説明

コイル部品及びその製造方法

【課題】平面スパイラル導体の最外周がコイル部品の側面に露出することを防止する。
【解決手段】コイル部品1は、基板2と、電解めっきによって基板2のおもて面2tに形成された平面スパイラル導体10aと、基板2のおもて面2tのうち、平面スパイラル導体10aの最外周と基板2の端部との間に形成され、かつ少なくとも同一平面内で他の導体と接続されない平面導体15aとを備える。平面導体15aによって最外周のめっき層が横方向へ成長することを阻害できるので、平面スパイラル導体の最外周がコイル部品の側面に露出することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品及びその製造方法に関し、特に、電解めっきによりプリント基板上に形成した平面スパイラル導体を有するコイル部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
民生用又は産業用の電子機器分野では、電源用のインダクタとして表面実装型のコイル部品を用いることが多くなっている。表面実装型のコイル部品は、小型・薄型で電気的絶縁性に優れ、しかも低コストで製造できるためである。
【0003】
表面実装型のコイル部品の具体的構造のひとつに、プリント回路基板技術を応用した平面コイル構造がある。製造工程の観点からこの構造を簡単に説明すると、まずプリント回路基板上に平面スパイラル形状のシードレイヤ(下地膜)を形成する。そして、めっき液中に浸してシードレイヤに直流電流(以下、「めっき電流」という)を流すことにより、めっき液中の金属イオンをシードレイヤ上に電着させる。これにより平面スパイラル導体が形成され、その後、形成した平面スパイラル導体を覆う絶縁樹脂層と、保護層及び磁路としての金属磁性粉含有樹脂層とを順次形成し、コイル部品が完成する。この構造によれば、寸法及び位置の精度を非常に高い値に維持でき、また、小型化及び薄型化が可能になる。特許文献1には、このような平面コイル構造を有する平面コイル素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−66830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、導体の形成に上記のような電解めっきを用いるのは、平面スパイラル導体の導体厚をできるだけ大きくするためである。そのために、出願人は、出願人が「HAP(ハイアスペクトプレーティング)めっき」と呼ぶ特殊なめっきを行うことで、導体厚をより大きくできるようにしている。
【0006】
HAPめっきでは、電解めっきの際の電流を従来より大きくして、電着した金属イオンによって構成されるめっき層を高速成長させる。これにより、めっき層の厚みを従来より大きく確保することが可能になるので、平面スパイラル導体の導体厚を従来より厚くすることが可能になる。
【0007】
しかしながら、HAPめっきを行う場合、平面スパイラル導体の最外周に相当する部分のめっき層が横方向に異常成長し、場合によってはコイル部品の側面に露出してしまう場合がある。つまり、HAPめっきでは、めっき電流が大きいためにめっき層が横方向にも成長しようとするが、隣接して他のシードレイヤがある箇所では、他のシードレイヤ上に成長するめっき層の存在によって、横方向への成長が阻害される。これに対し、平面スパイラル導体の最外周のように隣接する他のシードレイヤがない箇所では、横方向への成長を阻害するものがない。このため、最外周と端部との距離があまり長くないと、めっき層がコイル部品の側面に相当する位置まで達し、切断後の側面に露出してしまう。
【0008】
特に、コイル部品の側面に外部電極を形成する場合には、平面スパイラル導体の最外周の露出位置によっては、露出部位と外部電極とが短絡してしまうことになる。これはコイル部品の特性劣化の原因となるため、特に防止する必要がある。
【0009】
したがって、本発明の目的の一つは、平面スパイラル導体の最外周がコイル部品の側面に露出することを防止できるコイル部品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明によるコイル部品は、基板と、電解めっきによって前記基板の表面に形成された平面スパイラル導体と、前記基板の前記表面のうち、前記平面スパイラル導体の最外周と前記基板の端部との間に形成され、かつ少なくとも同一平面内で他の導体と接続されない平面導体とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、平面スパイラル導体の最外周と基板の端部との間に形成された平面導体によって、電解めっき工程において平面スパイラル導体の最外周に成長するめっき層が横方向へ成長することを阻害できる。したがって、平面スパイラル導体の最外周がコイル部品の側面に露出することを防止できる。
【0012】
上記コイル部品において、前記基板の側面に形成された外部電極をさらに備え、前記平面導体は、前記基板の側面のうち前記外部電極が形成される部分と、前記最外周との間に形成されることとしてもよい。これによれば、平面スパイラル導体の最外周と外部電極とが意図しない位置で短絡してしまうことを防止できる。
【0013】
上記コイル部品において、前記平面スパイラル導体及び前記平面導体を覆う絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の上から前記基板の前記表面を覆う金属磁性粉含有樹脂層とをさらに備えることとしてもよい。これによれば、直流重畳特性に優れた電源用チョークコイルを得ることが可能になる。
【0014】
本発明の他の一側面によるコイル部品は、基板と、電解めっきによって前記基板のおもて面に形成された第1の平面スパイラル導体と、電解めっきによって前記基板のうら面に形成された第2の平面スパイラル導体と、前記基板を貫通し、前記第1の平面スパイラル導体の内周端と前記第2の平面スパイラル導体の内周端とを接続する第1のスルーホール導体と、前記基板のおもて面のうち、前記第1の平面スパイラル導体の最外周と前記基板の端部との間に形成され、かつ少なくとも同一平面内で他の導体と接続されない第1の平面導体と前記基板のうら面のうち、前記第2の平面スパイラル導体の最外周と前記基板の端部との間に形成され、かつ少なくとも同一平面内で他の導体と接続されない第2の平面導体とを備えることを特徴とする。これによれば、第1及び第2の平面スパイラル導体の最外周がコイル部品の側面に露出することを防止できる。
【0015】
上記コイル部品において、前記基板の側面に形成され、前記第1の平面スパイラル導体と電気的に接触する第1の外部電極と、前記基板の側面に形成され、前記第2の平面スパイラル導体と電気的に接触する第2の外部電極とをさらに備え、前記第1の平面導体は、前記基板の側面のうち前記第2の外部電極が形成される部分と、前記第1の平面スパイラル導体の最外周との間に形成され、前記第2の平面導体は、前記基板の側面のうち前記第1の外部電極が形成される部分と、前記第2の平面スパイラル導体の最外周との間に形成されることとしてもよい。これによれば、第1の平面スパイラル導体の最外周と第2の外部電極とが短絡し、第2の平面スパイラル導体の最外周と第1の外部電極とが短絡してしまうことを防止できる。
【0016】
上記コイル部品において、前記基板のおもて面に形成され、前記第1の平面スパイラル導体の外周端と前記第1の外部電極とを接続する第1の引出導体と、前記基板のうら面に形成され、前記第2の平面スパイラル導体の外周端と前記第2の外部電極とを接続する第2の引出導体とをさらに備え、前記第1の引出導体と前記第2の引出導体とは、略矩形の前記基板の一方の対角線の両端に配置され、前記第1の平面導体は、平面視で前記第2の引出導体と重なる位置に配置され、前記第2の平面導体は、平面視で前記第1の引出導体と重なる位置に配置されることとしてもよい。これによれば、多数のコイル部品を1枚の基板上に形成する量産工程において、第1及び第2の引出導体を通じて基板面内の互いに直交する2つの方向にめっき電流を流すことを可能にする製造方法を採用する場合において、平面スパイラル導体の最外周がコイル部品の側面に露出することを防止できる。
【0017】
上記コイル部品において、前記基板のおもて面のうち平面視で前記第2の平面導体と重なる位置に形成され、前記第1の平面スパイラル導体の外周端に接続する第1の引出導体と、前記基板のうら面のうち平面視で前記第1の平面導体と重なる位置に形成され、前記第2の平面スパイラル導体の外周端に接続する第2の引出導体と、前記基板を貫通し、前記第2の平面導体と前記第1の引出導体とを接続する第2のスルーホール導体と、前記基板を貫通し、前記第1の平面導体と前記第2の引出導体とを接続する第3のスルーホール導体と、前記第1の引出導体の上面と接触する第1のバンプ電極と、前記第1の平面導体の上面と接触する第2のバンプ電極とをさらに備えることとしてもよい。これによれば、バンプ電極を用いるコイル部品において、平面スパイラル導体の最外周がコイル部品の側面に露出することを防止できる。
【0018】
また、本発明によるコイル部品の製造方法は、基板の表面に少なくとも1つの平面スパイラル導体を形成する平面スパイラル導体形成工程と、電解めっき処理を行い、前記平面スパイラル導体に金属イオンを電着させる電解めっき工程とを備え、前記平面スパイラル導体形成工程では、前記平面スパイラル導体の最外周と前記基板の端部との間に、少なくとも同一平面内で他の導体と接続されない平面導体も形成することを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、平面スパイラル導体の最外周と基板の端部との間に形成された平面導体によって、電解めっき工程において平面スパイラル導体の最外周に成長するめっき層が横方向へ成長することを阻害できる。したがって、平面スパイラル導体の最外周がコイル部品の側面に露出することを防止できる。
【0020】
上記コイル部品の製造方法において、前記電解めっき工程の後、前記基板の側面に外部電極を形成する工程をさらに備え、前記平面導体は、前記基板の側面のうち前記外部電極が形成される部分と、前記最外周との間に形成されることとしてもよい。これによれば、平面スパイラル導体の最外周と外部電極とが意図しない位置で短絡してしまうことを防止できる。
【0021】
上記コイル部品の製造方法において、前記平面スパイラル導体は、前記基板のおもて面に形成される第1の平面スパイラル導体と、前記基板のうら面に形成される第2の平面スパイラル導体とを含み、前記平面導体は、前記基板のおもて面のうち、前記第1の平面スパイラル導体の最外周と前記基板の端部との間の領域に形成され、少なくとも同一平面内で他の導体と接続されない第1の平面導体と、前記基板のうら面のうち、前記第2の平面スパイラル導体の最外周と前記基板の端部との間の領域に形成され、少なくとも同一平面内で他の導体と接続されない第2の平面導体とを含み、前記外部電極は、前記第1の平面スパイラル導体と電気的に接触する第1の外部電極と、前記第2の平面スパイラル導体と電気的に接触する第2の外部電極とを含み、前記平面スパイラル導体形成工程は、前記基板のおもて面に、前記第1の平面スパイラル導体の外周端と前記第1の外部電極とを接続する第1の引出導体、前記第1の平面スパイラル導体、及び前記第1の平面導体を形成する工程と、前記基板のうら面に、前記第2の平面スパイラル導体の外周端と前記第2の外部電極とを接続する第2の引出導体、前記第2の平面スパイラル導体、及び前記第2の平面導体を形成する工程と、前記基板を貫通する第1のスルーホール内に、前記第1の平面スパイラル導体の内周端と前記第2の平面スパイラル導体の内周端とを接続する第1のスルーホール導体を形成する工程とを含み、前記第1の引出導体と前記第2の引出導体とは、略矩形の前記基板の一方の対角線の両端に配置され、前記第1の平面導体は、平面視で前記第2の引出導体と重なる位置に配置され、前記第2の平面導体は、平面視で前記第1の引出導体と重なる位置に配置されることとしてもよい。この製造方法は、多数のコイル部品を1枚の基板上に形成する量産工程において、第1及び第2の引出導体を通じて基板面内の互いに直交する2つの方向にめっき電流を流すことを可能にする製造方法である。これによれば、このような製造方法を採用する場合において、平面スパイラル導体の最外周がコイル部品の側面に露出することを防止できる。
【0022】
上記コイル部品の製造方法において、前記平面スパイラル導体は、前記基板のおもて面に形成される第1の平面スパイラル導体と、前記基板のうら面に形成される第2の平面スパイラル導体とを含み、前記平面導体は、前記基板のおもて面のうち、前記第1の平面スパイラル導体の最外周と前記基板の端部との間の領域に形成され、少なくとも同一平面内で他の導体と接続されない第1の平面導体と、前記基板のうら面のうち、前記第2の平面スパイラル導体の最外周と前記基板の端部との間の領域に形成され、少なくとも同一平面内で他の導体と接続されない第2の平面導体とを含み、前記平面スパイラル導体形成工程は、前記基板のおもて面に、前記第1の平面スパイラル導体の外周端に接続する第1の引出導体、前記第1の平面スパイラル導体、及び前記第1の平面導体を形成する工程と、前記基板のうら面に、前記第2の平面スパイラル導体の外周端に接続する第2の引出導体、前記第2の平面スパイラル導体、及び前記第2の平面導体を形成する工程と、前記基板を貫通する第1のスルーホール内に、前記第1の平面スパイラル導体の内周端と前記第2の平面スパイラル導体の内周端とを接続する第1のスルーホール導体を形成する工程とを含み、前記第1の平面導体は、平面視で前記第2の引出導体と重なる位置に配置され、前記第2の平面導体は、平面視で前記第1の引出導体と重なる位置に配置され、前記平面スパイラル導体形成工程は、前記基板を貫通する第2のスルーホール内に、前記第2の平面導体と前記第1の引出導体とを接続する第2のスルーホール導体を形成する工程と、前記基板を貫通する第3のスルーホール内に、前記第1の平面導体と前記第2の引出導体とを接続する第3のスルーホール導体を形成する工程とをさらに含み、前記電解めっき工程の後、前記基板のおもて面に、前記第1の引出導体の上面と接触する第1のバンプ電極と、前記第1の平面導体の上面と接触する第2のバンプ電極とを形成するバンプ電極形成工程をさらに備えることとしてもよい。これによれば、バンプ電極を用いるコイル部品において、平面スパイラル導体の最外周がコイル部品の側面に露出することを防止できる。
【0023】
上記コイル部品の製造方法において、前記電解めっきの後、前記平面スパイラル導体及び前記平面導体を覆う絶縁樹脂層を形成する工程と、前記絶縁樹脂層の上から前記基板の表面を覆う金属磁性粉含有樹脂層を形成する工程とをさらに備えることとしてもよい。これによれば、直流重畳特性に優れた電源用チョークコイルを得ることが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、平面スパイラル導体の最外周と基板の端部との間に形成された平面導体によって、電解めっき工程において平面スパイラル導体の最外周に成長するめっき層が横方向へ成長することを阻害できる。したがって、平面スパイラル導体の最外周がコイル部品の側面に露出することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるコイル部品の分解斜視図である。
【図2】量産工程の途中における、本発明の第1の実施の形態によるコイル部品を示す図である。(a)は、切断前の基板をおもて面側から見た平面図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
【図3】量産工程の途中における、本発明の第1の実施の形態によるコイル部品を示す図である。(a)は、切断前の基板をおもて面側から見た平面図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
【図4】量産工程の途中における、本発明の第1の実施の形態によるコイル部品を示す図である。(a)は、切断前の基板をおもて面側から見た平面図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
【図5】実際にHAPめっきを行って形成した平面スパイラル導体の断面電子顕微鏡写真のトレースである。
【図6】量産工程の途中における、本発明の第1の実施の形態によるコイル部品を示す図である。(a)は、切断前の基板をおもて面側から見た平面図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
【図7】量産工程の途中における、本発明の第1の実施の形態によるコイル部品を示す図である。(a)は、切断前の基板をおもて面側から見た平面図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
【図8】個片化後の本発明の第1の実施の形態によるコイル部品を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態の変形例によるコイル部品の平面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態によるコイル部品の分解斜視図である。
【図11】量産工程の途中(HAPめっき工程の直前)における、本発明の第2の実施の形態によるコイル部品を示す図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態によるコイル部品の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明の第1の実施の形態によるコイル部品1の分解斜視図である。同図に示すように、コイル部品1は略矩形の基板2を有している。「略矩形」とは、完全な矩形の他、一部の角が欠けている矩形を含む意である。本明細書では矩形の「角部」という用語を用いるが、一部の角が欠けている矩形についての「角部」とは、欠けがないとした場合に得られる完全な矩形の角部を意味する。
【0028】
基板2の材料には、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させた一般的なプリント基板を用いることが好ましい。また、例えばBTレジン基材、FR4基材、FR5基材を用いてもよい。
【0029】
基板2のおもて面2tの中央部には、平面スパイラル導体10a(第1の平面スパイラル導体)が形成される。同様に、うら面2bの中央部には、平面スパイラル導体10b(第2の平面スパイラル導体)が形成される。また、基板2には導体埋込用のスルーホール12a(第1のスルーホール)が設けられ、その内部にスルーホール導体12が埋め込まれている。平面スパイラル導体10aの内周端と平面スパイラル導体10bの内周端とは、スルーホール導体12によって互いに接続される。
【0030】
平面スパイラル導体10aと平面スパイラル導体10bとは、互いに反対向きに巻回されている。つまり、おもて面2tの側から見た平面スパイラル導体10aが、内周端から外周端に向かって反時計回りに巻回されているのに対し、同様におもて面2tの側から見た平面スパイラル導体10bは、内周端から外周端に向かって時計回りに巻回されている。このような券回方法を採用したことにより、コイル部品1では、平面スパイラル導体10aの外周端と平面スパイラル導体10bの外周端との間に電流を流した場合に、両平面スパイラル導体が互いに同一方向の磁場を発生して強め合う。したがって、コイル部品1は、1つのインダクタとして機能する。
【0031】
基板2のおもて面2tとうら面2bには、それぞれ引出導体11a,11bが形成される。引出導体11a(第1の引出導体)は、基板2の側面2xに沿って形成される。一方、引出導体11b(第2の引出導体)は、側面2xと対向する側面2yに沿って形成される。引出導体11aは平面スパイラル導体10aの外周端と接続され、引出導体11bは平面スパイラル導体10bの外周端と接続される。
【0032】
ここで、コイル部品1の側面には、外部電極25,26(第1及び第2の外部電極)が形成される。外部電極25,26はそれぞれ、側面に露出した引出導体11a,11bと接触している。なお、外部電極25,26の形状は、図1に示すように、引出導体11a,11bの露出面をすべて覆い、さらにコイル部品1の上面と下面にも延びた形状とすることが好適である。外部電極25,26は、図示しない実装基板上に形成された配線と、はんだ等によって接着される。これにより、実装基板上に形成された配線を通じて、平面スパイラル導体10aの外周端と平面スパイラル導体10bの外周端との間に電流を流すことが実現されている。
【0033】
基板2の表面に関する説明に戻る。基板2のおもて面2tでは、平面スパイラル導体10aの最外周と基板2の端部との間の領域に、平面導体15a(第1の平面導体)が形成される。より具体的に説明すると、平面導体15aは引出導体11bと同じ平面形状を有しており、平面的に見て引出導体11bと重なる位置に配置される。つまり、平面導体15aは、基板2の側面のうち外部電極26が形成される部分と、平面スパイラル導体10aの最外周との間に形成されている。なお、図1の例では、平面導体15aは他の導体と接続されていないが、基板2にスルーホール導体を形成して平面導体15aと引出導体11bとを接続してもよい。こうすることで、外部電極26と引出導体11bとの接続抵抗を低下させることができる。
【0034】
同様に、基板2のうら面2bでは、平面スパイラル導体10bの最外周と基板2の端部との間の領域に、平面導体15b(第2の平面導体)が形成される。より具体的に説明すると、平面導体15bは引出導体11aと同じ平面形状を有しており、平面的に見て引出導体11aと重なる位置に配置される。つまり、平面導体15bは、基板2の側面のうち外部電極25が形成される部分と、平面スパイラル導体10bの最外周との間に形成されている。この平面導体15bも、図1の例では他の導体と接続されていないが、平面導体15aと同様、スルーホール導体によって引出導体11aと接続してもよい。
【0035】
以上の平面スパイラル導体10a,10b、引出導体11a,11b、平面導体15a,15bはいずれも、無電解めっき工程によって下地層を形成した後、2度の電解めっき工程を経て形成される。下地層の材料及び2度の電解めっき工程で形成されるめっき層の材料は、いずれもCuとすることが好適である。2度目の電解めっき工程は、上述したHAPめっき工程となる。製造工程の詳細については後ほど詳しく説明するが、HAPめっき工程においては、上述したように、隣接する他のシードレイヤがない箇所ではめっき層が横方向に大きく成長し、コイル部品の側面に形成される外部電極と短絡してしまうおそれがある。本実施の形態で言えば、仮に平面導体15a,15bがないとすると、平面スパイラル導体10aの最外周が側面2yから露出して外部電極26と短絡し、平面スパイラル導体10bの最外周が側面2xから露出して外部電極25と短絡してしまうおそれがある。これに対し、本実施の形態では平面導体15a,15bを設けているので、平面スパイラル導体10a,10bの最外周がそれぞれ側面2x,2yから露出してしまうおそれはなく、このような短絡の可能性がなくなっている。
【0036】
平面スパイラル導体10a,10b、引出導体11a,11b、及び平面導体15a,15bは、絶縁樹脂層21によって覆われている。この絶縁樹脂層21は、各導体と後述する金属磁性粉含有樹脂層22とが導通してしまうことを防止するために設けられているものである。
【0037】
基板のおもて面2t及びうら面2bは、絶縁樹脂層21の上からさらに、金属磁性粉含有樹脂層22によって覆われている。金属磁性粉含有樹脂層22は、樹脂に金属磁性粉を混入して作られる磁性材料(金属磁性粉含有樹脂)によって構成される。金属磁性粉としては、パーマロイ系材料を用いることが好適である。具体的には、平均粒径が20〜50μmであるPb−Ni−Co合金と、平均粒径が3〜10μmであるカルボニル鉄とを所定の比率、例えば70:30〜80:20の重量比、好ましくは75:25の重量比で含む金属磁性粉を用いることが好ましい。金属磁性粉含有樹脂層22における金属磁性粉の含有率は90〜96重量%であることが好ましい。一方、樹脂としては、液状又は粉体のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。また、金属磁性粉含有樹脂層22における樹脂の含有率は4〜10重量%であることが好ましい。樹脂は絶縁結着材として機能する。以上の構成を有する金属磁性粉含有樹脂層22は、樹脂に対して金属磁性粉の量が少ないほど飽和磁束密度が小さくなり、逆に金属磁性粉の量が多いほど飽和磁束密度が大きくなるという性質を有している。
【0038】
また、基板2には、図1に示すように、基板2のうち平面スパイラル導体10a,10bの中央部に対応する部分を貫通するスルーホール14(磁路形成用スルーホール)が形成される。金属磁性粉含有樹脂層22はこのスルーホール14内にも埋め込まれており、埋め込まれた金属磁性粉含有樹脂層22は、図1に示すように、スルーホール磁性体22aを構成している。
【0039】
なお、図1には示していないが、金属磁性粉含有樹脂層22の表面には薄い絶縁層が形成される。この絶縁層の形成は、金属磁性粉含有樹脂層22の表面をリン酸塩で処理することによって行う。この絶縁層を設けたことにより、外部電極25,26と金属磁性粉含有樹脂層22との導通が防止される。
【0040】
次に、コイル部品1の量産工程を説明しながら、平面導体15a,15bの役割についてより詳しく説明する。
【0041】
図2〜図4、図6〜図8は、コイル部品1の量産工程の途中におけるコイル部品1を示す図である。このうち図8を除く各図の(a)は、切断前の基板2をおもて面2t側から見た平面図であり、(b)は(a)のA−A線断面図である。なお、図8を除く各図の(a)に示す破線は、ダイシング工程における切断線を示している。この切断線で囲まれた1つ1つの矩形領域(以下、単に「矩形領域」という)が、個々のコイル部品1となる。以下では、図2(a)中央の矩形領域に着目して説明することとし、この矩形領域の4辺を、図2(a)に示すように時計回りに辺A1〜辺A4と称する。図8は、ダイシング工程を経て個片化されたコイル部品1の断面図である。同図に示す断面は、図7のB−B線に対応している。
【0042】
なお、以下の説明では、図2に示すように、基板2(切断後の基板2)の4つの角部それぞれにもスルーホール14が設けられたコイル部品1の量産工程を取り上げる。このような構成はコイル部品1に完全な閉磁路を形成するためのものであり、これらのスルーホール14内にも金属磁性粉含有樹脂層22が埋め込まれる。基板2の角部にスルーホール14を設けたために引出導体11a,11b及び平面導体15a,15bの側面方向の長さが図1の例と比べて短くなっているが、平面導体15a,15bの役割という点では同様である。
【0043】
さて、初めに、図2に示すように、基板2に導体埋込用のスルーホール12aと磁路形成用のスルーホール14とを設ける。スルーホール12aは、矩形領域ごとに1つずつ設けられる。スルーホール14については、上述したように各矩形領域の角部に1つずつ設けられる他、平面スパイラル導体10a,10bの中央部にも設けられる。
【0044】
次に、図3に示すように、基板2のおもて面2tに関して、矩形領域ごとに、内周端がスルーホール12aを覆う平面スパイラル導体10aを形成する。また、矩形領域の辺A1に沿って引出導体11aを形成するとともに、辺A3に沿って平面導体15aを形成する。引出導体11aは、辺A1を挟んで隣接する他の矩形領域と共通であり、それぞれに形成される平面スパイラル導体10aの各外周端と接続するように形成される。平面導体15aは、辺A3を挟んで隣接する他の矩形領域と共通であるが、それぞれに形成される平面スパイラル導体10aのいずれとも接続しない。
【0045】
基板2のうら面2bに関しても同様に、矩形領域ごとに、内周端がスルーホール12aを覆う平面スパイラル導体10bを形成する。また、矩形領域の辺A3に沿って引出導体11bを形成するとともに、辺A1に沿って平面導体15b(図3には示されていない)を形成する。引出導体11bは、辺A3を挟んで隣接する他の矩形領域と共通であり、それぞれに形成される平面スパイラル導体10bの各外周端と接続するように形成される。平面導体15bは、辺A1を挟んで隣接する他の矩形領域と共通であるが、それぞれに形成される平面スパイラル導体10bのいずれとも接続しない。
【0046】
その他、基板2のおもて面2t及びうら面2bの両方に関して、辺A2,A4を挟んで隣接する2つの平面スパイラル導体を接続する平面導体13を形成する。平面導体13は、後述するHAPめっき工程で、x方向とy方向の両方にめっき電流を流すために設けられるものである。
【0047】
図3の段階における平面スパイラル導体10a,10b等の具体的な形成方法は、次のとおりである。すなわち、まず基板2の両面に無電解めっきによってCuの下地層を形成し、この下地層の表面にフォトレジスト層を、シート状レジストによって成膜するか、または電着成膜する。なお、この下地層はスルーホール12a内にも形成され、スルーホール導体12を構成する。続いて、このフォトレジスト層に、片面ずつのフォトリソグラフィ法によって、平面スパイラル導体10a,10b、引出導体11a,11b、及び平面導体15a,15b,13の形状の開口パターン(ネガパターン)を設ける。そして、電解めっきによって開口パターン内にめっき層を形成し、フォトレジスト層を除去した後、めっき層が形成された部分以外の下地層をエッチングにより除去する。ここでの電解めっき工程は、上述した1度目の電解めっき工程に相当する。ここでは、下地層はパターニングされていない板状の導体であるので、めっき電流の流れる方向に関する問題は生じない。以上の工程により、それぞれ下地層とめっき層からなる平面スパイラル導体10a,10b、引出導体11a,11b、及び平面導体15a,15b,13が形成される。
【0048】
ここまでの工程で基板2のおもて面2t及びうら面2bに形成した各導体は、後述するHAPめっき工程(2度目の電解めっき工程)におけるシードレイヤとなる。このシードレイヤは、引出導体11a,11b、スルーホール導体12、及び平面導体13を通じてx方向とy方向の両方につながっているため、HAPめっき工程では、x方向とy方向の両方にめっき電流を流すことが可能になる。
【0049】
続いて、図4に示すように、HAPめっき処理を行う。具体的には、切断前の基板2の端部からシードレイヤとしての上記各導体に、0.05〜0.3A/mm程度の、めっき電流としては大きな電流を流しながら、基板2をめっき液に浸す。この際、上述したようにシードレイヤがx方向とy方向の両方につながっていることから、めっき電流はx方向とy方向の両方に流れる。これにより、平面スパイラル導体10a,10b等に金属イオンが均一に電着し、均一な膜厚のめっき層20が形成される。
【0050】
めっき層20の形成により、図4(b)に示すように、各導体の膜厚を大幅に増大させることが可能になる。このようにして大きな膜厚を確保するのは、本実施の形態によるコイル部品1が電源用のインダクタであり、極めて小さな直流抵抗を実現する必要があるためである。
【0051】
しかし一方で、HAPめっきを行うと、上述したように、隣接する他のシードレイヤがない箇所では、めっき層20が横方向に大きく成長する。図5は、実際にHAPめっきを行って形成した平面スパイラル導体10a,10bの断面電子顕微鏡写真のトレースである。ただし、同図には、平面スパイラル導体10a,10bを単独で形成した例(平面導体15a,15bを含む他の導体が形成されていない例)を示している。同図に示すように、平面スパイラル導体10aの最内周10a−1,最外周10a−2及び平面スパイラル導体10bの最内周10b−1,最外周10b−2はいずれも、その他の部分に比べて横方向に張り出している。これは、めっき層20が横方向に大きく成長した結果である。これが、例えば図4(a)に示した辺A3の近傍にある平面スパイラル導体10aの最外周で発生すると、場合によってはめっき層20が切断線付近まで伸長し、切断後の側面に露出してしまうことになる。
【0052】
本実施の形態では、例えばおもて面2tに関して説明すると、平面導体15aを設けたので、図4(b)に示すように、平面スパイラル導体10aの最外周と平面導体15aとの間に、距離Dの間隙が確保される。これは、平面スパイラル導体10aの最外周を構成するめっき層20の横方向への成長が、平面導体15aを構成するめっき層20によって阻害された結果である。これらのことは、うら面2bでも同様である。このように、本実施の形態によれば、平面スパイラル導体10a,10bの最外周に成長するめっき層20の横方向への成長が平面導体15a,15bによって阻害され、平面スパイラル導体10a,10bの最外周がコイル部品1の側面に露出することが防止されている。
【0053】
HAPめっき処理の後には、基板2の両面に絶縁樹脂を成膜し、図6に示すように、各導体及びめっき層20を絶縁樹脂層21で覆う。このとき、スルーホール14の側壁も絶縁樹脂層21に覆われるが、スルーホール14の全域が絶縁樹脂層21によって埋め尽くされることのないようにする必要がある。
【0054】
次に、図7に示すように、基板2の両面を金属磁性粉含有樹脂層22で覆う。具体的な形成方法について説明すると、まず基板2の反りを抑制するためのUVテープ(不図示)を基板2のうら面2bに貼り、おもて面2tに金属磁性粉含有樹脂ペーストをスクリーン印刷する。UVテープの代わりに熱剥離テープを用いてもよい。金属磁性粉含有樹脂ペーストからなるスクリーンシートとしては、約0.27mm厚のものを用いることが好適である。また、スクリーン印刷の後には、脱泡と、80℃での30分間の加熱とを経て、ペーストを仮硬化させる。続いて、UVテープを剥がし、うら面2bに金属磁性粉含有樹脂ペーストをスクリーン印刷する。ここでも、金属磁性粉含有樹脂ペーストからなるスクリーンシートとしては、約0.27mm厚のものを用いることが好適である。また、スクリーン印刷の後には、160℃で1時間加熱することにより、ペーストを本硬化させる。以上の処理により、金属磁性粉含有樹脂層22が完成する。
【0055】
以上の工程において、金属磁性粉含有樹脂層22はスルーホール14にも埋め込まれる。これにより、スルーホール14内に、図1に示したスルーホール磁性体22aを含むスルーホール磁性体が形成される。
【0056】
最後に、ダイサーを用い、切断線に沿って基板2を切断する。これにより矩形領域ごとに個々のコイル部品1が得られるので、次に、図8に示すように、金属磁性粉含有樹脂層22の表面に絶縁層23を形成する。絶縁層23の形成は、金属磁性粉含有樹脂層22の表面をリン酸塩で処理することによって行う。その後は、スパッタ等によって図1に示した外部電極25,26を形成し、コイル部品1が最終的に完成する。
【0057】
以上説明したように、本実施の形態によるコイル部品1の製造方法によれば、平面スパイラル導体10a,10bの最外周と基板2の端部との間に形成された平面導体15a,15bによって、HAPめっき工程において平面スパイラル導体10a,10bの最外周に成長するめっき層20が横方向へ成長することを阻害できる。したがって、平面スパイラル導体10a,10bの最外周がコイル部品1の側面2x,2y(図1)に露出することを防止できる。
【0058】
また、平面導体15aを平面スパイラル導体10aの最外周と外部電極26との間に形成し、平面導体15bを平面スパイラル導体10bの最外周と外部電極25との間に形成したので、平面スパイラル導体10a,10bの最外周と外部電極25,26とが意図しない位置(引出導体11a,11b以外の位置)で短絡してしまうことを防止できる。
【0059】
また、基板2(切断後の基板2)の各角部と、平面スパイラル導体10a,10bの中央部に対応する部分とにスルーホール磁性体を形成するので、これらを形成しない場合に比べ、コイル部品のインダクタンスを向上できる。
【0060】
また、磁路形成用のスルーホール14を、平面スパイラル導体10a,10b及び引出導体11a,11bを形成する前に形成するので、図7(b)に例示するように、スルーホール14内に張り出して平面スパイラル導体10a,10bを形成することが可能になる。したがって、平面スパイラル導体10a,10bの形成領域を実質的に広く取ることが可能になる。
【0061】
また、磁性基板ではなく金属磁性粉含有樹脂層22によって磁路を形成することから、直流重畳特性に優れた電源用チョークコイルを得ることが可能になる。
【0062】
なお、平面導体15a,15bは、図2に示した辺A1,A3に対応する位置だけでなく、辺A2,辺A3に対応する位置にも設けてもよい。つまり、基板2のおもて面2tに関して、図9に示すように、辺A2,辺A3に対応する位置に、少なくとも同一平面内で他の導体と接続されない平面導体15aを設け、うら面2bに関しても同様に、辺A2,辺A3に対応する位置に、少なくとも同一平面内で他の導体と接続されない平面導体15bを設けることとしてもよい。こうすれば、図1に示した基板2の側面2x,2y以外の2側面についても、平面スパイラル導体10a,10bの最外周の露出を防止できる。
【0063】
図10は、本発明の第2の実施の形態によるコイル部品1の分解斜視図である。また、図11は、量産工程の途中(HAPめっき工程の直前)における、本実施の形態によるコイル部品1を示す図である。第1の実施の形態において図2等に示したコイル部品1では、平面スパイラル導体10a,10bの最外周の直接的な露出は防止できるものの、平面導体13の端面がコイル部品1の側面に露出することは避けられない。これに対して本実施の形態によるコイル部品1は、平面導体13の露出も併せて防止できるよう構成される。以下、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0064】
基板2の4つの角部を、図10に示すように時計回りに第1乃至第4の角部C〜Cとすると、本実施の形態によるコイル部品1では、引出導体11a,11bはそれぞれ、第1の角部Cを含むおもて面2t内の領域、及び第3の角部Cを含むうら面2b内の領域に形成される。つまり、引出導体11a,11bは、基板2の一方の対角線の両端に配置される。切断前の基板2で見ると、図11に示すように、引出導体11aは第1の角部Cに集合する4つの矩形領域に共通に形成される。図示していないが、引出導体11bについても同様である。これにより、HAPめっき工程のシードレイヤが、引出導体11a,11b、スルーホール導体12を通じてx方向とy方向の両方につながる。したがって、本実施の形態でも、HAPめっき工程でx方向とy方向の両方にめっき電流を流すことが可能になっている。
【0065】
平面導体15a,15bはそれぞれ、第3の角部Cを含むおもて面2t内の領域、及び第1の角部Cを含むうら面2b内の領域に形成される。つまり、平面導体15aは、平面視で引出導体11bと重なる位置に配置され、平面導体15bは、平面視で引出導体11aと重なる位置に配置される。平面導体15a,15bの形状は、それぞれ引出導体11b,11aと同じでよい。
【0066】
磁路形成用のスルーホール14は、第1の実施の形態と同様、基板2のうち平面スパイラル導体10a,10bの中央部に設けられる他、各矩形領域の角部のうち引出導体11a,11bのいずれもが形成されない角部に形成される。したがって、本実施の形態でも、コイル部品1に完全な閉磁路が形成されている。
【0067】
以上の構成を有する本実施の形態によるコイル部品1の量産工程においては、平面スパイラル導体10a,10bの最外周と基板2の端部との間に形成された平面導体15a,15bによって、HAPめっき工程において平面スパイラル導体10a,10bの最外周に成長するめっき層20が横方向へ成長することを阻害できる。したがって、第1の実施の形態と同様、平面スパイラル導体10a,10bの最外周がコイル部品1の側面に露出し、外部電極25,26と短絡してしまうことを防止できる。
【0068】
また、第1の実施の形態で使用した平面導体13を用いていないにもかかわらず、HAPめっき工程でx方向とy方向の両方にめっき電流を流すことができるので、平面導体13の露出も防止できる。
【0069】
図12は、本発明の第3の実施の形態によるコイル部品1の分解斜視図である。本発明の実施の形態によるコイル部品1は、外部電極25,26に代えてバンプ電極30,31を用いる点で、第1の実施の形態によるコイル部品1と相違する。以下、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0070】
本実施の形態によるコイル部品1は、引出導体11aの上面にバンプ電極30が、平面導体15aの上面にバンプ電極31が、それぞれ形成される。バンプ電極30,31は、上述しためっき層20(図4)を形成した後、引出導体11aの上面及び平面導体15aの上面のみを露出するレジストパターンを形成し、各上面をシードレイヤとしてさらに電解めっきを行うことにより形成される。絶縁樹脂層21(図6)を形成する工程並びに金属磁性粉含有樹脂層22(図7)を形成する工程は、バンプ電極30,31の形成後に実施される。金属磁性粉含有樹脂層22の形成後には、その表面を研磨することにより、図11に示すように、バンプ電極30,31の上面をコイル部品1の上面に露出させる。なお、図11ではバンプ電極30,31の側面をコイル部品1の側面から露出させているが、これは、バンプ電極30,31と切断線との距離を調整することによって実現できる。ただし、バンプ電極30,31の側面の露出は、必ずしも必要な事項ではない。
【0071】
基板2には、それぞれスルーホール導体16,17(第2及び第3のスルーホール導体)が埋め込まれた2つのスルーホール16a,17a(第2及び第3のスルーホール)が設けられる。スルーホール16a,17aはスルーホール12aと同時に形成すればよく、スルーホール導体16,17は、平面スパイラル導体10a,10b等の下地層となるCuをスルーホール16a,17aにも埋め込むことによって形成すればよい。
【0072】
スルーホール16aは、平面視で引出導体11a及び平面導体15bと重なる位置に設けられる。したがって、平面導体15bと、引出導体11a及びバンプ電極30とは、スルーホール導体16を介して互いに電気的に接続される。また、スルーホール17aは、平面視で引出導体11b及び平面導体15aと重なる位置に設けられる。したがって、引出導体11bと、平面導体15a及びバンプ電極31とは、スルーホール導体17を介して互いに電気的に接続される。
【0073】
以上の構成を有する本実施の形態によるコイル部品1の量産工程においても、平面スパイラル導体10a,10bの最外周と基板2の端部との間に形成された平面導体15a,15bによって、HAPめっき工程において平面スパイラル導体10a,10bの最外周に成長するめっき層20が横方向へ成長することを阻害できる。したがって、第1の実施の形態と同様、平面スパイラル導体10a,10bの最外周がコイル部品1の側面に露出することを防止できる。
【0074】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0075】
A1〜A4 辺
〜C 角部
1 コイル部品
2 基板
2b 基板2のおもて面
2t 基板2のうら面
2x,2y 基板2の側面
10a,10b 平面スパイラル導体
11a,11b 引出導体
12,16,17 スルーホール導体
12a,16a,17a 導体埋込用スルーホール
13,15a,15b 平面導体
14 磁路形成用スルーホール
20 めっき層
21 絶縁樹脂層
22 金属磁性粉含有樹脂層
22a スルーホール磁性体
23 絶縁層
25,26 外部電極
30,31 バンプ電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
電解めっきによって前記基板の表面に形成された平面スパイラル導体と、
前記基板の前記表面のうち、前記平面スパイラル導体の最外周と前記基板の端部との間に形成され、かつ少なくとも同一平面内で他の導体と接続されない平面導体と
を備えることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記基板の側面に形成された外部電極をさらに備え、
前記平面導体は、前記基板の側面のうち前記外部電極が形成される部分と、前記最外周との間に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記平面スパイラル導体及び前記平面導体を覆う絶縁樹脂層と、
前記絶縁樹脂層の上から前記基板の前記表面を覆う金属磁性粉含有樹脂層と
をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
基板と、
電解めっきによって前記基板のおもて面に形成された第1の平面スパイラル導体と、
電解めっきによって前記基板のうら面に形成された第2の平面スパイラル導体と、
前記基板を貫通し、前記第1の平面スパイラル導体の内周端と前記第2の平面スパイラル導体の内周端とを接続する第1のスルーホール導体と、
前記基板のおもて面のうち、前記第1の平面スパイラル導体の最外周と前記基板の端部との間に形成され、かつ少なくとも同一平面内で他の導体と接続されない第1の平面導体と
前記基板のうら面のうち、前記第2の平面スパイラル導体の最外周と前記基板の端部との間に形成され、かつ少なくとも同一平面内で他の導体と接続されない第2の平面導体と
を備えることを特徴とするコイル部品。
【請求項5】
前記基板の側面に形成され、前記第1の平面スパイラル導体と電気的に接触する第1の外部電極と、
前記基板の側面に形成され、前記第2の平面スパイラル導体と電気的に接触する第2の外部電極とをさらに備え、
前記第1の平面導体は、前記基板の側面のうち前記第2の外部電極が形成される部分と、前記第1の平面スパイラル導体の最外周との間に形成され、
前記第2の平面導体は、前記基板の側面のうち前記第1の外部電極が形成される部分と、前記第2の平面スパイラル導体の最外周との間に形成される
ことを特徴とする請求項4に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記基板のおもて面に形成され、前記第1の平面スパイラル導体の外周端と前記第1の外部電極とを接続する第1の引出導体と、
前記基板のうら面に形成され、前記第2の平面スパイラル導体の外周端と前記第2の外部電極とを接続する第2の引出導体とをさらに備え、
前記第1の引出導体と前記第2の引出導体とは、略矩形の前記基板の一方の対角線の両端に配置され、
前記第1の平面導体は、平面視で前記第2の引出導体と重なる位置に配置され、
前記第2の平面導体は、平面視で前記第1の引出導体と重なる位置に配置される
ことを特徴とする請求項5に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記基板のおもて面のうち平面視で前記第2の平面導体と重なる位置に形成され、前記第1の平面スパイラル導体の外周端に接続する第1の引出導体と、
前記基板のうら面のうち平面視で前記第1の平面導体と重なる位置に形成され、前記第2の平面スパイラル導体の外周端に接続する第2の引出導体と、
前記基板を貫通し、前記第2の平面導体と前記第1の引出導体とを接続する第2のスルーホール導体と、
前記基板を貫通し、前記第1の平面導体と前記第2の引出導体とを接続する第3のスルーホール導体と、
前記第1の引出導体の上面と接触する第1のバンプ電極と、
前記第1の平面導体の上面と接触する第2のバンプ電極と
をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載のコイル部品。
【請求項8】
基板の表面に少なくとも1つの平面スパイラル導体を形成する平面スパイラル導体形成工程と、
電解めっき処理を行い、前記平面スパイラル導体に金属イオンを電着させる電解めっき工程とを備え、
前記平面スパイラル導体形成工程では、前記平面スパイラル導体の最外周と前記基板の端部との間に、少なくとも同一平面内で他の導体と接続されない平面導体も形成する
ことを特徴とするコイル部品の製造方法。
【請求項9】
前記電解めっき工程の後、前記基板の側面に外部電極を形成する工程をさらに備え、
前記平面導体は、前記基板の側面のうち前記外部電極が形成される部分と、前記最外周との間に形成される
ことを特徴とする請求項8に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項10】
前記平面スパイラル導体は、前記基板のおもて面に形成される第1の平面スパイラル導体と、前記基板のうら面に形成される第2の平面スパイラル導体とを含み、
前記平面導体は、前記基板のおもて面のうち、前記第1の平面スパイラル導体の最外周と前記基板の端部との間の領域に形成され、少なくとも同一平面内で他の導体と接続されない第1の平面導体と、前記基板のうら面のうち、前記第2の平面スパイラル導体の最外周と前記基板の端部との間の領域に形成され、少なくとも同一平面内で他の導体と接続されない第2の平面導体とを含み、
前記外部電極は、前記第1の平面スパイラル導体と電気的に接触する第1の外部電極と、前記第2の平面スパイラル導体と電気的に接触する第2の外部電極とを含み、
前記平面スパイラル導体形成工程は、
前記基板のおもて面に、前記第1の平面スパイラル導体の外周端と前記第1の外部電極とを接続する第1の引出導体、前記第1の平面スパイラル導体、及び前記第1の平面導体を形成する工程と、
前記基板のうら面に、前記第2の平面スパイラル導体の外周端と前記第2の外部電極とを接続する第2の引出導体、前記第2の平面スパイラル導体、及び前記第2の平面導体を形成する工程と、
前記基板を貫通する第1のスルーホール内に、前記第1の平面スパイラル導体の内周端と前記第2の平面スパイラル導体の内周端とを接続する第1のスルーホール導体を形成する工程とを含み、
前記第1の引出導体と前記第2の引出導体とは、略矩形の前記基板の一方の対角線の両端に配置され、
前記第1の平面導体は、平面視で前記第2の引出導体と重なる位置に配置され、
前記第2の平面導体は、平面視で前記第1の引出導体と重なる位置に配置される
ことを特徴とする請求項9に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項11】
前記平面スパイラル導体は、前記基板のおもて面に形成される第1の平面スパイラル導体と、前記基板のうら面に形成される第2の平面スパイラル導体とを含み、
前記平面導体は、前記基板のおもて面のうち、前記第1の平面スパイラル導体の最外周と前記基板の端部との間の領域に形成され、少なくとも同一平面内で他の導体と接続されない第1の平面導体と、前記基板のうら面のうち、前記第2の平面スパイラル導体の最外周と前記基板の端部との間の領域に形成され、少なくとも同一平面内で他の導体と接続されない第2の平面導体とを含み、
前記平面スパイラル導体形成工程は、
前記基板のおもて面に、前記第1の平面スパイラル導体の外周端に接続する第1の引出導体、前記第1の平面スパイラル導体、及び前記第1の平面導体を形成する工程と、
前記基板のうら面に、前記第2の平面スパイラル導体の外周端に接続する第2の引出導体、前記第2の平面スパイラル導体、及び前記第2の平面導体を形成する工程と、
前記基板を貫通する第1のスルーホール内に、前記第1の平面スパイラル導体の内周端と前記第2の平面スパイラル導体の内周端とを接続する第1のスルーホール導体を形成する工程とを含み、
前記第1の平面導体は、平面視で前記第2の引出導体と重なる位置に配置され、
前記第2の平面導体は、平面視で前記第1の引出導体と重なる位置に配置され、
前記平面スパイラル導体形成工程は、
前記基板を貫通する第2のスルーホール内に、前記第2の平面導体と前記第1の引出導体とを接続する第2のスルーホール導体を形成する工程と、
前記基板を貫通する第3のスルーホール内に、前記第1の平面導体と前記第2の引出導体とを接続する第3のスルーホール導体を形成する工程とをさらに含み、
前記電解めっき工程の後、前記基板のおもて面に、前記第1の引出導体の上面と接触する第1のバンプ電極と、前記第1の平面導体の上面と接触する第2のバンプ電極とを形成するバンプ電極形成工程をさらに備える
ことを特徴とする請求項8に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項12】
前記電解めっきの後、前記平面スパイラル導体及び前記平面導体を覆う絶縁樹脂層を形成する工程と、
前記絶縁樹脂層の上から前記基板の表面を覆う金属磁性粉含有樹脂層を形成する工程とをさらに備える
ことを特徴とする請求項8乃至11のいずれか一項に記載のコイル部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−248629(P2012−248629A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118360(P2011−118360)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】