説明

ゲノム操作のためのハイブリッド型リコンビナーゼ

本発明は、ハイブリッド型リコンビナーゼを用いることによってゲノムを部位特異的に操作するための方法を提供する。ハイブリッド型リコンビナーゼは、一方向性セリンファージインテグラーゼからの修飾された触媒ドメインが外来性のDNA認識ドメインと融合されたものを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インテグラーゼ活性を有する改良された触媒ドメインを、組込み反応に対して部位特異性を与える外来性のDNA結合ドメインと融合させる段階を含む、ハイブリッド型インテグラーゼを作製するための組成物および方法を教示する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
新たに加わったDNAの、高等生物の染色体への効率的な部位特異的組込みを現在行えないことは、基礎生物学および応用生物学における進歩の妨げとなっている。微生物から単離されたリコンビナーゼ酵素の高い効率および厳格な配列特異性を利用した染色体組込みのための最近の戦略がいくつか記載されている。特に、phiC31インテグラーゼを含むファージインテグラーゼの1つのクラス(Kuhstoss, S. and Rao, R. N., J. Mol. Biol. 222, 897-908 (1991)(非特許文献1);Rausch H. and Lehmann, M., Nucleic Acids Research 19, 5187-5189 (1991)(非特許文献2))は、哺乳動物細胞において機能することが示されている(Groth, A. C., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97, 5995-6000 (2000)(非特許文献3))。
【0003】
このような部位特異的リコンビナーゼ酵素は、哺乳動物細胞の長いゲノム中にさえも典型的には存在しない長いDNA認識部位を含む。しかし、擬似的なリコンビナーゼ部位、すなわち、リコンビナーゼの野生型結合部位とかなりの程度の同一性がある部位が、これらのゲノム中には存在することが最近示されている(Thyagarajan, B., et al., Gene 244, 47-54 (2000)(非特許文献4))。
【0004】
【非特許文献1】Kuhstoss, S. and Rao, R. N., J. Mol. Biol. 222, 897-908 (1991)
【非特許文献2】Rausch H. and Lehmann, M., Nucleic Acids Research 19, 5187-5189 (1991)
【非特許文献3】Groth, A. C., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97, 5995-6000 (2000)
【非特許文献4】Thyagarajan, B., et al., Gene 244, 47-54 (2000)
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
このようなハイブリッド型リコンビナーゼは、インビトロで、ならびに広範囲にわたる細胞および種において、効率的な部位特異的組換えを媒介することができ、挿入、欠失およびその他のゲノム修飾を作り出すために有用である。これらの修飾は、例えば、遺伝子治療、細胞系およびトランスジェニック生物の構築および操作、ならびにタンパク質生産のために有益である。
【0006】
発明の詳細な説明
本出願の全体を通じて、さまざまな刊行物、特許および公開された特許出願を、引用を特定することによって参照している。本出願において参照した、これらの刊行物、特許および公開された特許明細書の開示内容は、本発明が属する技術分野の現状をより完全に記述するために、参照として本明細書に組み入れられる。
【0007】
本発明の実施には、別に指示する場合を除き、分子生物学、微生物学、細胞生物学および組換えDNAの従来の技法を用いることが考えられ、これらは当技術分野の技能の範囲に含まれる。例えば、Sambrook, Fritsch and Maniatis, 「MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL」, 第2版(1989);「CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY」(F. M. Ausubel et al. eds., 1987);「METHODS IN ENZYMOLOGY」シリーズ(Academic Press, Inc.);「PCR 2:A PRACTICAL APPROACH」(M. J. McPherson, B. D. Hames and G. R. Taylor eds., 1995)および「ANIMAL CELL CULTURE」(R. I. Fresimey. Ed., 1987)を参照されたい。
【0008】
本明細書中に引用されたすべての刊行物、特許および特許出願は、上記または下記のいずれかを問わず、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0009】
1.定義
本明細書で用いられる「リコンビナーゼ」という用語は、リコンビナーゼによって認識される特定のDNA配列間の部位特異的組換えを媒介する酵素のファミリーのことを指す(Esposito, D. and Scocca, J. J., Nucleic Acids Research 25, 3605-3614(1997);Nunes-Duby, S. E., et al., Nucleic Acids Research 26, 391-406(1998);Stark, W. M., et. al., Trends in Genetics 8, 432-439(1992))。
【0010】
本明細書で用いられる「改変リコンビナーゼ」という用語は、起源の生物体に認められる生来の野生型リコンビナーゼ遺伝子が1つまたは複数の位置で変異しているリコンビナーゼ酵素のことを指す。改変リコンビナーゼは、野生型酵素のそれとは異なるDNA結合特異性および/または活性レベルを有する。改変リコンビナーゼは、米国特許第6,808,925号(これはすべての目的に関してその全体が参照として本明細書に組み入れられる)により詳細に開示されている。
【0011】
本明細書で用いられる「ハイブリッド型リコンビナーゼ」という用語は、強化された触媒ドメインおよび非生来的でありうるDNA結合ドメインを含むリコンビナーゼのことを指す。
【0012】
本明細書で用いられる「野生型組換え部位(RS/WT)」という用語は、 インテグラーゼまたはリコンビナーゼによって通常用いられる組換え部位のことを指す。例えば、λ-は大腸菌を感染させるテンペレートバクテリオファージである。このファージは1つの組換え用付着部位(attP)を有し、大腸菌細菌ゲノムは1つの組換え用付着部位(attB)を有する。これらの部位はいずれもλインテグラーゼにとっての野生型組換え部位である。本発明の文脈において、野生型組換え部位は、同種のファージ/細菌系に存在する。したがって、例えば野生型組換え部位を同種の系から得て異種配列と結び付けることができ、AttB部位をインテグラーゼの基質として作用させるために他の系に配置するることができる。
【0013】
本明細書で用いられる「擬似的な組換え部位(RS/P)」は、リコンビナーゼの野生型組換え部位の配列と同一な配列を有しなくとも、リコンビナーゼが組換えを促進しうる部位のことを指す。擬似的な組換え部位は典型的には、生来のファージ/細菌系に対して異種である生物体に認められる。例えば、phiC31インテグラーゼと、phiC31野生型組換え部位を有するベクターとを真核細胞の中に入れることができる。野生型組換え配列は自らを真核細胞ゲノム中の配列と整列させ、インテグラーゼは組換え事象を促進する。(ベクター中およびゲノム中の野生型組換え部位間の組換え事象によって)ベクターの組込みが起こった箇所で真核細胞におけるゲノム部位からの配列を調べると、ゲノム部位での配列は典型的には野生型phiC31組換え部位とある程度の同一性を有するが、同一ではないことがある。真核細胞は通常のファージ/細菌細胞系に対しては異種であるため、真核細胞における組換え部位は少なくとも擬似的な組換え部位であるとみなされる。擬似的な組換え部位のサイズは、(i)配列アラインメントの比較、(ii)二次構造の比較、(iii)擬似的な組換え部位の機能的限界を見いだすための欠失または点変異の分析、および(iv)前記のものの組み合わせを非制限的に含む、さまざまな方法の使用によって決定することができる。擬似的な組換え部位は典型的には真核細胞のゲノム中に天然に存在し(すなわち、これらの部位はゲノムにとって生来性である)、本明細書に記載したようにして機能的に同定される。
【0014】
本明細書で用いる「擬似的なattP部位」または「擬似的なattB部位」という用語は、ファージインテグラーゼ酵素に対する野生型のそれぞれファージ性または細菌性の付着部位配列と類似した擬似的な部位のことを指す。「擬似的なatt部位」は、擬似的なattP部位または擬似的なattB部位のいずれをも指すことができる、より一般的な用語である。
【0015】
本明細書で用いる場合、ゲノムにとって「生来性」である組換え部位とは、細胞のゲノム中に天然に存在する組換え部位のことを意味する(すなわち、これらの部位は例えば組換え手段などによってゲノム中に導入されてはいない)。
【0016】
「核酸構築物」とは、自然下では一緒には認められない1つまたは複数の機能単位を含むように構築された核酸配列のことを意味する。その例には、環状で二本鎖の染色体外DNA分子(プラスミド)、コスミド(λファージ由来のCOS配列を含むプラスミド)、非生来性の核酸配列を含むウイルスゲノムなどが含まれる。
【0017】
「関心対象の核酸断片」とは、ゲノム中に挿入することが望まれている任意の核酸断片のことを意味する。関心対象の核酸断片の適した例には、治療用遺伝子、マーカー遺伝子、調節領域、形質を生じさせる断片などが含まれる。
【0018】
「治療用核酸」または「治療用遺伝子」は、宿主に対して何らかの治療的恩典を与える分子をコードする核酸配列のことであり、これにはタンパク質、機能的RNA(アンチセンス、ハンマーヘッド型リボザイム、RNAi)などが含まれる。よく知られた一例は、嚢胞性繊維症膜貫通調節因子(CFTR)遺伝子である。嚢胞性繊維症における主な生理的欠陥は、肺を含む多くの臓器の上皮を介しての起電性塩素イオン分泌の不全である。この疾患の最も危険な様相の一つは再発性気道感染症の繰り返しであり、これは肺機能を徐々に損なわせて早期死亡をもたらす。嚢胞性繊維症は、CFTR遺伝子における種々の変異によって引き起こされる。嚢胞性繊維症で起こる問題は単一遺伝子における変異に起因するため、遺伝子導入が永続的であるならば、遺伝子の正常コピーの肺上皮への導入によって疾患の治療または治癒効果が得られるという可能性が存在する。
【0019】
本明細書中の組成物によって治療しうる、単一遺伝子における変異に起因するその他の疾患(単一遺伝子病として知られる)には、α-1-アンチトリプシン欠損症、慢性肉芽腫性疾患、家族性高コレステロール血症、ファンコニ貧血、ゴーシェ病、ハンター症候群、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ欠損症、重症複合免疫不全症(SCID)-ADA、X連鎖性SCID、血友病、網膜色素変性、筋ジストロフィーなどが含まれる。
【0020】
他の疾患における治療的利点も、治療的核酸をコードするタンパク質の追加によって得られる可能性がある。例えば、インターロイキン-2などの免疫調節性タンパク質をコードする核酸は、さまざまなタイプの癌に罹患した患者に対する治療的恩典を有する可能性がある。多くの場合、タンパク質またはペプチドをコードする遺伝子は、基礎にある疾患が遺伝子を基にしていなくても治療的恩典を有しうる。例えば、血管内皮増殖因子VEGFの遺伝子を、心虚血または末梢虚血を治療するために導入することができる。その反対に、可溶性VEGF受容体をコードするDNA、またはVEGF mRNAを減少させるかそれと拮抗するRNAi種をコードするDNAは、癌または黄斑変性症の治療のための血管新生阻害薬として有用な可能性がある。
【0021】
さらに、関心対象の核酸断片が「マーカー核酸」または「マーカーポリペプチド」であってもよい。マーカー遺伝子は、形質転換細胞において容易に検出しうるタンパク質をコードし、このためそのような細胞の検討に有用である。マーカー遺伝子は、例えば骨髄移植の研究において、患者における骨髄再構成および再発の機序の生物学的詳細を調べるために用いられている。適したマーカー遺伝子の例には、β-ガラクトシダーゼ、緑色または黄色の蛍光性タンパク質、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ルシフェラーゼなどが含まれる。
【0022】
さらに、関心対象の核酸断片が調節領域であってもよい。「調節領域」または「調節エレメント」という用語には、核酸断片(例えば、DNA)と機能的に結合していて、それからのタンパク質またはRNAの発現にかかわる、すべての核酸成分が含まれる。コード配列の発現のために必要な制御(または調節)領域の厳密な性質は、生物によって異なると考えられる。このような領域には典型的には、転写および翻訳の開始にかかわる5'非コード配列、例えばエンハンサー、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列などが含まれる。そのほかの例示的な調節配列には、複製、転写または翻訳の調節などを修飾するように機能する任意の配列が非制限的に含まれる。その例には、プロモーター、シグナル配列、プロペプチド配列、転写終結因子、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、アテニュエーター配列、イントロンスプライス部位配列などが含まれる。
【0023】
関心対象の核酸断片はさらに、形質を生じさせる(trait-producing)配列であってもよく、これは、形質を生じさせる配列によってコードされるタンパク質が発現された生物または細胞に何らかの非生来性の形質を付与する配列のことを意味する。「非生来の」という用語は、形質を生じさせる配列の文脈で用いられた場合、生じる形質が非改変生物で認められると考えられるものとは異なることを意味し、このことは生物が非改変生物と比較して天然物質を大量に産生すること、または非天然性の物質を産生することを意味しうる。例えば、トウモロコシなどの穀類植物のゲノムをより大量の必須アミノ酸を産生するように改変し、そのようにして栄養価がさらに高い植物を作出すること、または抗体のように植物では通常産生されないタンパク質を産生するように改変することができると考えられる(米国特許第5,202,422号(1993年4月13日に発行);米国特許第5,639,947号(1997年6月17日)を参照のこと)。同様に、産業的に重要な微生物のゲノムを、新規な代謝産物を産生させること、または抗生物質および産業用酵素の生産といった新規および既存の工程を改良することを目的として新たな代謝経路を挿入することによって改変し、それらをさらに有用にすることができる。他の有用な形質には、除草剤耐性、抗生物質耐性、疾患抵抗性、有害な環境条件(例えば、温度、pH、塩、乾燥)に対する抵抗性などが含まれる。
【0024】
細胞の形質転換を行う方法は、当技術分野で周知である。「形質転換」とは、外来性DNAの取込みに起因する、細胞における遺伝性の改変のことを意味する。適した方法には、ウイルス感染、トランスフェクション、接合、プロトプラスト融合、電気穿孔、微粒子銃技術、リン酸カルシウム沈降、直接的なマイクロインジェクションなどが含まれる。方法の選択は一般に、形質転換させようとする細胞のタイプ、および形質転換が行われる環境(すなわち、インビトロ、エクスビボまたはインビボ)に依存する。これらの方法に関する全般的な考察は、Ausubel, et al, 「Short Protocols in Molecular Biology」, 3rd ed., Wiley & Sons, 1995に記載されている。
【0025】
「核酸分子」および「ポリヌクレオチド」という用語は互換的に用いられ、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドまたはそれらの類似体のいずれかで構成される任意の長さのヌクレオチドの重合形態のことを指す。ポリヌクレオチドはヌクレオチドは任意の三次元構造をとってよく、既知または未知を問わず任意の機能を果たすものでよい。ポリヌクレオチドの非制限的な例には、遺伝子、遺伝子断片、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、リボザイム、RNAi、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブおよびプライマーが含まれる。
【0026】
ポリヌクレオチドは典型的には、4種のヌクレオチド塩基:アデニン(A);シトシン(C);グアニン(G);およびチミン(T)(ポリヌクレオチドがRNAの場合はチミン(T)の代わりにウラシル(U))で構成される特定の配列のことである。したがって、ポリヌクレオチド配列という用語は、ポリヌクレオチド分子のアルファベット式表現である。このアルファベット式表現を、中央演算装置を有するコンピュータ内部のデータベースに入力して、機能ゲノム学および相同性検索などのバイオインフォマティクス用途に用いることができる。
【0027】
選択されたポリペプチドを「コードする」「コード配列」または配列とは、例えば、インビボで適切な調節配列(または「調節エレメント」)の制御下に置かれた場合に、ポリペプチドへと転写(DNAの場合)および翻訳(mRNAの場合)される核酸分子のことである。コード配列の境界は、典型的には、5'(アミノ)末端の開始コドンおよび3'(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決まる。コード配列には、ウイルス由来のcDNA、原核生物もしくは真核生物のmRNA、ウイルス由来のゲノムDNA配列、または原核生物DNA、さらには合成DNA配列が非制限的に含まれる。転写終結配列がコード配列の3'側に位置してもよい。その他の「調節エレメント」がコード配列に付随してもよい。ポリペプチドをコードするDNA配列は、選択された細胞が所望のポリペプチドコード配列のDNAコピーを表すのに好まれるコドンを用いることにより、選択された細胞における発現に関して最適化することができる。
【0028】
「によってコードされる」とは、ポリペプチド配列をコードする核酸配列のことを指し、この際、ポリペプチド配列またはその部分は、核酸配列によってコードされるポリペプチドからの少なくとも3〜5アミノ酸、より好ましくは少なくとも8〜10アミノ酸、さらにより好ましくは少なくとも15〜20アミノ酸のアミノ酸配列を含む。配列によってコードされるポリペプチドを用いて免疫学的に識別可能なポリペプチド配列も同じく含まれる。
【0029】
「機能的に結合した」とは、そのように記載された構成要素がその通常の機能を果たすように構成されている、エレメントの配置のことを指す。したがって、コード配列(例えば、レポーター発現カセット)と機能的に結合した所定のプロモーターは、適切な酵素が存在する場合にコード配列の発現を生じさせることができる。プロモーターまたは他の調節エレメントは、それらが発現を導くように働く限り、コード配列と必ずしも連続していなくともよい。例えば、転写されるが翻訳はされない介在性の配列がプロモーター配列とコード配列との間に存在することもでき、プロモーター配列はそれでもコード配列と「機能的に結合している」とみなすことができる。
【0030】
「ベクター」は、遺伝子配列を標的細胞に移行させることができる。典型的には、「ベクター構築物」、「発現ベクター」および「遺伝子導入ベクター」とは、関心対象の遺伝子の発現を導くことができ、しかも遺伝子配列を標的細胞に移行させることができる任意の核酸構築物のことを意味する。したがって、この用語は、クローニング用および発現用の運搬体のほか、組込み用ベクターも含む。
【0031】
「発現カセット」は、関心対象の遺伝子/コード配列の発現を導きうる任意の核酸構築物を含む。このようなカセットは、発現カセットを標的細胞内に移行させる目的で、「ベクター」、「ベクター構築物」、「発現ベクター」または「遺伝子導入ベクター」として構築することができる。したがって、この用語は、クローニング用および発現用の運搬体のほか、ウイルスベクターも含む。
【0032】
核酸およびアミノ酸の「配列同一性」を決定するための手法も当技術分野で公知である。典型的には、このような手法は、遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列を決定すること、および/またはそれによってコードされるアミノ酸配列を決定すること、ならびにこれらの配列を第2のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列と比較することを含む。一般に、「同一性」とは、2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の間の、それぞれヌクレオチド同士またはアミノ酸同士の厳密な対応のことを指す。2つまたはそれ以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、それらの「同一性の割合」を決定することによって比較しうる。2つの配列の同一性の割合は、核酸配列であるかアミノ酸配列であるかを問わず、アラインメントが行われた2つの配列の間の厳密な一致の数を短い方の配列の長さで除算し、それに100を掛けたものである。核酸配列に関するおおよそのアラインメントは、Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics 2: 482-489 (1981)の局所相同性アルゴリズムによって得られる。このアルゴリズムは、Dayhoff, 「Atlas of Protein Sequence and Structure」, M.O. Dayhoff ed., 5 suppl. 3: 353-358, National Biomedical Research Foundation, Washington, D.C.によって開発されてGribskov, Nucl. Acids Res. 14(6): 6745-6763 USA(1986)によって標準化されたスコアリングマトリックスを用いることにより、アミノ酸配列に対して適用することができる。配列の同一性の割合を決定するためのこのアルゴリズムの実装例は、Genetics Computer Group(Madison, Wis.)によって「BestFit」ユーティリティーアプリケーションに与えられている。この方法に関するデフォールトのパラメーターは、「Wisconsin Sequence Analysis Package Program Manual」, Version 8 (1995)(Genetics Computer Group, Madison, Wis.から入手可能)に記載されている。本発明の文脈において同一性の割合を確定する好ましい方法は、University of Edinburghに著作権があり、John F. CollinsおよびShane S. Sturrokによって開発され、IntelliGenetics, Inc.(Mountain View, Calif.)によって流通されているMPSRCHパッケージプログラムを用いることである。このパッケージスイートからのSmith-Watermanアルゴリズムを、デフォールトのパラメーターをスコアリング表に関して用いるようにして(例えば、ギャップオープンペナルティーを12、ギャップ伸長ペナルティーを1、ギャップを6とする)用いることができる。生成されたデータからの「マッチ(Match)」値は「同一性の割合」を反映する。配列間の同一性の割合または類似度を計算するための他の適したプログラムは当技術分野で一般的に知られており、例えばもう1つのアラインメントプログラムはBLASTであり、これをデフォールトのパラメーターで用いる。例えば、BLASTNおよびBLASTPを以下のデフォールトのパラメーターで用いることができる:遺伝暗号=標準;フィルター=なし;ストランド=両方;カットオフ=60;期待値=10;マトリックス=BLOSUM62;記述=50配列;ソート=HIGH SCOREによる;データベース=非冗長性GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳物+Swiss protein+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は以下のインターネットアドレスで見ることができる:http://www.ncbi.nlm.gov/cgi-bin/BLAST。
【0033】
または、相同な領域間の安定な二重鎖を形成させる条件下でポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを行い、続いて一本鎖特異的ヌクレアーゼで消化して、消化された断片のサイズ決定を行うことによって相同性を決定することもできる。2つのDNA配列または2つのポリペプチド配列は、以上の方法を用いて判定して、配列が分子の規定された長さにわたって少なくとも約80%〜85%、好ましくは少なくとも約85%〜90%、より好ましくは少なくとも約90%〜95%、最も好ましくは少なくとも約95%〜98%の配列同一性を示す場合には、互いに「実質的に相同」である。本明細書で用いる場合、実質的に相同であるとは、配列が、特定されたDNA配列またはポリペプチド配列と完全な同一性を示すことも指す。実質的に相同なDNA配列は、例えば、その個々のシステムに関して定められたストリンジェントな条件下でのサザンハイブリダイゼーション実験において同定することができる。適切なハイブリダイゼーション条件を定めることは当技術分野の技能の範囲内にある。例えば、Sambrook et al., 前記;「DNA Cloning」前記;「Nucleic Acid Hybridization」前記を参照のこと。
【0034】
2つの核酸断片は、本明細書に記載したようにして「選択的にハイブリダイズする」とみなされる。2つの核酸分子間の配列同一性の程度は、このような分子間のハイブリダイゼーション事象の効率および強度に影響を及ぼす。部分的に同一な核酸配列は、完全に同一な配列が標的分子とハイブリダイズするのを少なくとも部分的に阻害すると考えられる。完全に同一な配列のハイブリダイゼーションの阻害は、当技術分野で周知のハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、サザンブロット法、ノーザンブロット法、溶液ハイブリダイゼーションなど。Sambrook, et al.,「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」, Second Edition (1989), Cold Spring Harbor, N.Y.を参照)を用いて評価することができる。このようなアッセイは、さまざまな程度の選択性を用いて、例えば、低ストリンジェンシーから高ストリンジェンシーまでのさまざまな条件を用いて実施することができる。低ストリンジェンシーの条件を用いる場合には、非特異的結合が存在しないことを、部分的な程度の配列同一性さえ存在しない二次プローブ(例えば、標的分子との配列同一性が約30%未満であるプローブ)を用いて、非特異的な結合事象が存在しない時には二次プローブが標的とハイブリダイズしないというようにして評価することができる。
【0035】
ハイブリダイゼーションに基づく検出システムを利用する場合には、標的核酸配列に対して相補的な核酸プローブを選択し、続いて、プローブおよび標的配列が「選択的にハイブリダイズ」または互いに結合してハイブリッド分枝を形成する適切な条件を選択する。「中程度にストリンジェントな」条件下で標的配列と選択的にハイブリダイズしうる核酸分子は、典型的には、選択された核酸プローブの配列に対して少なくとも約70%の配列同一性を有する少なくとも約10〜14ヌクレオチド長の標的核酸配列の検出を可能にする条件下でハイブリダイズする。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、典型的には、選択された核酸プローブの配列に対して約90〜95%を上回る配列同一性を有する少なくとも約10〜14ヌクレオチド長の標的核酸配列の検出を可能にする。プローブおよび標的が特定の程度の配列同一性を有する場合のプローブ/標的ハイブリダイゼーションのために有用なハイブリダイゼーション条件は、当技術分野で知られたようにして決定することができる(例えば、「Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach」, editors B. D. Hames and S. J. Higgins (1985), Oxford;Washington, D.C.;IRL Pressを参照のこと)。
【0036】
ハイブリダイゼーションのためのストリンジェンシー条件に関しては、例えば、以下の因子:プローブおよび標的配列の長さおよび性質、さまざまな配列の塩基組成、塩および他のハイブリダイゼーション溶液成分の濃度、ハイブリダイゼーション溶液におけるブロッキング剤の有無(例えば、ホルムアミド、デキストラン硫酸およびポリエチレングリコール)、ハイブリダイゼーション反応の温度および時間のパラメーターを変更すること、さらには洗浄条件を変更することにより、特定のストリンジェンシーを成立させるために数多くの等価な条件を用いうることが当技術分野では周知である。ハイブリダイゼーション条件の特定のセットの選択は、当技術分野における標準的な方法に従って選択される(例えば、Sambrook, et al.,「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」, Second Edition (1989), Cold Spring Harbor, N.Y.を参照)。
【0037】
第1のポリヌクレオチドは、それが第2のポリヌクレオチド、そのcDNA、その相補物の一領域と同じもしくは実質的に同じ塩基対配列を有するならば、または上記のような配列同一性を示すならば、第2のポリヌクレオチドに「由来する」。
【0038】
第1のポリペプチドは、それが(i)第2のポリヌクレオチドに由来する第1のポリヌクレオチドによってコードされるならば、または(ii)第2のポリペプチドに対して上記のような配列同一性を示すならば、第2のポリペプチドに「由来する」。
【0039】
本発明において、リコンビナーゼが、ファージ自体によってリコンビナーゼが明確に産生される必要のない「ファージに由来する」場合には、そのファージはリコンビナーゼおよびそのコード配列の本来の源であると単にみなされる。リコンビナーゼは例えば、当技術分野で公知の方法によって組換え的または合成的に生産することができ、または代替的には、ファージに感染した細菌培養物からリコンビナーゼを精製することもできる。
【0040】
「実質的に精製された」とは一般に、物質が、内部にそれが存在する試料の大半の割合を占めるような、物質(化合物、ポリヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド、ポリペプチド組成物)の単離のことを指す。典型的には、試料中の実質的に精製された成分は、試料の50%、好ましくは80%〜85%、より好ましくは90〜95%を占める。関心対象のポリヌクレオチドおよびポリペプチドを精製するための手法は当技術分野で周知であり、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーおよび密度に応じた沈降が含まれる。
【0041】
2.概説
部位特異的組換えは、DNA合成も高エネルギー補助因子も必要としない鎖交換機構である;鎖切断および再連結の際にはホスホジエステル結合エネルギーがリン酸-タンパク質結合の状態で保存される(Stark, Boocock and Sherratt 1992)。
【0042】
部位特異的リコンビナーゼについては関連のない2つのファミリーが現在知られている。第1のものは「ファージインテグラーゼ」、より参考になる形ではチロシンリコンビナーゼファミリーと呼ばれ、これはチロシンにより触媒される反応機構を有する100種を上回る酵素の群である(Nunes-Duby et al. 1998)。第2のものは「リゾルベース」またはセリンリコンビナーゼファミリーと呼ばれ、これはセリンにより触媒される反応機構を有する100種を上回る酵素の群である(Smith and Thorpe 2002)。これらの酵素はN末端に触媒性・二量体化ドメインを有し、これはDNAとの一過性共有結合にかかわる保存されたセリン残基を含む。このドメインのC端にある伸長したアームは、この群のリゾルベースのC末端にあるヘリックス-ターン-ヘリックスDNA-結合ドメインと結び付く。
【0043】
部位特異的リコンビナーゼは、2つの認識部位(これは同一でも異なってもよい)間の組換えを実行する。例えば、チロシン部位特異的リコンビナーゼファミリーのメンバーであるCreリゾルベースは、2つの同一な34bp長のloxP部位間の組換えを実行する。Creは例えば、インビボではマウス(Sauer 1994)および他の種において欠失および他の再配列を作製するため、ならびにインビトロでは種々のベクター骨格への断片の迅速クローニングを提供するCreatorシステムにおいてというように広く用いられている。類縁性のあるFLPリゾルベースもインビボで再配列を行うために広範に用いられている(O'Gorman, Fox and Wahl 1991)。λインテグラーゼ、チロシンリコンビナーゼファミリーに属するファージインテグラーゼは、25bp長のattB部位と243bp長のattP部位との間の一方向性組換えを実行する。λインテグラーゼはGatewayクローニングシステムにおいてインビトロで幅広く用いられている。
【0044】
3.セリンインテグラーゼ
Cre、FLPおよびλチロシン部位特異的リコンビナーゼ系には広範な有用性があるが、進化的に関連のないセリン部位特異的リコンビナーゼファミリーのリコンビナーゼには、インビボ反応および無細胞反応の両方において、さらなる新規で有用な特性が伴っている。この群において特に関心が寄せられているのは、ファージphiC31インテグラーゼを代表とする長い一方向性セリンファージインテグラーゼのサブファミリーである(Kuhstoss and Rao 1991;Thorpe and Smith 1998)。これらのインテグラーゼは、典型的には30〜50bpという非常に小さなサイズである、異なるattB認識部位とattP認識部位との間の一方向性組換えを実行する(Groth and Calos 2004;Groth et al. 2000)。
【0045】
これらのセリンインテグラーゼの好ましい特性のいくつかには以下のものが含まれる:(1)補助因子が必要でない。この特徴は、インビトロ反応が単純な緩衝液中で進行することを意味する。さらに、これらの酵素は多くの種における多くの細胞環境で活発な反応を行い、これには場合によっては、哺乳動物および他の真核生物の染色体における挿入されたatt部位との、または内因性の擬似的なatt部位との効率的な相互作用も含まれる;(2)それぞれが異なるDNA認識特異性を備え、特性が明確にされた、これらの酵素の多くのファミリーメンバーを入手しうること。この特徴は、これらの酵素を別々に、または組み合わせて用いて、より複雑または逐次的なDNA操作の可能性を作り出せることを意味する;(3)トポロジー的な要求条件がないこと。環状、超らせん状、弛緩した環状、または線状の分子はいずれもこれらの酵素の効率的な基質であり、このことはより限定的なリコンビナーゼでは得られない可能性を切り開く;および(5)一方向性があり、小型のattB部位およびattP部位を用いる。この特徴は反応産物が安定で非可逆性であることを意味する。この特性は、高い正味の組込み効率を得るためには特に重要である。これらの特徴を通じて、セリンインテグラーゼはDNA操作を行う上での独特な利点を提供する。リコンビナーゼの他の群は、このような特性の組み合わせを有していない。
【0046】
セリンインテグラーゼには、phiC31、R4、TP901-1、A118、U153、phiFC1、Bxb1、phiBT1、phiRV-1およびその他が含まれ、その多くはSmith and Thorpe (2002)によって列挙されている。新たな細菌およびファージの単離および特徴決定を通じて、ならびにシークエンシングプロジェクトを通じて、セリンインテグラーゼファミリーのそのほかのメンバーも発見されつつある。いずれの場合にも、ポリペプチドは2つの特性によってセリンインテグラーゼ群に割り当てることができる。第一に、通常はタンパク質のアミノ末端の約140アミノ酸を占め、明確な二次および三次構造によって識別可能である、触媒性セリン残基を含む相同な触媒ドメインが、すべてのセリンリコンビナーゼに共通してみられる。二次構造予測プログラムは、これらの触媒ドメインのすべてが、約140アミノ酸を占めるβシートセグメントおよびαヘリックスセグメントから交互になる類似の構造を有することを強く予測している。
【0047】
インテグラーゼであるものだけでなく、セリンリコンビナーゼファミリーのすべての酵素は、この特徴的に折り畳まれた触媒ドメインを有する。場合によっては、インテグラーゼでないメンバーではこの触媒ドメインはアミノ末端にないが、それでも識別可能な構造である。Yang and Steitz (1995)によって分解能3.0オングストロームで解明されたγδリゾルベースの三次元結晶構造は、群全体の触媒ドメインの構造の代表であるように思われ、二次構造の予測とよく一致する。このため、他のセリンリコンビナーゼファミリーのメンバーの触媒ドメインの3-D構造も、γδに関して解明されたものと類似していることが推定される。協奏的な切り貼り反応および2塩基対コア配列間の鎖交換に関与する共通の反応機構も群の内部では共通である可能性が高いように思われる。
【0048】
セリンインテグラーゼファミリーの第2の際立った特徴は、450アミノ酸から600アミノ酸を超える長さのタンパク質をもたらしている、セリンリコンビナーゼにとっては非常に長い、タンパク質のカルボキシ末端部分である。本発明者らは、これらの長いセリンインテグラーゼが、以上に列記した特徴を有しており、小型のattB部位およびattP部位を有し、宿主補助因子がなくても働き、哺乳動物細胞などの真核細胞を含む異種細胞において機能することを示した。このファミリーの多くのメンバーに対する本発明者らの分析を通じて、これらの特徴がセリンインテグラーゼにとって一般的であり、それらに固有であることが明らかになった(Groth and Calos 2004;Groth et al. 2000;Olivares, Hollis and Calos 2001;Stoll, Ginsberg and Calos 2002)。このため、アミノ酸配列相同性および構造的類似性に基づいてこの群に分類される、今後発見されるであろう将来のファミリーメンバーも、これらと同じ特性を示し、類似の反応機構を共通に有することが期待される。
【0049】
触媒ドメインにおける共通の二次構造および三次構造上の特徴に加えて、セリンインテグラーゼは一方向性リコンビナーゼであるという機能的特徴を有する。すなわち、2つの同一な部位を交換するリゾルベースとは異なり、インテグラーゼは配列が異なるattBおよびattPという2つの部位を組み換える。反応の後には、インテグラーゼのみによっては作用を受けない2つのハイブリッド部位(attLおよびattR)が作り出される(Thorpe, Wilson and Smith 2000)。この逆反応を行うためには副次的な切出し酵素タンパク質が必要である。この特徴は、組込み事象などの所望の成果を安定化するために有用な、反応に対する固有の方向性を与える。attB部位およびattP部位は典型的には、2bpコアの周囲に配置された、往々にして幾分非対称的である部分的なパリンドロームから構成される。セリンインテグラーゼは、インビトロでのクローニング反応およびインビボでのベクター操作またはゲノム操作の両者に非常に適しており、広範囲にわたる用途に対して、他のタイプの部位特異的リコンビナーゼのものよりも汎用的で有利であるという特徴を備えている。
【0050】
セリンインテグラーゼクラスに属する酵素の野生型メンバーは、ゲノム操作に有用であることが、酵母(Thomason, Calendar and Ow 2001)、ショウジョウバエ(Groth et al. 2004)、植物(Luta et al. 2004)および哺乳動物(Groth et al. 2000)においてすでに示されている。米国特許第6,632,672号(これはその全体がすべての目的に関して参照として本明細書に組み入れられる)を参照されたい。この有用性を基礎として、本発明者らは、より高い組込み頻度、または擬似的なatt部位と命名された非野生型att部位に対するより高い結合選好性といった所定の用途に望ましいように研究者によって特徴が最適化された改変リコンビナーゼという概念を導入した。米国特許第6,808,925号(これはその全体がすべての目的に関して参照として本明細書に組み入れられる)を参照されたい。このような改変リコンビナーゼは多くの手段によって作製しうると考えられる。
【0051】
例えば、インテグラーゼ変異体のプールを作製するためにランダム変異誘発法を行い、その後にDNAのシャフリングおよびスクリーニング(Stemmer 1994)を用いて、ヒト第8番染色体上の内因性配列に対する選好性を有する変異型インテグラーゼが作製されている(Sclimenti, Thyagarajan and Calos 2001)。この擬似的なattP部位は、phiC31インテグラーゼの野生型attP部位に対してある程度の配列適合性(44%同一性)がある(Thyagarajan et al. 2001)。この研究において最も成功している変異体には、インテグラーゼタンパク質の全長にわたって散在するいくつかのアミノ酸変化があった。DNAシャフリングおよびスクリーニングの2回のサイクル後に得られた最良の改変インテグラーゼでは、ヒトゲノム中の第8番染色体上の標的部位での反応頻度が2〜3倍の高さであり、特異性は約5倍に高まった。特異性および活性のこのように相対的に穏やかな増加は、野生型phiC31インテグラーゼと比べて組込み頻度が全体として10分の1の低さであることを代償として得られた。改変インテグラーゼを作製するためのこのアプローチは、特異性が高くしかも効率も高いという酵素を作り出すことに関しては有用性が乏しいように思われる。
【0052】
「ハイブリッド型インテグラーゼ」または「ハイブリッド型リコンビナーゼ」と命名したものを作り出す、より厳しい形態の変異誘発法を本明細書に開示する。この概念は、本発明者らが、高められた有用性を備えた酵素を作り出すことを可能にする。ハイブリッド型インテグラーゼの概念は、インテグラーゼ活性を有する改良された触媒ドメインをDNA結合ドメイン(例えば、外来性または非生来性のDNA結合ドメイン)と融合させ、組込み反応に対する部位特異性を与えることを含む。外来性DNA結合ドメインは、別のセリンインテグラーゼなどの関連タンパク質からのものでもよく、またはそれが転写因子などのような関連のない天然のタンパク質もしくは人工的に設計されたDNA結合ドメインなどの合成タンパク質に由来してもよい。
【0053】
ハイブリッド型インテグラーゼの概念は、チロシンリコンビナーゼのものとは異なるセリンリコンビナーゼの構造的特徴を利用している。セリンリコンビナーゼは、タンパク質の触媒性およびDNA結合性の部分を含む離散的なドメインを有する。これらの2つのドメインは標的部位のDNAと別々に接触し、短いリンカー領域によって連結されている(Yang and Steitz 1995)。インテグラーゼではないセリンリコンビナーゼであるTn3リゾルベースに関して示されているように、このモジュール的な特徴は、外来性DNA結合ドメインを触媒ドメインと結合させ、改変されたDNA認識特異性を新たに示す機能的なリゾルベースをインビトロおよび大腸菌において作り出すことを可能にする(Akopian et al. 2003)。
【0054】
本発明者らがこのモジュール的な特徴を利用する仕方の一つは、ハイブリッド型リコンビナーゼに対して異なる結合特異性を付与するために、1つのセリンインテグラーゼに由来する慎重に最適化された触媒ドメインが別のリコンビナーゼファミリーメンバーに由来するDNA結合ドメインと融合されたものを含む融合体を作製することを含む。例えば、本発明者らは多くのセリンインテグラーゼが哺乳動物細胞において機能することを示している。それぞれのインテグラーゼは異なる認識配列を有する。しかし、これらのインテグラーゼのほとんどは哺乳動物染色体との反応効率が低く、ランダムな組込みのそれを下回る頻度でしか組込みを触媒しない。このため、これらの生来のタンパク質はゲノム修飾に対する有用性が乏しい。それらの有用性は、そのDNA結合ドメインと、哺乳動物染色体配列とより活発に反応するインテグラーゼphiC31またはR4に由来するもののようなより活性の高い触媒ドメインとの融合によって拡張することができる。
【0055】
さらに、人工的に設計された特異性を備えたインテグラーゼを作り出すという概念は、最適化されたセリンインテグラーゼ触媒ドメインを、ジンクフィンガー結合タンパク質などの他のクラスのタンパク質由来の外来性DNA結合ドメインと融合させることによって実現することができる。Cys2His2クラスのジンクフィンガーは、真核生物に認められる最も量の多いDNA結合モチーフの一つである(Elrod-Erickson and Pabo 1999)。これらのジンクフィンガータンパク質は、DNA配列の多様なセットを認識する。設計および選択の取り組みにより、特異性が改変された多くの変種型フィンガーが作製された。原子レベルの分解能で描出された最初のジンクフィンガー-DNA複合体には、Zif268の3つのフィンガーが含まれていた(Pavletich and Pabo 1991)。Zif268-DNA複合体の構造から、それぞれのフィンガーが短い二本鎖性の逆平行βシートおよびαヘリックスを含むことが明らかになった。シートおよびヘリックスは小さな疎水性コアおよび亜鉛イオン(これはシート領域からの2つの保存されたシステインおよびαヘリックスからの2つの保存されたヒスチジンと配位結合している)によって一つにまとまっている。フィンガーのそれぞれは、主溝内の塩基と接触するためにそのαヘリックスのアミノ末端部分からの残基を利用し、それぞれのフィンガーは3塩基対サブサイト(GCG/TGG/GCG)と一次的接触を行う。
【0056】
ジンクフィンガードメインとDNA配列との相互作用の様式は十分に記述されているため、多くの9bp DNA配列と結合すると考えられるジンクフィンガードメインを設計することが可能である(Tan et al. 2003)。ジンクフィンガー技術は、人工的に設計された組込みターゲティングを得るための強力なアプローチである。ジンクフィンガードメインを用いることによって組込みのターゲティングを行うためには、DNA結合ドメインを、ジンクフィンガードメインによって指定された位置でのDNAの切断および連結を実行しうる触媒ドメインと融合させる。phiC31などのセリンファージインテグラーゼのモジュラー的な強化された触媒ドメインは、今日までに記載された中でも最も効率的なこの種の部分であり、このため、人工的に設計された特異性を備えた部位特異的インテグラーゼを作り出すことを目標とする、人工的に設計されたジンクフィンガードメインにとって最良のパートナーである。
【0057】
phiC31のようないくつかのセリンファージインテグラーゼには哺乳動物染色体配列を基質として利用する能力が本来備わっているが、この能力を変異誘発法によって最適化することが可能である。セリンインテグラーゼによって媒介される哺乳動物ゲノムへの組込みに関する本発明者らの研究からは、基質として特定の染色体配列に作用する能力には染色体の状況も重要な役割を果たすことが示されている。この情報は細菌における研究からは導き出せない。
【0058】
1つの戦略において、本発明者らは、種々の条件における酵素の反応動態および効率を変化させる指定的変異を作製するために、セリン触媒ドメインおよびその活性部位の構成に本来備わっている構造的情報を利用した。これらの変化は、他のセリンリコンビナーゼファミリーメンバーのアミノ酸配列の比較により、およびいくつかのファミリーメンバーにとっては機能的な忍容性のある置換を他のメンバーの同起源の位置に導入することにより、情報として得られた。本発明者らはまた、他の環境において活性を高めるために好適であることがファミリーメンバーで見いだされている変異も導入した。候補変異体をヒト細胞などの所望の環境でアッセイする。いくつかの好適な変異を組み合わせて、相加的または相乗的な効果を生み出すことができる。その結果が、哺乳動物染色体などの特定の環境における組込み用に最適化された触媒ドメインである。もう1つの戦略は、ランダムに、またはアラニンによる荷電残基の置換といった指定的工程によって変異したインテグラーゼ由来の遺伝子の活性をスクリーニングすることに向けられる。
【0059】
人為的に最適化された触媒ドメインと外来性DNA結合ドメインとの組み合わせにより、所望の反応を親リコンビナーゼ酵素よりも高い効率で、しかも異なるDNA配列特異性を伴って遂行しうる、新規クラスのインテグラーゼが作り出される。
【0060】
本発明者らは、既存のゲノムホットスポット部位がphiC31インテグラーゼによって用いられることに関して、定方向進化を行うことによってある程度の修飾が可能であることを示している(Sclimenti, Thyagarajan and Calos 2001)。しかし、このアプローチではDNAのシャフリングおよびスクリーニングを2回行った後の特異性の増大は数倍とわずかであり、さらに回数を重ねてもそれ以上の改善は得られなかった。1つの標的部位に対する選好性はある程度改善されたが、全体的な取込み効率は10分の1に低下し、特異性の増大という利点が打ち消された(Sclimenti, Thyagarajan and Calos 2001)。その結果として、これらの方法によって作製されたこれまでの改変インテグラーゼには有用性はみられない。
【0061】
さらに、これまでに特徴決定がなされた野生型およびシャフリング型のインテグラーゼは両方とも、依然としてゲノム中の多くの部位で縮重性部位を認識する。哺乳動物ゲノム中の内因性部位またはあらかじめ配置されたatt部位に対する特異性が比較的低いことは、望ましくない位置での組込みのおそれ、および転座または他の望ましくない染色体再配列を生じる可能性のある染色体部位間の反応のおそれにつながる。
【0062】
同一の分子に対して特異性の最適化および組込み頻度の最適化を同時に行うことは不可能なおそれがある。その代わりに、組込み頻度の最適化を触媒ドメインに対して行い、このドメインを所望のDNA結合特性に関して最適化されたDNA結合ドメインと融合させれば、関心対象のインテグラーゼを構築するためのより効率的な方式が得られる可能性がある。したがって、インテグラーゼをモジュール的な方式で構築してハイブリッド型インテグラーゼを最終的に得ることは、単一ポリペプチド鎖として酵素の複数の特徴を最適化するよりは優れるように思われる。
【0063】
強固に結合するDNA認識ドメインを備えたハイブリッド型インテグラーゼの重要な利点は、より高い程度の配列特異性が可能なことである。例えば、ジンクフィンガーDNA結合ドメインは、生来のファージインテグラーゼよりも強くDNAと結合する。この高い結合親和性はより高い特異性を媒介するため、一意的な標的を標的とすることができ、望ましくない組込み事象または染色体異常を生じさせる可能性のある有害な副反応を伴わない。例えば、ジンクフィンガー転写因子が、ヒトゲノム中の単一の遺伝子のみを標的として、特定の18bp認識配列を標的化しうることが示されている(Tan et al. 2003)。この特異性のレベルは、野生型または改変型のファージインテグラーゼで今日までに認められているものよりも高い(Sclimenti, Thyagarajan and Calos 2001;Thyagarajan et al. 2001)。このため、ハイブリッド型インテグラーゼのアプローチを用いて、以前に記載されたどのアプローチを用いた場合よりも安全性および精度のレベルが高い部位特異的組換え用ツールを作り出すことができる。所定の配列特異性を有する効率的なインテグラーゼを作り出せることは、遺伝子工学に対する新たな展望を真に開くものである。
【0064】
これらのタイプの明確に方向が定められた変化は、現時点では相同組換えのみによって行いうるが、これは効率の低いプロセスであり、挿入されるDNAのサイズが大きくなり、側方の相同部分のサイズが小さくなるほどさらに非効率的になる。相同組換えの頻度は、二本鎖切断の標的化された配置の使用によって改良されてきた。しかし、技術が二本鎖切断を正確かつ効率的に挿入することに関して完璧であるとしても、相同組換えのプロセスは依然として一般的には1%またはそれ未満の頻度でしか起こらない。これは多くの調節機構と結び付いた内因性の遺伝的プロセスであり、内因性の染色体組換えにも影響を及ぼすため、おそらくその効率には自然な限界があるように思われる。相同組換えの頻度は、有効な遺伝子治療を提供するためには低すぎる。インテグラーゼ活性を有する酵素を、厳密な認識特異性を有するDNA結合ドメインと融合させれば、指定的な変化をより高い効率で行うことができる。
【0065】
4.適用
本明細書のハイブリッド型リコンビナーゼには、ゲノム研究および治療薬を非制限的に含む、数多くの適用がある。例えば、本明細書のハイブリッド型リコンビナーゼは、遺伝子治療に利用することができる。
【0066】
ターゲティング用ハイブリッド型リコンビナーゼ
本発明は、関心対象のポリヌクレオチド(または核酸配列)のゲノムへの標的指向性挿入のための手段であって、例えば、(i)第1の組換え部位(人工的に設計された部位またはベクター部位)と第2の組換え部位(標的部位)との間の組み換えを促進しうるハイブリッド型リコンビナーゼを提供する段階、(ii)第1の組換え配列および関心対象のポリヌクレオチドを有するターゲティング用構築物を提供する段階、(iii)ハイブリッド型リコンビナーゼおよびターゲティング用構築物を、その核酸中に第2の組換え部位を含む細胞に導入する段階であって、前記導入が、ハイブリッド型リコンビナーゼが第1および第2の組換え部位間の組み換え事象を促進することを可能にする条件下で行われる段階、による手段を提供する。
【0067】
歴史的には、細菌ゲノム中の付着部位は「attB」と命名されており、対応するバクテリオファージではその部位は「attP」と命名されている。関心対象の細胞における組換え部位を、本明細書では「attT」(標的部位)と命名する。ターゲティング用ベクター中の組換え部位を、本明細書では「attD」(人工的に設計された部位)と称する。
【0068】
本発明の1つの局面において、ハイブリッド型セリンインテグラーゼは、改良された触媒ドメインが外来性DNA結合ドメインと融合されたものを含む。外来性DNA結合ドメインは、別のセリンインテグラーゼなどの関連タンパク質からのものでもよく、またはそれが転写因子などのような関連のない天然のタンパク質もしくは人工的に設計されたDNA結合ドメインなどの合成タンパク質に由来してもよい。
【0069】
ハイブリッド型リコンビナーゼの導入
本発明の方法では、ゲノムを改変しようとする細胞に部位特異的ハイブリッド型リコンビナーゼを導入する。機能的タンパク質を細胞に導入する方法は当技術分野で周知である。精製されたリコンビナーゼタンパク質の導入はタンパク質およびその機能の一過性の存在を確実なものとするが、これは多くの場合に好ましい態様である。また、インテグラーゼをその対応するmRNAとして標的細胞に導入することもできる。インテグラーゼmRNAを、例えば、標的細胞に微量注入することができる(Groth et al. 2004)。または、ハイブリッド型リコンビナーゼをコードする遺伝子を、細胞の形質転換のために用いる発現ベクター中に含めることもできる。ハイブリッド型リコンビナーゼは、改変しようとするゲノムへの核酸断片の挿入のために必要な時にのみ存在することが一般に好ましい。このため、タンパク質、mRNAおよびほとんどの発現ベクターに付随してみられる永続性の欠如は有害ではないと考えられる。
【0070】
本発明の実施に用いられるハイブリッド型リコンビナーゼは、ターゲティング用ベクターの導入の前、それと同時またはその後に、標的細胞に導入することができる。ハイブリッド型リコンビナーゼは、例えばリポソーム、コーティングした粒子または微量注入を用いて、タンパク質として細胞に直接導入することができる。または、ハイブリッド型リコンビナーゼをコードするポリヌクレオチドを、適した発現ベクターを用いて細胞に導入することもできる。上記のターゲティング用ベクターの構成要素は、関心対象のハイブリッド型リコンビナーゼをコードする配列を含む発現カセットの構築に有用である。ハイブリッド型リコンビナーゼの発現は、一般的には一過性であることが望まれる。したがって、ハイブリッド型リコンビナーゼの一過性発現をもたらすベクターが、本発明の実施には好ましい。しかし、ハイブリッド型リコンビナーゼの発現を、他の方式で、例えばハイブリッド型リコンビナーゼの発現を調節性プロモーター(すなわち、その発現を選択的に誘導または抑制しうるプロモーター)の制御下に置くことによって調節することもできる。
【0071】
本発明の実施において有用なリコンビナーゼをコードする配列は公知であり、以下のものが非制限的に含まれる:Cre--Sternberg, et al., J. Mol. Biol. 187: 197-212;phiC31--Kuhstoss and Rao, J. Mol. Biol. 222: 897-908, 1991;TP901-1--Christiansen, et al., J. Bact. 178: 5164-5173, 1996;R4--Matsuura, et al., J. Bact. 178: 3374-3376, 1996, PhiBT1--Gregory et al. 2003。
【0072】
本発明の実施に用いるためのハイブリッド型リコンビナーゼは、以前に記載されたようにして組換え的に生産すること、または精製することができる。所望のリコンビナーゼ活性を有するポリペプチドは、サイズ分画、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティークロマトグラフィー、HPLC、イオン交換クロマトグラフィー、ヘパリンアガロースアフィニティークロマトグラフィーを非制限的に含む、当技術分野で公知のタンパク質精製の方法により、所望の程度の純度に精製することができる(例えば、Thorpe & Smith、Proc. Nat. Acad. Sci. 95: 5505-5510, 1998)。
【0073】
遺伝子治療
遺伝子治療の用途は通常、長期的な遺伝子発現を必要とする。このような発現は多くの場合、ゲノムへの治療用遺伝子の組込みによって最も容易に得ることができる。本発明者らは、マウス肝臓(Olivares et al. 2002)およびヒト皮膚(Ortiz-Urda et al. 2003;Ortiz-Urda et al. 2002)において、遺伝子治療の用途のためのこのような長期的な遺伝子発現を得る上でのファージインテグラーゼphiC31の有用性を示している。本発明者らはまた、インテグラーゼが筋肉、眼、血液細胞およびその他において十分に機能することも示している。
【0074】
野生型phiC31インテグラーゼは、ファージattP部位と部分的な同一性のある、ヒトゲノム中の数多くの配列を標的とする。ホットスポット部位もまた、インテグラーゼがこれらの部位により容易に到達することを可能にする好都合な状況的特徴をおそらく有すると思われる。しかし、phiC31および他の部位特異的ファージインテグラーゼによって利用される組込み部位はインテグラーゼに固有のDNA結合選好性によって指定され、研究者が選択することはできない。このため、部位の染色体上の位置は実験的な制御下にはない。組込み部位のいくつかは、安全性および有効性の観点からは望ましくない可能性がある。
【0075】
野生型ファージインテグラーゼ技術を用いて、研究者が望む内因性位置を組込み事象の標的とすることはできない。もしターゲティングが可能であるならば、例えば、最大限の安全性のために、挿入された遺伝子によって他の遺伝子が破壊されもせず影響も受けないと考えられる領域などのようなゲノム領域を選択しうるであろう。または、挿入された遺伝物質を、エリスロポエチンなどの所望の遺伝子産物の活性化、またはドミナントネガティブ遺伝子産物のような望ましくない遺伝子産物の破壊といった所望の変化をゲノム中に生じさせるように配置しうるであろう。もう1つの選択肢は、遺伝子の正しい部分が変異型の代わりにスプライシングを受けて嚢胞性繊維症膜貫通受容体の場合のように一般的な変異が除去されるように、遺伝子の正しい部分をイントロン内部などの妥当な位置に導入することである。
【0076】
したがって、1つの態様において、本発明は、そのような治療を必要とする対象における障害を治療する方法であって、対象の少なくとも1つの細胞または細胞種(または組織など)が標的組換え配列(attTと命名)を有するような方法である。この細胞を、第2の組換え配列(attDと命名)および関心対象の1つまたは複数のポリヌクレオチド(典型的には治療的遺伝子)を含む核酸構築物(「ターゲティング用構築物」)によって形質転換する。同じ細胞に、組換え配列を特異的に認識するハイブリッド型リコンビナーゼを、関心対象の核酸配列が、attTとattDとの間の組換え事象を介してゲノム中に挿入されるような条件下で導入する。本発明の方法を用いて治療しうる対象には、ヒトおよび非ヒト生物(例えば、動物、植物)の両方が含まれる。このような方法は、本発明のターゲティング用構築物およびハイブリッド型リコンビナーゼを利用する。
【0077】
さまざまな疾患を本発明の方法を用いることによって治療することができ、これには単一遺伝子病、感染症、後天性疾患、癌などが含まれる。例示的な単一遺伝子病には、重症複合免疫不全症(SCID)-ADA、嚢胞性繊維症、家族性高コレステロール血症、血友病、慢性肉芽腫性疾患、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ファンコニ貧血、鎌状赤血球貧血、ゴーシェ病、ハンター症候群、X連鎖性SCID、サラセミア、網膜色素変性、色素性乾皮症、血管拡張性失調症、ブルーム症候群、網膜芽細胞腫、テイ・サックス病、α-1-アンチトリプシン欠損症、家族性高コレステロール血症、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ欠損症および血友病などが含まれる。
【0078】
本発明の方法を用いることによって治療しうる感染症には、ヒトT細胞リンパ好性ウイルス、インフルエンザウイルス、パピローマウイルス、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン-バーウイルス、免疫不全症ウイルス(HIVなど)、サイトメガロウイルスなどを含む、さまざまなタイプのウイルスによる感染が含まれる。また、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)などの他の病原性生物、または熱帯マラリア原虫(Plasmodium falciparum)などの寄生生物による感染症も含まれる。
【0079】
本明細書で用いる「後天性疾患」という用語は、先天的でない疾患のことを指す。このような疾患は一般に、単一遺伝子病よりも複雑であると考えられ、1つまたは複数の遺伝子の不適切なまたは望ましくない活性に起因する場合がある。このような疾患の例には、末梢動脈疾患、関節リウマチ、冠動脈疾患、癌、糖尿病、パーキンソン病、黄斑変性、糖尿病性網膜症などが含まれる。
【0080】
本発明の方法を用いることによって治療しうる後天性疾患の具体的な群には、固形腫瘍ならびに白血病およびリンパ腫を含む造血系悪性腫瘍の両方を含む、さまざまな癌が含まれる。本発明の方法を利用して治療しうる固形腫瘍には、上皮性悪性腫瘍、肉腫、骨腫、線維肉腫、軟骨肉腫などが含まれる。具体的な癌には、乳癌、脳悪性腫瘍、肺癌(非小細胞および小細胞)、結腸癌、膵癌、前立腺癌、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌などが含まれる。
【0081】
ゲノム中の特定の場所の組込みに関する適性は、一部には、治療しようとする特定の疾患に依存する。例えば、疾患が単一遺伝子疾患であり、所望の治療が、その疾患の原因因子と考えられている核酸の非変異型をコードする治療用核酸の添加であるならば、適した場所は、任意の既知のタンパク質をコードせず、添加された核酸の妥当な発現レベルを可能にするゲノムの領域であると思われる。
【0082】
この態様において有用な核酸構築物は、さらに、関心対象の1つまたは複数の核酸断片を含む。この態様に用いるための好ましい関心対象の核酸断片は、以前に定義したような治療用遺伝子および/または調節領域である。核酸配列の選択は、治療しようとする疾患の性質に依存すると考えられる。例えば、凝固因子IXの欠損に起因する血友病Bを治療することを意図した核酸構築物は、機能的な第IX因子をコードする核酸断片を含んでよい。閉塞性末梢動脈疾患を治療することを意図した核酸構築物は、新たな血管の成長を刺激する、例えば血管内皮増殖因子、血小板由来増殖因子などのタンパク質をコードする核酸断片を含んでよい。当業者は、関心対象の核酸断片が特定の疾患の治療に有用と考えられることを直ちに認識するであろう。
【0083】
核酸構築物は、治療しようとする対象に対して、さまざまな方法を用いて投与することができる。投与はインビボでもエクスビボでも行いうる。「インビボ」とは、動物の生体内であることを意味する。「エクスビボ」とは、細胞または臓器が身体の外側に変更されていることを意味する。このような細胞または臓器は、典型的には生体へと戻される。
【0084】
核酸構築物の治療的投与のための方法は当技術分野で周知である。核酸構築物は、陽イオン性脂質を用いて(Goddard, et al, Gene Therapy, 4: 1231-1236, 1997;Gorman, et al, Gene Therapy 4: 983-992, 1997;Chadwick, et al, Gene Therapy 4: 937-942, 1997;Gokhale, et al, Gene Therapy 4: 1289-1299, 1997;Gao and Huang, Gene Therapy 2: 710-722, 1995。これらはすべて参照として本明細書に組み入れられる)、ウイルスベクターを用いて(Monahan, et al, Gene Therapy 4: 40-49, 1997;Onodera, et al, Blood 91: 30-36, 1998。これらはすべて参照として本明細書に組み入れられる)、「裸のDNA」の取込み、電気穿孔、パルス式電子なだれ装置などにより、送達することができる。細胞のトランスフェクションのための当技術分野で周知の手法(以上の考察を参照)を、核酸構築物のエクスビボ投与のために用いることができる。厳密な配合、投与経路および投与量は、患者の状態に鑑みて個々の医師が選択することができる(例えば、Fingl et al., 1975, 「The Pharmacological Basis of Therapeutics」, Ch.1 plを参照)。
【0085】
主治医は、毒性、または臓器の機能不全などに起因する治療の終了、中断または投与の調節を行う仕方および時期を認識しているであろうことに留意すべきである。また反対に、主治医は臨床反応が十分でない場合(毒性は除く)に治療をより高いレベルに調節する仕方および時期も認識していると考えられる。治療される疾患の管理における投与量の多さは、治療しようとする状態の重症度、投与経路などによって変わると考えられる。状態の重症度は、例えば、標準的な予後評価方法によって部分的には評価することができる。さらに、投与量およびおそらくは投与頻度も、個々の患者の年齢、体重および反応によって変わると考えられる。
【0086】
一般的には、ゲノム改変のための標的とされた細胞の少なくとも1〜10%が疾患の治療で改変されるべきである。したがって、投与の方法および経路は、投与毎に標的細胞の少なくとも0.1〜1%が改変されるように最適に選択されると考えられる。このようにして、治療の効率および便宜性を高める目的で投与の回数を最小限に留めることができる。
【0087】
治療される具体的な状態に応じて、このような薬剤を製剤化して全身性または局所的に投与することができる。製剤化および投与のための手法は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」 1990, 18th ed., Mack Publishing Co., Easton, Paに記載されている。適した経路には、いくつかを挙げるならば、経口的、直腸内、経皮的、膣内、経粘膜的または腸管投与;筋肉内、皮下、髄内注射、さらには髄腔内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内または眼内注射を含む非経口的送達が含まれうる。
【0088】
治療される対象には、使用のために選択されたattTおよびattD組換え配列を認識するハイブリッド型リコンビナーゼがさらに投与されると考えられる。個々のリコンビナーゼは、それをコードする核酸を核酸構築物の一部として、またはゲノムを改変しようとする細胞によって取り込まれるタンパク質として含めることにより、投与することができる。投与の方法および経路は、組換え配列および関心対象の核酸配列を含むターゲティング用構築物の投与に関して上述したものと同様である。ハイブリッド型リコンビナーゼタンパク質は、関心対象の核酸配列の組込みのための限定的な期間にのみ必要である可能性が高い。このため、ハイブリッド型リコンビナーゼ遺伝子として導入する場合には、ハイブリッド型リコンビナーゼ遺伝子を保有するベクターは、長期的な残留を媒介する配列を欠くと考えられる。例えば、従来のプラスミドDNAは、ほとんどの哺乳動物細胞では急速に減衰する。ハイブリッド型リコンビナーゼ遺伝子にも、その発現を制限する遺伝子発現配列を備えることができる。例えば、ハイブリッド型リコンビナーゼの発現を誘導物質に対する限定的な曝露によって時間的に限定しうるように、誘導性プロモーターを用いることができる。このような例示的なプロモーター群の一つは、テトラサイクリンまたはドキシサイクリンによって発現を調節することができるテトラサイクリン応答性プロモーターである。
【0089】
幹細胞
胚および成体の幹細胞および前駆細胞は、心臓、脳、血管、脊髄ならびに可能性としては肝臓、膵臓および多くの他のものといった組織における、組織損傷の修復を賦活化する能力を有することが明らかになってきた。多くの場合、遺伝子を追加すれば、幹細胞が修復を遂行する能力を強化することができる。例えば、心発作に起因する損傷を修復する能力は、損傷領域に配置された幹細胞からのVEG-Fなどの増殖因子の分泌によって強化しうるように思われる。
【0090】
現在は、従来のレトロウイルス、レンチウイルスベクターおよび他のランダムな組込み法が、幹細胞を改変するために用いられる主なツールである。遺伝子治療などの場合、ランダムな組込みは腫瘍を惹起する恐れがあり、挿入遺伝子の発現の乏しさもしばしば起こる。このため、幹細胞における挿入遺伝子の正確な部位特異的配置により、幹細胞治療アプローチの安全性および有効性が高まると考えられる。
【0091】
トランスジェニック生物
もう1つの態様において、本発明は、本明細書に記載の方法および組成物を用いることによってゲノムが改変されたトランスジェニック植物および非ヒトトランスジェニック動物を含む。トランスジェニック動物は、さまざまな疾患の研究のため、およびこのような疾患を是正する薬剤のスクリーニングのためのモデル系として役立てるために、本発明の方法を用いて作製することができる。
【0092】
「トランスジェニック」植物または動物とは、遺伝子操作された植物もしくは動物、または遺伝子操作された植物もしくは動物の子孫のことを指す。トランスジェニック植物または動物は通常、関連のない少なくとも1つの生物からの、例えばウイルスなどからの材料を含む。トランスジェニック生物の文脈において本明細書で用いる「動物」という用語は、ヒトを除くすべての動物種を意味する。これはまた、胚および胎児の段階を含む、発生のすべての段階にある個々の動物も含む。家畜(例えば、ニワトリ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ウサギなど)、齧歯動物(マウスなど)および家庭内ペット(例えば、ネコおよびイヌ)が、本発明の範囲に含まれる。1つの好ましい態様において、動物はマウスまたはラットである。
【0093】
「キメラ」植物または動物とは、その植物または動物のすべての細胞ではないが一部の細胞で、異種遺伝子が認められる、または異種遺伝子が発現される植物または動物のことを指して用いられる。
【0094】
トランスジェニック動物には生殖細胞系トランスジェニック動物も含まれる。「生殖細胞系トランスジェニック動物」とは、本発明の方法によって提供される遺伝情報が生殖系列細胞によって取り込まれて組み入れられ、そのためにその情報を子孫に伝える能力が与えられたトランスジェニック動物のことである。このような子孫が実際にその情報の一部またはすべてを有するならば、それらも同じくトランスジェニック動物である。
【0095】
トランスジェニック植物および動物を作製する方法は当技術分野で公知であり、本出願の開示と組み合わせて用いることができる。
【0096】
1つの態様において、本発明のトランスジェニック動物は、単一細胞胚に対して、その細胞の由来となった生物のゲノム内部に認められるattT組換え部位との組換えが可能なattD組換え部位、および関心対象の核酸断片を含む核酸構築物を、関心対象の核酸断片が成熟動物の生殖系列細胞のDNAに安定的に組み込まれ、正常なメンデル様式で遺伝されるような様式で導入することによって作製される。
【0097】
この態様において、関心対象の核酸断片は、前述した断片の任意のものでありうる。または、関心対象の核酸配列が、内因性に産生される関心対象のタンパク質の発現に妨害または干渉を与え、関心対象のタンパク質の発現が低下したトランスジェニック動物を生じさせる外因性産物をコードすることもできる。
【0098】
トランスジェニック動物の作製のためにはさまざまな方法を利用することができる。本発明の核酸構築物は、雄性もしくは雌性の前核が融合する前に受精卵の前核もしくは細胞質中に注入すること、または細胞分裂の開始後に胚細胞の核(例えば、二細胞胚の核)に注入することができる(Brinster, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 82:4438, 1985)。胚を、attD組換え部位および関心対象の核酸配列によって改変されたウイルス、特にレトロウイルスに感染させることもできる。細胞はさらに、関心対象の核酸配列のゲノムへの組込みを促進するために、上記の部位特異的リコンビナーゼで処理することができる。
【0099】
単なる一例としては、トランスジェニックマウスを作製するには、雌性マウスが過剰排卵するように誘導する。交尾させた後に、雌をCO2窒息または頸椎脱臼によって屠殺し、切開した卵管から胚を取り出す。周囲の卵丘細胞は除去する。続いて、前核期の胚を洗浄し、注入時まで保存する。無作為な周期にある成体雌性マウスを精管切除した雄とつがわせる。同時にレシピエント雌をドナー雌と交尾させる。その後に胚を外科的に移入する。トランスジェニックラットの作製のための手順はマウスのものと同様である。Hammer, et al., Cell 63: 1099-1112, 1990を参照のこと)。トランスジェニック実験のために適した齧歯動物は、Charles River(Wilmington, Mass.)、Taconic(Germantown, N.Y.)、Harlan Sprague Dawley(Indianapolis, Ind.)などの標準的な販売元から入手可能である。
【0100】
齧歯動物胚の操作のため、および接合体の前核へのDNAの微量注入のための手順は、当業者に周知である(Hogan, et al., 前記)。魚類、両生類の卵および鳥類に対する微量注入の手順は、Houdebine and Chourrout, Experientia 47: 897-905, 1991)に詳述されている。動物の組織へのDNAの導入のためのその他の手順は、米国特許第4,945,050号(Sandford et al., Jul. 30, 1990)に記載されている。
【0101】
胚の内部細胞塊に由来し、培養下で安定化された全能性または多能性の幹細胞は、本発明の方法を用いて核酸配列を組み入れるように培養下で操作することができる。胚盤胞に注入し、その後に代理母に移植して出産まで育てさせることにより、トランスジェニック動物をこのような細胞から作製することができる。
【0102】
幹細胞の培養、および、電気穿孔、リン酸カルシウム/DNA沈降、微量注入、リポソーム融合、レトロウイルス感染などの方法を用いた幹細胞へのDNAの導入によるその後のトランスジェニック動物の作製のための方法も、当業者には周知である。例えば、「Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells, Practical Approach」, E. J. Robertson, ed., IRL Press, 1987を参照のこと)。哺乳動物(マウス、ブタ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ウシ)受精卵への異種DNAの微量注入のための標準的な実験手順には、以下のものが含まれる:Hogan et al.,「Manipulating the Mouse Embryo(Cold Spring Harbor Press 1986);Krimpenfort et al., 1991, Bio/Technology 9:86;Palmiter et al., 1985, Cell 41: 343;Kraemer et al., Genetic Manipulation of the Early Mammalian Embryo(Cold Spring Harbor Laboratory Press 1985);Hammer et al., 1985, Nature, 315: 680;Purcel et al., 1986, Science, 244: 1281;Wagner et al., 米国特許第5,175,385号;Krimpenfort et al., 米国特許第5,175,384号(これらのそれぞれの内容は参照として本明細書に組み入れられる)。
【0103】
手順の最終相は、標的としたES細胞を胚盤胞に注入し、胚盤胞を偽妊娠させた雌に移入することである。その結果得られたキメラ動物を交配させ、子孫をサザンブロット法またはPCRによって分析して、導入遺伝子を保有する個体を同定する。非齧歯類哺乳動物および他の動物の作製のための手順は他の者によって考察されている(Houdebine and Chourrout, 前記;Pursel, et al., Science 244: 1281-1288, 1989;およびSimms, et al., Bio/Technology 6: 179-183, 1988を参照のこと)。
【0104】
本明細書で用いるトランスジェニックという用語は、さらに、特異的な遺伝子ノックアウトを誘導するために、早期胚もしくは受精卵のインビトロ操作によって、または任意のトランスジェニック技術によってゲノムが改変されたあらゆる生物を含む。本明細書で用いる「遺伝子ノックアウト」という用語は、本発明のベクターの使用によって実現された機能の喪失を伴う、インビボでの遺伝子の標的指向性破壊のことを指す。1つの態様において、遺伝子ノックアウトを有するトランスジェニック動物とは、遺伝子配列の内部に位置する擬似的な組換え部位のターゲティングによって非機能性にしようとする遺伝子を標的とした挿入により、標的遺伝子が非機能性となったもののことである。
【0105】
遺伝子治療、幹細胞、トランスジェニック動物および植物、遺伝子発現、細胞系およびタンパク質産生の多くの応用の例は、米国特許第6,632,672号、米国特許第6,808,925号および国際特許出願PCT/US03/17702号に記載されており、これらの出願はその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0106】
細胞およびタンパク質生産
細胞系は生物現象を研究するためのモデル系としてしばしば用いられる。規定の配列を加えることによってこの状況で細胞系を操作することで、特定の遺伝子、調節配列などの影響に関する情報を得るための大きな恩典を得ることができる。高等細胞における遺伝子発現に関しては状況的影響が広くみられるため、挿入された遺伝子の染色体的な状況を制御することが望ましい。効率的な位置指定組込みの開発により、これらの種類の検討を正確かつ再現性のある仕方で行うことが可能になると考えられ、得られたデータの質もランダム組込みを用いて得られる結果よりも優れると考えられる。
【0107】
新たに加わった遺伝子を所望の位置に再現性を伴って配置させることができれば、培養細胞および生物体におけるタンパク質生産方法の効率も大きく高まると考えられる。
【0108】
本発明の方法を用いる改変のために適した細胞には、原核細胞および真核細胞の両方が含まれる。原核細胞は、境界が定められた核を持たない細胞のことである。適した原核細胞の例には、細菌細胞、マイコプラズマ細胞および古細菌細胞が含まれる。特に好ましい原核細胞には、さまざまなタイプの試験系において有用なもの(以下にさらに詳細に考察する)、または何らかの産業的有用性のあるもの、例えばクレブシエラ・オキシトカ(Kiebsiella oxytoca)(エタノール生産)、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)(ブタノール生産)などが含まれる(Green and Bennet, Biotech & Bioengineering 58: 215-221, 1998;Ingram, et al, Biotech & Bioengineering 58: 204-206, 1998)。適した真核細胞には、動物細胞(昆虫、齧歯動物、ウシ、ヤギ、ウサギ、羊、非ヒト霊長動物、ヒトなど)および植物細胞(イネ、ワタ、タバコ、トマト、ジャガイモなど)の両方が含まれる。特定の目的に適用しうる適した細胞種については、以下にさらに詳細に考察する。
【0109】
本発明のさらにもう1つの態様は、単離された遺伝子操作細胞を含む。以上に考察したように、適した細胞は原核細胞でも真核生物でもよい。本発明の遺伝子操作細胞は、単細胞生物でもよく、または多細胞生物に由来してもよい。多細胞生物に由来する遺伝子操作細胞への言及における「単離された」とは、植物または動物の別を問わず、細胞が生体の外側にあり、人工的な環境にあることを意味する。単離されたという用語の使用は、遺伝子操作細胞が、存在する唯一の細胞であることを意味しない。
【0110】
1つの態様において、本発明の遺伝子操作細胞は、本発明の核酸構築物のいずれか1つを含む。第2の態様において、組換え配列を特異的に認識するハイブリッド型リコンビナーゼが、関心対象の核酸配列がゲノム中に挿入されると考えられる条件下で、本発明の核酸構築物の1つを含む遺伝子操作細胞に導入される。したがって、遺伝子操作細胞は改変されたゲノムを有する。このようなハイブリッド型リコンビナーゼを導入するための方法は当技術分野で周知であり、以上に考察されている。
【0111】
本発明の遺伝子操作細胞はさまざまな様式で用いることができる。単細胞生物を、組換えタンパク質、産業用溶剤、産業的に有用な酵素などの商業的に価値のある物質を生産するように改変することができる。好ましい単細胞生物には、酵母(例えば、分裂酵母(S. pombe)、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)、S.セレビシエ(S. cerevisiae)(INVSc1など)など)、アスペルギルス属などの真菌、およびクレブシエラ属、ストレプトマイセス属などの細菌が含まれる。
【0112】
多細胞生物からの単離細胞も同様に有用であり、これには昆虫細胞、哺乳動物細胞および植物細胞が含まれる。有用と思われる哺乳動物細胞には、齧歯動物、霊長動物などに由来するものが含まれる。それらには、HeLa細胞、VERO、3T3もしくはCHOK1、HEK 293細胞といった線維芽細胞由来の細胞、またはリンパ系由来の細胞(32D細胞など)およびそれらの派生物が含まれる。好ましい哺乳動物宿主細胞には、CHO、32Dなどの非付着性細胞が含まれる。
【0113】
さらに、植物細胞を宿主として利用することもでき、カリフラワーモザイクウイルス35Sおよび19S、ノパリンシンターゼプロモーターならびにポリアデニル化シグナル配列といった植物細胞と適合性のある調節配列を利用することもできる。適切なトランスジェニック植物細胞を用いてトランスジェニック植物を作製することができる。
【0114】
もう1つの好ましい宿主は、昆虫細胞、例えばショウジョウバエ幼虫からのものである。昆虫細胞を宿主として用いると、ショウジョウバエアルコールデヒドロゲナーゼプロモーターを用いることができる(Rubin, Science 240: 1453-1459, 1988)。または、バキュロウイルスベクターを、所望の核酸配列によってコードされるペプチドを昆虫細胞で大量に発現させるために操作することもできる(Jasny, Science 238:1653, 1987);Miller et al., 「Genetic Engineering」(1986)中、Setlow, J. K., et al., eds., Plenum, Vol. 8, pp. 277-297)。
【0115】
本発明の遺伝子操作細胞はさらに、関心対象の核酸断片によってコードされるタンパク質の活性を調節しうる物質に関するスクリーニングのためのツールとしても有用である。したがって、本発明のさらにもう1つの態様は、スクリーニングの方法であって、本発明の遺伝子操作細胞を被験物質と接触させる段階、および細胞を、被験物質と接触していない被験細胞と比較して、細胞表現型、細胞増殖、細胞分化、タンパク質の酵素活性、またはタンパク質とそのタンパク質の天然の結合パートナーとの間の相互作用の変化に関してモニターする段階を含む方法を含む。
【0116】
ペプチド、タンパク質、抗体、低分子量有機化合物、例えば真菌細胞または植物細胞に由来する天然物などを含む、さまざまな被験物質を、本発明の遺伝子操作細胞を用いて評価することができる。「低分子量有機化合物」とは、分子量が一般に500〜1000未満である化学種のことを意味する。被験物質の源は当業者に周知である。
【0117】
細胞を用いるさまざまなアッセイ方法が当業者に周知である。それらには、例えば、酵素活性に関するアッセイ(Hirth, et al, 米国特許第5,763,198号、1998年6月9日発行)、遺伝子操作細胞によって発現されたタンパク質に対する被験物質の結合に関するアッセイ法、レポーター遺伝子の転写活性化に関するアッセイ法などが含まれる。
【0118】
本発明の方法によって改変された細胞は、例えば、(i)それらを生き続けさせるが増殖は促進しない、(ii)細胞の増殖を促進する、および/または(iii)細胞の分化または脱分化を引き起こすといった条件下で維持することができる。細胞培養条件は、典型的には、細胞におけるハイブリッド型リコンビナーゼの作用に対して許容性であるが、ハイブリッド型リコンビナーゼの活性の調節が培養条件(例えば、細胞を培養する温度を上昇または低下させること)によって修飾されてもよい。所定の細胞、細胞種、組織または生物体に関して、培養条件は当技術分野で公知である。
【0119】
無細胞クローニング反応および生細胞の両方において有用なゲノム操作のもう1つのカテゴリーは、1つのDNA分子から別のものへの交換を正確に操作するためにリコンビナーゼを用いることである。このような反応にはいくつかのカテゴリーがあり、そのすべてにハイブリッド型リコンビナーゼで対処することができる。
【0120】
もう1つの有用な反応は、分子内欠失を作り出すためにハイブリッド型セリンインテグラーゼを用いることを含む。例えば、ハイブリッド型リコンビナーゼを有するミニベクターを作製することができる。例えば、遺伝子治療のためには、ハイブリッド型リコンビナーゼの部位特異的組換え活性を利用して、ベクター上の望ましくない随伴配列のすべて(しばしば「骨格」と呼ばれる)を効率的に切り出し、関心対象の治療用遺伝子のみを含むミニプラスミドを効果的に作製することができる。また、ハイブリッド型リコンビナーゼを用いて染色体内部の欠失または逆位を作り出すこともできる。
【0121】
5.キット
本発明はまた、1つまたは複数のバイアルまたは容器を含むキットも想定している。1つの態様において、キット中の1つまたは複数のバイアルは、本明細書に開示したハイブリッド型リコンビナーゼを含む。1つの態様において、別のバイアルが標的構築物を含むこともできる。キットはまた、内部に含まれるハイブリッド型リコンビナーゼおよび標的構築物をいかにして用いるかについての説明書も含みうる。
【0122】
実施例
実施例1.別のセリンインテグラーゼからのDNA結合ドメインを導入することによるハイブリッド型セリンインテグラーゼの作製
phiC31インテグラーゼは、哺乳動物ゲノム中への限定された数の内因性部位での組込みに有用であってトランスフェクト細胞の効率が約5%であることが実証されている。組込み効率を高められれば、インテグラーゼはさらに有用と思われる。さらに、この酵素によって認識されるいくつかの擬似的なattP部位は遺伝子治療のためには望ましくない可能性がある。例えば、いくつかの細胞種で用いられる擬似的psA部位は、腫瘍抑制遺伝子である可能性のあるDLC-1遺伝子のイントロン中に位置する。この位置での組込みは、もしそれがDLC-1遺伝子を不活性化するならば、組込みを有する細胞における癌リスクを増大させる恐れがある。
【0123】
インテグラーゼを改良するために、本発明者らは、この酵素が哺乳動物染色体における組込み反応を実行する能力を高める変異を有する、強化された触媒ドメインを作り出している。これらの変異は、変異誘発プロセスによって、および/または他のセリンリコンビナーゼとの比較により判明した指定的変化によって作製され、その後に活性が高いものに関してスクリーニングされている。
【0124】
擬似的なatt部位の別の1つのセットは、強化されたphiC31インテグラーゼ触媒ドメインを、別のセリンインテグラーゼであるphiBT1のDNA結合ドメインと融合させることによって得られる。強化されたphiC31触媒ドメインをコードするDNA配列を、phiBT1インテグラーゼのカルボキシ末端部分と、phiBT1インテグラーゼの触媒ドメイン後のリンカー領域の箇所、140〜150位アミノ酸の近傍で融合させる。
【0125】
ハイブリッド型インテグラーゼを、大腸菌および哺乳動物細胞に導入したプラスミド上のphiBT1 att部位での機能に関して調べる。このハイブリッド酵素はphiBT1 att部位での反応を媒介しうるが、phiC31 att部位での反応はもはや媒介しない。
【0126】
ヒト細胞における染色体組込み効率を、ハイブリッド型インテグラーゼを、phiBT1 attP部位を有するアッセイ可能なプラスミドとともにヒト細胞に導入することによって調べる。組込み体を単離し、組み込まれたプラスミドをプラスミドレスキュー法によって回収する。ハイブリッド型インテグラーゼによって用いられる擬似的なattB部位は、phiC31インテグラーゼではなくphiBT1インテグラーゼに特徴的である。
【0127】
野生型phiBT1 attB部位をゲノム中に導入すると、それはハイブリッド型インテグラーゼによっては認識されるが、phiC31インテグラーゼによっては認識されない。その反対に、ハイブリッド型インテグラーゼは、ゲノム中に挿入されたphiC31 attP部位を標的とする組込みは媒介しない。これらの結果は、ハイブリッド型インテグラーゼが、強化された組込み効率、および、phiBT1 DNA結合ドメインによって付与された新たな組込み特異性を有することを示している。
【0128】
実施例2.改良された触媒ドメインをジンクフィンガーDNA認識ドメインと組み合わせたハイブリッド型セリンインテグラーゼの作製
phiC31インテグラーゼは、哺乳動物ゲノム中への限定された数の内因性部位での組込みに有用であってトランスフェクト細胞の効率が約5%であることが実証されている。組込み効率を高められれば、インテグラーゼはさらに有用と思われる。さらに、非生来性の擬似的なattP部位である配列での組込みが望まれることもある。例えば、遺伝子治療では、転写制御シグナルをゲノム中のさまざまな位置に挿入することが望ましい場合がある。
【0129】
これらの要求条件を満たすインテグラーゼを開発するために、本発明者らは、この酵素が哺乳動物染色体における組込み反応を実行する能力を高めるアミノ酸変化を有する、強化された触媒ドメインを作り出している。これらの変化は、変異誘発プロセスによって、ならびに/または構造および他の情報により判明した指定的変化によって作製され、その後に活性が高いものに関してスクリーニングされている。
【0130】
強化されたphiC31触媒ドメインをコードするDNA配列を、ジンクフィンガーDNA結合ドメインと融合させる。このハイブリッド型インテグラーゼを、大腸菌および哺乳動物細胞に導入されたプラスミド上の、ジンクフィンガータンパク質に対する結合部位を含む人工的なatt部位での機能に関して調べる。このハイブリッド酵素はジンクフィンガーatt部位での反応を媒介しうるが、phiC31 att部位での反応はもはや媒介しない。
【0131】
ヒト細胞における染色体組込み効率を、ハイブリッド型インテグラーゼを、ジンクフィンガーatt部位を有するアッセイ可能なプラスミドとともにヒト細胞に導入することによって調べる。組込み体を単離し、組み込まれたプラスミドをプラスミドレスキュー法によって回収する。ハイブリッド型インテグラーゼによって用いられる染色体のジンクフィンガー結合部位は、phiC31インテグラーゼではなくジンクフィンガータンパク質に特徴的である。
【0132】
インテグラーゼにより、野生型ジンクフィンガー結合部位をゲノム中の好適なホットスポット位置に導入すると、それはハイブリッド型インテグラーゼによっては認識されるが、phiC31インテグラーゼによっては認識されない。その反対に、ハイブリッド型インテグラーゼは、ゲノム中に挿入されたphiC31 attP部位を標的とする組込みは媒介しない。これらの結果は、ハイブリッド型インテグラーゼが、強化された組込み効率、および、ジンクフィンガー結合ドメインによって付与された新たな組込み特異性を有することを示している。
【0133】
実施例3.機能的なphiBT1-phiC31ハイブリッド
文献からは、セリン部位特異的リコンビナーゼが、120〜150アミノ酸のアミノ(N)末端触媒ドメイン、およびタンパク質の残り(DNA結合ドメインをおそらく含む)を含むさまざまな長さのカルボキシ(C)末端ドメインを有する二重ドメイン様式で構築されることが示唆される(Smith and Thorpe 2002)。セリンリコンビナーゼのN末端の約120〜150アミノ酸の間には、特に二次構造レベルではある程度の類似性があるため、本発明者らは、これらの触媒ドメインを関連性のあるファミリーメンバー間で交換し、C末端DNA結合ドメインの特性に基づく新規なDNA認識特異性を付与しうるのではないかの仮説を立てた。
【0134】
この課題を検討するために、本発明者らはまず、phiC31インテグラーゼ(Kuhstoss and Rao 1991)のC末端DNA結合ドメインを、関連性のあるphiBT1インテグラーゼ(Gregory, et al. 2003)の触媒ドメインと連結することを選択した。上記の仮説による予測は、このハイブリッド酵素は、phiC31のDNA結合ドメインが存在するためにphiC31付着部位でインテグラーゼ機能を示すであろうというものである。
【0135】
インテグラーゼ機能を保持させるために、関連するタンパク質の2つのドメインをどこで連結するかを完全な精度で正確に予測することは不可能であった。この課題を解明するため、意図するハイブリッドを構築する前に、phiC31インテグラーゼおよびphiBT1インテグラーゼの間の一次構造および二次構造の関係に関する分析を行った。これらの検討により、この2つのインテグラーゼのN末端領域が類似の二次構造を有することが示された。この2つのインテグラーゼのN末端領域は、C末端領域と比べて一次アミノ酸配列の類似性も高いことが示された。これらの結果に基づいて、2つの融合点または連結点の候補を検討することを決断した。図1に示されているように、2つの融合点は、phiBT1配列におけるおおよその位置から「120」および「168」と命名した。同一性/強い相同性がある領域に乗換え点を作製したため、この命名方式にはある程度のあいまいさがある。
【0136】
これらのハイブリッドを構築するために、記載されている方法を用いてEcoRI/PstI末端を有する所望のN末端配列を合成し、ベクターpWT-C(図2A)のEcoRI/PstI部位にクローニングして、ハイブリッド120および168を作製した。このベクターpWT-Cは、phiC31インテグラーゼ遺伝子のアミノ酸167〜613までのC末端領域を有し、特徴が未決定の細菌プロモーターおよび哺乳動物CMVプロモーターによって駆動される。クローニングを容易にするために、プラスミドpWT-Cに対して、N末端配列とphiC31C末端配列とのインフレーム融合を可能にすると考えられるPstI部位を人為的に加えた(図2A)。このPstI部位は野生型phiC31インテグラーゼのアミノ酸167および168の範囲にわたる。
【0137】
さらに、このベクターは、phiC31のattB部位およびattP部位によって挟まれた細菌性lacZ発現カセットを有していた。2つのatt部位間の組換えが起こるとlacZ遺伝子が切り出された。組換えが起こらなければ、lacZ発現カセットはそのままに保たれた。適切なDNA片のクローニングによって機能的なインテグラーゼタンパク質が生じた場合には、lacZ発現カセットが切り出され、その結果生じたコロニーはX-galを含むLB寒天培地上で白色となった。クローニングの結果が非機能的インテグラーゼであった場合には、lacZ発現カセットはそのまま保たれ、結果として生じたコロニーは青色であった。このように、インテグラーゼ誘導体のベクターpWT-C中へのクローニングにより、インテグラーゼ機能の即時的な評価が可能となった。
【0138】
これらのハイブリッドの触媒ドメインは、phiC31よりも活性の低いphiBT1によって付与されたため、ハイブリッドクローンの活性は野生型phiC31に比して低いことが予想された。この低下した活性では、すべてのアッセイ用プラスミドからlacZを切り出すには十分ではなく、コロニー中に青色がある程度残ると思われる。このため、白色および青色のコロニーの両方をインテグラーゼ活性に関してスクリーニングした。ハイブリッド120は青色コロニーとして分離された。プラスミドDNAの制限分析からは、att部位の近傍に組換え断片が存在するとの所見は認められず、このことからインテグラーゼ活性がほとんどまたは全くないことが示された。ハイブリッド168は淡青色のコロニーとして分離された。プラスミドDNAの制限分析により、プラスミドDNAの多くの割合はphiC31のattB部位およびattP部位で部位特異的に組み換えられていることが判明し、このことから高いインテグラーゼ活性が示された。
【0139】
これらの結果を確かめるために、120および168ハイブリッド型インテグラーゼを個別に染色体外アッセイ用プラスミドpBCPB(Groth, et al. 2000)とともに293細胞にトランスフェクトし、72時間にわたって組換え反応を行わせた。このアッセイ用プラスミドは、phiC31のattB部位およびattP部位によって挟まれたlacZ遺伝子を含んでいた。att部位間の組換えによってlacZの欠失が起こり、大腸菌に白色コロニーが生じた。DNAを293細胞から回収し、評価のために大腸菌に電気穿孔により導入した。このアッセイでは、attB部位とattP部位とを組み換えるハイブリッド168の効率は野生型phiC31インテグラーゼの半分であった。野生型phiC31対照では約65%の白色コロニーが生じ、一方、ハイブリッド168では約36%生じた。これに対して、ハイブリッド120では4.9%しか白色コロニーが生じず、陰性対照と有意差がなかった。このように、ハイブリッド120はやはり有意な組換え活性を示さず、一方、ハイブリッド168はかなり高いインテグラーゼ活性を示した。
【0140】
組換えを受けた少量のプラスミドDNAを検出するために、DNAの一部分も、新規なattL接合部に対して特異的なattL PCR法に供した。attL配列は組換えによって形成されるattBおよびattPのハイブリッドであり、phiC31により媒介される部位特異的組換えの診断的指標となる。attL領域は、ハイブリッド168で処理した試料中にはPCRによって検出されたが、ハイブリッド120の場合は検出されなかった。これらの結果により、ハイブリッド120が実際にphiC31 att部位に対して機能せず(PCRバンドがみられず、白色コロニーの数も有意でない)、一方、ハイブリッド168は明らかに機能することが示された。
【0141】
ハイブリッド168が哺乳動物細胞において野生型phiC31 att部位で組換えを遂行する能力は、染色体外逆転アッセイ法および染色体組込みアッセイ法という別の2つの手法によってもさらに裏づけられた。染色体外アッセイでは、ハイブリッド168を発現するプラスミド体168-1を、野生型phiC31のattB部位およびattP部位によって挟まれた逆転したCMVプロモーターに隣接してプロモーターを伴わないGFPマーカー遺伝子を含む染色体外アッセイ用「flipper」プラスミドpBP-Green(図2B)とともに、ヒト293細胞にトランスフェクトした。これらのatt部位は、それらの間の組換えによってCMVプロモーターの逆転が起こり、CMVプロモーターが転写のための正しい向きでGFPと連結されることによってその発現が起こるような向きにした。このため、GFP蛍光の平均値は、インテグラーゼによって触媒される組換えの量の指標となった。GFP蛍光のレベルは、72時間後にGuava分析装置を用いてアッセイした。このアッセイ法の結果により、ハイブリッド168がphiC31 att部位間の組換えを触媒しうることが確かめられた(図3)。ハイブリッド168がこの反応を触媒する効率は野生型phiC31インテグラーゼの約半分であり、これはハイブリッド168の触媒ドメインの源であるphiBT1インテグラーゼの活性が低いことに一致した。
【0142】
さらに、ハイブリッド168が、染色体に配置されたphiC31 attP部位への組込みを行う能力も測定した。染色体に組み込まれた状態で野生型phiC31 attPを有する(Thyagarajan, et al. 2001)、プラスミドpHZ-attP(Thyagarajan et al., 2001)を含むヒト細胞系293P3に対して、ハイブリッド168インテグラーゼプラスミド(p 168-1)、または完全長野生型phiC31発現カセットを同じ骨格中に含むプラスミドpWT-FLを、phiC31 attB部位およびネオマイシン耐性遺伝子を含むドナープラスミドpNC-attB(Thyagaraj an et al., 2001)とともにトランスフェクトした。この細胞系は、染色体attP部位へのドナーの部位特異的組込みによってゼオシン耐性遺伝子の発現が起こり、細胞がゼオシン抗生物質に対して耐性化するように設計されている。図4に示されているように、ハイブリッド168は染色体に配置されたphiC31 attP部位への組込みを触媒した。野生型phiC31インテグラーゼの効率はハイブリッド168の約4倍の高さであり、これはphiC31インテグラーゼの染色体組込みの活性がphiBT1に比して高いことに一致する。
【0143】
phiBT1/C31ハイブリッド168のインテグラーゼ機能およびDNA認識特異性から、1つのインテグラーゼの触媒ドメインおよび別のもののDNA結合特性を有する、活性のあるハイブリッド型部位特異的インテグラーゼを作り出せることが示された。
【0144】
実施例4.機能的なGFP-phiC31インテグラーゼハイブリッド
インテグラーゼ活性と高度に特異的なDNA結合ドメインとの融合によって得られる高い部位特異性は、phiC31インテグラーゼの有用性を大きく高めると考えられる。さらに、インテグラーゼと移行性ペプチドとの融合は、標的細胞へのその進入を促進する可能性がある。このような目的を達成するためには、インテグラーゼ活性は、外来性タンパク質ドメインをそれに追加した場合にも機能的であり続ける必要があると考えられる。phiC31インテグラーゼが他のタンパク質との融合に耐えうるか否かを明らかにするために、本発明者らは、緑色蛍光性タンパク質-phiC31インテグラーゼハイブリッドを作製し、それがphiC31 attBとattPとの間の組換えを実行する能力を調べた。
【0145】
いくつかの市販のベクターは、関心対象の遺伝子をマーカー遺伝子に対してインフレーム式にクローニングして融合タンパク質を作製することを可能にする。本発明者らの目的に向けて、本発明者らはプラスミドpEGFP-C1(BD Biosciences)を用い、その中に完全長phiC31インテグラーゼ遺伝子をクローニングした。インテグラーゼ遺伝子は、融合タンパク質のeGFP部分が融合タンパク質のN末端部分を構成し、phiC31インテグラーゼがC末端部分を構成するようにプラスミド中にクローニングした。この結果得られたプラスミド構築物pEGFP-Intは図5に示されている。
【0146】
本発明者らは、トランスフェクション24時間後のGuava PCA-96分析装置を用いた分析による判断で、この融合タンパク質がヒト293細胞において蛍光性であることを明らかにした。次の段階は、eGFP-Int融合体が哺乳動物細胞におけるインテグラーゼ機能を保っているか否かを明らかにすることであった。本発明者らは、lacZを組換えに関するレポーターとして用いる染色体外アッセイを用いた。LacZはphiC31のattB部位およびattP部位によって挟まれており、このため組換えが起こるとそれは除去された。アッセイ用プラスミドpBCPB(Groth et al., 2000)を、pEGFP-IntまたはpCMV-Int(Groth et al., 2000)とともに293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクト細胞をトランスフェクション24時間後に収集し、プラスミドDNAを細胞から単離した。このDNAを大腸菌細胞にトランスフェクトした上で、X-galおよびカナマイシンを含むプレート上にそれを播いた。機能的なインテグラーゼは白色コロニーを生じさせ、一方、機能的でないインテグラーゼは青色コロニーを生じさせると考えられる。本発明者らは、この融合タンパク質が293細胞において機能的であり、同じ実験で白色コロニーを6.2%生じさせ、野生型phiC31インテグラーゼが白色コロニーを9.7%生じさせることを見いだした。陰性対照プラスミドは白色コロニーを全く生じさせなかった。これらの結果により、この融合タンパク質がインテグラーゼ活性を保っていることが示された。
【0147】
次に、この融合タンパク質が染色体組込みを遂行する能力を調べた。プラスミドpEGFP-Intを、ドナープラスミドpNC-attB(Thyagarajan et al., 2001)とともに293P3細胞系にトランスフェクトした。細胞系293P3は染色体中に配置された状態でattP部位を含み、ドナープラスミドはattB部位を含んでいた。これらの2つの部位間での組換えにより、ゼオシン耐性遺伝子の発現が起こった。ゼオシン耐性に関する選択により、本発明者らはゼオシン耐性コロニーの数を算定することによって部位特異的組込み反応が起こったか否かを判定することができた。図6に示されているように、本発明者らは、eGFP-Int融合タンパク質が染色体attP部位での組換えを遂行しうることを見いだした。融合タンパク質がこの反応を遂行する能力は、野生型phiC31インテグラーゼのそれと有意差がなかった(p>0.1)。
【0148】
本発明者らは以上により、phiC31インテグラーゼタンパク質が、その機能性を追加しうる外来性タンパク質ドメインとの融合に耐えうることを実証した。
【0149】
実施例5.phiC31-ジンクフィンガーハイブリッド型インテグラーゼ
ジンクフィンガータンパク質によって決定されるDNA認識特異性を備えた機能的インテグラーゼを作り出すために、本発明者らは、改変型phiC31インテグラーゼの触媒ドメインをZif268転写因子と融合させている(Pavletich and Pabo, 1991)。
【0150】
融合点は、触媒ドメインを含むphiC31インテグラーゼにおいて切断点を試すことによって見いだされている。アミノ酸168での融合がphiBT1およびphiC31インテグラーゼの融合体については奏功しており、これはphiC31-Zif268融合体の作製においても有用と思われる。この近傍に切断点を有する融合体が作製されている。
【0151】
これらのハイブリッド酵素を、乗換え点としての役を果たすphiC31インテグラーゼのatt BおよびattP部位からのコアを、Zif268認識部位(Pavletich and Pabo, 1991)を含む隣接9bp配列とともに含む合成「att」認識部位に対する機能に関して調べた。組換えに関して最もよく作用する配置を見いだすために、コアと認識部位との間隔がさまざまである一連のこの種の人工的att部位を合成して検討する(Akopian et al. 2003)。続いて、最良のatt部位を以下のアッセイ法に用いる。
【0152】
phiC31-Zif268融合体をまず、ヒト組織培養細胞における染色体外アッセイで調べる。アッセイ用プラスミドは、逆向きにある合成attB部位およびattP部位をCMVプロモーターに隣接して含む。部位間の組換えが起こるとプロモーターが逆転し、それが側方のプロモーターを伴わないGFP遺伝子と隣接して、GFPの転写が活性化される。続いて、Guava分析装置またはFACS装置で適切な蛍光シグナルを読み取ることにより、細胞における緑色蛍光性タンパク質の存在をアッセイする。GFPシグナルが多いほど、より多くの組換えが起こっている。このようにして、最も活性の高い融合体を同定することができる。
【0153】
続いて、融合体によって媒介される組換えを、哺乳動物染色体の状況下で検討する。人工的なattP部位を染色体内に配置し、組み込もうとするプラスミドに人工的なattB部位を配置する。理想的には、好適な染色体環境がattP部位を取り囲むように、部位特異的インテグラーゼによって人工的なattP部位を染色体内に配置する。組換えが起こると、例えばプロモーターがプロモーターを伴わない抗生物質耐性遺伝子に与えられること(Thyagarajan et al, 2001)、またはGFPなどのレポーター遺伝子の転写が活性化されることにより、測定可能なシグナルが生じる。
【0154】
組換えは、正しい部位特異的な組換え事象によって作り出されると考えられる接合部断片に対して特異的なPCRを行うことにより、以上のアッセイ法によって実証することができる。
【0155】
ひとたび、部位特異的リコンビナーゼ活性を備えたphiC31-Zif268融合体が示され、融合の位置およびatt部位構造に関するパラメーターが解明されれば、ゲノム中の数多くの所望の標的位置に対して特化したインテグラーゼ-Zif融合体を設計することが可能になる。例えば、インテグラーゼの乗換えコア部位に関する基準を満たす適切なゲノム配列の位置を決定する。DNA配列のZif認識に関してすでに開発されている規則に従って、両端がコアから適切な距離にある9bp配列を認識するZifタンパク質を作製する(Tan et al. 2003)。
【0156】
ハイブリッド型リコンビナーゼが、インテグラーゼのアミノ末端触媒ドメインを、Zif268融合体において奏功した位置でZifタンパク質を融合させることによって作製されている。ハイブリッド型リコンビナーゼによって媒介される組込みは、以上に概要を示した染色体外アッセイおよび染色体アッセイにおいて、これらのマーカー遺伝子および合成attB部位を有するプラスミドによる安定的なGFP発現または抗生物質耐性を追跡することモニターすることができる。最終的な目標は、生来のゲノムDNA中の所望の場所での部位特異的な組込みの実証であると考えられる。この実験の成功は、ゲノムにとって生来性であるあらかじめ特定された標的配列を認識する組換えシステムの創出を表している。この目標の達成は、遺伝子治療における用途を含め、ゲノムの正確な操作に対して多くの可能性を切り開くものである。
【0157】
参考文献



【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】phiBT1-phiC31ハイブリッド120および168の概略図である。ハイブリッド120は、phiBT1インテグラーゼ由来のアミノ酸1〜120およびphiC31インテグラーゼ由来のアミノ酸118〜613を含む。ハイブリッド168は、phiBT1インテグラーゼ由来のアミノ酸1〜168およびphiC31インテグラーゼ由来のアミノ酸166〜613を含む。
【図2】ハイブリッド型インテグラーゼの作製およびアッセイ法のために用いたプラスミドを図示している。図2A.プラスミドpWT-Cを、phiBT1-phiC31ハイブリッド型インテグラーゼを作製するために用いた。これはphiC31インテグラーゼのC末端部分を含み、CMVプロモーターをその前に備えている。phiBT1インテグラーゼからのN末端領域を、C末端のphiC31インテグラーゼに対してインフレームとなるようにEcoRI部位およびPstI部位にクローニングし、ハイブリッド120および168を作製した。図2B.pBP-Greenを、293細胞における染色体外組換え効率の判定のために用いた。この「フリッパー型(flipper)」プラスミドは、逆向きのphiC31 att部位に挟まれたCMVプロモーターを含む。att部位間での組換えにより、CMVプロモーターは活性のある向きへと逆転し、GFP遺伝子の発現を生じさせる。
【図3】哺乳動物染色体外アッセイにおいて機能性であるハイブリッド168を示している。phiC31インテグラーゼまたはハイブリッド168のいずれかを発現するプラスミドを、基質プラスミドpBP-Greenとともに293細胞にトランスフェクトした。部位特異的組換えにより、GFPの発現が生じた。トランスフェクションの72時間後に、トランスフェクト細胞の平均蛍光をGuava PCA-96分析装置を用いて測定した。エラーバーは標準偏差を表している。
【図4】ハイブリッド168が哺乳動物染色体アッセイにおいて機能性であることを図示している。phiC31インテグラーゼ、ハイブリッド168または対照プラスミドのいずれかを発現するプラスミドを、pNC-attBとともに、phiC31 attP部位を染色体中に含む293-P3細胞系にトランスフェクトした。部位特異的組換えにより、ゼオシン耐性マーカーの発現が生じた。選択はトランスフェクト細胞に対してゼオシン(200μg/ml)を用いて14日間行い、独立したコロニーの数を算定した。エラーバーは標準偏差を表している。
【図5】EGFP-Int融合プラスミドを図示している。pEGFP-Intは、プラスミドpEGFP-C1(BD Biosciences)中に、EGFP遺伝子に対してインフレームになるようにクローニングされた完全長phiC31インテグラーゼ遺伝子を含む。哺乳動物細胞において、融合タンパク質の発現はCMVプロモーターによって駆動される。
【図6】GFP-Int融合体が哺乳動物細胞における染色体組込みを媒介することを示している。phiC31インテグラーゼ、GFP-Int融合体または対照物のいずれかを発現するプラスミドを、ドナープラスミドpNC-attBとともに293-P3細胞系にトランスフェクトした。部位特異的組換えにより、ゼオシン耐性マーカーの発現が生じた。選択はトランスフェクト細胞に対してゼオシン(200μg/ml)を用いて14日間行い、独立したコロニーの数を算定した。エラーバーは標準偏差を表している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸をゲノムに部位特異的に組み込む方法であって、
該核酸および付着部位を含む、ターゲティング用構築物を提供する段階;
ハイブリッド型リコンビナーゼを提供する段階;ならびに
該ターゲティング用構築物および該ハイブリッド型リコンビナーゼを、該ターゲティング用構築物が該ゲノム中に組み込まれるのに十分な条件下で維持する段階;
を含む方法。
【請求項2】
条件が無細胞性である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
条件が細胞内である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ハイブリッド型リコンビナーゼが、バクテリオファージインテグラーゼ由来の強化された触媒ドメインを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
ハイブリッド型リコンビナーゼが、非生来(non-native)タンパク質に由来するDNA結合ドメインを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
ハイブリッド型リコンビナーゼが、非生来タンパク質に由来するDNA結合ドメインをさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項7】
ハイブリッド型リコンビナーゼが、異なる部位特異的リコンビナーゼに由来するDNA結合ドメインを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
ハイブリッド型リコンビナーゼが、異なる部位特異的一方向性ファージインテグラーゼに由来するDNA結合ドメインを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
ハイブリッド型リコンビナーゼが、ジンクフィンガータンパク質を含むDNA結合ドメインを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
核酸がコード配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
コード配列が発現カセット中に存在する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
以下のものを含む、ハイブリッド型リコンビナーゼ:
第1の生物からの触媒ドメイン;
リンカー;および
第2の生物からのDNA結合ドメイン。
【請求項13】
外来性DNA結合ドメインが、異なる部位特異的リコンビナーゼに由来する、請求項12記載のハイブリッド型リコンビナーゼ。
【請求項14】
外来性DNA結合ドメインが、異なる部位特異的一方向性ファージインテグラーゼに由来する、請求項12記載のハイブリッド型リコンビナーゼ。
【請求項15】
外来性DNA結合ドメインが、関連のない天然のタンパク質に由来する、請求項12記載のハイブリッド型リコンビナーゼ。
【請求項16】
外来性DNA結合ドメインがジンクフィンガー結合タンパク質である、請求項12記載のハイブリッド型リコンビナーゼ。
【請求項17】
触媒ドメインがインテグラーゼphiC31またはR4に由来する、請求項12記載のハイブリッド型リコンビナーゼ。
【請求項18】
ハイブリッド型インテグラーゼが、バクテリオファージインテグラーゼに由来する強化された触媒ドメインを含む、請求項12記載のハイブリッド型リコンビナーゼ。
【請求項19】
請求項12記載のハイブリッド型リコンビナーゼおよび賦形剤を含む、薬学的製剤。
【請求項20】
疾患に罹患した対象を治療するための方法であって、請求項12記載のハイブリッド型インテグラーゼの有効量を該対象に投与する段階を含む方法。
【請求項21】
疾患が、癌、重症複合免疫不全症(SCID)-ADA、嚢胞性繊維症、家族性高コレステロール血症、血友病、慢性肉芽腫性疾患、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ファンコニ貧血、鎌状赤血球貧血、ゴーシェ病、ハンター症候群、X連鎖性SCID、サラセミア、網膜色素変性、色素性乾皮症、血管拡張性失調症、ブルーム症候群、網膜芽細胞腫、テイ・サックス病、α-1-アンチトリプシン欠損症、家族性高コレステロール血症、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、およびプリンヌクレオシドホスホリラーゼ欠損症からなる群より選択される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
癌が、乳癌、脳悪性腫瘍、肺癌(非小細胞性および小細胞性)、結腸癌、膵癌、前立腺癌、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、および頭頸部癌からなる群より選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
第1のバイアルおよびその使用のための説明書を含むキットであって、該第1のバイアルが請求項12記載のハイブリッド型リコンビナーゼを含んでいるキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−535328(P2007−535328A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511072(P2007−511072)
【出願日】平成17年4月29日(2005.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/015101
【国際公開番号】WO2005/107790
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(506363595)ポエティック ジェネティックス エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】