説明

ケーブル製造方法およびケーブル製造装置

【課題】複数の線材相互間に対し、張力制御を行うことで適正な張力差を確保する。
【解決手段】1本の光ファイバ心線3と2本の抗張力体13を、第1押出被覆機33で押し出し被覆してファイバ側被覆線19を製造する一方、1本の鋼線からなる支持線7を第2押出被覆機35で押し出し被覆して支持側被覆線21を製造する。ファイバ側被覆線19と支持側被覆線21とを第3押出被覆機53で押し出し被覆して光ファイバケーブル1が完成する。支持側被覆線21はファイバ側被覆線19よりも張力を高くした状態で第3押出被覆機53に送り込む。この張力差を一定に保つように第1、第2張力計49、59により張力を常時監視し、張力差が変動したら、第1引取キャプスタン37によるファイバ側被覆線19の送り速度を変化させて対応する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の線材を被覆材により被覆することで一体化してケーブルを製造するにあたり、被覆材により被覆して一体化する際の複数の線材の張力を互いに異なるものとするケーブル製造方法およびケーブル製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光ファイバに鋼線からなる支持線を添えて被覆材により一体化した自己支持型の光ファイバケーブルが知られている。このような自己支持型の光ファイバケーブルは、架設時に付加される張力を主に支持線に負担させることで、光ファイバへの負担を軽減し、光ファイバケーブルとしてその伝送特性、長期信頼性を確保している。
【0003】
その際、下記特許文献1に記載のものは、光ファイバと支持線とを被覆材により一体化するにあたり、光ファイバを押出被覆機に送り込む速度を、支持線を押出被覆機に送り込む速度およびこれらを押出被覆機から引き出す速度よりも速くしている。これにより、架設時に光ファイバに生じる伸び歪に大きさの等しい圧縮歪が生じるように光ファイバを圧縮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−75968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した従来の光ファイバケーブルの製造方法では、光ファイバを押出被覆機に送り込む速度が、支持線を押出被覆機に送り込む速度よりも速くなるように、コントローラによって制御しているが、単に送り込む速度を制御しているだけであって、送り込む前の光ファイバおよび支持線からなる各線材の張力を監視して張力制御を行っていない。このため、線材相互間に適正な張力差を持たせることは極めて困難となっている。
【0006】
そこで、本発明は、複数の線材相互間に対し、張力制御を行うことで適正な張力差を確保することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、第1の線材および第2の線材を被覆材により被覆することで一体化してケーブルを製造するにあたり、前記被覆材により被覆して一体化する際の前記第1、第2の各線材の張力を互いに異なるものとするケーブル製造方法であって、前記第1、第2の各線材の張力をそれぞれ検出し、これら各線材の張力があらかじめ設定した張力差からずれたときに、前記第1、第2の各線材のうち一方の前記被覆材を被覆する工程への送り速度を変化させて、前記張力差をあらかじめ設定した値とすることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、第1の線材および第2の線材を、それぞれ個別に内層被覆材により被覆して第1の被覆線および第2の被覆線とし、これら第1、第2の各被覆線を、さらに外層被覆材により被覆することで一体化してケーブルを製造するにあたり、前記外層被覆材により被覆して一体化する際の前記第1、第2の各被覆線の張力を互いに異なるものとするケーブル製造方法であって、前記第1、第2の各被覆線の張力をそれぞれ検出し、この検出した各被覆線の張力があらかじめ設定した張力差からずれたときに、前記第1、第2の各被覆線のうち一方の前記外層被覆材を被覆する工程への送り速度を変化させて、前記張力差をあらかじめ設定した値とすることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のケーブル製造方法であって、前記第1、第2の各線材のうち一方は光ファイバを含み、他方は、製造後のケーブルを架設時に支持させるための支持線を含み、前記被覆材により被覆することで一体化する際の張力を、前記光ファイバ側よりも前記支持線側で高く設定することを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、第1の線材および第2の線材を被覆材により被覆することで一体化してケーブルを製造するにあたり、前記被覆材により被覆して一体化する際の前記第1、第2の各線材の張力を互いに異なるものとするケーブル製造装置であって、前記第1、第2の各線材のうち一方の前記被覆材を被覆する工程への送り速度を変化させる送り速度可変手段と、前記第1、第2の各線材の張力をそれぞれ検出する第1、第2張力検出手段と、この第1、第2張力検出手段が検出する各線材の張力があらかじめ設定した張力差からずれたときに、このずれを補正するように、前記送り速度可変手段を、前記一方の線材の前記被覆材を被覆する工程への送り速度が変化するよう制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、第1の線材および第2の線材をそれぞれ個別に内層被覆材により被覆して形成した第1の被覆線および第2の被覆線を、さらに外層被覆材により被覆することで一体化してケーブルを製造するにあたり、前記外層被覆材により被覆して一体化する際の前記第1、第2の各被覆線相互間の張力を互いに異なるものとするケーブル製造装置であって、前記第1、第2の各被覆線のうち一方の前記外層被覆材を被覆する工程への送り速度を変化させる送り速度可変手段と、前記第1、第2の各被覆線の張力をそれぞれ検出する第1、第2張力検出手段と、この第1、第2張力検出手段が検出する各被覆線の張力があらかじめ設定した張力差からずれたときに、このずれを補正するように、前記送り速度可変手段を、前記一方の被覆線の前記外層被覆材を被覆する工程への送り速度が変化するよう制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1、第2の各線材の張力をそれぞれ検出し、これら各線材の張力があらかじめ設定した張力差からずれたときに、第1、第2の各線材のうち一方の被覆材を被覆する工程への送り速度を、設定した張力差となるよう変化させるようにしたので、線材相互間に対して適正な張力差を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係わるケーブル製造装置の全体構成図である。
【図2】図1のケーブル製造装置により製造する光ファイバケーブルの一例を示す断面図である。
【図3】図1のケーブル製造装置における張力制御を行うための制御ブロック図である。
【図4】図3の制御ブロック図における制御回路の制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0015】
図1に示す本発明の一実施形態に係わるケーブル製造装置は、例えば、図2に示すような光ファイバケーブル1を製造する。この光ファイバケーブル1は、光ファイバ心線3を備える本体部5と、支持線7を備える支持部9とを備え、これら本体部5と支持部9とを、薄肉の首部11によって互いに連結して一体化している。
【0016】
光ファイバ心線3は、特に図示していないが、石英系ガラスファイバの外周を、紫外線硬化型樹脂により被覆して光ファイバ素線としている。光ファイバ心線3の図2中で左右両側には、繊維強化プラスチックからなる2本の抗張力体(テンションメンバ)13をそれぞれ配置し、これら光ファイバ心線3および抗張力体13を熱可塑性合成樹脂材料からなる内層被覆材15により被覆している。
【0017】
一方、支持線7は、鋼線などの金属線で構成しており、その外周を内層被覆材15と同様の熱可塑性合成樹脂材料からなる内層被覆材17により被覆している。
【0018】
なお、上記した光ファイバ心線3および抗張力体13が、第1、第2の各線材のうちの一方、例えば第1の線材を構成し、支持線7が第1、第2の各線材のうちの他方、例えば第2の線材を構成している。この際、光ファイバ心線3および抗張力体13を内層被覆材15で覆ったものが、第1の被覆線としてのファイバ側被覆線19となり、支持線7を内層被覆材17で覆ったものが第2の被覆線としての支持側被覆線21となる。
【0019】
そして、上記したファイバ側被覆線19と支持側被覆線21とを、被覆材としての外層被覆材23により被覆して一体化することで、光ファイバケーブル1となる。外層被覆材23は、内層被覆材15、17と同様に熱可塑性合成樹脂材料で構成しているが、内層被覆材15、17に比較して硬度を低くしてある。例えば、外層被覆材23はベース材に低密度ポリエチレンを使用する一方、内層被覆材15、17はベース材に高密度ポリエチレンを使用することで、硬度を異ならせることができる。これら内層被覆材15、17と外層被覆材23とで、光ファイバケーブル1における外被を構成している。
【0020】
上記した外層被覆材23は、本体部5に対応する本体側外層被覆部23aと、支持部7に対応する支持部側外層被覆部23bと、これら本体側外層被覆部23aおよび支持部側外層被覆部23bを互いに連結する首部11に対応する首部被覆部23cと、を備える。
【0021】
ここで、本体部5における光ファイバ心線3および抗張力体13と、支持部9における支持線7とは、首部11を間に挟んで同一直線上に位置している。
【0022】
また、支持部9は断面形状が円形であり、本体部5の断面形状は、光ファイバ心線3および抗張力体13の配列方向(図2中で左右方向)に長いほぼ長方形状となっている。この際、この本体部5における長方形状の図2中で上下方向の幅寸法は、支持部9の直径より小さくしている。
【0023】
そして、上記した本体部5の図2中で上下両側の光ファイバ心線3に対応する位置には、光ファイバケーブル1の長さ方向(図2中で紙面に直交する方向)に沿って、断面三角形状の切欠となるノッチ25を形成している。さらに、このノッチ25に対応してその内側の内層被覆材15にもノッチ27を形成している。
【0024】
これらノッチ25、27を形成することで、光ファイバケーブル1の端末部の外被(内層被覆材15および外層被覆材23)を引き裂いて光ファイバ心線3の端末部を外部に引き出す、いわゆる口出し作業を容易に行うことができる。また、外被として、内層被覆材15と外層被覆材23との二層構造とすることで、例えばクマゼミが外被に産卵管を刺そうとする際に、上記引き裂きの容易な軟質の外層被覆材23には刺さりやすいが、その奥の硬質の内層被覆材15には刺さらないようにして光ファイバ心線3を保護することができる。
【0025】
次に、上記した光ファイバケーブル1を製造するケーブル製造装置について、図1を用いて説明する。なお、図1中の矢印Aで示す方向が線材の進行方向である。
【0026】
前記図2に示した光ファイバケーブル1における本体部5の光ファイバ心線3および抗張力体13は、図1中で上部に示してあるファイバ用ドラム27および抗張力体ドラム29にそれぞれ巻き付けられている。一方、光ファイバケーブル1における支持部9の支持線7は、図1中で下部に示してある支持線用ドラム31に巻き付けられている。
【0027】
ファイバ用ドラム27および抗張力体ドラム29にそれぞれ巻き付けた光ファイバ心線3および抗張力体13は、第1押出被覆機33に送られる一方、支持線用ドラム31に巻き付けた支持線7は、第2押出被覆機35に送られる。第1押出被覆機33は、図2に示した内層被覆材15を光ファイバ心線3および抗張力体13に対して被覆するものであり、第2押出被覆機35は、図2に示した内層被覆材17を支持線7に対して被覆するものである。
【0028】
なお、図示していないが、第1押出被覆機33の上流側には、第1押出被覆機33で被覆作業を実施する際に、抗張力体13の張力を光ファイバ心線3の張力よりも高くする、例えばダンサロールを用いた張力付与機構を設置している。抗張力体13の張力を光ファイバ心線3の張力よりも高くした状態で内層被覆材15を被覆することで、被覆後の張力付与を解除した状態では、抗張力体13が縮む際に光ファイバ心線3に圧縮歪が生じ、架設時に光ファイバケーブル1が引っ張られたときの張力が抗張力体13に主として作用するようになる。
【0029】
第1押出被覆機33からは、光ファイバ心線3および抗張力体13がその周囲を内層被覆材15で被覆されたファイバ側被覆線19となって送り出され、その下流側には送り速度可変手段としての第1引取キャプスタン37を設置している。第1引取キャプスタン37は、駆動源となる固定ロール39と、その下部に位置する上下動可能な可動ロール41と、固定ロール39の線材進行方向両側に位置する一対のガイドロール43,45と、これら各ロールに対し図1に示す正面視でほぼV字形状となるよう巻き付けられる送りベルト47とを備えている。
【0030】
このような第1引取キャプスタン37において、ファイバ側被覆線19は、送りベルト47の上部、すなわち固定ロール39の下部とガイドロール43,45の上部との間を、ほぼV字形状となった状態で移動する。
【0031】
第1引取キャプスタン37のさらに下流側には、ファイバ側被覆線19の張力を計測する第1張力検出手段としての第1張力計49を設置している。
【0032】
一方、第2押出被覆機35からは、支持線7がその周囲を内層被覆材17で被覆された支持側被覆線21となって送り出され、その下流側には、支持側被覆線21の張力を計測する第2張力検出手段としての第2張力計51を設置している。
【0033】
そして、上記した第1、第2各張力計49、51からそれぞれ送り出されたファイバ側被覆線19、支持側被覆線21は、これら第1、第2各張力計49、51の下流側に設置してある第3押出被覆機53に送り込まれる。第3押出被覆機53では、ファイバ側被覆線19、支持側被覆線21を前記図2に示した外層被覆材23で被覆することで、これら被覆線19、21を一体化して光ファイバケーブル1が完成する。
【0034】
第3押出被覆機53の下流側には、前記した第1引取キャプスタン37と同様な構成の第2引取キャプスタン55を設置している。なお、第2引取キャプスタン55においては、第1引取キャプスタン37と同一構成要素に同一符号を付してある。
【0035】
第2引取キャプスタン55から送り出された光ファイバケーブル1は、ローラ57を介してアキュームレータ59に送られた後、巻取機61に送られて巻き取られる。アキュームレータでは、固定ローラ63と可動ローラ65とを、それぞれ図1中で紙面に直交する方向に複数個別に回転可能に配列してある。これら複数の固定ローラ63および可動ローラ65に光ファイバケーブル1を順次巻きまわし、最後に可動ローラ65の下部から固定ローラ63の上部を経て巻取機61に送り込む。
【0036】
図3は、上記した第1、第2各張力計49、51が計測するファイバ側被覆線19、支持側被覆線21の張力制御を行う制御ブロック図で、第1、第2各張力計49、51の計測信号は、制御手段としての制御回路67が取り込み、制御回路67は、第1、第2各引取キャプスタン37、55を駆動制御する。
【0037】
次に、上記したケーブル製造装置を用いたケーブル製造方法について、制御回路67の制御動作を示す図4のフローチャートも参照して説明する。
【0038】
第1押出被覆機33で押し出し被覆されたファイバ側被覆線19は、第1引取キャプスタン37によって規定の張力が付与されて第1張力計49に向けて送出される。一方、第2押出被覆機35で押し出し被覆された支持側被覆線21は、そのまま第1張力計49に向けて送出される。
【0039】
その際、支持側被覆線21の張力T2が、ファイバ側被覆線19の張力T1よりも規定値だけ高くなるようにあらかじめ設定しておく。この張力差の設定は、第1引取キャプスタン37によるファイバ側被覆線19の送り速度(引き取り速度)によって決定される。
【0040】
支持側被覆線21の張力T2を、ファイバ側被覆線19の張力T1よりも高くすることで、第3押出被覆機53で外層被覆材23を被覆した後の張力付与が解除された状態では、支持側被覆線21が縮む際にファイバ側被覆線19に圧縮歪が生じる。このため、架設時になどに光ファイバケーブル1全体が引っ張られたときに、その張力が支持側被覆線21に主として作用するようになって、ファイバ側被覆線19(光ファイバ心線3)を保護することができる。
【0041】
ここで、例えば第2押出被覆機35での押出樹脂圧が何らかの理由で変化したときに、支持側被覆線21の張力が変化することになり、これに伴ないファイバ側被覆線19と支持側被覆線21との間の前記したあらかじめ設定してある規定の張力差も変化してしまうことになる。
【0042】
例えば、第2押出被覆機35での押出樹脂圧が高くなると、支持側被覆線21に対する被覆用樹脂の押し付け力が強くなることから、支持側被覆線21の張力は高くなる。逆に押出樹脂圧が低くなると、支持側被覆線21に対する被覆用樹脂の押し付け力が弱くなることから、支持側被覆線21の張力は低くなる。
【0043】
その際、本実施形態では、第1、第2各張力計49、51によってファイバ側被覆線19、支持側被覆線21の各張力を計測し、その計測値T1、T2を図3に示す制御回路67が読み込む(ステップS1)、制御回路67は、T2がT1より高く、かつ、その差T(=T2−T1)が規定範囲内にあるかどうかを判断する(ステップS2)。
【0044】
ここで、支持側被覆線21の張力T2がファイバ側被覆線19の張力T1より高く、かつ、その差T(=T2−T1)が規定範囲内の場合には、第1引取キャプスタン37の速度はそのままとして光ファイバケーブル1の製造を継続する。なお、第2引取キャプスタン55の速度については、あらかじめ設定した状態とする。
【0045】
一方、上記以外の場合、例えば支持側被覆線21の張力T2がファイバ側被覆線19の張力T1より低い場合や、支持側被覆線21の張力T2がファイバ側被覆線19の張力T1より高くても、その差T(=T2−T1)が規定範囲外の場合には、張力T2が当初設定した張力に対して上昇したかどうかを判断する(ステップS3)。
【0046】
ここで、例えば第2押出被覆機35での押出樹脂圧が高くなって、支持側被覆線21の張力T2が上昇するよう変動したときには、上記した張力差Tが規定値より大きくなってしまうので、第1引取キャプスタン37の送り速度(引き取り速度)を遅くして、第1引取キャプスタン37と第3押出被覆機53との間のファイバ側被覆線19の張力T1を高める(ステップS4)。
【0047】
これにより、張力T2が上昇した支持側被覆線21と、これに対応して張力T1を高めたファイバ側被覆線19との間の張力差Tを、あらかじめ設定してある規定値とし(ステップS4)、その設定張力差Tの状態でファイバ側被覆線19および支持側被覆線21を第3押出被覆機53に送り込む。
【0048】
逆に、第2押出被覆機35での押出樹脂圧が低くなって、支持側被覆線21の張力が低くなるよう変動したときには(ステップS5)、上記した張力差Tが規定値より小さくなってしまうので、第1引取キャプスタン37の送り速度(引き取り速度)を速くして、第1引取キャプスタン37と第3押出被覆機53との間のファイバ側被覆線19の張力T1を低くする(ステップS6)。
【0049】
これにより、張力T2が低下した支持側被覆線21と、これに対応して張力T1を低くしたファイバ側被覆線19との間の張力差Tを、あらかじめ設定してある規定値とし(ステップS6)、その設定張力差Tの状態でファイバ側被覆線19および支持側被覆線21を第3押出被覆機53に送り込む。
【0050】
このように、本実施形態では、ケーブル製造装置を運転中に第2押出被覆機35の押出樹脂圧の変動によって支持側被覆線21の張力T2が変動した場合であっても、ファイバ側被覆線19および支持側被覆線21の張力T1、T2を常時監視し、それら相互の張力差Tが規定範囲からずれたときには、設定張力差となるように第1引取キャプスタン37の送り速度を変更する。これにより、運転中であっても各被覆線19、21相互の張力差を常に一定に確保することができ、安定かつ高信頼性の光ファイバケーブル1の製造が可能となる。
【0051】
また、本実施形態では、第1、第2の各線材のうち一方は光ファイバ心線3を含み、他方は、製造後のケーブルを架設時に支持させるための支持線7を含み、外層被覆材23により被覆することで一体化する際の張力を、光ファイバ側よりも支持線側で高く設定している。
【0052】
このため、第3押出被覆機53で外層被覆材23を被覆した後の光ファイバケーブル1は、張力が開放されたときに光ファイバ側のファイバ側被覆線19で圧縮歪が発生することになる。その結果、架設時になどに光ファイバケーブル1全体が引っ張られたときに、その張力が支持側被覆線21に主として作用するようになって、ファイバ側被覆線19を保護することができる。
【0053】
なお、上記した実施形態では、光ファイバ心線3を含むファイバ側被覆線19と、支持線7を含む支持側被覆線21との間の張力差を制御しているが、これら各被覆線19、21に限ることはない。例えば、光ファイバ心線3を第1の線材として、支持線7を第2の線材として、これら各線材を被覆材により一体化する際に、各線材の張力を互いに異なるものとする場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 光ファイバケーブル(ケーブル)
3 光ファイバ心線(光ファイバ、第1の線材)
7 支持線(第2の線材)
13 抗張力体(第1の線材)
15,17 内層被覆材
19 ファイバ側被覆線(第1の被覆線)
21 支持側被覆線(第2の被覆線)
23 外層被覆材(被覆材)
37 第1引取キャプスタン(送り速度可変手段)
49 第1張力計(第1張力検出手段)
51 第2張力計(第2張力検出手段)
67 制御回路(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の線材および第2の線材を被覆材により被覆することで一体化してケーブルを製造するにあたり、前記被覆材により被覆して一体化する際の前記第1、第2の各線材の張力を互いに異なるものとするケーブル製造方法であって、前記第1、第2の各線材の張力をそれぞれ検出し、これら各線材の張力があらかじめ設定した張力差からずれたときに、前記第1、第2の各線材のうち一方の前記被覆材を被覆する工程への送り速度を変化させて、前記張力差をあらかじめ設定した値とすることを特徴とするケーブル製造方法。
【請求項2】
第1の線材および第2の線材を、それぞれ個別に内層被覆材により被覆して第1の被覆線および第2の被覆線とし、これら第1、第2の各被覆線を、さらに外層被覆材により被覆することで一体化してケーブルを製造するにあたり、前記外層被覆材により被覆して一体化する際の前記第1、第2の各被覆線の張力を互いに異なるものとするケーブル製造方法であって、前記第1、第2の各被覆線の張力をそれぞれ検出し、この検出した各被覆線の張力があらかじめ設定した張力差からずれたときに、前記第1、第2の各被覆線のうち一方の前記外層被覆材を被覆する工程への送り速度を変化させて、前記張力差をあらかじめ設定した値とすることを特徴とするケーブル製造方法。
【請求項3】
前記第1、第2の各線材のうち一方は光ファイバを含み、他方は、製造後のケーブルを架設時に支持させるための支持線を含み、前記被覆材により被覆することで一体化する際の張力を、前記光ファイバ側よりも前記支持線側で高く設定することを特徴とする請求項1または2に記載のケーブル製造方法。
【請求項4】
第1の線材および第2の線材を被覆材により被覆することで一体化してケーブルを製造するにあたり、前記被覆材により被覆して一体化する際の前記第1、第2の各線材の張力を互いに異なるものとするケーブル製造装置であって、前記第1、第2の各線材のうち一方の前記被覆材を被覆する工程への送り速度を変化させる送り速度可変手段と、前記第1、第2の各線材の張力をそれぞれ検出する第1、第2張力検出手段と、この第1、第2張力検出手段が検出する各線材の張力があらかじめ設定した張力差からずれたときに、このずれを補正するように、前記送り速度可変手段を、前記一方の線材の前記被覆材を被覆する工程への送り速度が変化するよう制御する制御手段と、を有することを特徴とするケーブル製造装置。
【請求項5】
第1の線材および第2の線材をそれぞれ個別に内層被覆材により被覆して形成した第1の被覆線および第2の被覆線を、さらに外層被覆材により被覆することで一体化してケーブルを製造するにあたり、前記外層被覆材により被覆して一体化する際の前記第1、第2の各被覆線相互間の張力を互いに異なるものとするケーブル製造装置であって、前記第1、第2の各被覆線のうち一方の前記外層被覆材を被覆する工程への送り速度を変化させる送り速度可変手段と、前記第1、第2の各被覆線の張力をそれぞれ検出する第1、第2張力検出手段と、この第1、第2張力検出手段が検出する各被覆線の張力があらかじめ設定した張力差からずれたときに、このずれを補正するように、前記送り速度可変手段を、前記一方の被覆線の前記外層被覆材を被覆する工程への送り速度が変化するよう制御する制御手段と、を有することを特徴とするケーブル製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−58526(P2012−58526A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202184(P2010−202184)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】