説明

コアセルベーション工程

生物学的に活性なポリペプチドを含む水溶性の活性作用物質の徐放用組成物を形成する方法と、該工程により作製される生成物とが説明される。少なくとも2つの異なる段階において該活性作用物質および該ポリマーを含む混合物に少なくとも1種類のコアセルベーション剤を添加する新規のコアセルベーション工程を用いて、生成物特性の改善および容易なスケールアップを達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願では、2007年3月22日に出願された米国仮出願第60/919,378号の利益を主張する。上記出願のすべての教示を参照により本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
本明細書でポリペプチドと総称する多数のタンパク質およびペプチドは、in vivoにおいて生物学的活性を示し、薬剤として有用である。多くの疾患または状態では、薬剤レベルを持続的に維持することにより、最も有効な予防的および/または治療的効果を提供することが必要である。持続的なレベルは、頻回皮下注射による、生物学的に活性なポリペプチドの投与により達成されることが多いが、この結果、薬剤レベルの変動および患者の服薬不良が生じることも多い。
【0003】
別法として、ポリマーなど、薬剤を封入する生体分解材料を徐放送達系として用いることができる。例えば、微粒子または微小担体の形態での生体分解ポリマーの使用により、ポリマー固有の生体分解性を用いて薬剤の放出を制御し、これにより薬剤レベルのより定常的な持続および患者服薬の改善を提供することで、薬剤の徐放を提供することができる。
【0004】
微粒子の形態で化合物を封入しうる各種の方法が知られている。これらの方法では、封入すべき材料(薬剤または他の活性作用物質)を、一般に、攪拌器(stirrers、agitators)または他の動力式混合技法を用いて、マトリックス形成材料を含有する溶媒中に溶解、分散、または乳化させる。次いで、微粒子から溶媒を除去し、その後で微粒子生成物を得る。
【0005】
生体分解ポリマーによる微小封入についての公表された手順の多くでは、活性作用物質およびポリマーを有機溶媒中に含む油相が連続的な水相中に分散する溶媒蒸発/抽出技法を用いる。油相の液滴から溶媒が拡散し、この結果、微粒子が形成される。水に不溶性の薬剤は連続的な水相中には分配されない傾向があるので、これらの技法は特にこれらの薬剤に適する。一方、水溶性の薬剤は、調製工程時に水相中に部分的に分配される場合があり、この結果、封入効率が低下する。
【0006】
本明細書でコアセルベーションと称する、非溶媒誘導型のコアセルベーションまたは相分離は、生体分解性ポリマーマトリックスおよび水溶性の生物学的に活性な作用物質を含む微粒子を調製するのに頻繁に用いられてきた方法である。コアセルベーション法では、ポリマーに対して非溶媒であり、親水性の活性作用物質も溶けない連続相を用いる。連続相内への薬剤の分配は感知される程度には生じず、比較的高度の封入効率が典型的である。
【0007】
従来のコアセルベーション工程では、グリコリドに対するラクチドの単量体モル比が100:0〜50:50の範囲にあるポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLG)など、既知量のポリマーを適切な有機溶媒中に溶解させる。固体薬剤が有機溶媒中で不溶性であるかまたはほとんど溶けない場合は、これを好ましくは凍結乾燥および微粒化して、ポリマー溶液中に分散させることができる。代替的に、活性作用物質を水またはある添加剤を含有する水に溶解させ、ポリマー溶液中で乳化させ、油中水乳剤を形成することもできる。次いで、結果として得られる懸濁液または乳剤を反応器に添加し、非溶媒またはコアセルベーション剤の添加を所定の速度で開始する。コアセルベーション剤添加の結果、ポリマー、活性作用物質、およびポリマー溶媒を含有するコアセルベート液滴からなる分散液が形成される。コアセルベート液滴はまた、新生微粒子または萌芽期微粒子とも称する。コアセルベーション剤添加が完了したら、半固体の微粒子を固体化する硬化剤を含有する焼き入れ液(クエンチ液:quench liquid)中にコアセルベートを移す。硬化した微粒子を回収、洗浄し、また乾燥させ、溶媒を適切なレベルまで除去する。
【0008】
コアセルベーション工程は、一般に、水溶性の活性作用物質に対する良好な封入効率を提供し、粒径分布、残留溶媒レベル、およびin vitroまたは患者への注射後における薬剤放出の時間経過を含む重要な属性に関して許容される微粒子を作製するよう最適化することができる。しかし、コアセルベーション技法は、加工パラメータ、例えば、非溶媒の添加速度、攪拌条件、ならびに活性作用物質/ポリマー混合物とコアセルベーション剤両方の粘稠度を、スケールアップの各段階において試行錯誤により経験的に最適化しなければならないので、商業規模の量の微粒子を作製する工程には容易に転換されない。こうして、従来のコアセルベーション工程のスケールアップは、時間がかかるばかりでなく、あいまいである。さらに、コアセルベーションによる微粒子の大規模生産には、微粒子を硬化させるステップにおいて用いる、ヘプタンなど大量の有機溶媒の保管、使用、および最終的な処理が必要である。
【0009】
参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第20060110423号では、生物学的に活性なポリペプチドの徐放用組成物、および生物学的に活性なポリペプチドの徐放用の前記組成物の形成法および使用法が開示されている。該徐放用組成物は、生体適合性ポリマー、および生物学的に活性なポリペプチドなどの作用物質、および糖を含む。該作用物質および糖は、生体適合性ポリマー中に個別に、または好ましくは共に分散させる。具体的な実施形態において、徐放用組成物は、平均血清濃度(Cave)に対する最高血清濃度(Cmax)の比が約3以下である放出プロファイルを特徴とする。
【0010】
上述の米国特許出願では、生物学的に活性なポリペプチドの徐放用組成物を形成する工程が開示される。この工程では、水、水溶性ポリペプチド、および糖を含む水相を、生体適合性ポリマーおよび該ポリマーの溶媒を含む油相と組み合わせて、油中水乳剤を形成する。コアセルベーション剤、例えば、シリコーン油、植物油、またはミネラル油を該混合物に添加して、萌芽期微粒子を形成し、後にこれを焼き入れ溶媒中に移して硬化させる。次いで、硬化した微粒子を回収し乾燥させる。開示された工程は、攪拌式タンク反応器を用いるバッチモードで実施され、100グラム〜1kgの規模範囲にある。この工程では、粒径、残留溶媒、および薬剤放出動態の適切な特性を有する微粒子を産出しうるが、上述の通り、時間がかかり費用のかさむ開発作業により、経験的に決定されるスケールアップパラメータを確立することが必要であるという難点があり、大量の有機溶媒の消費および処理も必要である。
【0011】
スケールアップ工程を支援する1つの手法は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,654,008号で開示される通り、スタティックミキサーを用いて微粒子を形成することである。米国特許第5,654,008号で開示される方法では、活性作用物質およびポリマーを含む第1相と第2相とを、スタティックミキサーを介して焼き入れ液中へと送り込み、活性作用物質を含有する微粒子を形成する。米国特許第5,654,008号では、微粒子がコアセルベーションにより形成されるこの方法の実施形態についてもさらに説明している。この場合、第1相は、溶媒中のPLG溶液中における、微粒化固体または水溶液の形態での水溶性薬剤の分散液である。第2相は、コアセルベーション剤であるシリコーン油であり、焼き入れ液はヘプタンである。薬剤−PLG分散液およびシリコーン油をスタティックミキサーに送り込み、ヘプタンを含有する焼き入れタンク中に流出物を導く。半固体微粒子を硬化させ、真空濾過により回収し、新鮮なヘプタンにより洗浄し、次いで、真空下で乾燥させる。この工程では微粒子が作製され、工程の拡張性も対応するバッチ工程に本来まさるが、結果として得られる粒径分布が広い。さらに、硬化させるステップをバッチモードで実施するので、有機溶媒消費が高量である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
よって、一定の粒径、残留溶媒、および薬剤放出プロファイルをもたらし、工程規模まで容易に拡張可能で、工程用溶媒の消費に関して効率的であるコアセルベーション工程に対する必要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、生物学的に活性なポリペプチドを含む水溶性の作用活性物質の徐放用組成物を形成する方法に関する。本発明は、少なくとも2つの異なる段階において活性作用物質およびポリマーを含む混合物に少なくとも1種類のコアセルベーション剤を添加する新規のコアセルベーション工程を用いて、生成物特性の改善および容易なスケールアップを達成しうることの発見にさらに関する。
【0014】
本発明の一態様は、
(a)活性作用物質、生体適合性ポリマー、および溶媒を含む第1相を提供するステップと、
(b)コアセルベートを形成するステップと、
(c)コアセルベートを焼き入れ液と組み合わせ、これにより、活性作用物質を含有する微粒子を形成するステップと
を含み、ステップ(b)が、
(i)第1相に第1のコアセルベーション剤を添加するステップと、その後で
(ii)第2のコアセルベーション剤を添加するステップと
を含む、微粒子の調製法である。
【0015】
本発明のこの態様は、ポリペプチドなどの生物学的に活性な作用物質の徐放用組成物を形成する方法であって、活性作用物質、ポリマー、および溶媒を含む第1相を形成するステップと、少なくとも2つの逐次的な段階においてコアセルベーション剤を該混合物に添加して萌芽期微粒子を形成するステップと、萌芽期微粒子を焼き入れ液へと移して微粒子を硬化させるステップと、硬化した微粒子を回収するステップと、微粒子を乾燥させるステップとを含む方法を含む。第1相は、例えば、超音波処理またはホモジネーションにより、活性作用物質の水溶液を生体適合性ポリマーおよびポリマー用溶媒を含む有機溶液中に分散させることにより調製される油中水乳剤でありうる。第1相が油中水乳剤である場合、それはまた、内部乳剤または一次乳剤とも称する。代替的に、第1相は、固体状態にある薬剤が、生体適合性ポリマーおよびポリマー用溶媒を含む有機溶液中に分散する懸濁液でもありうる。
【0016】
具体的な実施形態において、溶媒は塩化メチレンであり、コアセルベーション剤はシリコーン油である。コアセルベーション剤は、2つ以上の段階において添加される。すなわち、第2段階は第1段階とは異なり別個でなければならず、その単なる連続的な延長であってはならない。第1段階では、1:1未満、好ましくは約0.3:1〜約0.5:1のポリマー溶媒に対するコアセルベーション剤比を達成するのに十分な量でコアセルベーション剤を添加する。後続の段階では、少なくとも1:1、好ましくは1:1〜3:1、より好ましくは約1.5:1のポリマー溶媒に対する最終的なコアセルベーション剤比を達成するのに十分な量でさらなるコアセルベーション剤を添加する。適切な粒径分布、残留溶媒レベル、および薬剤放出動態を有する微粒子を産出するためには、各段階においてコアセルベーション剤を添加する速度および方式を最適化することができる。
【0017】
加えてまたは代替的に、本発明は、ポリペプチドなどの生物学的に活性な作用物質の徐放用組成物を形成する方法であって、活性作用物質、ポリマー、および溶媒を含む第1相を形成するステップと、少なくとも2つの逐次的な段階においてコアセルベーション剤を該混合物に添加して萌芽期微粒子を形成するステップであって、添加の第1段階を攪拌式タンク反応器内で行うステップと、萌芽期微粒子を焼き入れ溶媒へと移して微粒子を硬化させるステップと、硬化した微粒子を回収するステップと、硬化した微粒子を乾燥させるステップとを含む方法を含む。具体的な実施形態では、攪拌式タンク反応器内における活性作用物質とポリマーとを含む混合物へのコアセルベーション剤の第1の添加が複数の添加ポートを介し、これにより、コアセルベーション剤の活性作用物質−ポリマー混合物との効率的な混合が容易となる。別の実施形態では、攪拌式タンク反応器内における活性作用物質とポリマーとを含む混合物へのコアセルベーション剤の第1の添加が少なくとも1つのスプレーノズルを介し、これによってもまた、コアセルベーション剤の活性作用物質−ポリマー混合物との効率的な混合が容易となる。さらに別の実施形態では、攪拌式タンク反応器内における活性作用物質とポリマーとを含む混合物へのコアセルベーション剤の第1の添加が、その結果、少なくとも約2分後、好ましくは少なくとも約3分後、およびより好ましくは少なくとも約5分後に第1の添加段階が完了する速度で実施される。第1のコアセルベーション剤のゆっくりとした添加を、コアセルベーション剤の、活性作用物質およびポリマーを含む混合物との効率的なブレンドと組み合わせる結果、萌芽期微粒子中へのコアセルベーション剤の取り込みが最小化され、最終生成物中におけるコアセルベーション剤の残留レベルが低下する。こうして、例えば、コアセルベーション剤がシリコーン油である場合、重量で1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、およびより好ましくは200ppm未満の残留シリコーンレベルを達成しうる。
【0018】
加えてまたは代替的に、本発明は、ポリペプチドなどの生物学的に活性な作用物質の徐放用組成物を形成する方法であって、活性作用物質、ポリマー、および溶媒を含む第1相を形成するステップと、少なくとも2つの逐次的な段階においてコアセルベーション剤を該混合物に添加して萌芽期微粒子を形成するステップであって、添加の少なくとも1つの段階をスタティックミキサー内で行うステップと、萌芽期微粒子を焼き入れ溶媒へと移して微粒子を硬化させるステップと、硬化した微粒子を回収するステップと、硬化した微粒子を乾燥させるステップとを含む方法を含む。具体的な実施形態では、第1のコアセルベーション剤添加をスタティックミキサー内で行う。好ましい実施形態では、最終のコアセルベーション剤添加をスタティックミキサー内で行う。さらに別の実施形態では、最終のコアセルベーション剤添加をスタティックミキサー内で行い、結果として得られる混合物を、滞留時間およびある程度の混合をもたらす中空チューブと、硬化剤を含有する焼き入れタンク内への放出前の最終のスタティックミキサーとを含むアセンブリー中に流し込む。
【0019】
加えてまたは代替的に、本発明は、ポリペプチドなどの生物学的に活性な作用物質の徐放用組成物を形成する方法であって、活性作用物質、ポリマー、および溶媒を含む第1相を形成するステップと、コアセルベーション剤を第1相に添加して萌芽期微粒子を形成するステップであって、コアセルベーション剤添加を連続流混合装置の少なくとも2つの注入口を介して行うステップと、結果として得られるコアセルベートを焼き入れ溶媒へと移して微粒子を硬化させるステップと、硬化した微粒子を回収するステップと、硬化した微粒子を乾燥させるステップとを含む方法を含む。具体的な実施形態では、連続流混合装置が、複数のコアセルベーション剤添加ポートを有する攪拌式栓流反応器である。別の実施形態では、連続流混合装置が、複数のコアセルベーション剤添加ポートを有するスタティックミキサーセンブリーである。さらに別の実施形態では、連続流混合装置が、コアセルベーション剤を流し込む多孔質壁面を有するスタティックミキサーである。さらに別の実施形態では、連続流混合装置が、少なくとも2台直列の連続攪拌式タンク反応器(CSTR)である。
【0020】
加えてまたは代替的に、本発明は、ポリペプチドなどの生物学的に活性な作用物質の徐放用組成物を形成する方法であって、活性作用物質、ポリマー、および溶媒を含む第1相を形成するステップと、コアセルベーション剤を第1相に添加して萌芽期微粒子を形成するステップと、結果として得られるコアセルベートをスタティックミキサー内で硬化剤と組み合わせるステップと、硬化した微粒子を回収するステップと、硬化した微粒子を乾燥させるステップとを含む方法を含む。
【0021】
本発明は、生物学的に活性なポリペプチドなどの作用物質の徐放用組成物を形成する方法に関する。本発明の徐放用組成物は、生体適合性ポリマー、および生物学的に活性なポリペプチドなどの作用物質を含む。好ましい実施形態において、生物学的に活性なポリペプチドは、GLP−1、GLP−2、エキセンディン3、エキセンディン4またはこれらの類似体、誘導体、もしくはアゴニストなどの抗糖尿病ポリペプチドまたは糖調節ポリペプチドであり、好ましくはエキセンディン4である。
【0022】
徐放用組成物は、塩、糖、炭水化物、緩衝液、および界面活性剤を含むがこれらに限定されない1つまたは複数の賦形剤をさらに含みうる。賦形剤は、スクロース、マンニトール、またはこれらの組合せであることが好ましい。好ましい組合せは、エキセンディン4ならびにスクロースおよび/またはマンニトールを含む。
【0023】
加えてまたは代替的に、徐放用組成物は、約3〜5%w/wの濃度における生体適合性ポリマーであるエキセンディン4と、約2%w/wの濃度におけるスクロースとから基本的になるか、または代替的にこれらからなる。生体適合性ポリマーは、ポリラクチド−co−グリコリドポリマーであることが好ましい。
【0024】
作用物質またはポリペプチド、例えば、エキセンディン4は、最終組成物の総重量を基に約0.01%〜約10%w/wの濃度で本明細書に記載の組成物中に存在しうる。加えて、糖、例えば、スクロースは、組成物最終重量の約0.01%〜約5%w/wの濃度で存在しうる。
【0025】
本発明の組成物は、注射、植え込み(例えば、皮下、筋肉内、腹腔内、頭蓋内、および皮膚内)、粘膜への投与(例えば、鼻腔内、膣内、肺内、または坐剤による)、またはin situ送達(例えば、浣腸またはエアゾールスプレーによる)により、ヒト、または他の動物に投与することができる。
【0026】
徐放用組成物がその中にホルモン、特に、抗糖尿病ポリペプチドまたは糖調節ポリペプチド、例えば、GLP−1、GLP−2、エキセンディン3、エキセンディン4、またはそのアゴニスト、類似体、もしくは誘導体を組み込んでいる場合、該組成物を治療有効量で投与して、糖尿病、耐糖能異常(IGT)、肥満症、心血管(CV)障害、あるいは上記のポリペプチドまたはその誘導体、類似体、もしくはアゴニストの1つにより治療しうる他の任意の障害に罹患する患者を治療する。
【0027】
本発明の徐放用組成物中において糖を用いることにより、組み込まれた生物学的に活性なポリペプチド、例えば、抗糖尿病ポリペプチドまたは糖調節ポリペプチドのバイオアベイラビリティーが改善され、優れた放出プロファイルを維持しながら、不安定性および/または該ポリペプチドと徐放用組成物を調合する際に含有または使用される他の成分との間の化学的相互作用に起因する活性の喪失が最小化される。
【0028】
本明細書に記載の徐放製剤の利点は、反復投与の必要を排除することによる患者の服薬および受容の向上、所望の放出プロファイルを提供することにより、血中における活性作用物質濃度の変動を排除することによる、治療的有益性の増大、およびこれらの変動を低下させることにより治療的有益性を提供するのに必要な生物学的に活性なポリペプチド総量を減少させる可能性を含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】多段階コアセルベーション工程用のコアセルベーション剤添加の時間経過を示すグラフである。
【図2】複数のスタティックミキサーが直列で配置される、本明細書に記載の多段階コアセルベーション工程の略図である。
【図3】複数のCSTRが直列で配置される、本明細書に記載の多段階コアセルベーション工程の略図である。
【図4】コアセルベーション剤が攪拌式栓流反応器の複数の注入口を介して導入される、多段階コアセルベーション工程の略図である。
【図5】攪拌式タンクとスタティックミキサーとを用いる、ハイブリッド式多段階コアセルベーション工程の略図である。
【図6】コアセルベート形成と焼き入れとをスタティックミキサー内で行う、連続式コアセルベーション工程の略図である。
【図7】実施例3で用いる単一段階コアセルベーション工程の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、ポリペプチドなどの水溶性の活性作用物質を含む生物学的に活性な作用物質の徐放用組成物を形成する方法に関する。本発明は、少なくとも2つの異なる段階において、活性作用物質およびポリマーを含む混合物に少なくとも1種類のコアセルベーション剤を添加する工程を含み、少なくとも1段階のコアセルベーション添加、またはコアセルベートへの硬化剤の添加で、スタティックミキサーなどの連続流混合装置を用いる工程を含む、新規のコアセルベーション工程を用いて、生成物特性の改善および容易なスケールアップを達成しうることの発見にさらに関する。
【0031】
作用物質
本明細書で用いられる生物学的に活性なポリペプチドとは、in vivoで放出されるときにそれらの分子的で生物学的に活性な形態にあり、これにより、in vivoにおける所望の治療的、予防的、および/または診断的特性を有する、生物学的に活性なタンパク質およびペプチドならびに薬学的に許容されるそれらの塩を総称する。典型的に、該ポリペプチドは、500〜200,000ダルトンの分子量を有する。
【0032】
生物学的に活性で適切なポリペプチドは、グルカゴン、GLP−1、GLP−2、または他のGLP類似体などのグルカゴン様ペプチド、グルカゴン様ペプチドの誘導体またはアゴニスト、エキセンディン3、エキセンディン4などのエキセンディン、これらの誘導体、アゴニスト、および類似体、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン)、インターロイキン、マクロファージ活性化因子、インターフェロン、エリスロポエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子(例えば、G-CSF)、インスリン、酵素(例えば、スーパーオキシドジスムターゼ、プラスミノーゲン活性化因子など)、腫瘍抑制遺伝子、血中タンパク質、ホルモンならびにホルモンの類似体およびアゴニスト(例えば、卵胞刺激ホルモン、成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、および黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH))、ワクチン(例えば、腫瘍抗原、細菌抗原、およびウイルス抗原)、抗原、血液凝固因子、増殖因子(NGFおよびEGF)、ガストリン、GRH、デフェンシンなどの抗菌ペプチド、エンケファリン、ブラジキニン、カルシトニン、ならびに前出すべての変異タンパク質、類似体、切断変異体、欠失変異体、および置換変異体、ならびに薬学的に許容される塩を含むがこれらに限定されない。
【0033】
代替的に、該ポリペプチドは、一般に、凝血調節物質、サイトカイン、エンドルフィン、キニン、ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン類似体その他から選択することもできる。凝血調節物質は、例えば、α−1−アンチトリプシン、α−2−マクログロブリン、アンチトロンビンIII、因子I(フィブリノーゲン)、因子II(プロトロンビン)、因子III(組織プロトロンビン)、因子V(プロアクセレリン)、因子VII(プロコンベルチン)、因子VIII(抗血友病グロブリンまたはAHG)、因子IX(クリスマス因子、血漿トロンボプラスチン成分またはPTC)、因子X(スチュアート−パワー因子)、因子XI(血漿トロンボプラスチン前駆物質またはPTA)、因子XII(ハーゲマン因子)、へパリン共因子II、カリクレイン、プラスミン、プラスミノーゲン、プレカリクレイン、プロテインC、プロテインS、トロンボモジュリン、およびこれらの組合せを含む。適切ならば、これらのタンパク質の「活性」型および「不活性」型のいずれもが含まれる。
【0034】
好ましいサイトカインは、限定なしに、コロニー刺激因子4、へパリン結合性神経栄養因子(HBNF)、インターフェロン、インターロイキン、腫瘍壊死因子、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子、ミッドカイン(MD)、チモポエチン、およびこれらの組合せを含む。
【0035】
好ましいエンドルフィンは、デルモルフィン、ジノルフィン、α−エンドルフィン、β−エンドルフィン、γ−エンドルフィン、σ−エンドルフィン、エンケファリン、サブスタンスP、およびこれらの組合せを含むがこれらに限定されない。
【0036】
好ましいペプチジルホルモンは、アクチビン、アミリン、アンジオテンシン、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、カルシトニン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、カルシトニンN末端隣接ペプチド、コレシストキニン(CCK)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、コルチコトロピン(アドレノコルチコトロピンホルモン、ACTH)、コルチコトロピン放出因子(CRFまたはCRH)、上皮細胞増殖因子(EGF)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ガストリン、ガストリン阻害ペプチド(GIP)、ガストリン放出ペプチド、グレリン、グルカゴン、ゴナドトロピン放出因子(GnRFまたはGNRH)、成長ホルモン放出因子(GRF、GRH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCH)、インヒビンA、インヒビンB、インスリン、レプチン、リポトロピン(LPH)、黄体形成ホルモン(LH)、黄体形成ホルモン放出ホルモン、メラニン細胞刺激ホルモン、メラトニン、モチリン、オキシトシン(ピトシン)、膵臓ポリペプチド、副甲状腺ホルモン(PTH)、胎盤性ラクトゲン、プロラクチン(PRL)、プロラクチン放出阻害因子(PIF)、プロラクチン放出因子(PRF)、セクレチン、ソマトトロピン(成長ホルモン、GH)、ソマトスタチン(SIF、成長ホルモン放出阻害因子、GIF)、チロトロピン(甲状腺刺激ホルモン、TSH)、チロトロピン放出因子(TRHまたはTRF)、チロキシン、トリヨードチロニン、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、バソプレッシン(抗利尿ホルモン、ADH)、およびこれらの組合せを含む。
【0037】
LHRHの特に好ましい類似体は、ブセレリン、デスロレリン、フェルチレリン、ゴセレリン、ヒストレリン、リュープロリド(リュープロレリン)、ルトレリン、ナファレリン、トリプトレリン、およびこれらの組合せを含む。特に好ましいキニンは、ブラジキニン増強剤B、ブラジキニン増強剤C、カリジン、およびこれらの組合せを含む。
【0038】
本発明の送達系には、所望の薬理学的活性を提供するさらに他のペプチジル剤を組み込むことができる。例は、アバレリクス、アデノシンデアミナーゼ、アナキンラ、アンセスチム、アルテプラーゼ、アルグルセラーゼ、アスパラギナーゼ、ビバリルジン、ブレオマイシン、ボンベシン、酢酸デスモプレッシン、デス−Q14−グレリン、ドルナーゼ−α、エンテロスタチン、エリスロポエチン、線維芽細胞増殖因子2、フィルグラスチム、β−グルコセレブロシダーゼ、ゴナドレリン、ヒアルロニダーゼ、インスリノトロピン、レピルジン、マガイニンI、マガイニンII、神経成長因子、ペンチゲチド、トロンボポエチン、チモシンα−1、チミジンキナーゼ(TK)、組織プラスミノーゲン活性化因子、トリプトファンヒドロキシラーゼ、ウロキナーゼ、ウロテンシンII、およびこれらの組合せを含む。
【0039】
エキセンディン4は、39アミノ酸のポリペプチドである。エキセンディン4のアミノ酸配列は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、1995年6月13日にEngに発行された米国特許第5,424,286号中に見出すことができる。エキセンディン4は、ヒトおよび動物において、血中グルコース濃度が上昇しているときにはインスリン分泌を刺激するが、血中グルコース濃度が低下している(低血糖症の)ときには同分泌を刺激しないことが示されている。それはまた、グルカゴン分泌を抑制し、胃内容排出を緩徐化し、食物摂取および体重のほか、他の行動にも影響を与えることが示されている。このため、エキセンディン4ならびにその類似体およびアゴニストは、糖尿病、IGT、肥満症などの治療に有用でありうる。
【0040】
徐放用組成物のポリマーマトリックス内に含有される、生物学的に活性なポリペプチドの量は、体重、治療する状態、用いるポリマーの種類、およびポリマーからの放出速度などの因子を考慮することで当業者により決定しうる、治療的、診断的、または予防的な有効量である。
【0041】
徐放用組成物は、一般に、作用物質、例えば、生物学的に活性なポリペプチド(エキセンディン4など)の約0.01%(w/w)〜約50%(w/w)(組成物総重量)を含有する。例えば、生物学的に活性なポリペプチド(エキセンディン4など)の量は、組成物総重量の約0.1%(w/w)〜約30%(w/w)でありうる。ポリペプチド量は、所望の効果、作用物質の力価、予測放出レベル、およびポリペプチドが放出される時間のスパンに依存して変化する。添加量の範囲は、約0.1%(w/w)〜約10%(w/w)、例えば、0.5%(w/w)〜約5%(w/w)が好ましい。作用物質、例えば、エキセンディン4を約3〜5%w/wで添加した場合に、優れた放出プロファイルが得られた。
【0042】
ポリマー
本発明の徐放用組成物を形成するのに適するポリマーは、生体分解性または非生体分解性のポリマーでありうる生体適合性ポリマーまたはその配合物もしくはコポリマーである。ポリマーおよびポリマーの任意の分解生成物が受容者にとって非毒性であり、また、受容者の身体に対して注射部位における著明な免疫反応などの著明な有害作用または副作用も有さない場合、そのポリマーは生体適合性である。
【0043】
本明細書で定義する生体分解性とは、組成物がin vivoで分解または腐食され、より小さな単位または化学種を形成することを意味する。分解は、例えば、酵素的、化学的、および物理的過程により生じうる。生体適合性で生体分解性の適切なポリマーは、例えば、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリアンヒドライド、ポリ(アミノ酸)、ポリオルトエステル、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)、ポリエチレングリコールとポリオルトエステルとのコポリマー、生体分解性ポリウレタン、これらのブレンド、およびこれらのコポリマーを含む。
【0044】
生体適合性で非生体分解性の適切なポリマーは、ポリアクリレート、エチレン−酢酸ビニルポリマーおよび他のアシル置換された酢酸セルロース、非分解性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネートポリオレフィン、ポリ酸化エチレン、これらのブレンド、ならびにこれらのコポリマーからなる群から選択される非生体分解性ポリマーを含む。
【0045】
本発明で用いられるポリマーに許容される分子量は、所望のポリマー分解速度、力学的強度などの物理的特性、末端基化学反応、および溶媒中におけるポリマーの溶解速度などの因子を考慮に入れることで、当業者により決定されうる。典型的に、許容される範囲の分子量は、約2,000ダルトン〜約2,000,000ダルトンである。好ましい実施形態において、ポリマーは、生体分解性ポリマーまたはコポリマーである。より好ましい実施形態において、ポリマーは、1:1のラクチド:グリコリドモル比および約10,000ダルトン〜約90,000ダルトンの分子量を有するポリ(ラクチド−co−グリコリド)(以後、「PLG」)である。約1:1のラクチド:グリコリドモル比を有するPLGコポリマーはまた、50:50 PLGとも称する。さらにより好ましい実施形態において、本発明で用いられるPLGは、約50,000ダルトン〜約60,000ダルトンなど、約30,000ダルトン〜約70,000ダルトンの分子量を有する。
【0046】
PLGは、酸末端基または酸のエステル化を含む当技術分野で知られる手段により得られるなどのブロックされた末端基を有しうる。
【0047】
ポリマーはまた、ポリマーの固有粘稠度に基づいても選択されうる。適切な固有粘稠度は、約0.2〜0.6dL/g、より好ましくは約0.3〜0.5dL/gなど、約0.06〜1.0dL/gを含む。3〜4週間で分解する好ましいポリマーを選択する。適切なポリマーは、5050 DL 3Aまたは5050 DL 4Aとして販売されるポリマーなど、Lakeshore Biomaterials社(アラバマ州、バーミンガム)から購入することができる。RESOMER(登録商標)RG503および503Hなど、BOEHRINGER INGELHEIM RESOMER(登録商標)PLGもまた用いることができる。
【0048】
当技術分野(例えば、Luckeら、Peptide Acylation by Poly(α-Hydroxy Esters)、Pharmaceutical Research、第19巻、第2号、175〜181頁、2002年2月を参照されたい)では、PLGマトリックス中に組み込まれるタンパク質およびペプチドが、例えば、未反応のラクチドまたはグリコリドなど、ポリマー調製後に残存するPLGの分解生成物または不純物との相互作用の結果として、望ましくない形で変化しうる(例えば、分解または化学的に修飾されうる)ことが知られている。このため、微粒子製剤の調製において用いられるPLGポリマーは、当技術分野で認知された精製法を用いて精製することができる。
【0049】
本発明の徐放用組成物は微粒子である。本明細書で定義される微粒子は、約1ミリメートル未満の直径を有し、その中に生物学的に活性なポリペプチドが分散または溶解しているポリマー成分を含む。微粒子は、球形、非球形、または不規則形を有しうる。典型的に、微粒子は、注射に適するサイズである。微粒子に典型的なサイズ範囲は、1000ミクロン未満である。具体的な実施形態において、微粒子は、直径が約1〜約180ミクロンの範囲である。サイズ分布の狭い微粒子が好ましい。
【0050】
さらなる賦形剤
本発明の微粒子組成物にさらなる賦形剤または添加剤を含めることで、封入工程時、使用前の保管時、または活性作用物質が注射後かつ放出前に保湿状態下の体温で微粒子内に滞留する時間において、活性作用物質の安定化を含む複数の機能を果たさせることができる。さらに、賦形剤は、作用物質の放出速度を上昇または低下させることができる。放出速度を実質的に上昇させることのできる成分は、ポリマー分解を容易にする小孔形成剤および賦形剤を含む。例えば、ポリマーの加水分解速度は、非中性のpHにおいて上昇する。したがって、無機酸または無機塩基などの酸性または塩基性の賦形剤をポリマー溶液に添加することができ、微粒子を形成し、ポリマーの腐食速度を変化させるために使用することができる。放出速度を実質的に低下させることのできる成分は、作用物質の水溶性を低下させる賦形剤を含む。賦形剤はまた、微粒子組成物の生体適合性および局所的な忍容性を改善するのにも用いることができる。
【0051】
適切な賦形剤は、例えば、緩衝塩を含む塩、糖、炭水化物、および界面活性剤を含み、当業者に知られる。酸性または塩基性の賦形剤もまた、適切でありうる。用いられる賦形剤の量は、重量ベースでの生物学的に活性なポリペプチド剤に対する比に基づいて用いることができ、使用可能な方法を用いて当業者により決定されうる。代替的に、賦形剤の量は、微粒子乾燥重量の百分率としてのその含量にも基づきうる。活性作用物質および賦形剤または複数存在する場合は複数の賦形剤の統合添加量は、活性作用物質の放出プロファイルに影響を及ぼしうる。例えば、活性作用物質および賦形剤の統合添加量が微粒子総乾燥重量の約10%を超える場合、薬剤の大部分は、注射用希釈液中における微粒子の懸濁直後、または注射後の第1日中に放出されうる。好ましい実施形態において、活性作用物質および賦形剤の統合添加量は、微粒子総乾燥重量の約10%未満である。より好ましい実施形態において、活性作用物質および賦形剤の統合添加量は、微粒子総乾燥重量の約3%〜約8%である。さらにより好ましい実施形態において、活性作用物質および賦形剤の統合添加量は、微粒子総乾燥重量の約5%〜約7%である。活性作用物質、例えば、エキセンディン4を、約5%w/wの統合添加量でスクロースと共に添加した場合に、優れた放出プロファイルが得られた。
【0052】
賦形剤は、複数の異なる手段により、本発明の微粒子組成物に組み込むことができる。好ましい実施形態において、水溶性の賦形剤は、水中で活性作用物質と共に溶解させ、次いで、コアセルベーション剤の添加前にポリマー溶液中に分散させる。代替的に、賦形剤は、工程の任意の段階において固体として添加することもでき、ポリマー溶液中に溶解させることもでき、水中に溶解させて活性作用物質とは別個にポリマー溶液中に分散させることもできる。
【0053】

本明細書で定義される緩衝塩は、緩衝液からの溶媒の除去後に残存する塩である。緩衝液は、弱酸および該酸の関連塩、または弱塩基および該塩基の塩を含有する溶液である。緩衝液は、製剤の安定化を支援する所望のpHを維持しうる。このpHの維持は、加工時、保管時、および/または放出時に提供されうる。例えば、緩衝液は、第一リン酸塩もしくは第二リン酸塩またはこれらの組合せ、あるいは重炭酸アンモニウムなどの揮発性緩衝液でありうる。他の緩衝液は、酢酸、クエン酸、コハク酸、ならびにグリシン、アルギニン、およびヒスチジンなどのアミノ酸を含むがこれらに限定されない。最終的な徐放用組成物中に存在時の緩衝液は、総重量の約0.01%〜約10%の範囲でありうる。
【0054】
塩析塩もまた、本発明の組成物中の賦形剤として用いることができる。本明細書で用いられる用語としての塩析塩は、Thomas E.Creighton、「Proteins:Structures and Molecular Principles」、149〜150頁(ニューヨーク、W.H. Freeman and Company社により公刊)において説明される血清沈殿物のホフマイスター系列中に存在する塩を指す。一般的に、塩析塩は、タンパク質を変性させることなしにタンパク質を沈殿させるのに適するものとして当技術分野で知られる。塩析塩はまた、構成イオンの「コスモトロープ」特性および「カオトロープ」特性の点から説明することもできる。コスモトロープという用語は、一般に、タンパク質を安定化させる溶質を指し、カオトロープは、不安定化させる溶質について述べる。コスモトロープイオンは高電荷密度を有し(例えば、SO2−、HPO2−、Mg2+、Ca2+、Li、Na、およびHPO2−)、カオトロープイオンは低電荷密度を有する(例は、HPO、HSO、HCO、I、Cl、NO、NH、Cs、K、[N(CHを含む)。塩析塩はまた、プロトンを供出または受容する能力の点から、したがって塩基または酸として作用するものとしても説明することができる。例えば、塩析塩(NHSOは、アンモニウムイオンを提供し、無機酸として作用しうる。ポリマー微粒子に組み込まれると、こうした無機酸はポリマーの分解を調節し、組み込まれた作用物質の放出に影響を及ぼしうる。特定の実施形態において、当技術分野ではコスモトロープと考えられるグリシンなどのアミノ酸は、塩析塩の代替物として用いることができる。
【0055】
本発明における使用に適する塩析塩は、例えば、陽イオンMg+2、Li、Na、KおよびNHの1つまたは複数を含有する塩を含み、また、陰イオンSO−2、HPO−2、酢酸、クエン酸、酒石酸、Cl、NO、ClO、I、ClO、およびSCNの1つまたは複数を含有する塩も含む。
【0056】
徐放用組成物中に存在する塩析塩の量は、徐放用組成物総重量の約0.01%〜約10%(w/w)など、約0.01%(w/w)〜約50%(w/w)、例えば、0.1%〜約5%など、約0.01%〜約5%の範囲でありうる。2つ以上の塩析塩の組合せを用いることができる。組合せを用いる場合の塩析塩の量は、上記に列挙した範囲と同じである。
【0057】

本明細書で定義される糖は、単糖、二糖、もしくはオリゴ糖(約3〜約10の単糖)またはこれらの誘導体である。例えば、単糖の糖アルコールは、糖の本定義中に含まれる適切な誘導体である。このため、例えば、単糖マンノースに由来する糖アルコールであるマンニトールは、本明細書で用いられる糖の定義に含まれる。
【0058】
適切な単糖は、グルコース、フルクトース、およびマンノースを含むがこれらに限定されない。本明細書でさらに定義される二糖は、加水分解時に2個の単糖分子を産出する化合物である。適切な二糖は、スクロース、ラクトース、およびトレハロースを含むがこれらに限定されない。適切なオリゴ糖は、ラフィノースおよびアカルボースを含むがこれらに限定されない。
【0059】
徐放用組成物中に存在する糖の量は、徐放用組成物総重量の約0.1%(w/w)〜約5%(w/w)など、約0.01%(w/w)〜約10%(w/w)など、約0.01%(w/w)〜約50%(w/w)の範囲でありうる。エキセンディン4を添加した微粒子中に約2%(w/w)のスクロースを組み込むことで、優れた放出プロファイルが得られた。
【0060】
代替的に、徐放用組成物中に存在する糖量には、作用物質または生物学的に活性なポリペプチドによる重量比に基づいて言及することもできる。例えば、ポリペプチドおよび糖は、約10:1〜約1:10の重量:重量比で存在しうる。特に好ましい実施形態において、糖(例えば、スクロース)に対するポリペプチド(例えば、エキセンディン4)の比は、約5:2(w/w)である。
【0061】
2種類以上の糖の組合せもまた用いることができる。組合せを用いる場合の糖量は、上記に列挙した範囲と同じである。
【0062】
ポリペプチドがエキセンディン4である場合、糖は、スクロース、マンニトール、またはこれらの組合せであることが好ましい。
【0063】
界面活性剤
徐放用組成物中には、界面活性剤が存在しうる。界面活性剤は、ポリマーマトリックスからの生物学的に活性なポリペプチドの放出をさらに改変するように作用する場合もあり、生物学的に活性なポリペプチドまたはその組合せをさらに安定化させるように作用する場合もある。場合によっては、界面活性剤の存在により、生体適合性ポリマーに対する生物学的に活性なポリペプチドの吸着を最小化させるよう支援することもできる。徐放用組成物中に存在する界面活性剤の量は、組成物乾燥重量の約0.1%w/w〜約50%w/wの範囲でありうる。
【0064】
本明細書で用いられる用語としての界面活性剤は、非混和性液体間の表面張力を低下させうる物質を含む。徐放用組成物に添加しうる適切な界面活性剤は、非イオン性ポリマーによる界面活性剤、例えば、ポロキサマー、ポリソルベート、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリビニルピロリドン、およびこれらの組合せなどのポリマーによる界面活性剤を含む。本発明での使用に適するポロキサマーの例は、いずれもBASF Wyandotte社から市販される、PLURONIC(登録商標)F127の商標で販売されるポロキサマー407およびPLURONIC(登録商標)F68の商標で販売されるポロキサマー188を含む。本発明での使用に適するポリソルベートの例は、TWEEN(登録商標)20の商標で販売されるポリソルベート20およびTWEEN(登録商標)80の商標で販売されるポリソルベート80を含む。
【0065】
陽イオン性界面活性剤、例えば、塩化ベンザルコニウムもまた、本発明での使用に適する。加えて、デオキシコール酸およびグリコール酸などの胆汁塩も、洗浄剤としてのその高度に有効な性質に基づき、界面活性剤として適切である。
【0066】
エキセンディン4組成物
本発明の好ましい実施形態は、本明細書で開示される工程によりなされるエキセンディン4の徐放用組成物であり、生体適合性ポリマー、活性作用物質、および糖を含む。
【0067】
製造工程
本発明は、活性作用物質の徐放用組成物の形成法およびこれにより生成される生成物に関する。これらの方法は、活性作用物質、ポリマー、および溶媒を含む第1相を形成するステップと、コアセルベーション剤、例えば、シリコーン油、植物油、またはミネラル油を第1相に添加して萌芽期微粒子を形成するステップと、萌芽期微粒子を焼き入れ溶媒へと移して微粒子を硬化させるステップと、硬化した微粒子を回収するステップと、硬化した微粒子を乾燥させるステップとを含む、コアセルベーション工程に基づく。第1相は、活性作用物質の水溶液を有機溶媒中のポリマー溶液と組み合わせることにより調製した油中水乳剤でありうる。この場合、該工程を、本明細書では一般に、水−油−油(W/O/O)工程と称する。代替的に、第1相は、有機溶媒中のポリマー溶液中における活性作用物質固体粒子の懸濁液でありうる。この代替的な工程を、本明細書では固体−油−油(S/O/O)工程と称する。
【0068】
好ましくは、ポリマーは、有機溶媒中に、約3%w/w〜約25%w/w、好ましくは約5%w/w〜約10%w/wなど、約4%w/w〜約15%w/wの範囲の濃度で存在しうる。ポリマーが本明細書で好ましいPLGなどのPLGである場合、PLG用の溶媒中でそのポリマーを溶解させる。こうした溶媒は当技術分野でよく知られており、アルコール、エステル、ケトン、ハロゲン化炭化水素、およびこれらのブレンドからなる群から選択される。好ましい溶媒は、塩化メチレンおよび酢酸エチルである。
【0069】
水相、好ましくは同じ水相に作用物質および糖などの水溶性賦形剤を添加するのが典型的である。作用物質の濃度は、好ましくは10〜100mg/g、より好ましくは50〜100mg/gである。糖の濃度は、好ましくは10〜50mg/g、およびより好ましくは30〜50mg/gである。
【0070】
次いで、活性作用物質およびポリマーの溶液を混合し、本明細書で第1相と称する油中水乳剤を形成する。第1相乳剤は、乳剤の内部液滴径が約1ミクロン未満、好ましくは約0.7ミクロン未満、より好ましくは約0.4ミクロンなど、約0.5ミクロン未満であるように形成することが好ましい。超音波処理器およびホモジナイザーを用いて、こうした乳剤を形成することができる。
【0071】
活性作用物質が固体としてポリマー溶液中に分散するコアセルベーション工程(すなわち、S/O/O工程)の実施形態では、懸濁する薬剤粒子の直径が約10ミクロン未満、好ましくは約5ミクロン未満、およびより好ましくは約1ミクロン未満であることが好ましい。生物学的に活性な作用物質のサブミクロン粒子を作製する方法は、当技術分野で知られている。例えば、米国特許第6,428,815号では、ポリマー溶液中でフラグメント化して、当業者により知られる手段、例えば、プローブ超音波処理、ホモジナイゼーション、流体化、粉砕、および製粉によりサブミクロン粒子を達成しうる、砕けやすい微小構造を作製する能力を有するスプレー式凍結乾燥工程が開示される。
【0072】
コアセルベートの形成
本明細書で用いられるコアセルベーション剤とは、ポリマー溶媒とは混和性である、ポリマーに対する非溶媒を指す。コアセルベーション剤は、低分子量のポリマー非溶媒でありうる。代替的に、コアセルベーション剤は、微粒子を形成するポリマーと相溶しない第2のポリマーでありうる。コアセルベーション剤の添加によりポリマーの溶解度が低下し、ポリマーは相分離を受け、こうしてコアセルベートが形成される。本発明での使用に適するコアセルベーション剤は、シリコーン油、植物油、およびミネラル油を含むがこれらに限定されない。具体的な実施形態において、コアセルベーション剤はシリコーン油であり、ポリマー溶媒は塩化メチレンである。シリコーン油は、約0.75:1〜約2:1の塩化メチレンに対する最終的なシリコーン油比を達成するのに十分な量で添加する。好ましい実施形態において、塩化メチレンに対する最終的なシリコーン油比は、約1:1〜約1.5:1である。より好ましい実施形態において、塩化メチレンに対する最終的なシリコーン油比は、約1.3:1である。好ましいシリコーン油は、約100〜1000センチストークス、好ましくは約350センチストークスの粘稠度を有するジメチコンである。シリコーン油以外のコアセルベーション剤または塩化メチレン以外のポリマー溶媒を用いる工程において、ポリマー溶媒に対するコアセルベーション剤の適切な比は、微粒子のサイズ分布、残留溶媒レベルおよび残留コアセルベーション剤レベル、ならびに薬剤放出動態に対するコアセルベーション剤量の、実験で決定される効果に基づき選択することができる。
【0073】
コアセルベート形成時における新生微粒子の挙動は、工程条件に依存する。ポリマー溶媒に対するコアセルベーション剤比が低い場合、例えば、コアセルベーション剤の部分的な添加後において、新生微粒子の粒径は比較的安定する傾向がある。しかし、ポリマー溶媒に対するコアセルベーション剤比が高い場合、例えば、コアセルベーション剤添加の完了に近いかまたは完了前において、新生微粒子は成長または凝集する傾向にあり、この結果、最終的な微粒子組成物において許容できない程度に広範な粒径分布が生じるか、または最終ステップを実施して粒径過剰粒子を除去する場合は許容できない収量喪失が生じる。特に、コアセルベーション剤がシリコーン油であり、ポリマーがPLGであり、溶媒が塩化メチレンである場合について具体的に述べると、塩化メチレンに対するシリコーン油比が0.5:1以下である場合、新生微粒子の粒径は比較的安定である。塩化メチレンに対するシリコーン油比が0.7:1以上である場合は、経時的に粒子直径が増大する。したがって、ポリマー溶媒に対するコアセルベーション剤比が新生粒子の成長を促進するのに十分な程度に高いコアセルベーションステップの経過時間を制限することが好ましい。
【0074】
ポリマー溶媒が塩化メチレンであり、コアセルベーション剤がシリコーン油である場合、この経過時間は好ましくは10分間未満であり、より好ましくは5分間未満である。したがって、本発明の態様は、ポリマー溶媒に対するコアセルベーション剤比が新生粒子の成長を可能とするのに十分高い経過時間を十分に短く保つコアセルベーション工程である。
【0075】
第1相に対するコアセルベーション剤の添加速度、およびコアセルベーション剤と第1相とがブレンドされる効率もまた、微粒子組成物の特性に影響を及ぼす。コアセルベーション剤がシリコーン油であり、ポリマーがPLGであり、溶媒が塩化メチレンである場合、シリコーン油の質量流速度が高く、かつ/またはシリコーン油のブレンド時間が短い結果、新生微粒子内へのシリコーン油の取り込みにより、微粒子中における残留シリコーン油レベルが上昇しうる。シリコーン油添加の初期段階において、例えば、塩化メチレンに対するシリコーン油比が0.5:1以下である場合、微粒子中における残留シリコーン油レベルは添加速度に依存する。微粒子中における残留シリコーン油レベルを制御するためには、塩化メチレンに対するシリコーン油比が、例えば、約0.375:1となるまではシリコーン油をゆっくりと添加することが好ましい。この段階のシリコーン油添加を、好ましくは約3分間を超える経過時間にわたり、より好ましくは少なくとも約5分間にわたり行うように、シリコーン油の添加速度を選択する。ポリマー溶媒が塩化メチレンでないか、またはコアセルベーション剤がシリコーン油でない工程では、当技術分野で知られた方法を用いて、コアセルベーション剤添加の最小時間を実験的に決定することができる。第1相に対するコアセルベーション剤添加の初期段階は、コアセルベーション剤が第1相中で良好に分散しこれと効率的にブレンドされる条件下で実施することが好ましい。ブレンドの効率を上昇させる手段には、複数の添加ポートを装備する攪拌式タンク反応器内でコアセルベーションステップを実施するか、または1つもしくは複数のスプレーノズルを介して第1相にコアセルベーション剤を添加することにより該ステップを実施することを含む。
【0076】
したがって、本発明の態様は、第1相に対するコアセルベーション剤の添加が少なくとも2段階で実施されるコアセルベーション工程である。コアセルベーション剤添加の1つまたは複数の初期段階は、例えば、コアセルベーション剤の第1相との効率的なブレンドを促進する装置を用いるコアセルベーション剤のゆっくりとした添加により、微粒子中へのコアセルベーション剤の取り込みが回避される条件下で行う。比較的安定的な微粒子径を特徴とする新生微粒子は、第1段階において形成される。
【0077】
コアセルベーションステップの1つまたは複数の後期段階は、ポリマー溶媒に対するコアセルベーション剤比が粒径の成長を促進するのに十分な程度に高くなりうる経過時間を最小化することなど、粒径の成長を制御するように設計された条件下で行う。例えば、シリコーン油、PLG、および塩化メチレンの場合、第2段階における添加時間は10分間未満であり、好ましくは5分間未満である。シリコーン油を添加して、少なくとも1:1、好ましくは少なくとも1.3:1の最終的な油:溶媒比を達成し、これにより、不純物バーストおよび残留不純物の低減を確保することが好ましい。
【0078】
コアセルベーション剤の個々の段階をすべて、単一の装置内で行う場合もあり、装置の異なる部分における個別ユニットの作業として行う場合もある。さらに、コアセルベーション剤添加の個々の段階はすべて、バッチモードまたは連続モードで実施する場合もあり、ある段階がバッチ作業として行われ、他の段階が連続工程として行われる場合もある。さらに、例えば、新生微粒子からのポリマー溶媒の拡散など、時間に依存する過程を起こさせるには、コアセルベーション剤添加の異なる段階の間に待機時間を導入することが適切な場合もある。代替的に、コアセルベーション剤添加の異なる段階は、間の待機時間なしに即時的な連鎖で行う場合もある。しかし、この実施形態では、シリコーン油の添加速度が2つの段階の間で異なることが明らかである。第1段階における添加速度は、第2段階の添加速度よりも低速であることが好ましい。
【0079】
加えて、本発明のさらなる態様は、同じコアセルベーション剤をコアセルベーション剤添加のすべての段階に用いる工程である。本発明の代替的な態様は、コアセルベーション剤添加の異なる段階に異なるコアセルベーション剤を用いる場合である。添加の異なる段階で用いられるコアセルベーション剤は、油の種類、例えば、シリコーン油に対する植物油、油の粘稠度、例えば、1000cStのシリコーン油に対する350cStのシリコーン油、または、コアセルベーション剤に対する添加剤の存在または不在について異なりうる。こうした添加剤は、SPAN(登録商標)洗浄剤として知られる一連の脂肪酸アシルソルビタンなどの親油性界面活性剤を含むがこれらに限定されない界面活性剤を含みうる。
【0080】
バッチモードによる多段階コアセルベーション工程
本発明の多段階コアセルベーション工程の実施形態は、バッチモードにおける単一の攪拌式タンク反応器内でコアセルベーション剤の添加を行う工程である。この場合、反応器は、バッチを作製するのに必要な第1相およびコアセルベーション剤の総量を収容するのに適する大きさであるべきである。第1相は、攪拌式タンクで直接に調製するか、または好ましくは、例えば、ホモジナイゼーションまたは超音波処理を用いてポリマー溶液中における薬剤粒子または薬剤溶液滴のサブミクロン分散液を作製するよう設計された装置から攪拌式タンク内に導入することが好ましい。
【0081】
コアセルベーション剤は、2つ以上の逐次的な段階において添加される。新生微粒子内へのコアセルベーション剤の取り込みをあらかじめ排除するために、コアセルベーション剤添加の1つまたは複数の初期段階は、ゆっくりとした添加速度で効率的な分散により実施することが好ましい。好ましい実施形態において、コアセルベーション剤は、複数の添加ポートまたは1つもしくは複数のスプレーノズルを介して添加される。添加ポートを適切な大きさで適切に配置し、コアセルベーション剤の第1相との効率的なブレンドを促進するものとする。適切なスプレーノズルは、コアセルベーション剤を第1相中に分散させるのに十分な差圧(10〜60psi)で作動する単一流体ノズルを含む。粒径の成長をあらかじめ排除または最小化するのに十分な程度に低いポリマー溶媒に対するコアセルベーション剤比を維持するために、添加されるコアセルベーション剤の量を制限する。結果として得られる第1相とコアセルベーション剤との混合物を、本明細書では、中間コアセルベート分散液と称する。コアセルベーション剤添加の1つまたは複数の後期段階では、ポリマー溶媒に対する最終的なコアセルベーション剤比が達成されるまで、コアセルベーション剤を中間コアセルベート分散液に添加する。コアセルベーション剤の添加速度およびコアセルベートを焼き入れ液中に移して硬化させる時間は、ポリマー溶媒に対するコアセルベーション剤比が安定的な粒径のためのその最大比を上回る経過時間が短くなるように、好ましくは5分間未満となるように選択することが好ましい。
【0082】
コアセルベーション剤添加の逐次的な段階間の経過時間を生成物収量に関して最適化する場合もあり、粒径、残留溶媒レベル、または活性作用物質の放出動態を含む他の最終生成物属性に基づき該経過時間を選択する場合もある。この経過時間は、基本的にゼロでありえ、これは、コアセルベーション剤添加の2つの段階が即時的に連鎖することを意味する。段階間の区別は、コアセルベーション剤添加速度の階段状変化である場合もあり、またはある時間にわたるポンプ速度の傾斜状変化により実施される添加速度変化である場合もある。代替的に、例えば、新生微粒子からのポリマー溶媒の拡散などの時間に依存する過程を起こさせるために、段階間でコアセルベーション剤が添加されない待機時間を設ける場合もある。
【0083】
この実施形態は、第1相に対するコアセルベーション剤添加によるコアセルベートの形成が、コアセルベーション剤添加の正確に2つの逐次的段階を含む工程を含む。第1段階は、好ましくは少なくとも約3分間にわたり、より好ましくは少なくとも約5分間にわたり実施される。この段階において添加されるコアセルベーション剤の量は、新生微粒子の安定的な粒径を維持しながら添加しうる最大量の約75〜100%である。コアセルベーション剤がシリコーン油でありポリマー溶媒が塩化メチレンである実施形態において、この比は約0.375:1〜約0.5:1である。コアセルベーション剤添加の第2段階および最終段階は、5分間未満にわたり実施され、塩化メチレンに対するシリコーン油の最終的な比は、約0.75:1〜約2:1である。好ましい実施形態において、塩化メチレンに対する最終的なシリコーン油比は、約1:1〜約1.5:1である。より好ましい実施形態において、塩化メチレンに対する最終的なシリコーン油比は、約1.5:1など、約1.3:1〜約1.7:1である。この工程におけるコアセルベーション剤添加の時間経過を、ポリマー溶媒に対するコアセルベーション剤比を時間に対してプロットする図1に示す。時間Aは約3分間よりも長く、比Dは0.375:1であり、時点BからCまでの経過時間は、約5分間未満である。
【0084】
連続式多段階コアセルベーション工程
本発明の代替的な実施形態は、連続流多段階混合装置内の少なくとも2つの段階においてコアセルベーション剤を第1相に添加する、連続式コアセルベーション工程である。1つの例は、図2に示す通り、直列で配置される複数のスタティックミキサーである。微小封入工程におけるスタティックミキサーの使用は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,654,008号で開示されている。第1相を第1のコアセルベーション剤と組み合わせてスタティックミキサーに投入する。第2のスタティックミキサーへの投入口において、流出物を第2のコアセルベーション剤と組み合わせる。例示のため、図2では、スタティックミキサーセンブリーの注入口およびさらに5つの注入口において単一のコアセルベーション剤を第1相と組み合わせる工程を示す。スタティックミキサーの数、各ミキサーの形状、ならびに第1相の流速および各コアセルベーション剤の流れを最適化して、所望の粒径および生成速度を提供することができる。さらに、図で示す通り、異なる注入口において同じコアセルベーション剤を導入することもでき、異なるコアセルベーション剤を用いることもできる。同様に、コアセルベーション剤の流速は、すべての注入口において同じである場合もあり、異なる場合もある。この設計の違いには、その長手方向に沿って複数のコアセルベーション剤添加ポートを有する単一のスタティックミキサー、およびそれを介してスタティックミキサーの長手方向に沿って連続的にコアセルベーション剤が添加される多孔質壁面を有する単一のスタティックミキサーが含まれる。多孔質壁面による添加は、スタティックミキサーの外壁面またはスタティックミキサー内中央の多孔質チューブを介してなされうる。
【0085】
単一のスタティックミキサーまたは直列のスタティックミキサーを用いることもでき、複数のスタティックミキサーを並列に配置することもできる。複数のスタティックミキサーを並列で用いることができれば、各個別のスタティックミキサーを通じて流れパラメータを一定に保ちうる一方、スタティックミキサー数がバッチ規模に正比例して増加するので、スケールアップが簡易化される。
【0086】
別の例は、図3に示す通り、複数のCSTRを直列で用いる連続式多段階工程である。この場合、第1相およびコアセルベーション剤を第1のCSTR(T-1)に投入し、この反応器の流出物を、ここでもまた連続的なコアセルベーション剤添加が行われる第2のCSTR(T-2)に送り込む(ポンプ1)。第3のCSTR内で第2の反応器からの中間コアセルベートをさらなるコアセルベーション剤と組み合わせる(後略)。例示的な目的で図3に示した直列は、10台のCSTR(このうちの4台を略図中に示す)からなる。最後の反応器(図3のT-10)から流出するコアセルベートは、その後、微粒子を硬化させる焼き入れ液と接触する。各コアセルベーション剤の組成および流速は、同じである場合もあり、異なる場合もある。反応器の台数および大きさ、流速、ならびに攪拌条件により、新生微粒子の形成時における1つまたは複数のコアセルベーション剤添加の時間経過が決定される。
【0087】
複数の回転翼および複数のコアセルベーション剤注入ポートを有する単一の背の高い混合槽からなる、攪拌式栓流反応器を図4に示す。第1相をコアセルベーション剤と組み合わせて、反応器内へと流し込む。各注入ポートを介してさらなるコアセルベーション剤を導入する。各回転翼およびコアセルベーション剤添加ゾーンが、槽内の混合用区画として作用する。混合用区画の数およびサイズ、第1相およびコアセルベーション剤の流速、ならびに攪拌パラメータ(回転翼の形状および速度)により、粒径および生成速度が決定される。
【0088】
これらの3つの構成のいずれかまたはすべての態様を含む、さらなる連続式多段階コアセルベーション工程は、当業者に容易に明らかである。すべての場合において、コアセルベーション剤添加のプロファイルを改変して、生成物特性を最適化することができる。すべての場合において、混合せん断速度を調整して、粒径および粒径分布を最適化することができる。スタティックミキサーの場合、これは、流速、スタティックミキサーの直径、またはスタティックミキサーの設計を変化させることにより達成することができる。攪拌式ミキサーの場合、これは、ミキサー速度および攪拌翼の選択により制御することができる。過度のせん断は、新生微粒子がその構造を失ってストランドを形成する原因となりえ、したがって回避すべきである。
【0089】
ハイブリッド式多段階コアセルベーション工程
本発明の好ましい実施形態は、コアセルベーション剤添加の1つまたは複数の第1段階が攪拌式タンク反応器内で実施され、1つまたは複数の最終段階が連続流混合装置、好ましくはスタティックミキサー内で実施されるハイブリッド式工程である。次いで、コアセルベートを、硬化剤を含む焼き入れ液と組み合わせる。本実施形態の工程を示す実験装置概略図を図5に示す。ここでは、活性作用物質を含有する第1相を、攪拌式タンク反応器内において、好ましくは、コアセルベーション剤のゆっくりとした添加およびコアセルベーション剤の第1相との効率的なブレンドを含む、コアセルベーション剤の取り込みを最小化する前述の条件下で、コアセルベーション剤と組み合わせる。1つまたは複数の第1の添加段階において添加されるコアセルベーション剤の量は、新生微粒子の安定的な粒径を維持しながら添加しうる最大量の約75〜100%であることが好ましい。
【0090】
結果として得られる中間コアセルベートを攪拌式タンクから送り出し、さらなるコアセルベーション剤の流れと組み合わせてスタティックミキサーもしくは複数のスタティックミキサーを含むアセンブリーまたはスタティックミキサーと中空チューブとの組合せの中に流し込む。図5は、コアセルベート剤と中間コアセルベートとの混合物が、中空チューブの全長を一括する2台のスタティックミキサーからなるアセンブリー内で混合される工程を示す。
【0091】
スタティックミキサーセンブリーは、(1)新生微粒子の粒径が安定的である時間経過内ですべての中間コアセルベートを加工しうるのに十分なスループットを提供し、(2)コアセルベート剤の中間コアセルベートとの十分な混合を提供し、(3)新生微粒子からのポリマー溶媒の抽出を可能とするのに十分な滞留時間を提供することを目的として設計される。
【0092】
図5に示す工程において、スタティックミキサーセンブリーからの流出物は、硬化剤を含有する焼き入れタンク内に導かれる。代替的に、コアセルベート流出物をさらなるスタティックミキサーの上流で焼き入れ液と混合することで、以下で論じる微粒子の連続的硬化を可能とすることもできる。
【0093】
ハイブリッド式工程により、コアセルベーション剤の取り込み、および結果として生じる、微粒子中の残留コアセルベーション剤レベルの上昇を回避する目的で、第1のコアセルベーション剤の添加速度を必要な程度に遅くすることが可能となる。後続するコアセルベーション剤の添加は、コアセルベート分散液をポリマー溶媒に対する最終的なコアセルベーション剤比において維持しうる時間経過が、連続流混合装置の滞留時間と等しくなるように、連続的な方式で実施する。これにより、ポリマー溶媒に対するコアセルベーション剤比が高くなると観察される粒径の成長が最小化される。
【0094】
微粒子の硬化
本発明の多段階工程または従来の単一段階工程により形成されたコアセルベートを焼き入れ液と組み合わせることにより、新生微粒子を硬化させる。焼き入れ液は、典型的に、ポリマーに対しては非溶媒であるが、コアセルベーション剤およびポリマー溶媒とは混和性である硬化剤を含む。ポリマー非溶媒は当技術分野で一般的によく知られている。好ましい硬化剤は、液体炭化水素を含む。これらのうちでは、ヘプタンが特に好ましい。当技術分野で知られる焼き入れ液の他の成分は、エタノールを含むアルコールを含む。特に好ましい焼き入れ液は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,824,822号で説明される、ヘプタン/エタノール溶媒系を含む。
【0095】
本発明の態様は、スタティックミキサーを用いる連続式工程においてコアセルベートを焼き入れ液と組み合わせる工程である。本工程の例を図6に示す。スタティックミキサーへの投入口で第1相をコアセルベーション剤と組み合わせる。下流の地点において、焼き入れ液をスタティックミキサーに導入し、コアセルベートと混合する。コアセルベートと焼き入れ液との混合物を、さらなる長さにわたるスタティックミキサーに通し、次いで、硬化または洗浄用のさらなる焼き入れタンク内かまたは濾過器乾燥器などの回収器内に導く。
【0096】
本工程の変形形態は、当業者には容易に明らかである。こうした実施形態の1つでは、第1のスタティックミキサーを用いて第1相をコアセルベーション剤と組み合わせ、結果として得られるコアセルベートを、第2のスタティックミキサーへの投入口で焼き入れ液と組み合わせ、流出物を焼き入れタンク内に導く。好ましい実施形態では、本発明のハイブリッド式多段階工程で形成されるコアセルベートを、さらなるスタティックミキサー内において連続的な方式で焼き入れ液と混合し、次いで、焼き入れタンク内に導く。
【0097】
コアセルベートを硬化剤と組み合わせるスタティックミキサーの使用により、工程の拡張性が改善され、硬化液消費の低減可能性が得られる。
【0098】
ここで、以下の実施例により、本発明をより詳細かつ具体的に説明しよう。
【実施例】
【0099】
(実施例1)
105グラムおよび1kgおよび15kgの規模でプラセボの微粒子バッチを作製することにより、コアセルベーション剤添加プロファイルの残留シリコーン油レベルに対する影響を評価した。加えて、15kgバッチは、第1相にシリコーン油を添加するスプレーノズルおよび/または複数の添加ポートを用いて作製した。
【0100】
105グラムのバッチ規模
A.内部油中水乳剤の形成
油中水乳剤は、超音波処理器(1/2インチプローブ(部品番号:A07109PRB)を伴うVibracell VCX 750型(コネチカット州、ニュータウン、Sonics and Materials社製))により作製した。乳剤の水相は、63gの水中に2.1gのスクロースを溶解させることにより調製した。乳剤の油相は、PLGポリマー(約0.45dL/gの内部粘稠度を有する、97.7gの50:50精製DL4A PLG(Alkermes社製))を塩化メチレン(1530gまたは6%w/v)中に溶解させることにより調製した。
【0101】
次いで、雰囲気温度、100%の振幅で超音波処理しながら、約3分間にわたり水相を油相に添加した。次いで、1400〜1600rpmで反応器を攪拌し、2分間にわたり100%の振幅でさらに超音波処理を行った後で、30秒間待機し、次いで、さらに1分間の超音波処理を行った。この結果、0.5ミクロン未満の内部乳剤液滴径が得られる。
【0102】
B.コアセルベートの形成
次いで、シリコーン油(2294gのDimethicone、NF、350cs)を添加することにより、コアセルベーションステップを実施した。これは、1.5:1の塩化メチレンに対するシリコーン油比に相当する。単一のステップまたは待機時間により分離される2つのステップにおいてシリコーン油を添加した。表1に示す通りに、シリコーン油の添加速度を変化させた。ポリマー溶液に由来する塩化メチレンがシリコーン油中に分配され、水相周囲にポリマーを沈殿させ始め、微小封入が生じる。微小球硬化のステップに進む前の短い時間、例えば、約1分間〜約5分間にわたり萌芽期微小球を放置した。
【0103】
C.微小球の硬化およびすすぎ
次いで、萌芽期微小球を、3℃に冷却した攪拌式タンク(350〜450rpm)内の約22kgのヘプタンと2448gのエタノールとの混合物中に移した。この溶媒混合物は、微小球から塩化メチレンをさらに抽出することにより、微小球を硬化させた。3℃で1時間にわたり焼き入れした後、溶媒混合物をデカントし、3℃で新鮮なヘプタン(13kg)を添加し、1時間にわたり待機して、微小球表面上に残留するシリコーン油、エタノール、および塩化メチレンをすすぎ落とした。
【0104】
D.微小球の乾燥および回収
すすぎのステップ終了時に微小球を移し、20または25ミクロンのスクリーン上での濾過により回収した。ヘプタン(4℃で6kg)による最終的なすすぎを実施して、最大のライン移送を確保した。次いで、窒素ガスパージにより微小球を真空乾燥させた。以下のスケジュール:3℃で18時間、25℃で24時間、41℃で6時間、および45℃で42時間、により温度を上昇させた。
【0105】
乾燥の完了後、−20±5℃で微小球を保管した。収量は、約80グラムの微小球であった。
【0106】
1kgのバッチ規模
A.内部油中水乳剤の形成
油中水乳剤は、スイス、Kinematica AG社製の直列式MegatronホモジナイザーMT−V 3−65 F/FF/FF型により作製した。乳剤の水相は、600gの注射用水(WFI)中に20gのスクロースを溶解させることにより調製した。乳剤の油相は、塩化メチレン(14.6kgまたは6%w/w)中にPLGポリマー(例えば、930gの50:50精製DL4A PLG(Alkermes社製))を溶解させることにより調製した。
【0107】
次いで、3℃まで冷却したジャケットつき容器内の油相に水相を添加し、約3分間にわたりオーバーヘッド式ミキサーにより混合して粗乳剤を形成した。次いで、該粗乳剤を約10,000rpmでホモジナイズした。この結果、1ミクロン未満の内部乳剤液滴径が得られる。
【0108】
B.コアセルベートの形成
次いで、内部乳剤にシリコーン油(21.9kgのDimethicone、NF、350cs)を添加することにより、コアセルベーションステップを実施した。これは、1.5:1の塩化メチレンに対するシリコーン油比に相当する。シリコーン油の添加速度を変化させて、コアセルベーション剤添加速度の微粒子中における残留シリコーン油に対する影響を調べた。各バッチのシリコーン油添加速度を表1に示す。微小球硬化のステップに進む前の短い時間、例えば、約1分間〜約5分間にわたり萌芽期微小球を放置した。
【0109】
C.微小球の硬化およびすすぎ
次いで、萌芽期微小球をヘプタン/エタノール溶媒混合物中に移した。本実施例では、3℃に冷却した攪拌式タンク中における約210kgのヘプタンと23kgのエタノールとの混合物を用いた。3℃で1時間にわたり焼き入れした後、溶媒混合物をデカントし、3℃で新鮮なヘプタン(55kg)を添加し、1時間にわたり待機して、残留するシリコーン油、エタノール、および塩化メチレンをすすぎ落とした。
【0110】
D.微小球の乾燥および回収
焼き入れまたはデカント/洗浄のステップ終了時に微小球を移し、Sweco社製の12インチPharmasep Filter/Dryer PH12Y6型上で回収した。該濾過器/乾燥器では20ミクロンの多層型回収スクリーンを用い、回収および乾燥時にスクリーンを振動させるモーターに接続する。ヘプタン(3℃、4回の10kgアリコットで40kgを送達)による最終的なすすぎを実施して、最大のライン移送を確保し、過剰なシリコーン油が存在すればこれをすべて除去した。次いで、速度を制御し、以下のスケジュール:3℃で6時間、6時間で41℃へと上昇、および41℃で84時間、により温度を上昇させた一定の窒素ガスパージにより微小球を真空乾燥させた。
【0111】
乾燥の完了後、微小球を回収容器に放出し、150μmの篩により篩過し、補充するまで−20℃で保管した。
【0112】
15kgのバッチ規模
A.内部油中水乳剤の形成
油中水乳剤は、スイス、Kinematica AG社製の直列式MegatronホモジナイザーMT−V 3−65 F/FF/FF型により作製した。乳剤の水相は、9kgの灌流用水(WFI)中に300gのスクロースを溶解させることにより調製した。乳剤の油相は、塩化メチレン(219kgまたは6%w/w)中にPLGポリマー(例えば、13,950gの50:50精製DL4A PLG(Alkermes社製)(上述と同様))を溶解させることにより調製した。
【0113】
次いで、水相を油相に添加し、約3分間にわたりオーバーヘッド式ミキサーにより粗乳剤を形成した。次いで、該粗乳剤を5℃、約10,000rpmでホモジナイズした。
【0114】
B.コアセルベートの形成
次いで、内部乳剤にシリコーン油(330kgのDimethicone、NF、350cs)を添加することにより、コアセルベーションステップを実施した。これは、1.5:1の塩化メチレンに対するシリコーン油比に相当する。シリコーン油の添加パラメータを表1に示す。単一のステップまたは待機時間により分離される2つのステップにおいてシリコーン油を添加した。バッチSAFC 066K7276およびSAFC 200−66−21Aでは、SpiralJet(登録商標)スプレーノズル(Spraying Systems社製、HHSJ型)を介してシリコーン油を添加した。バッチSAFC 200−66−27Aは、シリコーン油添加の第1段階にさらに2つのポートを用いて調製した。微小球硬化のステップに進む前の短い時間、例えば、約1分間〜約5分間にわたり萌芽期微小球を放置した。
【0115】
C.微小球の硬化およびすすぎ
次いで、萌芽期微小球をヘプタン/エタノール溶媒混合物中に移した。本実施例では、3℃に冷却した攪拌式タンク中における約3150kgのヘプタンと350kgのエタノールとを用いた。3℃で1時間にわたり焼き入れした後、溶媒混合物をデカントし、3℃で新鮮なヘプタン(825kg)を添加し、1時間にわたり待機して、残留するシリコーン油、エタノール、および塩化メチレンをすすぎ落とした。
【0116】
D.微小球の乾燥および回収
焼き入れまたはデカント/洗浄のステップ終了時に微小球を移し、回収および乾燥時には、20ミクロンのTeflon膜ならびにグリコールで満たした混合および熱伝導用攪拌器を装備したジャケットつきの0.2m濾過器乾燥器(3V Cogeim社製)上で回収した。ヘプタンによる最終的なすすぎ(3℃、150kgで4回のすすぎ)を実施して、最大のライン移送を確保し、過剰なシリコーン油が存在すればこれをすべて除去した。次いで、速度を制御し、以下のスケジュール:3℃で6時間、36時間で39℃へと上昇、および39℃で30時間、に従う一定の窒素ガスパージにより微小球を真空乾燥させた。
【0117】
残留シリコーンの測定
残留シリコーンを誘導結合プラズマ分光法(ICP法;テネシー州、ノックスビル、Galbraith Laboratories社製)により測定した。結果を表1に示す。
【0118】
【表1】

【0119】
3%カルボキシメチルセルロース、0.9%NaCl、0.1%Tween20を含有する水性希釈液中での超音波処理による懸濁後において、Coulter社製Multisizerを用いて得られたバッチSAFC 200−66−21Aの粒径分布は、以下の通りであった:DV50:85.1μm、DV90:120μm、DV90−DV10:67.5μm。
【0120】
(実施例2)
バッチモードの多段階コアセルベーション工程を用いて、エキセンディン4を含有する微粒子バッチを1kgおよび15kgの規模で作製した。
【0121】
1kgのバッチ規模
600gの注射用水(WFI)中に20gのスクロースおよび50gのエキセンディン4を溶解させることにより乳剤の水相を調製したことを除き、実施例1で説明した1kg工程に従い油中水乳剤を作製した。コアセルベーションおよびその後の加工するステップは、実施例1で説明した通りに実施した。コアセルベーション剤は、表2に示した待機時間により分離された2つの異なる段階において添加した。比較のため、単一段階において全量のコアセルベーション剤を添加することにより基準バッチを作製した。残留シリコーン油レベルを決定したとともに、表2に示す。
【0122】
15kgのバッチ規模
600gの注射用水(WFI)中に300gのスクロースおよび750gのエキセンディン4を溶解させることにより乳剤の水相を調製したことを除き、実施例1で説明した15kg工程に従い油中水乳剤を作製した。コアセルベーションおよびその後の加工するステップは、実施例1で説明した通りに実施した。コアセルベーション剤は、表2に示した待機時間により分離された2つの異なる段階において、実施例1で説明したスプレーノズルを介して添加した。残留シリコーン油レベルを決定したとともに、表2に示す。
【0123】
【表2】

【0124】
実施例1で説明した通りに得られたバッチSAFC 200−75−112の粒径分布は、以下の通りであった:DV50:59.9μm、DV90:87.9μm、DV90−DV10:50.7μm。
【0125】
(実施例3)
多段階コアセルベーション工程の単一段階連続式コアセルベーション工程との対比
単一段階連続式コアセルベーション工程
97.7gの50/50精製4Aポリラクチド−co−グリコリド(PLG)を1530gの塩化メチレン(DCM)に溶解させることにより、6%PLG溶液を調製した。ポリペプチド溶液は、2.1gのスクロースと5.5gのウシ血清アルブミン(BSA)とを60gの脱イオン化水中に溶解させることにより調製した。図7に示す実験装置の内部乳剤タンクにPLG溶液(有機相)を添加した。100%の振幅で超音波処理を行いながらBSA溶液(水相)を添加した。超音波処理は2分間にわたり持続させ、1分間にわたり停止し、次いで、さらに2分間にわたり持続させた。
【0126】
結果として得られる内部乳剤を1000cStのシリコーン油と組み合わせ、12.5mL/秒の総流速で48インチの二重螺旋型スタティックミキサー(0.5インチの直径)に流し込んだ(内部乳剤およびシリコーン油)。内部乳剤およびシリコーン油を送り込む際の流速は、1.0:1の塩化メチレンに対するシリコーン油比が得られるように調整した。
【0127】
3℃で3Lのヘプタンを含有する抽出タンク内にスタティックミキサーの流出物を投入した。焼き入れ用混合物を600rpmで30分間にわたり攪拌した。25μmの篩を介する濾過により硬化した微粒子を回収し、低温のヘプタンによりすすぎ、真空乾燥させ、150μmの試験用篩を介して篩過した。3%カルボキシメチルセルロース、0.9%NaCl、0.1%Tween20を含有する水性希釈液中での超音波処理による懸濁後における微粒子の粒径分布は、Coulter社製Multisizerを用いて得た。
【0128】
2段階ハイブリッド式コアセルベーション工程
単一段階工程について上記で説明した通りにBSAおよびPLGを含む内部乳剤を調製し、次いで、1000cStのシリコーン油を、0.3:1の塩化メチレンに対するシリコーン油比をもたらすのに十分な量で攪拌しながら添加した。結果として得られる中間コアセルベートを、48インチのスタティックミキサー注入口においてさらなるシリコーン油と組み合わせた。ポンプ機構を用いて、14mL/秒の総乳剤流速(中間コアセルベートおよびさらなるシリコーン油)および1.0:1の塩化メチレンに対する最終的なシリコーン油比を提供した。単一段階工程について上記で説明した通りに、微粒子をヘプタンにより焼き入れし、回収し、乾燥させ、篩過し、粒径分布に関して解析した。
【0129】
4段階ハイブリッド式コアセルベーション工程
上記で説明したハイブリッド式コアセルベーションを改変して、2つのさらなるシリコーン油添加段階を組み込んだ。350cStのシリコーン油を、0.5:1の塩化メチレンに対するシリコーン油比をもたらすのに十分な量で、攪拌しながら上記で説明した通りに調製した内部乳剤に添加した。中間コアセルベートを、各スタティックミキサー間における滞留時間をもたらす中空パイプセグメントを有する3台直列のスタティックミキサー(2台の0.5インチ螺旋型スタティックミキサーおよび1台の界面形成(ISG)型スタティックミキサー)に送り込んだ。各スタティックミキサーへの投入口において、さらなるシリコーン油を導入した。シリコーン油の添加速度は、第1、第2、および第3のスタティックミキサーにおける塩化メチレンに対するシリコーン油比が、それぞれ、0.75:1、1:1、および1.5:1となるように選択した。最初の2台のスタティックミキサーの下流における中空パイプセグメントは、15秒間の滞留時間を提供するように寸法決定した。上記で説明した通りに微粒子を硬化させ、回収し、乾燥させ、篩過し、特徴づけした。
【0130】
【表3】

【0131】
(実施例4)
図5に示す実験装置概略図を用いる2段階ハイブリッド式コアセルベーション工程を用いて、微粒子を調製した。塩化メチレン中に6%w/wのPLG溶液2170グラム中に分散させた3.2%w/wのスクロース水溶液87グラムからなる一次乳剤。混合物を冷却し、次いで、2分間にわたり超音波処理し、1分間にわたり放置し、次いで、さらに2分間にわたり超音波処理した。
【0132】
t=0分に開始し、冷却したシリコーン油(350cSt)を、中間コアセルベート中における0.5:1の塩化メチレンに対するシリコーン油比をもたらすのに十分な量で、1500rpmで攪拌しながら5分15秒間にわたって添加した。次いで、10エレメント(3/8インチの直径、5インチの長さ)のISG型スタティックミキサー、内径1/4インチの中空チューブによる300cmの区間、ならびに第1のスタティックミキサーと同じ型および同じ寸法の第2のスタティックミキサーに中間コアセルベートを送り込むことにより、第2段階のコアセルベーション剤添加を開始した。第1のスタティックミキサーへの投入口にさらなるシリコーン油を導入した。中間コアセルベートおよびシリコーン油用のポンプを設置して、1.5:1の塩化メチレンに対する最終目標シリコーン油比および約650g/分の総コアセルベート流速を提供した。
【0133】
t=12分には、シリコーン油添加地点およびスタティックミキサーセンブリーより上流における中間コアセルベートの流れを、3℃で1800mLのヘプタンと200mLのエタノールとからなる攪拌式焼き入れタンクに投入した。t=13分には、シリコーン油添加およびスタティックミキサー連鎖の後における最終コアセルベート試料を同じ方式で焼き入れした。
【0134】
攪拌しながらさらなる時間にわたり中間コアセルベート乳剤を保持した。次いで、スタティックミキサーアセンブリーへの中間コアセルベートとシリコーン油との流れを再開させ、中間コアセルベート(t=70分にて)試料および最終コアセルベート(t=72分にて)試料を、上記で説明した通りに焼き入れした。
【0135】
材料は、少なくとも30分間にわたり攪拌式焼き入れタンク内に放置し、25umの篩上で回収し、冷却したヘプタンによりすすぎ、次いで、乾燥させ特徴づけた。150umの篩を通過する最終材料の分量により、粒径および凝集の指標である、篩過収率を決定する。実施例3で説明した通りに、粒径について微粒子を特徴づけた。30m×0.53mmのRtx 1301型カラムを伴うHP 5890シリーズ2型ガスクロマトグラフを用いて、残留溶媒レベルを決定した。10mlのN,N−ジメチルホルムアミド中に約130mgの微粒子を溶解させた。内部標準物質として酢酸プロピルを用いた。0.03%もの低い塩化メチレン濃度を定量化できるように、試料調製を調整した。
【0136】
粒径および残留溶媒レベルを表4にまとめる。試料09−01および09−03は、第2段階のシリコーン油添加を受けずに焼き入れされた中間コアセルベートである。試料09−02および09−04は、焼き入れステップ前に第2段階のシリコーン油添加を受けた。粒径データは、第2段階のコアセルベーション時に著明な粒径の成長が生じず、72分間の中間コアセルベート待機時間中に粒径が増大しなかったことを示す。
【0137】
【表4】

【0138】
(実施例5)
2段階ハイブリッド式コアセルベーション工程を用いて、エキセンディン4を封入した。エキセンディン4水溶液(1381gの水中に5.13gのエキセンディン4、1.9gのスクロース)を、6%のポリマー溶液(1381gの塩化メチレン中に88gの50/50 4A PLG)中に分散させることにより、内部乳剤を形成した。超音波処理前に溶液を冷却し、超音波処理は、2分間の超音波処理、1分間の待機時間、およびさらに2分間の超音波処理からなった。冷却した反応器(3℃)に内部乳剤を添加し、1584rpmで攪拌した(LightninミキサーG2S05D型、2インチタービン、および2インチ半径流式回転翼)。
【0139】
t=0に開始し、690.5gのシリコーン油および0.5:1のシリコーン油:塩化メチレン比を目標として、冷却したシリコーン油を、3分27秒間にわたって攪拌式反応器に添加した。図5に示した装置内において、中間コアセルベートをさらなるシリコーン油と組み合わせた。最終的なシリコーン油:塩化メチレン比は1.65:1であり、コアセルベートの流れは、約475g/分であった。
【0140】
t=5分30秒には、約1kgのコアセルベートを、ヘプタン:エタノールが90:10の焼き入れ液12kg中に投入した。1時間にわたり焼き入れ液混合物を攪拌し、10分間にわたり静置し、次いで、液体の大半をデカントし、6kgのヘプタンを添加した。さらに1時間にわたり混合物を攪拌し、次いで、円錐型の乾燥器に投入し、2.8kgのヘプタンですすぎ乾燥させ、試料200−00042−203Aを得た(表5)。
【0141】
t=9分10秒には、さらなる最終コアセルベートを、ヘプタン:エタノールが90:10の焼き入れ液2kg中に投入した。流れを中断させ、t=60分まで中間コアセルベートを保持した。中間コアセルベートとシリコーン油との流れを再開させ、結果として得られるコアセルベートを、2kgの第2の焼き入れ液に投入した。2kgの焼き入れ液混合物を25umの篩により濾過し、結果として得られる微粒子を冷却したヘプタンですすぎ乾燥させ、試料200−00042−203Bおよび200−00042−203Cを得た。
【0142】
微粒子の特性を表5にまとめる。
【0143】
【表5】

【0144】
(実施例6)
単一段階CSTRを用いる連続式コアセルベーション工程により、微粒子バッチを調製した。3.2%のスクロース水溶液65.2グラムを、塩化メチレン中に6%のPLG(50/50 4A)溶液1627.5グラム中に、超音波処理により分散させることにより内部乳剤を調製した。攪拌槽に326グラムの内部乳剤を投入し、1分間にわたり451グラムのシリコーン油(350cSt)を添加した。330g/分の速度でさらなる内部乳剤を攪拌槽に送り込む一方で、443g/分の速度でシリコーン油(350cSt)を添加し、コアセルベート中に1.5:1の塩化メチレンに対するシリコーン油比を得た。3℃に冷却した22kgのヘプタンと2.5kgのエタノールとからなる焼き入れ液へのコアセルベートの重力投入によりCSTR内の一定容量を維持しながら、枯渇するまで3分34秒間にわたり内部乳剤の添加を中断した。3℃で60分間にわたり微粒子を硬化させ、次いで、回収し、ヘプタンによりすすぎ、真空下で乾燥させ、篩過した。
【0145】
69%の収率で微粒子を得た。DV10、DV50、およびDV90の値は、それぞれ、12.5、50.6、および1114μmであった。残留するエタノール、塩化メチレン、およびヘプタンのレベルは、それぞれ、0.31、0.32、および2.69%であった。
【0146】
(実施例7)
単一段階CSTRを用いる連続式コアセルベーション工程により、エキセンディン4を含有する微粒子バッチを調製した。62.9グラムの水中に2.1グラムのスクロースおよび5.51グラムのエキセンディン4溶液を、塩化メチレン中に6%のPLG(50/50 4A)溶液1627.5グラム中に超音波処理により分散させることにより内部乳剤を調製した。攪拌槽に332グラムの内部乳剤を投入し、1分間にわたり456グラムのシリコーン油(350cSt)を添加した。330g/分の速度でさらなる内部乳剤を攪拌槽に送り込む一方で、443g/分の速度でシリコーン油(350cSt)を添加し、コアセルベート中に1.5:1の塩化メチレンに対するシリコーン油比を得た。3℃に冷却した22kgのヘプタンと2.5kgのエタノールとからなる焼き入れ液中へのコアセルベートの重力投入によりCSTR中の一定容量を維持しながら、枯渇するまで3分55秒間にわたり内部乳剤の添加を中断した。3℃で60分間にわたり微粒子を硬化させ、次いで、回収し、ヘプタンによりすすぎ、真空下で乾燥させ、篩過した。
【0147】
収量86.2グラムのエキセンディン4微粒子を得た。
【0148】
前出の本発明の詳細な説明から、当業者には本発明の改変および変更が明らかであろう。こうした改変および変更は、添付の特許請求の範囲内に収まることを意図する。
【0149】
本明細書で引用したすべての特許、特許出願公開、および論文は、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)活性作用物質、生体適合性ポリマー、および溶媒を含む第1相を提供するステップと、
(b)コアセルベートを形成するステップと、
(c)前記コアセルベートを焼き入れ液と組み合わせ、これにより、前記活性作用物質を含有する微粒子を形成するステップと
を含み、ステップ(b)が、
(i)第1相に第1のコアセルベーション剤を添加するステップと、その後で
(ii)第2のコアセルベーション剤を添加するステップと
を含む、微粒子の調製法。
【請求項2】
前記微粒子の平均粒径が約1um〜約250umである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微粒子の平均粒径が約10um〜約100umである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記活性作用物質が水溶性薬剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記活性作用物質が生物学的に活性なポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記生物学的に活性なポリペプチドが、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、エキセンディン、グルカゴン様ペプチドのアゴニスト、血管作動性腸管ペプチド、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン、インターロイキン、マクロファージ活性化因子、インターフェロン、エリスロポエチン、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、インスリン、酵素、腫瘍抑制遺伝子、血中タンパク質、卵胞刺激ホルモン、成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、および黄体形成ホルモン放出ホルモン、NGF、EGF、ガストリン、GRH、デフェンシン、エンケファリン、ならびにこれらの変異タンパク質、類似体、欠失変異体、および置換変異体、ならびに薬学的に許容される塩から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記生物学的に活性なポリペプチドが糖調節ペプチドである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記糖調節ペプチドがGLP−1、GLP−2、エキセンディン3、エキセンディン4またはこれらの組合せから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記糖調節ペプチドがエキセンディン4である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリペプチドが、微粒子総乾燥重量の約0.1%w/w〜約10%w/wで存在する、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリペプチドが、微粒子総乾燥重量の約1%w/w〜約5%w/wで存在する、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリペプチドが、微粒子総乾燥重量の約3%w/w〜約5%w/wで存在する、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記生体適合性ポリマーがポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリアンヒドライド、ポリ(アミノ酸)、ポリオルトエステル、ポリシアノアクリレート、ポリ(p−ジオキサノン)、ポリ(アルキレンオキサレート)、生体分解性ポリウレタン、これらのブレンドおよびこれらのコポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマーがポリ(ラクチド−co−グリコリド)を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマーが50:50ポリ(ラクチド−co−グリコリド)である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマーが約0.3〜0.5dL/gの固有粘稠度を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマーが、キャップされていない遊離カルボキシル基を有するポリ(ラクチド−co−グリコリド)を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記溶媒がアルコール、エステル、ケトン、ハロゲン化炭化水素、およびこれらのブレンドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記溶媒が塩化メチレンである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記溶媒が酢酸エチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記第1相が油中水乳剤であり、該乳剤はその水性分散相中に溶解した前記活性作用物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記油中水乳剤が1μm未満の分散相液滴径を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記油中水乳剤が0.2μm〜0.4μmの分散相液滴径を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記油中水乳剤の水相中における前記活性作用物質の濃度が10mg/g〜100mg/gである、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記油中水乳剤の水相中における前記活性作用物質の濃度が50mg/g〜100mg/gである、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記第1相が、前記ポリマーおよび溶媒を含む溶液中に前記活性作用物質を含む粒子懸濁液である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記懸濁粒子の平均直径が約10μm未満である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記懸濁粒子の平均直径が約1μm未満である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第1相が、水相中に溶解した活性作用物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記第1相が、塩、糖、炭水化物、緩衝液、および界面活性剤からなる群から選択される賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記賦形剤が糖である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記糖が単糖、二糖、糖アルコール、およびこれらの組合せから選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記糖がスクロース、マンニトール、およびこれらの組合せから選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記糖がスクロースである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記微粒子中の糖量が微粒子総乾燥重量の0.01%〜10%である、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記賦形剤および前記活性作用物質が第1相中に共に分散する、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記微粒子中の糖量が微粒子総乾燥重量の1%〜5%である、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記微粒子中の糖量が微粒子総乾燥重量の約2%である、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記微粒子中の薬剤および賦形剤の総量が微粒子総乾燥重量の10%未満である、請求項30に記載の方法。
【請求項40】
前記微粒子中の薬剤および賦形剤の総量が微粒子総乾燥重量の3%〜8%である、請求項30に記載の方法。
【請求項41】
前記微粒子中の薬剤および賦形剤の総量が微粒子総乾燥重量の5%〜7%である、請求項30に記載の方法。
【請求項42】
前記第1相中における溶媒に対するポリマーの比が約20%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記第1相中における溶媒に対するポリマーの比が約10%以下である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記第1のコアセルベーション剤が油を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
前記油が鉱物油、植物油、およびシリコーン油からなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記油がシリコーン油である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記第1のコアセルベーション剤と前記第2のコアセルベーション剤とが同じである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記第1のコアセルベーション剤と前記第2のコアセルベーション剤とが異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
ステップ(b)における溶媒に対するコアセルベーション剤の重量比が約0.75:1〜約2:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
溶媒に対するコアセルベーション剤の重量比が約1.3:1である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
溶媒に対する第1のコアセルベーション剤の重量比が約0.5:1以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
前記第1のコアセルベーション剤が第1相に少なくとも3分間にわたり徐々に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
前記焼き入れ液が炭化水素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項54】
前記炭化水素がヘプタンである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記焼き入れ液がアルコールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項56】
前記アルコールがエタノールである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記焼き入れ液がヘプタンとエタノールとの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項58】
(d)微粒子を回収するステップと、
(e)微粒子を乾燥させるステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項59】
ステップ(b)が
(iii)第1または第2のコアセルベーション剤と同じかまたは異なる、少なくとも1種類のさらなるコアセルベーション剤を添加するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項60】
ステップ(i)が攪拌式タンク内で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項61】
前記第1のコアセルベーション剤が少なくとも2つの添加ポートを介して添加される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記第1のコアセルベーション剤が少なくとも1つのスプレーノズルを介して添加される、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記第1のコアセルベーション剤と前記第1相とがスタティックミキサーに同時に流し込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項64】
前記第2のコアセルベーション剤と、前記第1相および第1のコアセルベーション剤を含む混合物とがスタティックミキサーに同時に流し込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項65】
前記コアセルベートと焼き入れ液とがスタティックミキサーに同時に流し込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項66】
少なくとも1種類のコアセルベーション剤と、前記第1相および前記第1のコアセルベーション剤を含む混合物とがスタティックミキサーに同時に流し込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項67】
(a)活性作用物質、生体適合性ポリマー、および溶媒を含む第1相を調製するステップと、
(b)コアセルベートを形成するステップと、
(c)コアセルベートを焼き入れ液と組み合わせ、これにより、活性作用物質を含有する微粒子を形成するステップと
を含み、ステップ(b)が連続流混合装置の少なくとも2つの注入口を介するコアセルベーション剤の添加を含む、微粒子の調製法。
【請求項68】
前記連続流混合装置が、複数のコアセルベーション剤添加ポートを有する攪拌式栓流反応器である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記連続流混合装置が、複数のコアセルベーション剤添加ポートを有するスタティックミキサーセンブリーである、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記連続流混合装置が、前記コアセルベーション剤が流し込まれる多孔質壁面を有するスタティックミキサーである、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
前記連続流混合装置が、少なくとも2台直列の連続攪拌式タンク反応器である、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
請求項1の方法により調製される微粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−522196(P2010−522196A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554711(P2009−554711)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/057484
【国際公開番号】WO2008/118712
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(507096098)アルカームズ,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】