説明

ゲル状食品およびその製造方法

【課題】泡状物を含み、かつ当該泡状物が安定なゲル状食品およびその簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】複数相構造を有するゲル状食品であって、前記複数相構造のうち少なくとも1相が泡状物であり、前記泡状物が可逆的熱ゲル化剤を配合してなる。本発明のゲル状食品によれば、泡状物が可逆的熱ゲル化剤を配合してなるので、泡状構造が安定である。また、本発明のゲル状食品は簡便に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数相構造を有するゲル状食品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゼリーやプリンなどのゲル状食品が多く市販されている。一方、このようなゲル状食品の市場価値を高めるべく、食品自体を複数相化した例も多い。また、そのようなゲル状食品の中には、泡状物を含んだ食品もある。例えば、冷却したゲル化物、または冷却したゲル化性溶液と泡状物を接触させることにより、ゼリー上にクリームをトッピングしたデザートを製造する方法が開示されている(特許文献1参照)。また、カチオンを含有する下層のデザート上に、カチオン反応性を有するゲル化剤、ガム類、および低温ゲル化性ゲル化剤を含有するホイップ製品を乗せた食品も開示されている(特許文献2参照)。さらにまた、水可溶性カラギナンおよび起泡性素材を含有する泡状食品からなる層とネイティブジェランガムを含有する食品からなる層を積層した食品も開示されている(特許文献3参照)。これらのような泡状物を含んだゲル状食品は、外観的にも興味を引き、また独特の食感を有するところに特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64−27439号公報
【特許文献2】特開平11−221030号公報
【特許文献3】特開2004−236542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したゲル状食品は、泡状物自体が必ずしも安定ではないため、流通段階あるいはユーザーが食する段階で不都合を生じる場合もある。例えば、泡状物が崩れたり、泡状物とゲル化物との境界ににじみが生じたりすると著しく商品価値を損なってしまう。
【0005】
本発明の目的は、泡状物を含み、かつ当該泡状物が安定なゲル状食品およびその簡便な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決すべく、本発明は、以下のようなゲル状食品およびその製造方法を提供するものである。
(1)複数相構造を有するゲル状食品であって、前記複数相構造のうち少なくとも1相が泡状物であり、前記泡状物が可逆的熱ゲル化剤を配合してなることを特徴とするゲル状食品。
(2)上記(1)に記載のゲル状食品において、前記可逆的熱ゲル化剤が酵素処理タマリンドシードガムであることを特徴とするゲル状食品。
(3)上記(1)または(2)に記載のゲル状食品において、前記可逆的熱ゲル化剤が泡状物基準で0.1質量%以上4質量%以下配合されてなることを特徴とするゲル状食品。
(4)複数相構造を有するゲル状食品の製造方法であって、ゲル化性溶液を容器に充填する第1充填工程と、可逆的熱ゲル化剤を配合してなる泡状物を容器に充填する第2充填工程と、充填された前記ゲル化性溶液と前記泡状物を冷却する冷却工程とを備えることを特徴とするゲル状食品の製造方法。
(5)上記(4)に記載のゲル状食品の製造方法において、前記第2充填工程におけるゲル化性溶液の温度が90℃以下であることを特徴とするゲル状食品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
泡状物を含む本発明のゲル状食品によれば、当該泡状物が可逆的熱ゲル化剤を配合してなるので、泡状構造が安定である。また、本発明のゲル状食品は簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態におけるゲル状食品の例1(ゲル状食品を上から見た図および断面図を示した図である。以下同様である)
【図2】本実施形態におけるゲル状食品の例2
【図3】本実施形態におけるゲル状食品の例3
【図4】本実施形態におけるゲル状食品の例4
【図5】本実施形態におけるゲル状食品の例5
【図6】本実施形態におけるゲル状食品の例6
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のゲル状食品およびその製造方法について詳細に説明する。
〔ゲル状食品の構成〕
本発明のゲル状食品は、複数相構造を有し、この複数相構造のうち少なくとも1相が泡状物であって可逆的熱ゲル化剤を配合してなる相である。
このようなゲル状食品としては、ゲル化物からなるマトリックス相中に泡状構造(泡状物)が塊状に分散した構造でもよく、あるいはマトリックス相と泡状物が互いに層状に積層した構造でもよい。例えば、図1から図6までの概略断面図に示すように種々の態様が挙げられる。具体的には、ゲル化物Gからなるマトリックスの内部に泡状物Fが完全にあるいは部分的に内包されているもの(例えば、図1、2)、ゲル化物Gの上に泡状物Fが積層されているもの(例えば、図3)、逆にゲル化物Gの下に泡状物Fが積層されているもの(例えば、図4)、ゲル化物Gと泡状物Fが交互に積層されているものなどが挙げられる(例えば、図5、図6)。
【0010】
上述した泡状物の具体例としては、ホイップクリーム、凍結ホイップクリーム、ムース、ババロア、ホイップヨーグルト、アイスクリーム、メレンゲ、マシュマロ、およびホイップチーズ等、含気されている食品が挙げられる。
また、ゲル化物の具体例としては、プリン、ゼリー、ムース、ババロア、ヨーグルト、酸性プリン、飲むプリン、飲むゼリー、およびドリンクヨーグルト等が挙げられる。
【0011】
上述のゲル状食品には、他に、カラメルソース、フルーツソース、コーヒーソース、チョコソース、ココアソース、クリーム、練乳、ジャム、シロップ、コーヒー、紅茶、牛乳、緑茶、抹茶、ウーロン茶、ココア飲料、果汁、果汁入りミルク、炭酸飲料等の流動食品や果実、さのう、ハーブ、野菜、チーズ、餡、チョコレート、およびその他の固形物等が含まれていてもよい。
このようなゲル状食品を食する際は、スプーンを用いるだけでなく、その性状に応じて容器の開口部から直接飲用したり、あるいはストローにより吸引してもよい。
【0012】
上述の可逆的熱ゲル化剤としては、泡状構造の安定性より酵素処理タマリンドシードガムが好適である。
本発明で用いられる酵素処理タマリンドシードガムは、低温度帯でゾル状態、中温度帯でゲル状態、高温度帯でゾル状態を示すものである。酵素処理タマリンドシードガムとしては、側鎖ガラクトースの除去率が30質量%以上65質量%以下のものが好ましく、より好ましくは35質量%以上45質量%以下である。側鎖ガラクトースの除去率が30質量%未満であると、ゾル−ゲル変化が起こりにくくなるおそれがあり、また、側鎖ガラクトースの除去率が65質量%を超えてもゾル−ゲル変化が起こりにくくなるおそれがある。
【0013】
このゾル−ゲル相転移温度は、基質の濃度および側鎖ガラクトース除去率により制御することができる。例えば、側鎖ガラクトースの除去率が40質量%の酵素処理タマリンドシードガムは、基質として2質量%のガラクトキシログルカン水溶液を用いて酵素反応により得ることができる。この酵素処理タマリンドシードガムを配合した相は、およそ30℃以下と90℃以上ではゾル状態となり、およそ30℃から90℃まではゲル状態を示す。側鎖ガラクトース除去率としては、30質量%以上65質量%以下が好ましく、特に35質量%以上45質量%以下がより好ましい。30質量%未満もしくは65質量%を超えると、泡状物の安定性が悪い場合があるからである。
なお、側鎖ガラクトースの除去率は、遊離のガラクトースの量をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で測定することにより算出することができる。
【0014】
このような酵素処理タマリンドシードガムを配合する場合の配合量は、泡状物基準で、0.1質量%以上4質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3質量%以下がより好ましい。なお、泡状物中に酵素処理タマリンドシードガムを上記記載の範囲で配合することが好ましい。酵素処理タマリンドシードガムの配合量が4質量%を超えると粘度が高くなりすぎて均一に溶解させることが困難となるおそれがある。一方、配合量が0.1質量%未満であるとゲル化の効果が十分に発揮されず、泡状物の安定性が十分ではなくなるおそれがある。
【0015】
酵素処理タマリンドシードガムを配合する際は、併せて他のゲル化剤や増粘剤を配合してもよく、必要に応じて乳化剤を配合してもよい。
このようなゲル化剤や増粘剤としては特に限定されるものではなく、例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、結晶セルロース、微小繊維状セルロース、発酵セルロース、ナタデココ、アラビアガム、ガティガム、カードラン、カラギナン、キサンタンガム、グァーガム、サイリウムシードガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、タラガム、ペクチン、ダイズ多糖類、デンプン、加工デンプン(アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酢酸デンプン、酸化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン)、寒天、ゼラチン、プルランおよびマンナンなどが挙げられる。
【0016】
乳化剤としては、例えば、キラヤ抽出物、グリセリン脂肪酸エステル(グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン酢酸エステル)、酵素処理レシチン、酵素分解レシチン、植物性ステロール、植物レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、分別レシチン、卵黄レシチン、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート65、およびポリソルベート80など一般に市販されているものが挙げられる。
【0017】
〔ゲル状食品の製造方法〕
本発明のゲル状食品の製造方法は、ゲル化性溶液を充填する第1充填工程と、前記工程後に可逆的熱ゲル化剤を配合してなる泡状物を充填する第2充填工程と、充填された両成分を冷却する冷却工程とを備えている。
例えば、図1から図6までに挙げたような相構造を有するゲル状食品を製造する場合、まず、ゲル化物Gとするためのゲル化性溶液(以下、「1液」ともいう。)と、泡状物Fとするための溶液(酵素処理タマリンドシードガムを含んでいる。以下、「2液」ともいう)とを酵素処理タマリンドシードガムを用いる以外はゲル状食品を調製する一般的な方法に従って調製する。なお、2液はさらにミキサー、ホイッパー、ホイッピングマシーン、連続式発泡機等、一般的な含気させる装置により泡状化処理を行い泡状物Fとする。2液を泡状化処理するときの温度は、低温でも高温でもよい。
【0018】
次に、第1充填工程で所定の容器に1液を充填し、その後に第2充填工程で泡状物を充填する。本発明においては、1液を容器に充填後、泡状物を充填することができる。例えば、1液を充填した直後に泡状物を充填して直ちに冷却してもよい。それ故、本発明によれば、従来の泡状物を含んだゲル状食品の製造方法にくらべ製造時間を大幅に短縮することができるだけでなく、設備投資を節約できるので、大幅なコストダウンが可能となる。
なお、第1充填工程が完全に終了する前、例えば、第1充填途中から第2充填も同時に行なうこともできるし、第1充填工程の途中に第2充填を行い、引き続き第1充填を行なうこともできる。
【0019】
また、1液と泡状物の比重差、泡状物のオーバーラン、1液の充填時における1液の充填温度、泡状物の充填時における泡状物の充填温度、さらには泡状物の充填時における泡状物の充填速度、充填量などを調整することにより、任意の複数相構造を得ることができる。なお、充填速度は、泡状物を容器に充填する際の高さにより調整することもできる。例えば、充填速度を速めることにより、ゲル状食品の下部に、遅くすることにより、ゲル状食品の上部に充填することができる。また、1液に比べて泡状物の比重が小さい場合には、泡状物がゲル状食品の上部に、1液に比べて泡状物の比重が大きい場合には、泡状物がゲル状食品の下部に分布させることができるし、泡状物の硬度や充填速度を調整することによって、泡状物の比重が小さい場合でもゲル状食品の下部に充填することができる。また、泡状物のオーバーランが大きい場合には、泡状物がゲル状食品の上部に、小さい場合には、泡状物がゲル状食品の下部に分布させることができるし、泡状物の硬度や充填速度を調整することによって、泡状物のオーバーランが大きい場合でも、ゲル状食品の下部に充填することができる。以上のように、上記条件等を適宜組み合わせることにより、任意の複数相構造を得ることができる。
1液の充填時における1液の温度は、ゲル化温度以上であることが好ましい。ゲル化温度未満では、1液の充填直後に泡状物を充填すると泡状物がゲル化物に対してにじみ任意の形状としにくくなるおそれがある。
【0020】
第2充填工程における1液の温度は、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。このときの1液の温度が90℃を超えると、泡状物の安定性(保型性)がやや悪化するおそれがある。特に、泡状物に対して、酵素処理タマリンドシードガムの配合量が多すぎたり、少なすぎたりするとこのような傾向が見られる。それ故、この観点からも、酵素処理タマリンドシードガムの配合量は、上述した範囲であることが好ましい。
【0021】
上述したように本発明によれば、安定な泡状物を含んだゲル状食品を提供できるので、外観を損ねることなく、しかも、色彩、風味、食感ともに従来品より商品価値の高いゲル状食品を提供できる。また、本発明によれば、泡状物とゲル化物との界面が安定なので、輸送中に泡状物がゲル化物から剥離するおそれが少ない。さらに、本発明のゲル状食品は、簡便な方法で製造可能である。
【実施例】
【0022】
[実施例1]
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。具体的には、図6に示すようなプリン(ゲル化物G)とホイップクリーム(泡状物F)とからなる複数相のゲル状食品を製造し、ホイップクリームの安定性(保型性)を評価した。
【0023】
〔1液の調製〕
精製ヤシ油5.0質量%、脱脂粉乳5.0質量%、砂糖混合異性化糖12.0質量%、粉末水飴6.0質量%、グリセリン脂肪酸モノエステル0.1質量%、ペクチン0.15質量%、デン粉0.4質量%、ゼラチン0.15質量%、および香料と着色料を若干量配合して温水に溶解し、均質機を用いて均質圧10MPa・sで均質処理を行った後、125℃で2秒間殺菌し、6種の温度(95℃、90℃、80℃、70℃、60℃、50℃)で各々保持した。また、得られた1液のゲル化温度は50℃であった。
【0024】
〔2液の調製〕
精製パーム核油20.0質量%、極度硬化油5.0質量%を混合して混合油脂を調製し、これにレシチン(クルード大豆レシチン)0.2質量%、グリセリン脂肪酸モノエステル0.06質量%、縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリン0.01質量%を加えて80℃で5分間撹拌・溶解して油相を調製した。次に、水に対して、脱脂粉乳6.0質量%、上白糖8.0質量%、粉末水飴8.0質量%、モノステアリン酸ヘキサグリセリン0.2質量%、モノステアリン酸テトラグリセリン0.1質量%、カゼインナトリウム1.0質量%、結晶セルロース製剤0.7質量%、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.1質量%、キサンタンガム0.08質量%、および、あらかじめ溶解した酵素処理タマリンドシードガムを各所定量(5.0質量%、4.0質量%、3.0質量%、2.0質量%、0.5質量%、0.4質量%、0.1質量%、0.09質量%、0%(無配合))加えて80℃で10分間撹拌・溶解して水相を調製した。水相に油相を少量ずつ添加し、ホモミキサーを用いて高速剪断して予備乳化を行い、直ちに均質機を用いて均質圧18MPa・sで均質処理を行って水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた水中油型乳化油脂組成物を5℃まで急速冷却し、その後ポリパウチ袋に充填し、5℃の冷蔵庫で保存した。
【0025】
〔2液の泡状化〕
5℃で1日保存した上述の水中油型乳化油脂組成物をハンドミキサーでホイップして泡状物を調製した。この泡状物のオーバーランは85%であった。なお、オーバーランは、常法により測定した。
【0026】
〔ゲル状複数相食品(プリン/ホイップクリーム)の製造および評価〕
上述の1液を容器に85g充填した後、上述の泡状物を、1液を充填した容器を回転させながら、1液の表面から1cmの高さより口金絞り袋で15gを1液に接しながら充填した。冷却後、ゲル状食品を上から見た場合および食品の上面に対し垂直方向に割った断面図の様子を目視にて観察した(図6参照)。以下の基準で泡状物の安定性(保型性)を評価した。ここで、保型性がよいとは、泡の状態が崩れず、またゲル化物(プリン)との界面が明確であることを意味する。なお、後述する実施例でも同じ基準を用いた。結果を表1に示す。
◎:泡状物の保型性は良好
○:泡状物の保型性はやや良好
△:泡状物の保型性は普通
×:泡状物の保型性が悪い
【0027】
【表1】

【0028】
〔評価結果〕
表1より、酵素処理タマリンドシードガムを泡状物に配合してなる本発明のゲル状食品では、1液の温度によらず、いずれも泡状構造の保型性(安定性)が高い。酵素処理タマリンドシードガムの配合量が泡状物基準で0.1質量%から4質量%までの範囲がより好ましく、0.5質量%から3質量%までの範囲がさらに好ましいことがわかる。また、泡状物が、ゲル化物上に乗っているだけでなく、一部内包されており、見た目にも美しいだけでなく、輸送中に最上層の泡状物が次層のゲル化物から滑り落ちる(剥離する)という問題もなかった。さらに、食する際には最初だけでなく上から2/3程度までプリンとホイップクリームが同時に食せる形状であった。
一方、泡状物に酵素処理タマリンドシードガムが配合されていない場合は、泡状物が溶解して泡を保持していない状態であり、離水も認められ、泡状物がゲル化物中に塊状に配置している形状をとらなかった。
【0029】
[実施例2]
図3〜6に示すようなプリン(ゲル化物G)とホイップクリーム(泡状物F)とからなる複数相のゲル状食品を製造し、ホイップクリームの安定性(保型性)を評価した。
【0030】
〔1液の調製〕
精製ヤシ油5.0質量%、脱脂粉乳9.6質量%、砂糖混合異性化糖15.0質量%、グリセリン脂肪酸モノエステル0.1質量%、ペクチン0.15質量%、デン粉0.4質量%、ゼラチン0.15質量%、カラギナン0.04質量%、キサンタンガム0.05質量%、ローカストビーンガム0.1質量%、および香料と着色料を若干量配合して温水に溶解し、均質機を用いて均質圧10MPa・sで均質処理を行った後、125℃で2秒間殺菌し、55℃に保持した。また、得られた1液のゲル化温度は50℃であった。
【0031】
〔2液の調製〕
ウシ生乳から分離した脂肪率40質量%の生クリームにあらかじめ溶解した酵素処理タマリンドシードガムを加えて、酵素処理タマリンドシードガム含量が2.0質量%となるように調整した。この生クリームを65℃に加温して2MPa・sで均質処理した後、120℃3秒の加熱殺菌を行い、再度、2MPa・sで均質処理を行って水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた水中油型乳化油脂組成物を10℃以下に急冷し、その後ポリパウチ袋に充填し、5℃の冷蔵庫で保存した。
【0032】
〔2液の泡状化〕
5℃で1日保存した上述の水中油型乳化油脂組成物を連続ホイッピングマシーンにて各所定のオーバーラン(70%、100%、180%)になるようにホイップして泡状物を調製した。
【0033】
〔ゲル状複数相食品(プリン/ホイップクリーム)の製造および評価〕
上述の1液を容器に85g充填した後、上述の泡状物を、1液を充填した容器を回転させながら、1液の表面から1cmの高さより口金絞り袋で15g充填した。冷却後、ゲル状食品を上から見た場合および食品の上面に対し垂直方向に割った断面図の様子を目視にて観察した(図3〜6参照)。結果を表2に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
〔評価結果〕
表2より、酵素処理タマリンドシードガムを泡状物に配合してなる本発明のゲル状食品では、泡状物のオーバーランによらず、いずれも泡状構造の保型性(安定性)が高い。また、オーバーランを調整することにより泡状物の分布状態を任意に調整することができる。
【0036】
[実施例3]
図2に示すようなプリン(ゲル化物G)とホイップクリーム(泡状物F)とからなる複数相のゲル状食品を製造し、ホイップクリームの安定性(保型性)を評価した。
【0037】
〔1液の調製〕
グラニュー糖18.0質量%、透明りんご果汁6.0質量%、キサンタンガム0.08質量%、ジェランガム0.07質量%、ローカストビーンガム0.02質量%、クエン酸三ナトリウム0.04質量%、乳酸カルシウム0.04質量%、および酸味料と香料を若干量配合して温水に溶解し、均質機を用いて均質圧1MPa・sで均質処理を行った後、110℃2秒間保持して殺菌し、65℃に保持した。また、得られた1液のゲル化温度は50℃、pHは3.9であった。
【0038】
〔2液の調製〕
精製パーム核油30質量%にジグリセリンモノオレイン酸エステル0.05質量%、クエン酸モノグリセリド0.1質量%、レシチン0.2質量%、グリセリンモノステアリン酸エステル0.1質量%を添加し混合溶解して油相を調製した。次に、リゾレシチン0.05質量%、脱脂粉乳6.0質量%、粉末水飴6.0質量%、精製上白糖6.0質量%、リン酸塩0.1質量%、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.4質量%、および、あらかじめ溶解した酵素処理タマリンドシードガム2.0質量%を温水に添加混合し、これを60℃に加温して水相を調製した。この水相に70℃に加温した前記油相を添加しながら、ホモミキサーで10分間撹拌した。撹拌後、均質機にて12MPa・sで均質処理して水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた水中油型乳化油脂組成物を10℃まで急冷し、その後ポリパウチ袋に充填し、10℃の冷蔵庫で保存した。
【0039】
〔2液の泡状化〕
10℃で1日保存した上述の水中油型乳化油脂組成物を連続ホイッピングマシーンにてホイップして泡状物を調製した。この泡状物のオーバーランは150%であった
【0040】
〔ゲル状複数相食品(ゼリー/ホイップクリーム)の製造および評価〕
上述の1液を容器に85g充填した後、上述の泡状物を、1液を充填した容器に各所定の高さ(1液表面から5cm、30cm)より口金絞り袋で15g充填した。冷却後、ゲル状食品を上から見た場合および食品の上面に対し垂直方向に割った断面図の様子を目視にて観察した(図2参照)。結果を表3に示す。
【0041】
【表3】

【0042】
〔評価結果〕
表3より、酵素処理タマリンドシードガムを泡状物に配合してなる本発明のゲル状食品では、泡状物を充填する際の高さによらず、いずれも泡状構造の保型性(安定性)が高い。また、泡状物を充填する際の高さを調整することにより泡状物の分布状態を任意に調整することができる。
【符号の説明】
【0043】
G…ゲル化物
F…泡状物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数相構造を有するゲル状食品であって、
前記複数相構造のうち少なくとも1相が泡状物であり、
前記泡状物が可逆的熱ゲル化剤を配合してなる
ことを特徴とするゲル状食品。
【請求項2】
請求項1に記載のゲル状食品において、
前記可逆的熱ゲル化剤が酵素処理タマリンドシードガムである
ことを特徴とするゲル状食品。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のゲル状食品において、
前記可逆的熱ゲル化剤が泡状物基準で0.1質量%以上4質量%以下配合されてなる
ことを特徴とするゲル状食品。
【請求項4】
複数相構造を有するゲル状食品の製造方法であって、
ゲル化性溶液を容器に充填する第1充填工程と、
可逆的熱ゲル化剤を配合してなる泡状物を容器に充填する第2充填工程と、
充填された前記ゲル化性溶液と前記泡状物を冷却する冷却工程とを備える
ことを特徴とするゲル状食品の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のゲル状食品の製造方法において、
前記第2充填工程におけるゲル化性溶液の温度が90℃以下である
ことを特徴とするゲル状食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−213328(P2012−213328A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78785(P2011−78785)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(711002926)雪印メグミルク株式会社 (65)
【Fターム(参考)】