コネクタおよびコネクタの製造方法
【課題】端子挿入孔の延びる方向と交差する方向に型開きする成形金型でありがなら、端子挿入孔の開口縁部に誘い込み部を形成し、端子を端子挿入孔に誘い込んで挿入できるようにする。
【解決手段】フェルール20を後方から挿入する端子挿入孔34を有する合成樹脂製のハウジング本体30と、ハウジング本体30の上方から組み付けられるカバーとを備えたコネクタであって、端子挿入孔34における後端開口縁部に端子挿入孔34の軸心に向かって先細り状に形成され、端子挿入孔34が延びる前後方向と交差する方向である上方と後方とに開口する誘い込み部39を備えることを特徴とする。
【解決手段】フェルール20を後方から挿入する端子挿入孔34を有する合成樹脂製のハウジング本体30と、ハウジング本体30の上方から組み付けられるカバーとを備えたコネクタであって、端子挿入孔34における後端開口縁部に端子挿入孔34の軸心に向かって先細り状に形成され、端子挿入孔34が延びる前後方向と交差する方向である上方と後方とに開口する誘い込み部39を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタおよびコネクタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、合成樹脂製のコネクタハウジングに設けられた端子挿入孔に後方から端子が挿入されたコネクタとして、特許文献1に記載のものが知られている。このコネクタには、コネクタハウジングにおける端子挿入孔の後側の後端開口縁部に、端子挿入孔の後側から前側に向かうほど先細り状となる誘い込み部が形成されている。この誘い込み部は、前後方向に型開きする成形金型によって成形されており、端子挿入孔に端子を挿入する際に、必要に応じて端子が誘い込み部によって端子挿入孔に誘い込まれて挿入されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−122923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コネクタハウジングを成形する成形金型を端子挿入孔の延びる方向である前後方向に型開きすることができず、端子挿入孔の延びる方向と交差する方向に型開きする成形金型を用いる場合には、端子挿入孔の後端開口部に誘い込み部を成形する構成に苦慮することになる。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、端子挿入孔の延びる方向と交差する方向に型開きする成形金型でありがなら、端子挿入孔の開口縁部に誘い込み部を成形し、端子を端子挿入孔に誘い込んで挿入できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として本発明は、端子を後方から挿入する端子挿入孔を有する合成樹脂製のコネクタハウジングと、前記端子挿入孔における後端開口縁部に前記端子挿入孔の軸心に向かって先細り状に形成され、前記端子挿入孔が延びる方向と交差する交差方向と後方とに開口する誘い込み部とを備えているところに特徴を有する。
また、本発明は、端子を後方から挿入する端子挿入孔を有する合成樹脂製のコネクタハウジングと、前記端子挿入孔の後端開口縁部に前記端子挿入孔の軸心に向かって先細り状に形成され、前記端子挿入孔の延びる方向と交差する交差方向と後方とに開口する誘い込み部とを備えたコネクタの製造方法であって、成形金型に設けられた誘い込み成形部を、前記交差方向に引き抜くことで、前記誘い込み部を成形するところに特徴を有する。
このような構成によると、誘い込み部が端子挿入孔が延びる方向と交差する方向に開口しているので、成形金型に設けられた誘い込み成形部を交差方向に引き抜くことによって、端子挿入孔の後端開口縁部に誘い込み部を成形することができる。これにより、端子挿入孔の延びる方向と交差する方向に型開きする成形金型でありがなら、端子挿入孔の後端開口縁部に誘い込み部を成形することができ、誘い込み部によって端子を端子挿入孔に誘い込んで挿入することができる。
【0007】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
前記コネクタハウジングには、前記誘い込み部の後方に臨んだ位置に、前記端子に接続されたケーブルを保持するケーブル保持部が形成されている構成としてもよい。
誘い込み部の後方に臨んだ位置にケーブル保持部が形成されている場合には、前後方向に型開きして誘い込み構造を設けることができなくなってしまう。ところが、上記の構成によると、誘い込み成形部を交差方向に引き抜くことで、誘い込み部を成形することができる。これにより、端子挿入孔とケーブル保持部との間に前後方向にスライドさせる専用金型を設けて、端子挿入孔の後端開口縁部に誘い込み部を成形する場合に比べて、成形金型の構造を簡素化することができる。
【0008】
前記端子挿入孔は、前記コネクタハウジングの後面における略中央部に形成されており、前記誘い込み部の前記交差方向に臨んだ位置には、前記誘い込み成形部を抜き抜くための型抜き溝が形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、誘い込み成形部を交差方向に引き抜く際に、誘い込み成形部を型抜き溝を通して抜き抜くことができる。
前記型抜き溝は、前記端子挿入孔よりも幅広で、かつ、前記端子挿入孔の軸心の両側における前記後端開口縁部の両端部の位置から前記端子挿入孔の延びる方向と直交した方向に延びて形成されており、前記誘い込み部は、前記端子挿入孔の両側に位置する前記型抜き溝の両端部を繋ぐように前記端子挿入孔を周方向に囲んで形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、端子挿入孔の延びる方向と直交した方向に延びる型抜き溝を通して誘い込み成形部を抜き抜くことで、端子挿入孔の後端開口縁部における半分の領域に誘い込み部を形成することができる。すなわち、誘い込み成形部を交差方向に引き抜く上で、端子挿入孔の後端開口縁部に誘い込み部を最も大きく形成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、端子挿入孔の延びる方向と交差する方向に型開きする成形金型でありがなら、端子挿入孔の開口縁部に誘い込み部を成形し、端子を端子挿入孔に誘い込んで挿入できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】光コネクタの平面図
【図2】光コネクタの側面図
【図3】光コネクタの背面図
【図4】図3のIV−IV線断面図
【図5】図3のV−V線断面図
【図6】ハウジング本体の側面図
【図7】ハウジング本体の背面図
【図8】図6のVII−VII線断面図
【図9】図7のIX−IX線断面図
【図10】図9の要部拡大断面図
【図11】カバーの側面図
【図12】カバーの内側を下方からみた底面図
【図13】ハウジング本体にフェルールを組み付ける前の状態を示す斜視図
【図14】ハウジング本体にフェルールを組み付けた後の状態を示す斜視図
【図15】ハウジング本体にフェルールを組み付ける際に、フェルールが誘い込み部によって端子挿入孔に誘い込まれている状態を示す平面図
【図16】成形金型内においてハウジング本体を成形した状態を示す断面図
【図17】成形金型を型開きした状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
本発明の実施形態について図1乃至図17を参照して説明する。
本実施形態は、光ケーブル(本発明の「ケーブル」の一例)Wの端末に接続される光コネクタ(本発明の「コネクタ」の一例)10を例示している。
【0012】
光コネクタ10は、図示しない相手側光コネクタと嵌合可能に形成されており、図1乃至図5に示すように、光ケーブルWの端末に接続されるフェルール(本発明の「端子」の一例)20と、フェルール20を内部に収容するハウジング本体(本発明の「コネクタハウジング」の一例)30と、ハウジング本体30に上方から組み付けられるカバー50とを備えて構成されている。
【0013】
フェルール20は、図4及び図5に示すように、光ケーブルWの保護材W1を皮剥ぎすることで露出された光ファイバ心線W2の端末に接続されている。また、光ケーブルWの保護材W1の端末には、金属製のかしめリングRがかしめ付けられており、かしめリングRが装着された部分の外径寸法は、光ケーブルWの外径寸法よりも大きくなっている。
【0014】
フェルール20は、円筒状のキャピラリ21と、キャピラリ21の後端部に一体に形成されたフランジ部22とを備えて構成されている。
キャピラリ21の内部には、光ファイバ心線W2の被覆材を剥ぐことで露出した図示しない光ファイバが挿通されておリ、キャピラリ21の先端に相手側光コネクタに設けられた図示しない相手側フェルールの先端が当接することで光ファイバと、相手側フェルールの相手側光ファイバとが光学的に接続されるようになっている。
【0015】
キャピラリ21の外側には、円筒状のスリーブ23がキャピラリ21を覆うように装着されている。スリーブ23は金属製であって、スリーブ23の内部には、キャピラリ21及び相手側フェルールの図示しない相手側キャピラリの双方が収容され、互いの光ファイバが芯ずれすることなく当接するようになっている。
【0016】
フランジ部22は、前方から後方に向かってキャピラリ21の軸心から離れるように拡幅した後、キャピラリ21の軸心に沿って後方に延びて形成されており、フランジ部22の後端は、キャピラリ21の軸心と直交した面とされている。また、フランジ部22の後面には、フランジ部22よりも幅狭な角型状の軸部24が形成されている。この軸部24は、フランジ部22の後面における中央部分からフェルール20の軸線方向後方に延びて形成されている。
【0017】
ハウジング本体30は、合成樹脂製であって、前方に向かって開口する嵌合部31と、嵌合部31の奥壁と一体に形成されたキャピラリ収容部32と、キャピラリ収容部32の後方に形成されたフランジ収容部33とを備えて構成されている。
【0018】
嵌合部31は、嵌合方向前方(図1における左方)に開口した形態をなし、嵌合部31の内部には、図示しない相手側光コネクタハウジングが嵌合可能とされている。
キャピラリ収容部32は、嵌合部31の内部空間に突出した形態で嵌合部31の奥部に形成されている。キャピラリ収容部32の内部には、スリーブ23が装着されたキャピラリ21が適合して挿入される一対の端子挿入孔34が幅方向に並んで形成されており、両端子挿入孔34は、キャピラリ収容部32を前後方向に貫通して形成されている。また、両端子挿入孔34は、図7及び図8に示すように、キャピラリ収容部32の後面32Aに円形状に開口した形態をなしている。
【0019】
フランジ収容部33は、図4、図13及び図15に示すように、キャピラリ収容部32の後面32Aと、キャピラリ収容部32の幅方向両端部から後方に真っ直ぐ延びる側壁33Aと、両側壁33Aの後端部を幅方向に連結する後壁33Bとによって四方を囲まれた形態をなし、上方に向かって開口している。また、フランジ収容部33における両側壁33Aの外面には、2つのロック突起35がそれぞれ形成されている。
【0020】
フランジ収容部33の前端部には、図5に示すように、キャピラリ21を端子挿入孔34に挿入した状態のフェルール20が配置され、上方からカバー50を組み付けることで、フェルール20のフランジ部22がフランジ収容部33の内部に保持されるようになっている。
【0021】
カバー50は、図11に示すように、フランジ収容部33の上面を覆う天井壁51と、天井壁51の幅方向両側縁から下方に延びて形成された複数のロック片52とを備えて構成されている。
天井壁51は、図1及び図12に示すように、略矩形状をなし、天井壁51の内側には、天井壁51の内面から下方(図12の紙面手前側)に向かって突出するフェルール保持部53が形成されている。
フェルール保持部53には、フェルール20のフランジ部22及び軸部24の外形形状に沿って形成された嵌合凹部54が幅方向に2つ並んで形成されており、カバー50がハウジング本体30の上部に組み付けられると、図4に示すように、各嵌合凹部54内にフェルール20のフランジ部22及び軸部24がそれぞれ嵌合され、フランジ収容部33内において2つのフェルール20が保持されるようになっている。
【0022】
ロック片52は、天井壁51の幅方向両側縁にそれぞれ2つずつ形成されている。また、各ロック片52は、フランジ収容部33のロック突起35と対応する位置に配されることで、天井壁51の幅方向両側において、互いに対向した形態に形成されている。
ロック片52には、ロック片52を板厚方向に貫通する係止孔52Aが形成されており、この係止孔52Aにフランジ収容部33のロック突部35が収容されて、ロック突部35とロック片52とが係止することで、カバー50がハウジング本体30に組み付け固定されるようになっている。
【0023】
カバー50及びフランジ収容部33の後部には、光ケーブルWを保持するケーブル保持部36が形成されている。
このケーブル保持部36は、光ケーブルWのかしめリングRを収容する上下一対の収容溝37と、かしめリングRを後方に抜け止めする抜け止め部38とを備えて構成されている。また、上下一対の収容溝37は、幅方向に2つ並んで形成されている。
【0024】
上下一対の収容溝37のうち、下側に位置する収容溝37がフランジ収容部33の後壁33Bの前面に沿うようにフランジ収容部33における底壁の内面に凹状に形成され(図5及び図13を参照)、上側に位置する収容溝37がカバー50における天井壁51の内面に凹状に形成されている(図5及び図12を参照)。フランジ収容部33側の収容溝37内に光ケーブルWのかしめリングRの下端部を収容し、フランジ収容部33にカバー50を組み付けて、カバー50側の収容溝37にかしめリングRの上端部が収容されることで、光ケーブルWが後方に抜け止めされた状態に保持されるようになっている。
【0025】
抜け止め部38は、図3及び図13に示すように、かしめリングRから後方に引き出された光ケーブルWの外面に沿うようにフランジ収容部33の後壁33Bを上端から下方に向かって凹んだ形態に形成されている。また、抜け止め部38の前方に臨んだ位置には、図7に示すように、キャピラリ収容部32の後面32Aに形成された端子挿入孔34の後端開口縁部が配されており、図9に示すように、キャピラリ収容部32の後面と抜け止め部38の前面とが対向した配置となっている。また、抜け止め部38の前面は、光ケーブルWのかしめリングRの後端面と係止可能に形成されており、図4及び図5に示すように、抜け止め部38の前面とかしめリングRの後端面とが係止することで、光ケーブルWが抜け止め部38により後方に抜け止めされている。これにより、光ケーブルWは、ケーブル保持部36によって、後方に抜け止めされている。
【0026】
さて、キャピラリ収容部32の後面32Aにおける端子挿入孔34の後端開口縁部には、誘い込み面(本発明の「誘い込み部」の一例)39が形成されており、誘い込み面39の上方には型抜き溝40が形成されている。
誘い込み面39は、図9及び図10を示すように、キャピラリ収容部32の後面32Aから前方に向かうほど、端子挿入孔34の軸心に近づくように先細り状に傾斜した形態をなしている。また、誘い込み面39は、端子挿入孔34の後端開口縁部における端子挿入孔34の軸心よりも下半分の位置に端子挿入孔34を周方向に囲むように形成されている。これにより、図15に示すように、フェルール20のキャピラリ21に装着されたスリーブ23の軸心が端子挿入孔34の軸心よりも下半分に僅かにずれた状態でスリーブ23を端子挿入孔34に挿入しようとした際には、誘い込み面39がスリーブ23の先端を端子挿入孔34に誘い込み、スリーブ23が装着されたキャピラリ21を端子挿入孔34に挿入し易くすることができるようになっている。また、誘い込み面39は、図8に示すように、端子挿入孔34の後端開口縁部における端子挿入孔34の軸心よりも下半分の位置に形成されているので、端子挿入孔の後端開口縁部における幅方向の一部にのみ誘い込み面が形成されている場合に比べて、スリーブ23を端子挿入孔34に誘い込み易くすることができる。
【0027】
型抜き溝40は、端子挿入孔34の幅寸法よりも幅広で、かつ、キャピラリ収容部32の後面32Aから前方に向かって凹んだ形態をなし、キャピラリ収容部32の上面から誘い込み面39まで端子挿入孔34と直交するように延びて形成されている。また、型抜き溝40は、キャピラリ収容部32の後面32Aから前方に向かうほど幅方向の寸法が小さくなるように形成されており、図15に示すように、型抜き溝40の底部40Aの断面形状は円弧状になっている。また、型抜き溝40におけるキャピラリ収容部32の後面32Aから幅狭に傾斜した部分(図15を参照)は、誘い込み面39における上端縁(端子挿入孔34の軸心を通るように誘い込み面39を幅方向に切断した断面)における傾斜した部分(図4を参照)の形状と同一となっている。したがって、端子挿入孔34の後端開口縁部における上半分からキャピラリ収容部32の上面までの位置に型抜き溝40が形成されている。
【0028】
すなわち、誘い込み面39は、端子挿入孔34の後端開口縁部における下半分に形成され、端子挿入孔34が延びる方向と交差する上方と後方とに臨んだ(開口した)形態とされ、型抜き溝40は、誘い込み面39の上端縁における傾斜した部分の形状をキャピラリ収容部32の上面まで連続させた形態とされている。また、誘い込み面39と型抜き溝40とは、端子挿入孔34における軸心の幅方向両端部で連結されており、誘い込み面39は、端子挿入孔34の両側に位置する型抜き溝40の両端部を繋ぐように端子挿入孔34を周方向に囲んだ形態とされている。
【0029】
本実施形態の光コネクタ10は、上記のような構成であって、続いてハウジング本体30の成形方法の一例を説明する。
ハウジング本体30は、図16及び図17に示すように、上下に型開きする上型61及び下型62と、前方に型開きするスライド型63とを備えた成形金型60によって成形される。
【0030】
まず、成形金型60を型閉じした状態で、成形金型60内に溶融した樹脂を射出し、図16に示すように、嵌合部31及びキャピラリ収容部32の外面部分とフランジ収容部33とを上型61及び下型62によって成形し、嵌合部31の内部と端子挿入孔34とをスライド型63によって成形する。
【0031】
成形金型60内に射出された樹脂が冷却されて硬化したところで、図17に示すように、各金型61,62,63を型開きして、ハウジング本体30を成形金型60から取り出すことでハウジング本体30が完成する。
【0032】
ところで、本実施形態のように、端子挿入孔34の後端開口縁部の後方に、抜け止め部38などを形成する場合には、端子挿入孔34の延びる方向である前後方向と交差する方向である上下方向に型開きする成形金型60を用いてハウジング本体30が成形される。このため、従来のように、前後方向に型開きする成形金型によって端子挿入孔34の後端開口縁部にフェルール20を誘い込むための誘い込み構造を形成することができない。また、誘い込み構造を形成するために、端子挿入孔34とケーブル保持部36との間に前後方向にスライドさせる専用金型を設けて、専用金型を後方にスライドさせた後、上方に引き抜くことで端子挿入孔の後端開口縁部に誘い込み面を成形することもできるが、誘い込み構造専用の金型を用いると、金型の生産コストが高くなってしまう。
【0033】
ところが、本実施形態の光コネクタ10を成形する成形金型60の上型61には、図16及び図17に示すように、端子挿入孔34の延びる方向と交差する方向である上下方向に延びて、下端部が前方に向かって先細り状に突出する誘い込み成形部61Aが形成されている。そして、上型61及び下型62を型開きする際に、この誘い込み成形部61Aが上方に引き抜かれることで、端子挿入孔34の後端開口縁部に誘い込み面39を形成することができるようになっている。これにより、成形金型60に誘い込み面39を成形するための誘い込み構造専用金型を用いる場合に比べて、成形金型60の構造を簡素化することができ、成形金型60の生産コストが高くなることを抑制することができる。
また、本実施形態によると、端子挿入孔34の延びる前後方向と直交した上下方向に延びる型抜き溝40を通して誘い込み成形部61Aを上方に引き抜くことで、端子挿入孔34の後端開口縁部における下半分の領域に誘い込み面39を形成することができる。これにより、誘い込み成形部61Aを端子挿入孔34の延びる前後方向と交差した方向に引き抜く上で、端子挿入孔34の後端開口縁部に誘い込み面39を最も大きく形成することができる。
【0034】
次に、光コネクタ10の組み付け手順を簡単に説明し、ハウジング本体30にフェルール20を組み付ける際の作用効果を説明する。
まず、ハウジング本体30と、光ファイバ心線W2の端末に接続されたフェルール20を用意し、フェルール20のキャピラリ21にスリーブ23を装着する。
次に、スリーブ23の軸心をハウジング本体30の端子挿入孔34の軸心に合わせて、スリーブ23を端子挿入孔34に挿入し、フェルール20をフランジ収容部33の前端部に配置する。ここで、スリーブ23の軸心が端子挿入孔34の軸心よりも下半分に僅かにずれた状態でスリーブ23を端子挿入孔34に挿入しようとした際には、図15に示すように、誘い込み面39がスリーブ23の先端を端子挿入孔34に誘い込み、スリーブ23が装着されたキャピラリ21を端子挿入孔34に挿入し易くすることができるようになっている。
【0035】
スリーブ23が装着された2つのフェルール20がキャピラリ収容部32に組み付けられた後、フランジ収容部33の収容溝37に光ケーブルWのかしめリングRを収容し、カバー50をフランジ収容部33の上方から組み付けることで光ケーブルWがハウジング本体30及びカバー50によって保持固定され、光コネクタ10が完成する。
【0036】
以上のように、本実施形態によると、成形金型60の上型61及び下型62を型開きする際に、上型61の誘い込み成形部61Aを上方に引き抜くことで、端子挿入孔34の後端開口縁部に容易に誘い込み面39を形成することができる。すなわち、端子挿入孔34の延びる方向と交差する上下方向に型開きする成形金型でありがなら、端子挿入孔34の後端開口縁部に誘い込み面39を成形することができる。これにより、端子挿入孔の後端開口縁部に誘い込み面が形成されていない光コネクタに比べて、図15に示すように、フェルール20に装着されたスリーブ23を誘い込み面39によって端子挿入孔34に誘い込み、光コネクタ10の組み付け作業の効率を向上させることができる。
【0037】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0038】
(1)上記実施形態では、光コネクタ10における端子挿入孔34の後端開口縁部に誘い込み面39を構成した例を示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、端子金具を内部に保持するコネクタにおける端子挿入孔の後端開口縁部に誘い込み面を構成してもよい。
(2)上記実施形態では、端子挿入孔34の後端開口縁部の後方にケーブル保持部36を設けた構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、端子挿入孔34の後端開口縁部の後方に端子挿入孔34と対向する背面壁を設けたハウジング本体にも適用できる。
(3)上記実施形態では、誘い込み面39が上方に開口した形態に構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、誘い込み面が左右方向に型開きする成形金型に形成された左右方向に延びる誘い込み成形部によって成形されることで、左方もしくは右方のどちらか一方に開口した形態に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10:光コネクタ(コネクタ)
20:フェルール(端子)
30:ハウジング本体(コネクタハウジング)
34:端子挿入孔
36:ケーブル保持部
39:誘い込み面(誘い込み部)
40:型抜き溝
60:成形金型
61A:誘い込み成形部
W:光ケーブル(ケーブル)
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタおよびコネクタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、合成樹脂製のコネクタハウジングに設けられた端子挿入孔に後方から端子が挿入されたコネクタとして、特許文献1に記載のものが知られている。このコネクタには、コネクタハウジングにおける端子挿入孔の後側の後端開口縁部に、端子挿入孔の後側から前側に向かうほど先細り状となる誘い込み部が形成されている。この誘い込み部は、前後方向に型開きする成形金型によって成形されており、端子挿入孔に端子を挿入する際に、必要に応じて端子が誘い込み部によって端子挿入孔に誘い込まれて挿入されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−122923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コネクタハウジングを成形する成形金型を端子挿入孔の延びる方向である前後方向に型開きすることができず、端子挿入孔の延びる方向と交差する方向に型開きする成形金型を用いる場合には、端子挿入孔の後端開口部に誘い込み部を成形する構成に苦慮することになる。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、端子挿入孔の延びる方向と交差する方向に型開きする成形金型でありがなら、端子挿入孔の開口縁部に誘い込み部を成形し、端子を端子挿入孔に誘い込んで挿入できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として本発明は、端子を後方から挿入する端子挿入孔を有する合成樹脂製のコネクタハウジングと、前記端子挿入孔における後端開口縁部に前記端子挿入孔の軸心に向かって先細り状に形成され、前記端子挿入孔が延びる方向と交差する交差方向と後方とに開口する誘い込み部とを備えているところに特徴を有する。
また、本発明は、端子を後方から挿入する端子挿入孔を有する合成樹脂製のコネクタハウジングと、前記端子挿入孔の後端開口縁部に前記端子挿入孔の軸心に向かって先細り状に形成され、前記端子挿入孔の延びる方向と交差する交差方向と後方とに開口する誘い込み部とを備えたコネクタの製造方法であって、成形金型に設けられた誘い込み成形部を、前記交差方向に引き抜くことで、前記誘い込み部を成形するところに特徴を有する。
このような構成によると、誘い込み部が端子挿入孔が延びる方向と交差する方向に開口しているので、成形金型に設けられた誘い込み成形部を交差方向に引き抜くことによって、端子挿入孔の後端開口縁部に誘い込み部を成形することができる。これにより、端子挿入孔の延びる方向と交差する方向に型開きする成形金型でありがなら、端子挿入孔の後端開口縁部に誘い込み部を成形することができ、誘い込み部によって端子を端子挿入孔に誘い込んで挿入することができる。
【0007】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
前記コネクタハウジングには、前記誘い込み部の後方に臨んだ位置に、前記端子に接続されたケーブルを保持するケーブル保持部が形成されている構成としてもよい。
誘い込み部の後方に臨んだ位置にケーブル保持部が形成されている場合には、前後方向に型開きして誘い込み構造を設けることができなくなってしまう。ところが、上記の構成によると、誘い込み成形部を交差方向に引き抜くことで、誘い込み部を成形することができる。これにより、端子挿入孔とケーブル保持部との間に前後方向にスライドさせる専用金型を設けて、端子挿入孔の後端開口縁部に誘い込み部を成形する場合に比べて、成形金型の構造を簡素化することができる。
【0008】
前記端子挿入孔は、前記コネクタハウジングの後面における略中央部に形成されており、前記誘い込み部の前記交差方向に臨んだ位置には、前記誘い込み成形部を抜き抜くための型抜き溝が形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、誘い込み成形部を交差方向に引き抜く際に、誘い込み成形部を型抜き溝を通して抜き抜くことができる。
前記型抜き溝は、前記端子挿入孔よりも幅広で、かつ、前記端子挿入孔の軸心の両側における前記後端開口縁部の両端部の位置から前記端子挿入孔の延びる方向と直交した方向に延びて形成されており、前記誘い込み部は、前記端子挿入孔の両側に位置する前記型抜き溝の両端部を繋ぐように前記端子挿入孔を周方向に囲んで形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、端子挿入孔の延びる方向と直交した方向に延びる型抜き溝を通して誘い込み成形部を抜き抜くことで、端子挿入孔の後端開口縁部における半分の領域に誘い込み部を形成することができる。すなわち、誘い込み成形部を交差方向に引き抜く上で、端子挿入孔の後端開口縁部に誘い込み部を最も大きく形成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、端子挿入孔の延びる方向と交差する方向に型開きする成形金型でありがなら、端子挿入孔の開口縁部に誘い込み部を成形し、端子を端子挿入孔に誘い込んで挿入できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】光コネクタの平面図
【図2】光コネクタの側面図
【図3】光コネクタの背面図
【図4】図3のIV−IV線断面図
【図5】図3のV−V線断面図
【図6】ハウジング本体の側面図
【図7】ハウジング本体の背面図
【図8】図6のVII−VII線断面図
【図9】図7のIX−IX線断面図
【図10】図9の要部拡大断面図
【図11】カバーの側面図
【図12】カバーの内側を下方からみた底面図
【図13】ハウジング本体にフェルールを組み付ける前の状態を示す斜視図
【図14】ハウジング本体にフェルールを組み付けた後の状態を示す斜視図
【図15】ハウジング本体にフェルールを組み付ける際に、フェルールが誘い込み部によって端子挿入孔に誘い込まれている状態を示す平面図
【図16】成形金型内においてハウジング本体を成形した状態を示す断面図
【図17】成形金型を型開きした状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
本発明の実施形態について図1乃至図17を参照して説明する。
本実施形態は、光ケーブル(本発明の「ケーブル」の一例)Wの端末に接続される光コネクタ(本発明の「コネクタ」の一例)10を例示している。
【0012】
光コネクタ10は、図示しない相手側光コネクタと嵌合可能に形成されており、図1乃至図5に示すように、光ケーブルWの端末に接続されるフェルール(本発明の「端子」の一例)20と、フェルール20を内部に収容するハウジング本体(本発明の「コネクタハウジング」の一例)30と、ハウジング本体30に上方から組み付けられるカバー50とを備えて構成されている。
【0013】
フェルール20は、図4及び図5に示すように、光ケーブルWの保護材W1を皮剥ぎすることで露出された光ファイバ心線W2の端末に接続されている。また、光ケーブルWの保護材W1の端末には、金属製のかしめリングRがかしめ付けられており、かしめリングRが装着された部分の外径寸法は、光ケーブルWの外径寸法よりも大きくなっている。
【0014】
フェルール20は、円筒状のキャピラリ21と、キャピラリ21の後端部に一体に形成されたフランジ部22とを備えて構成されている。
キャピラリ21の内部には、光ファイバ心線W2の被覆材を剥ぐことで露出した図示しない光ファイバが挿通されておリ、キャピラリ21の先端に相手側光コネクタに設けられた図示しない相手側フェルールの先端が当接することで光ファイバと、相手側フェルールの相手側光ファイバとが光学的に接続されるようになっている。
【0015】
キャピラリ21の外側には、円筒状のスリーブ23がキャピラリ21を覆うように装着されている。スリーブ23は金属製であって、スリーブ23の内部には、キャピラリ21及び相手側フェルールの図示しない相手側キャピラリの双方が収容され、互いの光ファイバが芯ずれすることなく当接するようになっている。
【0016】
フランジ部22は、前方から後方に向かってキャピラリ21の軸心から離れるように拡幅した後、キャピラリ21の軸心に沿って後方に延びて形成されており、フランジ部22の後端は、キャピラリ21の軸心と直交した面とされている。また、フランジ部22の後面には、フランジ部22よりも幅狭な角型状の軸部24が形成されている。この軸部24は、フランジ部22の後面における中央部分からフェルール20の軸線方向後方に延びて形成されている。
【0017】
ハウジング本体30は、合成樹脂製であって、前方に向かって開口する嵌合部31と、嵌合部31の奥壁と一体に形成されたキャピラリ収容部32と、キャピラリ収容部32の後方に形成されたフランジ収容部33とを備えて構成されている。
【0018】
嵌合部31は、嵌合方向前方(図1における左方)に開口した形態をなし、嵌合部31の内部には、図示しない相手側光コネクタハウジングが嵌合可能とされている。
キャピラリ収容部32は、嵌合部31の内部空間に突出した形態で嵌合部31の奥部に形成されている。キャピラリ収容部32の内部には、スリーブ23が装着されたキャピラリ21が適合して挿入される一対の端子挿入孔34が幅方向に並んで形成されており、両端子挿入孔34は、キャピラリ収容部32を前後方向に貫通して形成されている。また、両端子挿入孔34は、図7及び図8に示すように、キャピラリ収容部32の後面32Aに円形状に開口した形態をなしている。
【0019】
フランジ収容部33は、図4、図13及び図15に示すように、キャピラリ収容部32の後面32Aと、キャピラリ収容部32の幅方向両端部から後方に真っ直ぐ延びる側壁33Aと、両側壁33Aの後端部を幅方向に連結する後壁33Bとによって四方を囲まれた形態をなし、上方に向かって開口している。また、フランジ収容部33における両側壁33Aの外面には、2つのロック突起35がそれぞれ形成されている。
【0020】
フランジ収容部33の前端部には、図5に示すように、キャピラリ21を端子挿入孔34に挿入した状態のフェルール20が配置され、上方からカバー50を組み付けることで、フェルール20のフランジ部22がフランジ収容部33の内部に保持されるようになっている。
【0021】
カバー50は、図11に示すように、フランジ収容部33の上面を覆う天井壁51と、天井壁51の幅方向両側縁から下方に延びて形成された複数のロック片52とを備えて構成されている。
天井壁51は、図1及び図12に示すように、略矩形状をなし、天井壁51の内側には、天井壁51の内面から下方(図12の紙面手前側)に向かって突出するフェルール保持部53が形成されている。
フェルール保持部53には、フェルール20のフランジ部22及び軸部24の外形形状に沿って形成された嵌合凹部54が幅方向に2つ並んで形成されており、カバー50がハウジング本体30の上部に組み付けられると、図4に示すように、各嵌合凹部54内にフェルール20のフランジ部22及び軸部24がそれぞれ嵌合され、フランジ収容部33内において2つのフェルール20が保持されるようになっている。
【0022】
ロック片52は、天井壁51の幅方向両側縁にそれぞれ2つずつ形成されている。また、各ロック片52は、フランジ収容部33のロック突起35と対応する位置に配されることで、天井壁51の幅方向両側において、互いに対向した形態に形成されている。
ロック片52には、ロック片52を板厚方向に貫通する係止孔52Aが形成されており、この係止孔52Aにフランジ収容部33のロック突部35が収容されて、ロック突部35とロック片52とが係止することで、カバー50がハウジング本体30に組み付け固定されるようになっている。
【0023】
カバー50及びフランジ収容部33の後部には、光ケーブルWを保持するケーブル保持部36が形成されている。
このケーブル保持部36は、光ケーブルWのかしめリングRを収容する上下一対の収容溝37と、かしめリングRを後方に抜け止めする抜け止め部38とを備えて構成されている。また、上下一対の収容溝37は、幅方向に2つ並んで形成されている。
【0024】
上下一対の収容溝37のうち、下側に位置する収容溝37がフランジ収容部33の後壁33Bの前面に沿うようにフランジ収容部33における底壁の内面に凹状に形成され(図5及び図13を参照)、上側に位置する収容溝37がカバー50における天井壁51の内面に凹状に形成されている(図5及び図12を参照)。フランジ収容部33側の収容溝37内に光ケーブルWのかしめリングRの下端部を収容し、フランジ収容部33にカバー50を組み付けて、カバー50側の収容溝37にかしめリングRの上端部が収容されることで、光ケーブルWが後方に抜け止めされた状態に保持されるようになっている。
【0025】
抜け止め部38は、図3及び図13に示すように、かしめリングRから後方に引き出された光ケーブルWの外面に沿うようにフランジ収容部33の後壁33Bを上端から下方に向かって凹んだ形態に形成されている。また、抜け止め部38の前方に臨んだ位置には、図7に示すように、キャピラリ収容部32の後面32Aに形成された端子挿入孔34の後端開口縁部が配されており、図9に示すように、キャピラリ収容部32の後面と抜け止め部38の前面とが対向した配置となっている。また、抜け止め部38の前面は、光ケーブルWのかしめリングRの後端面と係止可能に形成されており、図4及び図5に示すように、抜け止め部38の前面とかしめリングRの後端面とが係止することで、光ケーブルWが抜け止め部38により後方に抜け止めされている。これにより、光ケーブルWは、ケーブル保持部36によって、後方に抜け止めされている。
【0026】
さて、キャピラリ収容部32の後面32Aにおける端子挿入孔34の後端開口縁部には、誘い込み面(本発明の「誘い込み部」の一例)39が形成されており、誘い込み面39の上方には型抜き溝40が形成されている。
誘い込み面39は、図9及び図10を示すように、キャピラリ収容部32の後面32Aから前方に向かうほど、端子挿入孔34の軸心に近づくように先細り状に傾斜した形態をなしている。また、誘い込み面39は、端子挿入孔34の後端開口縁部における端子挿入孔34の軸心よりも下半分の位置に端子挿入孔34を周方向に囲むように形成されている。これにより、図15に示すように、フェルール20のキャピラリ21に装着されたスリーブ23の軸心が端子挿入孔34の軸心よりも下半分に僅かにずれた状態でスリーブ23を端子挿入孔34に挿入しようとした際には、誘い込み面39がスリーブ23の先端を端子挿入孔34に誘い込み、スリーブ23が装着されたキャピラリ21を端子挿入孔34に挿入し易くすることができるようになっている。また、誘い込み面39は、図8に示すように、端子挿入孔34の後端開口縁部における端子挿入孔34の軸心よりも下半分の位置に形成されているので、端子挿入孔の後端開口縁部における幅方向の一部にのみ誘い込み面が形成されている場合に比べて、スリーブ23を端子挿入孔34に誘い込み易くすることができる。
【0027】
型抜き溝40は、端子挿入孔34の幅寸法よりも幅広で、かつ、キャピラリ収容部32の後面32Aから前方に向かって凹んだ形態をなし、キャピラリ収容部32の上面から誘い込み面39まで端子挿入孔34と直交するように延びて形成されている。また、型抜き溝40は、キャピラリ収容部32の後面32Aから前方に向かうほど幅方向の寸法が小さくなるように形成されており、図15に示すように、型抜き溝40の底部40Aの断面形状は円弧状になっている。また、型抜き溝40におけるキャピラリ収容部32の後面32Aから幅狭に傾斜した部分(図15を参照)は、誘い込み面39における上端縁(端子挿入孔34の軸心を通るように誘い込み面39を幅方向に切断した断面)における傾斜した部分(図4を参照)の形状と同一となっている。したがって、端子挿入孔34の後端開口縁部における上半分からキャピラリ収容部32の上面までの位置に型抜き溝40が形成されている。
【0028】
すなわち、誘い込み面39は、端子挿入孔34の後端開口縁部における下半分に形成され、端子挿入孔34が延びる方向と交差する上方と後方とに臨んだ(開口した)形態とされ、型抜き溝40は、誘い込み面39の上端縁における傾斜した部分の形状をキャピラリ収容部32の上面まで連続させた形態とされている。また、誘い込み面39と型抜き溝40とは、端子挿入孔34における軸心の幅方向両端部で連結されており、誘い込み面39は、端子挿入孔34の両側に位置する型抜き溝40の両端部を繋ぐように端子挿入孔34を周方向に囲んだ形態とされている。
【0029】
本実施形態の光コネクタ10は、上記のような構成であって、続いてハウジング本体30の成形方法の一例を説明する。
ハウジング本体30は、図16及び図17に示すように、上下に型開きする上型61及び下型62と、前方に型開きするスライド型63とを備えた成形金型60によって成形される。
【0030】
まず、成形金型60を型閉じした状態で、成形金型60内に溶融した樹脂を射出し、図16に示すように、嵌合部31及びキャピラリ収容部32の外面部分とフランジ収容部33とを上型61及び下型62によって成形し、嵌合部31の内部と端子挿入孔34とをスライド型63によって成形する。
【0031】
成形金型60内に射出された樹脂が冷却されて硬化したところで、図17に示すように、各金型61,62,63を型開きして、ハウジング本体30を成形金型60から取り出すことでハウジング本体30が完成する。
【0032】
ところで、本実施形態のように、端子挿入孔34の後端開口縁部の後方に、抜け止め部38などを形成する場合には、端子挿入孔34の延びる方向である前後方向と交差する方向である上下方向に型開きする成形金型60を用いてハウジング本体30が成形される。このため、従来のように、前後方向に型開きする成形金型によって端子挿入孔34の後端開口縁部にフェルール20を誘い込むための誘い込み構造を形成することができない。また、誘い込み構造を形成するために、端子挿入孔34とケーブル保持部36との間に前後方向にスライドさせる専用金型を設けて、専用金型を後方にスライドさせた後、上方に引き抜くことで端子挿入孔の後端開口縁部に誘い込み面を成形することもできるが、誘い込み構造専用の金型を用いると、金型の生産コストが高くなってしまう。
【0033】
ところが、本実施形態の光コネクタ10を成形する成形金型60の上型61には、図16及び図17に示すように、端子挿入孔34の延びる方向と交差する方向である上下方向に延びて、下端部が前方に向かって先細り状に突出する誘い込み成形部61Aが形成されている。そして、上型61及び下型62を型開きする際に、この誘い込み成形部61Aが上方に引き抜かれることで、端子挿入孔34の後端開口縁部に誘い込み面39を形成することができるようになっている。これにより、成形金型60に誘い込み面39を成形するための誘い込み構造専用金型を用いる場合に比べて、成形金型60の構造を簡素化することができ、成形金型60の生産コストが高くなることを抑制することができる。
また、本実施形態によると、端子挿入孔34の延びる前後方向と直交した上下方向に延びる型抜き溝40を通して誘い込み成形部61Aを上方に引き抜くことで、端子挿入孔34の後端開口縁部における下半分の領域に誘い込み面39を形成することができる。これにより、誘い込み成形部61Aを端子挿入孔34の延びる前後方向と交差した方向に引き抜く上で、端子挿入孔34の後端開口縁部に誘い込み面39を最も大きく形成することができる。
【0034】
次に、光コネクタ10の組み付け手順を簡単に説明し、ハウジング本体30にフェルール20を組み付ける際の作用効果を説明する。
まず、ハウジング本体30と、光ファイバ心線W2の端末に接続されたフェルール20を用意し、フェルール20のキャピラリ21にスリーブ23を装着する。
次に、スリーブ23の軸心をハウジング本体30の端子挿入孔34の軸心に合わせて、スリーブ23を端子挿入孔34に挿入し、フェルール20をフランジ収容部33の前端部に配置する。ここで、スリーブ23の軸心が端子挿入孔34の軸心よりも下半分に僅かにずれた状態でスリーブ23を端子挿入孔34に挿入しようとした際には、図15に示すように、誘い込み面39がスリーブ23の先端を端子挿入孔34に誘い込み、スリーブ23が装着されたキャピラリ21を端子挿入孔34に挿入し易くすることができるようになっている。
【0035】
スリーブ23が装着された2つのフェルール20がキャピラリ収容部32に組み付けられた後、フランジ収容部33の収容溝37に光ケーブルWのかしめリングRを収容し、カバー50をフランジ収容部33の上方から組み付けることで光ケーブルWがハウジング本体30及びカバー50によって保持固定され、光コネクタ10が完成する。
【0036】
以上のように、本実施形態によると、成形金型60の上型61及び下型62を型開きする際に、上型61の誘い込み成形部61Aを上方に引き抜くことで、端子挿入孔34の後端開口縁部に容易に誘い込み面39を形成することができる。すなわち、端子挿入孔34の延びる方向と交差する上下方向に型開きする成形金型でありがなら、端子挿入孔34の後端開口縁部に誘い込み面39を成形することができる。これにより、端子挿入孔の後端開口縁部に誘い込み面が形成されていない光コネクタに比べて、図15に示すように、フェルール20に装着されたスリーブ23を誘い込み面39によって端子挿入孔34に誘い込み、光コネクタ10の組み付け作業の効率を向上させることができる。
【0037】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0038】
(1)上記実施形態では、光コネクタ10における端子挿入孔34の後端開口縁部に誘い込み面39を構成した例を示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、端子金具を内部に保持するコネクタにおける端子挿入孔の後端開口縁部に誘い込み面を構成してもよい。
(2)上記実施形態では、端子挿入孔34の後端開口縁部の後方にケーブル保持部36を設けた構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、端子挿入孔34の後端開口縁部の後方に端子挿入孔34と対向する背面壁を設けたハウジング本体にも適用できる。
(3)上記実施形態では、誘い込み面39が上方に開口した形態に構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、誘い込み面が左右方向に型開きする成形金型に形成された左右方向に延びる誘い込み成形部によって成形されることで、左方もしくは右方のどちらか一方に開口した形態に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10:光コネクタ(コネクタ)
20:フェルール(端子)
30:ハウジング本体(コネクタハウジング)
34:端子挿入孔
36:ケーブル保持部
39:誘い込み面(誘い込み部)
40:型抜き溝
60:成形金型
61A:誘い込み成形部
W:光ケーブル(ケーブル)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子を後方から挿入する端子挿入孔を有する合成樹脂製のコネクタハウジングと、
前記端子挿入孔における後端開口縁部に前記端子挿入孔の軸心に向かって先細り状に形成され、前記端子挿入孔が延びる方向と交差する交差方向と後方とに開口する誘い込み部とを備えることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記コネクタハウジングには、前記誘い込み部の後方に臨んだ位置に、前記端子に接続されたケーブルを保持するケーブル保持部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記端子挿入孔は、前記コネクタハウジングの後面における略中央部に形成されており、
前記誘い込み部の前記交差方向に臨んだ位置には、前記誘い込み成形部を抜き抜くための型抜き溝が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記型抜き溝は、前記端子挿入孔よりも幅広で、かつ、前記端子挿入孔の軸心の両側における前記後端開口縁部の端部の位置から前記端子挿入孔の延びる方向と直交した方向に延びて形成されており、
前記誘い込み部は、前記端子挿入孔の両側に位置する前記型抜き溝の端部を繋ぐように前記端子挿入孔を周方向に囲んで形成されていることを特徴とする請求項3記載のコネクタ。
【請求項5】
端子を後方から挿入する端子挿入孔を有する合成樹脂製のコネクタハウジングと、
前記端子挿入孔の後端開口縁部に前記端子挿入孔の軸心に向かって先細り状に形成され、前記端子挿入孔の延びる方向と交差する交差方向と後方とに開口する誘い込み部とを備えたコネクタの製造方法であって、
成形金型に設けられた誘い込み成形部を、前記交差方向に引き抜くことで、前記誘い込み部を成形することを特徴とするコネクタの製造方法。
【請求項1】
端子を後方から挿入する端子挿入孔を有する合成樹脂製のコネクタハウジングと、
前記端子挿入孔における後端開口縁部に前記端子挿入孔の軸心に向かって先細り状に形成され、前記端子挿入孔が延びる方向と交差する交差方向と後方とに開口する誘い込み部とを備えることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記コネクタハウジングには、前記誘い込み部の後方に臨んだ位置に、前記端子に接続されたケーブルを保持するケーブル保持部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記端子挿入孔は、前記コネクタハウジングの後面における略中央部に形成されており、
前記誘い込み部の前記交差方向に臨んだ位置には、前記誘い込み成形部を抜き抜くための型抜き溝が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記型抜き溝は、前記端子挿入孔よりも幅広で、かつ、前記端子挿入孔の軸心の両側における前記後端開口縁部の端部の位置から前記端子挿入孔の延びる方向と直交した方向に延びて形成されており、
前記誘い込み部は、前記端子挿入孔の両側に位置する前記型抜き溝の端部を繋ぐように前記端子挿入孔を周方向に囲んで形成されていることを特徴とする請求項3記載のコネクタ。
【請求項5】
端子を後方から挿入する端子挿入孔を有する合成樹脂製のコネクタハウジングと、
前記端子挿入孔の後端開口縁部に前記端子挿入孔の軸心に向かって先細り状に形成され、前記端子挿入孔の延びる方向と交差する交差方向と後方とに開口する誘い込み部とを備えたコネクタの製造方法であって、
成形金型に設けられた誘い込み成形部を、前記交差方向に引き抜くことで、前記誘い込み部を成形することを特徴とするコネクタの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−68726(P2013−68726A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206136(P2011−206136)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]