説明

コネクタ用カバー

【解決手段】コネクタ用カバーは、不正行為を防止するために、パチンコ、パチスロ等の機器、又は、不正行為を防止する特徴を高めることができる他の装置に提供される。コネクタ用カバーは多重構造であり、構造の特徴及びカバーの重合体、特にその多重の壁のバランスにより弾力を示す。カバーの最も内側の壁は、プローブによる差込みを防ぐためにコネクタの壁の外部の形に応じるような形に作られ、材料から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ用カバーに関するものである。従来、ケーブルをプリント回路基板等の回路基板に接続するために基板用コネクタが使用されている。このような基板用コネクタは、回路基板に実装され、ケーブルの端部に接続されたケーブル用コネクタと嵌(かん)合する。
【0002】
ところで、近年、パチンコ、パチンコとスロットマシーンとを組合せたパチスロ等の遊技機器の回路基板に接続されている基板用コネクタの端子に針金や針等細長い金属のようなプローブを接触させる不正行為が増加している。このような不正行為では、遊技機器の信号回路に不正信号を流し、これにより、遊技機器を不正に操作する。このために、回路基板に取付けられた基板用コネクタ側面の下端縁と回路基板表面との間からプローブを差込み、基板用コネクタの底面から突出する端子にプローブを接触させることが多い。
【0003】
そこで、このような不正行為を防止するために、回路基板に取付けられた基板用コネクタ側面の下端縁の周囲にシート状又は板状の樹脂製の不正防止用蓋(ふた)板を取付けることが提案されている。所定寸法、例えば、約0.2〔mm〕以上の厚さの不正防止用蓋板で基板用コネクタ側面の下端縁の周囲を覆うことによって、基板用コネクタ側面の下端縁と回路基板表面との間からプローブを差込むことを防止することができる。
【0004】
前記不正防止用蓋板は、基板用コネクタを回路基板に取付けた後に、基板用コネクタ周辺の回路基板表面を覆うように回路基板に取付けられる。このような従来技術では、前記不正防止用蓋板は、基板用コネクタの周囲を囲むような開口を備え、該開口に基板用コネクタを通すようにして、回路基板に取付けられるようになっている。
【0005】
しかし、前記開口の内縁と基板用コネクタの周囲との間には、不可避的な隙(すき)間が生じるので、該隙間からプローブが差込まれる可能性がある。そこで、前記基板用コネクタの周囲を取囲むとともに前記隙間を塞(ふさ)ぐような遮蔽(へい)部材を回路基板に取付ける技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
図6は従来の基板用コネクタの断面図である。図において、801は導電トレースを備える回路基板であり、基板用コネクタ802が実装されている。該基板用コネクタ802には、図示されないケーブルに接続されたケーブル用コネクタが嵌合されるようになっている。また、回路基板801の上方には該回路基板801の表面を覆うように不正防止用蓋板803が取付けられている。なお、該不正防止用蓋板803は、開口を備え、該開口に基板用コネクタ802を通すようにして、回路基板801に取付けられている。
【0007】
さらに、該回路基板801には、基板用コネクタ802の周囲を取囲む遮蔽部材805が取付けられている。そして、前記不正防止用蓋板803は、開口の縁に接続された下方に延出する筒部804を備え、該筒部804が前記遮蔽部材805に形成された溝806内に嵌入される。
【0008】
従来技術では、不正防止用蓋板803の開口と基板用コネクタ802の周囲との隙間が遮蔽部材805によって塞がれるので、前記隙間からプローブを差込み、基板用コネクタ802の底面から突出する端子にプローブを接触させる不正行為を適切に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−81714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来の遮蔽部材805を使用する従来技術では不正行為に十分に対処することができない、との知見を備えるものである。溝806内に不正防止用蓋板803の筒部804を嵌入することによって、基板用コネクタの周囲と不正防止用蓋板803との間に隙間を発生させないようになっているので、遮蔽部材805の構造が複雑になり製造が困難である。また、不正防止用蓋板803も、開口の縁に下方に延出する筒部804を接続する必要がある。これにより、構造が更に複雑になり製造が更に困難である。
【0011】
さらに、従来の不正行為防止技術では、前記遮蔽部材805は、その内周面が基板用コネクタ802の外周面と密着する必要がある。一般的に、基板用コネクタ802の外周面は、平坦(たん)な面ではなく、製造上の誤差に起因する凹凸を備えている。このような凹凸を考慮すると、前記遮蔽部材805の内周面を、基板用コネクタ802の外周面の凹凸に適合した形状に形成する必要があり、製造が更に困難になりコストが上昇する。しかし、遮蔽部材805の内周面が基板用コネクタ802の外周面と密着しないと、図6に示されるように、プローブの差込みを適切に防止することができなくなってしまう。
【0012】
本発明は、前記従来技術のコネクタ用カバーの問題点を解決するためになされたものである。本発明は、基板に実装されたコネクタの少なくとも基板側の端近傍の周囲を囲むコネクタ用カバーによって、これらの問題点を解決する。本発明のコネクタ用カバーは、多重構造の側壁を有し、これにより、各部が弾性的に変形可能であり、簡単な構造でありながら、側壁がコネクタの外周面及び蓋板の下面に密着可能であり、従来技術の構成と比較して、製造が容易で、製造コストが低くなる。また、本発明は、繰返し着脱することができる改良されたコネクタ用カバーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのために、本発明のコネクタ用カバーにおいては、基板に実装されたコネクタにおける基板側の周囲を囲む本体部を有するコネクタ用カバーであって、前記本体部は、上側壁及び多重構造の側壁を備え、該側壁は、前記本体部の基板側で開放されるとともに、その反対側で本体部が上側壁に一体的に接続され、前記側壁の最も内側の側壁は、基板用コネクタにおける基板端側の外周面に密接する。
【0014】
本発明の他のコネクタ用カバーにおいては、該コネクタ用カバーの周囲が対向する基板に実装されたコネクタにおける基板側の端近傍の周囲を囲む本体部を有する。前記コネクタ用カバーは、少なくとも一部が蓋板によって覆われ、該蓋板は、基板用コネクタの周囲を囲む開口を備え、前記本体部は、上側壁及び多重構造の側壁を備え、前記上側壁は、前記蓋板の基板側面における開口の外周部分に当接し、前記側壁の最も内側の壁要素は、前記コネクタにおける蓋板と基板との間の外周面に密接する。
【0015】
本発明の他のコネクタ用カバーにおいては、さらに、多重構造の側壁は、外側壁要素及び内側壁要素から成る二重構造であり、前記外側壁要素及び内側壁要素の上端は、前記上側壁に接続されている。
【0016】
本発明の更に他のコネクタ用カバーにおいては、さらに、多重構造の側壁は、前記外側壁要素と内側壁要素との間に、コネクタ用カバーの本体内における中空部を画定する部分を備える。
【0017】
本発明の更に他のコネクタ用カバーにおいては、さらに、前記内側壁要素は、少なくとも一つのスリットであって、上下方向に延在し、一端が内側壁部分の下端で開放してコネクタ用カバーの柔軟性を増加させるスリットを備える。
【0018】
本発明の更に他のコネクタ用カバーにおいては、さらに、前記本体部は、外側壁要素と内側壁要素とを連結する連結リブを備える。
【0019】
本発明の更に他のコネクタ用カバーにおいては、さらに、前記本体部は、前記コネクタの開口を塞ぐ突起を備える。
【0020】
本発明の更に他のコネクタ用カバーにおいては、さらに、前記本体部は、前記コネクタとコネクタ用カバーとの位置関係をロックする少なくとも一つのロック爪(つめ)、又は、突起を備える。
【0021】
本発明の更に他のコネクタ用カバーにおいては、さらに、前記上側壁は、前記蓋板側の面が平坦である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、コネクタ用カバーは、少なくとも基板用コネクタの周囲全体を囲み、多重構造の側壁を有する。これにより、弾性的に変形可能な部分と、コネクタの外周面に密着する構造とを備え、必ずしも平坦でなく凹凸も含み得るコネクタの外周面に適合することができる変形可能な特性のコネクタ用カバーが提供される。これにより、コネクタ用カバーは蓋板の下面に密着可能となる。また、コネクタ用カバーは、製造が容易で、コストが低く、繰返し着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態におけるコネクタ用カバーを斜め上方向から観た斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるコネクタ用カバーを斜め下方向から観た斜視図である。
【図2A】図2における2A−2A矢視断面図である。
【図3A】本発明の実施の形態における基板用コネクタ、フラットケーブル相手側コネクタ及び図1に示されるコネクタ用カバーの分解斜視図であり、フラットケーブルの引出し側から観た図である。
【図3B】本発明の実施の形態における基板用コネクタ、相手側コネクタ及び図1に示されるコネクタ用カバーの分解斜視図であり、図3Aの反対側から観た図である。
【図4】本発明の実施の形態における基板に実装されて相手側コネクタが嵌合された基板用コネクタを示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態における基板に実装された基板用コネクタに取付けられた状態の図1に示されるコネクタ用カバーの断面図であり図4におけるA−A矢視断面図である。
【図6】従来の基板用コネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下において、本発明の実施の形態の詳細を、添付の図面を参照して説明する。なお、ここで説明する実施の形態は、本発明の例示に過ぎないものであり、本発明は種々変形し得るものであることを理解されたい。したがって、ここで説明される具体的な詳細は、限定的に解釈されるものでなく、請求項の理解の基礎に過ぎず、当業者が本発明を種々変形した適宜形態で実施することができる代表的な基本例に過ぎず、ここで明示されない組合せにおいて開示される種々の特徴も含むものである。
【0025】
図において、31は本実施の形態におけるコネクタ用カバーであり、後述される基板91に実装されたコネクタとしての基板用コネクタ1の基板91側の端近傍の周囲を囲むように取付けられる。なお、前記基板用コネクタ1は、いわゆるストレートタイプのレセプタクルコネクタであり、基板91に対して垂直に延在し、内部の開口が上を向き、図5に示される相手側コネクタ101が基板用コネクタ1に嵌合する方向が基板91に対して垂直となるタイプのコネクタである。そして、前記コネクタ用カバー31は、図1における下側端が基板91の表面に接するような向きで取付けられる。図2は、コネクタ用カバー31を取付方向に対して逆様にした状態を示している。
【0026】
そして、前記基板用コネクタ1及び相手側コネクタ101は、いかなる用途に使用されるものであってもよいが、本実施の形態においては、望ましくは、パチンコ、パチスロ等の遊技機器に使用されるものとして説明し、前記基板91は、典型的には、遊技機器のプリント回路基板等であるとする。そして、遊技機器に対しては、例えば、基板用コネクタ1側面の下端縁と基板91表面との間からプローブ(図5における171、172及び173)を差込み、基板用コネクタ1の底面から突出する、後述される端子61にプローブを接触させることによって、遊技機器の信号回路に不正信号を流す不正行為が行われるので、該不正行為を防止するために、後述される蓋板92が基板91の少なくとも一部を覆うように取付けられる。
【0027】
なお、基板91の表面には、各種の電気機器、電子機器等が実装されているので、蓋板92は、基板91の表面との間に所定の間隔が生じるように取付けられる。さらに、前記蓋板92は、基板用コネクタ1の周囲を取囲むような開口93を備え、該開口93に基板用コネクタ1を通すようにして、基板91に取付けられるようになっている。
【0028】
しかし、前記開口93の内縁と基板用コネクタ1の周囲との間には、不可避的な隙間が生じるので、該隙間からプローブが差込まれて不正行為が行われる可能性がある。そこで、コネクタ用カバー31を基板用コネクタ1の基板91側の端近傍の周囲を囲むように取付けることによって、前記隙間からプローブが差込まれて不正行為が行われることを防止するようになっている。
【0029】
なお、本実施の形態において、コネクタ用カバー31、基板用コネクタ1及び相手側コネクタ101の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、コネクタ用カバー31、基板用コネクタ1及び相手側コネクタ101が図に示される姿勢である場合に適切であるが、コネクタ用カバー31、基板用コネクタ1及び相手側コネクタ101の姿勢や向きが変化した場合には姿勢や向きの変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0030】
本実施の形態において、コネクタ用カバー31は、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に形成された部材であり、略長方形状のコネクタ収容開口32、及び、該コネクタ収容開口32の周囲を取囲む連続した壁部材としての本体部33を有する。図に示される本体部33は、2組の対向する直線上の壁部材を連結した略「口」字状の部材であり、前記コネクタ収容開口32の外周を画定する。なお、前記コネクタ収容開口32は、本体部33を厚さ方向、すなわち、上下方向に貫通する。
【0031】
コネクタ用カバー31は、ここで説明する構造上の特徴及び/又はその材料に起因する柔軟性を発揮する。典型的には、不正行為を防止するための特性を得るにおいては、構造上の特徴がより重要である。材料は、典型的には、弾性及び圧縮性を備え、柔軟性のみならず十分な剛性を発揮し、構造による不正行為を防止する特徴を損なわない合成樹脂である。この点において有用な合成樹脂の例は、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、ナイロン又は他のポリアミド、比較的硬度の高い共重合体等である。
【0032】
そして、前記本体部33は、コネクタ収容開口32の周囲を取囲む2つの側壁34を備える多重構造を有する。すなわち、多重の側壁34を備える。該側壁34を構成する壁要素の数は2以上であればよく、例えば、3であっても4であってもよいが、ここでは、説明の都合上、各側壁34の壁要素の数が2であり、本体部33が二重構造を有するものである場合について説明する。この場合、本体部33は、図2に最もよく示されるように、最も外側の壁要素としての外側壁要素34a及び最も内側の壁要素としての内側壁要素34bを有する。そして、前記外側壁要素34a及び内側壁要素34bは、各々、2組の対向する直線状の長方形の板部材を連結した略「口」字状の部材である。
【0033】
また、本体部33は、図1に示されるように、外側壁要素34a及び内側壁要素34bの上端を接続する上側壁35を有する。該上側壁35の上面は、ほぼ平坦であり、前記蓋板92の基板91側面、すなわち、下面と当接する。また、前記上側壁35の両側の側縁は、外側壁要素34a及び内側壁要素34bの上端縁とほぼ直交するように一体的に接続されている。これにより、外側壁要素34a及び内側壁要素34bは、各々、上端のみが上側壁35に接続されて下端が自由となっているので、柔軟に弾性変形可能な状態となっている。
【0034】
なお、本実施の形態においては、図2に示されるように、本体部33の対向する長辺の途中に対応する部位に、外側壁要素34aと内側壁要素34bとを連結する連結リブ39が形成されている。該連結リブ39は、上下方向に延在し、両側の側縁が外側壁要素34a及び内側壁要素34bに接続されている。そのため、外側壁要素34a及び内側壁要素34bは、各々、連結リブ39によって拘束されるので、柔軟性が低下して変形しにくくなる。これは、本体部33の対向する長辺に対応する部分では、外側壁要素34a及び内側壁要素34bが細長い板状となって剛性が低下する。そのため、柔軟性が過多となる場合には、柔軟性を低下させることが有利だからである。すなわち、前記連結リブ39を適切に配設することによって、外側壁要素34a及び内側壁要素34bの柔軟性が低くなるように調整することができる。なお、前記連結リブ39の数、配設される部位、肉厚等を適宜設定することによって、本発明の不正行為防止の目的を阻害することなく、外側壁要素34a及び内側壁要素34bの柔軟性が望ましいレベルとなるように、適宜調整することができる。
【0035】
また、本実施の形態においては、図1及び2に示されるように、本体部33の対向する短辺の途中に対応する部位に、内側壁要素34bの一部を切断するスリット41が形成されている。該スリット41は、上下方向に延在し、一端が内側壁要素34bの下端で開放されている。そのため、内側壁要素34bは、スリット41によって分割されるので、柔軟性が向上してより変形しやすくなる。
【0036】
これは、本体部33の対向する短辺に対応する部分では、内側壁要素34bが左右が拘束された短い矩(く)形状となっているので、スリット41がないと、内側壁要素34bのこの部分の剛性が高くなりすぎ、作業に必要とされるよりも、柔軟性が低下するからである。スリットを加えることで、柔軟性が向上する。したがって、前記スリット41を形成することによって、内側壁要素34bの端部及び内側壁要素34b全体の柔軟性が高くなるように調整することができる。なお、前記スリット41の数、形成される部位、長さ、幅等を必要に応じて適宜設定することによって、内側壁要素34bの柔軟性を適宜調整することができる。また、必要に応じて、外側壁要素34aにスリット41を形成することによって、外側壁要素34aの柔軟性が高くなるように調整することができ、これにより、外側壁要素34a及びコネクタ用カバー31の多重の側壁34の柔軟性を高くすることができる。
【0037】
前記側壁34の内側壁要素34bには、係合凸部37が形成されている。該係合凸部37は、基板用コネクタ1の後述されるハウジング11に形成された凹部19と係合する。さらに、前記ハウジング11に形成されたスロット形状の開口12と係合して該開口12を塞ぐための突起又は耳としての閉塞(そく)突起38、前記ハウジング11に形成された凸部18と係合する係合凹部44、及び、前記ハウジング11に形成された凹溝17と係合する凸条部42が形成されている。閉塞突起38の各々は、その端部近傍に形成された鋲(びょう)45を有するとともに、外方に突出し、ハウジング11の開口12内に収容される。これにより、コネクタ用カバー31の圧縮の上限を設定することができる。
【0038】
コネクタ用カバー31の内側に形成された各種の突起部は、コネクタ用カバー31と基板用コネクタ1とを接続すると、基板用コネクタ1の各種のスロット状の開口部に収容されて締まりばめを提供する。これは、“ロック爪突起部”と呼ばれる形状の突起部によって説明される。第1ロック爪36a及び第3ロック爪36cが前記内側壁要素34bに形成され、各々は、ハウジング11に形成された外方に開口するロック孔(あな)16に係合又は進入して、コネクタ用カバー31と基板用コネクタ1との位置関係をロックする。水平な耳である第2ロック爪36bは、内側壁要素34b、典型的にはその中央、に形成され、ハウジング11に設けられた開口13の縁と係合する。この水平な耳である第2ロック爪36bは、コネクタ用カバー31の圧縮の下限を設定することができる。図に示される例においては、第1ロック爪36aが係合凸部37に形成され、第3ロック爪36cが係合凹部44に形成されている。前記第1ロック爪36a、第2ロック爪36b及び第3ロック爪36cは、どの部位に形成されてもよく、その数も必要に応じて適宜設定することができる。なお、前記第1ロック爪36a、第2ロック爪36b及び第3ロック爪36cを統合的に説明する場合には、ロック爪36として説明する。
【0039】
次に、本実施の形態における基板用コネクタ1及び相手側コネクタ101について説明する。図3A及び3Bは、本実施の形態における基板用コネクタ1、相手側コネクタ101及びコネクタ用カバー31を示す分解斜視図である。図に示される例において、基板用コネクタ1は、いわゆるヘッダーコネクタであり、米国のミル規格(Military Specification)に適合する規格品である。また、相手側コネクタ101は、いわゆるフラットリボンコネクタであり、前記基板用コネクタ1と同様に、米国のミル規格に適合する規格品である。
【0040】
ここで、前記相手側コネクタ101は、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に形成された相手側ハウジング111、及び、絶縁性材料によって形成され、前記相手側ハウジング111に結合、典型的には相手側ハウジング111と一体的に形成された相手側リテーナ121を備える。そして、前記相手側コネクタ101には、複数の導線を並列に接続して形成されたリボンケーブルとも称されるフラットケーブル191の端部が接続されている。
【0041】
また、前記基板用コネクタ1は、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に形成されたハウジング11、及び、該ハウジング11の底板を貫通するように取付けられた導電性の端子61を有する。該端子61は、前記底板よりも下方に延出するテール部62を備え、上方の部分が相手側コネクタ101の相手側端子161と接触するとともに、前記テール部62が基板91に接続される部材であり、端子嵌入孔(こう)に嵌(は)め込まれることによって、ハウジング11の底板に取付けられている。
【0042】
そして、前記ハウジング11の両側の各々には、前記相手側コネクタ101を保持するための保持腕部材21が回動可能に取付けられている。該保持腕部材21の自由端には、保持爪24が形成され、相手側コネクタ101が基板用コネクタ1に嵌合された状態で、相手側ハウジング111の上面の両側に形成された保持突起124に係合するようになっている。これにより、相手側コネクタ101と基板用コネクタ1との嵌合状態を確実に保持して、不要な嵌合解除を防止することができる。
【0043】
また、前記ハウジング11の側壁にはコネクタ用カバー31の係合凹部44と係合する凸部18が形成され、また、前記ハウジング11の側壁の下端近傍には、上下方向に延在し、コネクタ用カバー31の凸条部42と係合する凹溝17が形成されている。なお、前記凸部18には、コネクタ用カバー31の第3ロック爪36cと係合するロック孔16が形成されている。
【0044】
次に、特に図4及び5を参照して、コネクタ用カバー31について説明する。本実施の形態において、図に示される基板91は、例えば、パチンコ、パチスロ等の遊技機器に使用される回路基板であるが、コンピュータ、自動販売機、家庭用電化製品等に使用される回路基板であってもよく、いかなる種類の電気機器や電子機器に使用される回路基板であってもよい。前記基板91には、図示されない導電トレース及びスルーホール94が形成されている。一般的に理解されるように、スルーホール94は、基板91を厚さ方向に貫通し、前記導電トレースに電気的に接続するために使用される。
【0045】
そして、基板用コネクタ1は、ハウジング11の底面が基板91の表面(図5における上側面)に対向するような向きで基板91に実装される。この場合、下方に延出する端子61のテール部62の先端が対応するスルーホール94に挿入される。これにより、基板用コネクタ1は、基板91に所定の向きで取付けられる。なお、図5に示されるように、各端子61のテール部62の先端は、各スルーホール94を通り抜け、基板91の裏面(図5における下側面)から突出する。そして、テール部62がはんだ付等によってスルーホール94及び基板91に固定される。
【0046】
また、基板用コネクタ1の基板91の下端の周囲を囲むようにコネクタ用カバー31が取付けられる。この場合、該コネクタ用カバー31の係合凸部37、閉塞突起38、係合凹部44及び凸条部42は、基板用コネクタ1のハウジング11に形成された凹部19、開口12、凸部18及び凹溝17と係合する。そのため、基板用コネクタ1のハウジング11に形成された凹部19、開口12、凸部18及び凹溝17は、前記コネクタ用カバー31の係合凸部37、閉塞突起38、係合凹部44及び凸条部42によって塞がれる。また、コネクタ用カバー31の内側壁要素34bは、適切な柔軟性を備え、ハウジング11の外形に対応して弾性的に変形し、ハウジング11の外周面に密着する。さらに、コネクタ用カバー31のロック爪36がハウジング11のロック孔16等と係合することによって、コネクタ用カバー31と基板用コネクタ1との位置関係がロックされる。これにより、基板用コネクタ1の下端の周囲とコネクタ用カバー31との間に隙間が生じることがなく、機器の外側からのプローブの差込みを適切に防止することができる。なお、コネクタ用カバー31の外側壁要素34a及び内側壁要素34bの下端は、基板91の表面に密接している。
【0047】
そして、蓋板92は、基板91の上を覆うように、かつ、開口93内を基板用コネクタ1が通過するように取付けられる。前記蓋板92は、例えば、アクリル等の絶縁性樹脂から成る薄板、ポリイミド等の絶縁性樹脂から成るシートであるが、絶縁性材料から成る薄板状又はシート状の板状部材であれば、いかなる種類のものであってもよい。なお、前記蓋板92の縦方向及び横方向の寸法は、基板用コネクタ1の周囲を取囲むことができる寸法であればよく、いかなる程度の大きさであってもよい。また、前記蓋板92の下面における開口93の外周部分は、コネクタ用カバー31の上側壁35に当接する。この場合、該上側壁35が蓋板92によって下向きに基板91に向けて押圧されると、外側壁要素34a及び内側壁要素34bが弾性的に変形することによって、上向きのばね力が発生し、該ばね力により前記上側壁35が蓋板92に対して付勢される。そのため、前記上側壁35の上面が蓋板92の下面に密着するので、開口93の周囲において蓋板92とコネクタ用カバー31との間に隙間が生じることがなく、プローブの差込みによる不正行為を適切に防止することができる。
【0048】
相手側コネクタ101は基板用コネクタ1と嵌合する。相手側端子161は、一端においてフラットケーブル191の各導線に接続され、他端において基板用コネクタ1の端子61に接続される。これにより、フラットケーブル191の各導線は、基板91上の対応する導電トレースに電気的に接続される。保持腕部材21が相手側コネクタ101を保持するための保持位置にあり、保持爪24が相手側ハウジング111の上面の両側に形成された保持突起124に係合している。これにより、相手側コネクタ101と基板用コネクタ1との嵌合状態が確実に保持され、意図しない嵌合解除が適切に防止される。
【0049】
このように、本実施の形態において、コネクタ用カバー31の本体部33は、上側壁35及び多重構造の側壁34を備える。上側壁35は、蓋板92の基板91側面における開口93の外周部分に当接する。多重の側壁34の最も内側の側壁である内側壁要素34bは、基板用コネクタ1における蓋板92と基板91との間の外周面に当接する。この場合、側壁34が多重構造であって適切な柔軟性を備えるので、内側壁要素34bは基板用コネクタ1の外形に対応して弾性的に変形することができる。これにより、コネクタ用カバー31の内側壁要素34bと基板用コネクタ1の外周面との間に隙間が生じることがなく、プローブの差込みによる不正行為を適切に防止することができる。また、側壁34が弾性的に変形することによって、上向きのばね力が発生し、該ばね力により上側壁35が蓋板92に対して付勢される。これにより、開口93の周囲において蓋板92とコネクタ用カバー31との間に隙間が生じることがなく、プローブの差込みによる不正行為を適切に防止することができる。さらに、側壁34が弾性的に変形するのでコネクタ用カバー31の着脱が容易となり、コネクタ用カバー31を繰返し装着したり取外したりすることができる。
【0050】
また、本実施の形態において説明した二重壁構造の側壁34では、外側壁要素34a及び内側壁要素34bの上端は、上側壁35に接続されている。これにより、外側壁要素34a及び内側壁要素34bは、各々、柔軟に弾性変形可能な状態となる。
【0051】
さらに、外側壁要素34aと内側壁要素34bとの間は中空である。これにより、コネクタ用カバー31を構成する各部材が薄肉となる。したがって、コネクタ用カバー31を容易に、かつ、高い精度で成形することができる。すなわち、各部材の肉厚を均一にすることができ、また、反りやひけが発生することがない。
【0052】
さらに、内側壁要素34bは、上下方向に延在し、一端が内側壁要素34bの下端で開放するスリット41を備える。これにより、既に説明したように、内側壁要素34bの柔軟性が高くなるように調整することができる。
【0053】
さらに、本体部33は、外側壁要素34aと内側壁要素34bとを連結する連結リブ39を備える。これにより、外側壁要素34a及び/又は内側壁要素34bの柔軟性を適宜調整することができる。
【0054】
さらに、本体部33は、基板用コネクタ1のハウジング11の開口12を塞ぐ閉塞突起38を備える。これにより、基板用コネクタ1とコネクタ用カバー31との間に隙間が生じることがなく、プローブの差込みによる不正行為を適切に防止することができる。
【0055】
図5は、不正行為の行われるであろう部位を示している。プローブ171〜173は、その一部のみが描画されているが、蓋板92の上面の上方に示されている。図5の右側は、蓋板92と基板用コネクタ1との間の隙間にプローブ171が簡単に挿入されないように、階段状に形成された形状を備えるコネクタ用カバー31を示している。同様に、左側は、蓋板92と基板用コネクタ1との間の隙間にプローブ172が簡単に挿入されないようにするためのコネクタ用カバー31を示している。また、図5の左側は、持ち上げられて“逆階段”となって蓋板92の開口を通過して上方に延在するコネクタ用カバー31を示している。蓋板92の開口を通過して上昇する階段状の突出部が機器内へのプローブ173の進入を防止する。
【0056】
なお、本実施の形態においては、基板用コネクタ1及び相手側コネクタ101が米国のミル規格に適合するヘッダーコネクタ及びフラットリボンコネクタである場合について説明したが、基板用コネクタ1及び相手側コネクタ101は、これに限定されることなく、いかなる種類のものであってもよい。
【0057】
また、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。ここで説明した実施例及び実施の形態は、すべての点において、例証であって限定的なものでなく、本発明はここで説明した具体例に限定されるものではない。本発明は、種々変形させることができ、個々に開示された又はクレームされた特徴を組み合わせたものをも含むものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に実装されるように形成された基板側端を備えるコネクタの周囲を囲むように形成された本体部であって前記コネクタの外周面を囲むように形成された本体部を有するコネクタ用カバーであって、
前記本体部は、上側壁及び最も内側の内側壁要素を含む多重構造の側壁を備え、
該多重構造の側壁は、前記本体部の基板側で開放されるとともに、その反対側で上側壁に一体的に接続され、
前記側壁の最も内側の内側壁要素は、前記コネクタにおける少なくとも基板側端の外周面に当接することを特徴とするコネクタ用カバー。
【請求項2】
少なくとも一部が蓋板によって覆われる基板に実装される基板側端を備えるコネクタの周囲を囲むように形成された本体部であって前記コネクタの外周面を囲むように形成された本体部を有するコネクタ用カバーであって、
前記蓋板は、前記コネクタの周囲を囲む開口を備え、
前記本体部は、上側壁及び最も内側の内側壁要素を含む多重構造の側壁を備え、
前記上側壁は、前記蓋板の基板に対向する面における開口の外周部分に当接し、
前記側壁の最も内側の内側壁要素は、前記コネクタにおける蓋板と基板との間の外周面に密接することを特徴とするコネクタ用カバー。
【請求項3】
前記多重構造の側壁は、外側壁要素及び最も内側の内側壁要素から成る二重構造を備え、前記外側壁要素及び最も内側の内側壁要素の上端は、前記上側壁に接続されている請求項1又は2に記載のコネクタ用カバー。
【請求項4】
前記外側壁要素と最も内側の内側壁要素との間は中空である請求項3に記載のコネクタ用カバー。
【請求項5】
前記最も内側の内側壁要素は、上下方向に延在し、一端が最も内側の内側壁要素の下端で開放するスリットを備える請求項1〜4のいずれか1項に記載のコネクタ用カバー。
【請求項6】
前記本体部は、外側壁要素と最も内側の内側壁要素とを連結する連結リブを備える請求項1〜5のいずれか1項に記載のコネクタ用カバー。
【請求項7】
前記本体部は、前記コネクタの開口を塞ぐ突起を備える請求項1〜6のいずれか1項に記載のコネクタ用カバー。
【請求項8】
前記突起は、コネクタ用カバーの圧縮の上限を設定する耳である請求項7に記載のコネクタ用カバー。
【請求項9】
前記耳は、前記コネクタの開口に収容される突出した鋲を含む請求項8に記載のコネクタ用カバー。
【請求項10】
前記本体部は、前記コネクタとコネクタ用カバーとの位置関係をロックするロック爪を備える請求項1〜9のいずれか1項に記載のコネクタ用カバー。
【請求項11】
前記ロック爪は複数であり、そのうちの一つがコネクタ用カバーの圧縮の下限を設定する請求項10に記載のコネクタ用カバー。
【請求項12】
前記上側壁は、前記蓋板側の面が平坦である請求項2〜11のいずれか1項に記載のコネクタ用カバー。
【請求項13】
前記最も内側の内側壁要素は、弾性的に変形可能であり、前記コネクタの外周面に密接する請求項1〜12のいずれか1項に記載のコネクタ用カバー。
【請求項14】
前記最も内側の内側壁要素は、前記コネクタの外周面に密接する柔軟性を示し、かつ、不正行為耐性を維持するのに十分な剛性を示す弾性的に変形可能な合成樹脂から成り、該合成樹脂は、ABS樹脂、AS樹脂、ナイロン、ポリアミド、比較的硬度の高い共重合体、及び、これらの組合せから成るグループから選択されたものである請求項13に記載のコネクタ用カバー。
【請求項15】
前記側壁は、外側壁要素と、上下方向に延在し、外側壁要素の一端で終端し、外側壁要素の下端で開放されているスリットとを備える請求項1又は2に記載のコネクタ用カバー。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−519690(P2010−519690A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550169(P2009−550169)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/054284
【国際公開番号】WO2008/103660
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(591043064)モレックス インコーポレイテド (441)
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
【Fターム(参考)】