説明

コネクターの誤接続防止機構

【課題】コネクター同士が正しい相対対置で嵌合されずに誤接続状態になってしまうことを未然に防止すること。
【解決手段】基板1には、他の基板や装置等を接続するための基板側コネクター3が設けられている。基板1が固定される支持フレーム2から切り起こした切り起こし片12A、12Bが、基板1に形成された貫通孔11A、11Bから基板側コネクター3の幅方向の一方の側および他方の側に突出している。基板側コネクター3の嵌合相手である相手側コネクター7を正しい嵌合位置である第1の嵌合位置Aに位置決めすると、相手側コネクター7と切り起こし片12A、12Bとの隙間d1、d2がいずれも基板側コネクター3のピン端子4の配列ピッチd0未満となる。このため、ピン端子4が相手側コネクター7の嵌合孔9に列ずれした状態で嵌合されて誤接続状態になるのを未然に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路等が形成された基板に設けられた基板側コネクターと当該基板の接続相手に設けられた相手側コネクターを正しい接続状態となるように嵌合させるためのコネクターの誤接続防止機構に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器等に設けられた基板と、この基板への配線や他の基板等の接続構造として、複数のピン端子を配列した雄型コネクターと、これらの各ピン端子を挿入するための挿入穴の配列を形成した雌型コネクターのいずれか一方を基板上に設けると共に他方を配線ケーブルの端部や他の基板等に設けて、両コネクターを嵌合させて接続するものがある。特許文献1には、この種のコネクターが開示されている。
【0003】
特許文献1では、一定ピッチで配列された複数のピン端子を保持部材(インシュレーター)で保持した構造のピンヘッダー(雄型コネクター)が基板に取り付けられている。ピンヘッダーの各ピン端子はインシュレーターの裏側において基板に半田付けされている。一方、配線ケーブルの端部にはピンヘッダーを嵌合させるための雌型コネクターが設けられており、雌型コネクターの先端面にピン端子を嵌合させるための嵌合孔が開口している。ピンヘッダーの上方には雌コネクターガイドが配置されているため、雌型コネクターの着脱時にその傾きが規制され、ピン端子の変形が防止されるようになっている。
【0004】
ここで、特許文献1のような構成では、雌型コネクターの位置をピン端子の配列ピッチ分あるいはその整数倍だけピン端子の配列方向にずらしたり、あるいは、雌型コネクターを裏返した場合でも両コネクターが嵌合可能であるが、このような姿勢で両コネクターを嵌合させてしまうと、各ピン端子が間違った嵌合孔に嵌合して各ピン端子が間違った接続相手に誤接続された状態になってしまうおそれがある。しかしながら、特許文献1では、このような誤接続を防止するための手段は設けられていない。コネクターが誤接続状態になっていることに気付かずに通電してしまうと、基板に形成された回路が破壊されるおそれがある。
【0005】
一方、特許文献2には、雄型コネクターと雌型コネクターを嵌合させる構造のコネクターにおいて、誤接続を防止するため、両コネクターを正しい相対配置にしないと嵌合不能となるように構成したものが開示されている。特許文献2のコネクターは、基板側にソケット状のコネクター嵌合部(雌型コネクター)が取り付けられ、その中心位置からずれた場所に誤挿入防止用キーが取り付けられている。雄型コネクターは、誤挿入防止用キーの取り付け位置に対応する部分に、キーを受け入れ可能な凹部が形成されている。このような構成では、雄型コネクターを雌型コネクターに対して裏返したり、あるいは幅方向に平行移動させると誤挿入防止用キーと凹部が正対しなくなるため、誤挿入防止用キーがコネクターピンに干渉し、雄型コネクターを雌型コネクターに嵌合させることができない。従って、誤接続を未然に防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−100153号公報
【特許文献2】特開平11−250992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2のような誤接続防止手段は、雄型コネクターと雌型コネクターの双方に互いに対応する形状を設けておく必要があるため、雄型コネクターと雌型コネクターの双方を専用のコネクター形状にする必要があり、構成が複雑である。また、誤挿入防止キーがソケット内に設けられているため、ピン端子と干渉していることを外部から把握しにくく、コネクターの接続作業が面倒である。更に、無理に嵌合させようとしてピン端子を破損してしまうおそれもある。
【0008】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、簡単な構成でありながら、コネクター同士が正しい相対対置で嵌合されずに誤接続状態になってしまうことを未然に防止できるコネクターの誤接続防止機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明のコネクターの誤接続防止機構は、
基板側コネクターが設けられた基板に形成された貫通孔または切り欠きと、
当該貫通孔または切り欠きを通って前記基板側コネクターから所定の距離だけ離れた位置に突出している位置規制部材とを有し、
前記基板側コネクターの嵌合相手である相手側コネクターは、
前記基板側コネクターに対し、両コネクターが正常に接続される第1の嵌合位置で嵌合可能に構成されていると共に、前記位置規制部材が存在しないと仮定したとき、前記第1の嵌合位置から移動した第2の嵌合位置において前記基板側コネクターと嵌合可能に構成されており、
前記第2の嵌合位置への前記相手側コネクターの位置決めが前記位置規制部材との干渉によって不可能となるように、前記位置規制部材の前記基板側コネクターに対する前記距離が設定されていることを特徴としている。
【0010】
本発明は、このように、相手側コネクターが正常な嵌合位置(第1の嵌合位置)からずれた位置(第2の嵌合位置)でも基板側コネクターと嵌合してしまう構造のコネクターにおいて、正常な接続状態にならない相対位置で基板側コネクターおよび相手側コネクターが嵌合してしまうことを物理的に不可能にすることができる。特に、このような機能を、基板側コネクターから所定の距離だけ離れた位置に、基板に開けた穴から突出する位置規制部材を設けるだけで実現しているため、極めて簡単な構成でありながら、コネクターの誤接続を確実に防止できる。また、このような位置規制部材は、相手側コネクターと物理的に干渉することを目視で極めて容易に確認できるため、嵌合作業が容易である。
【0011】
本発明において、前記位置規制部材は、前記第1の嵌合位置に位置決めされた前記相手側コネクターにおける幅方向の一方の側、および他方の側に配置されていることが望ましい。このようにすると、幅方向の一方の側および他方の側のどちらの側への移動も阻止できるため、誤接続をより確実に防止できる。また、一対の位置規制部材が基板側コネクターの幅方向の両側に配置された構成となるため、コネクター接続時に正常な嵌合位置を把握しやすいという利点もある。
【0012】
また、本発明において、前記位置規制部材は、前記基板側コネクターとの嵌合方向に移動する前記相手側コネクターを前記第1の嵌合位置へ向けて案内するための案内部を備えていることが望ましい。このようにすると、可動側コネクターの正常な嵌合位置への位置決めを容易に行うことができる。
【0013】
ここで、前記位置規制部材を、前記基板を支持している前記支持フレームから切り起こした切り起こし片、前記支持フレームに取り付けられた取付部品、あるいは、前記支持フレームから帯状に切り欠いた部分を前記可動側コネクターを囲む形状に変形させた曲げ加工部のいずれかにすることができる。このようにすると、基板が取り付けられる支持フレームを利用して位置規制部材を形成することができる。支持フレームは板金部材等から構成されるため、これを切り欠いて曲げ加工などを行ったり、あるいは、各種の取付部材などを容易に取り付けることができる。従って、廉価に、且つ、容易に位置規制部材を形成できる。
【0014】
この場合に、前記位置規制部材は、前記第1の嵌合位置に位置決めされた前記相手側コネクターにおける幅方向の一方の側、および他方の側に対向配置された一対の前記切り起こし片であり、当該一対の前記切り起こし片は、前記基板側コネクターの側に向かうに従って間隔が狭まるように構成されていることが望ましい。このようにすると、嵌合方向に移動する相手側コネクターを基板側コネクターに正対する正常な嵌合位置に向けて案内できる。
【0015】
本発明において、前記基板側コネクターと前記相手側コネクターのいずれか一方に一定の配列ピッチで配列された複数の端子が設けられ、他方に当該端子と同一の配列ピッチで配列された複数の嵌合部が設けられ、前記第1の嵌合位置は、各端子が予め設定した対応する嵌合部に嵌合される位置である場合に、前記位置規制部材を、前記第1の嵌合位置に位置決めされた前記相手側コネクターに対して、前記端子および前記嵌合部の配列方向の距離が、前記端子および前記嵌合部の配列ピッチ未満となるように配置した構成にすることができる。換言すると、この位置関係となるように、前記位置規制部材の前記基板側コネクターに対する前記距離を設定しておく。このようにすると、各端子を対応する嵌合部以外の嵌合部に嵌合させることが物理的に不可能となるため、誤接続を未然に防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、正常な接続状態にならない相対位置で基板側コネクターおよび相手側コネクターが嵌合してしまうことを物理的に不可能にすることができ、極めて簡単な構成でありながら、コネクターの誤接続を確実に防止できる。また、相手側コネクターと位置規制部材が物理的に干渉することを目視で極めて容易に確認できるため、嵌合作業が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コネクターおよび本実施形態の誤接続防止機構の斜視図およびその部分拡大図である。
【図2】基板を取り外した支持フレームの斜視図である。
【図3】基板側コネクターに対する相手側コネクターの嵌合位置を示す説明図である。
【図4】改変例の切り起こし片の斜視図および平面図である。
【図5】改変例の位置規制部材である曲げ加工部の斜視図および平面図である。
【図6】曲げ加工部の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したコネクターの誤接続防止機構を説明する。
【0019】
図1はコネクターおよび本実施形態の誤接続防止機構の斜視図および部分拡大図であり、図1(a)はコネクターおよび誤接続防止機構が設けられた基板およびその支持フレームの全体構成を示す斜視図、図1(b)はコネクターおよび誤接続防止機構の拡大斜視図(図1(a)の領域Xの部分拡大図)である。また、図2は基板を取り外した支持フレームの斜視図である。基板1は、液晶表示装置などの電子機器内に配置されており、平板状の支持フレーム2に設けられた基板取付部2aに固定されている。基板取付部2aは、基板1の四隅に対応する支持フレーム2の各箇所を切り欠いて曲げ加工することにより形成されている。基板取付部2aに基板1の四隅をネジ固定することにより、支持フレーム2の表面との間に所定の隙間が形成される高さに基板1が保持されている。
【0020】
基板1には、電源回路などを形成するための配線パターンが形成され、半導体素子などの各種の電子部品が搭載されている。基板1の一端には、この基板1と他の基板あるいはタッチパネルユニット等の他の装置とを接続するための基板側コネクター3が設けられている。基板側コネクター3は、複数のピン端子4(端子)を保持部材5によって一定ピッチで配列された状態に保持している構造のピンヘッダーである。
【0021】
基板側コネクター3の近傍には、基板1の接続相手である他の基板や装置等に接続されたフラットケーブル6が引き出されており、フラットケーブル6の端部に基板側コネクター3の嵌合相手である相手側コネクター7が設けられている。相手側コネクター7は、基板側コネクター3とほぼ同一幅のハウジング8を備えており、ハウジング8の先端面8aには、ピン端子4と同一数の嵌合孔9(嵌合部)がピン端子4の配列ピッチと同一ピッチで形成されている。各嵌合孔9にピン端子4を嵌合させると、嵌合孔9内に設けられた接続端子およびピン端子4を介して、基板1上の配線パターンとフラットケーブル6内の信号線や給電線などが接続される。
【0022】
基板1における基板側コネクター3の側方の位置には、基板側コネクター3と相手側コネクター7が間違った嵌合位置で嵌合されてしまうことを防止するための誤接続防止機構10が設けられている。誤接続防止機構10は、基板1における基板側コネクター3の側方の位置に設けられた貫通孔11A、11Bと、この貫通孔11A、11Bを通って基板側コネクター3の側方の位置に突出している切り起こし片12A、12B(位置規制部材)を備えている。
【0023】
より詳しく説明すると、基板1には、基板側コネクター3の幅方向(すなわち、ピン端子4の配列方向)の一方の側および他方の側に、2箇所の貫通孔11A、11Bが形成されている。各貫通孔11A、11Bと重なる支持フレーム2の箇所には、板金製の支持フレーム2を切り欠いて上向きに屈曲させた切り起こし片12A、12Bが形成されている。切り起こし片12A、12Bは、貫通孔11A、11Bを通り、基板側コネクター3の幅方向の一方の側および他方の側に突出しており、基板側コネクター3から所定の距離だけ離れた位置にある。すなわち、誤接続防止機構10は、基板側コネクター3における相手側コネクター7との嵌合部であるピン端子4の配列をその幅方向の両側から挟むように、一対の切り起こし片12A、12Bが配置された構造になっている。切り起こし片12A、12Bの配置(基板側コネクター3からの距離)は、以下に説明するように、基板側コネクター3に対する相手側コネクター7の嵌合位置との関係で設定されている。
【0024】
図3は基板側コネクター3に対する相手側コネクター7の嵌合位置を示す説明図であり、図3(a)は両コネクターが正常な接続状態となる第1の嵌合位置A、図3(b)(c)は両コネクターが誤接続された状態となる第2の嵌合位置B1、B2を示している。図3(a)〜(c)に示す矢印Cは両コネクターの嵌合方向である。本例のフラットケーブル6および相手側コネクター7は薄型で平たい形状をしており、フラットケーブル6の表裏は異なる色をしている。このようにすると、フラットケーブル6および相手側コネクター7が裏返っていることに一目で気付くため、裏返った状態で両コネクターを嵌合してしまうような事態の発生を防止できるものとしている。なお、フラットケーブル6および相手側コネクター7の表裏を判別するための目印は色以外のものでも良く、また、相手側コネクター7のハウジング8に目印を設けることもできる。
【0025】
図3(a)に示すように、第1の嵌合位置Aは、相手側コネクター7を基板側コネクター3に正対させて全てのピン端子4を対応する嵌合孔9(すなわち、当該ピン端子4に対する正しい接続端子を内蔵する嵌合孔9)に嵌合させた位置に設定されている。このとき、図1(b)に示すように、フラットケーブル6の表側の面6aおよび相手側コネクター7におけるハウジング8の表側の面8bを上向きにした状態で両コネクターを正対させることが前提である。
【0026】
ここで、相手側コネクター7は、基板側コネクター3の両隣に突出している切り起こし片12A、12Bが存在しないと仮定したとき、図3(b)(c)に示すような第2の嵌合位置B1、B2において基板側コネクター3と嵌合可能な構成となっている。第2の嵌合位置B1、B2は、第1の嵌合位置Aに対し、相手側コネクター7をピン端子4の配列ピッチd0と同一寸法だけ両コネクターの嵌合部の幅方向(矢印D方向/ピン端子4および嵌合孔9の配列方向)に平行移動させた位置である。図3(b)に示す第2の嵌合位置B1と、図3(c)に示す第2の嵌合位置B2は、第1の嵌合位置Aに対する移動方向が逆向きとなっている。
【0027】
両コネクターの嵌合部は、両コネクターの幅方向にピン端子4および嵌合孔9が一定ピッチで配列されているため、この配列ピッチd0と同一寸法だけ両コネクターを相対移動させた場合でも、嵌合孔9にピン端子4を嵌合させることができる。但し、この場合は、最も端に位置するピン端子4が嵌合孔9の列からはみ出し、他のピン端子4は正常な嵌合相手の隣に位置する嵌合孔9に嵌合されるため、第2の嵌合位置B1、B2では、各ピン端子4を対応する正しい接続端子に接続することができず、誤接続状態になってしまう。
【0028】
図3(a)に示すように、切り起こし片12A、12Bは、相手側コネクター7が第1の嵌合位置Aのときには相手側コネクター7と干渉しないように配置されている。第1の嵌合位置Aでは、相手側コネクター7のハウジング8における一方の側面8cと切り起こし片12Aとの間に隙間d1が形成され、もう一方の側面8dと切り起こし片12Bとの間に隙間d2が形成されている。そして、これらの隙間d1、d2の幅(言い換えれば、切り起こし片12A、12Bと相手側コネクター7との間のピン端子4および嵌合部9の配列方向の距離)が、いずれも、ピン端子4の配列ピッチd0未満となるように設定されている。
【0029】
切り起こし片12Aの配置は、第2の嵌合位置B1に相手側コネクター7を位置決めすることが切り起こし片12Aとハウジング8との干渉によって不可能とするように設定されている。また、切り起こし片12Bの配置は、第2の嵌合位置B1とは移動方向のみ異なる第2の嵌合位置B2への相手側コネクター7の位置決めを不可能とするように設定されている。すなわち、隙間d1、d2の幅が配列ピッチd0未満の寸法であれば、第2の嵌合位置B1への相手側コネクター7の移動は切り起こし片12Aとの干渉によって物理的に不可能となる。同様に、第2の嵌合位置B2への相手側コネクター7の移動は切り起こし片12Bとの干渉によって物理的に不可能となる。なお、第1の嵌合位置Aからの移動量を配列ピッチの整数倍(但し、n=2以上)にしたときにも第2の嵌合位置B1、B2と同様な誤接続を想定できるが、切り起こし片12A、12Bの配置は、このような誤接続を全て未然に防止できるものとなっている。
【0030】
以上のように、本例では、誤接続防止機構10として、基板1における基板側コネクター3の側方に貫通孔11A、11Bを形成してここから基板側コネクター3の側方に切り起こし片12A、12Bを突出させた構成を設けているため、正常な接続状態とならない間違った嵌合位置(例えば、第2の嵌合位置B1、B2)への相手側コネクター7の位置決めが物理的に不可能になっている。従って、極めて簡単な構成でありながら、両コネクターの誤接続を確実に防止できる。
【0031】
また、このような構成は、コネクターそのものを専用の形状にする必要がなく、基板1および支持フレーム2のみを加工するだけでよいため、廉価に且つ容易に形成できる。また、基板1を支持フレーム2に固定するだけで誤接続防止機構10を形成でき、組立時に特別な作業を必要とすることもない。更に、このような誤接続防止機構10は、相手側コネクター7と切り起こし片12A、12Bの物理的な干渉を目視で極めて容易に確認できるため、嵌合作業が容易である。
【0032】
(改変例)
(1)上記実施形態では、切り起こし片12A、12Bを、その板面方向が両コネクターの嵌合方向と直交する方向を向くように配置していたが、切り起こし片12A、12Bの向きおよび配置は適宜変更が可能である。図4(a)は改変例の切り起こし片の斜視図であり、図4(b)は平面図である。改変例では、嵌合方向Cに移動する相手側コネクター7の通過位置に、通過する相手側コネクター7の幅方向の一方の側および他方の側に一対の切り起こし片13A、13Bを対向配置している。切り起こし片13A、13Bの向きは、相手側コネクター7の通過位置を挟んで対向している各切り起こし片の板面13a、13bが嵌合方向Cに対して傾いた面となるように設定されている。板面13a、13bの傾きは、基板側コネクター3の側に向かうに従って板面間の間隔が狭まるように設定されている。切り起こし片13A、13Bは、切り起こし片12A、12Bと同様に、基板1に形成された貫通孔11A、11Bから突出している。
【0033】
このようにすると、切り起こし片13A、13Bにおける対向する板面13a、13bは、基板側コネクター3に向かって移動する相手側コネクター7を第1の嵌合位置Aに案内するための案内部として機能する。従って、相手側コネクター7の正しい嵌合位置への位置決めが容易である。また、切り起こし片13A、13Bの配置は、上記の切り起こし片12A、12Bと同様に、第1の嵌合位置Aに位置決めされた相手側コネクター7の側面との間に配列ピッチd0未満の隙間が形成されるように設定されている。従って、上記の切り起こし片12A、12Bと同様に、両コネクターが間違った嵌合位置で嵌合されることを未然に防止できる。なお、上記実施形態の切り起こし片12A、12Bの基端部を捻り加工することにより、切り起こし片13A、13Bと同様の傾きにして案内部として機能させることもできる。
【0034】
(2)上記実施形態では、支持フレーム2から切り起こした切り起こし片12A、12Bを誤接続防止機構10の位置規制部材として用いているが、位置規制部材を、支持フレーム2に各種の部材を取り付けて貫通孔11A、11Bから突出させた構成としても良い。例えば、支持フレーム2にカシメや半田付けによって固定した部品を貫通孔11A、11Bから突出させてもよい。あるいは、支持フレーム2に取り付けたネジの一端を貫通孔11A、11Bから突出させてもよい。また、これらの位置規制部材に、図4の切り起こし片13A、13Bにおける対向する板面13a、13bと同様の案内部を設けても良い。
【0035】
(3)上記実施形態では、コネクターを挟み、その幅方向の両側に切り起こし片などの位置規制部材を配置しているが、幅方向の一方の側にのみ位置規制部材を配置する構成であってもよい。
【0036】
(4)上記実施形態では、コネクターの幅方向の両側に互いに分離した位置規制部材を設けているが、コネクターの幅方向の両側および上方を囲むような位置規制部材を設けることもできる。図5(a)は改変例の位置規制部材である曲げ加工部の斜視図であり、図5(b)はその平面図である。曲げ加工部14は、支持フレーム2から帯状に切り欠いた部分を変形させて形成されている。曲げ加工部14は、支持フレーム2に接続された基端部から斜め上方に折れ曲がって延びている第1位置規制部14aと、第1位置規制部14aの上端から水平に延びている第2位置規制部14bと、第2位置規制部14bの端部から斜め下方に延びている第3位置規制部14cを備えている。これにより、曲げ加工部14は、第1の嵌合位置Aに位置決めされた相手側コネクター7の幅方向の両側および上方を囲むように配置されることになる。
【0037】
この場合、基板1には、図5(b)に示すように、上記実施形態における貫通孔11A、11Bに代えて、基板1の端縁から貫通孔11A、11Bと同位置まで切り欠いた切り欠き15A、15Bを形成する。このようにすると、基板1の端縁に開口している切り欠き口から、切り欠き15A、15B内に第1位置規制部14aおよび第3位置規制部14cを挿入して、基板側コネクター3の幅方向の両側に第1位置規制部14aおよび第3位置規制部14cが突出している状態となるように基板1を取り付けることができる。
【0038】
曲げ加工部14における第1位置規制部14aおよび第3位置規制部14cは、上記実施形態の切り起こし片12A、12Bと同様に機能し、相手側コネクター7の幅方向の移動を規制して、間違った嵌合位置で嵌合してしまうことを未然に防止できる。また、第2位置規制部14bは、第1の嵌合位置Aに位置決めされた相手側コネクター7の上方を横断するように配置されており、相手側コネクター7の上下方向の移動を規制することができる。このような第2位置規制部14bは、例えば、ピン端子4および嵌合孔9の配列を上下に2列以上形成した場合に、ピン端子4と嵌合孔9が上下方向に1列ずれて嵌合されてしまうことによる誤接続を防止できる。従って、より確実に、コネクターの誤接続を未然に防止することができる。
【0039】
図6は、曲げ加工部の他の形態を示す斜視図である。この図に示すように、両端が支持フレーム2に接続された帯状部分を切り欠き、この帯状部分を変形させて、曲げ加工部14と同様の形状の曲げ加工部16を形成することもできる。曲げ加工部16は、上記の曲げ加工部14における第3位置規制部14cに相当する部分の下端が支持フレーム2に接続されている点のみが曲げ加工部14と異なっている。このような位置規制部材により、曲げ加工部14と同様の誤接続防止効果が得られる。
【0040】
(5)基板側コネクター3および相手側コネクター7を、ピン端子4および嵌合孔9とは異なる形状の端子および嵌合部を一定ピッチで配列した構成にしてもよい。また、基板側コネクター3を嵌合部が形成された雌型コネクターとし、相手側コネクターを雄型コネクターにしてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…基板、2a…基板取付部、2…支持フレーム、3…基板側コネクター、4…ピン端子(端子)、5…保持部材、6…フラットケーブル、6a…表側の面、7…相手側コネクター、8…ハウジング、8a…先端面、8b…表側の面、8c…側面、8d…側面、9…嵌合孔(嵌合部)、10…誤接続防止機構、11A、11B…貫通孔、12A、12B…切り起こし片(位置規制部材)、13A、13B…切り起こし片(位置規制部材)、13a、13b…板面(案内部)、14…曲げ加工部(位置規制部材)、14a…第1位置規制部、14b…第2位置規制部、14c…第3位置規制部、15A、15B…切り欠き、16…曲げ加工部(位置規制部材)、A…第1の嵌合位置、B1、B2…第2の嵌合位置、C…嵌合方向、D…幅方向、d0…配列ピッチ、d1…隙間、d2…隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板側コネクターが設けられた基板に形成された貫通孔または切り欠きと、
当該貫通孔または切り欠きを通って前記基板側コネクターから所定の距離だけ離れた位置に突出している位置規制部材とを有し、
前記基板側コネクターの嵌合相手である相手側コネクターは、
前記基板側コネクターに対し、両コネクターが正常に接続される第1の嵌合位置で嵌合可能に構成されていると共に、前記位置規制部材が存在しないと仮定したとき、前記第1の嵌合位置から移動した第2の嵌合位置において前記基板側コネクターと嵌合可能に構成されており、
前記第2の嵌合位置への前記相手側コネクターの位置決めが前記位置規制部材との干渉によって不可能となるように、当該位置規制部材の前記基板側コネクターに対する前記距離が設定されていることを特徴とするコネクターの誤接続防止機構。
【請求項2】
請求項1において、
前記位置規制部材は、前記第1の嵌合位置に位置決めされた前記相手側コネクターにおける幅方向の一方の側、および他方の側に配置されていることを特徴とするコネクターの誤接続防止機構。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記位置規制部材は、前記基板側コネクターとの嵌合方向に移動する前記相手側コネクターを前記第1の嵌合位置へ向けて案内するための案内部を備えていることを特徴とするコネクターの誤接続防止機構。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかの項において、
前記位置規制部材は、前記基板を支持している前記支持フレームから切り起こした切り起こし片、前記支持フレームに取り付けられた取付部品、あるいは、前記支持フレームから帯状に切り欠いた部分を前記相手側コネクターを囲む形状に変形させた曲げ加工部のいずれかであることを特徴とするコネクターの誤接続防止機構。
【請求項5】
請求項4において、
前記位置規制部材は、前記第1の嵌合位置に位置決めされた前記相手側コネクターにおける幅方向の一方の側、および他方の側に対向配置された一対の前記切り起こし片であり、
当該一対の前記切り起こし片は、前記基板側コネクターの側に向かうに従って間隔が狭まるように構成されていることを特徴とするコネクターの誤接続防止機構。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかの項において、
前記基板側コネクターと前記相手側コネクターのいずれか一方に一定の配列ピッチで配列された複数の端子が設けられ、他方に当該端子と同一の配列ピッチで配列された複数の嵌合部が設けられ、
前記第1の嵌合位置は、各端子が予め設定した対応する嵌合部に嵌合される位置であり、
前記位置規制部材は、前記第1の嵌合位置に位置決めされた前記相手側コネクターに対して、前記端子および前記嵌合部の配列方向の距離が、前記端子および前記嵌合部の配列ピッチ未満となるように配置されていることを特徴とするコネクターの誤接続防止機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−58435(P2013−58435A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196898(P2011−196898)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】