機に離隔した位置に配設された前記ケーブルドラムから前記光ケーブルを引き出して、所定の布設箇所に布設することができる。
【0011】
ここで、前記保持具の前記テンションメンバ挿入部に前記テンションメンバの導出部分を挿入した状態で、前記保持具の前記薄肉部によって前記テンションメンバの導出部分をかしめているために、前記テンションメンバ挿入部の対応部分が塑性変形して潰されて、前記テンションメンバの導出部分の長手方向途中が前記テンションメンバ挿入部の内壁に挟み込まれた状態となり、換言すれば、前記テンションメンバが前記テンションメンバ挿入部に機械的強固に挟持されることなる。これにより、大きな牽引力(例えば数百kg以上の牽引力)が掛かっても前記保持具が前記光ケーブルから抜け出すことがなくなる。
【0012】
前記光ケーブルの敷設完了後に、前記光ケーブルの端末側から前記保護チューブを取り外して、前記光ケーブルを相手側の光ケーブルに光接続させる。
【0013】
本発明の第2の特徴(請求項2に記載の発明の特徴)は、端末側の特徴に加えて、前記保護チューブは、内周面にねじ部が形成されかつ金属製のインナーチューブ、及び前記インナーチューブの外周面に設けられた樹脂製の保護層を備えたことを要旨とする。
【0014】
本発明の第3の特徴(請求項3に記載の発明の特徴)は、第1の特徴又は第2の特徴に加えて、前記光ケーブルの前記光ファイバ収納部の両側に2本の前記テンションメンバが配設されていることを要旨とする。
【0015】
本発明の第4の特徴(請求項4に記載の発明の特徴)は、光ケーブルにおいて、第1の特徴から第3の特徴のうちのいずれかの特徴からなるケーブル牽引端末構造を具備したことを要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前記ケーブル牽引端末構造の部品点数を減らして、前記ケーブル牽引端末構造の製造コストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るケーブル牽引端末構造を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るケーブル牽引端末構造における保持具の周辺拡大図である。
【図3】図2におけるIII-III線に沿った断面図である。
【図4】図3における矢視部IVの拡大図である。
【図5】図2におけるV-V線に沿った図であって、光ファイバ及びテンションメンバは省略してある。
【図6】図2におけるVI-VI線に沿った断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るケーブル牽引端末構造における被牽引具の周辺の拡大図である。
【図8】本発明の実施形態に係る光ケーブルの断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係るケーブル牽引端末構造における別態様の保持具の周辺拡大図である。
【図10】本発明の実施形態に係るケーブル牽引端末構造における別態様の保持具の周辺拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る光ケーブルの一般的な構成、本発明の実施形態に係るケーブル牽引端末構造の構成について図1から図10を参照して順次説明する。
【0019】
図8に示すように、本発明の実施形態に係る光ケーブル1は、光ファイバ(図示省略)が配列された光ファイバ収納部3の両側に2本のテンションメンバ(鋼線等)5を沿わせた構造であって、シース7の外周面両側にテンションメンバ5がそれぞれ埋設されており、換言すれば、光ファイバ収納部3の両側には、一対のテンションメンバ5が左右対称的に配設されている。ここで、図3に示すように、光ケーブル1にあっては、光ファイバ及び一対のテンションメンバ5を光ケーブル1の端末から導出している。
【0020】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るケーブル牽引端末構造9は、光ケーブル1を牽引ロープ11(牽引部材の一例)によって牽引する際に用いられる構造であって、光ケーブル1の端末に設けられている。そして、ケーブル牽引端末構造9の具体的な構成は、次のようになる。
【0021】
図1から図3に示すように、光ケーブル1の端末側には、ステンレス等の金属製の保持具13が保持するように設けられており、この保持具13の外周面(保持具13の中空軸部13aの外周面)には、ねじ部(例えば保持具用雄ねじ部)15が形成されている。また、保持具13の端面の中央には、光ファイバの導出部分を挿通可能な大径の光ファイバ挿通穴17がケーブル軸方向Dに沿って貫通して形成されており、保持具13の端面における光ファイバ挿通穴17の両側には、テンションメンバ5を挿入可能かつ光ファイバ挿通穴17よりも小径の一対のテンションメンバ挿入穴(テンションメンバ挿入部)19がケーブル軸方向Dに沿って形成されている(図5参照)。そして、保持具13の外周面における各テンションメンバ挿入穴19の外側には、図4に示すように、テンションメンバ5の導出部分を塑性変形によってかしめる薄肉部21がそれぞれ凹状に形成されており(図6参照)、各薄肉部21の形成箇所は、保持具13の中空軸部13aであって、ねじ部15よりも幾分か基端寄りである。更に、保持具13の中空軸部13aと基部13bの境界には、環状の段差部23が形成されている。
【0022】
なお、各薄肉部21の形成箇所を、保持具13の中空軸部13aにおけるねじ部15よりも幾分か基端寄りにする代わりに、図9に示すように、保持具13の中空軸部13aにおけるねじ部15よりも幾分か先端寄りにしたり、図10に示すように、保持具13の基部13bにしたりしても構わない。
【0023】
図1及び図2に示すように、保持具13の先端側には、可撓性を有する保護チューブ25が螺合して設けられており、この保護チューブ25は、光ファイバの導出部分を収納するものである。そして、保護チューブ25は、ステンレス等の金属製のインナーチューブ27を備えており、このインナーチューブ27の内側には、保持具13のねじ部15に螺合可能なねじ部(例えば雌ねじ部)29が形成されている。また、インナーチューブ27の外周面には、塩化ビニール等の樹脂製の保護層31が形成されている。なお、保護チューブ25の基端面(光ケーブル1側)は、保護チューブ25と保持具13を繋いだ際に、保持具13の段差部23に対して圧接して保護チューブ25内部を封止(防水)するようになっている。
【0024】
図1及び図7に示すように、保護チューブ25の先端側には、ステンレス等の金属製の被牽引具33が螺合して設けられている。また、被牽引具33の外周面(被牽引具33の中空軸部33aの外周面)には、保護チューブ25のねじ部29に螺合可能なねじ部(例えば被牽引具用雄ねじ部)35が設けられており、この被牽引具33の中空軸部33aと基部33bの境界には、保護チューブ25の先端面を圧接可能な段差部37が形成されている。そして、被牽引具33の先端部には、取付ねじ39が一体的に設けられており、この取付ねじ39には、牽引ロープ11に連結可能なアイナット(連結部)41が螺合して設けられている。換言すれば、被牽引具33は、先端側に、牽引ロープ11に連結可能なアイナット41を備えている。
【0025】
なお、保持具13の外周面とシースの外周面との境界付近、保持具13の外周面と保護チューブ25の外周面との境界付近、及び保護チューブの外周面と被牽引具33の外周面との境界付近には、防水テープ(図示省略)がそれぞれ巻き付けられて防水構造をなしている。
【0026】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0027】
牽引ロープ11を被牽引具33のアイナット41に連結して、ウインチ等の巻取り機(図示省略)の駆動により牽引ロープ11を巻取ることにより、牽引ロープ11の牽引力を被牽引具33から保護チューブ25及び保持具13の薄肉部21を経由してテンションメンバ5に伝達させつつ、光ケーブル1を所定の牽引方向へ牽引する。これにより、巻取り機に離隔した位置に配設されたケーブルドラム(図示省略)から光ケーブル1を引き出して、所定の布設箇所に布設することができる。
【0028】
テンションメンバ5の固定構造について詳しく説明する。
【0029】
保持具13のテンションメンバ挿入穴19にテンションメンバ5の導出部分を収納した状態で、保持具13の2箇所の両薄肉部21を押圧すると、その部分のテンションメンバ挿入穴19が塑性変形して潰されることにより、薄肉部21の内側を通過するテンションメンバ5の長手方向途中がテンションメンバ挿入穴19の内壁に挟み込まれた状態となり、換言すれば、テンションメンバ5がテンションメンバ挿入穴19に機械的強固に挟持されることなる。これにより、大きな牽引力(例えば数百kg以上の牽引力)が掛かっても保持具13が光ケーブル1から抜け出すことがなくなる。
【0030】
また、テンションメンバ5の先端は、保持具13の先端から突出しないように切断されているので、ケーブル牽引端末構造9の内側で、テンションメンバ5が突出して光ファイバの導出部分の損傷を与えることはない。
【0031】
光ケーブル1の敷設完了後に、光ケーブル1の端末側から保護チューブ25を取り外して、光ケーブル1を相手側の光ケーブルに光接続させる。
【0032】
ここで、保持具13の先端側に保護チューブ25が螺合して設けられ、保護チューブ25の先端側に被牽引具33が螺合して設けられ、前述のように、保持具13の薄肉部21によってテンションメンバ5の導出部分をかしめ固定しているため、保護チューブ25のねじ部29と被牽引具33のねじ部35との螺合状態、保護チューブ25のねじ部29と保持具13のねじ部15との螺合状態をそれぞれ解除する。換言すれば、テンションメンバ5の導出部分の一部を切断することなく、保護チューブ25を含めたケーブル牽引端末構造9を光ケーブル1から取り外すことができる。
【0033】
従って、本発明の実施形態によれば、ケーブル牽引端末構造9の部品点数を減らして、ケーブル牽引端末構造9の構成の簡略化及びケーブル牽引端末構造9の製造コストの低減化を図ることができる。
【0034】
また、テンションメンバ5の導出部分の一部を切断することなく、保護チューブ25を光ケーブル1の端末側から取り外すことができるため、再度、テンションメンバ口出し等の端末加工作業をする必要がなくなり、ケーブル1の光接続作業の煩雑化を抑えて、光ケーブル1の光接続作業の能率を十分に高めることができる。
【0035】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、その他、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0036】
1 光ケーブル
3 光ファイバ収納部
5 テンションメンバ
9 ケーブル牽引端末構造
11 牽引ロープ(牽引部材)
13 保持具
13a 中空軸部
13b 基部
15 ねじ部
17 光ファイバ挿通穴
19 テンションメンバ挿入穴
21 薄肉部
25 保護チューブ
27 インナーチューブ
29 ねじ部
31 保護層
33 被牽引具
33a 中空軸部
33b 基部
35 ねじ部
41 アイナット(連結部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末から光ファイバ及びテンションメンバを導出してなる光ケーブルを牽引部材によって牽引する際に用いられるケーブル牽引端末構造において、
前記光ケーブルの端末側に保持するように設けられ、外周面にねじ部が形成され、前記光ファイバの導出部分を挿通可能な光ファイバ挿通穴が形成され、前記テンションメンバの導出部分を挿入可能な2本のテンションメンバ挿入部が形成され、外周面における前記テンションメンバ挿入部の外側に前記テンションメンバの導出部分をかしめる薄肉部が形成された保持具と、
内周面に前記保持具のねじ部に螺合可能なねじ部が形成され、前記保持具の先端側に螺合して設けられ、前記光ファイバの導出部分を収納する可撓性を有する保護チューブと、
外周面に前記保護チューブのねじ部に螺合可能なねじ部が形成され、前記保護チューブの先端側に螺合して設けられ、先端側に前記牽引部材と連結可能な連結部を備えた被牽引具と、
を具備したことを特徴とするケーブル牽引端末構造。
【請求項2】
前記保護チューブは、内周面にねじ部が形成されかつ金属製のインナーチューブ、及び前記インナーチューブの外周面に設けられた樹脂製の保護層を備えたことを特徴とする請求項1に記載のケーブル牽引端末構造。
【請求項3】
前記光ケーブルの前記光ファイバ収納部の両側に2本の前記テンションメンバが配設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のケーブル牽引端末構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載のケーブル牽引端末構造を具備したことを特徴とする光ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−217316(P2010−217316A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61582(P2009−61582)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】