説明

ゲートウェイ装置およびSIP応答経路確立方法

【課題】サーバが往路と同じ経路による応答を可能にするゲートウェイ装置を得ること。
【解決手段】グローバル網側から受信したパケットにおける書き換え前の送信元IPアドレスと、書き換え後の送信元IPアドレスとを関連付けて記憶するための変換IPアドレステーブル3315と、グローバル網側からパケットを受信した場合、前記変換IPアドレステーブル3315に基づいて、前記パケットの送信元IPアドレスを書き換え、また、前記サーバから受信した応答パケットの宛先アドレスを、前記パケットにおける書き換え前の送信元IPアドレスに書き換える変換ルール判定部3314と、前記グローバル網および前記サーバとの間で、パケットおよび応答パケットを送受信するパケット中継振り分け処理部3312と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のプライベート網がグローバル網に接続するIPネットワークにおいて、プライベート網に複数配置された場合にSIP応答経路を確立するゲートウェイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、呼制御を行うグローバル網と端末が所属する複数のプライベート網が接続し、端末間の通信をグローバル網を経由して行うIP(Internet Protocol)ネットワークがある。プライベート網は、安価に高速通信が可能であるが、グローバル網は、プライベート網と比較して低速であり、一般的に高価である。そのため、グローバル網では、様々なシステムを用いて高速化を図る取り組みがなされているが、プライベート網では既に高速な通信が容易に行えるため、システムが変わらない可能性がある。このようなIPネットワークにおいて、グローバル網とプライベート網との間で通信方式を変更する装置として、SIP(Session Initiation Protocol)アダプテーション機能を提供するゲートウェイ装置がある。
【0003】
SIPアダプテーション機能は、SIP未対応の既存の端末からの通信、例えば、TCP/UDP(Transmission Control Protocol/User Datagram Protocol)による接続要求がゲートウェイ装置に届くと、ゲートウェイ装置が、その通信がSIPを行うべきものであるかの判断をする。SIPを行うべき通信であると判断した場合、既存の端末からの通信に適したSIPのセッションを確立し、SIPで確立したサービス(帯域や優先度)を付加する。このような技術が、下記特許文献1において開示されている。
【0004】
また、このようなSIPアダプテーション機能を備えたゲートウェイ装置は、各プライベート網にサーバまたはクライアントを配置したクライアント・サーバシステムのようなIPネットワークに適用可能である。
【0005】
ここで、サーバ側に複数台のゲートウェイ装置が配置され、負荷分散や優先度変更を目的としてそれぞれのゲートウェイ装置に通信が振り分けられる場合、クライアント側とサーバ側のゲートウェイ装置間で確立されるSIPセッションも同様に振り分けられる。
【0006】
グローバル網として、NGN(Next Generation Network)網のように帯域確保型のネットワークでは、帯域を確保されたSIPセッション確立済みの経路を利用する必要がある。これは、往路のみではなく、復路についても同様となる。
【0007】
例えば、クライアントからサーバへ通信を行う(パケットを送信する)場合、宛先のIPアドレスは途中のゲートウェイ装置を経由する毎に次の宛先のIPアドレスに変更されていくが、送信元のIPアドレスの変更は積極的に行われない。また、NGN網では、クライアントのプライベート網側のNAPT(Network Address Port Translation)によって送信元のIPアドレスが変更されるため、送信側のゲートウェイ装置のIPアドレスとは異なる送信元IPアドレスとなって、サーバ側のゲートウェイ装置まで到着する。SIPセッションの最終端となるサーバ側のゲートウェイ装置では、送信元IPアドレスを積極的には変更しないため、送信元のIPアドレスのままサーバにパケットを転送する。すなわち、サーバでは、クライアントのプライベート網側で変更されたIPアドレスとしてパケットを受信する。NGN網でも送信元IPアドレスが変更される可能性もあるが、サーバ側のゲートウェイ装置においては送信元IPアドレスを積極的に変更しないため、サーバ側のプライベート網のアドレスとはならない。そのため、NGN網において送信元IPアドレスが変更される場合においても、サーバでは直接は認識できるIPアドレスとはなっていないパケットとして受信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4392029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の技術によれば、サーバ側に複数のゲートウェイ装置が配置されたクライアント・サーバシステムでは、サーバ側のどのゲートウェイ装置を経由したかを示す情報がパケットにはないため、サーバは、どのゲートウェイ装置を経由してパケットを受信したかを判断できない。サーバは、ゲートウェイ装置間で確立されたSIPセッションを経由して、すなわち、往路と同じ経路を用いて応答しなければならないが、複数のゲートウェイ装置のうち、SIPセッションを確立している適切なゲートウェイ装置を判断できない、という問題があった。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、複数台のゲートウェイ装置が存在した場合であっても、サーバが往路と同じ経路による応答を可能にするゲートウェイ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、既存端末であるサーバまたはクライアントが収容されているプライベート網が、呼制御を行うグローバル網を介して接続するネットワークにおいて、前記サーバを収容し、クライアント・サーバ間の通信時に呼制御処理を代行するゲートウェイ装置が複数配置されたプライベート網における前記ゲートウェイ装置であって、グローバル網側から受信したパケットにおける書き換え前の送信元IPアドレスと、書き換え後の送信元IPアドレスとを関連付けて記憶するための変換IPアドレス記憶手段と、グローバル網側からパケットを受信した場合、前記変換IPアドレス記憶手段に基づいて、前記パケットの送信元IPアドレスを書き換え、また、前記サーバから受信した応答パケットの宛先アドレスを、前記パケットにおける書き換え前の送信元IPアドレスに書き換える変換ルール判定手段と、前記グローバル網および前記サーバとの間で、パケットおよび応答パケットを送受信する送受信手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数台のゲートウェイ装置が存在した場合であっても、サーバが往路と同じ経路で応答することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、サーバが1つのゲートウェイ装置と接続するIPネットワークの構成例を示す図である。
【図2】図2は、ゲートウェイ装置間でSIPセッションを確立し、クライアント・サーバ間で通信を行うときのシーケンス図である。
【図3】図3は、サーバが3つのゲートウェイ装置と接続するIPネットワークの構成例を示す図である。
【図4】図4は、1つのSIPセッションが確立している様子を示す図である。
【図5】図5は、2つのSIPセッションが確立している様子を示す図である。
【図6】図6は、2つのSIPセッションが確立している様子を示す図である。
【図7】図7は、ゲートウェイ装置の構成例を示す図である。
【図8】図8は、変換IPアドレステーブルの構成例を示す図である。
【図9】図9は、送信元IPアドレスの変換処理および応答パケットの転送処理を示すフローチャートである。
【図10】図10は、2つのSIPセッションが確立している様子を示す図である。
【図11】図11は、変換IPアドレステーブルの構成例を示す図である。
【図12】図12は、ゲートウェイ装置とサーバの経路表の通知を示す図である。
【図13】図13は、経路表の構成例を示す図である。
【図14】図14は、通常のSIPセッションの確立処理を示すシーケンス図である。
【図15】図15は、経路表の通知処理を含むSIPセッションの確立処理を示すシーケンス図である。
【図16】図16は、サーバがルーティングプロトコルに対応していない場合の応答経路を示す図である。
【図17】図17は、送信元IPアドレスの変換処理および応答パケットの転送処理を示すフローチャートである。
【図18】図18は、ゲートウェイ装置がそれぞれ宛先に対応するSIPセッションを把握している場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明にかかるゲートウェイ装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
実施の形態1.
最初に、既存の端末であるサーバまたはクライアントを収容したプライベート網が複数存在し、サーバとクライアントの間で、呼制御を行うグローバル網を介して通信を行うIPネットワークについて説明する。
【0016】
クライアントやサーバを1つ以上収容したプライベート網が複数存在する場合、それぞれの異なるプライベート網間の通信は、必ず1回以上グローバル網を経由する。グローバル網では、SIPやRTSP(Real Time Streaming Protocol)などのシグナリングプロトコルにより、呼制御、すなわち帯域の保障、優先制御が実施される。プライベート網とグローバル網の間には、通信を中継する中継装置が配置される。プライベート網からグローバル網へ、またはグローバル網からプライベート網へと通信が行われる場合、中継装置を経由して通信が行われる。
【0017】
グローバル網で帯域の保障、優先制御を実施するためには、通信を行う端末同士(ここではクライアントおよびサーバ)がシグナリングプロトコルに対応している必要がある。しかしながら、シグナリングプロトコルに対応していない既存の端末がプライベート網からグローバル網への通信を希望することも考えられる。そのため、SIPアダプテーション機能を有したゲートウェイ装置をプライベート網に配置する。シグナリングプロトコルに対応していない既存の端末がプライベート網からグローバル網へと通信を行う場合、ゲートウェイ装置は、既存の端末から通信を受けたことをトリガに、既存の端末の代わりにシグナリングプロトコルを用いてグローバル網での帯域の確保、優先制御の保障を実施する。このように、SIPアダプテーション機能を有したゲートウェイ装置を経由することにより、既存の端末は、シグナリングプロトコルに未対応であっても、シグナリングプロトコルで帯域の保障や優先制御が実施されるグローバル網のサービスを受けることができる。
【0018】
通常、クライアントとサーバによるネットワークは、少数のサーバに対して多数のクライアントが接続される構成となる。1つのサーバに対して複数のクライアントが接続される形態では、従来、サーバの性能を上げることにより、そのネットワーク形態を変更することなく満足していた。しかし、サーバが複数のクライアントと接続する機能を持ち合わせておらず、その機能をアダプタ型のゲートウェイ装置を接続することにより満足している場合、サーバの性能を上げるだけでは、ネットワーク形態を満足することが出来ない。このような場合、サーバ側のゲートウェイ装置を複数台配置する構成とすることで、サーバ側のゲートウェイ装置の負荷を分散する効果が期待される。
【0019】
また、サーバ側のゲートウェイ装置を複数台配置する要因として、ゲートウェイ装置のSIPセッション確立数の上限や、ゲートウェイ装置のインタフェース性能上限などによる制限がある。SIPセッション確立数の上限としては、装置の設定上限が考えられる。また、ゲートウェイ装置のインタフェース性能上限としては、インタフェースが100M/1OMであるのに対し、サーバへの帯域確保の合計値が100Mを超過してしまう場合などがある。アダプタ型のゲートウェイ装置は、小型・安価であることが求められているものであるから、性能を向上させることではなく、機能として複数台を用いることによるスケーラビリティの向上を目的とする。
【0020】
ここで、サーバ側に複数のゲートウェイ装置が存在し、クライアントからの通信がその複数のゲートウェイ装置のうちの1台を経由してサーバへ到着する場合、クライアント側のゲートウェイ装置との間でSIPセッションが確立されているため、サーバは、同じSIPセッションが確立されているゲートウェイ装置を経由して応答をする必要がある。サーバでは、別経路、すなわち、ゲートウェイ装置同士のSIPセッションが確立されていない経路では、応答をすることができない。
【0021】
NGN網に代表されるネットワークでは、クライアントのプライベート網側でNAPT変換が行われ、送信元のIPアドレスやポート番号が変換される場合がある。このとき、サーバ側のゲートウェイ装置では送信元IPアドレスを積極的に変換しないため、サーバでは、異なるゲートウェイ装置を経由してサーバ側に通信が到着した場合でも、送信元IPアドレスがクライアントのプライベート網側で変換されたIPアドレスのままのため、どのゲートウェイ装置を経由したのか判別を行うことができない。判別ができない場合、サーバは、デフォルトゲートウェイ装置宛に応答を返すが、別のゲートウェイ装置との間で(別経路で)SIPセッションが確立されているときには、SIPセッションが確立されていない経路で応答しようとしても通信ができず、応答が返らないことになる。
【0022】
そのため、本実施の形態では、ゲートウェイ装置が、サーバにおいて復路の宛先が判別できるようにパケットのアドレスを変換し、サーバが、往路で通ったゲートウェイ装置を経由して応答することを可能にする。
【0023】
具体的に、図面を用いて詳細に説明する。図1は、サーバが1つのゲートウェイ装置と接続するIPネットワークの基本的な構成例を示す図である。1つのグローバル網に3つのプライベート網が接続しており、サーバが、1つのゲートウェイ装置と接続された状態を示すものである。
【0024】
IPネットワークには、プライベート網100、グローバル網200、プライベート網300、400が存在する。プライベート網100は、ユーザが使用する端末であるクライアント101、102と、グローバル網200と接続する中継装置111と、SIPアダプテーション機能を備えたゲートウェイ装置112と、を備える。グローバル網200は、ゲートウェイ装置間のSIPセッションを確立するSIPサーバ201、を備える。プライベート網300は、各種のサービスを提供するサーバ301と、グローバル網200と接続する中継装置311と、SIPアダプテーション機能を備えたゲートウェイ装置312と、を備える。プライベート網400は、各種のサービスを提供するサーバ401と、グローバル網200と接続する中継装置411と、SIPアダプテーション機能を備えたゲートウェイ装置412と、を備える。
【0025】
プライベート網から他のプライベート網に通信するためには、グローバル網200を経由する必要があり、同時に、プライベート網とグローバル網200の間に配置されている中継装置およびゲートウェイ装置を経由する。例えば、プライベート網100のクライアント101からプライベート網300のサーバ301へ通信を行う(パケットを送信する)場合、プライベート網100のクライアント101から、ゲートウェイ装置112、中継装置111を経由してパケットを送信する。そして、プライベート網300では、グローバル網200を経由したパケットを、中継装置311、ゲートウェイ装置312を経由して、サーバ301が受信する。このとき、ゲートウェイ装置112とゲートウェイ装置312との間では、SIPサーバ201を介した制御によりSIPセッションが確立されている。
【0026】
図2は、ゲートウェイ装置112、312間でSIPセッションを確立し、クライアント101・サーバ301間で通信を行うときのシーケンス図である。一例として、クライアント101、ゲートウェイ装置112、グローバル網200、ゲートウェイ装置312、サーバ301との間の処理について説明する。なお、各中継装置はSIPセッションの確立において自立的な処理を行っていないため、記載を省略する。
【0027】
クライアント101が、通信の開始を示すTCP SYNパケットを送信すると、ゲートウェイ装置112がこれを受信する。ゲートウェイ装置112は、送信元のIPアドレス、ポート番号、宛先のIPアドレス、ポート番号の4項目の組み合わせを確認し、アプリケーションにあわせた帯域の申請、優先度制御の申請を、グローバル網200(SIPサーバ201)に対してSIPにより行う。具体的には、ゲートウェイ装置112とゲートウェイ装置312との間では、グローバル網200(SIPサーバ201)を介して、1NVITEパケット、100Tryingパケット、200OKパケット等が送受信される。これらは一般的なSIP確立処理と同等のため、詳細な説明は省略する。
【0028】
SIPによる申請終了後、ゲートウェイ装置112は、待機させていたTCP SYNパケットを、SIPで確保された帯域、優先度制御を活用して、相手先のサーバ301へ転送する。サーバ301は、SYN/ACKパケットをクライアント101へ送信し、クライアント101は、ACKパケットをサーバ301へ送信する。これにより、SIPセッションが確立し、クライアント101・サーバ301間でデータの送受信が可能となる。SIPセッションにより申請が完了すれば、その後は、通常の通信と同じ動作となる。
【0029】
つぎに、サーバ側に複数のゲートウェイ装置が配置されている場合について説明する。図3は、サーバが3つのゲートウェイ装置と接続するIPネットワークの構成例を示す図である。1つのグローバル網に3つのプライベート網が接続しており、サーバが、3つのゲートウェイ装置と接続された状態を示すものである。
【0030】
IPネットワークには、プライベート網100、グローバル網200、プライベート網300、500が存在する。プライベート網100は、クライアント101と、中継装置111と、ゲートウェイ装置112と、を備える。グローバル網200は、SIPサーバ201、を備える。プライベート網300は、サーバ301と、グローバル網200と接続する中継装置321と、SIPアダプテーション機能を備えたゲートウェイ装置322、323、324と、を備える。プライベート網500は、ユーザが使用する端末であるクライアント501と、グローバル網200と接続する中継装置511と、SIPアダプテーション機能を備えたゲートウェイ装置512と、を備える。
【0031】
図3に示す構成のIPネットワークにおいて、サーバ301とクライアント101との間でSIPセッションが確立している場合について説明する。図4は、IPネットワークにおいて、1つのSIPセッションが確立している様子を示す図である。
【0032】
図4において、クライアント101からパケットを送信すると、ゲートウェイ装置112、中継装置111、グローバル網200、中継装置321、ゲートウェイ装置322を経由して、サーバ301がパケットを受信する。サーバ301が受信パケットに対して応答パケットを送信すると、これとは逆に、ゲートウェイ装置322、中継装置321、グローバル網200、中継装置111、ゲートウェイ装置112を経由して、クライアント101が応答パケットを受信する。
【0033】
このように、問題なく通信のやり取りが行われる場合、クライアント101とサーバ301との間では、同一の経路のSIPセッションを利用して通信が行われる。ここで、SIPセッションは、クライアント101とサーバ301間で確立されるのではなく、ゲートウェイ装置112、322間で確立されている。そのため、サーバ301側に複数のゲートウェイが配置されている場合であっても、クライアント101・サーバ301間では、同一のゲートウェイ装置322を経由して通信のやり取りが行われなければならない。
【0034】
つぎに、図4の状態に加え、クライアント501とサーバ301との間でSIPセッションが確立されている場合について説明する。図5は、IPネットワークにおいて、2つのSIPセッションが確立している様子を示す図である。クライアント101とサーバ301との間では正常に通信が行われており、クライアント501とサーバ301との間では、サーバ301からクライアント501への応答が失敗している状態を示す。
【0035】
図5において、クライアント501からパケットを送信すると、ゲートウェイ装置512、中継装置511、グローバル網200、中継装置321、ゲートウェイ装置324を経由して、サーバ301がパケットを受信する。サーバ301が受信パケットに対して応答パケットを送信するときは、本来であればこれとは逆に、ゲートウェイ装置324、中継装置321、グローバル網200、中継装置511、ゲートウェイ装置512を経由して、クライアント501へ応答しなければならない。しかしながら、サーバ301は、クライアント501への応答パケットを、デフォルトゲートウェイ装置として設定されているゲートウェイ装置322へ送信している。サーバ301では、どのゲートウェイ装置を経由してパケットを受信したか判別できないからである。そのため、ゲートウェイ装置512とゲートウェイ装置324との間でSIPセッションを確立しているクライアント501・サーバ301間の通信では、応答パケットが届かず、ゲートウェイ装置322の先で廃棄されてしまっている。SIPセッションがゲートウェイ装置512とゲートウェイ装置324間で確立されているため、ゲートウェイ装置322へ応答パケットが届いても、その応答パケットを通すことが出来ない。
【0036】
そこで、サーバ301が、SIPセッションが確立している適切なゲートウェイ装置へ応答することが可能な方法について説明する。図6は、IPネットワークにおいて、2つのSIPセッションが確立している様子を示す図である。ここでは、グローバル網200とプライベート網300のみを示すが、図5と同様に、プライベート網100、500がグローバル網200に接続されているものとする。また、プライベート網300内のゲートウェイ装置を、図5に示すゲートウェイ装置322〜324から、ゲートウェイ装置331〜333に置き換える。ゲートウェイ装置331〜333は、中継装置321から受信したパケットの送信元IPアドレスを書き換えてから、サーバ301へパケットを転送する。ここでは、一例として、ゲートウェイ装置331〜333は、自装置を示すIPアドレスに書き換える。
【0037】
図7は、ゲートウェイ装置331の構成例を示す図である。ゲートウェイ装置331について説明するが、ゲートウェイ装置332、333も同様の構成を備える。ゲートウェイ装置331は、WAN(Wide Area Network)インタフェース部3311と、パケット中継振り分け処理部3312と、LAN(Local Area Network)インタフェース部3313と、変換ルール判定部3314と、変換IPアドレステーブル3315と、セッション制御部3316と、セッション情報テーブル3317と、を備える。
【0038】
WANインタフェース部3311は、WANに接続するためのポートであり、図6では中継装置321と接続する。パケット中継振り分け処理部3312は、外部とのパケットの送受信、および2つの網間のパケットの中継・トラフィックの監視と振り分け処理を行う。LANインタフェース部3313は、LANに接続するためのポートであり、図6ではサーバ301と接続する。ゲートウェイ装置331では、WANインタフェース部3311、パケット中継振り分け処理部3312、およびLANインタフェース部3313が、パケットの送受信を行う一般的な構成である。
【0039】
変換ルール判定部3314は、パケット中継振り分け処理部3312において中継されるパケットの送信元IPアドレスをルール(変換IPアドレステーブル3315)に従って変換する。変換IPアドレステーブル3315は、変換前と変換後の送信元IPアドレスの組み合わせを記録するためのテーブルである。
【0040】
図8は、変換IPアドレステーブル3315の構成例を示す図である。変換IPアドレステーブル3315は、No.と、変換後送信元IPアドレスと、変換前送信元IPアドレスと、から構成される。変換後送信元アドレスは、ここでは、自装置のIPアドレス「10.0.0.11」を示す。変換前送信元アドレスは、中継装置321のアドレス「A.A.A.A」を示す。ゲートウェイ装置331では、受信したパケットのアドレスを、「A.A.A.A」から「10.0.0.11」に変換することを示すものである。
【0041】
セッション制御部3316は、クライアントに代わってグローバル網200との間のセッション制御処理を代行する。セッション情報テーブル3317は、セッション制御部3316によりセッション制御を行う通信フローの条件およびセッション制御のためのパラメータを保持する。セッション制御部3316およびセッション情報テーブル3317は、SIPセッション確立時に機能する一般的な構成である。
【0042】
つづいて、送信元IPアドレスの変換処理および応答パケットの転送処理について説明する。図9は、送信元IPアドレスの変換処理および応答パケットの転送処理を示すフローチャートである。まず、ゲートウェイ装置331では、WANインタフェース部3311からパケットを受信すると、パケット中継振り分け処理部3312おいて、パケットの宛先を確認し、通信フローの情報をセッション制御部3316経由でセッション情報テーブル3317に保持する。そして、変換ルール判定部3314が、変換IPアドレステーブル3315に基づいて、受信したパケットの送信元IPアドレスを、自身のIPアドレスに書き換える(ステップS1)。すなわち、送信元IPアドレスを、中継装置321のアドレス「A.A.A.A」から自身のIPアドレス「10.0.0.11」に書き換える。このとき、宛先のアドレスはそのままとする。なお、送信元のIPアドレスはゲートウェイ装置331がランダムに付け替えてもよい。この場合、ゲートウェイ装置331では、ランダムに割り当てたIPアドレスについて、変換IPアドレステーブル3315に保持する。ゲートウェイ装置331は、送信元IPアドレスを書き換えたパケットを、LANインタフェース部3313からサーバ301へ転送する(ステップS2)。
【0043】
サーバ301では、送信元IPアドレスが書き換えられたパケットを受信すると、送信元が判明するため、書き換えられた送信元IPアドレス宛、すなわち、その送信元であるゲートウェイ装置331に対して応答パケットを送信する(ステップS3)。このとき、応答パケットを送信する前において、サーバ301では、アドレス解決を行う必要があるため、サーバ301が通知するARPに対し、ゲートウェイ装置331は答える必要がある。そのため、ゲートウェイ装置331では、パケット中継振り分け処理部3312が、サーバ301からのARPに対応する。なお、ARPの対応についてはこれに限定するものではなく、LANインタフェース部3313がARPに対応してもよい。
【0044】
このように、ゲートウェイ装置331は、パケットの送信元IPアドレス「A.A.A.A」を、ゲートウェイ装置331自身のIPアドレスである「10.0.0.11」に書き換えて、サーバ301へ転送する。サーバ301では、パケットの送信元IPアドレスがゲートウェイ装置331のIPアドレスに書き換えられていることから、往路と同じ経路で応答することが可能となる。
【0045】
なお、ゲートウェイ装置331では、サーバ301から応答パケットを受信すると、宛先のアドレスがゲートウェイ装置331のIPアドレス「10.0.0.11」となっている。そのため、ゲートウェイ装置331では、図8に示す変換IPアドレステーブル3315を利用して、変換ルール判定部3314が、応答パケットの宛先アドレスを中継装置321のアドレス「A.A.A.A」に書き換える(ステップS4)。そして、宛先を書き換えた応答パケットを、WANインタフェース部3311から中継装置321に転送する(ステップS5)。
【0046】
なお、ゲートウェイ装置331では、変換IPアドレステーブル3315に、さらにポート番号の情報を加えることにより、中継装置側のIPアドレスが複数あった場合、例えば、中継装置が複数ある場合にも対応することが可能である。
【0047】
また、ゲートウェイ装置331を経由するクライアント101との通信について説明したが、ゲートウェイ装置333を経由するクライアント501との通信についても同様である。ゲートウェイ装置333は、中継装置321から受信したパケットの送信元IPアドレスを、「A.A.A.A」から自身のIPアドレス「10.0.0.33」に書き換えてから(ステップS1)、サーバ301へパケットを転送する(ステップS2)。サーバ301が応答パケットを送信すると(ステップS3)、ゲートウェイ装置333では、受信した応答パケットの宛先アドレスを、自身のIPアドレス「10.0.0.33」から中継装置321のアドレス「A.A.A.A」に書き換えて(ステップS4)、中継装置321に転送する(ステップS5)。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態では、サーバと接続する複数のゲートウェイ装置において、グローバル網側から受信したパケットの送信元IPアドレスを、自身のIPアドレスに変換してから、サーバへパケットを転送することとした。これにより、サーバは、受信したパケットから、経由したゲートウェイ装置を判別することができるため、SIPセッションが確立しているゲートウェイ装置に対して、応答することができる。
【0049】
実施の形態2.
本実施の形態では、ゲートウェイ装置が、受信したパケットの送信元IPアドレスを、自身のIPアドレスとは異なる別のアドレスに書き換える。実施の形態1と異なる部分について説明する。
【0050】
図10は、2つのSIPセッションが確立している様子を示す図である。図6と同様の接続状態であるが、ゲートウェイ装置331、333が、自身のIPアドレスとは異なる別のアドレスに送信元IPアドレスを変換した状態を示す。
【0051】
ゲートウェイ装置331は、受信したパケットの送信元IPアドレスを、自身のIPアドレスである「10.0.0.11」ではなく、別のアドレスである「11.11.11.11」に書き換えてからサーバ301に転送する。すなわち、ゲートウェイ装置331では、中継装置321からパケットを受信した場合、WANインタフェース部3311が、受信したパケットをパケット中継振り分け処理部3312へ転送する。そして、変換ルール判定部3314が、変換IPアドレステーブル3315から変換するIPアドレスとして「11.11.11.11」を選択し、パケットの送信元IPアドレスを選択したIPアドレスに書き換える。そして、LANインタフェース部3313から、IPアドレス変換のパケットをサーバ301へ転送する。
【0052】
ここで、自身のIPアドレスに変換しなかった場合、サーバ301からのARP解決に答える必要が無いため、ゲートウェイ装置331では、ARPに答える機能を省くことが可能となる。ただし、サーバ301において、アドレスと送信先との対応を示す経路情報である経路表を持つ必要がある。サーバ301が経路表を持つ方法については後述する。
【0053】
図11は、本実施の形態における変換IPアドレステーブル3315の構成例を示す図である。変換後送信元IPアドレスの部分が自身のIPアドレスとは異なる別のアドレスになっている点が図8と異なるが、変換内容が異なる以外の効果等については、図8と同等である。
【0054】
なお、自身のIPアドレスとは異なる別のアドレスとしては、例えば、送受信されるパケットに優先度がある場合には、優先度の情報を示すアドレスに書き換えることも可能である。これにより、サーバ301では、高優先のパケットから処理を行うことが可能となる。
【0055】
優先度を示す方法としては、例えば、ネットワークアドレスに応じたものとする方法がある。IPアドレスにおいて、「10.0.0.0/16」〜「10.254.0.0/16」の2桁目のアドレスを0〜254の範囲として、「0」を高優先、「254」を低優先(ベストエフォート)としてもよい。また、「10.0.0.0」〜「10.255.255.255」のクラスAを高優先、「192.168.0.0」以降のクラスCを低優先として分けてもよい。また、「192.168.0.0/8」〜「192.168.0.0/30」等のように、サブネットマスク長によって優先度を決定してもよい。また、サーバ301と同じネットワークアドレスにして、ホストアドレスによって優先度を決定してもよい。なお、ホストアドレスによって決定する場合には、ゲートウェイ装置331は、サーバ301からのARPに応答する必要がある。
【0056】
つぎに、サーバ301が経路表を持つ方法について説明する。図12は、ゲートウェイ装置が自身のIPアドレスに書き換えなかった場合のサーバへの経路表の通知を示す図である。サーバ301は、応答パケットの宛先アドレスとして、ゲートウェイ装置のIPアドレスと異なるアドレス宛に送信する場合、経路表に従って送信すればよい。
【0057】
図13は、経路表の構成例を示す図である。経路表は、No.と、宛先IPアドレスと、ネクストホップと、から構成される。宛先IPアドレスは、ゲートウェイ装置が自身のIPアドレスとは異なるアドレスに書き換えた内容であり、ネクストホップは、前記宛先IPアドレスの場合に応答パケットの送信先となるゲートウェイ装置のIPアドレスを示すものである。図13は、ゲートウェイ装置331、333からの経路表の通知により取得した情報を反映したものである。例えば、「11.11.11.11」の送信元IPアドレスが付されたパケットを受信した場合には、サーバ301は、「10.0.0.11」のIPアドレスを持つゲートウェイ装置(ここでは、ゲートウェイ装置331)へ応答パケットを送信することを示す。サーバ301では、さらに、ゲートウェイ装置332からの経路表の通知により、ゲートウェイ装置332の情報を含ませることが可能である。
【0058】
経路表の通知方法としては、標準のOSPF(Open Shortest Path First)やRIP(Routing Information Protocol)によって通知する方法があるが、これに限定するものではない。また、経路表の通知のタイミングは、SIPセッションの確立中に行うことが望ましい。ゲートウェイ装置331〜333では、パケット中継振り分け処理部3312が、変換IPアドレステーブル3315の内容に基づいて、サーバ301へ経路表を通知する処理を行う。
【0059】
図14、15は、SIPセッションの確立処理を示すシーケンス図である。一例として、クライアント101、ゲートウェイ装置112、グローバル網200、ゲートウェイ装置331、サーバ301との間の処理について説明する。図14は、通常のSIPセッションの確立処理を示すシーケンス図であり、図15は、経路表の通知処理を含むSIPセッションの確立処理を示すシーケンス図である。図15では、経路表の通知、アドレス変換が追加されている点が図14と異なる。図14のシーケンス図は、図15のシーケンス図との差異を明確にするためのものであるので、図15のシーケンス図に基づいて説明する。図2のシーケンス図と同様、各中継装置はSIPセッションの確立において自立的な処理を行っていないため、記載を省略する。
【0060】
クライアント101から通信の開始を表すTCP SYNパケットがサーバ301に向けて送信されると、ゲートウェイ装置112が、このTCP SYNパケットをトリガとして、ゲートウェイ装置331との間でSIPセッションを確立する。SIPアダプテーション確立中、ゲートウェイ装置331は、サーバ301とルーティングプロトコルを用いて経路表を通知する。図15では、ゲートウェイ装置331は、サーバ301へ、100Tryingパケットと200OK/SDPパケットの間で経路表を通知する。以降の通信では、図15のアドレス変換として示しているポイントにおいて、ゲートウェイ装置331は、クライアント101からサーバ301への通信においては、パケットの送信元IPアドレスを変換してからサーバ301へ転送する。また、サーバ301からクライアント101への通信においては、応答パケットの宛先アドレスを前記パケットの変換前の元のアドレスに変換してから転送する。
【0061】
なお、サーバ301とゲートウェイ装置331との間のルーティングプロトコルについては、サーバ301が対応しているものであればよく、特定のルーティングプロトコルに限定するものではない。
【0062】
以上説明したように、本実施の形態では、サーバと接続する複数のゲートウェイ装置では、グローバル網側から受信したパケットの送信元アドレスを、自身のIPアドレスとは異なる別のアドレスに変換してから、サーバへパケットを転送することとした。この場合においても、実施の形態1と同様、サーバは、受信したパケットから経由したゲートウェイ装置を判別することができるため、SIPセッションが確立しているゲートウェイ装置に対して、応答することができる。また、ゲートウェイ装置では、ARPに対する機能を省略することができる。
【0063】
実施の形態3.
本実施の形態では、サーバが、ルーティングプロトコルであるOSPFやRIPに対応していない場合について説明する。実施の形態1、2と異なる部分について説明する。
【0064】
図16は、サーバ301がルーティングプロトコルに対応していない場合の応答経路を示す図である。図示しないクライアント501側のゲートウェイ装置512とゲートウェイ装置333との間で、SIPセッションが確立しているものとする。
【0065】
つづいて、ゲートウェイ装置331における、送信元IPアドレスの変換処理および応答パケットの転送処理について説明する。図17は、送信元IPアドレスの変換処理および応答パケットの転送処理を示すフローチャートである。実施の形態2の場合と同様に、まず、ゲートウェイ装置331では、変換ルール判定部3314が、変換IPアドレステーブル3315に基づいて、受信したパケットの送信元IPアドレスを、自身のIPアドレスとは異なるアドレスに書き換える(ステップS11)。そして、送信元IPアドレスを書き換えたパケットを、LANインタフェース部3313からサーバ301へ転送する(ステップS12)。
【0066】
クライアント501からのパケットがゲートウェイ装置333を経由してサーバ301に到達した場合、ゲートウェイ装置333において送信元IPアドレスが変換されているため、未知の送信元IPアドレスの通信がサーバ301に対して行われる。サーバ301では、ルーティングプロトコル等に対応していないため、経路表を持っていない。そのため、応答パケットの経路が不明な場合、サーバ301は、ゲートウェイ装置333経由でクライアント501からのパケットを受信した場合であっても、デフォルトゲートウェイ装置に設定されているゲートウェイ装置へ応答パケットを送信する(ステップS13)。図16の場合では、ゲートウェイ装置331がデフォルトゲートウェイ装置として設定されているものとする。この場合、サーバ301は、ゲートウェイ装置331に対して応答する。
【0067】
ここで、各ゲートウェイ装置331〜333は、隣接するゲートウェイ装置のアドレスの情報を持っているものとする。隣接するゲートウェイ装置の情報については、パケット中継振り分け処理部3312が取得し、セッション情報テーブル3317で記憶してもよいし、図示しない記憶部において記憶してもよい。また、隣接するゲートウェイ装置の情報を取得するタイミングは、プライベート網300において各装置を設定するとき等があるが、これに限定するものでなく、随時情報を更新できるようにしてもよい。なお、隣接ゲートウェイ装置の情報の取得については、LANインタフェース部3313が行うようにしてもよい。
【0068】
ゲートウェイ装置331は、自身が持つ隣接ゲートウェイ装置の情報に基づいて、サーバ301からの応答パケットが自身のゲートウェイ装置の変換IPアドレステーブル3315に存在しない、すなわち該当するSIPセッションのエントリを持っていないときは(ステップS14:No)、隣接するゲートウェイ装置332に対して応答パケットを転送する(ステップS15)。ゲートウェイ装置332も同様に、自身の変換IPアドレステーブル3315に該当エントリを持っていないため(ステップS14:No)、自身が持つ隣接ゲートウェイ装置の情報に基づいて、隣接するゲートウェイ装置333に対して応答パケットを転送する(ステップS15)。ゲートウェイ装置333では、該当するIP変換アドレステーブに該当エントリを持っている(ステップS14:Yes)、すなわち該当するSIPセッションがあるので、往路の経路と同様の経路で応答を返すことができる。そのため、ゲートウェイ装置333では、応答パケットの宛先アドレスを中継装置321のアドレス「A.A.A.A」に書き換える(ステップS16)。そして、宛先を書き換えた応答パケットを、WANインタフェース部3311から中継装置321に転送する(ステップS17)。これにより、該当するエントリのSIPセッションを用いてクライアント501へ応答パケットを送信することができる。
【0069】
なお、SIPセッションを確立していないゲートウェイ装置では、隣接ゲートウェイ装置に対して応答パケットを転送する際、合わせてサーバ301に対してエラー応答を返してもよい。図16においては、ゲートウェイ装置331、332が、サーバ301に対してエラー応答を返してもよい。この場合、パケット中継振り分け処理部3312、または、LANインタフェース部3313のいずれかにおいてエラー応答を制御する。
【0070】
また、各ゲートウェイ装置331〜333は、隣接ゲートウェイ装置のアドレス情報を持つかわりに、それぞれ宛先に対応するSIPセッションを把握するようにしてもよい。図18は、各ゲートウェイ装置がそれぞれ宛先に対応するSIPセッションを把握している場合を示す図である。各ゲートウェイ装置がそれぞれ連携し、それぞれが確立しているSIPセッションの情報を持つ。各ゲートウェイ装置が確立しているSIPセッションの情報を持つ方法としては、図16の場合と同様、パケット中継振り分け処理部3312が取得し、セッション情報テーブル3317で記憶してもよいし、図示しない記憶部において記憶してもよい。また、取得するタイミングは、プライベート網300において各装置を設定するとき等があるが、これに限定するものでなく、随時情報を更新できるようにしてもよい。なお、各ゲートウェイ装置が確立しているSIPセッションの情報の取得については、LANインタフェース部3313が行うようにしてもよい。
【0071】
例えば、図16と同様、サーバ301が、デフォルトゲートウェイ装置であるゲートウェイ装置331へ応答パケットを送信した場合(ステップS13)、該当するエントリを持っていないゲートウェイ装置331では(ステップS14:No)、ゲートウェイ装置332ではなく、ゲートウェイ装置333へ応答パケットを転送する(ステップS15)。以降の処理は図16の場合と同様である。
【0072】
また、別の方法として、各ゲートウェイ装置では、自身が知るゲートウェイ装置に対して、ブロードキャストにより応答パケットを転送するようにしてもよい。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態では、サーバがルーティングプロトコルに対応していない場合、サーバは受信パケットに対する応答をデフォルトゲートウェイ装置へ転送し、デフォルトゲートウェイ装置が、当該応答に対応するSIPセッションを確立しているゲートウェイ装置に対して、他のゲートウェイ装置を経由して、または直接、応答パケットを転送することとした。これにより、サーバがルーティングプロトコルに対応していない場合でも、SIPセッションが確立しているゲートウェイ装置を経由して応答することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、本発明にかかるゲートウェイ装置は、グローバル網に複数のプライベート網が接続されたIPネットワークに有用であり、特に、1つのプライベート網に複数配置されている場合に適している。
【符号の説明】
【0075】
100 プライベート網
101、102 クライアント
111 中継装置
112 ゲートウェイ装置
200 グローバル網
201 SIPサーバ
300 プライベート網
301 サーバ
311、321 中継装置
312、322、323、324、331、332、333 ゲートウェイ装置
400 プライベート網
401 サーバ
411 中継装置
412 ゲートウェイ装置
500 プライベート網
501 クライアント
511 中継装置
512 ゲートウェイ装置
3311 WANインタフェース部
3312 パケット中継振り分け処理部
3313 LANインタフェース部
3314 変換ルール判定部
3315 変換IPアドレステーブル
3316 セッション制御部
3317 セッション情報テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存端末であるサーバまたはクライアントが収容されているプライベート網が、呼制御を行うグローバル網を介して接続するネットワークにおいて、前記サーバを収容し、クライアント・サーバ間の通信時に呼制御処理を代行するゲートウェイ装置が複数配置されたプライベート網における前記ゲートウェイ装置であって、
グローバル網側から受信したパケットにおける書き換え前の送信元IPアドレスと、書き換え後の送信元IPアドレスとを関連付けて記憶するための変換IPアドレス記憶手段と、
グローバル網側からパケットを受信した場合、前記変換IPアドレス記憶手段に基づいて、前記パケットの送信元IPアドレスを書き換え、また、前記サーバから受信した応答パケットの宛先アドレスを、前記パケットにおける書き換え前の送信元IPアドレスに書き換える変換ルール判定手段と、
前記グローバル網および前記サーバとの間で、パケットおよび応答パケットを送受信する送受信手段と、
を備えることを特徴とするゲートウェイ装置。
【請求項2】
前記変換ルール判定手段は、前記変換IPアドレス記憶手段に基づいて、送信元IPアドレスを自装置のIPアドレスに書き換える、
ことを特徴とする請求項1に記載のゲートウェイ装置。
【請求項3】
前記変換ルール判定手段が、前記変換IPアドレス記憶手段に基づいて、送信元IPアドレスを自装置のIPアドレス以外の自装置を特定するアドレスに書き換える場合、
さらに、
前記サーバが所定のルーティングプロトコルに対応しているときは、当該サーバに対して応答パケットの送信先を示す経路情報を通知する経路情報通知手段、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のゲートウェイ装置。
【請求項4】
前記変換ルール判定手段が、前記変換IPアドレス記憶手段に基づいて、送信元IPアドレスを自装置のIPアドレス以外の自装置を特定するアドレスに書き換える場合、
さらに、
前記サーバを収容するプライベート網内で自装置と隣接するゲートウェイ装置の隣接情報を取得する隣接情報取得手段と、
を備え、
前記送受信手段は、自装置で送信元IPアドレスを書き換えたパケットに対する応答パケット以外の応答パケットを受信した場合は、取得した隣接情報に基づいて、受信した応答パケットを、隣接するゲートウェイ装置へ転送する、
ことを特徴とする請求項1に記載のゲートウェイ装置。
【請求項5】
前記送受信手段は、
隣接するゲートウェイ装置へ応答パケットを転送したときは、さらに、前記サーバへエラーを報告する、
ことを特徴とする請求項4に記載のゲートウェイ装置。
【請求項6】
前記変換ルール判定手段が、前記変換IPアドレス記憶手段に基づいて、送信元IPアドレスを自装置のIPアドレス以外の自装置を特定するアドレスに書き換える場合、
さらに、
前記サーバを収容するプライベート網内の他のゲートウェイ装置との間で、それぞれが確立している通信経路の情報を交換して取得する経路情報取得手段、
を備え、
前記送受信手段は、自装置で送信元IPアドレスを書き換えたパケットに対する応答パケット以外の応答パケットを受信した場合は、取得した通信経路情報に基づいて、受信した応答パケットを、当該応答パケットを経由すべきゲートウェイ装置へ転送する、
ことを特徴とする請求項1に記載のゲートウェイ装置。
【請求項7】
前記変換ルール判定手段は、前記変換IPアドレス記憶手段に基づいて、送信元IPアドレスをパケットの優先度を示すアドレスに書き換える、
ことを特徴とする請求項3〜6のいずれか1つに記載のゲートウェイ装置。
【請求項8】
既存端末であるサーバまたはクライアントが収容されているプライベート網が、呼制御を行うグローバル網を介して接続するネットワークにおいて、前記サーバを収容し、クライアント・サーバ間の通信時に呼制御処理を代行するゲートウェイ装置が複数配置されたプライベート網におけるSIP応答経路確立方法であって、
グローバル網側からパケットを受信したゲートウェイ装置が、前記パケットの送信元IPアドレスを書き換えるアドレス変換ステップと、
前記パケットの送信元IPアドレスを書き換えたゲートウェイ装置が、前記サーバへパケットを転送するパケット転送ステップと、
前記サーバが、書き換えられた送信元IPアドレス宛に応答パケットを送信する応答ステップと、
前記パケットの送信元IPアドレスを書き換えたゲートウェイ装置が、前記応答パケットを受信し、当該応答パケットの宛先アドレスを、前記パケットにおける書き換え前の送信元IPアドレスに書き換えるアドレス逆変換ステップと、
前記応答パケットの宛先アドレスを書き換えたゲートウェイ装置が、グローバル網側へ応答パケットを転送する応答パケット転送ステップと、
を含むことを特徴とするSIP応答経路確立方法。
【請求項9】
前記アドレス変換ステップでは、前記グローバル網側からパケットを受信したゲートウェイ装置が、送信元IPアドレスを自装置のIPアドレスに書き換える、
ことを特徴とする請求項8に記載のSIP応答経路確立方法。
【請求項10】
前記アドレス変換ステップにおいて、前記グローバル網側からパケットを受信したゲートウェイ装置が、送信元IPアドレスを自装置のIPアドレス以外の自装置を特定するアドレスに書き換えた場合、
さらに、
前記サーバが所定のルーティングプロトコルに対応しているときは、前記パケットの送信元IPアドレスを書き換えたゲートウェイ装置が、当該サーバに対して応答パケットの送信先を示す経路情報を通知する経路情報通知ステップ、
を含むことを特徴とする請求項8に記載のSIP応答経路確立方法。
【請求項11】
前記アドレス変換ステップにおいて、前記グローバル網側からパケットを受信したゲートウェイ装置が、送信元IPアドレスを自装置のIPアドレス以外の自装置を特定するアドレスに書き換えた場合、
前記応答ステップでは、サーバが、デフォルト設定されているゲートウェイ装置へ応答パケットを送信し、
さらに、
前記サーバを収容するプライベート網内の複数のゲートウェイ装置が、それぞれが隣接するゲートウェイ装置の情報を取得する隣接情報取得ステップと、
前記パケットの送信元IPアドレスを書き換えたゲートウェイ装置以外のゲートウェイ装置が前記サーバから前記応答パケットを受信したときは、取得した隣接情報に基づいて、当該応答パケットを受信したゲートウェイ装置が、隣接するゲートウェイ装置へ応答パケットを転送する隣接ゲートウェイ装置転送ステップと、
を含み、
前記隣接ゲートウェイ装置転送ステップを、前記パケットの送信元IPアドレスを書き換えたゲートウェイ装置が前記応答パケットを受信するまで繰り返し実行する、
ことを特徴とする請求項8に記載のSIP応答経路確立方法。
【請求項12】
さらに、
隣接するゲートウェイ装置へ応答パケットを転送したゲートウェイ装置が、前記サーバへエラーを報告するエラー報告ステップ、
を含むことを特徴とする請求項11に記載のSIP応答経路確立方法。
【請求項13】
前記アドレス変換ステップにおいて、前記グローバル網側からパケットを受信したゲートウェイ装置が、送信元IPアドレスを自装置のIPアドレス以外の自装置を特定するアドレスに書き換えた場合、
前記応答ステップでは、サーバが、デフォルト設定されているゲートウェイ装置へ応答パケットを送信し、
さらに、
前記サーバを収容するプライベート網内の複数のゲートウェイ装置が、それぞれが確立している通信経路の情報を交換して取得する経路情報取得ステップと、
前記パケットの送信元IPアドレスを書き換えたゲートウェイ装置以外のゲートウェイ装置が前記サーバから前記応答パケットを受信したときは、取得した通信経路情報に基づいて、当該応答パケットを受信したゲートウェイ装置が、前記パケットの送信元IPアドレスを書き換えたゲートウェイ装置へ応答パケットを転送するゲートウェイ装置直接転送ステップと、
を含むことを特徴とする請求項8に記載のSIP応答経路確立方法。
【請求項14】
前記アドレス変換ステップでは、前記グローバル網側からパケットを受信したゲートウェイ装置が、送信元IPアドレスをパケットの優先度を示すアドレスに書き換える、
ことを特徴とする請求項10〜13のいずれか1つに記載のSIP応答経路確立方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2012−99961(P2012−99961A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244555(P2010−244555)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】