コネクタ
【課題】コネクタの小型化を図りかつ高い信頼性を持って、端子の短絡機能とハウジングの電気的な嵌合検知機能を果す。
【解決手段】雄ハウジング30には、雄端子20同士を短絡するショート端子50が装着される。ショート端子50は一対の端子片51U,51Dからなり、一方に固定接点片57が、他方にこれと弾性的に接離する可動接点片58が設けられてスイッチ部85が形成されるとともに、このショート端子50を介設した嵌合検知回路が構成される。両ハウジング10,30が正規嵌合されると、ロック部材11が復元変位しつつ被ロック部40に係止してロックされるが、併せてロック部材11が被押圧板64を押して可動接点片58を曲げることで、スイッチ部85が切断される。これにより雄端子20間の短絡が解除されるとともに、嵌合検知回路が切断されて、電気的な嵌合検知が行われる。
【解決手段】雄ハウジング30には、雄端子20同士を短絡するショート端子50が装着される。ショート端子50は一対の端子片51U,51Dからなり、一方に固定接点片57が、他方にこれと弾性的に接離する可動接点片58が設けられてスイッチ部85が形成されるとともに、このショート端子50を介設した嵌合検知回路が構成される。両ハウジング10,30が正規嵌合されると、ロック部材11が復元変位しつつ被ロック部40に係止してロックされるが、併せてロック部材11が被押圧板64を押して可動接点片58を曲げることで、スイッチ部85が切断される。これにより雄端子20間の短絡が解除されるとともに、嵌合検知回路が切断されて、電気的な嵌合検知が行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子の短絡機能と、ハウジングの電気的な嵌合検知機能とを有するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端子の短絡機能と、ハウジングの電気的な嵌合検知機能とを備えたコネクタとして、特許文献1に記載されたものが知られている。
このものは、雌雄一対のハウジングのうちの雌ハウジング(正確には同雌ハウジングに装着されるリテーナ)に、雌ハウジングに収容された隣り合う雌端子の間にわたって接触して短絡する第1ショート端子が装着されるとともに、雌端子が収容されない空の隣り合ったキャビティにわたって第2ショート端子が装着された構造であって、雌雄のハウジングが嵌合されると、雄ハウジング側に設けられたリブが第1ショート端子を雌端子から離間させて、雌端子同士の短絡が解除されるとともに、空のキャビティ内に相手の隣り合った雄端子が挿入されて、両雄端子間が第2ショート端子で接続され、これにより嵌合検知回路が閉じた状態となって、電気的な嵌合検知がなされるものである。
【特許文献1】特開平5−190233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の従来手段では端的には、短絡用と嵌合検知用のショート端子が別々に設けられて異なった場所に装着されていたため、部品点数が多くまた装着スペースにも多くを要し、また両雄端子間が第2ショート端子で接続されるタイミングにはある程度の幅が出るために、より高い信頼性を持って正規嵌合の検知を行えるようにさらなる改良が切望されていた。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、部品点数を抑えかつ高い信頼性を持って、端子の短絡機能とハウジングの電気的な嵌合検知機能を果せるようにするところにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、互いに嵌合可能な一対のハウジングを備え、いずれか一方のハウジングには、このハウジングに収容された端子金具同士を短絡可能なショート端子が装着され、このショート端子には接続と切断とが切り替え可能なスイッチ部が設けられているとともに、このショート端子を介設した嵌合検知回路が構成され、かつ前記両ハウジングの間には、両ハウジングが正規に嵌合された場合にロックするロック機構部が設けられ、前記ショート端子の前記スイッチ部は常には接続状態にあり、前記両ハウジングが正規嵌合した場合に前記ロック機構部と係合して切断状態とされる構成としたところに特徴を有する。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記ロック機構部は、一方のハウジングと他方のハウジングとに、弾性変位可能なロック部材とこのロック部材に係止可能な被ロック部とが設けられ、前記両ハウジングは前記ロック部材が弾性変位して前記被ロック部を通過することを伴って嵌合され、正規嵌合されたところで前記ロック部材が復元変位して前記被ロック部に係止するとともに、前記ショート端子の前記スイッチ部と係合してこれを切断する構成としたところに特徴を有する。
【0006】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記ショート端子は、前記端子金具に個別に接触する接触部を有する一対の端子片を備え、一方の端子片には相手の端子片に対して接離可能な可動接点が設けられて前記スイッチ部が形成されているとともに、前記可動接点には、前記ロック機構部と係合してこの可動接点を前記相手の端子片から離間する方向に変位させる係合部が設けられているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
<請求項1の発明>
ショート端子はスイッチ部が閉じた状態で一方のハウジングに装着され、同ハウジングに収容された端子金具同士が短絡された状態にある。両ハウジングが嵌合され、正規嵌合に至るとロック機構部によって両ハウジング間がロックされるが、このロック動作に伴ってショート端子のスイッチ部が切断され、端子金具間の短絡が解除されるとともに、嵌合検知回路が切断されることで電気的な嵌合検知がなされる。
端子の短絡機能とハウジングの電気的な嵌合検知機能とを、共通のショート端子を利用して果たせるようにしたから、ショート端子の装着スペースが少なくて済んで、ハウジングの小型化に寄与できるとともに、1種類のショート端子を製造すれば良いのであるから、製造コストの低減も図ることができる。また、両ハウジングが正規嵌合して初めて動作するロック機構部を利用して嵌合検知回路を切る構造であるから、嵌合検知を高い信頼性を持って行うことができる。
【0008】
<請求項2の発明>
両ハウジングは、ロック部材が弾性変位して相手の被ロック部を通過しつつ次第に嵌合され、正規嵌合に至ると、ロック部材が復元変位して被ロック部に係止されることで両ハウジング間がロックされる。復元変位したロック部材と係合することで、ショート端子のスイッチ部が切断され、端子金具間の短絡が解除されるとともに、嵌合検知回路が切断される。
<請求項3の発明>
ショート端子は、各端子片の接触部が対応する端子金具に個別に接触し、かつ一方の端子片に突設された可動接点が相手の端子片に接触しすなわちスイッチ部が接続された状態で装着され、端子金具同士が短絡状態とされる。両ハウジングが正規嵌合されてロック機構部によってロックされると、ロック機構部のロック動作に伴い係合部を介して可動接点が相手の端子片から離間し、すなわちスイッチ部が切断された状態となり、端子金具間の短絡が解除されるとともに、嵌合検知回路が切断される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図11に基づいて説明する。本実施形態では、エアバッグ回路用のコネクタを例示しており、図9に示すように、互いに嵌合される雌側のコネクタハウジング10(以下、雌ハウジング10)と、雄側のコネクタハウジング30(以下、雄ハウジング30)とを備えており、雄ハウジング30側に2組のショート端子50が装着されている。
以下では、各ハウジング10,30について、嵌合面側を前面として説明する。
【0010】
雄ハウジング30は合成樹脂製であって、図1,図7等に示すように、若干扁平なブロック状をなす本体部31の前面に、横長矩形状のフード部32が形成されており、後記するように、フード部32内には相手の雌ハウジング10が嵌合されるようになっている。
本体部31内には、雄端子20を収容するための図示4個のキャビティ34が、前後方向を向いた姿勢で形成されている。雄端子20は、図7に概略を示すように、縦長断面の箱状をなす本体部21の前面からタブ22が突設された形状であって、本体部21の後方に設けられたバレル23をかしめることで、電線25の端末に接続されている。
【0011】
上記したキャビティ34は、図1に示すように、正面から見た左側の2個と、右側の2個とがそれぞれ同じ組をなしており、各組のキャビティ34同士は、上下に若干ずれた位置において、左右方向に所定ピッチを開けた配置で形成されている。各キャビティ34は、図3に示すように、やや横長の長方形断面をなし、前面には端子挿通口35が開口されているとともに、幅方向の一側(同図の左側)にはランス36が設けられている。
キャビティ34内には、電線25の端末に接続された雄端子20が、横倒しにされた姿勢で後方から挿入され、図7に示すように、所定位置まで挿入されたところで、ランス36が本体部21に開口された係止孔24に嵌り、雄端子20はタブ22を端子挿通口35からフード部32内に突出させた状態で、抜け止めされて収容されている。
【0012】
一方の雌ハウジング10は、同じく合成樹脂製であって、図9に示すように、上記した雄ハウジング30のフード部32内に嵌合されるブロック状に形成されている。雌ハウジング10には、図示はしないが、4個のキャビティが雄ハウジング30のキャビティ34と対応して形成され、各キャビティには、電線の端末に接続された雌端子が後方から挿入され、キャビティ内に設けられたランスにより抜け止めされて収容されている。
【0013】
雌ハウジング10の上面には、両ハウジング10,30を正規嵌合状態にロックするためのロック部材11が設けられている。このロック部材11は、図1の鎖線にも示すように、幅広の板状をなし、雌ハウジング10の上面の後端に立設された支持部12に基端が一体形成されて、そこから雌ハウジング10の前端に向けて延出した片持ち状に形成され、延出端側が上下方向に弾性変位可能となっている。ロック部材11には、幅方向の中央部において、延出端から少し入った位置から基端に開口するようにしてロック溝13が切られており、その前端がロック面14となっている。ロック部材11の延出端には、前方の斜め上方を向いた操作部16が形成されている。
【0014】
相手の雄ハウジング30には、ロック部材11と係合する被ロック部40が設けられている。詳細には、雄ハウジング30のフード部32の上面における後端寄りの位置には、ロック溝13に嵌る幅を持った台座41が形成され、台座41の幅方向の中央部に被ロック板43が突設されている。被ロック板43は、台座41の幅の約1/3の厚さを持って全長にわたって形成されており、後面側が切り立った係止面44で、前面側が前方から後方に向けて上り勾配となったガイド面45となっている。また、台座41の前端面は、上り勾配の傾斜面42となって、ガイド面45の裾に繋がっている。
【0015】
詳しくは後記するように、両ハウジング10,30が嵌合されると、ロック部材11が弾性変位して被ロック板43に乗り上げ、両ハウジング10,30が正規に嵌合されると、ロック面14が被ロック板43を通過することでロック部材11が元姿勢に復元変位し、台座41ともども被ロック板43がロック溝13に嵌合しつつ相手のフード部32の上面に当てられる。結果、被ロック部40がロック面14に係止することで、両ハウジング10,30が正規嵌合状態にロックされるようになっている。
なお、雄ハウジング30の下面には、機器等に設けられたブラケットに差し込まれて取り付けられるカセット部47が設けられている。
【0016】
さて雄ハウジング30には、2組のショート端子50が装着されている。ショート端子50は、図4ないし図6に示すように、一対の端子片51U,51Dが上下に重なるように配されて装着され、以下ではそれぞれ、上端子片51Uと下端子片51Dと称する。
両端子片51U,51Dは、電導性に優れた金属板をプレス成形して形成されている。上端子片51Uは、後端に横長の差込部52Uを有し、その差込部52Uの一端側(図4の上側)から接触片53Uが前方に向けて延出形成されている。接触片53Uは自然状態では、図5に示すように、先端に向けて次第に下り勾配となって延出されて、その延出端が斜め上向きに屈曲され、その屈曲部54に接点部55が下向きに打ち出して形成されている。差込部52Uの他端側からは、固定接点片57が水平姿勢で前方に向けて延出形成されている。固定接点片57は、上記の接触片53Uよりも幅広で、かつ全長が長く形成されている。
【0017】
下端子片51Dは、その後端に、上記の上端子片51Uの差込部52Uと同様の横長の差込部52Dが設けられ、上端子片51Uとは逆に、差込部52Dの他端側(図4の下側)から、接触片53Dが前方に向けて延出形成されている。接触片53Dは、上端子片51Uの接触片53Uと同じように、先端に向けて次第に下り勾配となって延出されてその延出端が斜め上向きに屈曲され、その屈曲部54に接点部55が下向きに打ち出して形成されている。
【0018】
差込部52Dの一端側からは、可動接点片58が前方に向けて延出形成されている。可動接点片58は、固定接点片57と同幅である一方、全長は若干長く形成されている。可動接点片58は、先端に向けて緩い上り勾配に形成され、その緩傾斜部59の先端側の上面には、接点部60が叩き出しにより形成されている。緩傾斜部59の先には、急傾斜部62を介して一段高くなった水平な高位部63が形成され、その高位部63における正面から見た右側縁には、被押圧板64が立ち上がり形成されている。
【0019】
上下の端子片51U,51Dは、詳しくは後記するように、後端の差込部52U,52D同士を左右方向に所定寸法ずらした形態で、上下に所定間隔を開けて配され、それに伴い、両接触片53U,53Dは、同じ組の雄端子20同士の左右方向のピッチに等しい間隔を開けて配される。また、固定接点片57と可動接点片58とは上下方向に整合して重なる設定となっている。
もう一方の組のショート端子50も、同一構造かつ同一配置を持つ。
【0020】
雄ハウジング30には、ショート端子50の装着孔70が形成されている。装着孔70は、2組のショート端子50に対応して、同じ構造のものが左右2箇所に形成されている。以下、正面から見た左側のものを例に挙げて説明する。
装着孔70は、大きく分けて、中央に接点片収容部71、その左右両側に接触片収容部72L,72Rが形成されている。接点片収容部71は、上端子片51Uの固定接点片57と、下端子片51Dの可動接点片58とを収容するためのものであって、フード部32の奥面における左右のキャビティ34の間でかつ上端位置において、両接点片57,58とほぼ同幅を持って前面に開口して形成されている。接点片収容部71の上端には、図9に示すように、上端子片51Uの差込部52Uから固定接点片57が緊密に挿入可能な上挿入溝74Uが、本体部31の後面の少し手前の位置にわたって水平に形成されている。
【0021】
一方、接点片収容部71の下端には、下端子片51Dの差込部52Dから可動接点片58が挿入可能な下挿入溝74Lが形成されている。この下挿入溝74Lも、本体部31の後面の少し手前の位置にわたって形成されているが、奥端部が、差込部52Dを圧入可能な圧入部75になっているとともに、その手前側は、開口の高さが次第に高くされ、手前の所定範囲では、上挿入溝74Uの底面と連通している。
また、雄ハウジング30のフード部32の上壁における接点片収容部71と対応する位置には、図2に示すように、可動接点片58とほぼ同幅をなす逃がし溝76が、フード部32の奥面よりも少し手前の位置から、前縁に開口して形成されている。したがって、下挿入溝74Lの手前側の領域から逃がし溝76にわたり、可動接点片58の先端側が上下方向に弾性変位することを許容する変位許容空間77となっている。
【0022】
逃がし溝76の位置はまた、上記した被ロック部40の正面から見た左隣りに位置している。なお、被ロック部40の正面から見た右隣りには、右側の装着孔70に付随した逃がし溝76がほぼ対称に形成されており、上記のようにロック部材11が被ロック部40に掛かったときには、ロック部材11の左右の側縁部が各逃がし溝76を覆うようにして、フード部32の上面に当接するようになっている。
【0023】
右側の接触片収容部72Rは、上端子片51Uの接触片53Uを収容するためのものであって、フード部32の奥面における右側のキャビティ34の直上でかつ上端位置において、接触片53Uとほぼ同幅を持って前面に開口して形成されている。この接触片収容部72Rは、図7に示すように、上端の奥端部が本体部31の後面の少し手前位置に達し、上端子片51Uの差込部52Uを圧入可能な圧入部80Rになっているとともに、その手前の所定領域では、底面が下り勾配の傾斜面81Rとされ、さらに前面に至る領域では、上側のキャビティ34の上面に開口している。
また、右側の接触片収容部72Rと接点片収容部71の上面同士の間には、奥の圧入部80Rと、上挿入溝74Uの奥部とを繋ぐ連絡溝83Rが、前面に開口して形成されている。
【0024】
左側の接触片収容部72Lは、下端子片51Dの接触片53Dを収容するためのものであって、フード部32の奥面における左側のキャビティ34の直上で、かつ右側の接触片収容部72Rより所定寸法下がった位置において、接触片53Dとほぼ同幅を持って前面に開口して形成されている。この接点片収容部71Lは、図8に示すように、同じく上端の奥部が本体部31の後面の少し手前位置に達し、下端子片51Dの差込部52Dを圧入可能な圧入部80Lになっているとともに、その手前の所定領域では、底面が下り勾配の傾斜面81Lとされ、さらには前面に至る領域では、下側のキャビティ34の上面に開口している。
また、左側の接触片収容部72Lの上面と、接点片収容部71の下面との間には、それぞれの奥の圧入部80L,75同士を繋ぐ連絡溝83Lが、前面に開口して形成されている。
【0025】
ショート端子50は以下のようにして装着される。まず、上端子片51Uが、その差込部52Uを、連絡溝83Rに通して接点片収容部71と右側の接触片収容部72Rの上面に沿わせるようにして差し込まれると、差込部52Uが、上挿入溝74Uと連絡溝83Rの奥部と圧入部80Rにわたって圧入されることで抜け止めされて装着される。そのとき、接触片53Uは、図7に示すように、根元側が傾斜面81Rで受けられたのち、屈曲部54が上側のキャビティ34内に上方から突入している。
固定接点片57は、図9に示すように、上挿入溝74Uの全長に挿入され、特に前端部の上面が、フード部32の上壁の根元部分である受け面79によって受けられる。
【0026】
次に、下端子片51Dが、その差込部52Dを、連絡溝83Lに通して接点片収容部71の下面と、左側の接触片収容部72Lの上面に沿わせるようにして差し込まれると、同様に差込部52Dが、圧入部75,80Lと連絡溝83Lの奥部にわたって圧入されることで、抜け止めされて装着される。そのとき、接触片53Dは、図8に示すように、根元側が傾斜面81Lで受けられたのち、屈曲部54が下側のキャビティ34内に上方から突入している。
可動接点片58は、図9に示すように、下挿入溝74Dに挿入され、接点部60が固定接点片57における受け面79で受けられた前端部に対して弾性的に接触している。それとともに、高位部63が逃がし溝76内に嵌り、被押圧板64の上端が、被ロック部40の左隣においてフード部32の上面に突出するようになっている。
【0027】
上記した固定接点片57と可動接点片58とにより、スイッチ部85が構成されており、したがってショート端子50、すなわち上端子片51Uと下端子片51Dとは、スイッチ部85が閉じた状態で装着孔70に装着されている。
なお、右側の装着孔70に対しても、同様に1組のショート端子50、すなわち上端子片51Uと下端子片51Dとが、スイッチ部85が閉じた状態で装着されている。そのとき、可動接点片58に設けられた被押圧板64の上端は、被ロック部40の右隣においてフード部32の上面に突出するようになっている。
【0028】
このように、雄ハウジング30に対して2組のショート端子50が装着されたら、同雄ハウジング30に設けられた各キャビティ34内に、電線25の端末に接続された対応する雄端子20が挿入される。各雄端子20は、対応する接触片53U,53Dを弾性変位させ、かつタブ22を端子挿通口35から突出させつつ押し込まれ、所定位置まで押し込まれたところで、ランス36により抜け止めされて収容される。このとき、各雄端子20の本体部31の上面に、対応する接触片53U,53Dの接点部55が弾性的に押し付けられて接触する。
一方、ショート端子50のスイッチ部85は閉じているのであるから、同じ組の雄端子20同士は、ショート端子50を介して短絡された状態にある。
【0029】
また、同じ組の両電線25は、それぞれスイッチ部85を備えたショート端子50を介して接続された状態となり、言い換えると、2組あることによって、スイッチ部85が介設された2本の導電路が形成される。そしてこの実施形態では、両導電路を並列接続してさらに閉ループを形成することによって、嵌合検知回路が形成されている。
【0030】
両ハウジング10,30は、以下のようにして嵌合される。上記のように、ショート端子50並びに雄端子20が装着された雄ハウジング30は、カセット部47を相手のブラケットに差し込んで取り付けることによって、機器等(図示せず)に予め装着される。一方雌ハウジング10には、電線の端末に接続された雌端子(図示せず)が収容される。この状態から、図9の矢線に示すように、雌ハウジング10が、相手の雄ハウジング30のフード部32内に嵌合される。
嵌合が進むと、図10に示すように、ロック部材11の前端の屈曲部17が、被ロック部40における台座41の傾斜面42から被ロック板43のガイド面45に当たって、同ロック部材11が弾性変位しつつ被ロック板43に乗り上げる。
【0031】
雌ハウジング10が所定量だけ押し込まれ、すなわち正規に嵌合されると、図11に示すように、ロック溝13の前端のロック面14が、被ロック板43を通過するため、ロック部材11が復元変形しつつ、被ロック部40がロック溝13に嵌り、ロック面14で係止されることによって、両ハウジング10,30は、対向した雄端子20と雌端子同士が正規に接続された正規嵌合状態にロックされる。
このロック動作時、ロック部材11が元姿勢に復元してフード部32の上面に当接することに伴い、同ロック部材11の左右両端部が、左右の逃がし溝76の上方に突出している被押圧板64を押圧するから、同図に示すように、同被押圧板64を設けた可動接点片58の先端側が下方に押し曲げられ、接点部60が固定接点片57から離間する。
【0032】
上記により、各組のショート端子50においてスイッチ部85が開いた状態となるから、対をなす雄端子20同士の間の短絡が解除される。また、並列接続された両導電路のスイッチ部85が開放されることになるから、嵌合検知回路が切断された状態となり、これにより雌雄のハウジング10,30が正規に嵌合されたことが、電気的に検知される。
【0033】
以上説明したように本実施形態によれば、雄端子20同士の短絡機能と、雌雄のハウジング10,30の電気的な嵌合検知機能とを、共通のショート端子50を利用して果たせるようにしたから、各機能ごとに個別にショート端子を備える場合と比較すると、ショート端子50の装着スペースが少なくて済んで、雄ハウジング30が小型にでき、ひいてはコネクタ全体の小型化に寄与できる。また、1種類のショート端子50を製造すれば良いのであるから、製造コストの低減も図ることができる。
さらに、両ハウジング10,30が正規嵌合して初めて動作するロック部材11の復元動作を利用して嵌合検知回路を切る構造であるから、嵌合検知を高い信頼性を持って行うことができる。その上、それぞれにスイッチ部85を介設した2本の導電路を並列接続して嵌合検知回路が形成されているから、誤検知をより確実に防止できる。
【0034】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では、端子金具同士の短絡箇所が2箇所ある場合を例示したが、1箇所若しくは、装着される端子金具の数によっては3箇所以上設けられてもよい。
(2)嵌合検知を行う箇所についても、同様に1箇所のみでも、また3箇所以上であってもよい。
(3)上記実施形態とは逆に、ショート端子を雌ハウジング側に装着するようにしてもよい。
(4)また、ロック部材と被ロック部とは、上記実施形態とは逆のハウジング側に設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る雄ハウジングの正面図
【図2】同平面図
【図3】同背面図
【図4】ショート端子の平面図
【図5】同側面図
【図6】同斜視図
【図7】図1のX−X線断面図
【図8】図1のY−Y線断面図
【図9】図1のZ−Z線における雌雄のハウジングの嵌合前の断面図
【図10】同嵌合途中の断面図
【図11】同嵌合完了時の断面図
【符号の説明】
【0036】
10…雌ハウジング
11…ロック部材(ロック機構部)
13…ロック溝
14…ロック面
20…雄端子(端子金具)
30…雄ハウジング
40…被ロック部(ロック機構部)
50…ショート端子
51U,51D…端子片
53U,53D…接触片(接触部)
57…固定接点片
58…可動接点片(可動接点)
64…被押圧部(係合部)
70…装着孔
85…スイッチ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子の短絡機能と、ハウジングの電気的な嵌合検知機能とを有するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端子の短絡機能と、ハウジングの電気的な嵌合検知機能とを備えたコネクタとして、特許文献1に記載されたものが知られている。
このものは、雌雄一対のハウジングのうちの雌ハウジング(正確には同雌ハウジングに装着されるリテーナ)に、雌ハウジングに収容された隣り合う雌端子の間にわたって接触して短絡する第1ショート端子が装着されるとともに、雌端子が収容されない空の隣り合ったキャビティにわたって第2ショート端子が装着された構造であって、雌雄のハウジングが嵌合されると、雄ハウジング側に設けられたリブが第1ショート端子を雌端子から離間させて、雌端子同士の短絡が解除されるとともに、空のキャビティ内に相手の隣り合った雄端子が挿入されて、両雄端子間が第2ショート端子で接続され、これにより嵌合検知回路が閉じた状態となって、電気的な嵌合検知がなされるものである。
【特許文献1】特開平5−190233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の従来手段では端的には、短絡用と嵌合検知用のショート端子が別々に設けられて異なった場所に装着されていたため、部品点数が多くまた装着スペースにも多くを要し、また両雄端子間が第2ショート端子で接続されるタイミングにはある程度の幅が出るために、より高い信頼性を持って正規嵌合の検知を行えるようにさらなる改良が切望されていた。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、部品点数を抑えかつ高い信頼性を持って、端子の短絡機能とハウジングの電気的な嵌合検知機能を果せるようにするところにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、互いに嵌合可能な一対のハウジングを備え、いずれか一方のハウジングには、このハウジングに収容された端子金具同士を短絡可能なショート端子が装着され、このショート端子には接続と切断とが切り替え可能なスイッチ部が設けられているとともに、このショート端子を介設した嵌合検知回路が構成され、かつ前記両ハウジングの間には、両ハウジングが正規に嵌合された場合にロックするロック機構部が設けられ、前記ショート端子の前記スイッチ部は常には接続状態にあり、前記両ハウジングが正規嵌合した場合に前記ロック機構部と係合して切断状態とされる構成としたところに特徴を有する。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記ロック機構部は、一方のハウジングと他方のハウジングとに、弾性変位可能なロック部材とこのロック部材に係止可能な被ロック部とが設けられ、前記両ハウジングは前記ロック部材が弾性変位して前記被ロック部を通過することを伴って嵌合され、正規嵌合されたところで前記ロック部材が復元変位して前記被ロック部に係止するとともに、前記ショート端子の前記スイッチ部と係合してこれを切断する構成としたところに特徴を有する。
【0006】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記ショート端子は、前記端子金具に個別に接触する接触部を有する一対の端子片を備え、一方の端子片には相手の端子片に対して接離可能な可動接点が設けられて前記スイッチ部が形成されているとともに、前記可動接点には、前記ロック機構部と係合してこの可動接点を前記相手の端子片から離間する方向に変位させる係合部が設けられているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
<請求項1の発明>
ショート端子はスイッチ部が閉じた状態で一方のハウジングに装着され、同ハウジングに収容された端子金具同士が短絡された状態にある。両ハウジングが嵌合され、正規嵌合に至るとロック機構部によって両ハウジング間がロックされるが、このロック動作に伴ってショート端子のスイッチ部が切断され、端子金具間の短絡が解除されるとともに、嵌合検知回路が切断されることで電気的な嵌合検知がなされる。
端子の短絡機能とハウジングの電気的な嵌合検知機能とを、共通のショート端子を利用して果たせるようにしたから、ショート端子の装着スペースが少なくて済んで、ハウジングの小型化に寄与できるとともに、1種類のショート端子を製造すれば良いのであるから、製造コストの低減も図ることができる。また、両ハウジングが正規嵌合して初めて動作するロック機構部を利用して嵌合検知回路を切る構造であるから、嵌合検知を高い信頼性を持って行うことができる。
【0008】
<請求項2の発明>
両ハウジングは、ロック部材が弾性変位して相手の被ロック部を通過しつつ次第に嵌合され、正規嵌合に至ると、ロック部材が復元変位して被ロック部に係止されることで両ハウジング間がロックされる。復元変位したロック部材と係合することで、ショート端子のスイッチ部が切断され、端子金具間の短絡が解除されるとともに、嵌合検知回路が切断される。
<請求項3の発明>
ショート端子は、各端子片の接触部が対応する端子金具に個別に接触し、かつ一方の端子片に突設された可動接点が相手の端子片に接触しすなわちスイッチ部が接続された状態で装着され、端子金具同士が短絡状態とされる。両ハウジングが正規嵌合されてロック機構部によってロックされると、ロック機構部のロック動作に伴い係合部を介して可動接点が相手の端子片から離間し、すなわちスイッチ部が切断された状態となり、端子金具間の短絡が解除されるとともに、嵌合検知回路が切断される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図11に基づいて説明する。本実施形態では、エアバッグ回路用のコネクタを例示しており、図9に示すように、互いに嵌合される雌側のコネクタハウジング10(以下、雌ハウジング10)と、雄側のコネクタハウジング30(以下、雄ハウジング30)とを備えており、雄ハウジング30側に2組のショート端子50が装着されている。
以下では、各ハウジング10,30について、嵌合面側を前面として説明する。
【0010】
雄ハウジング30は合成樹脂製であって、図1,図7等に示すように、若干扁平なブロック状をなす本体部31の前面に、横長矩形状のフード部32が形成されており、後記するように、フード部32内には相手の雌ハウジング10が嵌合されるようになっている。
本体部31内には、雄端子20を収容するための図示4個のキャビティ34が、前後方向を向いた姿勢で形成されている。雄端子20は、図7に概略を示すように、縦長断面の箱状をなす本体部21の前面からタブ22が突設された形状であって、本体部21の後方に設けられたバレル23をかしめることで、電線25の端末に接続されている。
【0011】
上記したキャビティ34は、図1に示すように、正面から見た左側の2個と、右側の2個とがそれぞれ同じ組をなしており、各組のキャビティ34同士は、上下に若干ずれた位置において、左右方向に所定ピッチを開けた配置で形成されている。各キャビティ34は、図3に示すように、やや横長の長方形断面をなし、前面には端子挿通口35が開口されているとともに、幅方向の一側(同図の左側)にはランス36が設けられている。
キャビティ34内には、電線25の端末に接続された雄端子20が、横倒しにされた姿勢で後方から挿入され、図7に示すように、所定位置まで挿入されたところで、ランス36が本体部21に開口された係止孔24に嵌り、雄端子20はタブ22を端子挿通口35からフード部32内に突出させた状態で、抜け止めされて収容されている。
【0012】
一方の雌ハウジング10は、同じく合成樹脂製であって、図9に示すように、上記した雄ハウジング30のフード部32内に嵌合されるブロック状に形成されている。雌ハウジング10には、図示はしないが、4個のキャビティが雄ハウジング30のキャビティ34と対応して形成され、各キャビティには、電線の端末に接続された雌端子が後方から挿入され、キャビティ内に設けられたランスにより抜け止めされて収容されている。
【0013】
雌ハウジング10の上面には、両ハウジング10,30を正規嵌合状態にロックするためのロック部材11が設けられている。このロック部材11は、図1の鎖線にも示すように、幅広の板状をなし、雌ハウジング10の上面の後端に立設された支持部12に基端が一体形成されて、そこから雌ハウジング10の前端に向けて延出した片持ち状に形成され、延出端側が上下方向に弾性変位可能となっている。ロック部材11には、幅方向の中央部において、延出端から少し入った位置から基端に開口するようにしてロック溝13が切られており、その前端がロック面14となっている。ロック部材11の延出端には、前方の斜め上方を向いた操作部16が形成されている。
【0014】
相手の雄ハウジング30には、ロック部材11と係合する被ロック部40が設けられている。詳細には、雄ハウジング30のフード部32の上面における後端寄りの位置には、ロック溝13に嵌る幅を持った台座41が形成され、台座41の幅方向の中央部に被ロック板43が突設されている。被ロック板43は、台座41の幅の約1/3の厚さを持って全長にわたって形成されており、後面側が切り立った係止面44で、前面側が前方から後方に向けて上り勾配となったガイド面45となっている。また、台座41の前端面は、上り勾配の傾斜面42となって、ガイド面45の裾に繋がっている。
【0015】
詳しくは後記するように、両ハウジング10,30が嵌合されると、ロック部材11が弾性変位して被ロック板43に乗り上げ、両ハウジング10,30が正規に嵌合されると、ロック面14が被ロック板43を通過することでロック部材11が元姿勢に復元変位し、台座41ともども被ロック板43がロック溝13に嵌合しつつ相手のフード部32の上面に当てられる。結果、被ロック部40がロック面14に係止することで、両ハウジング10,30が正規嵌合状態にロックされるようになっている。
なお、雄ハウジング30の下面には、機器等に設けられたブラケットに差し込まれて取り付けられるカセット部47が設けられている。
【0016】
さて雄ハウジング30には、2組のショート端子50が装着されている。ショート端子50は、図4ないし図6に示すように、一対の端子片51U,51Dが上下に重なるように配されて装着され、以下ではそれぞれ、上端子片51Uと下端子片51Dと称する。
両端子片51U,51Dは、電導性に優れた金属板をプレス成形して形成されている。上端子片51Uは、後端に横長の差込部52Uを有し、その差込部52Uの一端側(図4の上側)から接触片53Uが前方に向けて延出形成されている。接触片53Uは自然状態では、図5に示すように、先端に向けて次第に下り勾配となって延出されて、その延出端が斜め上向きに屈曲され、その屈曲部54に接点部55が下向きに打ち出して形成されている。差込部52Uの他端側からは、固定接点片57が水平姿勢で前方に向けて延出形成されている。固定接点片57は、上記の接触片53Uよりも幅広で、かつ全長が長く形成されている。
【0017】
下端子片51Dは、その後端に、上記の上端子片51Uの差込部52Uと同様の横長の差込部52Dが設けられ、上端子片51Uとは逆に、差込部52Dの他端側(図4の下側)から、接触片53Dが前方に向けて延出形成されている。接触片53Dは、上端子片51Uの接触片53Uと同じように、先端に向けて次第に下り勾配となって延出されてその延出端が斜め上向きに屈曲され、その屈曲部54に接点部55が下向きに打ち出して形成されている。
【0018】
差込部52Dの一端側からは、可動接点片58が前方に向けて延出形成されている。可動接点片58は、固定接点片57と同幅である一方、全長は若干長く形成されている。可動接点片58は、先端に向けて緩い上り勾配に形成され、その緩傾斜部59の先端側の上面には、接点部60が叩き出しにより形成されている。緩傾斜部59の先には、急傾斜部62を介して一段高くなった水平な高位部63が形成され、その高位部63における正面から見た右側縁には、被押圧板64が立ち上がり形成されている。
【0019】
上下の端子片51U,51Dは、詳しくは後記するように、後端の差込部52U,52D同士を左右方向に所定寸法ずらした形態で、上下に所定間隔を開けて配され、それに伴い、両接触片53U,53Dは、同じ組の雄端子20同士の左右方向のピッチに等しい間隔を開けて配される。また、固定接点片57と可動接点片58とは上下方向に整合して重なる設定となっている。
もう一方の組のショート端子50も、同一構造かつ同一配置を持つ。
【0020】
雄ハウジング30には、ショート端子50の装着孔70が形成されている。装着孔70は、2組のショート端子50に対応して、同じ構造のものが左右2箇所に形成されている。以下、正面から見た左側のものを例に挙げて説明する。
装着孔70は、大きく分けて、中央に接点片収容部71、その左右両側に接触片収容部72L,72Rが形成されている。接点片収容部71は、上端子片51Uの固定接点片57と、下端子片51Dの可動接点片58とを収容するためのものであって、フード部32の奥面における左右のキャビティ34の間でかつ上端位置において、両接点片57,58とほぼ同幅を持って前面に開口して形成されている。接点片収容部71の上端には、図9に示すように、上端子片51Uの差込部52Uから固定接点片57が緊密に挿入可能な上挿入溝74Uが、本体部31の後面の少し手前の位置にわたって水平に形成されている。
【0021】
一方、接点片収容部71の下端には、下端子片51Dの差込部52Dから可動接点片58が挿入可能な下挿入溝74Lが形成されている。この下挿入溝74Lも、本体部31の後面の少し手前の位置にわたって形成されているが、奥端部が、差込部52Dを圧入可能な圧入部75になっているとともに、その手前側は、開口の高さが次第に高くされ、手前の所定範囲では、上挿入溝74Uの底面と連通している。
また、雄ハウジング30のフード部32の上壁における接点片収容部71と対応する位置には、図2に示すように、可動接点片58とほぼ同幅をなす逃がし溝76が、フード部32の奥面よりも少し手前の位置から、前縁に開口して形成されている。したがって、下挿入溝74Lの手前側の領域から逃がし溝76にわたり、可動接点片58の先端側が上下方向に弾性変位することを許容する変位許容空間77となっている。
【0022】
逃がし溝76の位置はまた、上記した被ロック部40の正面から見た左隣りに位置している。なお、被ロック部40の正面から見た右隣りには、右側の装着孔70に付随した逃がし溝76がほぼ対称に形成されており、上記のようにロック部材11が被ロック部40に掛かったときには、ロック部材11の左右の側縁部が各逃がし溝76を覆うようにして、フード部32の上面に当接するようになっている。
【0023】
右側の接触片収容部72Rは、上端子片51Uの接触片53Uを収容するためのものであって、フード部32の奥面における右側のキャビティ34の直上でかつ上端位置において、接触片53Uとほぼ同幅を持って前面に開口して形成されている。この接触片収容部72Rは、図7に示すように、上端の奥端部が本体部31の後面の少し手前位置に達し、上端子片51Uの差込部52Uを圧入可能な圧入部80Rになっているとともに、その手前の所定領域では、底面が下り勾配の傾斜面81Rとされ、さらに前面に至る領域では、上側のキャビティ34の上面に開口している。
また、右側の接触片収容部72Rと接点片収容部71の上面同士の間には、奥の圧入部80Rと、上挿入溝74Uの奥部とを繋ぐ連絡溝83Rが、前面に開口して形成されている。
【0024】
左側の接触片収容部72Lは、下端子片51Dの接触片53Dを収容するためのものであって、フード部32の奥面における左側のキャビティ34の直上で、かつ右側の接触片収容部72Rより所定寸法下がった位置において、接触片53Dとほぼ同幅を持って前面に開口して形成されている。この接点片収容部71Lは、図8に示すように、同じく上端の奥部が本体部31の後面の少し手前位置に達し、下端子片51Dの差込部52Dを圧入可能な圧入部80Lになっているとともに、その手前の所定領域では、底面が下り勾配の傾斜面81Lとされ、さらには前面に至る領域では、下側のキャビティ34の上面に開口している。
また、左側の接触片収容部72Lの上面と、接点片収容部71の下面との間には、それぞれの奥の圧入部80L,75同士を繋ぐ連絡溝83Lが、前面に開口して形成されている。
【0025】
ショート端子50は以下のようにして装着される。まず、上端子片51Uが、その差込部52Uを、連絡溝83Rに通して接点片収容部71と右側の接触片収容部72Rの上面に沿わせるようにして差し込まれると、差込部52Uが、上挿入溝74Uと連絡溝83Rの奥部と圧入部80Rにわたって圧入されることで抜け止めされて装着される。そのとき、接触片53Uは、図7に示すように、根元側が傾斜面81Rで受けられたのち、屈曲部54が上側のキャビティ34内に上方から突入している。
固定接点片57は、図9に示すように、上挿入溝74Uの全長に挿入され、特に前端部の上面が、フード部32の上壁の根元部分である受け面79によって受けられる。
【0026】
次に、下端子片51Dが、その差込部52Dを、連絡溝83Lに通して接点片収容部71の下面と、左側の接触片収容部72Lの上面に沿わせるようにして差し込まれると、同様に差込部52Dが、圧入部75,80Lと連絡溝83Lの奥部にわたって圧入されることで、抜け止めされて装着される。そのとき、接触片53Dは、図8に示すように、根元側が傾斜面81Lで受けられたのち、屈曲部54が下側のキャビティ34内に上方から突入している。
可動接点片58は、図9に示すように、下挿入溝74Dに挿入され、接点部60が固定接点片57における受け面79で受けられた前端部に対して弾性的に接触している。それとともに、高位部63が逃がし溝76内に嵌り、被押圧板64の上端が、被ロック部40の左隣においてフード部32の上面に突出するようになっている。
【0027】
上記した固定接点片57と可動接点片58とにより、スイッチ部85が構成されており、したがってショート端子50、すなわち上端子片51Uと下端子片51Dとは、スイッチ部85が閉じた状態で装着孔70に装着されている。
なお、右側の装着孔70に対しても、同様に1組のショート端子50、すなわち上端子片51Uと下端子片51Dとが、スイッチ部85が閉じた状態で装着されている。そのとき、可動接点片58に設けられた被押圧板64の上端は、被ロック部40の右隣においてフード部32の上面に突出するようになっている。
【0028】
このように、雄ハウジング30に対して2組のショート端子50が装着されたら、同雄ハウジング30に設けられた各キャビティ34内に、電線25の端末に接続された対応する雄端子20が挿入される。各雄端子20は、対応する接触片53U,53Dを弾性変位させ、かつタブ22を端子挿通口35から突出させつつ押し込まれ、所定位置まで押し込まれたところで、ランス36により抜け止めされて収容される。このとき、各雄端子20の本体部31の上面に、対応する接触片53U,53Dの接点部55が弾性的に押し付けられて接触する。
一方、ショート端子50のスイッチ部85は閉じているのであるから、同じ組の雄端子20同士は、ショート端子50を介して短絡された状態にある。
【0029】
また、同じ組の両電線25は、それぞれスイッチ部85を備えたショート端子50を介して接続された状態となり、言い換えると、2組あることによって、スイッチ部85が介設された2本の導電路が形成される。そしてこの実施形態では、両導電路を並列接続してさらに閉ループを形成することによって、嵌合検知回路が形成されている。
【0030】
両ハウジング10,30は、以下のようにして嵌合される。上記のように、ショート端子50並びに雄端子20が装着された雄ハウジング30は、カセット部47を相手のブラケットに差し込んで取り付けることによって、機器等(図示せず)に予め装着される。一方雌ハウジング10には、電線の端末に接続された雌端子(図示せず)が収容される。この状態から、図9の矢線に示すように、雌ハウジング10が、相手の雄ハウジング30のフード部32内に嵌合される。
嵌合が進むと、図10に示すように、ロック部材11の前端の屈曲部17が、被ロック部40における台座41の傾斜面42から被ロック板43のガイド面45に当たって、同ロック部材11が弾性変位しつつ被ロック板43に乗り上げる。
【0031】
雌ハウジング10が所定量だけ押し込まれ、すなわち正規に嵌合されると、図11に示すように、ロック溝13の前端のロック面14が、被ロック板43を通過するため、ロック部材11が復元変形しつつ、被ロック部40がロック溝13に嵌り、ロック面14で係止されることによって、両ハウジング10,30は、対向した雄端子20と雌端子同士が正規に接続された正規嵌合状態にロックされる。
このロック動作時、ロック部材11が元姿勢に復元してフード部32の上面に当接することに伴い、同ロック部材11の左右両端部が、左右の逃がし溝76の上方に突出している被押圧板64を押圧するから、同図に示すように、同被押圧板64を設けた可動接点片58の先端側が下方に押し曲げられ、接点部60が固定接点片57から離間する。
【0032】
上記により、各組のショート端子50においてスイッチ部85が開いた状態となるから、対をなす雄端子20同士の間の短絡が解除される。また、並列接続された両導電路のスイッチ部85が開放されることになるから、嵌合検知回路が切断された状態となり、これにより雌雄のハウジング10,30が正規に嵌合されたことが、電気的に検知される。
【0033】
以上説明したように本実施形態によれば、雄端子20同士の短絡機能と、雌雄のハウジング10,30の電気的な嵌合検知機能とを、共通のショート端子50を利用して果たせるようにしたから、各機能ごとに個別にショート端子を備える場合と比較すると、ショート端子50の装着スペースが少なくて済んで、雄ハウジング30が小型にでき、ひいてはコネクタ全体の小型化に寄与できる。また、1種類のショート端子50を製造すれば良いのであるから、製造コストの低減も図ることができる。
さらに、両ハウジング10,30が正規嵌合して初めて動作するロック部材11の復元動作を利用して嵌合検知回路を切る構造であるから、嵌合検知を高い信頼性を持って行うことができる。その上、それぞれにスイッチ部85を介設した2本の導電路を並列接続して嵌合検知回路が形成されているから、誤検知をより確実に防止できる。
【0034】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では、端子金具同士の短絡箇所が2箇所ある場合を例示したが、1箇所若しくは、装着される端子金具の数によっては3箇所以上設けられてもよい。
(2)嵌合検知を行う箇所についても、同様に1箇所のみでも、また3箇所以上であってもよい。
(3)上記実施形態とは逆に、ショート端子を雌ハウジング側に装着するようにしてもよい。
(4)また、ロック部材と被ロック部とは、上記実施形態とは逆のハウジング側に設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る雄ハウジングの正面図
【図2】同平面図
【図3】同背面図
【図4】ショート端子の平面図
【図5】同側面図
【図6】同斜視図
【図7】図1のX−X線断面図
【図8】図1のY−Y線断面図
【図9】図1のZ−Z線における雌雄のハウジングの嵌合前の断面図
【図10】同嵌合途中の断面図
【図11】同嵌合完了時の断面図
【符号の説明】
【0036】
10…雌ハウジング
11…ロック部材(ロック機構部)
13…ロック溝
14…ロック面
20…雄端子(端子金具)
30…雄ハウジング
40…被ロック部(ロック機構部)
50…ショート端子
51U,51D…端子片
53U,53D…接触片(接触部)
57…固定接点片
58…可動接点片(可動接点)
64…被押圧部(係合部)
70…装着孔
85…スイッチ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに嵌合可能な一対のハウジングを備え、
いずれか一方のハウジングには、このハウジングに収容された端子金具同士を短絡可能なショート端子が装着され、このショート端子には接続と切断とが切り替え可能なスイッチ部が設けられているとともに、このショート端子を介設した嵌合検知回路が構成され、
かつ前記両ハウジングの間には、両ハウジングが正規に嵌合された場合にロックするロック機構部が設けられ、
前記ショート端子の前記スイッチ部は常には接続状態にあり、前記両ハウジングが正規嵌合した場合に前記ロック機構部と係合して切断状態とされる構成としたことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記ロック機構部は、一方のハウジングと他方のハウジングとに、弾性変位可能なロック部材とこのロック部材に係止可能な被ロック部とが設けられ、前記両ハウジングは前記ロック部材が弾性変位して前記被ロック部を通過することを伴って嵌合され、正規嵌合されたところで前記ロック部材が復元変位して前記被ロック部に係止するとともに、前記ショート端子の前記スイッチ部と係合してこれを切断する構成としたことを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ショート端子は、前記端子金具に個別に接触する接触部を有する一対の端子片を備え、一方の端子片には相手の端子片に対して接離可能な可動接点が設けられて前記スイッチ部が形成されているとともに、前記可動接点には、前記ロック機構部と係合してこの可動接点を前記相手の端子片から離間する方向に変位させる係合部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のコネクタ。
【請求項1】
互いに嵌合可能な一対のハウジングを備え、
いずれか一方のハウジングには、このハウジングに収容された端子金具同士を短絡可能なショート端子が装着され、このショート端子には接続と切断とが切り替え可能なスイッチ部が設けられているとともに、このショート端子を介設した嵌合検知回路が構成され、
かつ前記両ハウジングの間には、両ハウジングが正規に嵌合された場合にロックするロック機構部が設けられ、
前記ショート端子の前記スイッチ部は常には接続状態にあり、前記両ハウジングが正規嵌合した場合に前記ロック機構部と係合して切断状態とされる構成としたことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記ロック機構部は、一方のハウジングと他方のハウジングとに、弾性変位可能なロック部材とこのロック部材に係止可能な被ロック部とが設けられ、前記両ハウジングは前記ロック部材が弾性変位して前記被ロック部を通過することを伴って嵌合され、正規嵌合されたところで前記ロック部材が復元変位して前記被ロック部に係止するとともに、前記ショート端子の前記スイッチ部と係合してこれを切断する構成としたことを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ショート端子は、前記端子金具に個別に接触する接触部を有する一対の端子片を備え、一方の端子片には相手の端子片に対して接離可能な可動接点が設けられて前記スイッチ部が形成されているとともに、前記可動接点には、前記ロック機構部と係合してこの可動接点を前記相手の端子片から離間する方向に変位させる係合部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のコネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−258012(P2007−258012A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81329(P2006−81329)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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