説明

コネクタ

【課題】粉塵や粘着性付着物を除去でき、実装ボードの端子とコネクタの端子とを良好に接続することができるコネクタを提供する。
【解決手段】本発明のコネクタ1は、実装ボード6の挿入口211が形成されたケース2と、ケース2の挿入口211から挿入される実装ボード6の端子61と多点接続される端子3と、ケース2の挿入口211内に向かって突出し、挿入口211から挿入される実装ボート6と接触して実装ボード6に付着した粉塵を除去すると共に、挿入口211からの粉塵の侵入を防止する、弾性体から成る第1の接触手段4と、第1の接触手段4に設けられ、実装ボード6に付着した粘着性付着物を除去する鋭角部51を有する、弾性体から成る第2の接触手段5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装ボードが挿入されるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
実装ボードが挿入されるコネクタは、コネクタの端子と実装ボードの端子とを良好に接触させることができるように、実装ボードに付着した粉塵を除去したり、実装ボードの端子と多点接続が可能な構成とされている。
【0003】
特許文献1のコネクタは、実装ボードに付着した粉塵を除去するクリーニング体が当該コネクタのケース内に配置されている。
特許文献2のコネクタは、実装ボードの挿入口を覆い、実装ボードの厚さより僅かに大きく、且つ挿入口の高さよりも小さな幅のスリットを有するダストカバーを備える。
特許文献3のコネクタは、実装ボードの端子との接続部にスリットが形成された端子を備える。
ちなみに、コネクタの技術ではないが、特許文献4には、多点接続が可能なスライド式スイッチが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−235163号公報
【特許文献2】特開平3−182072号公報
【特許文献3】特開平10−74568号公報
【特許文献4】特開2003−7169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のコネクタは、ケース内にクリーニング体を配置しているため、実装ボードから除去した粉塵がケース内に残る。そのため、実装ボードの抜き差しを繰り返すと、コネクタの端子と実装ボードの端子との接続部近傍まで粉塵が侵入する。また、特許文献1のコネクタは、実装ボードに付着した粘着性付着物を良好に除去できる構成とされていない。ここで、粘着性付着物とは、粉塵とは異なり粘度を有する部材である。このような粘着性付着物も、コネクタの端子と実装ボードの端子との接触不良を生じさせる。接触不良の発生は、即時発生と経時発生とがある。経時発生とは、長期間にゆっくりと硬化が進行し、ある日突然接触不良が発生することを云う。
特許文献2のコネクタは、実装ボードに付着した粘着性付着物を良好に除去できる構成とされていない。
特許文献3のコネクタは、本来的に実装ボードに付着した粉塵や粘着性付着物を除去できる構成とされていない。
【0006】
本発明の目的は、上述した課題を解決するコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコネクタは、実装ボードの挿入口が形成されたケースと、前記ケースの挿入口から挿入される実装ボードの端子と多点接続される端子と、前記ケースの挿入口内に向かって突出し、前記挿入口から挿入される実装ボートと接触して前記実装ボードに付着した粉塵を除去すると共に、前記挿入口からの粉塵の侵入を防止する、弾性体から成る第1の接触手段と、前記第1の接触手段に設けられ、前記実装ボードに付着した粘着性付着物を除去する鋭角部を有する、弾性体から成る第2の接触手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、粉塵や粘着性付着物を除去でき、実装ボードの端子とコネクタの端子とを経時的に良好に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)本発明の実施の形態のコネクタを概略的に示す平面図である。(b)本発明の実施の形態のコネクタを概略的に示す正面図である。(c)本発明の実施の形態のコネクタを概略的に示す断面図である。
【図2】(a)第1の接触手段及び第2の接触手段を概略的に示す側面図である。(b)第1の接触手段及び第2の接触手段を概略的に示す正面図である。
【図3】(a)コネクタの端子を概略的に示す正面図である。(b)コネクタの端子を概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係るコネクタについて説明する。但し、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0011】
コネクタ1は、図示を省略したが電子機器のマザーボード等に設置される。コネクタ1は、図1に示すように、ケース2、端子3、第1の接触手段4、第2の接触手段5を備える。
【0012】
ケース2は、樹脂などから成る。ケース2は、実装ボード6(図2)が挿入される挿入部21が形成されており、当該挿入部21の上部開口縁で挿入口211が形成されている。挿入部21の短手方向の長さは、実装ボード6の厚さY(図2)より若干長い長さL1とされている。挿入部21の内側面には、挿入される実装ボード6の端子61(図3)と対応するように、端子3が配置されている。
【0013】
端子3は、ケース2の挿入口211から挿入される実装ボード6の端子61と多点接続される。例えば、端子3は、実装ボード6の端子61との接続部を複数形成するべく、スリットが形成されたり、突出部が複数形成されたりする。
【0014】
第1の接触手段4は、図2に示すように、ケース2の挿入口211内に向かって突出し、挿入口211から挿入される実装ボード6と接触して当該実装ボード6に付着した粉塵を除去すると共に、挿入口211からの粉塵の侵入を防止する。すなわち、第1の接触手段4は、挿入される実装ボード6の端子61が配置されている面を挟み込むように、ケース2の挿入口211に向かい合う配置で設けられている。第1の接触手段4は、ケース2の挿入部21に配置された端子3よりも上方に配置されている。向かい合う第1の接触手段4の間隔Xは、実装ボード6の厚さYよりも0.5mm程度狭い。そして、第1の接触手段4の上端縁には、さらに向かい合う第1の接触手段4の間隔Xを狭くするべく、ケース2の挿入口211内に向かって突出する突出部41が連続して形成されている。突出部41は、実装ボード6の挿入及び引抜方向に変形し易いように、根元部分から先端部分に向かって薄く形成されている。第1の接触手段4は、ケース2の挿入口211の長手方向の辺の長さL2と略等しい長さを有する。第1の接触手段4は、ゴム等の変形可能な弾性体から成る。そのため、実装ボード6を挿入口211から挿入する際には、第1の接触手段4の突出部41が、実装ボード6の挿入方向に変形しつつ、実装ボード6の端子61が配置されている面の長手方向全域に亘って接触する。その結果、実装ボード6に付着した粉塵は、挿入部21より手前、即ちケース2の挿入部21の外側の領域で除去される。また、第1の接触手段4の突出部41は変形しつつ、実装ボード6の端子61が配置されている面に接触しているので、外部から粉塵がケース2の挿入部21内に侵入することを防止できる。
【0015】
第2の接触手段5は、図2に示すように、第1の接触手段4に設けられ、実装ボード6に付着した粘着性付着物を除去する鋭角部51を有する。すなわち、第2の接触手段5は、挿入される実装ボード6の端子61と対応するように、第1の接触手段4の挿入部21側の側面に設けられている。つまり、第2の接触手段5は、コネクタ1の端子3毎に第1の接触手段4の長手方向に向かって複数個、配置されている。そのため、第2の接触手段5も、ケース2の挿入部21に配置された端子3よりも上方に配置されている。第2の接触手段5は、正面視が三角形状とされており、一つの頂部が上方に向かって配置されている。当該頂部は、上述した鋭角部51とされる。第2の接触手段5の底辺の長さは、実装ボード6の端子61の幅寸法と略等しい。向かい合う第2の接触手段5の間隔Zは、図2(a)に示すように、向かい合う第1の接触手段4の間隔Xよりも0.5mm程度狭い。第2の接触手段5は、ゴム等の変形可能な弾性体から成る。そのため、実装ボード6を挿入口211から挿入する際には、第2の接触手段5の鋭角部51が、実装ボード6の各端子61に接触する。その結果、実装ボード6の端子61に付着した粘着性付着物は、図2(b)に示すように、第2の接触手段5の鋭角部51でa、b方向に削ぎ落とされる。勿論、実装ボード6の端子61に付着した粉塵も、削ぎ落とされる。
【0016】
このようなコネクタ1は、第1の接触手段4によって実装ボード6に付着した粉塵の除去及び粉塵のケース2の挿入部21内への侵入を軽減することができる。しかも、第2の接触手段5によって実装ボード6に付着した粘着性付着物を除去することができる。そのためコネクタ1は、実装ボード6の端子61とコネクタ1の端子3とを経時的に良好に接続することができる。
【0017】
さらにコネクタ1は、端子3が実装ボード6の端子61と多点接続される構成とされているので、実装ボード6の端子61とコネクタ1の端子3とをより確実に接続することができる。
【0018】
ここで、コネクタ1の端子3は、図3に示すように、ケース2の挿入口211から挿入される実装ボード6の厚さ方向及び幅方向に湾曲し、この湾曲部の頂部に実装ボード6の端子61との接触部71、72を有することが好ましい。すなわち、コネクタ1の端子3は、実装ボード6の端子61の幅寸法内で実装ボード6の幅方向に湾曲している。また、コネクタ1の端子3は、向かい合う端子3の複数箇所で実装ボード6を挟み込むことができるように実装ボード6の厚さ方向に湾曲している。つまり、コネクタ1の端子3は、接触部71、72が実装ボード6の挿入及び引抜方向に対してずれて配置されている。接触部71、72が実装ボード6の挿入及び引抜方向に並んでいると、実装ボード6を挿入又は引き抜く際に、端子61の同一線上を接触部71、72が通過して相互の接触回数が多く、端子61の表面が削れて、接触不良を生じさせる。しかし、コネクタ1の端子3は、上述したように接触部71、72が実装ボード6の挿入及び引抜方向に対してずれて配置されているので、端子61の表面が削れることを軽減することができる。よって、実装ボード6の端子61とコネクタ1の端子3との経時的な接触不良の発生を長期にわたり軽減することができる。
【0019】
また、第2の接触手段5が設けられた第1の接触手段4は、ケース2に形成された嵌合部22に嵌め込まれていることが好ましい。これにより、第1の接触手段4や第2の接触手段5が汚れたり、損傷したりしても、簡単に交換することができる。
【0020】
特に、通例のケースは、実装ボードの挿入を案内するために、ケースの挿入部における上端部が当該挿入部内に向かって低くなるように傾斜する切り欠き部が形成されている。そこで、当該切り欠き部を嵌合部22として用いると、第1の接触手段4を嵌め込むために嵌合部22を別途、形成する必要がなく、簡単に第1の接触手段4を挿入口211に設けることができる。しかも、汎用性に優れている。このとき、第1の接触手段4は、良好に切り欠き部に嵌め込むことができるように、断面が略三角形状とされる。
【0021】
本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 コネクタ
2 ケース
3 端子
4 第1の接触手段、41 突出部
5 第2の接触手段、51 鋭角部
6 実装ボード、61 端子
21 挿入部、211 挿入口
22 嵌合部
71、72 接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装ボードの挿入口が形成されたケースと、
前記ケースの挿入口から挿入される実装ボードの端子と多点接続される端子と、
前記ケースの挿入口内に向かって突出し、前記挿入口から挿入される実装ボートと接触して前記実装ボードに付着した粉塵を除去すると共に、前記挿入口からの粉塵の侵入を防止する、弾性体から成る第1の接触手段と、
前記第1の接触手段に設けられ、前記実装ボードに付着した粘着性付着物を除去する鋭角部を有する、弾性体から成る第2の接触手段と、
を備えるコネクタ。
【請求項2】
前記コネクタの端子は、前記ケースの挿入口から挿入される実装ボードの厚さ方向及び幅方向に湾曲し、この湾曲部の頂部に前記実装ボードの端子との接続部を有することを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第2の接触手段は、前記コネクタの端子毎に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ケースには、前記第1の接触手段を嵌め込む嵌合部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記嵌合部は、前記実装ボードの挿入を案内する切り欠き部であることを特徴とする請求項4に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−282876(P2010−282876A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136105(P2009−136105)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】