コイルの製造装置
【課題】巻枠又は巻線治具等を用いることなくワイヤの成形が可能であって、その曲げ加工点や湾曲の程度を容易に変更する。
【解決手段】コイルの製造装置20は、供給源17から延びるワイヤ16が挿通された真直ぐなノズル21と、ノズル21の後端側に設けられワイヤ16をノズル21に供給してノズル21の前端からワイヤ16を繰り出すワイヤ送り装置22と、ノズル21の前端から前方に突出したワイヤ16を屈曲させてコイル辺部13とコイルエンド部14が連続するコイル12を形成する加工機とを備える。ノズル21がコイル辺部13より長く形成され、加工機がノズル21の前方及び周囲の空間にコイル12を形成可能にノズルがワイヤ送り装置22の前方の空間に取付けられる。ノズルの前端から前方に突出したワイヤ16を折り曲げ屈曲させてコイル辺部13とコイルエンド部14が円周方向に連続するコイル12をノズルの前方及び周囲の空間に形成する。
【解決手段】コイルの製造装置20は、供給源17から延びるワイヤ16が挿通された真直ぐなノズル21と、ノズル21の後端側に設けられワイヤ16をノズル21に供給してノズル21の前端からワイヤ16を繰り出すワイヤ送り装置22と、ノズル21の前端から前方に突出したワイヤ16を屈曲させてコイル辺部13とコイルエンド部14が連続するコイル12を形成する加工機とを備える。ノズル21がコイル辺部13より長く形成され、加工機がノズル21の前方及び周囲の空間にコイル12を形成可能にノズルがワイヤ送り装置22の前方の空間に取付けられる。ノズルの前端から前方に突出したワイヤ16を折り曲げ屈曲させてコイル辺部13とコイルエンド部14が円周方向に連続するコイル12をノズルの前方及び周囲の空間に形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤを屈曲成形してステータ等に用いられるコイルを製造するコイルの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機のステータは、放射状に並んで内径方向に突出する複数のティース(磁極)及びその間に開口する複数のスロットを有する円筒状のステータコアと、そのスロットにコイル辺部を納めることによりそのコアに組み付けられたステータコイルとを備える。このステータコイルの組み付けに関しては、ステータコイルをステータコアと別に予め製造し、その後このコイルをコアの各スロットに収容するいわゆるインサータ方法が知られている。そして、このインサータ方法に用いられるコイルの巻線方式にあっては、ティースの周囲にワイヤを巻回する重ね巻方式と、ワイヤを各ティースの上下を交互に通るように巻回する波巻き方式(例えば、特許文献1参照。)が知られている。
【0003】
この波巻き方式では、ティースと同数の内側治具と外側治具がそれぞれ放射状に移動するように設けられた波巻きコイルの製造装置が用いられる。その製造装置では、先ず内側治具を環状に配置し、その外側に外側治具を環状に配置させる。そして環状に配置された複数の内側治具にワイヤを所定ターン数だけ巻回して円形のコイルを形成する。その後、図21に示すように、内側治具2と外側治具3をそれぞれ放射状に移動させ、複数の内側治具2が描く円よりも内側に外側治具3を移動させることにより、複数の内側治具2の周囲に円形に巻回されたコイルを星型に成形する。このようにして形成された星形の波巻きコイル4は、その後図示しないインサータ装置を用いてコアのティース間におけるスロットに押し込まれ、これによってステータが形成される。
【0004】
一方、このステータには回転子が挿入されるため、スロットに収容されずにステータコアの軸方向の端面から突出するコイルのコイルエンド部がステータコアの内周面より内側に進入することを防止する必要がある。また、その回転電機が3相式のものであれば、単一のステータコアに3相分のステータコイルが組み付けられる。このため、3相式の回転電機では、各相コイルのスロットから突出する3相分のコイルエンド部が互いに重複する結果となる。このようなことを考慮して、このコイルエンド部のコア径方向の厚みがコイル辺部のコア径方向の厚みより小さくなる様に、コイル辺部に対してコイルエンド部をコア径方向に偏って設け、コイルエンドの重複を回避しようとするステータが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。このステータにおけるコイルの製造方法は、1回毎のターン長を順次変化させて円環状に成形する環状成形工程と、この環状成形工程の後、コイルエンド部のコア径方向の厚みがコイル辺部のコア径方向の厚みより小さくなる様に、コイルエンド部に相当するワイヤをコア径方向に押り曲げ又は湾曲させて所定の形状に整形するコイルエンド整形工程とを経て製造されるとしている。そして、このコイルの製造方法は波巻きコイルにも適用しうるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2001−513320号公報
【特許文献2】特開平11−98740号公報(段落番号[0005]、[0013]、図9、図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献2におけるコイルの製造方法では、1回毎のターン長を順次変化させる必要があるため、1回毎のターン長が異なる特別な巻枠を必要とし、その大きさ又はターン数が異なればその大きさ又はターン数に応じた複数の巻枠又はそれ専用の巻線治具を準備する必要があり、巻枠又は巻線治具の管理負担が増加する不具合があった。
【0007】
本発明の目的は、巻枠又は巻線治具を用いることなくワイヤの成形が可能であって、その曲げ加工点や湾曲の程度を容易に変更し得るコイルの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコイルの製造装置は、供給源から延びるワイヤが挿通された真直ぐなノズルと、そのノズルの後端側に設けられワイヤをノズルに供給してノズルの前端からワイヤを繰り出すワイヤ送り装置と、ノズルの前端から前方に突出したワイヤを折り曲げ加工してコイル辺部とコイルエンド部が連続するコイルを形成する加工機とを備える。
【0009】
その特徴ある構成は、ノズルがコイル辺部より長く形成され、加工機がノズルの前方及び周囲の空間にコイルを形成可能にノズルがワイヤ送り装置の前方の空間に取付けられたところにある。
【0010】
加工機は、ノズルの上方に設けられノズルに対して3軸方向に各々移動する中央移動台と、ノズルを挟むようにノズルの両側に設けられノズルに対して3軸方向に各々移動する左右の移動台と、中央移動台に設けられノズルの前端から繰り出されたワイヤをノズルを含む第1平面内において折り曲げ可能な中央折り曲げ機と、左右の移動台に設けられノズルの前端から繰り出されたワイヤをノズルを含みかつ第1平面と直交する第2平面内において折り曲げ可能な左右の折り曲げ機とを備えることが好ましい。
【0011】
また、ノズルの前端から真直ぐ繰り出されたワイヤをノズルの前端から所定の間隔を空けて保持する保持具を左右の移動台にそれぞれ設け、左右の移動台を制御するコントローラが移動台とともに保持具をワイヤの中心軸から偏倚させてワイヤをクランク状に折り曲げ可能に構成することが更に好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコイルの製造装置では、ワイヤを繰り出すノズルをワイヤ送り装置の前方の空間に取付け、そのノズルより繰り出されたワイヤを加工機により屈曲させてコイルを形成するけれども、その得ようとするコイルのコイル辺部よりノズルを長く形成したので、そのノズルの前方及び周囲の空間にそのコイルを直接形成することができる。このため、巻枠又は巻線治具等を用いることなくワイヤを成形してコイルを製造することが可能になり、従来必要とされた巻枠又は巻線治具の管理負担を減少させることができる。そして、加工機により曲げ加工点や湾曲の程度を変更することができるのでその汎用性や生産性も高まり、コントローラによりその加工機を制御するようにすればコイルの製造における自動化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明実施形態のコイルの製造装置を示す側面図である。
【図2】そのコイルの製造装置の正面図である。
【図3】そのコイルの製造装置の上面図である。
【図4】その中央折り曲げ機の詳細を示す側面図である。
【図5】その左の折り曲げ機の詳細を示す側面図である。
【図6】その中央折り曲げ機を反転させてフランジを上方に向け、ローラシャフトとベンダの間にワイヤを挿入させた状態を示す斜視図である。
【図7】そのシャフトをフランジとともに回転させ、そのフランジをワイヤに対向させた状態を示す図6に対応する斜視図である。
【図8】ワイヤをフランジと旋回ギアの間に挟持させた状態を示す図6に対応する斜視図である。
【図9】ベンダを旋回させてワイヤを折り曲げた状態を示す図6に対応する斜視図である。
【図10】ベンダを復元させ、フランジと旋回ギアによるワイヤの挟持を解消させた状態を示す図6に対応する斜視図である。
【図11】扇状のフランジがワイヤから遠ざかるようにシャフトを回転させた状態を示す図6に対応する斜視図である。
【図12】ローラシャフトとベンダの間からワイヤを離脱させた状態を示す図6に対応する斜視図である。
【図13】その装置の右の折り曲げ機を用いてワイヤを湾曲させる状態を示す説明図である。
【図14】その右の折り曲げ機を用いてワイヤを湾曲させる別の状態を示す説明図である。
【図15】その装置の左の折り曲げ機を用いてワイヤを湾曲させる状態を示す説明図である。
【図16】そのワイヤが繰り出されたノズルの左側面図である。
【図17】そのワイヤが繰り出されたノズルの右側面図である。
【図18】そのワイヤがクランク状に折り曲げられる状態を示す説明図である。
【図19】得られたステータコイルの斜視図である。
【図20】ステータコアに複数のステータコイルが挿通されたステータを示す斜視図である。
【図21】従来のコイルの製造装置により得られる星形の波巻きコイルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図20に電動機のステータ10を示す。このステータ10は円筒状を成すステータコア11とステータコイル12を備え、ステータコア11は放射状に並んで内径方向に突出する複数のティース(磁極)11a及びその間に開口する複数のスロット11bを有する。ステータコイル12は、円筒状のステータコア11の内周の軸方向に延びるスロット11bに挿入されるコイル辺部13と、そのステータコア11の軸方向にスロット11bより突出しステータコア11の外周に沿って湾曲するコイルエンド部14とが円周方向に連続して形成される。そして、このステータコイル12の複数のコイル辺部13を互いに近づけて窄め、その状態でステータコア11に挿通し、それらのコイル辺部13を径方向に拡大移動して各スロット11bに収めることによりステータ10が得られる。
【0016】
図1に、ワイヤ16を折り曲げ加工してステータコイル12を自動的に製造する本発明のコイルの製造装置20を示す。ワイヤ16は、巻き心治具を用いることなく折り曲げられるとその形状を維持できるような、その外径がある程度大きい太線が用いられる。ワイヤ16は、この実施の形態では、表面に絶縁皮膜が形成された断面矩形の平角線が用いられる。ワイヤ16を平角線とすれば、ステータ10におけるコイル12の占積率を高めることが期待できる。けれども、このワイヤ16は平角線に限らず、ステータ10等の仕様或いは製作工程に応じて、断面円形の丸線を用いても良い。
【0017】
コイルの製造装置20は、主要構成部として、基台20aに取付けられ供給源17から延びるワイヤ16が挿通された真直ぐなノズル21と、そのノズル21にワイヤ16を供給してノズル21の前端からそのワイヤ16を繰り出すワイヤ送り装置22を備える。ここで、互いに直交するX、Y、Zの3軸を設定し、X軸が水平前後方向、Y軸が水平横方向、Z軸が垂直方向に延びるものとして本発明のコイルの製造装置20について説明する。
【0018】
ノズル21は断面矩形の平角線からなるワイヤ16が挿通可能な真直ぐな角筒状のものであって、その全長は得ようとするステータコイル12のコイル辺部13より長く形成される。この実施の形態におけるノズル21は、図2に詳しく示すように、そのワイヤ16を収容可能な凹溝21aが形成された長尺状の棒状部材21bに対してその凹溝21aを蓋する蓋板21cをネジ21dにより固定することにより作られたものを示す。ノズル21の後部は取付部材20bの上部に取付けられ、取付部材20bの下端は基台20aに固定される。この取付部材20bによりノズル21はX軸方向に延びて基台20aの上方空間に固定される。ワイヤ16はリール17に巻回され、このリール17がワイヤ16の供給源となる。このリール17はコイルの製造装置20と別な場所の例えばノズル21の後方の床の上等に置かれる。
【0019】
図1に示すように、供給源であるリール17からワイヤ16をノズル21に供給するワイヤ送り装置22は、ノズル21の後端近傍に設けられてワイヤ16を固定支持する固定機構23と、その固定機構23の後方に設けられワイヤ16をX軸方向に送る送り機構24とを備える。固定機構23は、ノズル21と送り機構24の間に位置し、図示しないエアシリンダによって上下動してワイヤ16の途中を掴む第1チャック23aと、その第1チャック23aが取付けられた固定台23bを有し、この固定台23bが基台20aに取付けられる。送り機構24は、図示しないエアシリンダによって上下動してワイヤ16の途中を掴む第2チャック24aと、その第2チャック24aを支持する移動台24bと、ノズル21の後方にそのノズル21の延長線上に延びて設けられ移動台24bを基台20aに対してX軸方向に移動可能に支持するレール24cと、移動台24b側に螺合する図示しないボールネジと、そのボールネジを回転駆動するサーボモータ24dとを備える。サーボモータ24dは基台20a上に固定され、サーボモータ24dによるボールネジの回転によって移動台24bが移動し、第2チャック24aに掴まれたワイヤ16をX軸方向に移動可能に構成される。
【0020】
そして、この固定機構23の第1チャック23aを解放して送り機構24によりワイヤ16をX軸方向に移動させることによりノズル21にワイヤ16を供給することができ、これによりノズル21の前端からそのワイヤ16を繰り出すことができる。一方、送り機構24の第2チャック24aをワイヤ16を解放した状態でX軸上で後退させる際に固定機構23によりワイヤ16を掴むことにより一旦繰り出されたワイヤ16がその第2チャック24aとともに後退することを防止することができ、後退した第2チャック24aによりワイヤ16を再び掴んだ状態で固定機構23の第1チャック23aを解放し、ワイヤ16を掴んだ送り機構24の第2チャック24aを再び前方に移動することにより、供給源21から供給されたワイヤ16をノズル21に順次繰り出すことができるように構成される。なお、図1におけるワイヤ送り装置22は例示であって、図示しないが、ワイヤ送り装置22は、ワイヤ16に転接する複数のローラを備え、それら複数のローラを回転させることによりリール17から供給されるワイヤ16をこれらのローラの間からノズル21に供給するようにしても良い。また、図1における符号20cは、供給源であるリール17から繰り出されたワイヤ16を真直ぐに伸ばす癖取り装置である。
【0021】
また、図1〜図3に示すように、本発明のコイルの製造装置20は、そのノズル21の前端から前方に突出したワイヤ16を折り曲げ加工する加工機を備える。この実施の形態における加工機は、ノズル21の上方に設けられてそのノズル21に対して3軸方向に各々移動する中央移動台30と、ノズル21を挟むようにノズル21の両側に設けられそのノズル21に対して3軸方向に各々移動する左右の移動台50,60と、中央移動台30に設けられノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16をノズル21を含む第1平面内において折り曲げ可能な中央折り曲げ機40と、左右の移動台50,60に設けられノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16をノズル21を含みかつ第1平面と直交する第2平面内において折り曲げ可能な左右の折り曲げ機70,80とを備える。
【0022】
図1〜図3に示すように、中央移動台30は中央移動装置31を介して基台20aに取付けられる。この中央移動装置31は、X軸、Y軸、及びZ軸方向伸縮アクチュエータ32〜34の組み合わせにより構成される。この実施の形態におけるこれらの伸縮アクチュエータ32〜34は、サーボモータ32a〜34aによって回動駆動されるボールネジ32b〜34bと、このボールネジ32b〜34bに螺合して平行移動する従動子32c,33c等によって構成される。この実施の形態では、中央移動台30をZ軸方向に移動可能にZ軸方向伸縮アクチュエータ34の図示しない従動子に取付け、そのZ軸方向伸縮アクチュエータ34をY軸方向に移動可能にY軸方向伸縮アクチュエータ33の従動子33cに取付け、そのY軸方向伸縮アクチュエータ33をX軸方向に移動可能にX軸方向伸縮アクチュエータ32の従動子32cに取付け、そのX軸方向伸縮アクチュエータ32が中央の支柱36(図1)を介して基台20aに取付けられる。
【0023】
また、左右の移動台50,60は左右の移動装置51,61を介して基台20aに取付けられ、左右の移動装置51,61は、ノズル21を挟むようにそのノズル21のY軸方向における両側に設けられる。この左右の移動装置51,61は対称構造であり、中央移動装置31と同様に、X軸、Y軸、及びZ軸方向伸縮アクチュエータ52〜54、62〜64の組み合わせによりそれぞれ構成される。このX軸、Y軸、及びZ軸方向伸縮アクチュエータ52〜54、62〜64の組み合わせは上述した中央移動装置31のものと同一の構造であり、図2に示すように、左の移動装置51のX軸方向伸縮アクチュエータ52が左の支柱56を介して基台20aに取付けられ、右の移動装置61のX軸方向伸縮アクチュエータ62が右の支柱66を介して基台20aに取付けられる。
【0024】
そして、それらの各伸縮アクチュエータにおけるX軸サーボモータ32a,52a,62a、Y軸サーボモータ33a,53a,63aびZ軸サーボモータ34a,54a,64aは、これらの移動装置31,51,61をそれぞれ制御する図示しないコントローラの制御出力に接続される。そして、中央移動装置31は中央移動台30を基台20aに固定されたノズル21に対して3軸方向に任意に移動可能に構成され、左右の移動装置51,61は、ノズル21の両側に位置する左右の移動台50,60を三次元方向に任意に移動可能に構成される。
【0025】
図4に示すように、中央移動台30に設けられる中央折り曲げ機40は、一部を切り欠いて円弧状を成す円盤状のフランジ41a(図6〜図12)が下端に拡がって形成されワイヤ16の折り曲げ内側端部を支持するローラシャフト41と、このローラシャフト41のまわりを回動しそのシャフト41に沿って平角線からなるワイヤ16を折り曲げるベンダ42と、このベンダ42を旋回させる旋回駆動機構43とを備える。この旋回駆動機構43は、中央移動台30に固定されたローラスリーブ43aに軸受43bを介して回転可能に支持される旋回ギア43cと、この旋回ギア43cに噛み合う駆動ギア43dと、この駆動ギア43dを回転駆動するモータ43eとを備え、旋回ギア43cにベンダ42が連結される。
【0026】
モータ43eには図示しないコントローラの制御出力が接続され、コントローラの指令によりモータ43eが駆動ギア43dを回転させると、これに噛み合う旋回ギア43cが回転し、ベンダ42をローラシャフト41を中心とする円弧状の軌跡を持って旋回させ、ベンダ42がワイヤ16をローラシャフト41に沿って折り曲げるように構成される(図8及び図9)。このローラシャフト41は鉛直に設けられ、ノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16をこのノズル21を含む第1平面、具体的にはそのノズル21を含む水平面内において折り曲げ可能に構成される。
【0027】
また、中央折り曲げ機40は、ローラシャフト41を軸方向に摺動可能に支持しかつそのシャフト41を回転可能なモータ44と、ローラシャフト41を軸方向に駆動するアクチュエータ46を備える。このアクチュエータ46はZ軸方向に伸縮作動する本体46aとロッド46bを備え、本体46aが支持台46cを介して中央移動台30に支持され、ロッド46bの先端部に軸受46d、継ぎ手46eを介してローラシャフト41の上端部が回転可能に連結される。モータ44とアクチュエータ46にはコントローラの制御出力がそれぞれ接続され、コントローラの指令によりアクチュエータ46が伸縮作動するとローラシャフト41が昇降し、モータ44が駆動するとそのシャフト41が回転するように構成される(図6〜図12)。
【0028】
そして、この図示しないコントローラは、ワイヤ16をローラシャフト41に沿って折り曲げる過程でアクチュエータ46を収縮作動させ、図8及び図9に示すように、ワイヤ16をフランジ41aと旋回ギア43cの間に挟持し、ワイヤ16の折り曲げ内周部が拡がるような変形を抑えるように構成される。また、コントローラは、ワイヤ16をローラシャフト41に沿って折り曲げる過程でモータ44を回転作動させ、ローラシャフト41を旋回ギア43cとともに回転させ、ワイヤ16をフランジ41aと旋回ギア43cの間に挟持しながら前方に送る。これにより、ワイヤ16の絶縁皮膜が摩耗したり剥離することを防止するように構成される。
【0029】
ここで、図6に示すように、フランジ41aは、シャフト41が回転してベンダ42から遠ざかった状態で、その間にワイヤ16が進入可能に切り欠かれた扇状を成し、図11及び図12に示すように、そのベンダ42から遠ざかった状態で、略直角に折り曲げられたワイヤ16をそのシャフト41とベンダ42の間から離脱可能に、その扇状のフランジ41aの円弧を両側から挟む両辺は略直角又はそれ以下の角度で交わるように構成される。そして、アクチュエータ46としては、油圧シリンダ、エアシリンダ、電磁アクチュエータ等が例示されけれども、これらに限るものではない。そして、アクチュエータ46が付与するワイヤ16をフランジ41aが圧縮する荷重は、ワイヤ16の寸法、材質等に応じて適宜設定される。
【0030】
図2及び図3に示すように、左右の移動台50,60に設けられた左右の折り曲げ機70,80は、ノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16を第2平面内において湾曲可能なものであり、第2平面とは、ノズル21を含みかつ第1平面と直交する平面であってこの実施の形態における第2平面とはノズル21を含む鉛直面である。この左右の折り曲げ機70,80は対称構造であり、図2の左に示された折り曲げ機70を代表して説明すると、この左の折り曲げ機70は、図5に詳しく示すように、Y軸を回転中心として左の移動台50に回転可能に設けられた回転台71と、その回転台71にY軸方向に延びて設けられノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16を上下から挟む一対のピン72,73と、回転台71を回転させて回転台71とともに回転する一対のピン72,73によりワイヤ16を折り曲げる折り曲げモータ74(図2及び図3)を有し、折り曲げモータ74は図示しないコントローラの制御出力に接続される。ワイヤ16を挟む一対のピン72,73の一方72は回転台71の回転中心に位置し、その回転台71が回転すると一方のピン72を回転中心として他方のピン73が円弧状に移動し、一対のピン72,73により挟まれたワイヤ16を一方のピン72に沿って他方のピン73が折り曲げるように構成される。そして、図13に示すように、コントローラは、折り曲げモータ74によりワイヤ16を僅かに折り曲げつつ左の移動台50を移動させることにより、又は図14に示すように、ワイヤ16を僅かに折り曲げつつワイヤ16を繰り出すことにより、そのワイヤ16を第2平面内において円弧状に成形可能に構成される。
【0031】
また、左右の移動台50,60には、ノズル21の前端から真直ぐ繰り出されたワイヤ16をノズル21の前端から所定の間隔を空けて保持する保持具76,86がそれぞれ設けられる。これらの保持具76,86にはワイヤ16を収容可能な溝76a,86aがそれぞれ形成され、ノズル21からX軸上に直線状に引出されたワイヤ16にY軸方向から接近してそれらの溝76a,86aにワイヤ16を収容することにより、そのワイヤ16を保持することができるように構成される。そして、左右の移動台50,60を制御するコントローラは、図18に示すように、ワイヤ16を保持した保持具76,86をワイヤ16の中心軸から第2平面内で偏倚するように、具体的には上方又は下方に偏倚するように左右の移動台50,60を移動させ、これによりそのワイヤ16をクランク状に折り曲げることができるように構成される。
【0032】
次に、このようなコイルの製造装置を用いたステータコイルの製造について説明する。
【0033】
図20に示すように、ステータ10を構成するステータコイル12は、コイル辺部13とコイルエンド部14とが円周方向に連続するものである。このため、図19に示すように、そのコイル12は、図の上下方向に延びる第1コイル辺部13aと、そのコイル辺部13aの下端に一端が連結して湾曲する第1コイルエンド部14aと、その第1コイルエンド部14aの他端に下端が接続する第2コイル辺部13bと、その第2コイル辺部13bの上端に一端が連続する第2コイルエンド部14bとを有する。そして、第1及び第2コイル辺部13a,13bと第1及び第2コイルエンド部14a,14bの間の接続箇所にそれぞれ曲折部15a〜15dが形成される。
【0034】
よって、このステータコイル12は、第1コイル辺部13a、第1屈曲部15a、第1コイルエンド部14a、第2屈曲部15b、第2コイル辺部13b、第3屈曲部15c、第2コイルエンド部14b、第4下曲折部15dが順次連続することにより形成され、図19及び図20には、それらが幾重にも重ね合わされたものを示す。このため、本発明のコイルの製造装置20を用いたコイル製造工程は、ノズル21の前端からワイヤ16を直線状に繰り出してコイル辺部13a,13bを形成するワイヤ繰り出し工程と、そのワイヤ16を折り曲げて屈曲部15a〜15dを形成する折り曲げ工程と、繰り出されたワイヤ16を湾曲させてコイルエンド部14a,14bを形成する湾曲工程とを備えることになり、以下に各工程を説明する。
【0035】
<第1ワイヤ繰り出し工程>
先ず、真直ぐなノズル21を貫通してそのノズル21の前端から水平面内に直線状にワイヤ16を繰り出して、繰り出されたワイヤ16からなる第1コイル辺部13aを形成する。このワイヤ16の繰り出しはワイヤ送り装置22により行われ、具体的には図1に示す固定機構23の第1チャック23aを解放して送り機構24によりワイヤ16をX軸方向に移動させることにより行われる。
【0036】
<第1折り曲げ工程>
その後ノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16を水平面内において繰り出し方向の一方の側方に折り曲げて第1コイル辺部13の後端に第1屈曲部15aを形成する。ここで、この実施の形態において、繰り出し方向の一方の側方とは、図2における左方向を意味し、繰り出し方向の他方の側方とは、図2における右方向を意味するものとする。そして、この折り曲げは、中央折り曲げ機40により行われ、その手順を図6〜図12に示す。なお、この図6〜図12はその折り曲げ機40を反転させてその下部が上方を向くように描いたものである。
【0037】
即ち、図6に示すように、ワイヤ16を折り曲げる際に、図示しないコントローラは中央移動装置31を制御して中央移動台30を移動させ、中央折り曲げ機40のローラシャフト41とベンダ42の間にワイヤ16を挿入させる。この時、コントローラは扇状のフランジ41aがワイヤ16から遠ざかるようにシャフト41を回転させ、そのフランジ41aがワイヤ16の挿入の妨げとならないようにする。ローラシャフト41とベンダ42の間にワイヤ16を挿入させた後には、図7に示すように、ローラシャフト41をフランジ41aとともに回転させ、そのフランジ41aをワイヤ16に対向させる。その後シャフト41を軸方向に移動させ、図8に示すように、そのワイヤ16をフランジ41aと旋回ギア43cの間に挟持させる。その後、図9に示すように、ローラシャフト41を中心とする円弧状の軌跡を持って矢印のようにベンダ42を旋回させ、ベンダ42によりワイヤ16をローラシャフト41に沿って折り曲げる。このようにワイヤ16をフランジ41aと旋回ギア43cの間に挟持することにより、ワイヤ16の折り曲げ内周部が拡がるような変形を抑え、ローラシャフト41を旋回ギア43cとともに回転させることにより、ワイヤ16の絶縁皮膜が摩耗したり剥離することを防止する。
【0038】
その後、図10に示すように、ベンダ42を元の位置に復元させるとともにアクチュエータ46(図4)を伸張作動させ、フランジ41aと旋回ギア43cによるワイヤ16の挟持を解消させる。その後、図11に示すように、コントローラは扇状のフランジ41aがワイヤ16から遠ざかるようにシャフトを回転させる。そして、図示しないコントローラは中央移動装置31(図3)を制御して中央移動台30を中央折り曲げ機40とともに移動させ、図12に示すように、ローラシャフト41とベンダ42の間からワイヤ16を離脱させる。このようにして第1コイル辺部13aの後端に第1屈曲部15aを形成する(図19)。
【0039】
<第1湾曲工程>
図13に示すように、第1屈曲部15aを形成した後、その第1屈曲部15aより後にノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16を垂直面内において湾曲させて第1屈曲部15aを先端とする第1コイルエンド部14aを形成する。この第1コイルエンド部14aの形成は、先の第1折り曲げ工程により折り曲げられた側と反対側に位置する右の折り曲げ機80を用いて行う。これにより既に形成された第1コイル辺部13aに折り曲げ機80が干渉することを回避することができる。この第1コイルエンド部14aの形成は、図13(a)に示すように、ノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16を右の折り曲げ機80における一対のピン82,83により挟み、その回転台81を回転させてワイヤ16を一方のピン82に沿って他方のピン83により僅かに折り曲げる。その後、回転台81を復元させ一対のピン82,83でワイヤ16を挟みつつノズル21側にその回転台81を僅かに移動させ、図13(b)に示すように再び回転台81を回転させてワイヤ16を僅かに折り曲げる。この動作を繰り返し、図13(c)に示すように、ノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16を第2平面内で湾曲させ、第1屈曲部15aを先端とする第1コイルエンド部14aを形成する。
【0040】
なお、図13ではノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16を湾曲させる例を示したが、図14に示すように、ワイヤ16を繰り出しつつ湾曲させても良い。即ち、この第1コイルエンド部14aの形成は、図14(a)に示すように、ノズル21近傍のワイヤ16を右の折り曲げ機80における一対のピン82,83により挟み、その回転台81を回転させてそのワイヤ16を僅かに折り曲げる。その後、回転台81を復元させて一対のピン82,83でワイヤ16を挟む状態を維持した状態で、ワイヤ送り装置22によりワイヤ16を僅かに繰り出し、図14(b)に示すように、その後回転台81を再び回転させてワイヤ16を再び同方向に僅かに折り曲げる。この動作を繰り返すことにより、図14(c)に示すように、ワイヤ16を第2平面内で湾曲させ、第1屈曲部15aを先端とする第1コイルエンド部14aを形成しても良い。
【0041】
<第2折り曲げ工程>
この工程では、第1コイルエンド部14aを形成した後にワイヤ16を水平面内において引出方向の一方の側方に折り曲げて第1コイルエンド部14aの後端に第2屈曲部15bを形成する。この第2折り曲げ工程は、前述した第1折り曲げ工程と同一の手順であるので、繰り返しての説明を省略する。ここで、ワイヤ16を折り曲げて第2屈曲部15bを形成すると、図16に一点鎖線で示すように、第1コイル辺部13aはノズル21と平行になってそのノズル21の側方に位置することになるけれども、その第1コイル辺部13aよりノズル21は長く形成されているので、そのノズル21の周囲の空間にそのコイル辺部13aが形成されることは許容される。
【0042】
<第2ワイヤ繰り出し工程>
図16の実線矢印で示すように、第2屈曲部15bの後にノズル21の前端からワイヤ16を繰り出して第2屈曲部15bを先端とする第2コイル辺部13bを形成する。このワイヤ16の繰り出しはワイヤ送り装置22(図1)により行われ、前述した第1ワイヤ繰り出し工程と同一の手順であるので、繰り返しての説明を省略する。
【0043】
<第3折り曲げ工程>
前記ノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16を水平面内において繰り出し方向の他方の側方に折り曲げて第2屈曲部15bを先端とする第2コイル辺部13bの後端における第3屈曲部15cを形成する。この第3折り曲げ工程は、曲げる方向を反対側、即ち、曲げる方向を図2の右方向としたことを除いて、前述した第1及び第2折り曲げ工程と同一の手順であるので、繰り返しての説明を省略する。
【0044】
<第2湾曲工程>
図15に示すように、第3屈曲部15cより後にノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16を垂直面内において湾曲させて第3屈曲部15cを先端とする第2コイルエンド部14bを形成する。ここで、使用する折り曲げ機70は、先の第1湾曲工程において使用した側と反対側に位置するものを用いる。これにより既に形成された第1及び第2コイル辺部13a,13bに折り曲げ機70が干渉することなく第2コイルエンド部14bを形成することができる。この第2コイルエンド部14bの形成は、ワイヤ16を僅かに折り曲げながらその折り曲げ機70をノズル21側に移動することにより行うか、或いは、折り曲げ機70によりワイヤ16を僅かに折り曲げながらワイヤ送り装置22によりワイヤ16を繰り出すことにより行われる。これにより、図15に示すように、第3屈曲部15cを先端とする第2コイルエンド部14bが形成される。
【0045】
<第4折り曲げ工程>
第2コイルエンド部14bの後にノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16を水平面内において繰り出し方向の他方の側方に折り曲げて第2コイルエンド部14の後端に第4屈曲部15dを形成する。この第4折り曲げ工程は、前述した第3折り曲げ工程と同一の手順であるので、繰り返しての説明を省略する。ここで、ワイヤ16を折り曲げて第4屈曲部15dを形成すると、図17に一点鎖線で示すように、既に形成された第1及び第2コイル辺部13a,13bはノズル21と平行になってそのノズル21の側方に位置することになるけれども、その第1及び第2コイル辺部13a,13bよりノズル21は長く形成されているので、そのノズル21の周囲の空間にそのコイル辺部13aが形成されることは許容される。
【0046】
その後最初の第1ワイヤ16繰り出し工程に戻る。即ち、図17の実線矢印で示すように、第4屈曲部15dの後にノズル21の前端からワイヤ16を繰り出して、第4屈曲部15dを先端とする次の1単位となる第1コイル辺部13aを形成する。そして、その後も上述した工程を繰り返すことにより、コイル辺部13a,13bとコイルエンド部14a,14bが円周方向に連続する図19に示すステータコイル12を得ることができる。そして、所望の形状のステータコイル12が形成されると、図示しないカッタ装置によりワイヤ16を切断し、所望の形状に形成されたステータコイル12をコイルの製造装置20から取り出す。
【0047】
従って、本発明のコイルの製造装置20では、ノズル21より繰り出されたワイヤ16を加工機により屈曲させてステータコイル12を形成するけれども、そのステータコイル12のコイル辺部13より長いノズル21を用い、そのノズル21の前方及び周囲の空間に、加工機により折り曲げられ又は湾曲させられたワイヤ16からなるステータコイル12を直接形成するものである。このため、得ようとするコイル12のコイル辺部13とコイルエンド部14の長さが場所により異なるとしても、巻枠又は巻線治具等を用いることなくそのようなステータコイル12を製造することが可能になり、従来必要とされた巻枠又は巻線治具等の管理負担を減少させることができる。そして、図示しないコントローラにより加工機を制御して、その加工機が折り曲げる曲げ加工点や湾曲の程度を変更するようにすれば、形状の異なる複数種類のステータコイル12を得ることが可能になる。このため、本発明のコイルの製造装置20は、極めて汎用性の高いものとなり、コイル12の生産性を著しく高めることが可能になる。
【0048】
特に本発明では、ワイヤを第1平面で折り曲げる中央折り曲げ機40の他に、ノズル21の両側に3軸方向に各々移動する左右の移動台50,60を設け、その左右の移動台50,60にワイヤ16を第2平面内において折り曲げ可能な左右の折り曲げ機70,80を設けたので、中央折り曲げ機40により折り曲げられたワイヤ16と左右の折り曲げ機70,80が干渉するようなことを移動する左右の移動台50,60により回避することができる。この結果、例えば、その折り曲げられたワイヤ16によりそのいずれか一方の折り曲げ機70又は80によるワイヤ16の折り曲げが不能となっても、他方の折り曲げ機80又は70を用いることにより、ノズル21から繰り出されるワイヤ16の折り曲げ加工を続行して、ステータコイル12を確実に製造することが可能になる。そして、カッタ装置によるワイヤ16の切断や、製造された所望の形状のステータコイル12をコイルの製造装置20から取り出す作業をコントローラが制御するようにすれば、ステータコイル12の製造における完全な自動化を可能にすることができる。
【0049】
なお、上述した実施の形態では、中央折り曲げ機40と左右の折り曲げ機70,80を用いたステータコイル12の製造を説明したが、本発明の製造装置における左右の移動台50,60には、保持具76,86がそれぞれ設けられているので、この保持具76,86を用いてワイヤ16をクランク状に折り曲げ、コイル辺部13a,13b又はコイルエンド部14a,14bのいずれか一方又は双方にクランク部を形成するようにしても良い。例えば、図18に示すように、第1コイル辺部13aのスロット11b(図20)より突出する両側の端部にクランク部13c,13cをそれぞれ形成すれば、第1コイル辺部13aの下端に連続して形成される第1コイルエンド部14aをステータコア11の径方向に偏倚させることができ、そのコア11の中央に後に挿入される回転子とそのコイルエンド部14aが干渉することをさけることが期待できる。また、図示しないが、コイルエンド部14a,14bにクランク部を形成すれば、このクランク部で分断されるコイルエンド部14a,14bの一方を他方に対して径方向に偏倚させることができ、それと隣接する他のステータコイル12におけるコイルエンド部との組み合わせを良くし、スロット11b(図20)より突出する部分におけるコイル辺部13a,13bが占める密度を向上させることが期待できる。
【0050】
なお、クランク部を形成する手順をコイル辺部13aに形成する場合を代表して説明すると、図18に示すように、このクランク部13c,13cの形成は、図18(a)に示すようにワイヤ16を保持した保持具76を、図18(b)に示すようにワイヤ16の中心軸から偏倚するように移動台50を図の下方又は上方に移動させることにより行われる。すると、保持具76とノズル21の先端との間に位置するワイヤ16がノズル21の延長線に対して傾斜し、これによりそのワイヤ16はクランク状に折り曲がることになる。このようなワイヤ16の折り曲げをコイル辺部13aの両端において行うことにより、図18(c)に示すように第1コイル辺部13aの両側の端部にクランク部13c,13cをそれぞれ形成することができる。このように左右の移動台50,60に保持具76,86をそれぞれ設ければ、本発明における装置はワイヤ16を折り曲げ又は湾曲させるとともに、そのワイヤ16をクランク状に折り曲げることも容易になり、ノズル21の前方及び周囲の空間に更に複雑な形状を成す所望のコイル12を製造することが可能になるとともに、その製造を自動化させることができる。
【0051】
また、上述した実施の形態では、ワイヤ15を各ティース11aの上下を交互に通るように巻回する波巻き方式に用いられるコイル12が製造される場合を説明したが、得ようとするコイルがコイル辺部13とコイルエンド部14が連続するものである限り、波巻き方式におけるコイルに限らず、ティース11aの周囲にワイヤ16を巻回させる重ね巻方式におけるコイルであっても良い。
【0052】
更に、上述した実施の形態では、ステータに用いられるコイルを製造する場合を説明したが、得られたコイルの用途がステータのものに限らず、コイル辺部13とコイルエンド部14が連続するものである限り、ステータ以外に用いられるコイルを製造しても良い。
【符号の説明】
【0053】
12 ステータコイル
13 コイル辺部
14 コイルエンド部
16 ワイヤ
17 供給源
21 ノズル
22 ワイヤ送り装置
30 中央移動台(加工機)
40 中央折り曲げ機(加工機)
50,60 左右の移動台(加工機)
70,80 左右の折り曲げ機(加工機)
76,86 保持具
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤを屈曲成形してステータ等に用いられるコイルを製造するコイルの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機のステータは、放射状に並んで内径方向に突出する複数のティース(磁極)及びその間に開口する複数のスロットを有する円筒状のステータコアと、そのスロットにコイル辺部を納めることによりそのコアに組み付けられたステータコイルとを備える。このステータコイルの組み付けに関しては、ステータコイルをステータコアと別に予め製造し、その後このコイルをコアの各スロットに収容するいわゆるインサータ方法が知られている。そして、このインサータ方法に用いられるコイルの巻線方式にあっては、ティースの周囲にワイヤを巻回する重ね巻方式と、ワイヤを各ティースの上下を交互に通るように巻回する波巻き方式(例えば、特許文献1参照。)が知られている。
【0003】
この波巻き方式では、ティースと同数の内側治具と外側治具がそれぞれ放射状に移動するように設けられた波巻きコイルの製造装置が用いられる。その製造装置では、先ず内側治具を環状に配置し、その外側に外側治具を環状に配置させる。そして環状に配置された複数の内側治具にワイヤを所定ターン数だけ巻回して円形のコイルを形成する。その後、図21に示すように、内側治具2と外側治具3をそれぞれ放射状に移動させ、複数の内側治具2が描く円よりも内側に外側治具3を移動させることにより、複数の内側治具2の周囲に円形に巻回されたコイルを星型に成形する。このようにして形成された星形の波巻きコイル4は、その後図示しないインサータ装置を用いてコアのティース間におけるスロットに押し込まれ、これによってステータが形成される。
【0004】
一方、このステータには回転子が挿入されるため、スロットに収容されずにステータコアの軸方向の端面から突出するコイルのコイルエンド部がステータコアの内周面より内側に進入することを防止する必要がある。また、その回転電機が3相式のものであれば、単一のステータコアに3相分のステータコイルが組み付けられる。このため、3相式の回転電機では、各相コイルのスロットから突出する3相分のコイルエンド部が互いに重複する結果となる。このようなことを考慮して、このコイルエンド部のコア径方向の厚みがコイル辺部のコア径方向の厚みより小さくなる様に、コイル辺部に対してコイルエンド部をコア径方向に偏って設け、コイルエンドの重複を回避しようとするステータが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。このステータにおけるコイルの製造方法は、1回毎のターン長を順次変化させて円環状に成形する環状成形工程と、この環状成形工程の後、コイルエンド部のコア径方向の厚みがコイル辺部のコア径方向の厚みより小さくなる様に、コイルエンド部に相当するワイヤをコア径方向に押り曲げ又は湾曲させて所定の形状に整形するコイルエンド整形工程とを経て製造されるとしている。そして、このコイルの製造方法は波巻きコイルにも適用しうるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2001−513320号公報
【特許文献2】特開平11−98740号公報(段落番号[0005]、[0013]、図9、図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献2におけるコイルの製造方法では、1回毎のターン長を順次変化させる必要があるため、1回毎のターン長が異なる特別な巻枠を必要とし、その大きさ又はターン数が異なればその大きさ又はターン数に応じた複数の巻枠又はそれ専用の巻線治具を準備する必要があり、巻枠又は巻線治具の管理負担が増加する不具合があった。
【0007】
本発明の目的は、巻枠又は巻線治具を用いることなくワイヤの成形が可能であって、その曲げ加工点や湾曲の程度を容易に変更し得るコイルの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコイルの製造装置は、供給源から延びるワイヤが挿通された真直ぐなノズルと、そのノズルの後端側に設けられワイヤをノズルに供給してノズルの前端からワイヤを繰り出すワイヤ送り装置と、ノズルの前端から前方に突出したワイヤを折り曲げ加工してコイル辺部とコイルエンド部が連続するコイルを形成する加工機とを備える。
【0009】
その特徴ある構成は、ノズルがコイル辺部より長く形成され、加工機がノズルの前方及び周囲の空間にコイルを形成可能にノズルがワイヤ送り装置の前方の空間に取付けられたところにある。
【0010】
加工機は、ノズルの上方に設けられノズルに対して3軸方向に各々移動する中央移動台と、ノズルを挟むようにノズルの両側に設けられノズルに対して3軸方向に各々移動する左右の移動台と、中央移動台に設けられノズルの前端から繰り出されたワイヤをノズルを含む第1平面内において折り曲げ可能な中央折り曲げ機と、左右の移動台に設けられノズルの前端から繰り出されたワイヤをノズルを含みかつ第1平面と直交する第2平面内において折り曲げ可能な左右の折り曲げ機とを備えることが好ましい。
【0011】
また、ノズルの前端から真直ぐ繰り出されたワイヤをノズルの前端から所定の間隔を空けて保持する保持具を左右の移動台にそれぞれ設け、左右の移動台を制御するコントローラが移動台とともに保持具をワイヤの中心軸から偏倚させてワイヤをクランク状に折り曲げ可能に構成することが更に好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコイルの製造装置では、ワイヤを繰り出すノズルをワイヤ送り装置の前方の空間に取付け、そのノズルより繰り出されたワイヤを加工機により屈曲させてコイルを形成するけれども、その得ようとするコイルのコイル辺部よりノズルを長く形成したので、そのノズルの前方及び周囲の空間にそのコイルを直接形成することができる。このため、巻枠又は巻線治具等を用いることなくワイヤを成形してコイルを製造することが可能になり、従来必要とされた巻枠又は巻線治具の管理負担を減少させることができる。そして、加工機により曲げ加工点や湾曲の程度を変更することができるのでその汎用性や生産性も高まり、コントローラによりその加工機を制御するようにすればコイルの製造における自動化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明実施形態のコイルの製造装置を示す側面図である。
【図2】そのコイルの製造装置の正面図である。
【図3】そのコイルの製造装置の上面図である。
【図4】その中央折り曲げ機の詳細を示す側面図である。
【図5】その左の折り曲げ機の詳細を示す側面図である。
【図6】その中央折り曲げ機を反転させてフランジを上方に向け、ローラシャフトとベンダの間にワイヤを挿入させた状態を示す斜視図である。
【図7】そのシャフトをフランジとともに回転させ、そのフランジをワイヤに対向させた状態を示す図6に対応する斜視図である。
【図8】ワイヤをフランジと旋回ギアの間に挟持させた状態を示す図6に対応する斜視図である。
【図9】ベンダを旋回させてワイヤを折り曲げた状態を示す図6に対応する斜視図である。
【図10】ベンダを復元させ、フランジと旋回ギアによるワイヤの挟持を解消させた状態を示す図6に対応する斜視図である。
【図11】扇状のフランジがワイヤから遠ざかるようにシャフトを回転させた状態を示す図6に対応する斜視図である。
【図12】ローラシャフトとベンダの間からワイヤを離脱させた状態を示す図6に対応する斜視図である。
【図13】その装置の右の折り曲げ機を用いてワイヤを湾曲させる状態を示す説明図である。
【図14】その右の折り曲げ機を用いてワイヤを湾曲させる別の状態を示す説明図である。
【図15】その装置の左の折り曲げ機を用いてワイヤを湾曲させる状態を示す説明図である。
【図16】そのワイヤが繰り出されたノズルの左側面図である。
【図17】そのワイヤが繰り出されたノズルの右側面図である。
【図18】そのワイヤがクランク状に折り曲げられる状態を示す説明図である。
【図19】得られたステータコイルの斜視図である。
【図20】ステータコアに複数のステータコイルが挿通されたステータを示す斜視図である。
【図21】従来のコイルの製造装置により得られる星形の波巻きコイルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図20に電動機のステータ10を示す。このステータ10は円筒状を成すステータコア11とステータコイル12を備え、ステータコア11は放射状に並んで内径方向に突出する複数のティース(磁極)11a及びその間に開口する複数のスロット11bを有する。ステータコイル12は、円筒状のステータコア11の内周の軸方向に延びるスロット11bに挿入されるコイル辺部13と、そのステータコア11の軸方向にスロット11bより突出しステータコア11の外周に沿って湾曲するコイルエンド部14とが円周方向に連続して形成される。そして、このステータコイル12の複数のコイル辺部13を互いに近づけて窄め、その状態でステータコア11に挿通し、それらのコイル辺部13を径方向に拡大移動して各スロット11bに収めることによりステータ10が得られる。
【0016】
図1に、ワイヤ16を折り曲げ加工してステータコイル12を自動的に製造する本発明のコイルの製造装置20を示す。ワイヤ16は、巻き心治具を用いることなく折り曲げられるとその形状を維持できるような、その外径がある程度大きい太線が用いられる。ワイヤ16は、この実施の形態では、表面に絶縁皮膜が形成された断面矩形の平角線が用いられる。ワイヤ16を平角線とすれば、ステータ10におけるコイル12の占積率を高めることが期待できる。けれども、このワイヤ16は平角線に限らず、ステータ10等の仕様或いは製作工程に応じて、断面円形の丸線を用いても良い。
【0017】
コイルの製造装置20は、主要構成部として、基台20aに取付けられ供給源17から延びるワイヤ16が挿通された真直ぐなノズル21と、そのノズル21にワイヤ16を供給してノズル21の前端からそのワイヤ16を繰り出すワイヤ送り装置22を備える。ここで、互いに直交するX、Y、Zの3軸を設定し、X軸が水平前後方向、Y軸が水平横方向、Z軸が垂直方向に延びるものとして本発明のコイルの製造装置20について説明する。
【0018】
ノズル21は断面矩形の平角線からなるワイヤ16が挿通可能な真直ぐな角筒状のものであって、その全長は得ようとするステータコイル12のコイル辺部13より長く形成される。この実施の形態におけるノズル21は、図2に詳しく示すように、そのワイヤ16を収容可能な凹溝21aが形成された長尺状の棒状部材21bに対してその凹溝21aを蓋する蓋板21cをネジ21dにより固定することにより作られたものを示す。ノズル21の後部は取付部材20bの上部に取付けられ、取付部材20bの下端は基台20aに固定される。この取付部材20bによりノズル21はX軸方向に延びて基台20aの上方空間に固定される。ワイヤ16はリール17に巻回され、このリール17がワイヤ16の供給源となる。このリール17はコイルの製造装置20と別な場所の例えばノズル21の後方の床の上等に置かれる。
【0019】
図1に示すように、供給源であるリール17からワイヤ16をノズル21に供給するワイヤ送り装置22は、ノズル21の後端近傍に設けられてワイヤ16を固定支持する固定機構23と、その固定機構23の後方に設けられワイヤ16をX軸方向に送る送り機構24とを備える。固定機構23は、ノズル21と送り機構24の間に位置し、図示しないエアシリンダによって上下動してワイヤ16の途中を掴む第1チャック23aと、その第1チャック23aが取付けられた固定台23bを有し、この固定台23bが基台20aに取付けられる。送り機構24は、図示しないエアシリンダによって上下動してワイヤ16の途中を掴む第2チャック24aと、その第2チャック24aを支持する移動台24bと、ノズル21の後方にそのノズル21の延長線上に延びて設けられ移動台24bを基台20aに対してX軸方向に移動可能に支持するレール24cと、移動台24b側に螺合する図示しないボールネジと、そのボールネジを回転駆動するサーボモータ24dとを備える。サーボモータ24dは基台20a上に固定され、サーボモータ24dによるボールネジの回転によって移動台24bが移動し、第2チャック24aに掴まれたワイヤ16をX軸方向に移動可能に構成される。
【0020】
そして、この固定機構23の第1チャック23aを解放して送り機構24によりワイヤ16をX軸方向に移動させることによりノズル21にワイヤ16を供給することができ、これによりノズル21の前端からそのワイヤ16を繰り出すことができる。一方、送り機構24の第2チャック24aをワイヤ16を解放した状態でX軸上で後退させる際に固定機構23によりワイヤ16を掴むことにより一旦繰り出されたワイヤ16がその第2チャック24aとともに後退することを防止することができ、後退した第2チャック24aによりワイヤ16を再び掴んだ状態で固定機構23の第1チャック23aを解放し、ワイヤ16を掴んだ送り機構24の第2チャック24aを再び前方に移動することにより、供給源21から供給されたワイヤ16をノズル21に順次繰り出すことができるように構成される。なお、図1におけるワイヤ送り装置22は例示であって、図示しないが、ワイヤ送り装置22は、ワイヤ16に転接する複数のローラを備え、それら複数のローラを回転させることによりリール17から供給されるワイヤ16をこれらのローラの間からノズル21に供給するようにしても良い。また、図1における符号20cは、供給源であるリール17から繰り出されたワイヤ16を真直ぐに伸ばす癖取り装置である。
【0021】
また、図1〜図3に示すように、本発明のコイルの製造装置20は、そのノズル21の前端から前方に突出したワイヤ16を折り曲げ加工する加工機を備える。この実施の形態における加工機は、ノズル21の上方に設けられてそのノズル21に対して3軸方向に各々移動する中央移動台30と、ノズル21を挟むようにノズル21の両側に設けられそのノズル21に対して3軸方向に各々移動する左右の移動台50,60と、中央移動台30に設けられノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16をノズル21を含む第1平面内において折り曲げ可能な中央折り曲げ機40と、左右の移動台50,60に設けられノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16をノズル21を含みかつ第1平面と直交する第2平面内において折り曲げ可能な左右の折り曲げ機70,80とを備える。
【0022】
図1〜図3に示すように、中央移動台30は中央移動装置31を介して基台20aに取付けられる。この中央移動装置31は、X軸、Y軸、及びZ軸方向伸縮アクチュエータ32〜34の組み合わせにより構成される。この実施の形態におけるこれらの伸縮アクチュエータ32〜34は、サーボモータ32a〜34aによって回動駆動されるボールネジ32b〜34bと、このボールネジ32b〜34bに螺合して平行移動する従動子32c,33c等によって構成される。この実施の形態では、中央移動台30をZ軸方向に移動可能にZ軸方向伸縮アクチュエータ34の図示しない従動子に取付け、そのZ軸方向伸縮アクチュエータ34をY軸方向に移動可能にY軸方向伸縮アクチュエータ33の従動子33cに取付け、そのY軸方向伸縮アクチュエータ33をX軸方向に移動可能にX軸方向伸縮アクチュエータ32の従動子32cに取付け、そのX軸方向伸縮アクチュエータ32が中央の支柱36(図1)を介して基台20aに取付けられる。
【0023】
また、左右の移動台50,60は左右の移動装置51,61を介して基台20aに取付けられ、左右の移動装置51,61は、ノズル21を挟むようにそのノズル21のY軸方向における両側に設けられる。この左右の移動装置51,61は対称構造であり、中央移動装置31と同様に、X軸、Y軸、及びZ軸方向伸縮アクチュエータ52〜54、62〜64の組み合わせによりそれぞれ構成される。このX軸、Y軸、及びZ軸方向伸縮アクチュエータ52〜54、62〜64の組み合わせは上述した中央移動装置31のものと同一の構造であり、図2に示すように、左の移動装置51のX軸方向伸縮アクチュエータ52が左の支柱56を介して基台20aに取付けられ、右の移動装置61のX軸方向伸縮アクチュエータ62が右の支柱66を介して基台20aに取付けられる。
【0024】
そして、それらの各伸縮アクチュエータにおけるX軸サーボモータ32a,52a,62a、Y軸サーボモータ33a,53a,63aびZ軸サーボモータ34a,54a,64aは、これらの移動装置31,51,61をそれぞれ制御する図示しないコントローラの制御出力に接続される。そして、中央移動装置31は中央移動台30を基台20aに固定されたノズル21に対して3軸方向に任意に移動可能に構成され、左右の移動装置51,61は、ノズル21の両側に位置する左右の移動台50,60を三次元方向に任意に移動可能に構成される。
【0025】
図4に示すように、中央移動台30に設けられる中央折り曲げ機40は、一部を切り欠いて円弧状を成す円盤状のフランジ41a(図6〜図12)が下端に拡がって形成されワイヤ16の折り曲げ内側端部を支持するローラシャフト41と、このローラシャフト41のまわりを回動しそのシャフト41に沿って平角線からなるワイヤ16を折り曲げるベンダ42と、このベンダ42を旋回させる旋回駆動機構43とを備える。この旋回駆動機構43は、中央移動台30に固定されたローラスリーブ43aに軸受43bを介して回転可能に支持される旋回ギア43cと、この旋回ギア43cに噛み合う駆動ギア43dと、この駆動ギア43dを回転駆動するモータ43eとを備え、旋回ギア43cにベンダ42が連結される。
【0026】
モータ43eには図示しないコントローラの制御出力が接続され、コントローラの指令によりモータ43eが駆動ギア43dを回転させると、これに噛み合う旋回ギア43cが回転し、ベンダ42をローラシャフト41を中心とする円弧状の軌跡を持って旋回させ、ベンダ42がワイヤ16をローラシャフト41に沿って折り曲げるように構成される(図8及び図9)。このローラシャフト41は鉛直に設けられ、ノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16をこのノズル21を含む第1平面、具体的にはそのノズル21を含む水平面内において折り曲げ可能に構成される。
【0027】
また、中央折り曲げ機40は、ローラシャフト41を軸方向に摺動可能に支持しかつそのシャフト41を回転可能なモータ44と、ローラシャフト41を軸方向に駆動するアクチュエータ46を備える。このアクチュエータ46はZ軸方向に伸縮作動する本体46aとロッド46bを備え、本体46aが支持台46cを介して中央移動台30に支持され、ロッド46bの先端部に軸受46d、継ぎ手46eを介してローラシャフト41の上端部が回転可能に連結される。モータ44とアクチュエータ46にはコントローラの制御出力がそれぞれ接続され、コントローラの指令によりアクチュエータ46が伸縮作動するとローラシャフト41が昇降し、モータ44が駆動するとそのシャフト41が回転するように構成される(図6〜図12)。
【0028】
そして、この図示しないコントローラは、ワイヤ16をローラシャフト41に沿って折り曲げる過程でアクチュエータ46を収縮作動させ、図8及び図9に示すように、ワイヤ16をフランジ41aと旋回ギア43cの間に挟持し、ワイヤ16の折り曲げ内周部が拡がるような変形を抑えるように構成される。また、コントローラは、ワイヤ16をローラシャフト41に沿って折り曲げる過程でモータ44を回転作動させ、ローラシャフト41を旋回ギア43cとともに回転させ、ワイヤ16をフランジ41aと旋回ギア43cの間に挟持しながら前方に送る。これにより、ワイヤ16の絶縁皮膜が摩耗したり剥離することを防止するように構成される。
【0029】
ここで、図6に示すように、フランジ41aは、シャフト41が回転してベンダ42から遠ざかった状態で、その間にワイヤ16が進入可能に切り欠かれた扇状を成し、図11及び図12に示すように、そのベンダ42から遠ざかった状態で、略直角に折り曲げられたワイヤ16をそのシャフト41とベンダ42の間から離脱可能に、その扇状のフランジ41aの円弧を両側から挟む両辺は略直角又はそれ以下の角度で交わるように構成される。そして、アクチュエータ46としては、油圧シリンダ、エアシリンダ、電磁アクチュエータ等が例示されけれども、これらに限るものではない。そして、アクチュエータ46が付与するワイヤ16をフランジ41aが圧縮する荷重は、ワイヤ16の寸法、材質等に応じて適宜設定される。
【0030】
図2及び図3に示すように、左右の移動台50,60に設けられた左右の折り曲げ機70,80は、ノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16を第2平面内において湾曲可能なものであり、第2平面とは、ノズル21を含みかつ第1平面と直交する平面であってこの実施の形態における第2平面とはノズル21を含む鉛直面である。この左右の折り曲げ機70,80は対称構造であり、図2の左に示された折り曲げ機70を代表して説明すると、この左の折り曲げ機70は、図5に詳しく示すように、Y軸を回転中心として左の移動台50に回転可能に設けられた回転台71と、その回転台71にY軸方向に延びて設けられノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16を上下から挟む一対のピン72,73と、回転台71を回転させて回転台71とともに回転する一対のピン72,73によりワイヤ16を折り曲げる折り曲げモータ74(図2及び図3)を有し、折り曲げモータ74は図示しないコントローラの制御出力に接続される。ワイヤ16を挟む一対のピン72,73の一方72は回転台71の回転中心に位置し、その回転台71が回転すると一方のピン72を回転中心として他方のピン73が円弧状に移動し、一対のピン72,73により挟まれたワイヤ16を一方のピン72に沿って他方のピン73が折り曲げるように構成される。そして、図13に示すように、コントローラは、折り曲げモータ74によりワイヤ16を僅かに折り曲げつつ左の移動台50を移動させることにより、又は図14に示すように、ワイヤ16を僅かに折り曲げつつワイヤ16を繰り出すことにより、そのワイヤ16を第2平面内において円弧状に成形可能に構成される。
【0031】
また、左右の移動台50,60には、ノズル21の前端から真直ぐ繰り出されたワイヤ16をノズル21の前端から所定の間隔を空けて保持する保持具76,86がそれぞれ設けられる。これらの保持具76,86にはワイヤ16を収容可能な溝76a,86aがそれぞれ形成され、ノズル21からX軸上に直線状に引出されたワイヤ16にY軸方向から接近してそれらの溝76a,86aにワイヤ16を収容することにより、そのワイヤ16を保持することができるように構成される。そして、左右の移動台50,60を制御するコントローラは、図18に示すように、ワイヤ16を保持した保持具76,86をワイヤ16の中心軸から第2平面内で偏倚するように、具体的には上方又は下方に偏倚するように左右の移動台50,60を移動させ、これによりそのワイヤ16をクランク状に折り曲げることができるように構成される。
【0032】
次に、このようなコイルの製造装置を用いたステータコイルの製造について説明する。
【0033】
図20に示すように、ステータ10を構成するステータコイル12は、コイル辺部13とコイルエンド部14とが円周方向に連続するものである。このため、図19に示すように、そのコイル12は、図の上下方向に延びる第1コイル辺部13aと、そのコイル辺部13aの下端に一端が連結して湾曲する第1コイルエンド部14aと、その第1コイルエンド部14aの他端に下端が接続する第2コイル辺部13bと、その第2コイル辺部13bの上端に一端が連続する第2コイルエンド部14bとを有する。そして、第1及び第2コイル辺部13a,13bと第1及び第2コイルエンド部14a,14bの間の接続箇所にそれぞれ曲折部15a〜15dが形成される。
【0034】
よって、このステータコイル12は、第1コイル辺部13a、第1屈曲部15a、第1コイルエンド部14a、第2屈曲部15b、第2コイル辺部13b、第3屈曲部15c、第2コイルエンド部14b、第4下曲折部15dが順次連続することにより形成され、図19及び図20には、それらが幾重にも重ね合わされたものを示す。このため、本発明のコイルの製造装置20を用いたコイル製造工程は、ノズル21の前端からワイヤ16を直線状に繰り出してコイル辺部13a,13bを形成するワイヤ繰り出し工程と、そのワイヤ16を折り曲げて屈曲部15a〜15dを形成する折り曲げ工程と、繰り出されたワイヤ16を湾曲させてコイルエンド部14a,14bを形成する湾曲工程とを備えることになり、以下に各工程を説明する。
【0035】
<第1ワイヤ繰り出し工程>
先ず、真直ぐなノズル21を貫通してそのノズル21の前端から水平面内に直線状にワイヤ16を繰り出して、繰り出されたワイヤ16からなる第1コイル辺部13aを形成する。このワイヤ16の繰り出しはワイヤ送り装置22により行われ、具体的には図1に示す固定機構23の第1チャック23aを解放して送り機構24によりワイヤ16をX軸方向に移動させることにより行われる。
【0036】
<第1折り曲げ工程>
その後ノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16を水平面内において繰り出し方向の一方の側方に折り曲げて第1コイル辺部13の後端に第1屈曲部15aを形成する。ここで、この実施の形態において、繰り出し方向の一方の側方とは、図2における左方向を意味し、繰り出し方向の他方の側方とは、図2における右方向を意味するものとする。そして、この折り曲げは、中央折り曲げ機40により行われ、その手順を図6〜図12に示す。なお、この図6〜図12はその折り曲げ機40を反転させてその下部が上方を向くように描いたものである。
【0037】
即ち、図6に示すように、ワイヤ16を折り曲げる際に、図示しないコントローラは中央移動装置31を制御して中央移動台30を移動させ、中央折り曲げ機40のローラシャフト41とベンダ42の間にワイヤ16を挿入させる。この時、コントローラは扇状のフランジ41aがワイヤ16から遠ざかるようにシャフト41を回転させ、そのフランジ41aがワイヤ16の挿入の妨げとならないようにする。ローラシャフト41とベンダ42の間にワイヤ16を挿入させた後には、図7に示すように、ローラシャフト41をフランジ41aとともに回転させ、そのフランジ41aをワイヤ16に対向させる。その後シャフト41を軸方向に移動させ、図8に示すように、そのワイヤ16をフランジ41aと旋回ギア43cの間に挟持させる。その後、図9に示すように、ローラシャフト41を中心とする円弧状の軌跡を持って矢印のようにベンダ42を旋回させ、ベンダ42によりワイヤ16をローラシャフト41に沿って折り曲げる。このようにワイヤ16をフランジ41aと旋回ギア43cの間に挟持することにより、ワイヤ16の折り曲げ内周部が拡がるような変形を抑え、ローラシャフト41を旋回ギア43cとともに回転させることにより、ワイヤ16の絶縁皮膜が摩耗したり剥離することを防止する。
【0038】
その後、図10に示すように、ベンダ42を元の位置に復元させるとともにアクチュエータ46(図4)を伸張作動させ、フランジ41aと旋回ギア43cによるワイヤ16の挟持を解消させる。その後、図11に示すように、コントローラは扇状のフランジ41aがワイヤ16から遠ざかるようにシャフトを回転させる。そして、図示しないコントローラは中央移動装置31(図3)を制御して中央移動台30を中央折り曲げ機40とともに移動させ、図12に示すように、ローラシャフト41とベンダ42の間からワイヤ16を離脱させる。このようにして第1コイル辺部13aの後端に第1屈曲部15aを形成する(図19)。
【0039】
<第1湾曲工程>
図13に示すように、第1屈曲部15aを形成した後、その第1屈曲部15aより後にノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16を垂直面内において湾曲させて第1屈曲部15aを先端とする第1コイルエンド部14aを形成する。この第1コイルエンド部14aの形成は、先の第1折り曲げ工程により折り曲げられた側と反対側に位置する右の折り曲げ機80を用いて行う。これにより既に形成された第1コイル辺部13aに折り曲げ機80が干渉することを回避することができる。この第1コイルエンド部14aの形成は、図13(a)に示すように、ノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16を右の折り曲げ機80における一対のピン82,83により挟み、その回転台81を回転させてワイヤ16を一方のピン82に沿って他方のピン83により僅かに折り曲げる。その後、回転台81を復元させ一対のピン82,83でワイヤ16を挟みつつノズル21側にその回転台81を僅かに移動させ、図13(b)に示すように再び回転台81を回転させてワイヤ16を僅かに折り曲げる。この動作を繰り返し、図13(c)に示すように、ノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16を第2平面内で湾曲させ、第1屈曲部15aを先端とする第1コイルエンド部14aを形成する。
【0040】
なお、図13ではノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16を湾曲させる例を示したが、図14に示すように、ワイヤ16を繰り出しつつ湾曲させても良い。即ち、この第1コイルエンド部14aの形成は、図14(a)に示すように、ノズル21近傍のワイヤ16を右の折り曲げ機80における一対のピン82,83により挟み、その回転台81を回転させてそのワイヤ16を僅かに折り曲げる。その後、回転台81を復元させて一対のピン82,83でワイヤ16を挟む状態を維持した状態で、ワイヤ送り装置22によりワイヤ16を僅かに繰り出し、図14(b)に示すように、その後回転台81を再び回転させてワイヤ16を再び同方向に僅かに折り曲げる。この動作を繰り返すことにより、図14(c)に示すように、ワイヤ16を第2平面内で湾曲させ、第1屈曲部15aを先端とする第1コイルエンド部14aを形成しても良い。
【0041】
<第2折り曲げ工程>
この工程では、第1コイルエンド部14aを形成した後にワイヤ16を水平面内において引出方向の一方の側方に折り曲げて第1コイルエンド部14aの後端に第2屈曲部15bを形成する。この第2折り曲げ工程は、前述した第1折り曲げ工程と同一の手順であるので、繰り返しての説明を省略する。ここで、ワイヤ16を折り曲げて第2屈曲部15bを形成すると、図16に一点鎖線で示すように、第1コイル辺部13aはノズル21と平行になってそのノズル21の側方に位置することになるけれども、その第1コイル辺部13aよりノズル21は長く形成されているので、そのノズル21の周囲の空間にそのコイル辺部13aが形成されることは許容される。
【0042】
<第2ワイヤ繰り出し工程>
図16の実線矢印で示すように、第2屈曲部15bの後にノズル21の前端からワイヤ16を繰り出して第2屈曲部15bを先端とする第2コイル辺部13bを形成する。このワイヤ16の繰り出しはワイヤ送り装置22(図1)により行われ、前述した第1ワイヤ繰り出し工程と同一の手順であるので、繰り返しての説明を省略する。
【0043】
<第3折り曲げ工程>
前記ノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16を水平面内において繰り出し方向の他方の側方に折り曲げて第2屈曲部15bを先端とする第2コイル辺部13bの後端における第3屈曲部15cを形成する。この第3折り曲げ工程は、曲げる方向を反対側、即ち、曲げる方向を図2の右方向としたことを除いて、前述した第1及び第2折り曲げ工程と同一の手順であるので、繰り返しての説明を省略する。
【0044】
<第2湾曲工程>
図15に示すように、第3屈曲部15cより後にノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16を垂直面内において湾曲させて第3屈曲部15cを先端とする第2コイルエンド部14bを形成する。ここで、使用する折り曲げ機70は、先の第1湾曲工程において使用した側と反対側に位置するものを用いる。これにより既に形成された第1及び第2コイル辺部13a,13bに折り曲げ機70が干渉することなく第2コイルエンド部14bを形成することができる。この第2コイルエンド部14bの形成は、ワイヤ16を僅かに折り曲げながらその折り曲げ機70をノズル21側に移動することにより行うか、或いは、折り曲げ機70によりワイヤ16を僅かに折り曲げながらワイヤ送り装置22によりワイヤ16を繰り出すことにより行われる。これにより、図15に示すように、第3屈曲部15cを先端とする第2コイルエンド部14bが形成される。
【0045】
<第4折り曲げ工程>
第2コイルエンド部14bの後にノズル21の前端から繰り出されたワイヤ16を水平面内において繰り出し方向の他方の側方に折り曲げて第2コイルエンド部14の後端に第4屈曲部15dを形成する。この第4折り曲げ工程は、前述した第3折り曲げ工程と同一の手順であるので、繰り返しての説明を省略する。ここで、ワイヤ16を折り曲げて第4屈曲部15dを形成すると、図17に一点鎖線で示すように、既に形成された第1及び第2コイル辺部13a,13bはノズル21と平行になってそのノズル21の側方に位置することになるけれども、その第1及び第2コイル辺部13a,13bよりノズル21は長く形成されているので、そのノズル21の周囲の空間にそのコイル辺部13aが形成されることは許容される。
【0046】
その後最初の第1ワイヤ16繰り出し工程に戻る。即ち、図17の実線矢印で示すように、第4屈曲部15dの後にノズル21の前端からワイヤ16を繰り出して、第4屈曲部15dを先端とする次の1単位となる第1コイル辺部13aを形成する。そして、その後も上述した工程を繰り返すことにより、コイル辺部13a,13bとコイルエンド部14a,14bが円周方向に連続する図19に示すステータコイル12を得ることができる。そして、所望の形状のステータコイル12が形成されると、図示しないカッタ装置によりワイヤ16を切断し、所望の形状に形成されたステータコイル12をコイルの製造装置20から取り出す。
【0047】
従って、本発明のコイルの製造装置20では、ノズル21より繰り出されたワイヤ16を加工機により屈曲させてステータコイル12を形成するけれども、そのステータコイル12のコイル辺部13より長いノズル21を用い、そのノズル21の前方及び周囲の空間に、加工機により折り曲げられ又は湾曲させられたワイヤ16からなるステータコイル12を直接形成するものである。このため、得ようとするコイル12のコイル辺部13とコイルエンド部14の長さが場所により異なるとしても、巻枠又は巻線治具等を用いることなくそのようなステータコイル12を製造することが可能になり、従来必要とされた巻枠又は巻線治具等の管理負担を減少させることができる。そして、図示しないコントローラにより加工機を制御して、その加工機が折り曲げる曲げ加工点や湾曲の程度を変更するようにすれば、形状の異なる複数種類のステータコイル12を得ることが可能になる。このため、本発明のコイルの製造装置20は、極めて汎用性の高いものとなり、コイル12の生産性を著しく高めることが可能になる。
【0048】
特に本発明では、ワイヤを第1平面で折り曲げる中央折り曲げ機40の他に、ノズル21の両側に3軸方向に各々移動する左右の移動台50,60を設け、その左右の移動台50,60にワイヤ16を第2平面内において折り曲げ可能な左右の折り曲げ機70,80を設けたので、中央折り曲げ機40により折り曲げられたワイヤ16と左右の折り曲げ機70,80が干渉するようなことを移動する左右の移動台50,60により回避することができる。この結果、例えば、その折り曲げられたワイヤ16によりそのいずれか一方の折り曲げ機70又は80によるワイヤ16の折り曲げが不能となっても、他方の折り曲げ機80又は70を用いることにより、ノズル21から繰り出されるワイヤ16の折り曲げ加工を続行して、ステータコイル12を確実に製造することが可能になる。そして、カッタ装置によるワイヤ16の切断や、製造された所望の形状のステータコイル12をコイルの製造装置20から取り出す作業をコントローラが制御するようにすれば、ステータコイル12の製造における完全な自動化を可能にすることができる。
【0049】
なお、上述した実施の形態では、中央折り曲げ機40と左右の折り曲げ機70,80を用いたステータコイル12の製造を説明したが、本発明の製造装置における左右の移動台50,60には、保持具76,86がそれぞれ設けられているので、この保持具76,86を用いてワイヤ16をクランク状に折り曲げ、コイル辺部13a,13b又はコイルエンド部14a,14bのいずれか一方又は双方にクランク部を形成するようにしても良い。例えば、図18に示すように、第1コイル辺部13aのスロット11b(図20)より突出する両側の端部にクランク部13c,13cをそれぞれ形成すれば、第1コイル辺部13aの下端に連続して形成される第1コイルエンド部14aをステータコア11の径方向に偏倚させることができ、そのコア11の中央に後に挿入される回転子とそのコイルエンド部14aが干渉することをさけることが期待できる。また、図示しないが、コイルエンド部14a,14bにクランク部を形成すれば、このクランク部で分断されるコイルエンド部14a,14bの一方を他方に対して径方向に偏倚させることができ、それと隣接する他のステータコイル12におけるコイルエンド部との組み合わせを良くし、スロット11b(図20)より突出する部分におけるコイル辺部13a,13bが占める密度を向上させることが期待できる。
【0050】
なお、クランク部を形成する手順をコイル辺部13aに形成する場合を代表して説明すると、図18に示すように、このクランク部13c,13cの形成は、図18(a)に示すようにワイヤ16を保持した保持具76を、図18(b)に示すようにワイヤ16の中心軸から偏倚するように移動台50を図の下方又は上方に移動させることにより行われる。すると、保持具76とノズル21の先端との間に位置するワイヤ16がノズル21の延長線に対して傾斜し、これによりそのワイヤ16はクランク状に折り曲がることになる。このようなワイヤ16の折り曲げをコイル辺部13aの両端において行うことにより、図18(c)に示すように第1コイル辺部13aの両側の端部にクランク部13c,13cをそれぞれ形成することができる。このように左右の移動台50,60に保持具76,86をそれぞれ設ければ、本発明における装置はワイヤ16を折り曲げ又は湾曲させるとともに、そのワイヤ16をクランク状に折り曲げることも容易になり、ノズル21の前方及び周囲の空間に更に複雑な形状を成す所望のコイル12を製造することが可能になるとともに、その製造を自動化させることができる。
【0051】
また、上述した実施の形態では、ワイヤ15を各ティース11aの上下を交互に通るように巻回する波巻き方式に用いられるコイル12が製造される場合を説明したが、得ようとするコイルがコイル辺部13とコイルエンド部14が連続するものである限り、波巻き方式におけるコイルに限らず、ティース11aの周囲にワイヤ16を巻回させる重ね巻方式におけるコイルであっても良い。
【0052】
更に、上述した実施の形態では、ステータに用いられるコイルを製造する場合を説明したが、得られたコイルの用途がステータのものに限らず、コイル辺部13とコイルエンド部14が連続するものである限り、ステータ以外に用いられるコイルを製造しても良い。
【符号の説明】
【0053】
12 ステータコイル
13 コイル辺部
14 コイルエンド部
16 ワイヤ
17 供給源
21 ノズル
22 ワイヤ送り装置
30 中央移動台(加工機)
40 中央折り曲げ機(加工機)
50,60 左右の移動台(加工機)
70,80 左右の折り曲げ機(加工機)
76,86 保持具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給源(17)から延びるワイヤ(16)が挿通された真直ぐなノズル(21)と、
前記ノズル(21)の後端側に設けられ前記ワイヤ(16)を前記ノズル(21)に供給して前記ノズル(21)の前端から前記ワイヤ(16)を繰り出すワイヤ送り装置(22)と、
前記ノズル(21)の前端から前方に突出した前記ワイヤ(16)を折り曲げ加工してコイル辺部(13)とコイルエンド部(14)が連続するコイル(12)を形成する加工機(30,40,50,60,70,80)と
を備えたコイルの製造装置であって、
前記ノズル(21)が前記コイル辺部(13)より長く形成され、
前記加工機(30,40,50,60,70,80)が前記ノズル(21)の前方及び周囲の空間に前記コイル(12)を形成可能に前記ノズル(21)が前記ワイヤ送り装置(22)の前方の空間に取付けられた
ことを特徴とするコイルの製造装置。
【請求項2】
加工機が、
ノズル(21)の上方に設けられ前記ノズル(21)に対して3軸方向に各々移動する中央移動台(30)と、
前記ノズル(21)を挟むように前記ノズル(21)の両側に設けられ前記ノズル(21)に対して3軸方向に各々移動する左右の移動台(50,60)と、
前記中央移動台(30)に設けられ前記ノズル(21)の前端から繰り出されたワイヤ(16)を前記ノズル(21)を含む第1平面内において折り曲げ可能な中央折り曲げ機(40)と、
前記左右の移動台(50,60)に設けられ前記ノズル(21)の前端から繰り出された前記ワイヤ(16)を前記ノズル(21)を含みかつ前記第1平面と直交する第2平面内において折り曲げ可能な左右の折り曲げ機(70,80)と
を備えた請求項1記載のコイルの製造装置。
【請求項3】
ノズル(21)の前端から真直ぐ繰り出されたワイヤ(16)を前記ノズル(21)の前端から所定の間隔を空けて保持する保持具(76,86)が左右の移動台(50,60)にそれぞれ設けられ、前記左右の移動台(50,60)を制御するコントローラは前記左右の移動台(50,60)とともに前記保持具(76,86)を前記ワイヤ(16)の中心軸から偏倚させて前記ワイヤ(16)をクランク状に折り曲げ可能に構成された請求項2記載のコイルの製造装置。
【請求項1】
供給源(17)から延びるワイヤ(16)が挿通された真直ぐなノズル(21)と、
前記ノズル(21)の後端側に設けられ前記ワイヤ(16)を前記ノズル(21)に供給して前記ノズル(21)の前端から前記ワイヤ(16)を繰り出すワイヤ送り装置(22)と、
前記ノズル(21)の前端から前方に突出した前記ワイヤ(16)を折り曲げ加工してコイル辺部(13)とコイルエンド部(14)が連続するコイル(12)を形成する加工機(30,40,50,60,70,80)と
を備えたコイルの製造装置であって、
前記ノズル(21)が前記コイル辺部(13)より長く形成され、
前記加工機(30,40,50,60,70,80)が前記ノズル(21)の前方及び周囲の空間に前記コイル(12)を形成可能に前記ノズル(21)が前記ワイヤ送り装置(22)の前方の空間に取付けられた
ことを特徴とするコイルの製造装置。
【請求項2】
加工機が、
ノズル(21)の上方に設けられ前記ノズル(21)に対して3軸方向に各々移動する中央移動台(30)と、
前記ノズル(21)を挟むように前記ノズル(21)の両側に設けられ前記ノズル(21)に対して3軸方向に各々移動する左右の移動台(50,60)と、
前記中央移動台(30)に設けられ前記ノズル(21)の前端から繰り出されたワイヤ(16)を前記ノズル(21)を含む第1平面内において折り曲げ可能な中央折り曲げ機(40)と、
前記左右の移動台(50,60)に設けられ前記ノズル(21)の前端から繰り出された前記ワイヤ(16)を前記ノズル(21)を含みかつ前記第1平面と直交する第2平面内において折り曲げ可能な左右の折り曲げ機(70,80)と
を備えた請求項1記載のコイルの製造装置。
【請求項3】
ノズル(21)の前端から真直ぐ繰り出されたワイヤ(16)を前記ノズル(21)の前端から所定の間隔を空けて保持する保持具(76,86)が左右の移動台(50,60)にそれぞれ設けられ、前記左右の移動台(50,60)を制御するコントローラは前記左右の移動台(50,60)とともに前記保持具(76,86)を前記ワイヤ(16)の中心軸から偏倚させて前記ワイヤ(16)をクランク状に折り曲げ可能に構成された請求項2記載のコイルの製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−130554(P2011−130554A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285146(P2009−285146)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000227537)日特エンジニアリング株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000227537)日特エンジニアリング株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
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