コネクタ
【課題】相手側コネクタとの嵌合力を低減することができるとともに斜め嵌合を防ぐことができるコネクタを提供する。
【解決手段】第2のインシュレータ部71の嵌合方向前面が第1のインシュレータ部51の嵌合方向前面よりも前方に位置した状態で第2の雌ハウジングをロックするため、第1の雌ハウジングに凹部58cを、第2の雌ハウジングに係合突起77をそれぞれ設ける。凹部58cと係合突起77との係合を解くロック解除片26dを雄型コネクタに設けた。雄型コネクタを第1、第2のハウジングから離脱するときに、第2ハウジングを雄型コネクタに係合させて第2ハウジングを雄型コネクタとともに離脱方向へ移動させ、第1のインシュレータ部51のコネクタ嵌合方向前面と第2のインシュレータ部71のコネクタ嵌合方向前面とがコネクタ嵌合方向へずれたとき、雄型コネクタとの係合を解除する突起を第2ハウジングに形成した。
【解決手段】第2のインシュレータ部71の嵌合方向前面が第1のインシュレータ部51の嵌合方向前面よりも前方に位置した状態で第2の雌ハウジングをロックするため、第1の雌ハウジングに凹部58cを、第2の雌ハウジングに係合突起77をそれぞれ設ける。凹部58cと係合突起77との係合を解くロック解除片26dを雄型コネクタに設けた。雄型コネクタを第1、第2のハウジングから離脱するときに、第2ハウジングを雄型コネクタに係合させて第2ハウジングを雄型コネクタとともに離脱方向へ移動させ、第1のインシュレータ部51のコネクタ嵌合方向前面と第2のインシュレータ部71のコネクタ嵌合方向前面とがコネクタ嵌合方向へずれたとき、雄型コネクタとの係合を解除する突起を第2ハウジングに形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はコネクタに関し、特にコネクタを相手側コネクタに嵌合するときの嵌合力を低減することができるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アウターハウジング(第1のハウジング)と可動ターミナルホルダ(第2のハウジング)とを備える雌型コネクタが知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
アウターハウジングは固定ターミナルホルダ(第1のインシュレータ部)を有する。固定ターミナルホルダは複数の雌ターミナルの一部を保持する。固定ターミナルホルダには複数の収容空間が等間隔に形成されている。収容空間の内面には抜け止め爪と係止段差とが形成されている。
【0004】
可動ターミナルホルダは第2のインシュレータ部であり、複数の雌ターミナルの残部を保持する。可動ターミナルホルダは固定ターミナルホルダの収容空間に雌型コネクタの嵌合・離脱方向と平行な方向へ移動可能に収容される。可動ターミナルホルダの上面には段差部が形成され、可動ターミナルホルダの両側面及び下面にはそれぞれ係合凹部が形成されている。段差部は係止段差に、係合凹部は抜け止め爪にそれぞれ係合し、可動ターミナルホルダのアウターハウジングに対する嵌合・離脱方向の移動が制限される。
【0005】
可動ターミナルホルダの前端部の両側面には複数の係止爪(ロック手段)が形成されている。係止爪の両側には補助突部が一体に形成されている。係止爪は、可動ターミナルホルダを収容空間に挿入して可動ターミナルホルダの前端部が収容空間から少し突出したときに、アウターハウジングの前面と係合する。これにより、可動ターミナルホルダの前面とアウターハウジングの前面とが嵌合方向へずれた状態に維持される。
【0006】
上述の雌型コネクタの相手側コネクタである雄型コネクタは、雄コネクタハウジングと複数の雄ターミナルとを有する。
【0007】
雄コネクタハウジングはフード部とターミナル保持部とを有する。フード部はアウターハウジングを受け容れる。フード部の内面には複数の係止解除片が形成されている。ターミナル保持部はフード部の後面に一体に形成されている。
【0008】
複数の雄ターミナルはターミナル保持部によって保持され、その先端部はフード部内に突出する。
【0009】
次に、両コネクタの嵌合について説明する。
【0010】
まず、上述のように、可動ターミナルホルダをアウターハウジングに組み付ける。このとき、可動ターミナルホルダの前端部が収容空間から少し突出し、可動ターミナルホルダの係止爪がアウターハウジングの前面に係合する。
【0011】
次に、雌型コネクタのアウターハウジングを雄型コネクタのフード部に挿入する。
【0012】
その途中では、可動ターミナルホルダに設けられた雌ターミナルが雄型コネクタの雄ターミナルの一部と接触するが、係止爪がアウターハウジングの前面に係合しているので、可動ターミナルホルダは動かない。
【0013】
雄型コネクタのフード部にアウターハウジングが更に入り込むと、係止解除片が補助突部を押圧して係止爪とアウターハウジングの前面との係合が解かれる。その結果、アウターハウジングがフード部の奥に達する。このとき固定ターミナルホルダに設けられた雌ターミナルが雄型コネクタの雄ターミナルの残部と接触する。
【0014】
以上のように、両コネクタの嵌合の際、複数の雌ターミナルと複数の雄ターミナルとの接触が2回に分けて行なわれるので、複数の雌ターミナルと複数の雄ターミナルとを一時に接触させる方式のコネクタに較べ、雌型コネクタと雄型コネクタとの嵌合力を低減させることができる。
【特許文献1】特開平6−111882号公報(段落0012〜0014、0017、図1、2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述の雌型コネクタでは、雄型コネクタと嵌合するときに、まず可動ターミナルホルダに設けられた複数の雌ターミナルが雄型コネクタの雄ターミナルの一部と接触するので、雌型コネクタの可動ターミナルホルダ側を押し込み難くい反面、固定ターミナルホルダ側を押し込み易い。このため、雌型コネクタの姿勢が雄型コネクタに対して傾き易く、雌型コネクタが雄型コネクタに斜めに嵌合し、いわゆるかじりが生じるおそれがあった。
【0016】
また、可動ターミナルホルダに設けられた複数の雌ターミナルが雄型コネクタの雄ターミナルの一部と接触した後は、固定ターミナルホルダに設けられた複数の雌ターミナルが雄型コネクタの雄ターミナルの残部と接触するので、やはり雌型コネクタの姿勢が雄型コネクタに対して傾き易く、雌型コネクタが雄型コネクタに斜めに嵌合するおそれがあった。
【0017】
更に、一度離脱させると可動ターミナルホルダと固定ターミナルホルダとはずれた状態に戻らない構成であった。
【0018】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題は相手側コネクタとの嵌合力を低減することができるとともに斜め嵌合を防ぐことができるコネクタを提供することである。
【0019】
また、離脱させても再嵌合できるように第1のハウジングと第2のハウジングとをずれた状態に確実に戻すことができるコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前述の課題を解決するため請求項1の発明のコネクタは、相手側コネクタの複数の相手側コンタクトのうちの一部のコンタクトに接触可能なコンタクトを保持する少なくとも1つの第1のインシュレータ部を有する第1のハウジングと、この第1のハウジングに摺動可能に組み付けられ、前記相手側コネクタの前記複数の相手側コンタクトのうちの残部のコンタクトに接触可能なコンタクトを保持する複数の第2のインシュレータ部を有する第2のハウジングと、前記第2のハウジングを前記第1のハウジングに組み付けたときの、前記第1のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面と前記第2のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面とがコネクタ嵌合方向へずれた状態を維持する初期状態ロック手段と、前記初期状態ロック手段によってロックされている前記第1、第2のハウジングに前記相手側コネクタを相対的に所定量押し込むと、前記相手側コネクタの複数の相手側コンタクトのうちの一部のコンタクトが前記第1、第2のインシュレータ部の一方と嵌合するとともに、前記第2のハウジングと前記第1のハウジングとの前記ロックが解除され、更に前記相手側コネクタを押し込むと、前記第1、第2のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面がほぼ面一になる位置まで前記第1、第2のハウジングの一方が相対移動して、前記相手側コネクタの複数の相手側コンタクトのうちの残部のコンタクトを前記第1、第2のインシュレータ部の他方と嵌合させる多段嵌合手段と、前記第1、第2のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面がほぼ面一の状態の前記第1、第2のハウジングから前記相手側コネクタを相対的に離脱するときに、前記第1、第2ハウジングの一方を前記相手側コネクタに係合させて前記第1、第2ハウジングの一方を前記相手側コネクタとともに相対的に離脱方向へ移動させ、前記初期状態ロック手段のロック機能が機能しうるようになったときに、前記第1、第2ハウジングの一方と前記相手側コネクタとの係合を解除する初期状態復帰手段とを備え、前記第1のインシュレータ部と前記第2のインシュレータ部とは交互に配置されていることを特徴とする。
【0021】
上述のように第1のインシュレータ部と第2のインシュレータ部とが交互に配置されているので、コネクタを相手側コネクタに嵌合させるときに、コネクタが相手側コネクタに対してまっすぐに挿入され易くなる。
【0022】
また、初期状態復帰手段を備えているので、相手側コネクタを離脱するときに、前記第1のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面と前記第2のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面とがコネクタ嵌合方向へずれた状態に確実に戻すことができる。
【0023】
請求項2の発明は、請求項1記載のコネクタにおいて、前記第1のハウジングの前記第1のインシュレータ部が1つであり、前記第2のハウジングの前記第2のインシュレータ部が2つであり、前記第2のハウジングを前記第1のハウジングに組み付けたとき、前記第2のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面が前記第1のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面よりもコネクタ嵌合方向前側に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したようにこの発明のコネクタによれば、相手側コネクタとの嵌合力を低減することができるとともに斜め嵌合を防ぐことができる。
【0025】
また、相手側コネクタを離脱するとき、第1のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面と第2のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面とがコネクタ嵌合方向へずれた状態に確実に戻すことができ、再度嵌合するときに備えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1はこの発明の一実施形態に係る雌型コネクタとこのコネクタの相手側コネクタである雄型コネクタとの嵌合状態を雌型コネクタの一面側から見た状態を示す破砕斜視図、図2は図1に示す雌型コネクタの第1の雌ハウジングに第2の雌ハウジングを組み付ける前の状態を雌コネクタの他面側から見た斜視図、図3は図1に示す雌型コネクタの第1の雌ハウジングに第2の雌ハウジングを組み付け、第1、第2の雌ハウジングの嵌合方向前面をずらした状態を雌型コネクタの一面側から見た斜視図、図4は図1に示す雌型コネクタの第1の雌ハウジングに第2の雌ハウジングを組み付け、第1、第2の雌ハウジングの嵌合方向前面をほぼ面一にした状態を雌型コネクタの一面側から見た斜視図である。
【0028】
図1に示すように、雌型コネクタ(コネクタ)1は後述の雄型コネクタ(相手側コネクタ)22に嵌合される。雌型コネクタ1は雌コンタクト3(図2参照)と第1の雌ハウジング(第1のハウジング)5と第2の雌ハウジング(第2のハウジング)7と備える。
【0029】
雌コンタクト3はソケット型のコンタクトであり、ソケット部3a(図2参照)を有する。ソケット部3aは雄型コネクタ22の雄コンタクト(ピンコンタクト)24の接触部24a(図6参照)を受け容れて接触する。
【0030】
図2〜4に示すように、第1の雌ハウジング5は1つの第1のインシュレータ部51と1対のガイド部52と一対の結合部54とを有する。それらは絶縁性を有する合成樹脂で一体に形成されている。
【0031】
第1のインシュレータ部51はほぼ平板状であり、複数の第1のコンタクト収容孔51aを有する。複数の第1のコンタクト収容孔51aは第1のインシュレータ部51の幅方向W1に沿って2列に並んでいる。また、複数の第1のコンタクト収容孔51aは嵌合方向D1へ延びている。各第1のコンタクト収容孔51a内に雌コンタクト3が挿入されている。
【0032】
第1のインシュレータ部51の厚さ方向T1の一端面にはリテーナ収容穴51bが形成されている。リテーナ収容穴51bは第1のインシュレータ部51の幅方向W1へ延びている。リテーナ収容穴51bにはリテーナ61が収容される。リテーナ61は第1のコンタクト収容孔51aに挿入された雌コンタクト3を保持する。
【0033】
一対のガイド部52は第1のインシュレータ部51の両側に間隔をあけて配置されている。ガイド部52はほぼ角柱状である。ガイド部52の第1のインシュレータ部51と幅方向W1で対向する面にはガイド溝52aが形成されている。ガイド溝52aは嵌合方向D1へ延びている。一対のガイド部52の後部には突片52bが形成されている。
【0034】
一対のガイド部52の側面にはボックス固定用ロック53が設けられている。ボックス固定用ロック53は突片52bと嵌合方向D1で対向する。ボックス固定用ロック53は傾斜面53aを有する。ボックス固定用ロック53はガイド部52から突出したり、ガイド部52内に引き込んだりする。
【0035】
一対の結合部54はそれぞれ板状であり、第1のインシュレータ部51の幅方向W1へ延び、第1のインシュレータ部51と一対のガイド部52とを結合する。
【0036】
ガイド部52から延設された規制片57がガイド部52と一体に形成されている。規制片57は板状である。規制片57は係止孔57aを有する。
【0037】
第1のインシュレータ部51の幅方向W1の両端部にはそれぞれ係止片58が一体に形成されている。係止片58は係合部58aとばね部58bとを有する(図10、11参照)。係合部58aはほぼ三角プレート状であり、凹部58cと第1の傾斜面(多段嵌合手段)58dと第2の傾斜面58eとを有する。ばね部58bは片持梁状であり、第1のインシュレータ部51の幅方向W1へ弾性変形可能である。
【0038】
一対の結合部54と第1のインシュレータ部51とガイド部52とで囲まれた2つの空間は挿入孔59である。挿入孔59には後述する第2のインシュレータ部71が挿入される。
【0039】
第2の雌ハウジング7は2つの第2のインシュレータ部71と1対のスライド片73と一対の結合部75とを有する。それらは絶縁性を有する合成樹脂で一体に形成されている。
【0040】
2つの第2のインシュレータ部71はそれぞれほぼ平板状であり、複数の第2のコンタクト収容孔71aと一つのリテーナ収容穴71bとを有する。第2のインシュレータ部71の厚さは第1のインシュレータ部51の厚さにほぼ等しい。複数の第2のコンタクト収容孔71aは第2のインシュレータ部71の幅方向W2に沿って2列に並んでいる。また、複数の第2のコンタクト収容孔71aは嵌合方向D1へ延びている。各第2のコンタクト収容孔71a内に雌コンタクト3が挿入されている。リテーナ収容穴71bは第2のインシュレータ部71の厚さ方向T2の一端面に形成されている。リテーナ収容穴71bは第2のインシュレータ部71の幅方向W2へ延びている。リテーナ収容穴71bにはリテーナ81が収容される。リテーナ81は第2のコンタクト収容孔71aに挿入された雌コンタクト3を保持する。
【0041】
第2のインシュレータ部71の厚さ方向T2の両端面にはそれぞれ突起71cが形成されている。突起71cは第2のインシュレータ部71の幅方向W2へ延びている。突起71cは第1の雌ハウジング5の規制片57の係止孔57a内に配置される。突起71cは係止孔57a内で嵌合方向D1及び離脱方向D2に沿って所定距離だけ移動できる。これにより、第1の雌ハウジング5に対する第2の雌ハウジング7の嵌合方向D1及び離脱方向D2の動きが規制されるとともに、第1の雌ハウジング5からの第2の雌ハウジング7の脱落が防止される。
【0042】
第2のインシュレータ部71のインシュレータ部51に対向する面にはそれぞれ係合突起77が形成されている(図10参照)。係合突起77は傾斜面77aを有する。係合突起77は第1の雌ハウジング5の係止片58の係合部58aと係合する。係合突起77と係合部58aとで初期状態ロック手段が構成される。初期状態とは、第2の雌ハウジング7を第1の雌ハウジング5に組み付けたときの、第1のインシュレータ部51のコネクタ嵌合方向前面51f(図7A参照)と第2のインシュレータ部71のコネクタ嵌合方向前面71f(図7A参照)とがコネクタ嵌合方向D1へずれた状態をいう。この初期状態になってから嵌合作業を行うことが可能になる。
【0043】
一対のスライド片73は第2のインシュレータ部71の幅方向W2の一端面に形成されている。スライド片73の断面形状はT字形である。
【0044】
一対の結合部75はそれぞれ板状であり、第2のインシュレータ部71の幅方向W2へ延び、2つの第2のインシュレータ部71を間隔をあけた状態で結合する。この間隔は第1のインシュレータ部51の幅よりも若干大きい。
【0045】
一対の結合部75と2つの第2のインシュレータ部71とで囲まれた空間は挿入孔78である。挿入孔78には第1のインシュレータ部51が挿入される。
【0046】
一対の結合部75の中央部にはそれぞれ突起(初期状態復帰手段)75aが形成されている。突起75aは第2のインシュレータ部71の幅方向W2へ延びている。また、一対の結合部75の中央部にはそれぞれ突起75aに隣接するようにスリット75bが形成されている。スリット75bは第2のインシュレータ部71の幅方向W2へ延びている。このスリット75bによって突起75aは第2のインシュレータ部71の厚さ方向T2に沿って弾性変位可能である。
【0047】
図1に示すように、雌型コネクタ1はボックス11に収容される。ボックス11の雌型コネクタ用挿入口には突片11aが形成されている。突片11aは雌型コネクタ1がボックス11に挿入されるときに、雌型コネクタ1のボックス固定用ロック53の傾斜面53aを押圧してボックス固定用ロック53をガイド部52内に引っ込め、雌型コネクタ1が所定の位置までボックス11に挿入されたら、傾斜面53aとの係合を解く。その結果、雌型コネクタ1のボックス固定用ロック53はガイド部52から突出し、ボックス11の突片11aを雌型コネクタ1の突片52bとボックス固定用ロック53とで挟む。これにより、雌型コネクタ11はボックス11に固定される。
【0048】
図5は図1に示す雄コネクタを一面側から見た破砕斜視図、図6は図1に示す雄コネクタを他面側から見た破砕斜視図である。
【0049】
次に雄型コネクタ22について説明する。
【0050】
図5、6に示すように、雄型コネクタ22は複数の雄コンタクト(相手側コンタクト)24と雄ハウジング26とを備え、ECUボード29に実装される。
【0051】
雄コンタクト24はほぼL字形に折り曲げられたピンコンタクトである。雄コンタクト24は接触部24aと保持部(図示せず)とプレスフィット部24cと折曲部24dとを有する。接触部24aは雌コンタクト3と接触する。保持部は後述するハウジング本体26aに保持される。プレスフィット部24cはECUボード29のスルーホール29aに圧入される。折曲部24dは保持部24bとプレスフィット部24cとを連結する。折曲部24dはほぼ直角に折り曲げられている。
【0052】
雄ハウジング26はハウジング本体26aとフード26bとボード固定部26cとを備える。
【0053】
ハウジング本体26aはほぼ板状であり、雄コンタクト24の保持部を保持している。ハウジング本体26aの前部には一対のロック解除片26dが形成されている(図9参照)。ロック解除片26dは傾斜面26eを有する。
【0054】
フード26bはハウジング本体26aの前部に一体に連結されている。フード26bの内側には傾斜面26fが形成されている(図12参照)。フード26bは雌型コネクタ1を覆う。また、フード26bは雄型コネクタ22を雌型コネクタ1に嵌合離脱するときに、ボックス11によって嵌合方向D1及び離脱方向D2へガイドされる。
【0055】
ボード固定部26cはハウジング本体26aの後部の両端部に一体に連結されている。ボード固定部26cにはボルト12によってECUボード29が固定されている。ECUボード29はボード収容ケース41内に収容される。ボード収容ケース41はハウジング本体26aに固定される。
【0056】
次に、雌型コネクタ1の第1の雌ハウジング5と第2の雌ハウジング7との組み付けに関して説明する。
【0057】
まず、図2に示す状態からリテーナ61を第1のインシュレータ部51のリテーナ収容穴51bに挿入し、雌コンタクト3を第1のインシュレータ部51に固定する。同様に、リテーナ81を第2のインシュレータ部71のリテーナ収容穴71bに挿入し、雌コンタクト3を第2のインシュレータ部71に固定する。
【0058】
次に、第2の雌ハウジング7の第2のインシュレータ部71を第1の雌ハウジング5の挿入孔59に通す。このとき、第2の雌ハウジング7のスライド片73を第1の雌ハウジングのガイド部52のガイド溝52aに係合させるとともに、第2のインシュレータ部71の突起71cを第1の雌ハウジング5の規制片57の係止穴57aに配置する。
【0059】
その結果、第1の雌ハウジング5の第1のインシュレータ部51が第2の雌ハウジング7の挿入孔78に挿入され、図3、4に示すように、第1の雌ハウジング5と第2の雌ハウジング7との組み付けが完了する。
【0060】
組み付け後、第2の雌ハウジング7を嵌合方向D1及び離脱方向D2へ移動させようとしても、規制片57の係止孔57aに突起71cが係合しているので、第2の雌ハウジング7の動きが規制片57によって規制され、第2の雌ハウジング7が第1の雌ハウジング5から離脱しない。
【0061】
図7Aは初期状態の雌型コネクタに雄型コネクタを嵌合させた状態を示す概念図、図7Bは初期状態が解除され雌型コネクタの第2の雌ハウジングが後退し始めた状態を示す概念図、図7Cは第2の雌ハウジングが更に後退した状態を示す概念図、図7Dは雌型コネクタに雄型コネクタが完全に嵌合した状態を示す概念図、図8は初期状態の雌型コネクタに雄型コネクタを嵌合させた状態を示す破砕斜視図、図9は雌型コネクタの第1の雌ハウジングの係止片による第2の雌ハウジングのロック状態を示す拡大破砕斜視図、図10は雌型コネクタの第1の雌ハウジングの係止片と第2の雌ハウジングとのロック状態が解除された状態を示す拡大破砕斜視図、図11は雌型コネクタの第1の雌ハウジングの嵌合方向前面と第2の雌ハウジングの嵌合方向前面とがほぼ面一になった状態を示す拡大破砕斜視図である。なお、図10において相手側コネクタの図示が省略されている。また、図8、9、11において雄コンタクトが省略されている。
【0062】
次に、雌型コネクタ1と雄型コネクタ22との嵌合について図7〜11に基づいて説明する。
【0063】
まず、図7Aに示すように、第2の雌ハウジング7が止まるまで第2の雌ハウジング7を嵌合方向D1へ移動させる。
【0064】
このとき、係合突起77の傾斜面77aが係止片58の係合部58aの第1の傾斜面58dと接触し、係合突起77がばね部58bのばね力に抗して係止片58を押し退ける。その後、係合突起77は係止片58の凹部58cと係合し、係止片58はばね部58bのばね力によって元の状態に戻り、図9に示す状態になる。
【0065】
この状態では、係合突起77が凹部58cと係合しているので、第2の雌ハウジング7を離脱方向D2へ押しても動かない。このとき、第2のインシュレータ部71の嵌合方向前面71fは第1のインシュレータ部51の嵌合方向前面51fよりも嵌合方向D1で前方に位置する(図3参照)。
【0066】
次に、雄型コネクタ22を第2の雌ハウジング7の方へ押し込む。その結果、第2のインシュレータ部71に設けられた雌コンタクト3のソケット部3a(図2参照)と雄型コネクタ22の雄コンタクト24の接触部24aとが接触する(図7A参照)。
【0067】
このとき、雌コンタクト3と雄コンタクト24との摩擦力によって雌型コネクタ1の第2の雌ハウジング7が押されるが、係合突起77が係止片58の凹部58cと係合しているので、第2の雌ハウジング7は動かない。
【0068】
その後、更に雄型コネクタ22を雌型コネクタ1の方へ押し込むと、雄型コネクタ22のロック解除片26dが第1の雌ハウジング5の係止片58の係合部58aの第1の傾斜面58dと接触し、ロック解除片26dが係止片58を押し退ける。その結果、係止片58の凹部58cと係合突起77との係合が解かれ(図7B、図10参照)、その後、第2の雌ハウジング7が雄型コネクタ22とともに動く(図7C参照)。最終的に係合部58aの第2の傾斜面58eがロック解除片26dの第2の傾斜面26eと係合し、係止片58は元の状態に戻る。
【0069】
以上のようにして、雄型コネクタ22の雄コンタクト24が第1の雌ハウジング5の第1のインシュレータ部51の雌コンタクト3に接触し、雄型コネクタ22が雌型コネクタ1に完全に嵌合される(図7D、図11参照)。
【0070】
図12は雌型コネクタの第2の雌ハウジングの結合片が弾性変形不能な状態を示す断面斜視図、図13は結合片が弾性可能になった状態を示す断面斜視図、図14は結合片が弾性変形し、第2の雌ハウジングの結合部の突起と雄型コネクタの雄ハウジングとの係合が解除された状態を示す断面斜視図である。
【0071】
次に、図12〜14に基づいて離脱時の動作について説明する。
【0072】
雄型コネクタ22を雌型コネクタ1から離脱させるには、雄型コネクタ22を雌型コネクタ1から離れるように引っ張ればよい。
【0073】
離脱初期の段階では、図12に示すように、一対の結合部75の間に第1のインシュレータ部51が介在するので、結合部75のそれぞれは相手側に向かう方向(厚さ方向T2)へ弾性変形できない。その結果、結合部75の突起75aと雄型コネクタ22のフード部26bの傾斜面26fとが係合し、第2の雌ハウジング7が雄型コネクタ22とともに離脱方向D2へ移動する。
【0074】
第2の雌ハウジング7が初期状態まで動くと、図13に示すように、一対の結合部75の間から第1のインシュレータ部51が抜ける。その結果、結合部75のそれぞれは相手側に向かう方向(厚さ方向T2)へ弾性変形可能となる。
【0075】
雄型コネクタ22が離脱方向D2へ更に移動すると、フード部26bの傾斜面26fは結合部75の突起75aを押し退ける。その結果、フード部26bの傾斜面26fと結合部75の突起75aとの係合が解かれ、雄型コネクタ22は雌型コネクタ1から離脱する。このとき、係止片58の凹部58cと係合突起77とが係合し、初期状態に戻る(図9参照)。
【0076】
この実施形態によれば、雌型コネクタ1と雄型コネクタ22との嵌合において、最初に、第2のインシュレータ部71の雌コンタクト3を雄コンタクト24の一部に接触させ、その後、第1のインシュレータ部51の雌コンタクト3を残りの雄コンタクト24に接触させるので、全ての雌コンタクトを一時に雄コンタクト24に接触させる方式に較べ、嵌合力を分散させることができる。
【0077】
また、第1のインシュレータ部51の両側に第2のインシュレータ部71が配置されているので、第1、第2の雌ハウジング5、7の傾きが防止される。
【0078】
更に、第2の雌ハウジング7に突起75aを設けたので、雄型コネクタ22を雌型コネクタ1から離脱するときに、雌型コネクタ1を確実に初期状態に戻すことができ、次の雄型コネクタ22との嵌合に備えることができる。
【0079】
なお、この実施形態では、第1のインシュレータ部51は1つで、第2のインシュレータ部71は2つであるが、第1、第2のインシュレータ部51,71の数はこれに限られず、第1のインシュレータ部51は1つ以上であればよく、第2のインシュレータ部71は第1のインシュレータ部51よりも1つ多ければよい。要は第1のインシュレータ部51と第2のインシュレータ部71とが嵌合方向D1と直交する方向に交互に配置されればよい。
【0080】
また、第2の雌ハウジング7が第1の雌ハウジング5にロックされたとき、第2のインシュレータ部71の嵌合方向前面71fが第1のインシュレータ部51の嵌合方向前面51fよりも嵌合方向D1で前方に位置するようにしたが、必ずしもこのように構成する必要は無く、第2の雌ハウジング7が初期状態ロック手段によって第1の雌ハウジング5にロックされたとき、第1のインシュレータ部51の嵌合方向前面51fが第2のインシュレータ部71の嵌合方向前面71fよりも嵌合方向D1の前方に位置するようにしてもよい。
【0081】
なお、ロック手段として凹部58cと係合突起77との組合せを採用したが、ロック手段はこれに限られない。
【0082】
また、多段嵌合手段として、第1の傾斜面26iと係合する第1の傾斜面58dを採用したが、多段嵌合手段はこれに限られない。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1はこの発明の一実施形態に係る雌型コネクタとこのコネクタの相手側コネクタである雄型コネクタとの嵌合状態を雌型コネクタの一面側から見た状態を示す破砕斜視図である。
【図2】図2は図1に示す雌型コネクタの第1の雌ハウジングに第2の雌ハウジングを組み付ける前の状態を雌コネクタの他面側から見た斜視図である。
【図3】図3は図1に示す雌型コネクタの第1の雌ハウジングに第2の雌ハウジングを組み付け、第1、第2の雌ハウジングの嵌合方向前面をずらした状態を雌型コネクタの一面側から見た斜視図である。
【図4】図4は図1に示す雌型コネクタの第1の雌ハウジングに第2の雌ハウジングを組み付け、第1、第2の雌ハウジングの嵌合方向前面をほぼ面一にした状態を雌型コネクタの一面側から見た斜視図である。
【図5】図5は図1に示す雄コネクタを一面側から見た破砕斜視図である。
【図6】図6は図1に示す雄コネクタを他面側から見た破砕斜視図である。
【図7A】図7Aは初期状態の雌型コネクタに雄型コネクタを嵌合させた状態を示す概念図である。
【図7B】図7Bは初期状態が解除され雌型コネクタの第2の雌ハウジングが後退し始めた状態を示す概念図である。
【図7C】図7Cは第2の雌ハウジングが更に後退した状態を示す概念図である。
【図7D】図7Dは雌型コネクタに雄型コネクタが完全に嵌合した状態を示す概念図である。
【図8】図8は初期状態の雌型コネクタに雄型コネクタを嵌合させた状態を示す破砕斜視図である。
【図9】図9は雌型コネクタの第1の雌ハウジングの係止片による第2の雌ハウジングのロック状態を示す拡大破砕斜視図である。
【図10】図10は雌型コネクタの第1の雌ハウジングの係止片と第2の雌ハウジングとのロック状態が解除された状態を示す拡大破砕斜視図である。
【図11】図11は雌型コネクタの第1の雌ハウジングの嵌合方向前面と第2の雌ハウジングの嵌合方向前面とがほぼ面一になった状態を示す拡大破砕斜視図である。
【図12】図12は雌型コネクタの第2の雌ハウジングの結合片が弾性変形不能な状態を示す断面斜視図である。
【図13】図13は結合片が弾性可能になった状態を示す断面斜視図である。
【図14】図14は結合片が弾性変形し、第2の雌ハウジングの結合部の突起と雄型コネクタの雄ハウジングとの係合が解除された状態を示す断面斜視図である。
【符号の説明】
【0084】
1 雌型コネクタ(コネクタ)
3 雌コンタクト(コンタクト)
5 第1の雌ハウジング(第1のハウジング)
51 第1のインシュレータ部
58c 凹部
58d 第1の傾斜面(多段嵌合手段)
7 第2の雌ハウジング(第2のハウジング)
71 第2のインシュレータ部
77 係合片
22 雌型コネクタ
24 雄コンタクト
【技術分野】
【0001】
この発明はコネクタに関し、特にコネクタを相手側コネクタに嵌合するときの嵌合力を低減することができるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アウターハウジング(第1のハウジング)と可動ターミナルホルダ(第2のハウジング)とを備える雌型コネクタが知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
アウターハウジングは固定ターミナルホルダ(第1のインシュレータ部)を有する。固定ターミナルホルダは複数の雌ターミナルの一部を保持する。固定ターミナルホルダには複数の収容空間が等間隔に形成されている。収容空間の内面には抜け止め爪と係止段差とが形成されている。
【0004】
可動ターミナルホルダは第2のインシュレータ部であり、複数の雌ターミナルの残部を保持する。可動ターミナルホルダは固定ターミナルホルダの収容空間に雌型コネクタの嵌合・離脱方向と平行な方向へ移動可能に収容される。可動ターミナルホルダの上面には段差部が形成され、可動ターミナルホルダの両側面及び下面にはそれぞれ係合凹部が形成されている。段差部は係止段差に、係合凹部は抜け止め爪にそれぞれ係合し、可動ターミナルホルダのアウターハウジングに対する嵌合・離脱方向の移動が制限される。
【0005】
可動ターミナルホルダの前端部の両側面には複数の係止爪(ロック手段)が形成されている。係止爪の両側には補助突部が一体に形成されている。係止爪は、可動ターミナルホルダを収容空間に挿入して可動ターミナルホルダの前端部が収容空間から少し突出したときに、アウターハウジングの前面と係合する。これにより、可動ターミナルホルダの前面とアウターハウジングの前面とが嵌合方向へずれた状態に維持される。
【0006】
上述の雌型コネクタの相手側コネクタである雄型コネクタは、雄コネクタハウジングと複数の雄ターミナルとを有する。
【0007】
雄コネクタハウジングはフード部とターミナル保持部とを有する。フード部はアウターハウジングを受け容れる。フード部の内面には複数の係止解除片が形成されている。ターミナル保持部はフード部の後面に一体に形成されている。
【0008】
複数の雄ターミナルはターミナル保持部によって保持され、その先端部はフード部内に突出する。
【0009】
次に、両コネクタの嵌合について説明する。
【0010】
まず、上述のように、可動ターミナルホルダをアウターハウジングに組み付ける。このとき、可動ターミナルホルダの前端部が収容空間から少し突出し、可動ターミナルホルダの係止爪がアウターハウジングの前面に係合する。
【0011】
次に、雌型コネクタのアウターハウジングを雄型コネクタのフード部に挿入する。
【0012】
その途中では、可動ターミナルホルダに設けられた雌ターミナルが雄型コネクタの雄ターミナルの一部と接触するが、係止爪がアウターハウジングの前面に係合しているので、可動ターミナルホルダは動かない。
【0013】
雄型コネクタのフード部にアウターハウジングが更に入り込むと、係止解除片が補助突部を押圧して係止爪とアウターハウジングの前面との係合が解かれる。その結果、アウターハウジングがフード部の奥に達する。このとき固定ターミナルホルダに設けられた雌ターミナルが雄型コネクタの雄ターミナルの残部と接触する。
【0014】
以上のように、両コネクタの嵌合の際、複数の雌ターミナルと複数の雄ターミナルとの接触が2回に分けて行なわれるので、複数の雌ターミナルと複数の雄ターミナルとを一時に接触させる方式のコネクタに較べ、雌型コネクタと雄型コネクタとの嵌合力を低減させることができる。
【特許文献1】特開平6−111882号公報(段落0012〜0014、0017、図1、2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述の雌型コネクタでは、雄型コネクタと嵌合するときに、まず可動ターミナルホルダに設けられた複数の雌ターミナルが雄型コネクタの雄ターミナルの一部と接触するので、雌型コネクタの可動ターミナルホルダ側を押し込み難くい反面、固定ターミナルホルダ側を押し込み易い。このため、雌型コネクタの姿勢が雄型コネクタに対して傾き易く、雌型コネクタが雄型コネクタに斜めに嵌合し、いわゆるかじりが生じるおそれがあった。
【0016】
また、可動ターミナルホルダに設けられた複数の雌ターミナルが雄型コネクタの雄ターミナルの一部と接触した後は、固定ターミナルホルダに設けられた複数の雌ターミナルが雄型コネクタの雄ターミナルの残部と接触するので、やはり雌型コネクタの姿勢が雄型コネクタに対して傾き易く、雌型コネクタが雄型コネクタに斜めに嵌合するおそれがあった。
【0017】
更に、一度離脱させると可動ターミナルホルダと固定ターミナルホルダとはずれた状態に戻らない構成であった。
【0018】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題は相手側コネクタとの嵌合力を低減することができるとともに斜め嵌合を防ぐことができるコネクタを提供することである。
【0019】
また、離脱させても再嵌合できるように第1のハウジングと第2のハウジングとをずれた状態に確実に戻すことができるコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前述の課題を解決するため請求項1の発明のコネクタは、相手側コネクタの複数の相手側コンタクトのうちの一部のコンタクトに接触可能なコンタクトを保持する少なくとも1つの第1のインシュレータ部を有する第1のハウジングと、この第1のハウジングに摺動可能に組み付けられ、前記相手側コネクタの前記複数の相手側コンタクトのうちの残部のコンタクトに接触可能なコンタクトを保持する複数の第2のインシュレータ部を有する第2のハウジングと、前記第2のハウジングを前記第1のハウジングに組み付けたときの、前記第1のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面と前記第2のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面とがコネクタ嵌合方向へずれた状態を維持する初期状態ロック手段と、前記初期状態ロック手段によってロックされている前記第1、第2のハウジングに前記相手側コネクタを相対的に所定量押し込むと、前記相手側コネクタの複数の相手側コンタクトのうちの一部のコンタクトが前記第1、第2のインシュレータ部の一方と嵌合するとともに、前記第2のハウジングと前記第1のハウジングとの前記ロックが解除され、更に前記相手側コネクタを押し込むと、前記第1、第2のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面がほぼ面一になる位置まで前記第1、第2のハウジングの一方が相対移動して、前記相手側コネクタの複数の相手側コンタクトのうちの残部のコンタクトを前記第1、第2のインシュレータ部の他方と嵌合させる多段嵌合手段と、前記第1、第2のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面がほぼ面一の状態の前記第1、第2のハウジングから前記相手側コネクタを相対的に離脱するときに、前記第1、第2ハウジングの一方を前記相手側コネクタに係合させて前記第1、第2ハウジングの一方を前記相手側コネクタとともに相対的に離脱方向へ移動させ、前記初期状態ロック手段のロック機能が機能しうるようになったときに、前記第1、第2ハウジングの一方と前記相手側コネクタとの係合を解除する初期状態復帰手段とを備え、前記第1のインシュレータ部と前記第2のインシュレータ部とは交互に配置されていることを特徴とする。
【0021】
上述のように第1のインシュレータ部と第2のインシュレータ部とが交互に配置されているので、コネクタを相手側コネクタに嵌合させるときに、コネクタが相手側コネクタに対してまっすぐに挿入され易くなる。
【0022】
また、初期状態復帰手段を備えているので、相手側コネクタを離脱するときに、前記第1のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面と前記第2のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面とがコネクタ嵌合方向へずれた状態に確実に戻すことができる。
【0023】
請求項2の発明は、請求項1記載のコネクタにおいて、前記第1のハウジングの前記第1のインシュレータ部が1つであり、前記第2のハウジングの前記第2のインシュレータ部が2つであり、前記第2のハウジングを前記第1のハウジングに組み付けたとき、前記第2のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面が前記第1のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面よりもコネクタ嵌合方向前側に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したようにこの発明のコネクタによれば、相手側コネクタとの嵌合力を低減することができるとともに斜め嵌合を防ぐことができる。
【0025】
また、相手側コネクタを離脱するとき、第1のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面と第2のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面とがコネクタ嵌合方向へずれた状態に確実に戻すことができ、再度嵌合するときに備えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1はこの発明の一実施形態に係る雌型コネクタとこのコネクタの相手側コネクタである雄型コネクタとの嵌合状態を雌型コネクタの一面側から見た状態を示す破砕斜視図、図2は図1に示す雌型コネクタの第1の雌ハウジングに第2の雌ハウジングを組み付ける前の状態を雌コネクタの他面側から見た斜視図、図3は図1に示す雌型コネクタの第1の雌ハウジングに第2の雌ハウジングを組み付け、第1、第2の雌ハウジングの嵌合方向前面をずらした状態を雌型コネクタの一面側から見た斜視図、図4は図1に示す雌型コネクタの第1の雌ハウジングに第2の雌ハウジングを組み付け、第1、第2の雌ハウジングの嵌合方向前面をほぼ面一にした状態を雌型コネクタの一面側から見た斜視図である。
【0028】
図1に示すように、雌型コネクタ(コネクタ)1は後述の雄型コネクタ(相手側コネクタ)22に嵌合される。雌型コネクタ1は雌コンタクト3(図2参照)と第1の雌ハウジング(第1のハウジング)5と第2の雌ハウジング(第2のハウジング)7と備える。
【0029】
雌コンタクト3はソケット型のコンタクトであり、ソケット部3a(図2参照)を有する。ソケット部3aは雄型コネクタ22の雄コンタクト(ピンコンタクト)24の接触部24a(図6参照)を受け容れて接触する。
【0030】
図2〜4に示すように、第1の雌ハウジング5は1つの第1のインシュレータ部51と1対のガイド部52と一対の結合部54とを有する。それらは絶縁性を有する合成樹脂で一体に形成されている。
【0031】
第1のインシュレータ部51はほぼ平板状であり、複数の第1のコンタクト収容孔51aを有する。複数の第1のコンタクト収容孔51aは第1のインシュレータ部51の幅方向W1に沿って2列に並んでいる。また、複数の第1のコンタクト収容孔51aは嵌合方向D1へ延びている。各第1のコンタクト収容孔51a内に雌コンタクト3が挿入されている。
【0032】
第1のインシュレータ部51の厚さ方向T1の一端面にはリテーナ収容穴51bが形成されている。リテーナ収容穴51bは第1のインシュレータ部51の幅方向W1へ延びている。リテーナ収容穴51bにはリテーナ61が収容される。リテーナ61は第1のコンタクト収容孔51aに挿入された雌コンタクト3を保持する。
【0033】
一対のガイド部52は第1のインシュレータ部51の両側に間隔をあけて配置されている。ガイド部52はほぼ角柱状である。ガイド部52の第1のインシュレータ部51と幅方向W1で対向する面にはガイド溝52aが形成されている。ガイド溝52aは嵌合方向D1へ延びている。一対のガイド部52の後部には突片52bが形成されている。
【0034】
一対のガイド部52の側面にはボックス固定用ロック53が設けられている。ボックス固定用ロック53は突片52bと嵌合方向D1で対向する。ボックス固定用ロック53は傾斜面53aを有する。ボックス固定用ロック53はガイド部52から突出したり、ガイド部52内に引き込んだりする。
【0035】
一対の結合部54はそれぞれ板状であり、第1のインシュレータ部51の幅方向W1へ延び、第1のインシュレータ部51と一対のガイド部52とを結合する。
【0036】
ガイド部52から延設された規制片57がガイド部52と一体に形成されている。規制片57は板状である。規制片57は係止孔57aを有する。
【0037】
第1のインシュレータ部51の幅方向W1の両端部にはそれぞれ係止片58が一体に形成されている。係止片58は係合部58aとばね部58bとを有する(図10、11参照)。係合部58aはほぼ三角プレート状であり、凹部58cと第1の傾斜面(多段嵌合手段)58dと第2の傾斜面58eとを有する。ばね部58bは片持梁状であり、第1のインシュレータ部51の幅方向W1へ弾性変形可能である。
【0038】
一対の結合部54と第1のインシュレータ部51とガイド部52とで囲まれた2つの空間は挿入孔59である。挿入孔59には後述する第2のインシュレータ部71が挿入される。
【0039】
第2の雌ハウジング7は2つの第2のインシュレータ部71と1対のスライド片73と一対の結合部75とを有する。それらは絶縁性を有する合成樹脂で一体に形成されている。
【0040】
2つの第2のインシュレータ部71はそれぞれほぼ平板状であり、複数の第2のコンタクト収容孔71aと一つのリテーナ収容穴71bとを有する。第2のインシュレータ部71の厚さは第1のインシュレータ部51の厚さにほぼ等しい。複数の第2のコンタクト収容孔71aは第2のインシュレータ部71の幅方向W2に沿って2列に並んでいる。また、複数の第2のコンタクト収容孔71aは嵌合方向D1へ延びている。各第2のコンタクト収容孔71a内に雌コンタクト3が挿入されている。リテーナ収容穴71bは第2のインシュレータ部71の厚さ方向T2の一端面に形成されている。リテーナ収容穴71bは第2のインシュレータ部71の幅方向W2へ延びている。リテーナ収容穴71bにはリテーナ81が収容される。リテーナ81は第2のコンタクト収容孔71aに挿入された雌コンタクト3を保持する。
【0041】
第2のインシュレータ部71の厚さ方向T2の両端面にはそれぞれ突起71cが形成されている。突起71cは第2のインシュレータ部71の幅方向W2へ延びている。突起71cは第1の雌ハウジング5の規制片57の係止孔57a内に配置される。突起71cは係止孔57a内で嵌合方向D1及び離脱方向D2に沿って所定距離だけ移動できる。これにより、第1の雌ハウジング5に対する第2の雌ハウジング7の嵌合方向D1及び離脱方向D2の動きが規制されるとともに、第1の雌ハウジング5からの第2の雌ハウジング7の脱落が防止される。
【0042】
第2のインシュレータ部71のインシュレータ部51に対向する面にはそれぞれ係合突起77が形成されている(図10参照)。係合突起77は傾斜面77aを有する。係合突起77は第1の雌ハウジング5の係止片58の係合部58aと係合する。係合突起77と係合部58aとで初期状態ロック手段が構成される。初期状態とは、第2の雌ハウジング7を第1の雌ハウジング5に組み付けたときの、第1のインシュレータ部51のコネクタ嵌合方向前面51f(図7A参照)と第2のインシュレータ部71のコネクタ嵌合方向前面71f(図7A参照)とがコネクタ嵌合方向D1へずれた状態をいう。この初期状態になってから嵌合作業を行うことが可能になる。
【0043】
一対のスライド片73は第2のインシュレータ部71の幅方向W2の一端面に形成されている。スライド片73の断面形状はT字形である。
【0044】
一対の結合部75はそれぞれ板状であり、第2のインシュレータ部71の幅方向W2へ延び、2つの第2のインシュレータ部71を間隔をあけた状態で結合する。この間隔は第1のインシュレータ部51の幅よりも若干大きい。
【0045】
一対の結合部75と2つの第2のインシュレータ部71とで囲まれた空間は挿入孔78である。挿入孔78には第1のインシュレータ部51が挿入される。
【0046】
一対の結合部75の中央部にはそれぞれ突起(初期状態復帰手段)75aが形成されている。突起75aは第2のインシュレータ部71の幅方向W2へ延びている。また、一対の結合部75の中央部にはそれぞれ突起75aに隣接するようにスリット75bが形成されている。スリット75bは第2のインシュレータ部71の幅方向W2へ延びている。このスリット75bによって突起75aは第2のインシュレータ部71の厚さ方向T2に沿って弾性変位可能である。
【0047】
図1に示すように、雌型コネクタ1はボックス11に収容される。ボックス11の雌型コネクタ用挿入口には突片11aが形成されている。突片11aは雌型コネクタ1がボックス11に挿入されるときに、雌型コネクタ1のボックス固定用ロック53の傾斜面53aを押圧してボックス固定用ロック53をガイド部52内に引っ込め、雌型コネクタ1が所定の位置までボックス11に挿入されたら、傾斜面53aとの係合を解く。その結果、雌型コネクタ1のボックス固定用ロック53はガイド部52から突出し、ボックス11の突片11aを雌型コネクタ1の突片52bとボックス固定用ロック53とで挟む。これにより、雌型コネクタ11はボックス11に固定される。
【0048】
図5は図1に示す雄コネクタを一面側から見た破砕斜視図、図6は図1に示す雄コネクタを他面側から見た破砕斜視図である。
【0049】
次に雄型コネクタ22について説明する。
【0050】
図5、6に示すように、雄型コネクタ22は複数の雄コンタクト(相手側コンタクト)24と雄ハウジング26とを備え、ECUボード29に実装される。
【0051】
雄コンタクト24はほぼL字形に折り曲げられたピンコンタクトである。雄コンタクト24は接触部24aと保持部(図示せず)とプレスフィット部24cと折曲部24dとを有する。接触部24aは雌コンタクト3と接触する。保持部は後述するハウジング本体26aに保持される。プレスフィット部24cはECUボード29のスルーホール29aに圧入される。折曲部24dは保持部24bとプレスフィット部24cとを連結する。折曲部24dはほぼ直角に折り曲げられている。
【0052】
雄ハウジング26はハウジング本体26aとフード26bとボード固定部26cとを備える。
【0053】
ハウジング本体26aはほぼ板状であり、雄コンタクト24の保持部を保持している。ハウジング本体26aの前部には一対のロック解除片26dが形成されている(図9参照)。ロック解除片26dは傾斜面26eを有する。
【0054】
フード26bはハウジング本体26aの前部に一体に連結されている。フード26bの内側には傾斜面26fが形成されている(図12参照)。フード26bは雌型コネクタ1を覆う。また、フード26bは雄型コネクタ22を雌型コネクタ1に嵌合離脱するときに、ボックス11によって嵌合方向D1及び離脱方向D2へガイドされる。
【0055】
ボード固定部26cはハウジング本体26aの後部の両端部に一体に連結されている。ボード固定部26cにはボルト12によってECUボード29が固定されている。ECUボード29はボード収容ケース41内に収容される。ボード収容ケース41はハウジング本体26aに固定される。
【0056】
次に、雌型コネクタ1の第1の雌ハウジング5と第2の雌ハウジング7との組み付けに関して説明する。
【0057】
まず、図2に示す状態からリテーナ61を第1のインシュレータ部51のリテーナ収容穴51bに挿入し、雌コンタクト3を第1のインシュレータ部51に固定する。同様に、リテーナ81を第2のインシュレータ部71のリテーナ収容穴71bに挿入し、雌コンタクト3を第2のインシュレータ部71に固定する。
【0058】
次に、第2の雌ハウジング7の第2のインシュレータ部71を第1の雌ハウジング5の挿入孔59に通す。このとき、第2の雌ハウジング7のスライド片73を第1の雌ハウジングのガイド部52のガイド溝52aに係合させるとともに、第2のインシュレータ部71の突起71cを第1の雌ハウジング5の規制片57の係止穴57aに配置する。
【0059】
その結果、第1の雌ハウジング5の第1のインシュレータ部51が第2の雌ハウジング7の挿入孔78に挿入され、図3、4に示すように、第1の雌ハウジング5と第2の雌ハウジング7との組み付けが完了する。
【0060】
組み付け後、第2の雌ハウジング7を嵌合方向D1及び離脱方向D2へ移動させようとしても、規制片57の係止孔57aに突起71cが係合しているので、第2の雌ハウジング7の動きが規制片57によって規制され、第2の雌ハウジング7が第1の雌ハウジング5から離脱しない。
【0061】
図7Aは初期状態の雌型コネクタに雄型コネクタを嵌合させた状態を示す概念図、図7Bは初期状態が解除され雌型コネクタの第2の雌ハウジングが後退し始めた状態を示す概念図、図7Cは第2の雌ハウジングが更に後退した状態を示す概念図、図7Dは雌型コネクタに雄型コネクタが完全に嵌合した状態を示す概念図、図8は初期状態の雌型コネクタに雄型コネクタを嵌合させた状態を示す破砕斜視図、図9は雌型コネクタの第1の雌ハウジングの係止片による第2の雌ハウジングのロック状態を示す拡大破砕斜視図、図10は雌型コネクタの第1の雌ハウジングの係止片と第2の雌ハウジングとのロック状態が解除された状態を示す拡大破砕斜視図、図11は雌型コネクタの第1の雌ハウジングの嵌合方向前面と第2の雌ハウジングの嵌合方向前面とがほぼ面一になった状態を示す拡大破砕斜視図である。なお、図10において相手側コネクタの図示が省略されている。また、図8、9、11において雄コンタクトが省略されている。
【0062】
次に、雌型コネクタ1と雄型コネクタ22との嵌合について図7〜11に基づいて説明する。
【0063】
まず、図7Aに示すように、第2の雌ハウジング7が止まるまで第2の雌ハウジング7を嵌合方向D1へ移動させる。
【0064】
このとき、係合突起77の傾斜面77aが係止片58の係合部58aの第1の傾斜面58dと接触し、係合突起77がばね部58bのばね力に抗して係止片58を押し退ける。その後、係合突起77は係止片58の凹部58cと係合し、係止片58はばね部58bのばね力によって元の状態に戻り、図9に示す状態になる。
【0065】
この状態では、係合突起77が凹部58cと係合しているので、第2の雌ハウジング7を離脱方向D2へ押しても動かない。このとき、第2のインシュレータ部71の嵌合方向前面71fは第1のインシュレータ部51の嵌合方向前面51fよりも嵌合方向D1で前方に位置する(図3参照)。
【0066】
次に、雄型コネクタ22を第2の雌ハウジング7の方へ押し込む。その結果、第2のインシュレータ部71に設けられた雌コンタクト3のソケット部3a(図2参照)と雄型コネクタ22の雄コンタクト24の接触部24aとが接触する(図7A参照)。
【0067】
このとき、雌コンタクト3と雄コンタクト24との摩擦力によって雌型コネクタ1の第2の雌ハウジング7が押されるが、係合突起77が係止片58の凹部58cと係合しているので、第2の雌ハウジング7は動かない。
【0068】
その後、更に雄型コネクタ22を雌型コネクタ1の方へ押し込むと、雄型コネクタ22のロック解除片26dが第1の雌ハウジング5の係止片58の係合部58aの第1の傾斜面58dと接触し、ロック解除片26dが係止片58を押し退ける。その結果、係止片58の凹部58cと係合突起77との係合が解かれ(図7B、図10参照)、その後、第2の雌ハウジング7が雄型コネクタ22とともに動く(図7C参照)。最終的に係合部58aの第2の傾斜面58eがロック解除片26dの第2の傾斜面26eと係合し、係止片58は元の状態に戻る。
【0069】
以上のようにして、雄型コネクタ22の雄コンタクト24が第1の雌ハウジング5の第1のインシュレータ部51の雌コンタクト3に接触し、雄型コネクタ22が雌型コネクタ1に完全に嵌合される(図7D、図11参照)。
【0070】
図12は雌型コネクタの第2の雌ハウジングの結合片が弾性変形不能な状態を示す断面斜視図、図13は結合片が弾性可能になった状態を示す断面斜視図、図14は結合片が弾性変形し、第2の雌ハウジングの結合部の突起と雄型コネクタの雄ハウジングとの係合が解除された状態を示す断面斜視図である。
【0071】
次に、図12〜14に基づいて離脱時の動作について説明する。
【0072】
雄型コネクタ22を雌型コネクタ1から離脱させるには、雄型コネクタ22を雌型コネクタ1から離れるように引っ張ればよい。
【0073】
離脱初期の段階では、図12に示すように、一対の結合部75の間に第1のインシュレータ部51が介在するので、結合部75のそれぞれは相手側に向かう方向(厚さ方向T2)へ弾性変形できない。その結果、結合部75の突起75aと雄型コネクタ22のフード部26bの傾斜面26fとが係合し、第2の雌ハウジング7が雄型コネクタ22とともに離脱方向D2へ移動する。
【0074】
第2の雌ハウジング7が初期状態まで動くと、図13に示すように、一対の結合部75の間から第1のインシュレータ部51が抜ける。その結果、結合部75のそれぞれは相手側に向かう方向(厚さ方向T2)へ弾性変形可能となる。
【0075】
雄型コネクタ22が離脱方向D2へ更に移動すると、フード部26bの傾斜面26fは結合部75の突起75aを押し退ける。その結果、フード部26bの傾斜面26fと結合部75の突起75aとの係合が解かれ、雄型コネクタ22は雌型コネクタ1から離脱する。このとき、係止片58の凹部58cと係合突起77とが係合し、初期状態に戻る(図9参照)。
【0076】
この実施形態によれば、雌型コネクタ1と雄型コネクタ22との嵌合において、最初に、第2のインシュレータ部71の雌コンタクト3を雄コンタクト24の一部に接触させ、その後、第1のインシュレータ部51の雌コンタクト3を残りの雄コンタクト24に接触させるので、全ての雌コンタクトを一時に雄コンタクト24に接触させる方式に較べ、嵌合力を分散させることができる。
【0077】
また、第1のインシュレータ部51の両側に第2のインシュレータ部71が配置されているので、第1、第2の雌ハウジング5、7の傾きが防止される。
【0078】
更に、第2の雌ハウジング7に突起75aを設けたので、雄型コネクタ22を雌型コネクタ1から離脱するときに、雌型コネクタ1を確実に初期状態に戻すことができ、次の雄型コネクタ22との嵌合に備えることができる。
【0079】
なお、この実施形態では、第1のインシュレータ部51は1つで、第2のインシュレータ部71は2つであるが、第1、第2のインシュレータ部51,71の数はこれに限られず、第1のインシュレータ部51は1つ以上であればよく、第2のインシュレータ部71は第1のインシュレータ部51よりも1つ多ければよい。要は第1のインシュレータ部51と第2のインシュレータ部71とが嵌合方向D1と直交する方向に交互に配置されればよい。
【0080】
また、第2の雌ハウジング7が第1の雌ハウジング5にロックされたとき、第2のインシュレータ部71の嵌合方向前面71fが第1のインシュレータ部51の嵌合方向前面51fよりも嵌合方向D1で前方に位置するようにしたが、必ずしもこのように構成する必要は無く、第2の雌ハウジング7が初期状態ロック手段によって第1の雌ハウジング5にロックされたとき、第1のインシュレータ部51の嵌合方向前面51fが第2のインシュレータ部71の嵌合方向前面71fよりも嵌合方向D1の前方に位置するようにしてもよい。
【0081】
なお、ロック手段として凹部58cと係合突起77との組合せを採用したが、ロック手段はこれに限られない。
【0082】
また、多段嵌合手段として、第1の傾斜面26iと係合する第1の傾斜面58dを採用したが、多段嵌合手段はこれに限られない。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1はこの発明の一実施形態に係る雌型コネクタとこのコネクタの相手側コネクタである雄型コネクタとの嵌合状態を雌型コネクタの一面側から見た状態を示す破砕斜視図である。
【図2】図2は図1に示す雌型コネクタの第1の雌ハウジングに第2の雌ハウジングを組み付ける前の状態を雌コネクタの他面側から見た斜視図である。
【図3】図3は図1に示す雌型コネクタの第1の雌ハウジングに第2の雌ハウジングを組み付け、第1、第2の雌ハウジングの嵌合方向前面をずらした状態を雌型コネクタの一面側から見た斜視図である。
【図4】図4は図1に示す雌型コネクタの第1の雌ハウジングに第2の雌ハウジングを組み付け、第1、第2の雌ハウジングの嵌合方向前面をほぼ面一にした状態を雌型コネクタの一面側から見た斜視図である。
【図5】図5は図1に示す雄コネクタを一面側から見た破砕斜視図である。
【図6】図6は図1に示す雄コネクタを他面側から見た破砕斜視図である。
【図7A】図7Aは初期状態の雌型コネクタに雄型コネクタを嵌合させた状態を示す概念図である。
【図7B】図7Bは初期状態が解除され雌型コネクタの第2の雌ハウジングが後退し始めた状態を示す概念図である。
【図7C】図7Cは第2の雌ハウジングが更に後退した状態を示す概念図である。
【図7D】図7Dは雌型コネクタに雄型コネクタが完全に嵌合した状態を示す概念図である。
【図8】図8は初期状態の雌型コネクタに雄型コネクタを嵌合させた状態を示す破砕斜視図である。
【図9】図9は雌型コネクタの第1の雌ハウジングの係止片による第2の雌ハウジングのロック状態を示す拡大破砕斜視図である。
【図10】図10は雌型コネクタの第1の雌ハウジングの係止片と第2の雌ハウジングとのロック状態が解除された状態を示す拡大破砕斜視図である。
【図11】図11は雌型コネクタの第1の雌ハウジングの嵌合方向前面と第2の雌ハウジングの嵌合方向前面とがほぼ面一になった状態を示す拡大破砕斜視図である。
【図12】図12は雌型コネクタの第2の雌ハウジングの結合片が弾性変形不能な状態を示す断面斜視図である。
【図13】図13は結合片が弾性可能になった状態を示す断面斜視図である。
【図14】図14は結合片が弾性変形し、第2の雌ハウジングの結合部の突起と雄型コネクタの雄ハウジングとの係合が解除された状態を示す断面斜視図である。
【符号の説明】
【0084】
1 雌型コネクタ(コネクタ)
3 雌コンタクト(コンタクト)
5 第1の雌ハウジング(第1のハウジング)
51 第1のインシュレータ部
58c 凹部
58d 第1の傾斜面(多段嵌合手段)
7 第2の雌ハウジング(第2のハウジング)
71 第2のインシュレータ部
77 係合片
22 雌型コネクタ
24 雄コンタクト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側コネクタの複数の相手側コンタクトのうちの一部のコンタクトに接触可能なコンタクトを保持する少なくとも1つの第1のインシュレータ部を有する第1のハウジングと、
この第1のハウジングに摺動可能に組み付けられ、前記相手側コネクタの前記複数の相手側コンタクトのうちの残部のコンタクトに接触可能なコンタクトを保持する複数の第2のインシュレータ部を有する第2のハウジングと、
前記第2のハウジングを前記第1のハウジングに組み付けたときの、前記第1のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面と前記第2のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面とがコネクタ嵌合方向へずれた状態を維持する初期状態ロック手段と、
前記初期状態ロック手段によってロックされている前記第1、第2のハウジングに前記相手側コネクタを相対的に所定量押し込むと、前記相手側コネクタの複数の相手側コンタクトのうちの一部のコンタクトが前記第1、第2のインシュレータ部の一方と嵌合するとともに、前記第2のハウジングと前記第1のハウジングとの前記ロックが解除され、更に前記相手側コネクタを押し込むと、前記第1、第2のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面がほぼ面一になる位置まで前記第1、第2のハウジングの一方が相対移動して、前記相手側コネクタの複数の相手側コンタクトのうちの残部のコンタクトを前記第1、第2のインシュレータ部の他方と嵌合させる多段嵌合手段と、
前記第1、第2のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面がほぼ面一の状態の前記第1、第2のハウジングから前記相手側コネクタを相対的に離脱するときに、前記第1、第2ハウジングの一方を前記相手側コネクタに係合させて前記第1、第2ハウジングの一方を前記相手側コネクタとともに相対的に離脱方向へ移動させ、前記初期状態ロック手段のロック機能が機能しうるようになったときに、前記第1、第2ハウジングの一方と前記相手側コネクタとの係合を解除する初期状態復帰手段とを備え、
前記第1のインシュレータ部と前記第2のインシュレータ部とは交互に配置されている
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記第1のハウジングの前記第1のインシュレータ部が1つであり、前記第2のハウジングの前記第2のインシュレータ部が2つであり、
前記第2のハウジングを前記第1のハウジングに組み付けたとき、前記第2のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面が前記第1のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面よりもコネクタ嵌合方向前側に位置することを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項1】
相手側コネクタの複数の相手側コンタクトのうちの一部のコンタクトに接触可能なコンタクトを保持する少なくとも1つの第1のインシュレータ部を有する第1のハウジングと、
この第1のハウジングに摺動可能に組み付けられ、前記相手側コネクタの前記複数の相手側コンタクトのうちの残部のコンタクトに接触可能なコンタクトを保持する複数の第2のインシュレータ部を有する第2のハウジングと、
前記第2のハウジングを前記第1のハウジングに組み付けたときの、前記第1のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面と前記第2のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面とがコネクタ嵌合方向へずれた状態を維持する初期状態ロック手段と、
前記初期状態ロック手段によってロックされている前記第1、第2のハウジングに前記相手側コネクタを相対的に所定量押し込むと、前記相手側コネクタの複数の相手側コンタクトのうちの一部のコンタクトが前記第1、第2のインシュレータ部の一方と嵌合するとともに、前記第2のハウジングと前記第1のハウジングとの前記ロックが解除され、更に前記相手側コネクタを押し込むと、前記第1、第2のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面がほぼ面一になる位置まで前記第1、第2のハウジングの一方が相対移動して、前記相手側コネクタの複数の相手側コンタクトのうちの残部のコンタクトを前記第1、第2のインシュレータ部の他方と嵌合させる多段嵌合手段と、
前記第1、第2のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面がほぼ面一の状態の前記第1、第2のハウジングから前記相手側コネクタを相対的に離脱するときに、前記第1、第2ハウジングの一方を前記相手側コネクタに係合させて前記第1、第2ハウジングの一方を前記相手側コネクタとともに相対的に離脱方向へ移動させ、前記初期状態ロック手段のロック機能が機能しうるようになったときに、前記第1、第2ハウジングの一方と前記相手側コネクタとの係合を解除する初期状態復帰手段とを備え、
前記第1のインシュレータ部と前記第2のインシュレータ部とは交互に配置されている
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記第1のハウジングの前記第1のインシュレータ部が1つであり、前記第2のハウジングの前記第2のインシュレータ部が2つであり、
前記第2のハウジングを前記第1のハウジングに組み付けたとき、前記第2のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面が前記第1のインシュレータ部のコネクタ嵌合方向前面よりもコネクタ嵌合方向前側に位置することを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−4174(P2009−4174A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162795(P2007−162795)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】
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