説明

ケーブル

【課題】 ケーブルの外層の吸水性テープの両側先端部やケーブルの長手方向の一部が傷などで破断した場合、水が介在物に侵入しても、複数の走水防止用テープが膨潤して水止めされ、水走りが防止される。
【解決手段】 一定の長さを有した絶縁線心7を撚り合わせた隙間に介在物9を介して押さえ巻きテープ11を巻き付けてなると共にこの押さえ巻きテープ11の外周に外被13を被覆してなるケーブル1において、前記介在物9が複数の走水防止用テープ15で構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ケーブル端末からの浸水や外皮の破れからの浸水から水走りを生じさせないようにしたケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のケーブル101としては、図6および図7に示されているように、例えばポリエチレン樹脂などからなる絶縁体103を被覆した例えば軟銅線からなる導体105が一定の長さで複数例えば3本により絶縁線心107を備えており、この絶縁線心107を撚り合わせた隙間に例えばプラスチック、繊維、紙などからなる介在物109が介在され、この介在物109の外周には吸水テープ111が横巻きに巻き付けられて設けられている。この吸水テープ111の外周には例えばポリエチレン樹脂などからなる外皮113が被覆されている。そして、前記ケーブル101の両先端部においては、この両先端部からケーブル101内に走水されないように、例えば図7に示されているように接着剤115が塗布されている。
【0003】
しかしながら、この従来のケーブル101が例えば船などに使用される場合に、前記介在物109は吸水性の材料からなっていないので、例えばケーブル101の長手方向の外被113が破れ、さらに吸水テープ111の一部に傷がついて破断すると、この破断部から水が前記介在物109を伝わって、水走りが生じてしまうという問題があった。
【0004】
この水走りが生じないようにするために、例えば特許文献1に示されているように、ケーブルコアの外周にジェリー(防水混和物)を介してテープ状の第1被覆層を設け、さらに、この第1被覆層の外周に第2被覆層を被覆したものが知られている。
【特許文献1】特開平8−297231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来のジェリーを充填する手段として、第1被覆層に例えば直径約1mmのジェリー充填用貫通孔を長手方向に適宜な間隔で複数設け、この各ジェリー充填用貫通孔からジェリーを充填し、この各ジェリー充填用貫通孔を塞ぐために第1被覆層の外周に第2被覆層を被覆したものである。
【0006】
したがって、ジェリーを充填するために、第1被覆層、第2被覆層の被覆層を要しケーブルの径が大きくなってしまい、また、ケーブル101を製造するのが容易でないという問題がある。
【0007】
この発明は上述の課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記発明が解決しようとする課題を達成するためにこの発明のケーブルは、一定の長さを有した絶縁線心を撚り合わせた隙間に介在物を介して押さえ巻きテープを巻き付けてなると共にこの押さえ巻きテープの外周に外被を被覆してなるケーブルにおいて、前記介在物が複数の走水防止用テープで構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
この発明のケーブルは、一定の長さを有した絶縁線心を撚り合わせた隙間に介在物を介して押さえ巻きテープを巻き付けてなると共にこの押さえ巻きテープの外周に外被を被覆してなるケーブルにおいて、前記介在物が吸水性ポリマーを混練した合成繊維で構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
この発明のケーブルは、前記ケーブルにおいて、前記押さえ巻きテープが一枚もしくは複数の走水防止用テープで構成されていることが好ましい。
【0011】
この発明のケーブルは、前記ケーブルにおいて、前記走水防止用テープが、合成繊維や綿糸からなる基布に吸水ポリマーを塗布し、前記基布の少なくとも片面に難燃性樹脂を塗布して構成されていることが好ましい。
【0012】
この発明のケーブルは、前記ケーブルにおいて、前記走水防止用テープが、基布に難燃剤と吸水ポリマーを混練した混練部材を少なくとも片面に塗布して構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上のごとき課題を解決するための手段の説明から理解されるように、この発明によれば、前記介在物が前記絶縁線心を撚り合わせた隙間に設けられた一枚もしくは複数の走水防止用テープで構成され、また、前記介在物が吸水性ポリマーを混練した合成繊維で構成されているから、両側先端部やケーブルの長手方向の外被が破れ、さらに押さえ巻きテープの一部が傷などで破断した場合、水が介在物に侵入しても、複数の走水防止用テープが膨潤して水止めされ、水走りを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1および図2を参照するに、ケーブル1としては例えばポリエチレン樹脂からなる絶縁体3を被覆した例えば軟銅線からなる導体5が一定の長さで複数例えば3本により絶縁線心7が撚り合わされている。この絶縁線心7を撚り合わせた隙間には介在物9が介在されている。この介在物9の外周には押さえ巻きテープ11で横巻きに巻き付けられて設けられている。この押さえ巻きテープ11の外周には例えばポリエチレン樹脂などからなる外被13が被覆されている。そして、前記介在物9は前記絶縁線心7の長手方向に縦添えされた一枚もしくは複数の走水防止用テープ15で構成されている。
【0016】
このケーブル1が例えば船などに使用される場合に、前記介在物9は複数の例えば長手方向へしわ状になった走水防止用テープ15からなっているので、例えばケーブル1の長手方向の外被13が破れ、さらに押さえ巻きテープ11の一部に傷がついて破断した場合、水が介在物9に侵入しても、この介在物9が複数の走水防止用テープ15からなっているので、一枚もしくは複数の走水防止用テープ15が膨潤して水止めされ、水走りを防止することができる。
【0017】
前記走水防止用テープ15は、図3に示されているように、合成繊維としての例えばポリエステル繊維や綿糸からなる基布17間に吸水ポリマー19を塗布し、前記基布17の例えば両面に難燃性樹脂としての例えばノンハロゲン発泡難燃性樹脂21を塗布した5層構造の吸水性テープからなっている。なお、前記基布17の例えば片面にノンハロゲン発泡難燃性樹脂21を塗布したものでも適用可能である。
【0018】
このような構成からなる走水防止用テープ15を前記介在物9に使用することにより、従来のケーブルに比べて製造が容易であると共にケーブル1の押さえ巻きテープ11の両側先端部やケーブル1の長手方向の外被13の一部が破れてさらに押さえ巻きテープ11が傷などで破断した場合、水が介在物9を構成している走水防止用テープ15に侵入しても、一枚もしくは複数の走水防止用テープ15が膨潤して水止めされ、水走りを防止することができる。また、走水防止用テープ15は難燃性を有しているので、走水防止効果と共に難燃性の効果を発揮することができる。
【0019】
また、前記走水防止用テープ15は、図4に示されているように、基布23に樹脂や塗料などからなる難燃剤と吸水ポリマーを混練した混練部材25を例えば両面に塗布した3層構造の吸水性テープからなっている。このような構成からなる走水防止用テープ15を前記介在物9に使用することにより、従来のケーブルに比べて製作が容易であると共にケーブル1の押さえ巻きテープ11の両側先端部やケーブル1の長手方向の外被13の一部が破れてさらに押さえ巻きテープ11が傷などで破断した場合、に水が介在物9を構成している走水防止用テープ15に侵入しても、複数の走水防止用テープ15が膨潤して水止めされ、水走りを防止することができる。なお、基布23に樹脂や塗料などからなる難燃剤と吸水ポリマーを混練した混練部材25を例えば片面に塗布したものでも適用可能である。
【0020】
したがって、この場合の走水防止用テープ15は難燃性を有しているので、走水防止効果と共に難燃性の効果を発揮することができる。
【0021】
さらに、図3、図4に示した前記走水防止用テープ15を前記押さえ巻きテープ11に使用するとさらに効果を発揮するものである。
【0022】
なお、図3に示した前記走水防止用テープ15の特性値は、温度24℃、湿度57%RHで、例えばA4の大きさのノートで測定した結果、外観は良好で、厚さは0.338mm、質量は226g/m、引っ張り強度(タテ)が130N/25mm、伸び(タテ)が26%、酸素指数が35、吸水高さ(人工海水)が1.390mmである。また、図4に示した前記走水防止用テープ15の特性値は、温度24℃、湿度57%の場合、外観は良好で、厚さは0.323mm、質量は253g/m、引っ張り強度(タテ)が132N/15mm、伸び(タテ)が7.5%、酸素指数が80、吸水高さ(人工海水)が0.890mmである。
【0023】
また、図1において、前記介在物9として、吸水性ポリマーを混練した合成繊維27で構成されていてもよい。したがって、前記介在物9として、吸水性ポリマーを混練した合成繊維27で構成されているから、両側先端部やケーブル1の長手方向の外被13が破れ、さらに押さえ巻きテープ11の一部が傷などで破断した場合、水が介在物9の吸水性ポリマーを混練した合成繊維27に侵入しても、吸水性ポリマーを混練した合成繊維27が膨潤して水止めされ、水走りを防止することができる。
【0024】
図5には図1に代わる他の実施の形態が示されている。図5において、図1における部品と同じ部品には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0025】
図5において、介在物9として走水防止用テープ15だけでなく、複数のゴムまたはプラスチックの紐29を挿入しても対応可能である。すなわち、この場合には介在物9としての走水防止用テープ15の使用量を削減でき、コストダウンを図ることができるという効果を発揮することができる。
【0026】
なお、この発明は前述した実施の形態に限定されることなく、適宜な変更を行うことによりその他の態様で実施し得るものである。前述した実施の形態では線材として導体を例にとって説明したが、光ファイバやその他の線材であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明のケーブルの断面図である。
【図2】図1におけるケーブルの正面図である。
【図3】走水防止用テープの構造の一例を示した断面図である。
【図4】走水防止用テープの構造の他例を示した断面図である。
【図5】図1に代わる他の実施形態の発明のケーブルの断面図である。
【図6】従来のケーブルの断面図である。
【図7】図6におけるケーブルの正面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ケーブル
3 絶縁体
5 導体
7 絶縁線心
9 介在物
11 押さえ巻きテープ
13 外被
15 走水防止用テープ
17 基布
19 吸水性ポリマー
21 ノンハロゲン発泡難燃性樹脂(難燃性樹脂)
23 基布
25 混練部材
27 吸水性ポリマーを混練した合成繊維
29 ゴムまたはプラスチックの紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の長さを有した絶縁線心を撚り合わせた隙間に介在物を介して押さえ巻きテープを巻き付けてなると共にこの押さえ巻きテープの外周に外被を被覆してなるケーブルにおいて、前記介在物が複数の走水防止用テープで構成されていることを特徴とするケーブル。
【請求項2】
一定の長さを有した絶縁線心を撚り合わせた隙間に介在物を介して押さえ巻きテープを巻き付けてなると共にこの押さえ巻きテープの外周に外被を被覆してなるケーブルにおいて、前記介在物が吸水性ポリマーを混練した合成繊維で構成されていることを特徴とするケーブル。
【請求項3】
前記押さえ巻きテープが一枚もしくは複数の走水防止用テープで構成されていることを特徴とする請求項1または2記載のケーブル。
【請求項4】
前記走水防止用テープが、合成繊維や綿糸からなる基布に吸水ポリマーを塗布し、前記基布の少なくとも片面に難燃性樹脂を塗布して構成されていることを特徴とする請求項1、2または3記載のケーブル。
【請求項5】
前記走水防止用テープが、基布に難燃剤と吸水ポリマーを混練した混練部材を少なくとも片面に塗布して構成されていることを特徴とする請求項1、2または3記載のケーブル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−164813(P2006−164813A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356242(P2004−356242)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】