説明

コアドリル用の水処理パッド

【課題】穿孔作業の姿勢を問わず排水効率が良好なコアドリル用の水処理パッドを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、コアドリルによって切削水を供給しつつ穿孔を行う際、穿孔面に設置されるコアドリル用の水処理パッドに関し、コアドリルを包囲するように設置され、側面に排水口を有する略円筒形状のパッド本体10と、パッド本体の内部に着脱自在に取付けられ、取付け時に断面円弧形状となる内壁板20aと、を備え、内壁板と前記パッド本体内面との間に、前記排水口と連通する圧力空間が形成されるようになっている。ここで、内壁板20aの取付け構造として、パッド本体10の上部裏面に嵌合溝13が形成されたガイド12を円周上に設け、内壁板20aを嵌合するものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物、石材、岩盤、鉄鋼構造物等の被削物にコアドリルで穿孔する際に用いられる水処理パッド(以下、単にパッドと称することがある)に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物等を穿孔するための装置として、コアドリルが知られている。コアドリルによる穿孔においては、回転状態のコアドリルをコンクリート構造物等の所定の穿孔位置に押しつけ、これを下降移動させることで穴が形成される。この穿孔作業においては、コンクリート構造物の破片や粉塵が生じることから、これらの飛散を防止するため、穿孔位置に水を供給しながら作業を行うのが一般的である。この水の供給はコアビットの冷却のためにも有用である。そして、このように水を供給しながらの穿孔作業では、水処理パッドが用いられている。
【0003】
図13で示すように、水処理パッド100は略円筒形状をしており、穿孔位置を包囲するようにコンクリート構造物等の穿孔面に設置されるものである。また、水処理パッドは、パッド本体101の側面に排水口102(ドレン)を有し、内部の水を排出可能とする。この水処理パッド100を用いて穿孔を行う場合は、コアドリル内の中空部を通して穿孔位置に給水し、供給した水をドレン102から排出しながら穿孔を行う。このようにすることで穿孔時に生じた破片や粉塵が水と共に穿孔位置から排出され、破片等の飛散が防止できる。また、この排水の際には、排水口にホースを取り付けて自然排水する場合の他、より効率的な排水のためにバキューム式のクリーナー(以下、クリーナーと略する)を接続し、その吸引力により強制的に排水を行う場合がある。
【0004】
ところで、水処理パットとしては、上記の図13のような一重の円筒形状のものが従来から広く用いられてきたが、このパッドではクリーナーを使用しても排水効率が低いという問題があった。これは、クリーナーが吸引する空間が、パッド上部の開口部(コアドリルの挿入口)を通じて大気と連通した状態であるため、いくら吸引を継続しても該空間の圧力が大気圧より低くなり難くなる。
【0005】
そこで、上記水処理パッドの改良として、図14のような二重構造のパッドが知られている。この水処理パッド200は、排水口101とパッド本体の開口部201との間の円周上に内壁202が形成されており、これにより、パッド本体の内面と内壁202との間で形成される圧力空間を介して水を吸引・排出するものである。ここで、この圧力空間は、外気との連通が制限されていることから、クリーナーの吸引による負圧化が容易となり、排水効率を向上させることができる。
【特許文献1】特開2003−127131号公報
【特許文献2】登録実用新案第305895号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の二重構造の水処理パッドでも必ずしも十分な効果を得ることができない。即ち、圧力空間を負圧にするためには、排水口からの吸引能力を考慮しつつ、その容積を極力小さくする必要がある。具体的には、図15のように、圧力空間の断面積(S)が排水口の断面積(S)と等しい又はこれよりも小さくなる必要がある。そして、圧力空間の断面積Sを小さくするためには、パッド本体内面と内壁との隙間を小さくする必要があるが、この隙間を小さくすると穿孔の際に生じるコンクリートの破片、切削残物等が詰まりやすくなり、その除去が困難となる。また、それらの除去を怠ると、乾燥により固着し、パッドそのものを使用不可能なものとする。そこで、この水処理パッドでは、メンテナンス性を考慮して隙間を多少大きくしたものが使用されているが、排水効率に劣りパッド内に残水が生じることが多い。そして、穿孔作業後、多量の残水を残したままパッドを取り去ると、残水が作業箇所を汚してしまうことから、実際には使用が忌避されてきた。
【0007】
また、上記のような吸引時の排水効率の問題の他、従来の水処理パッドは、作業姿勢によって排水が困難になるという問題もあった。コアドリルは床面に垂直方向に穿孔を行う場合のみならず、壁面に対して水平方向に穿孔する際にも使用される。壁面穿孔の際の水処理パッドの状態を図16に示す。壁面の穿孔においては、排水口を真下に向けた場合、生じる切削水は、重力によりそのまま排水口に向かって排出されるため排水可否の問題は少ない(図16(a))。しかし、この配置の場合、排水口の出口と床面とが接触することや、排水口に接続するホースの曲率を考慮すると、壁面下部の穿孔は困難となる。そこで、壁面下部の穿孔のためには、水処理パッドを回転させて、その排水口を傾斜或いは真横にして設置することが必要となる(図16(b)、(c))。
【0008】
このように排水口をその鉛直方向から傾けた場合、切削水Lの全てが排水口に達することがないため、残水Lが生じる。この問題は、特に排水口を水平より上方に向けたときに顕著であり、切削水は殆ど排出されることなく溜まり続け、遂にはパッド上部の開口部(コアドリルの挿入孔)から溢れ出す。かかる問題は、パッドを2重構造とし、クリーナーを使用しても回避できないものである。上記の通り、従来の2重構造のパッドは、圧力空間を小さくすることができないため、クリーナーの吸引力を十分発揮させることができないからである。
【0009】
本発明は、以上のような背景のもとになされたものであり、コアドリル用の水処理パッドであって、穿孔作業の姿勢を問わず排水効率が良好なものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決する本発明は、コアドリルによって切削水を供給しつつ穿孔を行う際、穿孔面に設置されるコアドリル用の水処理パッドにおいて、前記コアドリルを包囲するように設置され、側面に排水口を有する略円筒形状のパッド本体と、前記パッド本体の内部に着脱自在に取付けられ、取付け時に断面円弧形状となる内壁板と、を備え、前記内壁板と前記パッド本体内面との間に、前記排水口と連通する圧力空間が形成されるようになっていることを特徴とするコアドリル用の水処理パッドである。
【0011】
本発明では、1重のパッド本体の内部に円弧状の内壁板を取付け、この内壁板とパッド本体内面とにより形成される空間を、クリーナーの吸引力向上のための圧力空間とするものである。従来の2重構造のパッドではパッド全周に渡って圧力空間が形成されるが、本発明においては形成される圧力空間は、円弧状の内壁板により部分的なものとなり、その断面積(S)は2重構造のパッドの断面積(S)より小さいものとなる(図1参照)。これにより、その断面積を排水口の断面積より小さなものとすることができ、クリーナーによる効率的な排水を可能とすることができる。また、本発明では、圧力空間の断面積を小さくしながらも、内壁板とパッド内面との隙間を比較的広く採ることができることから、穿孔作業中、切削残物等により隙間を詰まらせるおそれもない。
【0012】
また、本発明では、内壁板を着脱自在なものとしていることから、作業後に内壁板を取外すことによりパッド内に付着した切削残物の除去も容易となる。従って、本発明に係る水処理パッドは、メンテナンス性も良好である。
【0013】
ここで、内壁板の取付け構造としては、内壁板を着脱自在にするものであって、内壁板の両端とパッド本体内面との間に円弧形状の空間を形成できるものであれば、特に、限定されるものではない。例えば、パッド本体側面又は上面にネジ孔を適宜の箇所に形成し、円弧形状の内壁板の両端部又は上部をネジ止めするようなものでも良い。但し、作業現場における作業を容易なものとするためには、より簡潔な構造がある。
【0014】
このような内壁板の取付け構造としては、パッド本体の上部裏面に形成される内周上の少なくとも一箇所に設けられるガイドを備え、このガイドに内壁板を嵌合する嵌合溝を形成するものである。かかるガイドを形成しておくことで、内壁板の取付けをスムーズにすると共に、後述のように作業姿勢に応じて内壁板の長さ、位置を変更するのが容易となる。
【0015】
嵌合溝を有するガイドは、少なくとも1箇所あれば良い。例えば、ガイドは排水口に対向する位置に1箇所形成し、ここに弾性を有する内壁板を取り付けると、その両端がパッド本体の内面に当接することから空間を形成するこができる。但し、好ましくは、円周状に形成する。これにより内壁板の取付け位置を任意に調節することができ、後述のように、作業姿勢に応じて圧力空間を形成することができる。
【0016】
また、ガイドは、パッド本体内面の径の94/100〜98/100の直径を有する円周上に設置するのが好ましい。本発明においては、内壁板とパッド本体内面との隙間を比較的多く採ることができるが、効率的な排水を考慮すると上記位置が好適である。このガイドが形成する円周とは、ガイドの嵌合溝の中心位置が描く円を指すものとする。
【0017】
そして、ガイド設置の態様としては、上記円周上に複数のガイドを設けると良い。この際、ガイドは等間隔で全周に設けても良いが、完全な円を形成するようにする必要は必ずしもなく、円弧状に配置しても良い。ガイドの設置間隔は、等間隔でも良いが、変則的なものや連続的なものでも良い。また、複数のガイドに替えて円弧状の単一のものとしても良い。
【0018】
内壁板の長さは、形成される圧力空間の断面積を変化させる。内壁板の長さについては、ガイドが設置される円周長に対して1/12〜4/5とするのが好ましい。この範囲において、床面穿孔、即ち、水処理パッドを床面に設置する場合の内壁板の長さは、ガイドが設置される円周長に対して1/12〜1/3とするのが好ましい。できるだけ圧力空間(の断面積)を小さくし、排出効率を高めるためである。一方、壁面穿孔、即ち、水処理パッドを壁面に設置する場合を含めて考慮すると、内壁板は床面穿孔のみを考慮したときより長めにするのが好ましく、具体的には、ガイドが設置される内周長の1/3〜4/5とするのが好ましい。これは、切削水を排水するためには、圧力空間と切削水とが接触する必要があるため、比較的長めの内壁板を使用し、圧力空間の範囲(長さ)を広くする必要があるからである。但し、内壁板を長くするといっても、円周長と等しくなる程のものは不要である。また、前記の範囲の内壁板を複数用意し、作業姿勢に応じて内壁板を交換して穿孔作業を行うこともできる。
【0019】
尚、内壁板の材質については、特に限定されない。通常、樹脂製、金属製のものが適用できる。また、内壁板はパッド本体に取付け時に円弧状となっていれば良いのであって、取付け前の形状は、円弧状に成形されたものでも平板でも良い。樹脂、金属等の弾性材料からなる平板を用いることで、その両端部は弾性によりパッド内面に当接するのでガイドの設置数が少ない場合でも圧力空間を形成できる。但し、内壁板の両端はガイド(の嵌合溝)で固定しても良い。
【0020】
また、本発明においては、圧力空間をより小さなものとするために遮蔽版を用いることが好ましい。この遮蔽版とは、圧力空間断面形状の部分形状に略等しい板体であって、上下方向(コアドリルの移動方向)で排水口の設置部分と内壁板の下端部との間に設けられるものである。遮蔽板を取付けることで、その部分は圧力空間から除外され、圧力空間を小さくすることができる。この遮蔽版は、後述のように排水口付近が隆起した形状を有するパッド本体に有効であり、また、壁面穿孔の際にも有用である。
【0021】
パッド本体は、その外形は従来の水処理パット同様のものが適用できる。パッド本体の外形としては、円筒形状の他、横断面形状において排水口の設置位置で隆起部分を有するものがある。隆起部分を有することで、排水口付近に切削水を溜めることができ、効率的な排水が可能となる。
【0022】
また、パッド本体の下端縁には、弾性材料からなる環状シール部材を備えるものが好ましい。穿孔面は凹凸があることが多いことから、水処理パッドを穿孔面に密着させ、切削水の漏水を防止できる。この環状シール部材の材質としては、具体的には単泡スポンジゴムが好ましい。クリーナー使用時に縮小し、穿孔面との密着性、空間の縮小を図ることができるからである。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、作業姿勢によらず切削水の効率的な排出を行うことができる。本発明では、内壁板を着脱自在としたことで、作業後の内部清掃を容易にし、メンテナンス性も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係るコアドリル用の水処理パッドの好適な実施形態につき図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図2は、水処理パッドの各部材を示すものである。水処理パッド1は、排水口11を備えるパッド本体10、パッド本体10の内部に取り付けられる内壁板20(20a及び20b)、遮蔽板30を備える。内壁板20及び遮蔽板30は、樹脂製である。パッド本体10は排水口11の取付け位置において隆起部分を有する形状となっている。また、この水処理パッドは、パッド本体の上面の蓋体となる上部円形プレート40を備える。更に、後述する天井面を穿孔する際に使用する、円形の円形シール部材50(50a、50b、50c)、及び、下部円形プレート60を備える。これらを取り付けた本実施形態に係る水処理パッドは、その外観においては従来のパッドと略同じ形状である。
【0026】
図3(a)〜(c)は、本実施形態に係るパッドの背面図、断面図、及び、排水口11付近の断面拡大図を示す。本実施形態に係る水処理パッド1は、パッド本体10の上部裏面において内壁板20を取付けるためのガイド12a〜12fが円周状に複数(本実施形態では6個)設置されている(図3(a)参照)。このガイド12a〜12fは、内壁板20を固定するための嵌合溝13を有する。ガイド12の設置位置は、パッド本体内面で形成される円に対して95.7/100の直径の円周上としている。更に、パッド本体10においては、排水口付近の内面、本実施形態では隆起部分の先端の水平部分において、遮蔽板30を固定するための段差15が形成されている。
【0027】
図3(a)〜(c)に示した水処理パッド1は、内壁板として20aの短い内壁板を取付けた状態のものであるが、この取付け状態において内壁板は、排水口11に対向するガイド12aにのみ取付けられており、両端部はパッド本体10の内面に当接し、これにより圧力空間が形成される。但し、内壁板として内壁板20aより長いものを用いる場合、その両端を対応するガイド(12b、12c)に嵌合することで圧力空間を形成できる。
【0028】
尚、本実施形態においては、排水口11に、ホースの径に応じて使用するジョイント70、及び、回転可能に接続されたソケット80が接続される。図4は、ジョイント70、ソケット80と排水口11との接続状態を説明するものである。排水口11は、端部に嵌合孔11aと溝11bが形成されている。ジョイント70は先端が排水ホース(図示せず)の径に応じた口径となっており、排水口側端部が排水口11に挿入可能になっている。そして、ジョイント70の排水口側端部には突起71が形成されており、排水口11の嵌合孔11aに嵌合ことにより固定される。一方、ソケット80は略L字形状の筒体であり、排水口側の端部に周状突起81が形成され、排水口11の溝11bに嵌合され固定される。ソケット80は、溝11bに沿って回転可能であり、作業姿勢に応じて切削水の排出方向を変化させることができる。これらジョイント70、ソケット80は、排水ホースの径、作業姿勢等に応じて適宜に選択して使用され、ソケット80にジョイント70を接続することもできる。
【0029】
実施例1(床面穿孔)
本実施形態に係る水処理パッド1を用いて床面を穿孔する際、水処理パッド1は、パッド本体10、内壁板20aにより構成される。遮蔽板30を使用しても良い。穿孔作業においては、図5のように、水処理パッドを床面に設置し、排水口11にバキューム式クリーナー(図示せず)を接続する。設置の際、上部からパッド1を固定することで、パッド本体10の下端のスポンジゴム14が縮み、クリーナーによる吸込み高さを低い状態とする。水処理パッド1の設置・固定後、上部開口部からコアドリルCを穿孔位置に位置決めし、駆動モーター(図示せず)を始動して穿孔を開始する。穿孔作業中、コアドリルCの内部から切削水が供給され、切削水は切削水ラインLの位置まで上昇するが、切削水はクリーナーにより吸引される。
【0030】
床面穿孔の場合の圧力空間の断面は、図6のようになり従来のパッドのものより小さく、排水口の断面積と同等以下とすることができる。これにより、切削水は効率的に吸引・排出され、穿孔作業終了後、パッド1の内部に切削水を残すことはほぼない。
【0031】
また、穿孔作業後は、パッド1を取外し、内壁板20aを取外すことで内部の清掃を行うことができる。このとき、切削残物が排水口付近にあっても容易に除去できる。
【0032】
実施例2(壁面穿孔)
本実施形態に係る水処理パッド1を用いて壁面を穿孔する際、水処理パッド1は、パッド本体10、内壁板20b、更に、遮蔽板30により構成される。これらの部材を組み合わせたときの背面斜視図を図7に示す。本実施形態における遮蔽板30は、排水口11付近の形状に合わせた略台形形状の板材であるが、この遮蔽板30を取付けることにより、排水口11の付近の隆起部分で形成される空間が圧力空間から排除されるため、圧力空間の容量(断面積)を小さくすることができる。
【0033】
また、壁面穿孔において使用する内壁板20bは、20aよりも長いものであるが、これはパッド1の取付け状態に応じて圧力空間の位置を調整するためである。即ち、上述したように、壁面穿孔においては、穿孔位置、排水ホースの曲率を考慮して、排水口の向きを調整する必要があり、これにより切削水と排水口との位置関係も変化する。本実施形態に係る水処理パッド1では、複数設置されたガイド12a〜12fに沿って内壁板20bを移動・嵌合させることで、圧力空間の位置を調整することができる。
【0034】
図8(a)〜(d)は、水処理パッドの向き(排水口11の中心軸と鉛直方向とがなす角度)を変化させたときの内壁板20bの位置を説明するためのパッド1の背面図、及び、形成される圧力空間の断面形状を説明する図である。図8(a)のように、排水口が真下を向くとき(角度0°)においては、内壁板20bの位置によらず排水が可能である(図8(a)では左右均等位置に内壁板を設置している)。一方、穿孔位置をより床面に近づけたい場合、排水口を傾けることとなる。図8(b)は、例として60°傾けた場合であるが、このとき内壁板の位置を調整することで、排水口11とパッド下部の切削水ラインと連通する圧力空間を形成することができる。そして、同様に、排水口11が水平方向を向くとき(角度90°)、及び、排水口11が真上を向くとき(角度180°)についても、切削水ラインに接するように内壁板20bの位置をずらしつつ嵌合することで有効な圧力空間を形成できる(図8(c))。
【0035】
図8(a)〜(d)の右図で示すように、これらの配置の際に形成される圧力空間の断面積Sは、内壁板20b及び遮蔽板30の組み合わせにより細い円弧状のものである。これは、従来の2重構造のパッドにおける環状の圧力空間よりも断面積が小さいものである。そして、断面積Sは、排水口11の断面積と同等以下であり、クリーナーの吸引効果を有効に利用して残水のない水処理が可能となる。
【0036】
この水処理パッド1を用いた壁面穿孔の作業の工程については、上記床面穿孔の場合と略同じである。また、メンテナンス(内部の清掃)についても同様である。
【0037】
実施例3(天井面穿孔)
本実施形態に係る水処理パッドは、天井面の穿孔にも適用できる。この場合の水処理パッド1の構成は、パッド本体10、下部円形プレート60を備える。尚、天井面穿孔においては、内壁板20a、20b、遮蔽板30は、使用する必要はないがこれらを備えていても良い。
【0038】
図9は、この水処理パッド1の断面図である。下部円形プレート60は、中心にコアドリルを挿入する孔を有し、その径はコアドリルの外径よりわずかに大きくなっている。具体的には、使用するコアドリルの外径の1.01〜1.2倍の径とするのが好ましい。この孔径が小さすぎると、コアドリルの回転を阻害するおそれがあり、大きすぎるとクリーナーの吸引が追い付かずに切削水が漏れるおそれがある。また、ガイド12a〜12fは、下部円形プレート60を支持するように、上面が平坦な凸部16が形成されている。
【0039】
天井面に対する穿孔も基本的には、床面穿孔と同様であり、水処理パッドを固定して、切削水を供給しつつコアドリルCを進行させる。図10は、この穿孔作業中の水処理パッド1の断面図である。コアドリルCの外径と下部円形プレート60の孔との隙間は、クリーナー吸引の際の吸気孔として作用するが、プレートの孔径を上記のようにすることで、隙間の断面積を排水口11の断面積と同等或いはそれ以下とすることができ、隙間から切削水を漏らすことなく排水口11からの排水を継続することができる。これにより、作業終了後の残水を防止し、穿孔面周囲を汚すことが無い。
【0040】
ところで、天井面穿孔においては、壁面穿孔等の場合と比べて、重力を有効に利用することができ、クリーナーを使用することなく水処理を行うことができる。この場合の水処理パッドの構成は、パッド本体10、上部円形プレート40、円形シール部材50(50a、50b、50c)、及び、下部円形プレート60を備える。
【0041】
図11は、この水処理パッドの断面図である。円形シール部材50(50a、50b、50c)は、パッド本体10の開口部と略等しい外径を有するゴムスポンジ製の円板であり、いずれもコアドリルを挿入可能な孔が開いている。この孔の径は、円形シール部材50a、50cについては、使用するコアドリルの外径と略同じ又はわずかに小さくなっている。また、円形シール部材50bの孔は、使用するコアドリルの外径よりも大きく、具体的には使用するコアドリルより1サイズ大きいコアドリルの外径と略等しくなるようにしている。円形シール部材50は、全体でパッド本体10の開口部の厚さと略等しい厚みを有する。そして、上部円形プレート40は、円形シール部材50を固定するためのプレートである。
【0042】
図12は、天井面の穿孔作業中の水処理パッド1の断面図である。コアドリルCは、上部プレート40及び下部プレート60に対してはフリーの状態にあるが、孔径の小さい円形シール部材50a、50cとは密着していることからパッド本体内部は密閉空間となる。一方、円形シール部材50bとコアドリルCの外径との間の隙間には、グリスを充填することにより、コアドリルCを潤滑してその回転を補助することができる。以上のようにして、パッド本体内部を密閉空間とすることで、隙間から切削水を漏らすことなく排水口11から排水させることができる。これにより、作業終了後の残水を防止し、穿孔面周囲を汚すことが無い。
【0043】
以上、本実施形態に係る水処理パッドとして、排水口付近に隆起部分(切削水溜り)を有するものについて説明したが、パッド本体の形状については、隆起部分を有しない円形のものであっても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る水処理パッドの圧力空間の断面形状を説明する図。
【図2】本実施形態に係る水処理パッドの各部材の構成を説明する図。
【図3】本実施形態に係る水処理パッドの背面図、断面図、断面拡大図。
【図4】排水口の接続状態を説明する断面図。
【図5】床面穿孔の際の水処理パッドの設置状態を説明する図。
【図6】本実施形態に係る水処理パッドの圧力空間の断面を説明する図。
【図7】壁面穿孔の際の水処理パッドの構成を説明する背面斜視図
【図8】水処理パッドの向きを変化させたときの内壁板の位置、圧力空間の断面を説明する図。
【図9】天井面穿孔の際の水処理パッドの構成を説明する断面図。
【図10】天井面穿孔の際の水処理パッドの設置状態を説明する断面図。
【図11】クリーナーを使用しない天井面穿孔の際の水処理パッドの構成を説明する断面図。
【図12】クリーナーを使用しない天井面穿孔の際の水処理パッドの設置状態を説明する断面図。
【図13】従来の水処理パッドの外観及び断面図。
【図14】2重構造を有する従来の水処理パッドの外観及び断面図。
【図15】従来の2重構造を有する水処理パッドにおける圧力空間の断面形状を説明する図。
【図16】従来の2重構造を有する水処理パッドを用いて壁面穿孔を行う際の設置状態を説明する図。
【符号の説明】
【0045】
1、100、200 水処理パッド
10 パッド本体10
11 排水口
12a〜12f ガイド
13 嵌合溝
14 環状シール部材
20(20a、20b) 内壁板
30 遮蔽板
40 上部円形プレート
50(50a〜50c) 円形シール部材
60 下部円形プレート
70 ジョイント
80 ソケット
、S、S 圧力空間の断面積
C コアドリル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアドリルによって切削水を供給しつつ穿孔を行う際、穿孔面に設置されるコアドリル用の水処理パッドにおいて、
前記コアドリルを包囲するように設置され、側面に排水口を有する略円筒形状のパッド本体と、
前記パッド本体の内部に着脱自在に取付けられ、取付け時に断面円弧形状となる内壁板と、を備え、
前記内壁板と前記パッド本体内面との間に、前記排水口と連通する圧力空間が形成されるようになっていることを特徴とするコアドリル用の水処理パッド。
【請求項2】
パッド本体の上部裏面に形成される内周上の少なくとも一箇所に設けられるガイドを備え、
前記ガイドには、内壁板が嵌合される嵌合溝が形成された請求項1記載のコアドリル用の水処理パッド。
【請求項3】
ガイドは、パッド本体の内面が形成する円の94/100〜98/100の直径を有する円周上に設置されたものである請求項2記載のコアドリル用の水処理パッド。
【請求項4】
内壁板は、ガイドが設置される円周長の1/12〜4/5の長さである請求項2又は請求項3記載のコアドリル用の水処理パッド。
【請求項5】
内壁板は、弾性材料からなる平板である請求項1〜請求項4のいずれかに記載のコアドリル用の水処理パッド。
【請求項6】
内壁板は、円弧形状に成形された板材である請求項1〜請求項4のいずれかに記載のコアドリル用の水処理パッド。
【請求項7】
上下方向で排水口と内壁板の下端部との間に設けられ、圧力空間の部分形状に略等しい形状を有する遮蔽板を備える請求項1〜請求項6のいずれかに記載のコアドリル用の水処理パッド。
【請求項8】
パッド本体の上部開口に装着可能であり、コアドリルの外径の1.01〜1.2倍の径の開口を有する円形プレートを少なくとも1枚備える請求項1〜請求項7のいずれかに記載のコアドリル用の水処理パッド。
【請求項9】
更に、パッド本体の上部開口と略等しい径を有し、コアドリルを挿入可能な孔を内部に有する弾性材料からなる円形シール部材を少なくとも一つと、
パッド本体の上面に取付け可能であり、前記円形シール部材を支持する上部円形プレートと、を備える請求項8に記載のコアドリル用の水処理パッド。
【請求項10】
パッド本体は、その横断面の形状において、排水口の設置位置で隆起部分を有するようになっている請求項1〜請求項9のいずれかに記載のコアドリル用の水処理パッド。
【請求項11】
パッド本体の下端縁に、弾性材料からなる環状シール部材を備える請求項1〜請求項10のいずれかに記載のコアドリル用の水処理パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−162121(P2008−162121A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354046(P2006−354046)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(593110580)株式会社シブヤ (18)
【Fターム(参考)】