説明

コイルベースおよびこれを用いた加熱コイルユニット

【課題】耐熱性が高く、製造時にバリが発生し難く、機械的強度が高く、且つ、吸湿し難い、電磁調理器用加熱コイルユニットを提供する。
【解決手段】導線121を渦巻き状に巻いてなるコイルと該コイルが装着されるコイルベース110とを備える加熱コイルユニット120において、コイルベース110を、液晶ポリエステル、或いは、該液晶ポリエステルに任意の充填剤を充填してなる組成物を用いて構成する。コイルベース110の成形方法としては、例えば射出成形を使用することができるが、他の方法でもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電磁調理器等に使用されるコイルベースおよびこれを用いた加熱コイルユニットに関し、より詳細には、コイルベースの材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、加熱コイルが発生させた誘導電流によって加熱を行う装置が知られている。例えば電磁調理器では、加熱コイルが調理鍋等に誘導電流を発生させることにより、かかる調理鍋等の加熱を行う。
【0003】
電磁調理器用の加熱コイルを開示する文献としては、例えば下記特許文献1が知られている。特許文献1の電磁調理器では、リッツ線を中空の渦巻き状に巻くことによってコイルを作製し、このコイルをコイルベース上に載置・固定することによって、加熱コイルユニットを作製している(特許文献1の段落[0009]〜[0012]参照)。また、特許文献1は、コイルベースを耐熱樹脂で構成できることを開示している(特許文献1の段落[0002]参照)。
【0004】
また、引用文献2には、電磁調理器のコイルベースを、ポリエチレンテレフタレート(PET)組成物で構成できることが開示されている(特許文献2の段落[0016]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−93556号公報
【特許文献2】特開平10−259294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、コイルベースは、PET組成物から構成することができる。しかしながら、本発明者の検討によれば、PET組成物で構成したコイルベースには、耐熱性が低いという欠点がある。また、コイルベースをポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリエーテルイミド(PEI)で構成した場合にも、同様の欠点がある。
【0007】
一方、ポリフェニレンスルフィド(PPS)でコイルベースを構成した場合には、PET等のコイルベースと比較して、優れた耐熱性を得ることができる。しかしながら、PPSは、射出成形時に金型の隙間に入り込みやすく、このため、成形品にバリができやすいという欠点がある。また、PPSの射出成形では、金型の腐食や摩耗が大きいという欠点もある。
【0008】
また、ポリアミドを用いた場合には、PETと比較して耐熱性に優れるコイルベースを得ることができ、且つ、製造時にはPPSよりもバリができにくい。しかしながら、ポリアミドで構成したコイルベースは、吸湿しやすいため、吸湿によって機械的強度が低下しやすいこと、吸湿によって寸法が変化しやすいこと等の欠点がある。
【0009】
本発明は、耐熱性が高く、製造時にバリが発生し難く、機械的強度が高く、且つ、吸湿し難い、コイルベースおよびこれを用いた加熱コイルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、本発明者は、コイルベースの材料について検討し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、請求項1に係る発明は、導線を渦巻き状に巻いてなるコイルが装着されるコイルベースであって、液晶ポリエステルから構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、導線を渦巻き状に巻いてなるコイルと、該コイルが装着されるコイルベースとを備える加熱コイルユニットであって、前記コイルベースが液晶ポリエステルから構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液晶ポリエステルを用いてコイルベースを構成するので、耐熱性が高く、製造時にバリが発生し難く、機械的強度が高く、且つ、吸湿し難い、コイルベースおよびこれを用いた加熱コイルユニットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は実施の形態に係るコイルベースを概略的に示す斜視図、(b)は実施の形態に係る加熱コイルユニットを概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[発明の実施の形態1]
【0016】
以下、本発明の実施の形態1について、図1を用いて説明する。
【0017】
図1において、(a)は実施の形態に係るコイルベースを概略的に示す斜視図、(b)は実施の形態に係る加熱コイルユニットを概略的に示す斜視図である。
【0018】
図1(a)に示したように、本実施の形態のコイルベース110は、外枠部111と、スポーク部112と、ボビン部113とを備えている。外枠部111には、コイル用導線(後述)の両側端子を引き出すための切り欠き溝111a,111bが設けられる。スポーク部112の裏面には、磁束漏れを防止するためのフェライトコア(図示せず)が、固定される。ボビン部113は、コイル用導線を巻き付けるために使用される。ボビン部113の中央部分には、貫通穴が設けられている。
【0019】
図1(b)に示したように、本実施の形態の加熱コイルユニット120は、ボビン部113に導線(例えばリッツ線)121を巻き付けて、接着剤等で固定することによって、作製される。この導線121が、加熱用コイルとなる。導線121の両端には、圧着端子121a,122bが設けられている。導線121の両端部分は、切り欠き溝111a,111bを介して、外枠部111の外部に引き出される。
【0020】
ここで、ボビン部113に導線121を巻き付けた後で、この導線121全体を樹脂(図示せず)で封止することとしてもよい。樹脂封止を行うことにより、導線121(すなわち、加熱用コイル)の放熱性を高めることができる。封止用樹脂の種類は、特に限定されないが、熱伝導性の高いものが好ましい。また、封止材として、高熱伝導率の材料を添加した樹脂組成物を使用してもよい。
【0021】
本実施の形態では、コイルベース110の外枠部111、スポーク部112およびボビン部113を、液晶ポリエステルで構成する。コイルベース110の成形方法としては、例えば射出成形法を使用することができる。
【0022】
以下、本実施の形態で使用する液晶ポリエステルについて説明する。
【0023】
液晶ポリエステルは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルであり、好適には、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸および芳香族ジオールを重合させて得られ、400℃以下の温度で異方性溶融体を形成する。
【0024】
なお、より容易に液晶ポリエステルを製造するために、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸および芳香族ジオールといった原料モノマーの一部をエステル形成性誘導体にしてから重合させることもできる。
【0025】
このエステル形成性誘導体としては、例えば、次のようなものがある。分子内にカルボキシル基を有する芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジカルボン酸としては、このカルボキシル基を高反応性の酸ハロゲン基や酸無水物などの基に転化したエステル形成性誘導体、このカルボキシル基をエステル交換反応によりポリエステルを生成するようなエステルに転化したエステル形成性誘導体などを挙げることができる。また、分子内にフェノール性ヒドロキシル基(フェノール性水酸基)を有する芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジオールとしては、このフェノール性ヒドロキシル基を、エステル交換反応によりポリエステルを生成するようにエステルに転化したエステル形成性誘導体などが挙げられる。このようなエステル形成性誘導体を用いて好適な液晶ポリエステルを製造する方法については、後述する。
【0026】
液晶ポリエステルを構成している構造単位の具体例を、以下に示す。
【0027】
芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位:

【0028】
これらの構造単位は、芳香環にある水素原子の一部が、ハロゲン原子、アルキル基およびアリール基から選ばれる置換基で置換されていてもよい。
【0029】
芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位:

【0030】
これらの構造単位は、芳香環にある水素原子の一部が、ハロゲン原子、アルキル基およびアリール基から選ばれる置換基で置換されていてもよい。
【0031】
芳香族ジオールに由来する構造単位:

【0032】
これらの構造単位は、芳香環にある水素原子の一部が、ハロゲン原子、アルキル基およびアリール基から選ばれる置換基で置換されていてもよい。
【0033】
前記の構造単位に任意に有していてもよい置換基について、簡単に説明する。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子または臭素原子が挙げられる。また、アルキル基としては、メチル基、エチル基、ブチル基などの炭素数1〜4程度の低級アルキル基が挙げられる。さらに、アリール基としては、典型的にはフェニル基が挙げられる。但し、液晶ポリエステルは、後述するように、流動開始温度が360℃以上であることが好ましいが、このような流動開始温度の液晶ポリエステルを得るためにはこれらの置換基を有しないことが望ましい。
【0034】
次に、先に例示した液晶ポリエステルの構造単位の好適な組み合わせについて詳述する。
【0035】
液晶ポリエステルの構造単位の組み合わせとしては、以下の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)または(f)に示すもの(以下、「(a)〜(f)」ということがある)が好ましい。
(a):(A1 )と、(B1 )および/または(B2 )と、(C1 )との組み合わせ
(b):(A1 )および(A2 )の組み合わせ。
(c):(a)の構造単位の組み合わせにおいて、(A1 )の一部を(A2 )で置き換えた組み合わせ
(d):(a)の構造単位の組み合わせにおいて、(B1 )の一部を(B1 )で置き換えた組み合わせ
(e):(a)の構造単位の組み合わせにおいて、(C1 )の一部を(C3 )で置き換えた組み合わせ
(f):(b)の構造単位の組み合わせに(B1 )と(C1 )の構造単位を加えた組み合わせ
【0036】
前記(a)〜(f)に示した組み合わせにおいて、p−ヒドロキシ安息香酸から誘導される(A1 )の構造単位は、全構造単位の合計に対して30モル%以上が好ましく、45モル%以上がさらに好ましい。(A1 )のモル比率をこのようにすれば、得られる液晶ポリエステルは、耐熱性、機械的強度などの特性においてバランスの優れたものとなる。
【0037】
また、前記(a)〜(f)に示す構造単位の組み合わせにおいて、液晶ポリエステルの分子鎖の直線性を向上させると、その流動開始温度が上がることを利用して、好適な流動開始温度、すなわち360℃以上の流動開始温度の液晶ポリエステルを製造することができる。より具体的には、前記の(B1 )と(B2 )において、(B1 )は液晶ポリエステル分子の直線性を向上させ、(B2 )は液晶ポリエステル分子の屈曲性を向上させる(直線性を低下させる)ので、この(B1 )と(B2 )の共重合比を増減することにより、流動開始温度を調整することができる。
【0038】
先ほど例示した中でも、液晶ポリエステルとしては、前記(a)の液晶ポリエステル、すなわち、p−ヒドロキシ安息香酸から誘導される構造単位[(A1 )]と、4,4−ジヒドロキシビフェニルから誘導される構造単位[(C1 )]と、テレフタル酸から誘導される構造単位および/またはイソフタルから誘導される構造単位[(B1 )および/または(B2 )]とを有する液晶ポリエステルが好ましい。
【0039】
また、この場合、(C1 )/(A1 )のモル比率は、0.2以上1以下であることが好ましく、[(B1 )+(B2 )]/(C1 )のモル比率は、0.9以上1.1以下であることが好ましく、(B2 )/(B1 )のモル比率は、0より大きく1以下であると好ましく、0より大きく0.3以下であるとさらに好ましい。
【0040】
上述したように、液晶ポリエステルは、その流動開始温度が360℃以上が好ましく、360〜410℃であることがより好ましく、370〜400℃であることが特に好ましい。液晶ポリエステルの流動開始温度が、このような範囲である場合、液晶ポリエステル自体の耐熱性が十分に発現され、液晶ポリエステルを用いて得られる成形体の耐はんだ性が極めて良好となり、実用的な成形温度で成形体を得ることが可能である。なお、ここでいう流動開始温度とは、内径1mm、長さ10mmのダイスを取付けた毛細管型レオメーターを用い、9.8MPa(100kgf/cm2 )の荷重下において昇温速度4℃/分で液晶ポリエステルをノズルから押出すときに、溶融粘度が4800Pa・s(48000ポアズ)を示す温度を意味し、こうした流動開始温度は、当分野で周知の液晶ポリエステルの分子量を表す指標である(例えば、小出直之編「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」第95〜105頁、シーエムシー、1987年6月5日発行を参照)。
【0041】
次に、この液晶ポリエステルの製造方法について説明する。
【0042】
液晶ポリエステルは、芳香族ジオールおよび芳香族ヒドロキシカルボン酸のフェノール性ヒドロキシル基を脂肪酸無水物(無水酢酸など)によりアシル化してアシル化物(芳香族ジオールアシル化物および芳香族ヒドロキシカルボン酸アシル化物)を得るアシル化工程と、得られたアシル化物のアシル基と、芳香族ジカルボン酸および芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化物のカルボキシル基とが、エステル交換を起こすようにして重合して液晶ポリエステルを得る重合工程とを有する製造方法により製造されることが好ましい。
【0043】
無水酢酸などの脂肪酸無水物の使用量は、芳香族ジオールおよび/または芳香族ヒドロキシカルボン酸の使用量を考慮し、これらの原料モノマーにあるフェノール性ヒドロキシル基の合計モル量に対して、1〜1.2モル倍が好ましく、1〜1.15モル倍がより好ましく、1.03〜1.12モル倍がさらに好ましく、1.05〜1.1モル倍が特に好ましい。
【0044】
アシル化工程における芳香族ジオールおよび芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化反応は、130〜180℃で30分〜20時間行うことが好ましく、140〜160℃で1〜5時間行うことがより好ましい。
【0045】
次に、前記アシル化工程によって得られたアシル化物(芳香族ジオールアシル化物および芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化物)のアシル基と、芳香族ジカルボン酸および芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化物のカルボキシル基とをエステル交換させて(エステル交換反応)重合させる重合工程について説明する。なお、この芳香族ジカルボン酸は、アシル化工程の際に、反応系中に存在させていてもよく、換言すれば、アシル化工程において、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジカルボン酸を同一反応系中に存在させていてもよい。これは、芳香族ジカルボン酸にあるカルボキシル基および任意に置換されていてもよい置換基は、いずれも脂肪酸無水物によって何ら影響を受けないためである。よって、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジカルボン酸を同一の反応器に仕込んで、脂肪酸無水物によってアシル化する形式でもよく、先に、芳香族ジオールおよび芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応器に仕込んで、脂肪酸無水物によってこれらをアシル化した後に、芳香族ジカルボン酸を反応器に仕込む形式でもよい。操作上の簡便さから前者の形式がより好ましい。
【0046】
前記エステル交換反応による重合は、130〜400℃の範囲で0.1〜50℃/分の割合で昇温させながら反応させることが好ましく、150〜350℃の範囲で0.3〜5℃/分の割合で昇温させながら反応させることがより好ましい。
【0047】
また、前記エステル交換反応を行う際には、ル・シャトリエ‐ブラウンの法則(平衡移動の原理)により平衡を移動させるため、副生する脂肪酸(酢酸など)と未反応の脂肪酸無水物(無水酢酸など)は、蒸発させて系外へ留去させることが好ましい。また、留出する脂肪酸の一部を還流させて反応器に戻すことによって、脂肪酸と同伴して蒸発または昇華する原料モノマーなどを凝縮または逆昇華し、反応器に戻すこともできる。
【0048】
アシル化反応およびエステル交換反応は、回分装置を用いて行っても、連続装置を用いて行ってもよい。いずれの反応装置(反応器)を用いても、本発明に適用する液晶ポリエステルを得ることができる。
【0049】
また、前記重合工程の後に、得られた液晶ポリエステルを冷却して取り出し、この液晶ポリエステルを粉砕によって粉体状としたり、粉体状にした液晶ポリエステルを造粒してペレット状としたりして、得られる固体状(粉体状またはペレット状)の液晶ポリエステルをさらに加熱して高分子量化することもできる。このような液晶ポリエステルの高分子量化は、当分野で固相重合と呼ばれている。この固相重合は、液晶ポリエステルの高分子量化に特に有効であり、この高分子量化により、上述したような好適な流動開始温度を有する液晶ポリエステルを得ることが容易になる。この固相重合の反応条件としては、固体状の液晶ポリエステルを不活性気体(窒素など)雰囲気下または減圧下で1〜20時間熱処理する方法などが採用される。この場合、熱処理に使用される装置としては、既知の乾燥機、反応機、イナートオーブン、混合機、電気炉などが挙げられる。
【0050】
上述のように、本実施の形態のコイルベース110を構成する成形体の成形手段としては、薄肉部を有する成形体が得られやすい点で射出成形が特に好ましい。
【0051】
この射出成形について、さらに詳しく説明する。成形温度は、液晶ポリエステルの流動開始温度を基準として、この流動開始温度より10〜80℃ほど高い温度とすることが好ましい。成形温度がこの範囲内であれば、液晶ポリエステルが優れた溶融流動性を発現し、良好な成形性を発現することができる。また、液晶ポリエステルによれば、成形体を薄くすることも容易である。
[発明のその他の実施の形態]
【0052】
なお、上述の実施の形態1では、コイルベース110にボビン部113を設け、このボビン部113に導線121を巻き付ける場合を説明したが、コイルベース110にボビン部113を設けずに、別途用意したボビンに導線を巻き付けて作製したコイルや、ボビンを使用せずに導線を巻いて作製した中空コイルを、コイルベース上に載置してもよく、さらに樹脂で封止してもよい。
【0053】
また、上述の実施の形態1では、液晶ポリエステルのみを使用してコイルベース110を構成する場合を説明したが、本発明の目的を損なわない範囲内で、液晶ポリエステル以外の樹脂、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテルおよびその変性物、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミドなどの熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂の1種または2種以上を任意成分として配合することもできる。
【0054】
また、本発明に係る液晶ポリエステルには、本発明の目的を損なわない範囲内で、充填剤や添加剤を任意成分として配合することもできる。
【0055】
充填剤としては、例えば、板状のもの、中空のもの、繊維状のもの、球状のものがある。
【0056】
板状の充填剤としては、タルク、マイカ(雲母)、ガラスフレーク、モンモリロナイト、スメクタイト、黒鉛、窒化ホウ素、二硫化モリブデンなどを、配合することができる。これらは、単独で使用してもよく、2種類以上を同時に使用しても構わない。これらの中では、マイカが最も好ましく用いられる。
【0057】
中空の充填剤としては、シラスバルーン、ガラスバルーン、セラミックバルーン、有機樹脂バルーン、フラーレンなどを、配合することができる。これらの中でも、入手の容易さおよびより破損し難いという点で、ガラスバルーンが特に好ましい。
【0058】
繊維状の充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウムウイスカ、チタン酸カリウムウイスカ、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維などを、配合することができる。これらは、単独で使用してもよく、2種類以上を使用しても構わない。
【0059】
球状の充填剤としては、ガラスビーズ、シリカビーズなどを、配合することができる。
【0060】
一方、添加剤としては、離型改良剤(例えばフッ素樹脂、金属石鹸類など)、着色剤(例えば染料、顔料など)、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤など、当分野で通常使用されているような添加剤を配合してもよい。
【0061】
加えて、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤などの外部滑剤効果を有する添加剤を用いてもよい。
【0062】
本実施の形態の液晶ポリエステルには、フェライト等の高透磁率材料やアルミナ等の高熱伝導率材料を含有させることが望ましい。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態によれば、液晶ポリエステルを用いてコイルベース110を構成したので、耐熱性が高く、製造時にバリが発生し難く、機械的強度が高く、且つ、吸湿し難い、コイルベースおよびこれを用いた加熱コイルユニットを得ることができる。
【符号の説明】
【0064】
110 コイルベース
111 外枠部
111a,111b 切り欠き溝
112 スポーク部
113 ボビン部
120 加熱コイルユニット
121 導線
121a,122b 圧着端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線を渦巻き状に巻いてなるコイルが装着されるコイルベースであって、
液晶ポリエステルから構成されていることを特徴とするコイルベース。
【請求項2】
導線を渦巻き状に巻いてなるコイルと、該コイルが装着されるコイルベースとを備える加熱コイルユニットであって、
前記コイルベースが液晶ポリエステルから構成されていることを特徴とする加熱コイルユニット。

【図1】
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【公開番号】特開2011−113846(P2011−113846A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269731(P2009−269731)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】