説明

コア2β−1,6−N−アセチルグリコサミニルトランスフェラーゼの変異体

本発明は、新規な変異体コア2 GlcNAcT核酸、上記核酸によりコードされるポリペプチド、並びに上記核酸及びポリペプチドの使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2003年6月10日に出願された米国出願第60/477,649号(これは、その全体があらゆる目的で参照により本明細書に援用される)の利益及びそれに対する優先権を主張する。
【0002】
[連邦政府によって支援されている研究及び開発の下で行われた発明に対する権利に関する記述]
該当なし。
【0003】
[発明の分野]
本発明は、コア2 β−1,6−N−アセチルグリコサミニルトランスフェラーゼ(コア2 GlcNAcT)又はその一部の変異体ポリペプチド、並びにかかるポリペプチドをコードする核酸分子、及び組換え技法を用いてかかるポリペプチドを生産する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
[発明の背景]
酵素UDP−GlcNAc:Gal[β]1,3GalNAc−R(GLcNAc→GalNAc)[β]1,6−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(すなわち、コア2 β−1,6−N−アセチルグリコサミニルトランスフェラーゼ(コア2 GlcNAcT))は、O結合グリカン生合成経路においてコア1(すなわちGal[β]1,3GalNAc[α]−O)をコア2構造(すなわち、Gal[β]1,3[GlcNAc[β]1,6]GalNAc[α]−O)へ変換する(Williams and Schachter, J. Biol. Chem 255:11247, 1980及びSchachter H. and Brockhausen, I, In:Allen, H.J. and Kisailus E.C.(eds) Glycoconjugates. Composition, Structure, and Function. Marcel Dekker, New York, pp 263-332)。コア2 GlcNAcT活性は、ポリ(N−アセチルラクトサミン)(すなわち、Gal[β]1−4GlcNAc[β]1−3の反復)によるO結合糖の伸長において重要である。これらの構造は、悪性形質転換(Yousefi et al. (1991) J. Biol. Chem. 266(3):1772-1782)及びリンパ球の増殖活性化(Higgins et al.
(1991) J. Biol. Chem. 266(10): 6280-6290)に関連しており、これらは、細胞接着に影響を及ぼし(Zhu and Laine (1985) J. Biol. Chem., 260(7):4041-4045; Laferte and Dennis (1988) Cancer Res.; 48(17):4743-4748)、且つこれらは、哺乳類レクチン用のリガンドとして作用し得る(Merkle and Cummings (1988) J. Biol. Chem. 263(31):16143-9)。
【0005】
コア2 GlcNAcTは、標的分子のグリコシル化による細胞−細胞相互作用の調節において重要な酵素である。例えば、コア2 GlcNAcTにより調節されるP−セレクチン糖タンパク質リガンド(「PSGL−1」)のグリコシル化は、P−セレクチンの結合に関する重要な工程であることが見出されている(Kumar et al. (1996) Blood, 88(10):3872-3879; Li et al. (1996) J. Biol. Chem. 271(6):3255-3264)。糖尿病及び高血糖症は、ラットの心筋細胞において特異的にコア2 GlcNAcT遺伝子発現を誘導し、糖尿病患者の心臓におけるコア2 GlcNAcTの発現はまた、ストレス反応及び心筋層肥大と関連がある(Nishio et al., (1995) J. Clin Invest., 96(4): 1759-1767)。
【0006】
ゴルジへのUDP−Gal輸送を阻止して、コア2構造を含むO結合及びN結合された
伸長をブロックする体細胞変異体は、いずれか一方の経路のみでのブロックよりも転移のより激しい減衰をもたらし、O結合コア2及びN結合分岐状オリゴ糖の両方が、悪性表現型に寄与することを示唆している。これに関して、GalNAcαRは、O結合経路の早期に、1つの酵素をブロックすることによりコア2合成を防止し、GalNAcαRは、浸潤及び転移を低減させることがわかっている。また、結腸直腸癌細胞におけるコア2 GlcNAcTの増大された発現が、疾患の進行と密接に相関していることも見出されている(Shimodaira et al. (1997) Cancer Res., 57(23): 5201-5206)。
【0007】
本明細書中の任意の参照文献の引用は、かかる参照文献が本発明に対する従来技術として利用可能であることを受け入れるものではない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
[発明の概要]
本発明は、コア2 β−1,6−N−アセチルグリコサミニルトランスフェラーゼ(コア2 GlcNAcT)の新規な変異体ポリペプチドを提供する。コア2 GlcNAcT変異体ポリペプチド(及び/又は適切な状況では、融合又はキメラコア2 GlcNAcT変異体ポリペプチド)は、場合によっては本明細書中で「C2変異体」又は「C2変異体ポリペプチド」と称することもある。
【0009】
本発明のある態様では、単離されたコア2 GlcNAcTポリペプチドが提供され、ここで第217位のアミノ酸は、システイン以外の任意のアミノ酸である。
【0010】
本発明の特定の変異体は、コア2 GlcNAcTのアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、ここでコア2 GlcNAcTのアミノ酸残基は、置き換えられるか、又は欠失されて、コア2 GlcNAcT活性を保持しながら安定性を増大させたコア2 GlcNAcTを提供する。
【0011】
ある態様では、天然に存在するコア2 GlcNAcTの217位に対応する本来のシステイン残基は、置換アミノ酸残基により置き換えられるか、又は欠失される。コア2 GlcNAcTのシステイン217の変更により、コア2 GlcNAcT活性を保持しながら、酵素の安定性が増大する。
【0012】
特に好ましい実施形態(embodiment)では、本来のアミノ酸217位でのシステイン残基は、セリン残基又はアラニン残基により置き換えられる。
【0013】
本発明のコア2 GlcNAcT変異体ポリペプチドは、コア2 GlcNAcT活性を有し、且つ増強された安定性を有する。特定の実施形態では、本発明のコア2 GlcNAcT変異体ポリペプチドはまた、ネイティブなコア2 GlcNAcT1と実質的に同じであり得るコア2 GlcNAcT1供与体基質及び受容体基質に対するK値を有する。グリコシルトランスフェラーゼ産物であるUDP及びGlcNAc(β1−6)Gal(β1−3)GalNAcα−pNpの阻害能力は、本発明のC2変異体及びネイティブなコア2 GlcNAcT1に関して実質的に同じであり得る。ネイティブ又は野生型酵素と同様に、本発明のC2変異体は、基質としてUDP−Glcを使用しない。特定の実施形態では、本発明は、本明細書中に記載する変異体ポリペプチドの保存的置換を含む変異体ポリペプチドを意図する。
【0014】
他の付加、置換及び/又は欠失が本発明のC2変異体になされてもよい。例えば、マウスC2変異体は、235位のシステインで第2のアミノ酸置換を必要に応じて包含してもよい。代替的には、当業者に既知であるように、末端アミノ酸残基の1つ又はそれ以上は
、C2変異体の改善された特性を実質的に保持しながら核酸配列から欠失されてもよい。ある実施形態では、N末端アミノ酸残基が欠失される。
【0015】
本発明はまた、C2変異体ポリペプチドをコードする核酸分子又はポリヌクレオチドに関する。
【0016】
上記ポリヌクレオチドを使用して、宿主細胞を形質転換して、本発明のC2変異体を発現することができる。上記ポリヌクレオチドはまた、関連酵素を検出するためのプローブとして使用することもできる。上記ポリヌクレオチドは、DNAサイジング標準物質として使用することができる。
【0017】
本発明はさらに、本発明の核酸分子を含む組換えベクターに関する。本発明の核酸分子は、適切なベクターに挿入されてもよく、ベクターは、挿入されたコード配列の転写及び翻訳に必須の要素を含有し得る。したがって、本発明の核酸分子、及び適切な場合、核酸分子に連結された1つ又はそれ以上の転写及び翻訳要素を含むベクターが構築され得る。
【0018】
ベクターを使用して、宿主細胞を形質転換することができる。したがって、本発明は、本発明のベクターを含有する宿主細胞を提供する。同様に、本発明は、かかるベクター及び宿主細胞を作製する方法を提供する。
【0019】
本発明の変異体C2ポリペプチドは、当業者に既知の多数の方法のいずれか1つの方法によりコード、発現及び精製され得る。好ましい生産方法は、材料のコスト及び入手可能性、並びに他の経済上の考慮を含む多くの要因に依存する。所定の状況に関する最適な生産手順は、最低限の実験を通して当業者に明らかであろう。
【0020】
本発明のある態様によれば、本発明の核酸分子を利用した組換え技法によりC2変異体を生産する方法が提供される。上記方法は、C2変異体の発現を促進する条件下で、C2変異体をコードする核酸配列を含有する組換え宿主細胞を培養すること、及び続くC2変異体の回収を含み得る。
【0021】
一態様では、本発明は、C2変異体を調製する方法であって、(a)C2変異体をコードする核酸分子を含む本発明のベクターを宿主細胞へ移入すること、(b)非形質転換宿主細胞から形質転換宿主細胞を選択すること、(c)上記C2変異体の発現を可能にする条件下で、選択した形質転換宿主細胞を培養すること、及び(d)上記C2変異体を単離することを含む方法を提供する。
【0022】
本発明はさらに、本発明の方法を用いて得られる組換えC2変異体ポリペプチドを意図する。
【0023】
本発明のC2変異体ポリペプチドは、ポリペプチドのような他の分子と結合させて、融合ポリペプチド又はキメラポリペプチドを調製し得る。これは、例えばN末端又はC末端融合ポリペプチドの合成により達成され得る。
【0024】
本発明はさらに、本発明のC2変異体ポリペプチドに対して特異性を有する抗体を意図する。抗体は、検出可能な物質で標識してもよく、C2変異体ポリペプチドを検出するのに使用され得る。別の実施形態では、本発明は、C2変異体ポリペプチドに特異的に結合する単離された抗体を提供する。
【0025】
それらの改善された特性により、本発明のC2変異体は、コア2 GlcNAcTのモジュレーターを同定するためのスクリーニング方法での使用に特に適切である。本発明の
一態様では、C2変異体を使用して、コア2 GlcNAcTの阻害剤を同定する方法が提供される。
【0026】
さらに、本発明は、コア2 GlcNAcTの生物学的活性を調節する能力に関して試験化合物を評価する方法を提供する。「調節する」は、コア2 GlcNAcTの生物学的活性の変化又は変更を指す。調節は、活性の増加若しくは減少、特徴(例えば、動的特徴)、又はポリペプチドの生物学的、機能的若しくは免疫学的特性の任意の他の変化であり得る。
【0027】
本発明のある実施形態では、コア2 GlcNAcTのアンタゴニストとしての有効性に関して化合物をスクリーニングする方法であって、a)ポリペプチドのアンタゴニスト活性が検出され得る条件下で、C2変異体ポリペプチドを試験化合物と接触させる工程、及びb)アンタゴニスト活性を検出する工程を含む方法が提供される。
【0028】
本発明の方法を用いて同定される物質及び化合物は、コア2 GlcNAcTの生物学的活性を調節するのに使用されてもよく、それらは、炎症性障害、肝臓障害、腎臓障害、骨格筋障害、心臓血管障害、糖尿病、感染性疾患、ホルモン性疾患、寄生虫疾患及び増殖性疾患(例えば、癌)のようなコア2 GlcNAcTにより媒介される状態の処置(treatment)において使用され得る。したがって、上記物質及び化合物は、これらの状態の1つ又はそれ以上を患う個体への投与用の組成物へ処方してもよい。したがって、本発明はまた、本発明の方法を用いて同定される物質若しくは化合物の1つ又はそれ以上、及び薬学的に許容可能なキャリア、賦形剤又は希釈剤を含む組成物に関する。これらの状態を処置又は防止する方法であって、それらを必要とする患者に本発明の組成物を投与することを含む方法もまた提供される。
【0029】
コア2トランスフェラーゼ活性を有する新規なC2変異体ポリペプチドおよびこれをコードする核酸を提供した場合、したがって本発明は、sLe抗原を含むオリゴ糖及び/又は多糖(例えば、二糖又はそれ以上の糖)を調製する方法をさらに提供する。特定の実施形態では、本発明は、オリゴ糖を調製する方法であって、本発明のC2変異体ポリペプチドの存在下で、糖供与体及び受容体を含む反応混合物を接触させることを含む方法に関する。
【0030】
本発明のさらなる態様によれば、科学研究、DNAの合成及びベクターの製造に関連したin vitroでの目的で、ポリペプチド又は核酸分子を利用する方法が提供される。
【0031】
本発明のこれら及び他の態様、特徴及び利点は、以下の図面及び詳細な説明から当業者に明らかなはずである。
【0032】
[詳細な説明]
本発明によれば、当該技術分野の技術内の従来の分子生物学、微生物学及び組換えDNA技法が使用され得る。かかる技法は、文献中で十分に説明されている。例えば、Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)、DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II(D.N. Glover ed. 1985)、Oligonucleotide
Synthesis(M.J. Gait ed. 1984)、Nucleic Acid Hybridization B.D. Hames & S.J. Higgins eds.(1985)、Transcription and Translation B.D. Hames & S.J. Higgins eds.(1984)、Animal Cell Culuture R.I. Freshney, ed.(1986)、Immobilized Cells and enzymes IRL Press, (1986)及びB. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)を参照されたい。
【0033】
用語解説
「コア2 GlcNAcT」又は「コア2トランスフェラーゼ」という用語は、本明細書中で使用する場合、天然に存在する(「ネイティブ」又は「野生型」)コア2 GlcNAcT、並びに宿主細胞中で発現される場合にネイティブなタンパク質の反応と同一の反応を触媒する天然に存在するコア2 GlcNAcTのアミノ酸配列と重複するアミノ酸配列を有する天然に存在しないポリペプチド(例えば、組換えポリペプチド)を包含する。この用語はまた、対立遺伝子、種及び組織改変体も包含する。対立遺伝子改変体は、たった1つ又は多くても数個のアミノ酸置換により、ネイティブ又は野生型コア2 GlcNAcTと異なる。ポリペプチドの種バリエーションは、生物の異なる種間で天然に存在するバリエーションである。コア2 GlcNAcTは、コア2 GlcNAcT L型(T1)、特にヒトコア2 GlcNAcT[配列番号3を参照、またGenBankアクセス番号AAA35919(aa)及びM97347(nt)も参照]、マウスコア2 GlcNAcT[配列番号7を参照、またGenBankアクセス番号Q09324(aa)及びU19265(nt)も参照]又は別の種由来のコア2 GlcNAcTであり得る。
【0034】
「コア2 GlcNAcT活性」又は「コア2トランスフェラーゼ活性」は、コア2 GlcNAcTによるコア1からコア2構造への変換を指す。コア2 GlcNAcTの触媒活性は、ネイティブなコア2 GlcNAcTと実質的に同じである。触媒活性は、それがネイティブなコア2 GlcNAcTに関して得られる活性と同一である場合、「実質的に同じである」とみなされ、又はそれはネイティブなコア2 GlcNAcTの活性と比較して2倍〜10倍、2倍〜5倍活性であってもよいし、2倍〜3倍劣る活性であってもよい。
【0035】
触媒活性は、C2変異体の活性(例えば、触媒効率及び動力学的パラメータ)を野生型又はネイティブなコア2 GlcNAcTの活性と比較することにより評価される。C2変異体の活性は、例えば実施例に示されるように、1つ又はそれ以上の試験基質に対して測定され得る。
【0036】
「変異体」という用語は、本明細書中で使用される場合、アミノ酸残基の少なくとも1つが、置換アミノ酸残基で置き換えられるか、又は欠失されているコア2 GlcNAcTを指す。変異体ポリペプチドは、野生型ポリペプチドと比較して有利な特性を有する。ある態様では、変異体ポリペプチドは、野生型ポリペプチドと比較して増大した安定性を有する。
【0037】
「置換アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸を置き換え、且つ本来のアミノ酸と異なるアミノ酸を指す。置換アミノ酸は、それが重要な基質相互作用をブロックしないか、又は酵素のフォールディング/コンホメーションを劇的に変更させないように選択される。ある特定の実施形態では、置換アミノ酸は、変異体へ増大した安定性を付与し、一般的に酸化、アルキル化及び/又は重金属結合に対して感受性でないアミノ酸である。特に、置換アミノ酸は、空気酸化、酸化剤、チオール反応性試薬及び重金属により引き起こされる不活性化に対して非感受性である。かかるアミノ酸の例としては、天然アミノ酸セリン(Ser)、アラニン(Ala)及びバリン(Val)、並びにそれらのD及びL立体異性体における対応する非天然アミノ酸(例えば、N−メチルバリン、ノルバリン)及びそれらのアナログが挙げられる。
【0038】
アミノ酸に関して「アナログ」という用語は、C末端カルボキシル基、N末端アミノ基又は側鎖官能基のいずれかが別の官能基に化学的に改変されたアミノ酸を指す。アミノ酸アナログは、それらのN末端アミノ基又はそれらの側鎖基上で、化学的にブロックされて
いる(可逆的又は不可逆的に)か、又は改変されている天然及び非天然アミノ酸を包含する。セリン、アラニン及びバリンのアミノ酸アナログの例としては、L/D−N−メチルセリン、L/D−N−メチルアラニン、L/D−N−メチルバリン、L−セリンヒドロキサメート、N−(2−アミノエチル)−b−アラニン、D−バリン−OH、L−アラニン−OH、L/D−セリン(tBu)−OH、N−メチル−L/D−アラニン−OH及びN−メチル−L/D−バリン−OHが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
本発明のある実施形態では、置換アミノ酸は、野生型コア2 GlcNAcTの217位のシステインにおけるセリンである。
【0040】
本発明の別の実施形態では、置換アミノ酸は、野生型コア2 GlcNAcTの217位のシステインにおけるアラニンである。
【0041】
C2変異体ポリペプチドに関して本明細書中で使用する場合の「安定性」は、C2変異体ポリペプチドが、酸化、アルキル化又は重金属結合に対して感受性でないか、又はそれらに対する減少された感受性を有することを意味する。特に、「安定性」は、野生型酵素と比較して、チオールを標的とする試薬に対する減少された感受性を指す。ある態様では、この用語は、空気酸化、酸化剤、チオール反応性試薬及び重金属により引き起こされる不活性化に対する非感受性を指す。
【0042】
「核酸」又は「核酸分子」又は「オリゴヌクレオチド」という用語若しくは本明細書中の用語的(grammatical)等価物は、一緒に共有結合されている少なくとも2つのヌクレオチドを指す。これらの用語は、改変若しくは非改変DNA、RNA又は混合ポリマーを包含すると意図され、一本鎖、二本鎖又は三重鎖のいずれであってもよく、センス又はアンチセンス鎖を表す。例えば、核酸配列は、一本鎖又は二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖領域、又は一本鎖、二本鎖及び三本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、又は一本鎖、より典型的には、二本鎖又は三本鎖、又はRNA若しくはDNA、又はRNA及びDNAの両方を含む領域の混合物であり得るRNAが挙げられる。かかる領域における鎖は、同じ分子由来又は異なる分子由来であり得る。DNA又はRNAは、1つ又はそれ以上の改変塩基を含有してもよい。例えば、DNA又はRNAは、安定性のために、又は他の理由で改変された骨格を有し得る。したがって、核酸アナログは、例えばホスホルアミド(Beaucage et al. (1993) Tetrahedron 49 (10):1925)及びその中の参照文献)、Letsinger (1970) J. Org. Chem. 35: 3800、 Sprinzl et al. (1977) Eur. J. Biochem. 81:579、Letsinger et al. (1986) Nucl. Acids Res. 14: 3487、Sawai et al. (1984) Chem. Lett. 805、Letsinger et al. (1988) J. Am. Chem. Soc. 110:4470、及びPauwels et al. (1986) Chemica Scripta 26: 1419)、ホスホロチオエート(Mag et al. (1991) Nucleic Acids Res. 19:1437、及び米国特許第5,644,048号)、ホスホロジチオエート(Briu et al. (1989) J. Am. Chem. Soc. 111:2321)、O−メチルホスホロアミダイト結合(Eckstein, Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approch, Oxford University Pressを参照)並びにペプチド核酸骨格及び結合(Egholm (1992) J. Am. Chem. Soc. 114:1895、Meier et al. (1992) Chem. Int. Ed. Engl. 31:1008、Nielsen (1993) Nature, 365:566、Carlsson et al. (1996) Nature 380:207を参照)を含む代わりの骨格を有し得るものが挙げられる。他のアナログ核酸としては、正の骨格(Denpcy
et al. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 6097)、非イオン性骨格(米国特許第5,386,023号、同第5,637,684号、同第5,602,240号、同第5,216,141号及び同第4,469,863号、Letsinger et al (1988) J. Am. Chem. Soc. 110:4470、Letsinger et al. (1994) Nucleoside & Nucleotide 13:1597、Chapters 2 and 3, ACS Symposium Series 580, 「Carbohydrate Modifications in Antisense Research」, Ed. Y.S. Sanghui and P. Dan Cook、Mesmaeker et al. (1994), Bioorganic & Medicinal Chem. Lett. 4:395、Jeffs et al. (1994) J. Biomolecular NMR 34:17
、Tetrahedron Lett. 37:743 (1996))及び非リボース骨格(米国特許第5,235,033号及び同第5,034,506号、並びにChapters 6 and 7, ACS Symposium Series
580, Carbohydrate Modifications in Antisense Research, Ed. Y.S. Sanghui and P. Dan Cookに記載されるものを含む)が挙げられる。1つ又はそれ以上の炭素環式糖を含有する核酸もまた、核酸の定義内に包含される(Jenkins et al. (1995), Chem. Soc. Rev.
pp169-176を参照)。幾つかの核酸アナログが、Rawls, C & E News June 2, 1997 page 35に記載されている。標識のようなさらなる部分の付加を容易とするために、又は生理学的環境においてかかる分子の安定性及び半減期を増大させるために、リボース−リン酸骨格のこれらの改変が行われ得る。
【0043】
「核酸分子」という用語、特にDNA又はRNAは、一次及び二次構造のみを指し、その用語は、一次および二次構造を任意の特定の三次形態に限定しない。
【0044】
「アミノ酸」又は「アミノ酸残基」という用語は、本明細書中で使用する場合、天然、合成又は改変アミノ酸を指す。
【0045】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すのに本明細書中では交換可能に使用される。この用語は、1つ又はそれ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸残基の人工的な化学的アナログであるアミノ酸ポリマー、並びに天然に存在するアミノ酸ポリマーに適用する。
【0046】
「保存的置換」という用語は、分子の活性及び/又は結合親和性を実質的に変更しないアミノ酸置換を表すためにタンパク質又はペプチドに関して使用される。通常、保存的アミノ酸置換は、あるアミノ酸を、類似の化学的特性(例えば、電荷又は疎水性)を有する別のアミノ酸で置換することを包含する。以下の6つの群はそれぞれ、互いに典型的な保存的置換であるアミノ酸を含有する:1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、4)アルギニン(R)、リシン(K)、5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)及び6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0047】
「融合分子」は、本発明のコア2 GlcNAcTポリペプチドへ結合されている(直接的又はリンカーを介して)任意の分子を指す。好ましい融合分子は、コア2 GlcNAcTポリペプチドとの融合タンパク質として発現され得るタンパク質である。
【0048】
「特異的に結合する」という用語は、本明細書中で使用する場合、生体分子(例えば、タンパク質、核酸、抗体等)に関する場合は、分子の異種集団(例えば、タンパク質及び他の生物製剤)中の生体分子の存在を決定する結合反応を指す。したがって、指定された条件(例えば、抗体の場合ではイムノアッセイ条件、又は核酸の場合ではストリンジェントなハイブリダイゼーション条件)下で、特定のリガンド又は抗体は、その特定の「標的」分子に結合し、サンプル中に存在する他の分子には、有意な量で結合しない。特定の実施形態では、抗体は、約10−6M又は10−7Mを超えるKd、好ましくは約10−8Mを超えるKd、さらに好ましくは10−9Mを超えるKd、最も好ましくは約10−10Mを超えるKdで、その標的(例えば、本発明のコア2 GlcNAcTポリペプチド)を特異的に結合する。
【0049】
本発明の核酸分子
上述のように、特定の実施形態では、本発明は、C2変異体ポリペプチドをコードする核酸分子を提供する。
【0050】
本発明の一実施形態では、下記を含む単離された核酸分子が意図される。
【0051】
(i)配列番号9、10、11、12、17、18、19及び20を含むか、又は配列番号9、10、11、12、17、18、19及び20から本質的に構成されるC2変異体ポリペプチドをコードする核酸配列、
【0052】
(ii)(i)に相補的な核酸配列、
【0053】
(iii)遺伝コードの縮重に起因してコドン配列において(i)又は(ii)のいずれとも異なる核酸配列及び/又は
【0054】
(iv)(i)、(ii)又は(iii)の対立遺伝子若しくは種バリエーション。
【0055】
特定の実施形態では、単離された核酸分子は、下記を含む。
【0056】
(i)配列番号13、14、15、16、21、22、23及び24を含むか、又は配列番号13、14、15、16、21、22、23及び24から本質的に構成される核酸配列、
【0057】
(ii)(i)に相補的な核酸配列、
【0058】
(iii)遺伝コードの縮重に起因してコドン配列において(i)又は(ii)の核酸配列のいずれとも異なる核酸配列及び/又は
【0059】
(iv)(i)、(ii)又は(iii)の対立遺伝子若しくは種バリエーション。
【0060】
「相補的」という用語は、塩基対形成による、許容塩及び温度条件下での核酸分子の自然結合を指す。例えば、配列「A−G−T」は、相補的配列「T−C−A」に結合する。2つの一本鎖分子間の相補性は、「部分的」であってもよく(ここでは、核酸のほんの幾つかが結合する)、又は2つの一本鎖分子間の相補性は、全体的な相補性が一本鎖分子間に存在する場合には完全であってもよい。
【0061】
好ましい実施形態では、本発明の単離された核酸分子は、配列番号9、10、11、12、17、18、19及び20で示されるアミノ酸配列によりコードされる核酸配列を含むか、又は配列番号13、14、15、16、21、22、23及び24(ここでTはUであってもよい)で示される核酸配列を含む。
【0062】
C2変異体ポリペプチドをコードし、且つ遺伝コードにおける縮重に起因して配列番号9、10、11、12、17、18、19又は20の核酸配列と異なる配列を含む単離された核酸分子もまた本発明の範囲内である。かかる核酸は、同等のポリペプチドをコードするが、遺伝コードにおける縮重に起因して配列番号13、14、15、16、21、22、23及び24の配列と、配列が異なる。例えば、種バリエーション、すなわち異なる種間で天然に存在するヌクレオチド配列のバリエーションが意図される。
【0063】
変異は、当業者に既知の方法を用いて、コア2 GlcNAcT核酸分子に導入されてもよい。ある実施形態では、C2変異体は、コア2 GlcNAcTをコードするDNAの部位特異的変異誘発により調製される。部位特異的変異誘発又は非ランダム変異誘発を実施するための技法は、当該技術分野で既知であり、オリゴヌクレオチド媒介性変異誘発(Adellman et al., (1983) DNA, 2: 183)、カセット変異誘発(Wells et al. (1985) Gene
344:315)及び結合変異誘発(Ladner et al WO88/06630号)が挙げられるが、こ
れらに限定されない。タンパク質の部位特異的改変に関するプロトコルは、当該技術分野で既知である(例えば、米国特許第5,932,419号、同第5,789,166号、同第5,705,479号、同第5,635,475号、同第5,556,747号、同第5,354,670号、同第5,352,779号、同第5,284,760号及び同第5,071,743号を参照)。さらに、部位特異的変異誘発用のキットが市販されている(BD Biosciences Clontechから入手可能な部位特異的変異誘発キットであるTRANSFORMER(商標)、Bio-Radから入手可能なMutaGeneファージミドin
vitro変異誘発キット、及びStratagene(登録商標)からのQUICKCHANGE(商標)部位特異的変異誘発キットを参照)。
【0064】
一実施形態では、置換アミノ酸残基(例えばセリン、又は特定の実施形態では、システイン又はセリン以外の任意のアミノ酸)は、ポリメラーゼ連鎖反応技法を用いたオリゴヌクレオチド媒介性変異誘発により、選択した位置(例えば、システイン217)へ導入される。コア2 GlcNAcTをコードする核酸分子は、便宜上、或いは望ましい場合に、当業者が選ぶことのできる適切なプラスミドにより保有される。プラスミドの例としては、pBR,pUC、pUB、pET、pTRiEx、pFLAG又はpHY4シリーズが挙げられる。
【0065】
部位特異的変異誘発に関して、選択した変異部位を含有するフラグメントは、ネイティブなコア2 GlcNAcTをコードする遺伝子から制限エンドヌクレアーゼにより切断され得る。フラグメントは、修飾(modified)PCR技法における鋳型として使用される(Higushi et al. (1988) Nucleic Acid Res., 16: 7351-7367)。所望の変異を含有するオリゴヌクレオチドは、5’と3’PCRフランキングプライマー間の鎖伸長を開始させるためのミスマッチプライマーとして使用される。概して、手順は、ミスマッチプライマー及び5’プライマーを用いて、所望の塩基置換(例えば、Cys217をSerへ)を含有するDNAフラグメントを生成することを包含する。DNAフラグメントは、電気泳動によりプライマーから分離されて、所望の塩基置換を含有する完全フラグメントを生成するための3’プライマーを用いた第2のPCR反応における新たな5’プライマーとして使用される。変異は、配列決定により確認され、本来のフラグメントの位置へと挿入し戻される。
【0066】
本発明の特定の実施形態では、C2変異体は、Bauer他に対する米国特許第5,789,166号、同第5,932,419号及び同第6,391,548号に記載される部位特異的変異誘発技法を用いて生産される。
【0067】
2個以上の変異をコア2 GlcNAcTへ導入することができ、好ましくは本明細書中に記載するC2変異体の特性を保持する。例えば、変異(例えば、付加、置換及び/又は欠失)は、システイン217に加えて他の位置で導入することができ、変異は、新たな制限部位を創出することができ、コドン優先を変化させることができ、或いはスプライス改変体を生産することができる。ある実施形態では、マウスC2変異体は必要に応じて、システイン235で第2のアミノ酸置換を包含し得る。別の実施形態では、N末端アミノ酸が欠失される。
【0068】
本発明の核酸分子は、標準的な技法を用いて化学的合成されてもよい。ポリデオキシヌクレオチドを化学的に合成する方法は既知であり、固相合成(これは、ペプチド合成のように、市販のDNA合成機で完全に自動化されている)(例えば、Itakura et al., 米国特許第4,598,049号、Caruthers et al. 米国特許第4,458,066号並びにItakura 米国特許第4,401,796号及び同第4,373,071号を参照)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
C2変異体ポリペプチド
ある態様では、本発明の単離されたコア2変異体ポリペプチドのアミノ酸配列は、コア2 GlcNAcTの触媒活性を維持しながら、野生型コア2 GlcNAcTと比較して増大した安定性をもたらすアミノ酸置換又は欠失を伴うコア2 GlcNAcTの配列を含む。
【0070】
一態様では、天然に存在するコア2 GlcNAcTの217位に対応する本来のシステイン残基は、アミノ酸残基置換により置き換えられるか、或いは欠失される。コア2 GlcNAcTのシステイン217の変更が、触媒活性の保持と共に酵素の安定性を増大させることを見出した。
【0071】
特定の実施形態では、天然に存在するコア2 GlcNAcTポリペプチドの217位に対応するシステインは、アミノ酸配列WXYXINXCGXDFP(配列番号25)中で同定することができ、ここでXは、任意のアミノ酸残基であり、システインは、アミノ酸配列の8番目の位置にある。システイン残基は、本明細書中で記載されるように置き換えられるか、又は欠失される。したがって、本発明は、アミノ酸配列WXYXINXGXDFP(配列番号31)(式中、X、X、X及びXはそれぞれ独立して、任意のアミノ酸残基であり、Xは、システイン以外の任意の残基、或いは特定の実施形態では、システイン又はセリン以外の任意の残基である)を含む単離されたコア2
GlcNAcTポリペプチドを提供する。ある特定の実施形態では、Xは、リジン、アルギニン又はヒスチジンであり、Xは、イソロイシン、バリン又はロイシンであり、Xは、ロイシン、イソロイシン又はバリンであり、Xは、セリン又はアラニンであり、Xは、イソロイシン、バリン又はメチオニンである。
【0072】
さらなる実施形態では、単離されたコア2 GlcNAcTポリペプチドは、アミノ酸配列WKYLINLXGMDFP(配列番号32)を含む。特定の実施形態では、Xは、セリン又はアラニンである。特定の実施形態では、天然に存在するコア2 GlcNAcTポリペプチドは、ヒト又はマウスポリペプチドである。
【0073】
ある実施形態では、本来のアミノ酸217位に対応するシステイン残基は、セリン残基で置き換えられる。別の実施形態では、本来のアミノ酸217位に対応するシステイン残基は、アラニン残基で置き換えられる。
【0074】
本発明の1つの好ましい実施形態では、C2変異体ポリペプチドは、配列番号9、11、17又は19のアミノ酸配列を含む。
【0075】
本発明はまた、本発明のポリペプチドのアイソフォームを意図する。アイソフォームは、本発明のポリペプチドと同じ又は異なる数及び種類のアミノ酸を含有するが、アイソフォームは、異なる分子構造を有してもよい。本発明により意図されるアイソフォームは好ましくは、C2変異体ポリペプチドと同じ特性(例えば、類似したコア2機能及び特異性及び/又は酸化的不活性化若しくはチオール反応性試薬に対する非感受性)を有する。例えば、アイソフォームは、本発明のポリペプチドと比較して異なるグリコシル化パターンを有してもよい。
【0076】
本発明はまた、融合ポリペプチド又はキメラポリペプチドを生産するように、選択したポリペプチド又はマーカーポリペプチド(以下を参照)又は他のグリコシルトランスフェラーゼと結合させたC2変異体ポリペプチドを包含する。
【0077】
C2変異体ポリペプチドは、組換えDNA方法を用いて調製してもよい。したがって、C2変異体ポリペプチドをコードする配列を有する本発明の核酸は、ポリペプチドの良好
な発現を確実にする適切なベクターへ、既知の様式で組み込まれ得る。考え得る発現ベクターとしては、ベクターが、使用する宿主細胞と適合性である限りは、コスミド、プラスミド、ファージ又は改変ウイルス(例えば、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
本発明はまた、本発明の核酸分子、並びに挿入されるポリペプチド配列の転写及び翻訳に必須の調節配列を含有する本発明のベクターを意図する。適切な調節配列は、細菌、真菌、ウイルス、哺乳類又は昆虫遺伝子を含む様々な供給源に由来し得る(例えば、Goeddel (1990) Gene Expression Tehcnology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CAに記載される調節配列を参照)。適切な調節配列の選択は、以下に論述するように、選択される宿主細胞に依存し、当業者により容易に達成され得る。必須の調節配列は、野生型コア2 GlcNAcT及び/又はそのフランキング領域により供給され得る。
【0079】
本発明のベクターはまた、本発明の組換え分子で形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞の選択を容易とするマーカー遺伝子を含有してもよい。マーカー遺伝子の例は、ある特定の薬物、β−ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコール、アセチルトランスフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、又は免疫グロブリン若しくはその一部(例えば、免疫グロブリン、好ましくはIgGのFc部分)に対する耐性を付与するG418及びハイグロマイシンのようなポリペプチドをコードする遺伝子である。マーカーは、所定の核酸とは別個のベクター上で導入され得る。
【0080】
ベクターはまた、組換えポリペプチドの増大された発現、組換えポリペプチドの増大された溶解性、及び親和性精製においてリガンドとして作用することにより標的組換えポリペプチドの精製の助長を提供する融合部分をコードする遺伝子を含有してもよい。例えば、タンパク質分解性切断部位を標的組換えポリペプチドへ付加して、融合ポリペプチドの精製に続いて融合部分から組換えポリペプチドの分離を可能としてもよい。典型的な融合発現ベクターとしては、pGEX(Amrad Corp., Melbourne, Australia)、pMAL(New England Biolabs, Beverly, MA)、pFLAG(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)、及びpRIT5(Pharmacia, Piscataway, NJ)(これらはそれぞれ、組換えポリペプチドにグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、又はプロテインAを融合する)が挙げられる。利用され得る別の発現ベクター系は、pTriEX(商標)システム(Novagen, Madison, WI)である。
【0081】
本発明の1つの好ましい実施形態では、C2変異体ポリペプチド融合構築物は、配列番号10、12、18又は20のアミノ酸配列を含む。
【0082】
ベクターを宿主細胞に導入して、形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞を生産してもよい。「トランスフェクトされた」及び「トランスフェクション」という用語は、多くの標準的な技法の1つによる細胞への核酸(例えば、ベクター)の導入を包含する。細胞は、トランスフェクトされた核酸が表現型の変化をもたらす場合に、核酸により「形質転換」される。原核生物細胞は、例えばエレクトロポレーション又は塩化カルシウム媒介性形質転換により、核酸でトランスフェクト又は形質転換され得る。核酸は、リン酸カルシウム又は塩化カルシウム共沈殿、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション、リポフェクチン、エレクトロポレーション又はマイクロインジェクションのような従来の技法により、哺乳類細胞へ導入され得る。宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトする適切な方法は、例えばSambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press及び他の研究室テキストに見出すことができる。
【0083】
適切な宿主細胞としては、広範囲の原核生物及び真核生物宿主細胞が挙げられる。例えば、本発明のポリペプチドは、大腸菌のような細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルスを使用して)、酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞及び植物又は動物細胞(特に、哺乳類細胞)中で発現させてもよい。他の適切な宿主細胞は、Goeddel (1991) Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CAに見出すことができる。外因性遺伝物質を宿主細胞へ導入する方法は、当業者に既知である。
【0084】
本発明のC2変異体ポリペプチドをコードする核酸配列は、選択した宿主細胞におけるポリペプチドの発現に好ましいコドン、制限エンドヌクレアーゼ酵素による切断の部位、及び/又は容易に発現されるベクターの構築を容易とするさらなる開始、終結又は中間配列の提供を包含してもよい。
【0085】
挿入される核酸配列の発現を調節するか、又は所望の様式でポリペプチドを修飾及び切断する宿主細胞もまた選択され得る。ポリペプチドの翻訳後プロセシング及び修飾に特異的且つ特徴的なメカニズムを有する宿主系又は細胞系が選択されてもよい。例えば、CHO、VERO、BHK、HL60、A431、HeLa、COS、MDCK、293、3T3及びWI38を含む真核宿主細胞が使用され得る。ポリペプチドの長期間高収率の安定な発現のために、遺伝子産物を安定に発現する細胞系及び宿主系を操作してもよい。
【0086】
宿主細胞、特に本明細書中に記載する方法を用いて生産される細胞系は、コア2 GlcNAcTの活性を調節する物質及び化合物をスクリーニング並びに評価するのに特に有用であり得る。
【0087】
C2変異体ポリペプチドはまた、固相合成(Merrifield (1964) J. Am. Chem. Assoc., 85: 2149-2154)又は均質溶液(homogenous solution)中での合成(Houbenweyl (1987) Methods of Organic Chemistry, ed E. Wansch, Vol. 15 I and II, Thieme, Stuttgart)のようなポリペプチドの化学において既知の技法を用いて化学的合成により調製されてもよい。
【0088】
ポリペプチドのような他の分子(例えば、マーカー又は他のグリコシルトランスフェラーゼ)と結合させた、本発明のC2変異体ポリペプチドを含むN末端若しくはC末端融合ポリペプチド又はキメラポリペプチドは、組換え技法により、C2変異体ポリペプチドのN末端又はC末端、及び所望の生物学的機能を有する選択したポリペプチド又はマーカーポリペプチドの配列を融合させることにより調製され得る。得られた融合ポリペプチドは、本明細書中に記載するように、選択したポリペプチド又はマーカーポリペプチドに融合させたC2変異体ポリペプチドを含有する。融合ポリペプチドを調製するのに使用され得るペプチド又はポリペプチドの例としては、免疫グロブリン(例えば、IgG)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、プロテインA、HI、赤血球凝集素(HA)、S・タグ、FLAG、β−ガラクトシダーゼ、マルトースE結合タンパク質、GAL、HSP、LacZ、IgG、His−タグ、アビジン及び短縮型myc、又はそれらの一部が挙げられる。
【0089】
ある特定の実施形態では、本発明のC2変異体ポリペプチドは、コア2 GlcNAcT活性を有する。本明細書中に記載するように調製されるC2変異体ポリペプチドは、HPLCに基づく方法(Koenderman et al. (1987) FEBS Lett. 222:42)、疎水性アグリコンに結合させた合成オリゴ糖受容体を用いる方法(Palcic et al. (1988) Glycoconjugate 5:49、及びPierce et al. (1987) Biochem. Biophys. Res. Comm. 146:679)又は本明細書中に記載する酵素アッセイ方法を用いて確認され得る。
【0090】
抗体
本発明のC2変異体ポリペプチドは、ポリペプチドに特異的な抗体を調製するのに使用することができる。本発明のC2変異体ポリペプチドに関する特異性を有する抗体はまた、本明細書中に記載するように宿主細胞において融合ポリペプチドを発現させることにより創出される融合ポリペプチドから惹起され得る。
【0091】
本発明の抗体は、無傷モノクローナル又はポリクローナル抗体、及び免疫学的に活性なフラグメント(例えば、Fab又は(Fab)フラグメント)、抗体重鎖、抗体軽鎖、ヒト化抗体、ヒト抗体、遺伝子操作した単鎖抗体(例えば、scFv分子)(Ladner et al., 米国特許第4,946,778号)、或いはキメラ抗体(例えば、マウス抗体の結合特異性を含有するが、残りの部分がヒト起源である抗体)を包含する。モノクローナル及びポリクローナル抗体、フラグメント並びにキメラを含む抗体は、当業者に既知の方法を用いて調製され得る。
【0092】
例示的適用
本発明の核酸分子、C2変異体ポリペプチド及び抗体は、コア2 GlcNAcTの生物学的活性を調節する(例えば、アップレギュレートする、ダウンレギュレートする等)物質又は化合物の同定方法において使用され得る。同定された物質及び化合物は、コア2
GlcNAcTの調節を要する状態の処置に使用され得る。
【0093】
物質/化合物を同定又は評価する方法
本明細書に記載する方法は、コア2 GlcNAcTの発現若しくは活性を妨害するか又は増強する物質を含むコア2 GlcNAcTの発現又は生物学的活性を調節する物質及び化合物を同定するように設計される。
【0094】
本発明の方法を用いて同定される物質及び化合物としては、Igテールの(tailed)融合ペプチドを含む可溶性ペプチドのようなペプチド、ランダムペプチドライブラリー並びにD及び/又はL立体配置アミノ酸から作製されるコンビナトリアルケミストリー由来の分子ライブラリーのメンバー、ホスホペプチド(ランダム又は部分的に縮重した方向付けられたホスホペプチドライブラリーのメンバーを含む)、抗体(例えば、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、抗イディオタイプ、キメラ、単鎖抗体、フラグメント(例えば、Fab、F(ab))及びFab発現ライブラリーフラグメント、並びにそれらのエピトープ結合フラグメント)、ポリペプチド、核酸、炭水化物及び小有機又は無機分子が挙げられるが、これらに限定されない。物質又は化合物は、内因性の生理学的化合物であり得るか、或いは物質又は化合物は、天然又は合成化合物であり得る。
【0095】
コア2 GlcNAcTの発現若しくは生物学的活性を調節する物質又は化合物は、様々な実施形態では、アゴニスト又はアンタゴニストとして作用することができる。「アゴニスト」という用語は、ポリペプチドの活性の量を増大させるか、或いはポリペプチドの活性の持続時間を延長させる分子を指す。「アンタゴニスト」という用語は、ポリペプチドの活性の量、或いはポリペプチドの活性の持続時間を減少させる分子を指す。アゴニスト及びアンタゴニストは、本発明のポリペプチドと結合するタンパク質、核酸、炭水化物、小有機分子又は任意の他の分子を包含し得る。
【0096】
コア2 GlcNAcTを調節する物質は、本発明のC2変異体ポリペプチドの活性を妨害するか、或いは本発明のC2変異体ポリペプチドの活性を増強するそれらの能力に基づいて同定することができる。本発明のC2変異体ポリペプチドは、アゴニスト及びアンタゴニストをスクリーニングするために、野生型コア2 β−1,6−N−アセチルグリコサミニルトランスフェラーゼを利用した任意の既知のアッセイ系で使用され得る。
【0097】
ある態様では、本発明は、試験物質を、コア2 GlcNAcTの活性を調節するその
能力に関して評価する方法であって、(a)コア2 GlcNAcT受容体及び糖供与体を、上記試験物質の存在下で本発明の変異体ポリペプチドと接触させること、及び(b)工程(a)における受容体へ転移した糖供与体の量を、上記試験物質の非存在下で受容体へ転移した糖供与体の量と比較することを含む方法を提供する。
【0098】
別の態様では、本発明は、物質を、コア2 GlcNAcTの活性を調節するその能力に関して評価する方法であって、(a)コア2 GlcNAcTに対する受容体及び糖供与体及び本発明のC2変異体ポリペプチドを、上記試験物質の存在下で接触させること、(b)受容体へ転移した糖供与体の量を測定すること、及び(c)上記物質が、上記C2変異体ポリペプチドによる上記受容体への上記糖供与体の転移を妨害するか、或いは増強するかどうかを決定するために、上記試験物質の非存在下で工程(a)及び工程(b)を実施することを含む方法を提供する。
【0099】
本発明の方法で使用するのに適した受容体としては、還元末端にリンカーを伴う合成的であるか、或いは天然に存在する構造である糖、オリゴ糖、多糖、糖ペプチド、糖ポリペプチド又は糖脂質(例えば、アシアロ−アガラクト−フェチュイン糖ペプチド及びアシアロムチン)が挙げられるが、これらに限定されない。受容体は概して、β−D−ガラクトシル−1,3−N−アセチル−D−ガラクトサミニル−を含む。
【0100】
適切な糖供与体としては、ヌクレオチド糖、ドリコール−リン酸−糖又はドリコール−ピロリン酸−オリゴ糖(例えば、ウリジンジホスホ−N−アセチルグルコサミン(UDP−GlcNAc))或いはそれらの誘導体若しくはアナログが挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
受容体又は糖供与体は、本明細書中に記載するように検出可能な物質で標識されてもよく、受容体及び糖供与体との本発明のC2変異体ポリペプチドの相互作用は、検出可能な変化を生じる。検出可能な変化は、比色的、光度測定的、放射測定的、電位差測定的等であり得る。
【0102】
受容体は、キャリア(例えば、固相キャリア)又は支持体に直接的又は間接的にカップリングさせてもよい。
【0103】
特定の実施形態では、コア2変異体ポリペプチドを、ポリペプチドが糖供与体を受容体へ転移させるのに有効なpH及び温度で、受容体及び糖供与体と反応させて、ここで反応の生成物が検出される。受容体又は供与体の一方を標識して、検出可能な変化を生じてもよく、或いは反応の生成物を、容易に測定される二次生成物に変換してもよい。ポリペプチドに有効なpH範囲内にpHを維持するように、受容体及び糖供与体とともに緩衝液を使用することが好ましい。緩衝液、受容体及び糖供与体は、アッセイ組成物として使用され得る。EDTA及び洗浄剤のような他の化合物をアッセイ化合物に添加してもよい。
【0104】
本発明のコア2変異体ポリペプチドは、コア2 GlcNAcTのモジュレーターを評価するためのハイスループット方法で使用され得る。例えば、C2変異体ポリペプチドは、PCT/CA99/00550号(WO99/64378号)に記載されるハイスループットスクリーニング技法で使用され得るか、或いはC2変異体ポリペプチドは、放射測定的又は発光測定的アッセイで使用され得る。
【0105】
例として、コア2 β−1,6−N−アセチルグリコサミニルトランスフェラーゼ酵素用の炭水化物受容体をポリマーへカップリングさせること、及びキャリア又は支持体上へコーティングすること、C2変異体ポリペプチド、検出可能な物質で標識した糖ヌクレオチド供与体及び試験化合物が添加され、検出可能な物質により生じる検出可能な変化が測
定されることを含む固相バイオアッセイが提供される。
【0106】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、(a)コア2 β−1,6−N−アセチルグリコサミニルトランスフェラーゼ酵素用の炭水化物受容体をポリマーへカップリングさせる工程、及びそれをキャリア又は支持体上へコーティングする工程、(b)本発明のC2変異体ポリペプチド、検出可能な物質で標識した糖ヌクレオチド供与体、及び試験化合物を添加する工程、及び(c)上記検出可能な物質により生じる検出可能な変化を検出する工程を含む固相バイオアッセイを提供する。
【0107】
受容体がカップリングされ得るポリマーの例としては、ポリアクリルアミドが挙げられるが、これに限定されない。キャリア又は支持体は、例えば、ニトロセルロース、或いはガラス、斑れい岩又は磁鉄鉱であり得る。支持体材料は、球状(例えば、ビーズ)、円筒状(例えば、試験管又はウェルの内部表面、或いはロッドの外部表面)、又は平面状(例えば、シート、試験片)を含む任意の可能な形状を有し得る。
【0108】
検出可能な物質の例としては、放射性同位体(例えば、H、14C、35S、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体、量子ドット等)、発光標識(例えば、ルミノール)、酵素標識(例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、アセチルコリンエストラーゼ)及びビオチニル基(これは、印を付けたアビジン(例えば、光学的又は熱量測定方法により検出され得る蛍光マーカー又は酵素活性を含有するストレプトアビジン)により検出され得る)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のある実施形態では、検出可能な物質は、放射性材料、最も好ましくはトリチウムである。
【0109】
本発明のある態様では、アッセイは、炭水化物受容体をポリマー(例えば、ポリアクリルアミド)へカップリングさせること、及び96ウェルプラスチックプレートの表面のようなキャリア上へコーティングすることを包含する。コア2 β−1,6−N−アセチルグリコサミニルトランスフェラーゼ反応は、C2変異体ポリペプチド及びトリチウム化した糖−ヌクレオチド供与体を用いて実施され、続いて洗浄、シンチレーションカウント用液体の添加、及びβ−カウンターによる放射能の測定を行う。
【0110】
コア2 β−1,6−N−アセチルグリコサミニルトランスフェラーゼを調節する化合物を評価する本発明の方法を適用させるのに適した試薬は、適切な容器にパッケージングされた必要な材料を提供する利便性の高いキットへパッケージングされ得る。キットはまた、本発明の方法を実施するのに有用な適切な支持体を包含してもよい。
【0111】
キットを用いて、本明細書中に記載するスクリーニング方法を実施してもよい。一実施形態では、キットは、本発明のC2変異体ポリペプチド及びコア2 β−1,6−N−アセチルグリコサミニルトランスフェラーゼに対する基質を含む。基質は代表的には、コア2 β−1,6−N−アセチルグリコサミニルトランスフェラーゼに対する受容体及び糖供与体を包含する。
【0112】
特定の実施形態では、キットは、ハイスループット方法を用いて、コア2 β−1,6−N−アセチルグリコサミニルトランスフェラーゼのモジュレーターの検出及び同定に使用される。例えば、キットは、PCT/CA99/00550号(WO99/64378号)に記載されるハイスループット方法で使用することができる。
【0113】
組成物及び治療
本明細書中に記載する方法により同定される物質又は化合物、並びに本発明の抗体は、コア2 β−1,6−N−アセチルグリコサミニルトランスフェラーゼの生物学的活性を
調節するのに使用されてもよく、それらは、コア2 β−1,6−N−アセチルグリコサミニルトランスフェラーゼにより媒介される状態の治療に使用されてもよい。特に、これらは、炎症性障害及び癌を含む多数の障害に関連した細胞接着を調節するのに使用され得る。
【0114】
「炎症性」という用語は、特異的及び非特異的防御系の両方の反応を指す。特異的防御系反応は、抗原に対する特異的免疫系反応である。これらの反応の例としては、ウイルスのような抗原に対する抗体応答、及び遅延型過敏症が挙げられる。非特異的防御系反応は、概して免疫学的記憶が不可能な白血球(マクロファージ、好酸球及び好中球を含む)により媒介される炎症性応答である。非特異的な反応の例としては、蜂に刺された後の即時の腫大及び細菌感染の部位での末梢単核白血球の収集(細菌性肺炎における肺の浸潤及び膿瘍における膿形成)が挙げられる。
【0115】
治療可能な障害としては、慢性関節リウマチ、虚血後白血球媒介性組織損傷(再灌流障害)、凍傷障害又はショック、急性白血病媒介性肺障害(例えば、成人呼吸促迫症候群(ARDS))、喘息、外傷性ショック、敗血症性ショック、腎炎、並びに急性及び慢性炎症(アトピー性皮膚炎、乾癬、異常炎症に関連した神経毒性及び炎症性腸疾患を含む)が挙げられる。様々な血小板媒介性病状(例えば、アテローム性動脈硬化症及び血餅形成)もまた治療することができる。物質及び化合物は、血栓障害に伴う組織損傷を最低限に抑えるのに有用であり得る。例えば、物質、化合物、抗体等は、発作、心筋梗塞、深静脈血栓症、肺塞栓症等を最近経験した個体において、或いはプレ血栓溶解療法において治療上有用であり得る。コア2トランスフェラーゼの阻害剤は、血管新生並びに炎症を起こした組織への白血球接着及び侵入を低減させるのに有用であり得る。
【0116】
物質、化合物又は抗体を用いて、敗血症性ショック又は播種性血管内凝固症候群(DIC)の二次的影響(例えば、病理学的組織崩壊及び/又は広範囲に及ぶ微小循環(microcirculatory)血栓及びびまん性炎症)を治療してもよい。本明細書中の物質、化合物及び抗体は、白血球遊出を阻害し、且つ組織損傷を軽減し得る。
【0117】
物質、化合物又は抗体はまた、外傷性ショック及び関連した急性組織障害を治療するのに有用であり得る。阻害性の物質、化合物及び抗体は、障害に関連した組織損傷を制御するように、局所的又は全身的に投与され得る。
【0118】
本明細書中に記載する方法により同定される物質及び化合物、並びに抗体は、腫瘍の予防及び治療に有用であり得る。腫瘍転移は、循環癌細胞の接着を阻害することにより阻害又は防止され得る。本発明の物質、化合物及び抗体は、白血病、リンパ腫、黒色腫、腺腫、肉腫及び患者における固形組織の癌腫のような様々な形態の新形成の治療に特に有用であり得る。特に、組成物は、悪性黒色腫、膵臓癌、子宮頸癌、肝臓、腎臓、胃、肺、直腸、胸部、腸、胃、甲状腺、くび、頸部、唾液腺、胆管、骨盤、縦隔、尿道、気管支原性、膀胱、食道及び結腸の癌、並びにカポージ肉腫を治療するのに使用され得る。
【0119】
本明細書中に記載する方法により同定される物質及び化合物、並びに本発明の抗体は、心臓血管障害の予防及び治療に使用され得る。かかる障害としては、動脈硬化症(アテローム性動脈硬化症及び非アテローム動脈硬化症を含む)、高血圧、発作、冠動脈疾患、虚血、心筋梗塞、狭心症、心不整脈、洞房結節ブロック、房室結節ブロック、慢性血行力学的荷負荷及び動脈瘤が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0120】
本明細書中に記載する方法により同定される物質又は化合物、及び本発明の抗体を用いて予防又は治療され得る肝臓障害としては、慢性肝炎、肝臓癌、肝硬変、嚢胞性肝疾患、ジルベール症候群、A型肝炎、B型肝炎又はC型肝炎、及び肝臓に対する毒性傷害が挙げ
られる。
【0121】
本明細書中に記載する方法により同定される物質又は化合物、並びに本発明の抗体を用いて治療可能な他の状態は、増殖性障害(例えば、微生物又は寄生虫感染)、糖尿病、骨格筋障害、心筋症及び腎臓障害(例えば、多嚢胞腎疾患、糸球体腎炎)である。これらはまた、ヴィスコット−オールドリッチ症候群又はAIDSに起因するT細胞活性化及び免疫不全を調節するのに、或いは造血前駆細胞成長を刺激して、且つ/又は被験体における化学療法及び放射線療法に対する保護を付与するのに使用され得る。
【0122】
したがって、物質、抗体及び化合物は、in vivoでの投与に適した生物学的に適合性の形態で被験体へ投与するための薬学的組成物中に処方され得る。「in vivoでの投与に適した生物学的に適合性の形態」とは、治療上の効果が任意の毒性の影響よりも上回る投与されるべき物質の形態を意味する。物質は、ヒト及び動物を含む生存生物へ投与することができる。治療的に活性な量の本発明の薬学的組成物の投与は、所望の結果を達成するのに必要な投与量で且つ期間、有効な量として定義される。例えば、物質の治療的に活性な量は、個体の疾患状態、年齢、性別及び体重、並びに抗体の、個体における所望の応答を誘発する能力のような要因に依存して変化し得る。投薬レジメンは、最適な治療的応答を提供するように調節することができる。例えば、幾つかに分割した用量を毎日投与してもよく、或いは用量は、治療状況の緊急性に示されるように比例して低減させてもよい。
【0123】
活性物質は、注射(皮下、静脈内等)、経口投与、吸入、経皮塗布、又は直腸投与によるような利便性のよい様式で投与され得る。投与の経路に応じて、活性物質は、酵素、酸及び化合物を不活性化し得る他の自然条件の作用から化合物を保護するための材料中にコーティングされ得る。
【0124】
本明細書中に記載する組成物は、有効量の活性物質が薬学的に許容可能な賦形剤と混合して組み合わせられるように、被験体へ投与され得る薬学的に許容可能な組成物の調製に関するそれ自体既知の方法により調製することができる。適切な賦形剤は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences(Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pa., USA 1985)に記載されている。これに基づいて、組成物は、1つ又はそれ以上の薬学的に許容可能な賦形剤又は希釈剤と関連させ、適切なpHを有する緩衝溶液中に含有させ、及びある特定の実施形態では、生理学的液体と等浸透圧の物質又は化合物の溶液を包含する(しかし、これに限らない)。
【0125】
薬学的組成物を調製した後、薬学的組成物は、適切な容器に入れて、示される状態の治療に関してラベルを付すことができる。コア2 β−1,6−N−アセチルグリコサミニルトランスフェラーゼのモジュレーター(例えば、阻害剤)の投与に関して、かかるラベリングは、投与の量、頻度及び方法を包含し得る。
【0126】
化合物、物質及び抗体の治療上の有効性並びに毒性は、細胞培養においてか、又は実験動物を用いた標準的な薬学的手順により、例えばED50(集団の50%に治療上有効な用量)又はLD50(集団の50%に対する致死用量)統計データを算出することにより決定され得る。治療指数は、毒性の影響に対する治療上の効果の用量比であり、それは、ED50/LD50比として表すことができる。大きな治療指数を示す薬学的組成物が好ましい。
【0127】
オリゴ糖を調製する方法
本発明はまた、オリゴ糖を調製する方法であって、本発明のC2変異体ポリペプチドの存在下で活性化GlcNAc及び受容体を含む反応混合物を接触させることを含む方法を
提供する。
【0128】
オリゴ糖を調製する方法で使用するための受容体の例は、還元末端にリンカーを伴う合成的であるか、或いは天然に存在する構造である糖、オリゴ糖、多糖、糖ペプチド、糖ポリペプチド又は糖脂質(例えば、アシアロ−アガラクト−フェチュイン糖ペプチド又はアシアロムチン)である。活性化GlcNAcは、ヌクレオチド−糖、ドリコール−リン酸−糖又はドリコール−ピロリン酸−オリゴ糖の一部であり得る。
【0129】
本発明のある実施形態では、オリゴ糖は、哺乳類、特にヒトに対して無毒性であるキャリア、例えば脂質イソプレノイド又はポリイソプレノイドアルコール上で調製される。適切なキャリアの例は、ドリコールリン酸塩である。オリゴ糖は、液体キャリアからのオリゴ糖の化学的除去を可能にする不安的な結合を介してキャリアへ結合されてもよい。代替法では、C2変異体ポリペプチドは、オリゴ糖を液体キャリアからポリペプチドへ転移させるのに使用され得る。
【実施例】
【0130】
以下の実施例は、説明するのに提供されるものであり、本発明を限定するものではない。
【0131】
[実施例1]
部位特異的変異誘発によるC2変異体の調製
Sタグ標識したヒト野生型コア2 GlcNAcT1構築物(配列番号29)由来及びFLAGタグ標識したマウス野生型コア2 GlcNAcT1構築物(配列番号30)由来の二本鎖プラスミドDNAを、Gibco BRL(登録商標)プラスミドmidiプラスミドプレップシステムを用いて単離した。217位でのヒト又はマウスコア2システインは、Stratagene(登録商標)からのQuickChange(商標)部位特異的変異誘発キットを用いて、製造業者の指示書に従って、セリン又はアラニンのいずれかに変異させた。変異させた構築物はそれぞれ、各変異体並びに野生型配列の残りを確認するために、配列決定に送付した。変異させた構築物それぞれに関するプラスミド調製を実施した後、Lipofectamine2000(商標)を用いて、製造業者の指示書に従って、COS−7、CHO又はCHO−S細胞系への一過性トランスフェクションに使用した。
【0132】
ヒト及びマウスコア2変異体の調製の詳細を以下に記載する。
【0133】
ヒトコア2 GlcNAcT1変異体
GをCヌクレオチドで置き換えて、217位のシステインがセリンアミノ酸へ変異されたタンパク質を生成するように、ヒトコア2 GlcNAcT1 cDNA(改変pTriEX−4ベクターへサブクローニングさせた)をヌクレオチドレベルで変異させた。これらの実験は、StratageneからのQuickChange部位特異的変異誘発キットの指示書に従って実施した。ベクター(HC2Lcys217Ser)を、Lipofectamine2000(商標)(Invitrogen)を用いて、製造業者の指示書に従って、COS−7へ一過的にトランスフェクトした。COS−7細胞を、トランスフェクションの前日にT75cmフラスコへ1/8〜1/10希釈に分割した。確実に細胞が80〜90%コンフルエントとなり、且つトランスフェクションの当日に効率的な細胞付着が存在するように、細胞を37℃で、5%CO中で少なくとも16時間、D−MEM+10%FBS中でインキュベートした。トランスフェクション前に、培地をD−MEM 20ml、10%FBS、0.1mM非必須アミノ酸及び2mM L−グルタミンで取り替えた。2つの溶液は、トランスフェクション用に調製し、それにより第1の溶液(溶液A)は、OPTI培地(商標)(GIBCO, BRL)2.5mlに添加されているpTRI−EX(商標)(N
ovagen)N−末端Sタグ標識した野生型又は変異体(Cys217Ser)ヒトコア2 GlcNAcT1 cDNAのいずれか32.25μgから構成された。第2の溶液(溶液B)は、OPTI培地(商標)(GIBCO/BRL)2.5mlと混合したLipofectoamine2000(商標)(Invitrogen)62.46μlを含有する。溶液Bを室温で5分間静置させた後、2つの溶液を一緒に混合した。混合した溶液A及びBを室温で20分間インキュベートした後、それらをCOS−7細胞に添加した。続いて、COS−7細胞/T75cmフラスコを、37℃で5%CO中で少なくとも48時間インキュベートした。
【0134】
トランスフェクションの48時間後、培地を収集して、COS−7トランスフェクト細胞を細胞スクラッパーで回収して、コア2 GlcNAcT1活性を決定した。これに続いて、ウェスタンブロット分析を行った。掻きだした細胞をエッペンドルフチューブに移して、1×PBSを用いた3回の洗浄工程の間に低速(600×g)でスピンした。続いて、細胞を0.1M トリス−HCl(pH 8.0)、0.1%トリトンX−100中に溶解させて、本明細書中に記載する標準的なコア2アッセイを用いて、5μlをコア2
GlcNAcT1活性に関してアッセイした。同様に、培地もまた低速(600×g)でスピンさせて、死細胞片を取り出した。
【0135】
トランスフェクトした培地1ミリリットルを1×Bind/Wash(20mM トリス−HCl pH7.5、0.15M NaCl、0.1%トリトンX−100)緩衝液(商標)(Novagen)2ml及びS−タンパク質(50mM トリス−HCl、pH7.5、150mM NaCl、1mM EDTA、0.02%アジ化ナトリウム中の50%スラリー)アガロース(商標)(Novagen)1mlと混合した。混合物を穏やかに振とうしながら室温でインキュベートして、N末端Sタグ標識した野生型又は変異体(Cys217Ser)ヒトコア2 GlcNAcT1とS−タンパク質アガロースとの間の効率的な結合を確実にした。混合物を、1×1×Bind/Wash緩衝液(商標)(Novagen)10mlを用いた3回の洗浄工程の間に低速(500×g)でスピンした。S−プロテインアガロースを1×Bind/Wash緩衝液(商標)(Novagen)500μl中に再懸濁させて、25μlをウェスタンブロット分析に供した。
【0136】
S−タンパク質アガロース/コア2 GlcNAcT1懸濁液およそ200μlを透明なエッペンドルフチューブへ分離して、ビオチン化トロンビン(商標)(Novagen)を利用して、トロンビン反応を設定した。最適条件は、振とう機上で室温で最大2時間インキュベートしたビオチン化トロンビン(商標)(Novagen)2.5ユニット/3μl(1×ストック濃度、0.83ユニット/μl)であることを予め決定した。2時間のインキュベート後、反応混合物を低速(500×g)で5分間スピンさせて、上清(溶出液)を透明なチューブに移した。低速(500×g)でスピンしている間にペレットを1×Bind/Wash緩衝液(商標)(Novagen)400μlで2回洗浄して、洗浄液すべてを溶出液に添加した。ビオチン化トロンビン(商標)(Novagen)の除去は、ストレプトアビジン(リン酸緩衝液、pH7.5、0.02%アジ化ナトリウム中の50%スラリー)アガロース(商標)(Novagen)200μlを、プールした上清へ添加することにより達成して、10分間振とうしながら室温でインキュベートした。ストレプトアビジンアガロース(商標)(Novagen)を、低速(500g×g)で懸濁液をスピンさせることにより除去した後、上清を2mlのエッペンドルフチューブへ移した。ペレット/ストレプトアビジンアガロース(商標)(Novagen)は、低速(500×g)でスピンしている間に1×Bind/Wash緩衝液(商標)(Novagen)200μlで2回洗浄して、再び上清はすべて、同じ2mlのエッペンドルフチューブに一緒にプールした。野生型及び変異体(Cys217Ser)ヒトコア2 GlcNAcT1酵素の両方の特徴化分析を行った。
【0137】
マウスコア2 GlcNAcT1変異体
マウスコア2GlcNAcT1コード配列であるヌクレオチド100〜1287を、BglII−XbaI挿入部位でpFLAG−CMV−3発現ベクター(Sigma, St.Louis, MO, USA)へサブクローニングした。
【0138】
マウスC217S変異体をコードする核酸を生成するために、pFLAG−CMV−3発現ベクターへサブクローニングしたマウスコア2 GlcNAcT1コード配列であるヌクレオチド100〜1287を塩基対650で変異させた。Gヌクレオチドは、Stratagene(La Jolla, CA)からのQuickChange部位特異的変異誘発キットを用いて、セリン残基をコードするようにCヌクレオチドで交換した。変異誘発性プライマーは、以下の配列:5’−TACTTGATCAATCTCTTGGTATGGATTTCCCT(配列番号26)を有していた。下線を付した配列は、Cys−Ser交換をコードする。
【0139】
マウスC217T変異体をコードする核酸を生成するために、pFLAG−CMV−3発現ベクターへサブクローニングしたマウスコア2 GlcNAcT1コード配列であるヌクレオチド100〜1287を塩基対649及び650で変異させた。T及びGヌクレオチドは、StratageneからのQuickChange部位特異的変異誘発キットを用いて、A及びCヌクレオチドで交換した。変異誘発性プライマーは、以下の配列:5’−TACTTGATCAATCTCACTGGTATGGATTTCCCT(配列番号27)を有していた。下線を付した配列は、Cys−Thr交換をコードする。
【0140】
マウスC217A変異体をコードする核酸を生成するために、pFLAG−CMV−3発現ベクターへサブクローニングしたマウスコア2 GlcNAcT1コード配列であるヌクレオチド100〜1287を塩基対649及び650で変異させた。T及びGヌクレオチドは、StratageneからのQuickChange部位特異的変異誘発キットを用いて、アラニン残基をコードするようにG及びCヌクレオチドで交換した。変異誘発性プライマーは、以下の配列:5’−TACTTGATCAATCTCGCTGGTATGGATTTCCCT(配列番号28)を有していた。下線を付した配列は、Cys−Ala交換をコードする。
【0141】
変異体構築物はそれぞれ、CHO−S又はCOS−7細胞においてトランスフェクトして、発現させた。10%FBS及び0.1mM 非必須アミノ酸(Invitrogen, Burlington, CA)を含有するDMEM培養培地(Invitrogen, Burlington, CA)とともに細胞をインキュベートして、確実に細胞がコンフルエントとなるようにした。トランスフェクションの1時間前に培養培地を交換して、細胞を活性化させた。同一容量の2つの溶液をトランスフェクション用に調製した。第1の溶液(溶液A)は、730ng/mlのOPTI−MEMI(商標)(GIBCO, BRL)中のpFLAG−CMV−3(商標)(Sigma)N−末端FLAGタグ標識した野生型又は変異体(C217S)マウスコア2 GlcNAcT1 cDNAのいずれかであった。第2の溶液(溶液B)は、1.37μl/mlのOPTI−MEMI(商標)(GIBCO, BRL)中のLipofectamine2000(商標)(Invitrogen)であった。溶液Bを室温で5分間インキュベートした後、溶液Aと混合した。混合した溶液A及びBを室温で20分間インキュベートした後、それらをCOS−7又はCHO−S細胞へ添加した。続いて、COS−7細胞又はCHO−S細胞を37℃で5%CO中で少なくとも20時間インキュベートした。FLAGタグ標識した野生型又は変異体(C217S)マウスコア2 GlcNAcT1 cDNA及びLipofectamine2000(商標)の量は、トランスフェクションの規模に依存するが、FLAGタグ標識した野生型又は変異体(C217S)マウスコア2 GlcNAcT1 cDNA 320ng〜640ngに対するLipofectamine2000(商標)0.6μlの比は維持した。
【0142】
細胞をD−PBSで3回洗浄した後、培養培地をCHO−SFM−II(Invitrogen Burlington, CA)で交換した。細胞を24時間インキュンベートして、コア2 GlcNAcT1野生型又はC217S変異体ポリペプチドを含有する無血清培養上清を収集した。CHO−SFM−II上清を24時間毎に収集して、細胞が、コア2 GlcNAcT1野生型又はC217S変異体ポリペプチドのそれらの生産性が損なわれるまで、新鮮なCHO−SFM−II培地を添加した。コア2 GlcNAcT1活性を、細胞培養上清中で同定し、コア2 GlcNAcT1ポリペプチドの存在は、図3A及び図3Bに示すように、SDS−PAGE及びペルオキシダーゼ結合抗FLAG M2抗体(Sigma)を用いたウェスタンブロットにより確認した。
【0143】
FLAGタグ標識C217Sマウスコア2 GlcNAcT1変異体ポリペプチドを精製するために、無血清培養上清1L〜5Lを、CHO−S細胞又はCOS−7細胞の大規模なトランスフェクションから収集した。収集した培養上清を25mlの抗FLAG M1親和性ビーズ(Sigma)に適用した。ビーズ及び上清を穏やかに振とうしながら室温で1時間インキュベートした。続いて、ビーズ及び上清をカラムに移して、5mM CaCl、150mM NaCl及び50mM トリス−HCl(pH7.4)でビーズを洗浄した。カラムの流れを止めて、溶出緩衝液(50mMトリス−HCl、pH7.4中の2mM EDTA及び0.05%ツイーン20)35mlをビーズに添加して、穏やかに混合しながら30分間インキュベートして、ビーズから変異体ポリペプチドを脱離させた。FLAGタグ標識した変異体ポリペプチドを含む溶出液を、カラムの流れを開放させることにより収集した。溶出手順を3回繰り返した。溶出液総計105mlを収集した後、濃縮した。Centricon−Plus80(Millipore, Billerica, MA, USA)を用いて、溶媒を150mM NaCl及び50mMトリス−HCl(pH7.4)で取り替えた。
【0144】
FLAGタグ標識C217Sマウスコア2 GlcNAcT1ポリペプチドの純度は、図4A及び図4Bに示すように、SimplyBlue(商標)SafeStain(Invitrogen)及びSilver Stain Plus(Bio-Rad)の両方により99%を超えると推定された。FLAGタグ標識したC217Sマウスコア2 GlcNAcT1変異体ポリペプチドは、48kDaで単一バンドとして移動した。FLAGタグ標識したC217Sマウスコア2 GlcNAcT1変異体ポリペプチドのタンパク質定量は、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を用いて実施した。
【0145】
コア2 GlcNAcT1活性は、実施例2及び実施例3の酵素アッセイにより確認された。特に、反応は、30mM MES緩衝液(pH6.7)、1.0mM UDP−GlcNAc、1.0μCi UDP−6−[H]GlcNAc、0.5mM Galβ1−3GalNAcα−pNp、0.25mg/ml BSA及び精製したFLAGタグ標識したC217Sマウスコア2 GlcNAcT1ポリペプチド0.5ngを含有する溶液40μl中で行った。反応液を37℃で30分間インキュベートして、水500μlの添加により停止させた。反応生成物Galβ1−3([H]GlcNAcβ1−6)GalNAcα−pNpを、Waters Sep−Pakカラムを用いた固相抽出により未反応UDP−6−[H]GlcNAcから分離した。サンプルを、エタノールを用いてカラムから溶出させて、シンチレーション液体10mlに添加して、放射能(DPM)を測定した。比活性は、1分間の反応当たり且つポリペプチド1mg当たりの反応生成物の量として算出した。
【0146】
最大15.7マイクロモル/分/mgの比活性を有する精製したFLAGタグ標識したC217Sマウスコア2 GlcNAcT1ポリペプチドが得られた。比較用に、1mM
1,4−ジチオスレイトール(DTT)の存在下でのFLAGタグ標識したマウス野生型コア2 GlcNAcT1ポリペプチドの比活性は、類似しており、9.2マイクロモ
ル/分/mgであった。FLAGタグ標識した野生型マウスコア2 GlcNAcT1ポリペプチドの精製は、細胞培養上清40mlを用いて、FLAGタグ標識したマウスC217Sコア2 GlcNAcT1変異体ポリペプチドに関して上述する方法に従った。FLAGタグ標識したマウス野生型コア2 GlcNAcT1ポリペプチドの純度を図3A及び図3Bに提供する。
【0147】
[実施例2]
ヒト及びマウス野生型並びに変異体コア2 GlcNAcT1ポリペプチド
A.ヒト及びマウスコア2 GlcNAcT1野生型特性。
野生型ヒト及びマウスコア2 GlcNAcT1の活性は、発現及び精製された組換え酵素の貯蔵に続く1,4−ジチオスレイトール(DTT)又は他の還元剤の添加後に増大することが観察された。ヨードアセトアミド、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)及びN−エチルマレイミドは、野生型ヒト及びマウスコア2 GlcNAcT1の阻害を引き起こす。重金属Hg2+及びZn2+もまた、野生型ヒト及びマウスコア2 GlcNAcT1を阻害する。これらの結果は、野生型ヒト及びマウスコア2
GlcNAcT1が、適正な酵素機能に必要である還元されたシステインアミノ酸残基を有することを示す。酸化、アルキル化又は重金属結合によるこの残基の遮断は、酵素の阻害を引き起こす。
【0148】
B.マウスコア2 GlcNAcT1に対するスルフヒドリル試薬の影響
野生型及びC217Sのヒト並びにマウスコア2 GlcNAcT1を、30mM 2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝液(pH6.7)及び1.0mg/ml ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する水溶液中に溶解した。ヨードアセトアミド(IAA)、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、N−エチルマレイミド(NEM)、HgCl及びZnSOを、図1及び図2に列挙した濃度で添加した。1.0mM UDP−GlcNAc、0.50mM Gal(β1−3)GalNAcα−pnp、(H)UDP−GlcNAc(0.50μCi)及び30mM MES緩衝液(pH6.7)も同様に添加した。溶液を37℃で2時間インキュベートした。(H)UDP−GlcNAc及び(H)GlcNAc(β1−6)Gal(β1−3)GalNAcα−pnpを固相抽出により分離して、(H)Gal(β1−3)GlcNAc(β1−6)GalNAcα−pnpのDPMを液体シンチレーションによりカウントした。酵素を除くすべての構成成分を含有する溶液を調製して、バックグラウンドレベルを測定した。活性%は、以下の通りに算出した:(DPM阻害剤−DPMバックグラウンド)/(DPM対照−DPMバックグラウンド)×100。アッセイはすべて、二重に行った。結果を図1及び図2にプロットしている。
【0149】
C217Sヒト及びマウスコア2 GlcNAcT1の活性は、比較的高濃度のチオール反応性試薬ヨードアセトアミド、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)及びN−エチルマレイミド(NEM)により阻害されなかった。同様に、比較的高濃度のHg2+及びZn2+は、マウス酵素に影響を及ぼさなかったのに対して、ヒト酵素は、Hg2+のみに対して非感受性であった。これらの結果は、チオール酸化、アルキル化又は幾つかの重金属結合は、C217Sヒト及びマウスコア2 GlcNAcT1をもはや阻害しないことを示している。
【0150】
野生型及びC217Sのヒト並びにマウスコア2 GlcNAcT1に対する抗チオール試薬の影響を示すデータを図1及び図2に示す。
【0151】
C.ヒト及びマウスコア2 GlcNAcT1 C217S特性。
方法:
標準的な酵素アッセイ
野生型及び変異体(217Cys→Ser)コア2 GlcNAcT1に関する標準的な酵素アッセイを、アッセイ1回につき30mM 2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝液(pH6.7)、1.0mM UDP−GlcNAc(供与体基質)、1.0μCi UDP−6−[3H]GlcNAc、0.50mM(Galβ1−3)GalNAcα−pNp(受容体基質、すなわちAS)、1mg/ml BSA及び15〜25μU(1ユニット=1マイクロモル/分)の組換えコア2 GlcNAcT1タンパク質を含有する溶液30μl中で行った。反応は37℃で2.0時間インキュベートして、水460μlの添加により停止させた。反応は即座に進行しない場合には−20℃で凍結させた。反応生成物Galβ1,3[H]GlcNAc(β1,6)GalNAcα−pNpを、Waters Sep−Pakカラムを用いた固相抽出により未反応UDP−6[H]GlcNAcと分離した。サンプルを、エタノールを用いてカラムから溶出させて、シンチレーション液体10mlに添加して、放射能(DPM)を測定した。
【0152】
動力学特徴化アッセイ
供与体基質UDP−GlcNAc濃度(Km,DSに関する)又はAS濃度(Km,ASに関する)の滴定を除いて標準的なアッセイ条件を実行することにより、K値を決定した。標準的なアッセイ条件を実行すること、及び滴定した生成物を添加することにより、生成物UDP及びGlcNAc(β1−6)Gal(β1−3)GalNAcα−pNpに関するIC50値を決定した。供与体及び受容体基質を同時に滴定することにより、メカニズムを決定した。
【0153】
結果:
野生型及びC217Sマウスコア2 GlcNAcT1の動力学的比較
コア2 GlcNAcT1供与体基質であるUDP−GlcNAcに関するK値は、野生型酵素に関して1.5mMであり、C217S酵素に関して1.5mMである。コア2 GlcNAcT1受容体基質であるGal(β1−3)GalNAcα−pNpに関するK値は、野生型酵素に関して0.15mMであり、C217S酵素に関して0.13mMである。野生型及びC217Sコア2 GlcNAcT1は、Ordered Bi Biメカニズムを維持し、供与体基質に関するKは、両方の酵素に関して0.11mMである。コア2 GlcNAcT1生成物であるUDP及びGal(β1−3)GlcNAc(β1−6)GalNAcα−pNpに関する阻害能力は、両方の酵素に関して同じである。野生型及びC217Sコア2 GlcNAcT1は、基質としてUDP−Glcを利用しない。DTTの存在下で野生型コア2 GlcNAcT1を阻害する化合物はまた、C217Sコア2 GlcNAcT1も阻害する。DTTの存在下で野生型コア2 GlcNAcT1を阻害しない化合物は、C217Sコア2 GlcNAcT1を阻害しない。
【0154】
ヒト野生型及びC217Sコア2 GlcNAcT1の動力学的比較
コア2 GlcNAcT1供与体基質であるUDP−GlcNAcに関するK値は、野生型酵素に関して1.2mMであり、C217S酵素に関して1.1mMである。コア2 GlcNAcT1受容体基質であるGal(β1−3)GalNAcα−pNpに関するK値は、野生型酵素に関して0.34mMであり、C217S酵素に関して0.32mMである。野生型及びC217Sコア2 GlcNAcT1は、同じ動力学的メカニズムを維持し、コア2 GlcNAcT1生成物であるUDP及びGal(β1−3)GlcNAc(β1−6)GalNAcα−pNpに関する阻害能力は、両方の酵素に関して同じである。野生型及びC217Sコア2 GlcNAcT1は、基質としてUDP−Glcを利用しない。
【0155】
[実施例3]
スクリーニング方法
コア2 GlcNAcT酵素は、UDP−GlcNAcから受容体基質Galβ1,3GalNAcα−pニトロフェニルへの、H放射標識したGlcNAcのグリコシル転移反応を触媒する。放射標識した生成物は、固相抽出により単離して、液体シンチレーションによりカウントされる。次に生成物形成の割合を算出する。試験化合物をコア2 GlcNAcT反応混合物に添加して、それらの阻害能力を決定する。グリコシル転移の割合を測定して、非阻害対照と比較して、対照活性%、すなわち「阻害率%」を得る。本発明の組換え変異体酵素を使用して、固有の阻害剤能力をアッセイする。
【0156】
特定のハイスループットプロトコルを以下に記載する。
【0157】
コア2受容体であるGalβ1,3GalNAcα−pニトロフェニル(GGCAN)のストック溶液は、水中に受容体を再懸濁させること、及び溶液を混合するようにボルテックスすることにより調製した。受容体溶液を−20℃で貯蔵した。96ウェルマイクロタイタープレート(MicroWell Plates, V-Bottom, Nalge Nunc)。組換えC217Sヒト及びマウスコア2 GlcNAcT1は、本明細書中に記載するように調製した。
【0158】
酵素の阻害剤に関してスクリーニングするためのコア2トランスフェラーゼアッセイは、ウェル又はマイクロタイタープレート中での反応1回毎に組換えアッセイ混合物の添加を包含した。アッセイ混合物は、反応ウェルにつき試験化合物10μl、3×アッセイ混合物(1M MES pH6.7 0.9ml、0.5M EDTA 0.3ml、100mM UDP−GlcNAc 0.3ml、1mCi UDP−6−[H]GlcNAc、5mM GGNAN 3ml及び水5.5mlから構成されるストック溶液10mlとして作製される)10μl、及び組換えC217Sヒト又はマウスコア2 GlcNAcT1(15〜25μU[1ユニット=1マイクロモル/分])から構成されていた。プレートを攪拌しながら37℃で2時間インキュベートした後、各ウェルに水200μlを添加することにより、反応を停止させた。生成物の単離を1時間以内に実施しない場合は、プレートを−20℃で貯蔵した。
【0159】
生成物は、OASIS HLB96ウェルプレート(Waters)を用いて、製造業者の指示書に従って単離した。溶出は、エタノールを用いて行い、その後プレートを完全に乾燥させた後に、シンチレーション液体を用いて放射性生成物を再懸濁させた。溶出液における放射能は、MicroBeta TriLuxマイクロプレート液体シンチレーションカウンター(Wallac)を用いてカウントした。
【0160】
酵素活性(nmol生成物/hr)は、以下の式を用いて決定した:
酵素活性=DPM−バックグラウンド/2.22×10×30nMol UDP−GlcNac/インキュベーション時間
阻害率%:(試験化合物の存在下での酵素活性/試験化合物の非存在下での酵素活性)×100
【0161】
本発明は、本明細書中に記載する特定の実施形態により範囲が限定されない。というのは、かかる実施形態は、本発明の一態様の単なる一つの説明として意図されるものであり、任意の機能的に等価な実施形態が、本発明の範囲内であるためである。実際に、本明細書中に示し、且つ記載するもののほかに、本発明の様々な変更が、上述の説明及び添付の図面から当業者には明らかであろう。かかる修飾は、添付の特許請求の範囲の範疇にあると意図される。
【0162】
本明細書中で言及する刊行物、特許及び特許出願はすべて、個々の刊行物、特許又は特許出願それぞれが、その全体が参照により援用されるように具体的且つ個々に示されるのと同程度に、それらの全体が参照により援用される。本明細書中で言及する刊行物、特許
及び特許出願は、本発明と関連して使用され得るそれらの中で報告されている細胞系、ベクター、方法論等を記載及び開示する目的で、参照により本明細書中に援用される。本明細書中のいずれも、本発明は、先行発明によりかかる開示に先行する資格がないという承認として解釈されない。
【0163】
本明細書中及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形"a","an"及び"the"は、文脈が明らかに別記しない限り、複数形の言及を包含することに留意されるべきである。したがって、例えば、「宿主細胞(a host cell)」に対する言及は、かかる複数のかかる宿主細胞を包含し、「抗体(the antibody)」に対する言及は、1つ又はそれ以上の抗体及び当業者に既知のそれらの等価物等に対する言及である。
【図面の簡単な説明】
【0164】
本発明は、以下の図面を参照してより理解されよう。
【図1】図1は、C2変異体マウスC217Sは、遊離チオール基を標的とする試薬により阻害されないことを示すグラフである。
【図2】図2は、C2変異体ヒトC217Sは、遊離チオール基を標的とする試薬により阻害されないことを示すグラフである。
【図3】図3A及び図3Bは、SimplyBlue(商標)SafeStainを用いたSDS−PAGEにより(図3A)及び抗FLAG抗体を用いたウェスタンブロッティングにより(図3B)、FLAGタグ標識した野生型マウスコア2 GlcNAcT1及びFLAGタグ標識したC217Sマウスコア2 GlcNAcT1の小規模精製の分析を提供する。図3A:レーン1:分子量マーカー(SeeBlue Plus2(商標))、レーン2:野生型マウスコア2L−FLAG構築物でトランスフェクトした細胞からの培養上清20μL、レーン3:精製した野生マウスコア2L−FLAGポリペプチド3μg、レーン4:C217S変異体マウスコア2L−FLAG構築物でトランスフェクトした細胞からの培養上清20μL、レーン5:精製したC217S変異体マウスコア2L−FLAGポリペプチド3μg。図3B:レーン1:分子量マーカー(SeeBlue Plus2(商標))、レーン2:野生型マウスコア2L−FLAG構築物でトランスフェクトした細胞からの培養上清10μL、レーン3:精製した野生マウスコア2L−FLAGポリペプチド0.1μL、レーン4:C217S変異体マウスコア2L−FLAG構築物でトランスフェクトした細胞からの培養上清10μL、レーン5:精製したC217S変異体マウスコア2L−FLAGポリペプチド0.1μg。
【図4A】図4A及び図4Bは、SimplyBlue(商標)SafeStain(図4A)及びSilver Stain Plus(商標)(図4B)を用いたSDS−PAGEにより、FLAGタグ標識したC217Sマウスコア2 GlcNAcT1の大規模精製の分析を提供する。図4A:レーン1:分子量マーカー(SeeBlue Plus2(商標))、レーン2:精製したマウスC217S変異体ポリペプチド2μg。図4B:レーン1:分子量マーカー(SeeBlue Plus2(商標))、レーン2:精製したマウスC217S変異体ポリペプチド2μg。
【図4B】図4A及び図4Bは、SimplyBlue(商標)SafeStain(図4A)及びSilver Stain Plus(商標)(図4B)を用いたSDS−PAGEにより、FLAGタグ標識したC217Sマウスコア2 GlcNAcT1の大規模精製の分析を提供する。図4A:レーン1:分子量マーカー(SeeBlue Plus2(商標))、レーン2:精製したマウスC217S変異体ポリペプチド2μg。図4B:レーン1:分子量マーカー(SeeBlue Plus2(商標))、レーン2:精製したマウスC217S変異体ポリペプチド2μg。
【配列表フリーテキスト】
【0165】
[配列の簡単な説明]
配列番号1はヒトコア2 GlcNAcT1をコードする核酸配列である(GenBankア
クセス番号M97347)。
配列番号2はヒトコア2 GlcNAcT1融合構築物をコードする核酸配列である。
配列番号3はヒトコア2 GlcNAcT1のアミノ酸配列である(GenBankアクセス番号AAA35919)。
配列番号4はヒトコア2 GlcNAcT1融合構築物のアミノ酸配列である。
配列番号5はマウスコア2 GlcNAcT1をコードする核酸配列である(GenBankアクセス番号U19265)。
配列番号6はマウスコア2 GlcNAcT1融合構築物をコードする核酸配列である。
配列番号7はマウスコア2 GlcNAcT1のアミノ酸配列である(GenBankアクセス番号Q09324)。
配列番号8はマウスコア2 GlcNAcT1融合構築物のアミノ酸配列である。
配列番号9はヒトコア2 GlcNAcT1 Cys217→Ser変異体ポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号10はヒトコア2 GlcNAcT1/S−タグ融合タンパク質のアミノ酸配列である(太字のTag及びEK部位を、及び大活字のCys217→Ser変異を含む)。
配列番号11はマウスコア2 GlcNAcT1 Cys217→Ser変異体ポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号12はマウスコア2 GlcNAcT1 Cys217→Ser変異/FLAG−タグ融合タンパク質のアミノ酸配列である(太字のTag及びEK部位を、及び大活字のCys217→Ser変異を含む)。
配列番号13はヒトコア2 GlcNAcT1 Cys217→Ser変異体ポリペプチドをコードする核酸配列である。
配列番号14はヒトコア2 GlcNAcT1 Cys217→Ser変異構築物をコードする核酸配列である。
配列番号15はマウスコア2 GlcNAcT1 Cys217→Ser変異体ポリペプチドをコードする核酸配列である。
配列番号16はマウスコア2 GlcNAcT1 Cys217→Ser変異構築物をコードする核酸配列である。
配列番号17はヒトコア2 GlcNAcT1 Cys217→Ala変異体ポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号18はヒトコア2 GlcNAcT1 Cys217→Ala変異構築物のアミノ酸配列である。
配列番号19はマウスコア2 GlcNAcT1 Cys217→Ala変異体ポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号20はマウスコア2 GlcNAcT1 Cys217→Ala変異構築物のアミノ酸配列である。
配列番号21はヒトコア2 GlcNAcT1 Cys217→Ala変異体ポリペプチドをコードする核酸配列である。
配列番号22はヒトコア2 GlcNAcT1 Cys217→Ala変異構築物をコードする核酸配列である。
配列番号23はマウスコア2 GlcNAcT1 Cys217→Ala変異体ポリペプチドの核酸配列である。
配列番号24はマウスコア2 GlcNAcT1 Cys217→Ala変異構築物をコードする核酸配列である。
配列番号25は本発明の変異体コア2 GlcNAcT1ポリペプチドにおいて同定されたアミノ酸配列である。
配列番号26はマウスCys217S変異体ポリペプチドの調製に用いられる変異原性プライマーである。
配列番号27はマウスCys217T変異体ポリペプチドの調製に用いられる変異原性プライマーである。
配列番号28はマウスCys217A変異体ポリペプチドの調製に用いられる変異原性プライマーである。
配列番号29はヒトコア2 GlcNAcT1野生型構築物をコードする核酸配列である。
配列番号30はマウスコア2 GlcNAcT1野生型構築物をコードする核酸配列である。
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【表1−7】

【表1−8】

【表1−9】

【表1−10】

【表1−11】

【表1−12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第217位のアミノ酸残基が、システイン以外の任意のアミノ酸である単離されたコア2 GlcNAcTポリペプチド。
【請求項2】
第217位のアミノ酸残基が、システイン又はセリン以外の任意のアミノ酸である、請求項1に記載の単離されたコア2 GlcNAcTポリペプチド。
【請求項3】
第217位のアミノ酸残基が、セリン、スレオニン又はアラニンである、請求項1に記載の単離されたコア2 GlcNAcTポリペプチド。
【請求項4】
第217位のアミノ酸残基において配列番号3又は配列番号7に記載されるアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を含む単離されたコア2 GlcNAcTポリペプチド。
【請求項5】
前記第217位のアミノ酸残基が、セリンではない、請求項3に記載の単離されたコア2 GlcNAcTポリペプチド。
【請求項6】
、X、X及びXはそれぞれ独立して、任意のアミノ酸残基であり、Xは、システイン以外の任意の残基である、アミノ酸配列WXYXINXGXDFP(配列番号31)を含む単離されたコア2 GlcNAcTポリペプチド。
【請求項7】
前記Xが、セリンではない、請求項6に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項8】
前記Xが、セリン、スレオニン又はアラニンからなる群から選択される、請求項6に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項9】
前記アミノ酸配列が、WKYLINLXGMDFP(配列番号32)である、請求項6に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項10】
前記Xが、セリン、スレオニン又はアラニンからなる群から選択される、請求項9に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項11】
前記ポリペプチドが、ヒトポリペプチドである、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項12】
前記ポリペプチドが、マウスポリペプチドである、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項13】
配列番号9、11、17又は19のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド。
【請求項14】
前記ポリペプチドが、コア2 GlcNAcT活性を有する、請求項1ないし10のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項15】
システイン217で改変され、コア2 GlcNAcT活性を有するコア2 GlcNAcTポリペプチド。
【請求項16】
217位のシステイン残基が、セリン残基で置き換えられ、野生型コア2 GlcNAcTと比較して、増大された安定性を有する、アミノ酸置換を含むコア2 GlcNAcTの変異体ポリペプチド。
【請求項17】
前記増大された安定性が、酸化、アルキル化又は重金属結合により引き起こされる不活性化に対する非感受性を特徴とする、請求項16に記載の変異体ポリペプチド。
【請求項18】
217位のシステイン残基が、アラニン残基で置き換えられ、野生型コア2 GlcNAcTと比較して、増大された安定性を有する、アミノ酸置換を含むコア2 GlcNAcTの変異体ポリペプチド。
【請求項19】
前記増大された安定性が、酸化、アルキル化又は重金属結合により引き起こされる不活性化に対する非感受性を特徴とする、請求項18に記載の変異体ポリペプチド。
【請求項20】
融合分子に操作可能に連結される請求項1〜10、13、15、17、18又は19のいずれか1項に記載のポリペプチドを含む融合ポリペプチド。
【請求項21】
前記融合分子が、免疫グロブリン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、プロテインA、HI、赤血球凝集素、S−タグ、FLAG、β−ガラクトシダーゼ、マルトースE結合タンパク質、GAL、HSP、LacZ、His−タグ、アビジン及び短縮型(truncated)mycからなる群から選択される、請求項20に記載の融合ポリペプチド。
【請求項22】
配列番号10、12、18又は20に記載のアミノ酸配列を含む融合ポリペプチド。
【請求項23】
請求項1〜10、13、15、17、18又は19のいずれか1項に記載のポリペプチドを特異的に結合する抗体。
【請求項24】
請求項1〜10、13、15、17、18又は19のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする単離された核酸分子。
【請求項25】
融合分子に操作可能に連結される請求項1〜10、13、15、17、18又は19のいずれか1項に記載のポリペプチドを含む融合ポリペプチド、及び配列番号10、12、18又は20のアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドからなる群から選択される融合ポリペプチドをコードする単離された核酸分子。
【請求項26】
配列番号13、15、21又は23を含む単離された核酸分子。
【請求項27】
配列番号13、15、21又は23から本質的に構成される単離された核酸分子。
【請求項28】
請求項1〜10、13、15、17、18又は19のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする核酸、請求項1〜10、13、15、17、18又は19のいずれか1項に記載のポリペプチドを含む融合タンパク質をコードする核酸、配列番号10、12、18又は20のアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドをコードする核酸、及び配列番号13、15、21又は23を含む核酸分子からなる群から選択される単離された核酸分子を含む組換えベクター。
【請求項29】
請求項1〜10、13、15、17、18又は19のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする核酸、請求項1〜10、13、15、17、18又は19のいずれか1項に記載のポリペプチドを含む融合タンパク質をコードする核酸、配列番号10、12、18又は20のアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドをコードする核酸、及び配列番号13、15、21又は23を含む単離された核酸分子からなる群から選択される核酸分子を、ベクターに挿入することを含む、組換えベクターを生産する方法。
【請求項30】
請求項1〜10、13、15、17、18又は19のいずれか1項に記載のポリペプチ
ドをコードする核酸、請求項1〜10、13、15、17、18又は19のいずれか1項に記載のポリペプチドを含む融合タンパク質をコードする核酸、配列番号10、12、18又は20のアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドをコードする核酸、及び配列番号13、15、21又は23を含む単離された核酸分子からなる群から選択される核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項31】
前記核酸分子が、遺伝子発現を制御する異種調節配列と操作可能に結合される、請求項30に記載の宿主細胞。
【請求項32】
請求項1〜10、13、15、17、18又は19のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする核酸、請求項1〜10、13、15、17、18又は19のいずれか1項に記載のポリペプチドを含む融合タンパク質をコードする核酸、配列番号10、12、18又は20のアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドをコードする核酸、及び配列番号13、15、21又は23を含む単離された核酸分子からなる群から選択される単離された核酸分子を含む組換えベクターを含む宿主細胞。
【請求項33】
宿主細胞を請求項28に記載の組換えベクターで形質導入、形質転換又はトランスフェクトすることを含む、宿主細胞を生産する方法。
【請求項34】
核酸分子によりコードされるポリペプチドを生産するのに適した条件下で、請求項28に記載の宿主細胞を培養すること、及び
細胞培養物から前記ポリペプチドを回収すること
を含む、ポリペプチドを生産する方法。
【請求項35】
請求項1〜10、13、15、17、18又は19のいずれか1項に記載のポリペプチドの活性を調節する物質に関してアッセイすることを含む、コア2 β−1,6−N−アセチルグリコサミニルトランスフェラーゼの発現又は生物学的活性を調節する物質を同定する方法。
【請求項36】
物質を、コア2 GlcNAcTの活性を調節するその能力に関して評価する方法であって、以下の
(a)コア2 GlcNAcTに対する受容体及び糖供与体を、試験物質の存在下で請求項1〜10、13、15、17、18又は19のいずれか1項に記載のポリペプチドと接触させること、
(b)前記受容体へ転移した前記糖供与体の量を測定すること、及び
(c)前記物質が、前記ポリペプチドによる前記受容体への前記糖供与体の転移を妨害するか、又は増強するかどうかを決定するために、試験物質の非存在下で工程(a)及び工程(b)を実施すること
を含む方法。
【請求項37】
試験物質を、コア2 GlcNAcTの活性を調節するその活性に関して評価する方法であって、以下の
(a)コア2 GlcNAcT受容体及び糖供与体を、前記試験物質の存在下で前記いずれかの請求項に記載のポリペプチドと接触させること、及び
(b)工程(a)における受容体へ転移した糖供与体の量を、前記試験物質の非存在下で受容体へ転移した糖供与体の量と比較すること
を含む方法。
【請求項38】
ハイスループット方法である請求項35、36又は37に記載の方法。
【請求項39】
前記受容体が、固相キャリア又は支持体にカップリングされる、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項40】
前記受容体が、ポリマーにカップリングされ、且つ前記ポリマーがキャリア又は支持体上にコーティングされる、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項41】
前記糖供与体が、検出可能な物質で標識される、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項42】
受容体へ転移した糖供与体の量が、前記固相キャリア又は支持体にカップリングされた前記検出可能な物質を検出することにより測定される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記いずれかの請求項に記載のポリペプチドを、コア2 GlcNAcT受容体及び糖供与体と、前記受容体及び前記糖供与体を連結するのに適切な条件下で接触させることを含む、オリゴ糖を調製する方法。
【請求項44】
前記糖供与体が、活性化GlcNAcである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
請求項1、3、4、6、8、9、10、13、15、16、17、18及び19のいずれか1項に記載のポリペプチド及びコア2 β−1,6−N−アセチルグリコサミニルトランスフェラーゼに対する基質を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2007−520208(P2007−520208A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533694(P2006−533694)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/018491
【国際公開番号】WO2004/111196
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(000195524)生化学工業株式会社 (143)
【出願人】(505459390)グリコデザイン ホールディングス リミテッド (1)
【Fターム(参考)】