説明

コアレス電気機械装置、移動体、ロボット及びコアレス電気機械装置の製造方法

【課題】電磁コイルの占積率を向上させてコアレス電気機械装置の効率を向上させる。
【解決手段】N(Nは2以上の整数)相の電磁コイルを有するコアレス電気機械装置の製造方法であり、(a)M回巻きの同じ形状のN個の電磁コイルの円筒片を準備する工程、(b)電磁コイルの前記コイルエンド領域を、他の電磁コイルのコイルエンド領域と干渉しないように円筒片の内周側または外周側に曲げる工程、(c)電磁コイルの有効コイル領域を、他の電磁コイルの有効コイル領域を形成する導体束により、隣り合う導体束が接するようにコイル集合体を形成する工程、(d)コイル集合体P個(Pは2以上の整数)を円筒の放射方向に重ならないように、かつ隣り合うコイル集合体が接するように並べて、円筒形状に配置された電磁コイルを形成する工程、(e)電磁コイルの外側にコイルバックヨークを配置する工程、(f)永久磁石を有する回転軸を配置する工程、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアレス電気機械装置、移動体、ロボット及びコアレス電気機械装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性のフィルム状シートに複数個の空芯のコイルを挟むことにより、コイル(電磁コイル)の占積率を向上させているスロットレスモーターが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−231204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、電磁コイルの芯にあたる部分に空間が残存しており、さらなる占積率を向上については、十分に検討されていなかった。
【0005】
本願発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決し、電磁コイルの占積率を向上させてコアレス電動モーター(コアレス電気機械装置)の効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
相対的に移動可能な円筒形状の第1と第2の部材を有するコアレス電気機械装置であって、前記第1の部材に配置された永久磁石と、前記第2の部材に配置されたα巻きされたM相(Mは2以上の整数)の空芯の電磁コイルと、前記第2の部材に配置されたコイルバックヨークと、を備え、前記電磁コイルは、前記第1の部材を前記第2の部材に対して相対的に回転移動させる力を生じさせる2つの有効コイル領域と、2つのコイルエンド領域とを有しており、前記M相の電磁コイルから各相1個ずつ選択された計M個の前記電磁コイルが、コイルサブ集合体を形成しており、前記コイルサブ集合体において、前記M相の電磁コイルの前記有効コイル領域の形状は、それぞれ同じ形状を有しており、前記永久磁石と前記コイルバックヨークとの間の円筒領域に、前記有効コイル領域が回転の軸方向と平行な方向に沿って伸びると共に、前記M相の電磁コイルの全体が前記円筒領域の円周方向に並んでおり、前記電磁コイルが有する2つの有効コイル領域の間の間隔は、前記電磁コイルの前記有効コイル領域における前記電磁コイルの幅の(M−1)倍の大きさであり、前記M相のうちの第1の相の電磁コイルは2つの有効コイル領域の間に、前記第1の相以外の(M−1)相の電磁コイルの2つの有効コイル領域のうちの一方の有効コイル領域を有しており、 前記M相の電磁コイルのうちの少なくとも(M−1)相の電磁コイルの前記コイルエンド領域は、他の相の電磁コイルのコイルエンド領域と干渉しないように前記円筒領域を含む円筒面の内周側または外周側に曲がっており、前記コイルサブ集合体は、隣り合うコイルサブ集合体と接するように、前記円筒領域の円周方向に並んでいる、コアレス電気機械装置。
この適用例によれば、第1の相の電磁コイルの有効コイル領域が他の相の電磁コイルの有効コイル領域を形成する導体束により隣接する導体束が接するように隙間無く埋められているコイル集合体が形成され、コイル集合体が重ならないように、かつ隣接するコイル集合体が接触するように前記コイル集合体を複数個並べられているので、電磁コイルの占積率を高めることができ、コアレス電気機械装置の効率を向上させることができる。
【0008】
[適用例2]
適用例1に記載のコアレス電気機械装置において、前記第1の相の電磁コイルの前記コイルエンド領域は、前記円筒面上に曲がらずに配置している、コアレス電気機械装置。
この適用例によれば、第1の相の電磁コイルのコイルエンド領域が、円筒面の内側方向または外側方向に曲がっておらず、円筒面に存在しても、第1の相のインダクタンスを他の(M−1)相の電磁コイルのインダクタンスと実質的に同一にできるので、M相の電磁コイルによるローレンツ力のバランスを良くしてコアレス電気機械装置の効率を良くすることが可能となる。
【0009】
[適用例3]
適用例1または2に記載のコアレス電気機械装置において、前記コイルエンド領域が前記円筒面の外側に曲がっている電磁コイルと、前記コイルエンド領域が前記円筒面の内側に曲がっている電磁コイルとを含んでいる、コアレス電気機械装置。
この適用例によれば、そのコイルエンド領域が前記円筒面の内側に曲がっている相の電磁コイルのインダクタンスと、そのコイルエンド領域が前記円筒面の外側に曲がっている相の電磁コイルのインダクタンスの差は小さいので、インダクタンスのバラツキを小さく抑えることが出来る。
【0010】
[適用例4]
適用例1〜3のいずれか一つの適用例に記載のコアレス電気機械装置において、前記Mの値が3以上の場合には、前記電磁コイルの前記コイルエンド領域は、相毎に異なる大きさで前記円筒領域の内周側または外周側に曲がっている、コアレス電気機械装置。
この適用例によれば、電磁コイルがぶつかることを抑制できる。
【0011】
[適用例5]
適用例1〜4のいずれか一つの適用例に記載のコアレス電気機械装置において、前記各相のコイル群に含まれる電磁コイルの前記コイルエンド領域の曲がる前の形状は、同一形状であり、前記電磁コイルは同じ電気抵抗値を有している、コアレス電気機械装置。
この適用例によれば、電磁コイルは、コイルエンド領域が曲げられていない平らな状態では同一形状、すなわち、同一の電気抵抗、同一のインダクタンスであり、その電磁コイルにつき、インダクタンスの値に影響を与えにくいコイルエンドの部分を曲げて形成されているので、曲がった後の電磁コイルの電気抵抗、インダクタンスは実質的に同一である。その結果、電磁コイルによるローレンツ力にバランスを良くしてコアレス電気機械装置の効率を良くすることが可能となる。
【0012】
[適用例6]
適用例1〜5のいずれか一つの適用例に記載のコアレス電気機械装置において、前記電磁コイルを形成している導体の材料が同じ材料であり、前記導体の直径が同じ太さであり、前記電磁コイルの前記導体の巻数が同じであり、前記電磁コイルは同じ電気抵抗値を有している、コアレス電気機械装置。
この適用例によれば、電磁コイルを形成している導体の材料が同じ材料であり、導体の直径が同じ太さであり、電磁コイルの導体の巻数が同じであるので、電磁コイルのインダクタンスを同じにできる。
【0013】
[適用例7]
適用例1〜6のいずれか一つの適用例に記載のコアレス電気機械装置を備える移動体。
【0014】
[適用例8]
適用例1〜6のいずれか一つの適用例に記載のコアレス電気機械装置を備えるロボット。
【0015】
[適用例9]
M(Mは2以上の整数)相のα巻きされた電磁コイルを有するコアレス電気機械装置の製造方法であって、(a)導体をN回(Nは2以上の整数)巻いて、前記電磁コイルの有効コイル領域がそれぞれ同じ形状であり、前記電磁コイルの電気抵抗の値が同じ大きさであるM個のα巻きされた前記電磁コイルの円筒片を準備する工程と、(b)前記M個の電磁コイルのうちの少なくとも(M−1)個の電磁コイルの前記コイルエンド領域を、他の電磁コイルのコイルエンド領域と干渉しないように前記円筒片の内周側または外周側に曲げる工程と、(c)前記M相の電磁コイルの円筒片から各相1個、合計M個の電磁コイルの円筒片を用いて、第1の相の電磁コイルは2つの有効コイル領域の間に前記第1の相以外の(M−1)相の電磁コイルの2つの有効コイル領域のうちの一方の有効コイル領域を含む構造を有するコイルサブ集合体を形成する工程と、(d)前記コイルサブ集合体P個(Pは2以上の整数)を隣り合うコイルサブ集合体が接するように円筒領域の円周方向に並べて、円筒形状に配置された電磁コイルを形成する工程と、(e)前記円筒形状に配置された電磁コイルの円筒領域の外周側にコイルバックヨークを配置する工程と、(f)前記円筒形状に配置された電磁コイルの円筒領域の内周側に永久磁石を有する回転軸を配置する工程と、 を備える、コアレス電気機械装置の製造方法。
この適用例によれば、コイルサブ集合体を形成したのち、このコイルサブ集合体を円筒形状に配置して電磁コイルを形成するので、コアレス電気機械装置を容易に製造することができる。
【0016】
[適用例10]
M(Mは2以上の整数)相の電磁コイルを有するコアレス電気機械装置の製造方法であって、(a)導体をN(Nは2以上の整数)回巻いて、前記電磁コイルの有効コイル領域がそれぞれ同じ形状であり、前記電磁コイルの電気抵抗の値が同じ大きさであるP個(Pは2以上の整数)の前記電磁コイルの円筒片を相毎に準備する工程と、(b)前記M相の電磁コイルのうちの少なくとも(M−1)相の電磁コイルの前記コイルエンド領域を、他の相の電磁コイルのコイルエンド領域と干渉しないように前記円筒片の内周側または外周側に曲げる工程と、(c)前記M相の電磁コイルの円筒片から各相1個、合計M個の電磁コイルの円筒片を用いて、第1の相の電磁コイルは2つの有効コイル領域の間に前記第1の相以外の(M−1)相の電磁コイルの2つの有効コイル領域のうちの一方の有効コイル領域を含む構造を有するコイルサブ集合体を形成する工程と、(d)前記円筒形状のコイルバックヨークを準備する工程と、(e)前記コイルバックヨークの内周側に前記コイル集合体P個を隣り合うコイルサブ集合体が接するように円筒領域の円周方向に並べて、円筒形状に配置された電磁コイルを形成する工程と、(f)前記円筒形状に配置された電磁コイルの円筒領域の内周側に永久磁石を有する回転軸を配置する工程と、を備える、コアレス電気機械装置の製造方法。
この適用例によれば、コイルバックヨークの内側からコイルサブ集合体を並べるので、分割構造でないコイルバックヨークを用いることが出来る。
【0017】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、モーターや発電装置などのコアレス電気機械装置のほか、それを用いた移動体、ロボット等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施例を示す説明図である。
【図2】永久磁石表面とコイルバックヨークの間隔Lと磁束密度の関係を示す説明図である。
【図3A】図1(B)において、隣接する同相の電磁コイルの境界部に破線による印Xを付けた図である。
【図3B】コアレスモーターの電気角と、電磁コイルの誘起電圧、磁気センサー300(図1)が検知する磁束密度を示すグラフである。
【図4A】電磁コイルの形成工程を示す説明図(その1)である。
【図4B】電磁コイルの形成工程を示す説明図(その2)である。
【図4C】電磁コイルの形成工程を示す説明図(その3)である。
【図4D】電磁コイル100A、100Bの重ね合わせ工程を示す説明図である。
【図4E】電磁コイル100A、100Bを重ね合わせた状態を示す説明図である。
【図5】第1の実施例における電磁コイルの配線を模式的に示す説明図である。
【図6】第2の実施例を示す説明図である。
【図7A】図6(B)において、図3Aにおいて印Xを付けた位置と対応する位置に破線による印Xを付けた図である。
【図7B】コアレスモーターの電気角と、電磁コイルの誘起電圧、磁気センサー300(図6)が検知する磁束密度を示すグラフである。
【図8】第2の実施例における電磁コイルの配線を模式的に示す説明図である。
【図9A】図3Aの印Xが付された部分を拡大して示す説明図である。
【図9B】図7Aの印Xが付された部分を拡大して示す説明図である。
【図10】第1第2の実施例のコアレスモーターの特性をコア付モーター従来のコアレスモーターの特性と比較する説明図である。
【図11A】従来のコアレスモーターにおける電磁コイルの電気抵抗とインダクタンスを示す説明図である。
【図11B】第1の実施例のコアレスモーターにおける電気抵抗とインダクタンスを示す説明図である。
【図12A】電磁コイル100Aのフォーミング工程を説明する説明図である。
【図12B】電磁コイル100Bのフォーミング工程を説明する説明図である。
【図13A】電磁コイル100Aへの絶縁膜層形成工程を示す説明図である。
【図13B】電磁コイル100Bへの絶縁膜層形成工程を示す説明図である。
【図14】電磁コイル100Aと100Bの組み立て工程を示す説明図である。
【図15】電磁コイルアッセンブリーの形成工程の一部を示す説明図(その1)である。
【図16】電磁コイルアッセンブリーの形成工程の一部を示す説明図(その2)である。
【図17】電磁コイルアッセンブリーの形成工程の一部を示す説明図(その3)である。
【図18】電磁コイルアッセンブリーの形成工程の一部を示す説明図(その4)である。
【図19】電磁コイルアッセンブリーの形成工程の一部を示す説明図(その5)である。
【図20】電磁コイルアッセンブリーの形成を別の工程で行う場合の例を示す説明図(その1)である。
【図21】電磁コイルアッセンブリーの形成を別の工程で行う場合の例を示す説明図(その2)である。
【図22】電磁コイルアッセンブリーの形成を別の工程で行う場合の例を示す説明図(その3)である。
【図23】電磁コイルアッセンブリーの形成を別の工程で行う場合の例を示す説明図(その4)である。
【図24】電磁コイルアッセンブリーの形成工程を別の工程で行う場合の例を示す説明図(その5)である。
【図25】電磁コイルアッセンブリーの形成工程をさらに別の工程で行う場合の電磁コイルサブアッセンブリー155を示す説明図である。
【図26】電磁コイルアッセンブリーの形成をさらに別の工程で行う場合の例を示す説明図(その1)である。
【図27】電磁コイルアッセンブリーの形成をさらに別の工程で行う場合の例を示す説明図(その2)である。
【図28】電磁コイルアッセンブリーの形成をさらに別の工程で行う場合の例を示す説明図(その3)である。
【図29】電磁コイルアッセンブリーの形成をさらに別の工程で行う場合の例を示す説明図(その4)である。
【図30】第3の実施例を示す説明図である。
【図31】コアレスモーターの電気角と電磁コイルの誘起電圧磁気センサー300(図30(A))が検知する磁束密度を示すグラフである。
【図32A】第3の実施例における電磁コイルの配線を模式的に示す説明図である。
【図32B】第3の実施例における電磁コイルを模式的に示す説明図である。
【図32C】第3の実施例の変形例を示す説明図である。
【図32D】第4の実施例を示す説明図である。
【図32E】第4の実施例を回転軸230と垂直な平面で切ったときの断面の構造を模式的に示す説明図である。
【図32F】第4の実施例を回転軸230と平行な面で切ったときの断面を示す説明図である。
【図33】本発明の変形例によるモーター/発電機を利用した移動体の一例としての電動自転車(電動アシスト自転車)を示す説明図である。
【図34】本発明の変形例によるモーターを利用したロボットの一例を示す説明図である。
【図35】本発明の変形例によるモーターを利用した双腕7軸ロボットの一例を示す説明図である。
【図36】本発明の変形例によるモーターを利用した鉄道車両を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施例]
図1は、第1の実施例を示す説明図である。図1(A)は、コアレスモーター10を回転軸230と平行な切断線(図1(B)のA−A)で切ったときの断面を断面と垂直な方向から見たときの図を模式的に示し、図1(B)は、コアレスモーター10を回転軸230と垂直な切断線(図1(A)のB−B)で切ったときの断面を断面と垂直な方向から見たときの図を模式的に示している。コアレスモーター10は、略円筒状のステーター15が外側に配置され、略円筒状のローター20が内側に配置されたラジアルギャップ構造のインナーローター型モーターである。ステーター15は、ケーシング110の内周に沿って配置されたコイルバックヨーク115と、コイルバックヨーク115の内側に配列された複数のコアレスの電磁コイル100A、100Bと、を有している。コイルバックヨーク115は、磁性体材料で形成されており、略円筒形状を有している。本実施例では、電磁コイル100A、100Bを区別しない場合には、単に電磁コイル100と呼ぶ。電磁コイル100Aと、電磁コイル100Bとは、樹脂130によりモールドされて、同一の円筒面に配置されている。なお、コイルバックヨーク115についても電磁コイル100A、100Bとともに樹脂130によりモールドされているが、コイルバックヨーク115は、電磁コイル100A、100Bの外周側に配置されている。電磁コイル100Aと、100Bの回転軸230に沿った方向の長さは、コイルバックヨーク115の回転軸230に沿った方向の長さよりも長くなっている。すなわち、図1(A)において、電磁コイル100A、100Bの左右方向の端部は、コイルバックヨーク115と重ならない。本実施例では、コイルバックヨーク115と重なっている領域を有効コイル領域と呼び、コイルバックヨーク115と重ならない領域をコイルエンド領域と呼ぶ。本実施例では、電磁コイル100Bの有効コイル領域とコイルエンド領域、および、電磁コイル100Aの有効コイル領域は、同一の円筒領域にあるが、電磁コイル100Aのコイルエンド領域は、当該円筒面から外側に曲がっている。
【0020】
ステーター15には、さらに、ローター20の位相を検出する位置センサーとしての磁気センサー300が、配置されている。磁気センサー300として、例えばホール素子を有する信号増幅器回路や温度補償回路を有したホールセンサーICを用いることができる。磁気センサー300は、略正弦波のセンサー信号を生成する。このセンサー信号は、電磁コイル100を駆動するための駆動信号を生成するために用いられる。したがって、磁気センサー300は、電磁コイル100A、100Bに対応して2つ設けられていることが好ましい。磁気センサー300は、回路基板310の上に固定されており、回路基板310は、ケーシング110に固定されている。なお、図1においては、磁気センサー300は1つのみ図示されているが、コアレスモーター10は、電磁コイル100A、100Bのそれぞれに対応して、磁気センサーを2つ備えていてもよい。
【0021】
ローター20は、中心に回転軸230を有し、その外周に複数の永久磁石200を有している。各永久磁石200は、回転軸230の中心から外部に向かう径方向(放射方向)に沿って磁化されている。なお、図1(B)において永久磁石200に付したN、Sの文字は、永久磁石200の電磁コイル100A、100B側の極性を示している。永久磁石200と電磁コイル100とは、ローター20とステーター15の対向する円筒面に対向して配置されている。ここで、永久磁石200の回転軸230に沿った方向の長さは、コイルバックヨーク115の回転軸230に沿った方向の長さと同じ長さである。すなわち、永久磁石200と、コイルバックヨーク115にはさまれた領域と、電磁コイル100Aまたは100Bとが重なる領域が有効コイル領域となる。ここで、永久磁石200の表面からコイルバックヨーク115までの間隔を距離Lと呼ぶ。永久磁石200の回転軸230方向の両端には、磁石バックヨーク215が配置されている。磁石バックヨーク215は、永久磁石200の磁束が回転軸230に沿った方向に漏れるのを抑制する。回転軸230は、ケーシング110の軸受け240で支持されている。本実施例では、ケーシング110の内側に、波バネ座金260を備えている。この波バネ座金260は、永久磁石200の位置決めを行っている。但し、波バネ座金260は別の構成部品で置き換えることも可能である。
【0022】
図2は、永久磁石表面とコイルバックヨークの間隔Lと磁束密度の関係を示す説明図である。永久磁石表面とコイルバックヨークの間隔Lを変えない場合、永久磁石200の表面からの距離Lxが大きくなると、磁束密度が小さくなる。また、磁束密度を測る測定位置(永久磁石からの距離Lx)を一定とした場合、永久磁石200とコイルバックヨーク115との距離Lが小さいほど、磁束密度が大きいことがわかる。したがって、電磁コイル100の厚さが薄くなるように電磁コイル100を形成し、永久磁石200と、コイルバックヨーク115との間の距離Lを小さく形成することにより、電磁コイル100が受ける磁束密度を大きくし、コアレスモーター10の効率を向上させることができる。
【0023】
図3Aは、図1(B)において、隣り合う同相の電磁コイルの境界部に破線による印Xを付けた図である。なお、隣り合う電磁コイル100は接触していることが好ましいが、コイル巻技術上の問題から、2つの電磁コイル100A、あるいは2つの電磁コイル100Bの間に、僅かに隙間が生じてしまう。図3Aでは、この隣接する電磁コイル100間の隙間を強調して図示している点が図1と異なる。このように、コイル巻技術上の問題から、2つの電磁コイル100A、あるいは2つの電磁コイル100Bの間に、僅かに隙間が生じている。この隙間に、電気角上での永久磁石200の極中心点(図3Bによるπ/2 or 3π/2)と合致したところが、電磁コイル100Aまたは電磁コイル100Bに流れた最大電流により最大力Fが発生する。そのため、この隙間には電磁コイルの高占積率化が要求される。ここで、占積率とは、(電磁コイルの導体の断面積)/(電磁コイルが配置される円筒領域の断面積)をいう。2つの電磁コイル100A間あるいは2つの電磁コイル100B間に隙間が生じていると、かかる隙間には電磁コイルの導体が存在しないので、占積率が100%から下がることになる。ただし、後で説明するように、電磁コイル100Aの2つの有効コイル領域の間に2つの電磁コイル100Bの有効コイル領域が収まっているので、この有効コイル領域においてはかなりの高占積率を維持することができる。
【0024】
図3Bは、コアレスモーターの電気角と、電磁コイルの誘起電圧、磁気センサー300(図1)が検知する磁束密度を示すグラフである。図3Bにおいて、2つの永久磁石200境界部と、2つの電磁コイル100Aの境界が一致するとき(図3Aの状態)の電気角をπ/2としている。磁気センサー300が検知する磁束密度は、電気角がπ/2(3π/2)のとき、最大となり、電気角が0(π、2π)のとき、最小となる。また、電磁コイル100Bの誘起電圧は、電気角がπ/2(3π/2)のとき、最大となり、電気角が0(π、2π)のとき、ゼロとなる。一方、電磁コイル100Aの誘起電圧は、電気角がπ/2(3π/2)のとき、ゼロとなり、電気角が0(π、2π)のとき、最大となる。
【0025】
図4Aは、電磁コイルの形成工程を示す説明図(その1)である。電磁コイル100A、100Bの有効コイル領域が配置される円筒面からコイルエンド領域を外周側あるいは内周側に曲げる前までは、電磁コイル100A、100Bを同じ工程で形成することができる。そこで、ここでは電磁コイル100Aを例にとって説明する。まず、図4A(A)に示す工程では、電磁コイル用配線105を準備し、α巻きとなるように電磁コイル用配線105のほぼ真ん中から両端側をそれぞれ外側方向へ巻いていって一本の電磁コイル用配線105から2つのコイル部分100Aaと100Abを形成する。2つのコイル部分100Aaと100Abの内周は、接続部100Acによりたがいに接続されている。ここで、コイル部分100Aa、100Abを重ねたときに、接続部100Acをコイル部分100Aaの内周に沿って配線できるような長さとなるように、2つのコイル部分100Aaと100Abを巻き始めることが好ましい。なお。接続部100Acの具体的な長さは、2つのコイル部分100Aaと100Abにおける接続部100Acの引き出し位置により異なる。例えば、図4A(A)に示す例では、コイル部分100Aaあるいはコイル部分100Abの内周の長さの整数倍の長さであることが好ましい。
【0026】
次に、図4A(B)に示す工程では、2つのコイル部分100Aaと100Abを対面で重ね合わせて電磁コイル100Aを形成する。このとき、接続部100Acが余るので、接続部100Acをコイル部分100Aaの内周に沿うように配線する。上述のように、接続部100Acの長さがコイル部分100Aaあるいはコイル部分100Abの内周の長さの整数倍の長さであると、接続部100Acをコイル部分100Aaの内周に沿って過不足無く配線することができる。本実施例では、電磁コイル用配線105を用いて2つのコイル部分100Aa、100Abを形成し、次いで、2つのコイル部分100Aaと100Abを対面で重ね合わせてα巻きされた電磁コイル100Aを形成している。このように形成すれば、電磁コイル100Aから外部に引き出される電磁コイル用配線105は、電磁コイル100Aの外周から引き出される。従って、電磁コイル100Aの有効コイル領域やコイルエンド領域が引き出される電磁コイル用配線105、と交わることがないので、電磁コイル用配線105に生じる磁束の影響を受けにくくすることができる。電磁コイル100Bについても同様に形成することができる。なお、電磁コイル100Aと電磁コイル100Bの形成に用いられる電磁コイル用配線105として、線の材料、径、比抵抗が同じ値のものを用いることが好ましい。電磁コイル100Aの電気抵抗と電磁コイル100Bの電気抵抗を同じ値にすることが出来る。
【0027】
図4Bは、電磁コイルの形成工程を示す説明図(その2)である。図4B(A)は、電磁コイル100Aを示し、図4B(B)は電磁コイル100Bを示している。図4B(A)の左下の図面は、左上の図面のA−A切断線で切った断面を見た図であり、図4B(A)の右の図面は、左上の図面のB−B切断線で切った断面を見た図である。図4B(B)の左下の図面は、左上の図面のC−C切断線で切った断面を見た図であり、図4B(B)の右の図面は、左上の図面のD−D切断線で切った断面を見た図である。ここに示す工程では、電磁コイル100Aについては、図4B(A)に示すようにコイルエンド領域100ACEを円筒領域の外周側に曲げ、電磁コイル100Bについては、図4B(B)に示すようにコイルエンド領域100BCEを曲げていない。なお、図4B(A)、(B)に示す工程においては電磁コイル100Aを円筒領域に沿うように曲げる工程と、コイルエンド領域100ACEを円筒領域の外周側に曲げる工程を同時に行っても良い。
【0028】
図4B(A)に示すように、電磁コイル100Aについては、全体が平面形状から円筒面に沿って曲げられているとともに、電磁コイル100Aのコイルエンド領域は円筒面から外側方向に曲げられている。一方、図4B(B)に示すように、電磁コイル100Bについては、全体が平面形状から円筒面に沿って曲げられているが、電磁コイル100Bのコイルエンド領域は円筒面から外側方向に曲げられていない。なお、形状を変えても電気抵抗は変わらないので、電磁コイル100Aの電気抵抗と電磁コイル100Bの電気抵抗は同じ値である。一方、電磁コイル100Aと電磁コイル100Bとは、有効コイル領域の形状は同じ形状であるが、コイルエンド領域の形状が異なる。すなわち、インダクタンスのうち、有効コイル領域に起因するインダクタンスは同じであるが、コイルエンド領域に起因するインダクタンスは、異なる。すなわち、電磁コイル100Aのインダクタンスと電磁コイル100Bのインダクタンスとは、若干異なることになる。一般的には、コイルエンド領域を曲げると、電磁コイル100Aの磁束方向の面積sが若干小さくなるので、インダクタンスは若干小さくなる。たとえば、コイルのインダクタンスLは、以下の式で示される。
【数1】

ここで、kは長岡係数であり、μは透磁率、nは電磁コイルの巻数、sは電磁コイルの断面積、lは電磁コイルの長さである。
【0029】
図4Cは、電磁コイルの形成工程を示す説明図(その3)である。図4Cに示す工程では、電磁コイル100A、100Bの表面に絶縁膜101を形成する。電磁コイル100A、100Bを形成する電磁コイル用配線105(図4A参照)は、絶縁被覆(図示せず)を有している。図4B(A)に示す工程では、加熱しながら圧縮するので、絶縁皮膜が細り、電磁コイル100Aあるいは100Bの耐圧が低くなる。そのため、電磁コイル100A、100Bの表面に絶縁膜101を形成することにより、電磁コイル100A、100Bの耐圧を向上させる。なお、電磁コイル100Aあるいは100Bの導体(配線)の電気抵抗は極めて小さいため、1ターン毎の電圧降下は極めて小さい。したがって、ターン毎の配線の電圧は、ほぼ同じ電圧であり、各ターンを形成する配線間の耐圧が低くなっても、電流リークによる問題が生じにくい。したがって、電磁コイル用配線105の被覆を薄くして占積率を向上させることが好ましく、さらに、電磁コイル100A、100Bの表面に絶縁膜101を設けることにより、電磁コイル100A、100Bの表面の耐圧を向上させることが好ましい。
【0030】
図4Dは、電磁コイル100A、100Bの重ね合わせ工程を示す説明図である。図4D(A)は、回転軸230(図1)に沿った方向から見た図を模式的に示している。図4D(B)は、回転軸230の放射方向外側から見た図を模式的に示している。なお、電磁コイル100Aと100Bとは重なるが、図4D(B)では見やすくするために、重ねずに表示している。この工程では、電磁コイル100Bの2つの有効コイル領域の間の2つの電磁コイル100Aの各1つの有効コイル領域が入るように、電磁コイル100Aを放射方向外側から重ねるように配置する。コイルガイド270(図2(A))を用いて電磁コイル100B、100Aの位置合わせを行うことが好ましい。
【0031】
図4Eは、電磁コイル100A、100Bを重ね合わせた状態を示す説明図である。図4E(A)はコイルバックヨーク側から見た平面図であり、図4E(B)は模式的に示した斜視図である。なお、図4E(A)では、コイルバックヨーク115を記載し、図4E(B)では、電磁コイル100A、100Bの形状を見やすくするために、コイルバックヨーク115を省略し、電磁コイル100Aを1つと電磁コイル100Bを2つのみ図示している。なお、実際の電磁コイル100A、100Bは円筒の側面に沿って配置されているため、コイルエンド領域は、曲面になるが、図4E(B)では模式的に平面として表している。図4E(A)、図4E(B)に示すように、電磁コイル100Aの有効コイル領域の2つの導体の束の間に、2つの電磁コイル100Bの有効コイル領域の導体の束が収まっている。ここで、電磁コイル100は、導体を複数ターン(例えばM巻)巻くことにより形成されており、導体の束は、M本の導体を束ねたものを意味している。また、電磁コイル100Bの有効コイル領域の2つの導体の束の間に、2つの電磁コイル100Aの有効コイル領域の導体の束が収まり(図4E(A)参照、なお、図4E(B)では1つの電磁コイル100Aのみ記載)、電磁コイル100Aと100Bは、干渉しない。また、電磁コイル100Aのコイルエンド領域は、円筒領域からコイルバックヨーク115側(円筒領域の外周側)に曲げられており、円筒領域から曲げられていない電磁コイル100Bのコイルエンド領域と干渉しない。このように、電磁コイル100Aの有効コイル領域と電磁コイル100Bの有効コイル領域とを同じ円筒領域上、一方の電磁コイルの2つの導体の束に間に他の2つの電磁コイルの導体に束を配置するとともに、電磁コイル100Aのコイルエンド領域を外周側に曲げ、電磁コイル100Bのコイルエンド領域を曲げないことにより、電磁コイル100Aと100Bとを、互いにぶつからないように円筒領域に配置することができる。また、本実施例では、電磁コイル100A、100Bの導体の束の太さφ1(電磁コイル100Aの有効コイル領域が配置される円筒領域に沿った方向の太さ)と、有効コイル領域におけるコイル束の間隔(電磁コイル100Aの有効コイル領域が配置される円筒領域に沿った方向の間隔)L2との間にはL2≒2×φ1の関係を有している。すなわち、電磁コイル100A、100Bが配置される円筒領域は、電磁コイル100A、100Bの導体の束によりほぼ占められているので、電磁コイルの占積率を向上させ、コアレスモーター10(図1)の効率を向上させることができる。
【0032】
次に、電磁コイル100Aと100Bの、電気抵抗とインダクタンスに起因する効果について説明する。図4Bで説明したように、電磁コイル100Aの電気抵抗と電磁コイル100Bの電気抵抗は、同じ値である。コイルバックヨーク115がないときのインダクタンスについては、図4Bで説明したように、有効コイル領域に起因するインダクタンスは同じであるが、コイルエンド領域に起因するインダクタンスは、異なっており、電磁コイル100Aのインダクタンスと電磁コイル100Bのインダクタンスとは、若干異なっている。しかし、本実施例にように、コイルバックヨーク115と電磁コイル100Aとが重なった状態では、電磁コイル100Aのインダクタンスは、コイルバックヨーク115と電磁コイル100Aとが重なった部分、すなわち有効コイル領域のインダクタンスが支配的となる。電磁コイル100Bについても同様である。ここで、電磁コイル100Aの有効コイル領域と、電磁コイル100Bの有効コイル領域は、同じ形状であるので、電磁コイル100Aのインダクタンスと電磁コイル100Bのインダクタンスとは、ほぼ同じ値となる。したがって、電磁コイル100Aと永久磁石200との間のローレンツ力と、電磁コイル100Bと永久磁石200との間のローレンツ力とは同じ大きさとなるので、両者のバランスが取れる結果、電動モーター10の効率を向上させることができる。
【0033】
図5は、第1の実施例における電磁コイルの配線を模式的に示す説明図である。図5で明らかなように、電磁コイル100Aの巻線方向は、交互に時計回り、半時計回りとなっている。電磁コイル100Bについても同様である。
【0034】
以上、本実施例のコアレスモーター10は、永久磁石200と、2相のコアレス(空芯)の電磁コイル100A、100Bと、コイルバックヨーク115とを備えている。各相の電磁コイル100A、100Bはそれぞれ、有効コイル領域と、コイルエンド領域とを有している。そして、各相の電磁コイル100A、100B有効コイル領域は、同じ形状を有している。各相の電磁コイル100A、100Bの有効コイル領域は、永久磁石200とコイルバックヨーク115との間の円筒面に配置されている。電磁コイル100Aのコイルエンド領域は、円筒面の外側方向に曲げられている。さらに、各相の電磁コイル100A、100Bは同じ電気抵抗値を有している。また、コイルバックヨーク115は、各相の電磁コイル100A、100Bの有効コイル領域を覆い、コイルエンド領域を覆っていないことから、各相の電磁コイル100A、100Bのインダクタンスは実質的に同じ値である。したがって、電磁コイル100Aと永久磁石200との間のローレンツ力と、電磁コイル100Bと永久磁石200との間のローレンツ力とは同じ大きさとなるので、両者のバランスが取れる結果、コアレスモーター10の効率を向上させることができる。
【0035】
さらに、図4A〜図4Eで説明したように、各相の電磁コイル100A、100Bは、平面上で同一形状である電磁コイル100A、100Bを円筒面に沿って曲げ、A相の電磁コイル100Aのコイルエンド領域を、円筒面の外側方向に曲げることにより形成されているので、各相の電磁コイル100A、100Bは同じ電気抵抗値にすることが容易である。
【0036】
また、各相の電磁コイル100A、100Bが有する2つの有効コイル領域のコイルを形成する導体の束の間の間隔L2は、電磁コイル100A、100Bの有効コイル領域における導体のコイルの束の太さφ1の2倍の大きさであるので、二相コイルを互いの間に効率よく配置することで電磁コイル100A、100Bの占積率を大きくでき、コアレスモーター10の効率を向上させることができる。
【0037】
[第2の実施例]
上述したように、第1の実施例では、電磁コイル100A、100Bの占積率を大きくでき、コアレスモーター10の効率を向上させることができた。しかし、電磁コイル100の結線がやや複雑であり、製造時に、電磁コイル100A、100Bを1個ずつ組み合わせて結線しており、製造工程がやや複雑になるおそれがあった。第2の実施例では、電磁コイル100A、100Bの占積率のさらなる向上と、結線の容易化を実現し、製造工程の簡易化を実現する。
【0038】
図6は、第2の実施例を示す説明図である。図6(A)は、コアレスモーター10を回転軸230と平行な切断線(図6(B)のA−A)で切ったときの断面を断面と垂直な方向から見たときの図を模式的に示し、図6(B)は、コアレスモーター10を回転軸230と垂直な切断線(図6(A)のB−B)で切ったときの断面を断面と垂直な方向から見たときの図を模式的に示している。第1の実施例と比較すると、第2の実施例では、電磁コイル100A、100Bの数は半分となっている。また、第1の実施例では、図3Aの印Xで示したところのように、同相の電磁コイル同士が接触するところがあるが、第2の実施例では、同相の電磁コイル同士が接触するところが無い点が異なる。すなわち、第1と第2の実施例は、電磁コイル100A、100Bの巻き方が異なっている。なお、第1の実施例では、電磁コイル100Aのコイルエンド領域を外側(放射方向)に曲げ、第2の実施例では、電磁コイル100Bのコイルエンド領域を外側(放射方向)に曲げており、曲げる電磁コイル100の相が、A相、B相で異なっている。しかし、コアレスモーター10では、一般に、A相の電磁コイル100AとB相の電磁コイル100Bとは、交換可能である。
【0039】
図7Aは、図6(B)において、図3Aにおいて印Xを付けた位置と対応する位置に破線による印Xを付けた図である。図3Aでは、印Xが付された位置は同相の2つの電磁コイル(例えば電磁コイル100Aと100A)が隣り合う位置であるが、図7では、印Xが付された位置は、電磁コイル100A、100Bのコイル束の中央部である。すなわち、図7Aに示す例では、印Xを付けた位置は、1つの電磁コイルであるので、隙間が生じていない。すなわち、隙間がない分、第2の実施例は、第1の実施例よりも電気角上で最大力Fを発生させる領域での電磁コイル100の占積率を向上させることが出来る。
【0040】
図7Bは、コアレスモーターの電気角と、電磁コイルの誘起電圧、磁気センサー300(図6)が検知する磁束密度を示すグラフである。図7Bにおいて、2つの永久磁石200境界部と、2つの電磁コイル100A、100Bの境界が一致するときの位相を0とし、2つの永久磁石200境界部が、各電磁コイル100A、100Bのコイル束の中央と一致するとき(図7Aの状態)の電気角をπ/2としている。磁気センサー300が検知する磁束密度は、電気角がπ/2(3π/2)のとき、最大となり、電気角が0(π、2π)のとき、最小となる。また、電磁コイル100Bの誘起電圧は、電気角がπ/2(3π/2)のとき、最大となり、電気角が0(π、2π)のとき、ゼロとなる。一方、電磁コイル100Aの誘起電圧は、電気角がπ/2(3π/2)のとき、ゼロとなり、電気角が0(π、2π)のとき、最大となる。
【0041】
図8は、第2の実施例における電磁コイルの配線を模式的に示す説明図である。図5(第1の実施例)と比較すれば明らかなように、第2の実施例における電磁コイル100A、100Bの結線は、第1の実施例と比較して簡単になっている。すなわち、第1の実施例では、電磁コイル100A、100Bを複数のコイルアッセンブリー(コイル集合体)に分割することは困難であるが、第2の実施例では、電磁コイル100A、100Bは容易に複数の(本実施例では3つの)電磁コイルサブアッセンブリー150に分割することが出来る。すなわち、第2の実施例では、電磁コイルサブアッセンブリー150を作成し、電磁コイルサブアッセンブリー150を組み合わせることにより、容易に電磁コイルアッセンブリー103を形成することが可能となる。なお、本実施例では、電磁コイル100A、100Bを円筒形に組み合わせたものを電磁コイルアッセンブリー103と呼ぶ。なお、後述する製造工程においては、電磁コイル100Aと100Bとを、コイルバックヨーク115と共に樹脂130でモールドする。この電磁コイル100Aと100Bとが、コイルバックヨーク115と共に樹脂130でモールドされたものについては、コイルバックヨーク付電磁コイルアッセンブリーと呼ぶ。
【0042】
図9Aは、図3Aの印Xが付された部分を拡大して示す説明図である。図9Bは、図7Aの印Xが付された部分を拡大して示す説明図である。電磁コイル100Aは、外縁に絶縁薄膜層101を有している。図9Aに示す第1の実施例では、2つの電磁コイル100A、100Aが接触する部分において、絶縁薄膜層101Yが存在している。一方、図9Bに示す第2の実施例では、印Xが付された部分は1つの電磁コイルで形成されているため、図9Aにおいて絶縁薄膜層101Yが存在している部分には、絶縁薄膜層101Y形成されない。絶縁薄膜層101Yは導体ではないので、占積率を低下させる。逆に言えば、第2の実施例の方が、第1の実施例よりも占積率を向上させることができる。
【0043】
図10は、第1、第2の実施例のコアレスモーターの特性を、コア付モーター、従来のコアレスモーターの特性と比較する説明図である。ここで、図中の(I)は第1の実施例を示し、(II)は、第2の実施例を示している。また、従来のコアレスモーターとは、A相の電磁コイル100Aが内側の(永久磁石200に近い)円筒面に配置され、B相の電磁コイル100B外側の(コイルバックヨーク115に近い)円筒面に配置されているモーターである。なお、電磁コイル100Aが配置される円筒面と、電磁コイル100Bが配置される円筒面は異なっている。ほぼ同体積、同重量のコア付モーター、従来のコアレスモーターと比較すると、第1、第2の実施例は、いずれも始動トルクが大きくなっている。ここで、コア付モーターの始動トルク100%とすると、第1の実施例では、195%、第2の実施例では、205%と、約2倍の大きさとなっている。また、第1、第2の実施例を比較すると、第2の実施例の始動トルクの方が第1の実施例の始動トルクよりも少し大きい。これは、図9A、図9Bで示したように、第2の実施例では、絶縁薄膜層101Yが存在しないため、第1の実施例よりも占積率が少し高いことが理由と思われる。
【0044】
図11Aは、比較例のコアレスモーターにおける電磁コイルの電気抵抗とインダクタンスを示す説明図である。比較例(従来)のコアレスモーターでは、電磁コイル100A、100Bが配置される円筒面が異なるため、電磁コイル100A、100Bの全ての電気特性を同じにすることが難しい。例えば、図11Aに示しように電磁コイル100Aの電気抵抗と電磁コイル100Bの電気抵抗とをほぼ同じにしても、電磁コイル100Aとコイルバックヨーク115との間の距離と、電磁コイル100Bとコイルバックヨーク115との間の距離と、が異なるため、電磁コイル100A、100Bのインダクタンスの大きさが異なってしまう。例えば、電磁コイル100Bの方が電磁コイル100Aよりもコイルバックヨーク115に近い場合、電磁コイル100Bのインダクタンスがより大きくなる。
【0045】
図11Bは、第1の実施例のコアレスモーターにおける電気抵抗とインダクタンスを示す説明図である。図11Bから明らかなように、電磁コイル100A、100Bは電気特性(電気抵抗、インダクタンス)に関して等価である。コイルバックヨーク115が有る場合、電磁コイル100A、100Bのインダクタンスは、有効コイル領域の寄与が支配的になる。そして、第1の実施例では、電磁コイル100Aと100Bの有効コイル領域の形状が同じであり、電磁コイル100Aの有効コイル領域とコイルバックヨーク115と間隔、及び電磁コイル100Bの有効コイル領域とコイルバックヨーク115と間隔は同じ大きさである。そのため、電磁コイル100A、100Bの電気抵抗及びインダクタンスを同じ値にすることができ、両者のバランスを良くすることが可能となる。なお、電磁コイル100A、100Bの電気抵抗については、電磁コイル100A、100Bを形成する導体の太さ、及び長さを同じにすることにより容易に一致させることができる。
【0046】
以下、コアレスモーター10のコイルバックヨーク付電磁コイルアッセンブリー104の製造について説明する。ここで、2つの電磁コイル100A、100Bと、コイルバックヨーク115とを樹脂130で固めたものをコイルバックヨーク付電磁コイルアッセンブリー104と呼ぶ。コイルバックヨーク付電磁コイルアッセンブリー104は、複数のコイルアッセンブリーを備える。まず、電磁コイルサブアッセンブリー150を製造する工程について説明し、ついで、電磁コイルサブアッセンブリー150からコイルバックヨーク付電磁コイルアッセンブリー104を製造する工程について説明する。
【0047】
[コイルアッセンブリーの製造工程]
図12Aは、電磁コイル100Aのフォーミング工程を説明する説明図である。フォーミング前の電磁コイル100Aは、図4A(A)(B)に示したのと同様の方法で形成することができる。なお、第1の実施例とは、電磁コイル100Aの導体の束の太さと、有効コイル領域の間隔との比が異なっている。すなわち、第1の実施例では、電磁コイル100Aの導体の束の太さφ1と、有効コイル領域の間隔L2との比がほぼ1:2であるが、第2の実施例では、ほぼ太さφ1と間隔L2との比は1:1である。電磁コイル100Aを形成する絶縁膜付導体を角丸長方形形状に巻き、加圧し、円筒領域の一部の形を有する形状に成形する。このとき、導体の絶縁膜の厚さが、加圧前の30%〜100%の間あるいは、20%〜100%の間になるように、円筒領域の放射方向に角丸長方形形状に巻かれた電磁コイル100Aを加圧する。なお、絶縁膜の厚さが薄くなると、導体間の耐圧が下がるが、同一電磁コイル内の導体の電位は同じ電位であるため、導体間の耐圧が低くなっても十分な耐圧を有しており、同一電磁コイル内の導体間の電流リークの問題はない。
【0048】
図12Bは、電磁コイル100Bのフォーミング工程を説明する説明図である。フォーミング前の電磁コイル100Aの形状は電磁コイル100Aと同じであり、フォーミング前の電磁コイル100Bは、電磁コイル100Aと同様の方法で形成することができる。電磁コイル100Bのフォーミング工程は、電磁コイル100Aのフォーミング工程と同じである。ただし、電磁コイル100Bのフォーミングでは、コイルエンド領域100BCEを円筒面から外側に折れ曲げる点が、電磁コイル100Aのフォーミングと異なるが、他については同じである。なお、コイルエンド領域100BCEを円筒面から外側に折れ曲げる前の電磁コイル100Bの形状は、電磁コイル100Aの形状と同じである。
【0049】
図13Aは、電磁コイル100Aへの絶縁膜層形成工程を示す説明図である。図13Bは、電磁コイル100Bへの絶縁膜層形成工程を示す説明図である。上述したように、電磁コイル100A内、あるいは、電磁コイル100B内では、それぞれ同電位であるため、導体の絶縁膜の厚さが薄くなり、導体間の耐圧が下がっても同一電磁コイル内の導体間の電流リークの問題はない。しかし、コアレスモーター10に組み付けた場合には、電磁コイル100Aと100Bは接触するため、電磁コイル100Aと100Bとコイルバックヨーク115の間の公的機関による高耐電圧(1.5[kV]以上)特性を考慮して、電磁コイル100A、100B間の耐圧を向上させることが好ましい。本実施例では、電磁コイル100A、100Bの全域に絶縁薄膜層101を形成し、耐圧を確保している。絶縁薄膜層101の材料としては、例えば、酸化チタン含有シランカップリング材、パリレン、エポキシ、シリコーン、ウレタンを用いることが可能である。
【0050】
図14は、電磁コイル100Aと100Bの組み立て工程を示す説明図である。なお、図14では、絶縁薄膜層101(図13A,図13B)の記載を省略している。電磁コイル100Aが配置される円筒領域の放射方向外周側から、電磁コイル100Aの中央部の2つの有効コイル領域の間に電磁コイル100Bの有効コイル領域が嵌り込むように、電磁コイル100Bを嵌めこむことにより、電磁コイルサブアッセンブリー150(コイルサブ集合体)が形成される。電磁コイルサブアッセンブリー150は、電磁コイル100が為す円筒面の一部を形成している。そして、電磁コイル100Bのコイルエンド領域100BCEが円筒領域の底面に近い部分において、電磁コイル100Bが配置される円筒領域の放射方向外周側に曲がっている。そして、電磁コイル100Aのコイルエンド領域100ACEの一部と、電磁コイル100Bのコイルエンド領域100BCEの一部とが重なる。
【0051】
[コイルバックヨーク付電磁コイルアッセンブリーの製造(第1の方法)]
図15は、電磁コイルアッセンブリーの形成工程の一部を示す説明図(その1)である。図15(A)に示す工程では、抜きピン411を有する基台400を準備する。基台400は、略円盤形状を有している。抜きピン411は、略円柱形の部材であり、基台400の中央に配置されている。基台400と抜きピン411とは、一体に形成されていてもよい。図15(B)に示す工程では、3つの内金型420を、抜きピン411の外周部に配置する。3つの内金型420は、略円筒形状を形成する。内金型420は、外側表面に突起421を備えている。突起421の高さは10〜20μmが好ましく、10〜100μmであってもよい。また、内金型420は、内周/(内周の曲率半径)<外周/(外周の曲率半径)となっている。そのため、内金型420を抜きピン411の外周部に配置すると、2つの内金型420の接合部分に、楔形の空間422が形成される。この楔形の空間422は、抜きピン411を抜いた後、内金型420を中心方向に移動させて外しやすくする。なお、本実施例では、内金型420を3分割構成にしているが、2分割構成や4分割構成など、3分割構成以外であってもよい。
【0052】
図16は、電磁コイルアッセンブリーの形成工程の一部を示す説明図(その2)である。図15(A)に示す工程では、内金型420の外側に電磁コイルサブアッセンブリー150が配置される。本実施例では、3つの電磁コイルサブアッセンブリー150で、略円筒形状が形成される。図16(B)に示す工程では、電磁コイル100A、100Bの有効コイル領域の外側にコイルバックヨーク115が配置される。本実施例では、コイルバックヨーク115は3分割構成である。なお、この分割構成数は2以上であればよい。
【0053】
図17は、電磁コイルアッセンブリーの形成工程の一部を示す説明図(その3)である。図17に示す工程では、コイルバックヨーク115の外側に外金型430が配置される。外金型430は、樹脂注入口431と、空気抜き口432とを備える。なお、図17において、上に示す平面図では、空気抜き口432の図示を省略している。
【0054】
図18は、電磁コイルアッセンブリーの形成工程の一部を示す説明図(その4)である。図18(A)に示す工程では、高温にした金型の樹脂注入口431から高温にされた樹脂130を注入し、その後で成形型を真空ポンプにて脱泡工程をする。樹脂130が固まったら、外金型430を外す。図18(B)は、外金型430を外した状態を示す。次に図18(B)に示す状態から、基台400と抜きピン411とを外す。
【0055】
図19は、電磁コイルアッセンブリーの形成工程の一部を示す説明図(その5)である。図19(A)は、基台400と抜きピン411とが取り外された状態を示す。図19(A)に示された状態から、3つの内金型420をそれぞれ抜きピン411が有った方向移動させて取り外し、電磁コイルアッセンブリー103を形成する。図19(B)は、内金型420が取り外された状態を示している。以上のように、図15〜図19に示す工程により、電磁コイルサブアッセンブリー150からコイルバックヨーク付電磁コイルアッセンブリー104を形成することができる。
【0056】
[コイルバックヨーク付電磁コイルアッセンブリーの製造(第2の方法)]
図20は、電磁コイルアッセンブリーの形成を別の工程で行う場合の例を示す説明図(その1)である。先に説明した工程では、電磁コイルサブアッセンブリー150を組み合わせたのち、コイルバックヨーク115を組み付けたが、こちらの工程では、円筒形のコイルバックヨーク115を先に準備して、コイルバックヨーク115の円筒の内側に電磁コイルサブアッセンブリー150を組み付ける点が異なる。
【0057】
図20(A)に示す工程では、コイルバックヨーク115の円筒の内側に電磁コイルサブアッセンブリー150を挿入し、コイルバックヨーク115の円筒の内面に嵌めこむ。このとき、電磁コイルサブアッセンブリー150の電磁コイル100Bの2つのコイルエンド領域100BCEの間にコイルバックヨーク115が嵌めこまれるように、電磁コイルサブアッセンブリー150が配置される。次に図20(B)に示す工程では、3分割された内金型420を電磁コイルサブアッセンブリー150の内側に配置する。
【0058】
図21は、電磁コイルアッセンブリーの形成を別の工程で行う場合の例を示す説明図(その2)である。図21(A)に示す工程では、内金型420の内側に抜きピン411が挿入される。なお、抜きピン411の一方に端部には、基台400が設けられている。図21(B)は、抜きピン411が挿入された状態を示す説明図である。
【0059】
図22は、電磁コイルアッセンブリーの形成を別の工程で行う場合の例を示す説明図(その3)である。図22は、図17と同じ図であり、コイルバックヨーク115の外側に、樹脂注入口431と、空気抜き口432とを備えた外金型430が配置される。
【0060】
図23は、電磁コイルアッセンブリーの形成を別の工程で行う場合の例を示す説明図(その4)である。図23は、図18と同じ図であり、図23(A)に示す工程では、高温にした金型の樹脂注入口431から高温にされた樹脂130を注入し、その後で成形型を真空ポンプにて脱泡工程をする。樹脂130が固まったら、外金型430を外す。図23(B)は、外金型430を外した状態を示す。次に図23(B)に示す状態から、基台400と抜きピン411とを外す。
【0061】
図24は、電磁コイルアッセンブリーの形成工程を別の工程で行う場合の例を示す説明図(その5)である。図24は、図19と同じ図であり、図24(A)は、基台400と抜きピン411とが取り外された状態を示す。図24(A)に示された状態から、3つの内金型420をそれぞれ抜きピン411が有った方向移動させて取り外し、電磁コイルアッセンブリー103を形成する。図24(B)は、内金型420が取り外された状態を示している。以上のように、図20〜図24に示す工程によっても、電磁コイルサブアッセンブリー150からコイルバックヨーク付電磁コイルアッセンブリー104を形成することができる。なお、図15〜図19に示す工程でコイルバックヨーク付電磁コイルアッセンブリー104を製造する場合、コイルバックヨーク115を分割構造にしているが、図20〜図24に示す工程でコイルバックヨーク付電磁コイルアッセンブリー104を製造する場合、コイルバックヨーク115を分割構造にしなくても良い点が異なる。
【0062】
[コイルバックヨーク付電磁コイルアッセンブリーの製造(第3の方法)]
図25は、電磁コイルアッセンブリーの形成工程をさらに別の工程で行う場合の電磁コイルサブアッセンブリー155を示す説明図である。コイルバックヨーク付電磁コイルサブアッセンブリー155は、電磁コイル100Aと100Bとに加えて、コイルバックヨーク115を備える。コイルバックヨーク付電磁コイルサブアッセンブリー155は、電磁コイルサブアッセンブリー150とコイルバックヨーク115とを接合することにより容易に形成することが出来る。なお、後の工程で樹脂130によりモールドして一体化するので、電磁コイルサブアッセンブリー150とコイルバックヨーク115とを接合は、強くなくてもよい。コイルバックヨーク115は、電磁コイル100A、100Bの有効コイル領域と重なるように配置されている。電磁コイル100A、100Bのコイルエンド領域100ACE、100BCEは、コイルバックヨーク115と重なっていない。コイルバックヨーク115の回転方向の一方の端部にはカギ115Aが形成され、他方の端部には、溝115Bが形成されている。コイルバックヨーク115のカギ115Aは、隣接するコイルバックヨーク115の溝115Bに引っ掛かることにより、コイルバックヨーク115を強く係合することができる。
【0063】
図26は、電磁コイルアッセンブリーの形成をさらに別の工程で行う場合の例を示す説明図(その1)である。図26は、図15と同じ図であり、図26において行う工程は、図15において行う工程と同じであるので、説明を省略する。
【0064】
図27は、電磁コイルアッセンブリーの形成をさらに別の工程で行う場合の例を示す説明図(その2)である。図27(A)に示す工程では、コイルバックヨーク115のカギ115Aと、溝115B(図面上電磁コイル100Bのコイルエンド領域100BCEに隠れている)と、を係合させながら、コイルバックヨーク付電磁コイルサブアッセンブリー155を内金型420の周りに配置していく。図27(B)は、電磁コイルサブアッセンブリー155の配置後、さらに、外金型430を配置した状態を示す説明図である。図27(B)では、カギ115Aの部分が膨らんでいるが、この点を除けば、図27(B)は、図17と同じ図である。
【0065】
図28は、電磁コイルアッセンブリーの形成をさらに別の工程で行う場合の例を示す説明図(その3)である。図28(A)に示す工程では、高温にした金型の樹脂注入口431から高温にされた樹脂130を注入し、その後で成形型を真空ポンプにて脱泡工程をする。図27(B)に示されているカギ115Aの部分の膨らみは、樹脂130により埋められることにより、緩和される。図28(B)は、外金型430を外した状態を示す。次に図28(B)に示す状態から、基台400と抜きピン411とを外す。
【0066】
図29は、電磁コイルアッセンブリーの形成をさらに別の工程で行う場合の例を示す説明図(その4)である。この工程は、図19に示した工程と同じ工程であるので、説明を省略する。
【0067】
以上、第2の実施例によれば、電磁コイルサブアッセンブリー150、あるいは、コイルバックヨーク付電磁コイルサブアッセンブリー155を製造し、これらを組み合わせたのち、樹脂130によりモールドすることにより、コイルバックヨーク付電磁コイルアッセンブリー104を容易に製造することができる。上述したように、このモールド工程は、様々な方法で実行することができる。また、このコイルバックヨーク付電磁コイルアッセンブリー104を備えるコアレスモーター10の電磁コイル100A、100Bは、高い占積率を有しており、図10で説明したように、高い始動トルクを有している。
【0068】
[第3の実施例]
図30は、第3の実施例を示す説明図である。図30(A)は、コアレスモーター10を回転軸230と平行な切断線(図30(B)のA−A)で切ったときの断面を断面と垂直な方向から見たときの図を模式的に示し、図30(B)は、コアレスモーター10を回転軸230と垂直な切断線(図30(A)のB−B)で切ったときの断面を断面と垂直な方向から見たときの図を模式的に示している。第1、第2の実施例では、電磁コイルが2相である場合について説明したが、第3の実施例では、電磁コイルは、3相である点が異なっている。なお、3相の場合、各相は、電磁コイル100A、100B、100Cは、スター結線、あるいは、デルタ結線されていてもよい。あるいは、電磁コイル100A、100B、100Cがそれぞれ独立であってもよい。第3の実施例では、電磁コイル100A、100B、100Cの有効コイル領域は、同一円筒面上にあり、2つの電磁コイル100A、100Cのコイルエンド領域は、有効コイル領域が配置される円筒面から外側方向に曲がっている。2つの電磁コイル100A、100Cのコイルエンド領域が円筒面から外側に曲がる大きさは、相毎に異なっており、電磁コイル100Cコイルエンド領域が円筒面から外側に曲がる大きさの方が、電磁コイル100Aコイルエンド領域が円筒面から外側に曲がる大きさよりも大きい。なお、電磁コイル100Aを有効コイル領域が配置される円筒面から内側方向に曲げ、電磁コイル100Cを有効コイル領域が配置される円筒面から図30(A)の電磁コイル100Aと同じ程度に外側方向に曲げた構成を採用してもよい。すなわち、円筒面から外側に曲がるコイルエンド領域を有する電磁コイルと、円筒面から内側に曲がるコイルエンド領域を有する電磁コイルとを有していてもよい。なお、電磁コイル100A、100B、100Cは交換可能である。
【0069】
図30Bは、第3の実施例の変形例を示す説明図である。図30B(A)は、コアレスモーター10を回転軸230と平行な切断線(図30B(B)のA−A)で切ったときの断面を断面と垂直な方向から見たときの図を模式的に示し、図30B(B)は、コアレスモーター10を回転軸230と垂直な切断線(図30B(A)のB−B)で切ったときの断面を断面と垂直な方向から見たときの図を模式的に示している。この変形例は、第3の実施例と同様に3相の電磁コイル100A〜100Cを備えている。しかし、電磁コイル100A〜100Cは、第2の実施例と同様に、電磁コイルサブアッセンブリー150を形成しており、電磁コイルの構造は、2つの電磁コイルアッセンブリー150を円周方向に並べた構造である。
【0070】
この変形例では、第3の実施例と同様に、電磁コイル100A、100B、100Cの有効コイル領域は、同一円筒面上にあり、2つの電磁コイル100A、100Cのコイルエンド領域は、有効コイル領域が配置される円筒面から外側方向に曲がっている。2つの電磁コイル100A、100Cのコイルエンド領域が円筒面から外側に曲がる大きさは、相毎に異なっており、電磁コイル100Cコイルエンド領域が円筒面から外側に曲がる大きさの方が、電磁コイル100Aコイルエンド領域が円筒面から外側に曲がる大きさよりも大きい。なお、電磁コイル100Aを有効コイル領域が配置される円筒面から内側方向に曲げ、電磁コイル100Cを有効コイル領域が配置される円筒面から図30B(A)の電磁コイル100Aと同じ程度に外側方向に曲げた構成を採用してもよい。すなわち、円筒面から外側に曲がるコイルエンド領域を有する電磁コイルと、円筒面から内側に曲がるコイルエンド領域を有する電磁コイルとを有していてもよい。なお、電磁コイル100A、100B、100Cは交換可能である。
【0071】
図31は、コアレスモーターの電気角と、電磁コイルの誘起電圧、磁気センサー300(図30(A))が検知する磁束密度を示すグラフである。磁気センサー300が検知する磁束密度は、電気角がπ/2(3π/2)のとき、最大となり、電気角が0(π、2π)のとき、最小となる。また、電磁コイル100Bの誘起電圧は、電気角がπ/2(3π/2)のとき、最大となり、電気角が0(π、2π)のとき、ゼロとなる。一方、電磁コイル100Aの誘起電圧は、電気角が5π/6(11π/6)のとき、最大となり、電気角がπ/3(4π/3)のとき、ゼロとなる。電磁コイル100Cの誘起電圧は、電気角が1π/6(7π/6)のとき、最大となり、電気角が2π/3(5π/3)のとき、ゼロとなる。すなわち、電磁コイル100A、100B、100Cのそれぞれに生じる誘起電圧は、2π/3ずれている。
【0072】
図32Aは、第3の実施例における電磁コイルの配線を模式的に示す説明図である。図8に示した第2の実施例と同様に、電磁コイル100A、100B、100Cは容易に複数の(本実施例では3つの)電磁コイルサブアッセンブリー150に分割することが出来る。すなわち、第3の実施例では、電磁コイルサブアッセンブリー150を作成し、電磁コイルサブアッセンブリー150を組み合わせることにより、容易にコイルバックヨーク付電磁コイルアッセンブリー104を形成することが可能となる。なお、コイルバックヨーク付電磁コイルサブアッセンブリー155を用いてもよい。
【0073】
図32Bは、第3の実施例における電磁コイルを模式的に示す説明図である。電磁コイル100A、100B、100Cが重なっており、電磁コイル100Aの空芯部分に他の電磁コイル100B、100Cの有効コイル領域が埋められており、電磁コイル100Bの空芯部分に他の電磁コイル100C、100Aの有効コイル領域が埋められており、電磁コイル100Cの空芯部分に他の電磁コイル100A、100Bの有効コイル領域が埋められていることが分かる。なお、各電磁コイル100A〜100Cの有効コイル領域の幅をφ1とすると、各電磁コイル100A〜100Cにおいて2つの有効コイルの間隔L2は、2×φ1である。一般のM相の場合、有効コイル領域の幅をφ1とすると、各電磁コイルにおいて2つの有効コイルの間隔L2は(M−1)×φ1である。
【0074】
以上、第3の実施例に示すような3相のコアレスモーター10においても、第2の実施例のコアレスモーターと同様に、製造工程の容易化と、占積率の向上を実現することができる。なお、4相以上の多相モーターにおいても同様である。
【0075】
図32Cは、第3の実施例の変形例を示す説明図である。図32C(A)は、コアレスモーター10を回転軸230と平行な切断線(図32C(B)のA−A)で切ったときの断面を断面と垂直な方向から見たときの図を模式的に示し、図32C(B)は、コアレスモーター10を回転軸230と垂直な切断線(図32C(A)のB−B)で切ったときの断面を断面と垂直な方向から見たときの図を模式的に示している。この第4の実施例は、第3の実施例と同様に3相の電磁コイル100A〜100Cを備えており、各相の電磁コイル1つから電磁コイルアッセンブリー150を形成している。この変形例では、電磁コイルサブアッセンブリー150の数が2個であり、永久磁石200は、4極で有る点が異なっている。
【0076】
この変形例では、第3の実施例と同様に、電磁コイル100A、100B、100Cの有効コイル領域は、同一円筒面上にあり、2つの電磁コイル100A、100Cのコイルエンド領域は、有効コイル領域が配置される円筒面から外側方向に曲がっている。2つの電磁コイル100A、100Cのコイルエンド領域が円筒面から外側に曲がる大きさは、相毎に異なっており、電磁コイル100Cコイルエンド領域が円筒面から外側に曲がる大きさの方が、電磁コイル100Aコイルエンド領域が円筒面から外側に曲がる大きさよりも大きい。なお、電磁コイル100Aを有効コイル領域が配置される円筒面から内側方向に曲げ、電磁コイル100Cを有効コイル領域が配置される円筒面から図30B(A)の電磁コイル100Aと同じ程度に外側方向に曲げた構成を採用してもよい。すなわち、円筒面から外側に曲がるコイルエンド領域を有する電磁コイルと、円筒面から内側に曲がるコイルエンド領域を有する電磁コイルとを有していてもよい。なお、電磁コイル100A、100B、100Cは交換可能である。
【0077】
[第4の実施例]
図32Dは、第4の実施例を示す説明図である。第3の実施例では、電磁コイルのコイルエンド領域は、例えば図30A(A)に示すように、電磁コイルが3重になっており、3層の厚さを有している。第4の実施例は、3相でありながら、電磁コイルのコイルエンド領域が2層でよい構成である。
【0078】
図32Eは、第4の実施例を回転軸230と垂直な平面で切ったときの断面の構造を模式的に示す説明図である。ここで、電磁コイルから外側に引いている円弧は、電磁コイルのコイルエンド領域の形を示している。外側の円弧は、コイルエンド領域が、有効コイル領域を含む円筒領域から外側に曲がっていることを示している。内側の円弧は、コイルエンド領域が、有効コイル領域を含む円筒領域から外側にも内側にも曲がっていないことを示している。なお、コイルエンド領域が、有効コイル領域を含む円筒領域から外側にも内側にも曲がっていない場合には、円弧は、電磁コイルを示すハッチングの上に描かれるが、図32Eでは、円弧を、電磁コイルを示すハッチングと重ねると見難くなるため、便宜的に、電磁コイルを示すハッチングより外側に描いている。
【0079】
第4の実施例では、A相〜C相の電磁コイル100A〜100Cはそれぞれ4個あり、各相において2個の電磁コイルにつき、外側の円弧が示すようにコイルエンド領域が外側に曲げられ、残る各2個の電磁コイルは、内側の円弧が示すようにコイルエンド領域が曲げられていない。そして、各相において、磁気センサー側コイルエンド領域が外側に曲げられた電磁コイルと、磁気センサー側コイルエンド領域が曲げられていない電磁コイルは、同数であり、交互に配置されている。
【0080】
図32Fは、第4の実施例を回転軸230と平行な面で切ったときの断面を示す説明図である。図32F(A)〜(F)は、回転軸230と平行な平面を30°ずつ、ずらしてその平面で切ったときの電磁コイルの断面を示している。ここで、図32F(A)〜(F)において、図面上側が外側である。電磁コイル100Aのコイルエンド領域は、図32F(F)(A)では、外側(図面上方)に曲げられており、一方、図32F(C)、(D)では、曲げられていない。同様に、電磁コイル100Bのコイルエンド領域は、図32F(D)(E)では、外側に曲げられており、一方、図8E(A)、(B)では、曲げられていない。また、電磁コイル100Cのコイルエンド領域は、図8E(B)(C)では、外側に曲げられており、一方、図32F(E)、(F)では、曲げられていない。ここで、コイルエンド領域が外側に曲げられた電磁コイルを「第1の電磁コイル」または「第1形状電磁コイル」と呼び、コイルエンド領域が内外側に曲げられていない電磁コイルを「第2の電磁コイル」または「第2形状電磁コイル」と呼ぶ。本実施例では、電磁コイル100A〜100Cのいずれにおいてもそれぞれ同数の第1と第2の電磁コイルを含んでいる。
【0081】
第3の実施例では、C相電磁コイル100Cは、コイルエンド領域がコイルバックヨーク側に大きく曲げられ、A相電磁コイル100Aは、コイルエンド領域がコイルバックヨーク側に曲げられ、B相電磁コイル100Bは、コイルエンド領域が曲げられていない。すなわち、A相〜C相は、コイルエンド領域の形状が異なる。電磁コイル100A〜100Cの電気的特性は主として有効コイル領域で決まるので、インダクタンスなどの電気的特性はほぼ同じであるが、厳密に言えば、コイルエンド領域の形状の違いにより微妙に異なる。これに対し、第5の実施例では、A相からC相の各電磁コイル100A〜100Cにつき、それぞれ、コイルエンド領域が外側に曲げられた第1の電磁コイル(第1形状電磁コイル)と、コイルエンド領域が曲げられていない第2の電磁コイル(第2形状電磁コイル)をそれぞれ2つずつ有しており、A相からC相の第1の電磁コイルの電気的特性は同一である。また、A相からC相の第2の電磁コイルの電気的特性は同一である。したがって、A相、B相、C相の電磁コイルの電気的特性は同一である。よって第4の実施例のコアレスモーターは、相間のアンバランスによるトルクの変動が起こり難く、バランスがいいので、効率を向上させることができる。
【0082】
第3、第4の実施例を比較すると、第4の実施例は、さらに、以下の点に特徴がある。すなわち、第3の実施例では、図32Cに示す円弧が三重になる部分がある。このことは、例えば、第3の実施例では、図32Cに示すように、コイルエンド領域が三重に重なる部分が生じることを意味する。これに対し、第4の実施例では、図32Eに示すように、円弧は、最大でも二重にしかならない。すなわち、第4の実施例では、3相であっても図1に示す第1の実施例と同様に、コイルエンド領域の重なりは最大でも二重で済むことになる。よって、コアレスモーター10の大きさを小さくすることができる。
【0083】
なお、第4の実施例では、第1の電磁コイルのコイルエンド領域を、円筒領域を含む円筒面の外側に曲げ、第2の電磁コイルのコイルエンド領域を曲げない構成を採用しているが、例えば、第1の電磁コイルのコイルエンド領域を、円筒領域を含む円筒面の外側に曲げ、第2の電磁コイルのコイルエンド領域を、円筒領域を含む円筒面の内側に曲げる構成や、第1の電磁コイルのコイルエンド領域を、円筒領域を含む円筒面の外側ではなく、円筒領域を含む円筒面の内側に曲げ、第2の電磁コイルのコイルエンド領域を曲げない構成を採用しても良い。
【0084】
また、第4の実施例では、電磁コイルが3相の場合を例にとり説明したが、相の数は3相に限られず、2相以上であればよい。なお、3相の場合(奇数相の場合)、電磁コイル100A〜100Cはそれぞれ、同数の第1の電磁コイルと第2の電磁コイルを有するが、2相の場合(偶数相の場合)、電磁コイル100Aは第1相の電磁コイルとなり、電磁コイル100Bは第2の電磁コイルになる。すなわち、相の数が奇数であれば、同じ相の電磁コイルにつき、同数の第1の電磁コイルと第2の電磁コイルを有するが、偶数相の場合、相が決まれば、電磁コイルの形は、第1の電磁コイル、第2の電磁コイルのどちらかに決まる。
【0085】
図33は、本発明の変形例によるモーター/発電機を利用した移動体の一例としての電動自転車(電動アシスト自転車)を示す説明図である。この自転車3300は、前輪にモーター3310が設けられており、サドルの下方のフレームに制御回路3320と充電池3330とが設けられている。モーター3310は、充電池3330からの電力を利用して前輪を駆動することによって、走行をアシストする。また、ブレーキ時にはモーター3310で回生された電力が充電池3330に充電される。制御回路3320は、モーターの駆動と回生とを制御する回路である。このモーター3310としては、上述した各種のコアレスモーター10を利用することが可能である。
【0086】
図34は、本発明の変形例によるモーターを利用したロボットの一例を示す説明図である。このロボット3400は、第1と第2のアーム3410,3420と、モーター3430とを有している。このモーター3430は、被駆動部材としての第2のアーム3420を水平回転させる際に使用される。このモーター3430としては、上述した各種のコアレスモーター10を利用することが可能である。
【0087】
図35は、本発明の変形例によるモーターを利用した双腕7軸ロボットの一例を示す説明図である。双腕7軸ロボット3450は、関節モーター3460と、把持部モーター3470と、アーム3480と、把持部3490と、を備える。関節モーター3460は、肩関節、肘関節、手首関節に相当する位置に配置されている。関節モーター3460は、アーム3480と把持部3490とを、3次元的に動作させるため、各関節につき2つのモーターを備えている。また、把持部モーター3470は、把持部3590を開閉し、把持部3490に物を掴ませる。双腕7軸ロボット3450において、関節モーター3460あるいは把持部モーター3470として、上述した各種のコアレスモーターを利用することが可能である。
【0088】
図36は、本発明の変形例によるモーターを利用した鉄道車両を示す説明図である。この鉄道車両3500は、電動モーター3510と、車輪3520とを有している。この電動モーター3510は、車輪3520を駆動する。さらに、電動モーター3510は、鉄道車両3500の制動時には発電機として利用され、電力が回生される。この電動モーター3510としては、上述した各種のコアレスモーター10を利用することができる。
【0089】
以上、いくつかの実施例に基づいて本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【符号の説明】
【0090】
10…コアレスモーター
15…ステーター
20…ローター
100ACE…コイルエンド領域
100…電磁コイル
100BCE…コイルエンド領域
100A、100B、100C…電磁コイル
101…絶縁薄膜層
103…電磁コイルアッセンブリー
104…コイルバックヨーク付電磁コイルアッセンブリー
110…ケーシング
115…コイルバックヨーク
115A…カギ
115B…溝
130…樹脂
150、155…電磁コイルサブアッセンブリー
200…永久磁石
215…磁石バックヨーク
230…回転軸
260…波バネ座金
300…磁気センサー
310…回路基板
400…基台
411…抜きピン
420…内金型
421…突起
422…空間
430…外金型
431…樹脂注入口
432…空気抜き口
3300…自転車
3310…モーター
3320…制御回路
3330…充電池
3400…ロボット
3410…第2のアーム
3420…第2のアーム
3430…モーター
3450…双腕7軸ロボット
3460…関節モーター
3470…把持部モーター
3480…アーム
3490…把持部
3500…鉄道車両
3510…電動モーター
3520…車輪
3590…把持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に移動可能な円筒形状の第1と第2の部材を有するコアレス電気機械装置であって、
前記第1の部材に配置された永久磁石と、
前記第2の部材に配置されたα巻きされたM相(Mは2以上の整数)の空芯の電磁コイルと、
前記第2の部材に配置されたコイルバックヨークと、
を備え、
前記電磁コイルは、前記第1の部材を前記第2の部材に対して相対的に回転移動させる力を生じさせる2つの有効コイル領域と、2つのコイルエンド領域とを有しており、
前記M相の電磁コイルから各相1個ずつ選択された計M個の前記電磁コイルが、コイルサブ集合体を形成しており、
前記コイルサブ集合体において、
前記M相の電磁コイルの前記有効コイル領域の形状は、それぞれ同じ形状を有しており、前記永久磁石と前記コイルバックヨークとの間の円筒領域に、前記有効コイル領域が回転の軸方向と平行な方向に沿って伸びると共に、前記M相の電磁コイルの全体が前記円筒領域の円周方向に並んでおり、
前記電磁コイルが有する2つの有効コイル領域の間の間隔は、前記電磁コイルの前記有効コイル領域における前記電磁コイルの幅の(M−1)倍の大きさであり、
前記M相のうちの第1の相の電磁コイルは2つの有効コイル領域の間に、前記第1の相以外の(M−1)相の電磁コイルの2つの有効コイル領域のうちの一方の有効コイル領域を有しており、
前記M相の電磁コイルのうちの少なくとも(M−1)相の電磁コイルの前記コイルエンド領域は、他の相の電磁コイルのコイルエンド領域と干渉しないように前記円筒領域を含む円筒面の内周側または外周側に曲がっており、
前記コイルサブ集合体は、隣り合うコイルサブ集合体と接するように、前記円筒領域の円周方向に並んでいる、コアレス電気機械装置。
【請求項2】
請求項1に記載のコアレス電気機械装置において、
前記第1の相の電磁コイルの前記コイルエンド領域は、前記円筒面上に曲がらずに配置している、コアレス電気機械装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコアレス電気機械装置において、
前記コイルエンド領域が前記円筒面の外側に曲がっている電磁コイルと、前記コイルエンド領域が前記円筒面の内側に曲がっている電磁コイルとを含んでいる、コアレス電気機械装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のコアレス電気機械装置において、
前記Mの値が3以上の場合には、
前記電磁コイルの前記コイルエンド領域は、相毎に異なる大きさで前記円筒領域の内周側または外周側に曲がっている、コアレス電気機械装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のコアレス電気機械装置において、
前記各相のコイル群に含まれる電磁コイルの前記コイルエンド領域の曲がる前の形状は、同一形状であり、前記電磁コイルは同じ電気抵抗値を有している、コアレス電気機械装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のコアレス電気機械装置において、
前記電磁コイルを形成している導体の材料が同じ材料であり、
前記導体の直径が同じ太さであり、
前記電磁コイルの前記導体の巻数が同じであり、
前記電磁コイルは同じ電気抵抗値を有している、コアレス電気機械装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のコアレス電気機械装置を備える移動体。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のコアレス電気機械装置を備えるロボット。
【請求項9】
M(Mは2以上の整数)相のα巻きされた電磁コイルを有するコアレス電気機械装置の製造方法であって、
(a)導体をN回(Nは2以上の整数)巻いて、前記電磁コイルの有効コイル領域がそれぞれ同じ形状であり、前記電磁コイルの電気抵抗の値が同じ大きさであるM個のα巻きされた前記電磁コイルの円筒片を準備する工程と、
(b)前記M個の電磁コイルのうちの少なくとも(M−1)個の電磁コイルの前記コイルエンド領域を、他の電磁コイルのコイルエンド領域と干渉しないように前記円筒片の内周側または外周側に曲げる工程と、
(c)前記M相の電磁コイルの円筒片から各相1個、合計M個の電磁コイルの円筒片を用いて、第1の相の電磁コイルは2つの有効コイル領域の間に前記第1の相以外の(M−1)相の電磁コイルの2つの有効コイル領域のうちの一方の有効コイル領域を含む構造を有するコイルサブ集合体を形成する工程と、
(d)前記コイルサブ集合体P個(Pは2以上の整数)を隣り合うコイルサブ集合体が接するように円筒領域の円周方向に並べて、円筒形状に配置された電磁コイルを形成する工程と、
(e)前記円筒形状に配置された電磁コイルの円筒領域の外周側にコイルバックヨークを配置する工程と、
(f)前記円筒形状に配置された電磁コイルの円筒領域の内周側に永久磁石を有する回転軸を配置する工程と、
を備える、コアレス電気機械装置の製造方法。
【請求項10】
M(Mは2以上の整数)相の電磁コイルを有するコアレス電気機械装置の製造方法であって、
(a)導体をN(Nは2以上の整数)回巻いて、前記電磁コイルの有効コイル領域がそれぞれ同じ形状であり、前記電磁コイルの電気抵抗の値が同じ大きさであるP個(Pは2以上の整数)の前記電磁コイルの円筒片を相毎に準備する工程と、
(b)前記M相の電磁コイルのうちの少なくとも(M−1)相の電磁コイルの前記コイルエンド領域を、他の相の電磁コイルのコイルエンド領域と干渉しないように前記円筒片の内周側または外周側に曲げる工程と、
(c)前記M相の電磁コイルの円筒片から各相1個、合計M個の電磁コイルの円筒片を用いて、第1の相の電磁コイルは2つの有効コイル領域の間に前記第1の相以外の(M−1)相の電磁コイルの2つの有効コイル領域のうちの一方の有効コイル領域を含む構造を有するコイルサブ集合体を形成する工程と、
(d)前記円筒形状のコイルバックヨークを準備する工程と、
(e)前記コイルバックヨークの内周側に前記コイル集合体P個を隣り合うコイルサブ集合体が接するように円筒領域の円周方向に並べて、円筒形状に配置された電磁コイルを形成する工程と、
(f)前記円筒形状に配置された電磁コイルの円筒領域の内周側に永久磁石を有する回転軸を配置する工程と、
を備える、コアレス電気機械装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32A】
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【図32B】
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【図32C】
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【図32D】
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【図32E】
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【図32F】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2013−78167(P2013−78167A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215035(P2011−215035)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】