説明

コネクタ

【課題】FPC/FFCなどのシート状の接続対象物用のコネクタであって汎用性があり且つ接続対象物をスムーズに斜め挿入可能なコネクタを提供すること。
【解決手段】コネクタ1は、挿入口2を有しており、その挿入口2に対して斜め下方向に向けて挿入されたFPC/FFC60と接続するものである。コネクタ1の備えるコンタクト20は、上方に向かって延びる立部25と、その立部25から後側に向かって延びるバネ部26と、前後上下方向で規定される面内において変位可能となるようにバネ部26に支持された接触部27とを有している。挿入口2からFPC/FFC60の端部62を後斜め下方向に向けて挿入すると、たとえ接触部27に当たったとしても接触部27が下側若しくは前斜め下側に変位することから、接触部27などがFPC/FFC60の端部62の挿入の妨げになることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FPC(Flexible Printed Circuit)やFFC(Flexible Flat
Cable)のような板状又はシート状の接続対象物と接続するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコネクタとしては例えば特許文献1に開示されたものがある。
【0003】
特許文献1記載のコネクタは、ハウジングの前側から当該ハウジングに挿入され保持されたフロントコンタクトと、ハウジングの後側から当該ハウジングに挿入され保持されたリアコンタクトとを有している。特許文献1のコネクタにおいては、挿入口に対してFPC/FFCの端部を斜め下方向に向けて挿入し、アクチュエータを操作することにより、フロントコンタクト及びリアコンタクトとFPC/FFCの接続を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−266674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のコネクタにおけるフロントコンタクトの接点部は変位不能となるようにハウジングに保持されており、FPC/FFCの挿入の妨げになる虞がある。
【0006】
また、FPC/FFCの挿入時にFPC/FFCの先端がコンタクトの先端部に当たらないようにハウジングの開口に凸部を設け、この凸部に奥に向かう下り斜面を形成してFPC/FFCの挿入の妨げにならないようにしている。
【0007】
そこで、本発明は、FPC/FFCなどのシート状の接続対象物用のコネクタであって、ハウジングに余分な構成を設けずに接続対象物をスムーズに挿入可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1のコネクタとして、挿入口を有し且つ当該挿入口に対して挿入されたシート状の接続対象物と接続するコネクタであって、
ハウジングと、
該ハウジングに保持されたコンタクトであって、上方に向かって延びる立部と、該立部から後側に向かって延びるバネ部と、前後上下方向で規定される面内において変位可能となるように前記バネ部に支持された接触部とを有するコンタクトと、
開位置と閉位置との間で回動可能となるように前記ハウジングに支持されたアクチュエータであって、前記接続対象物が前記挿入口に挿入された状態で前記開位置から前記閉位置まで回動させられた際に、前記接続対象物を前記接触部に対して押し付ける押し付け部を有し、前記押し付け部により前記接触部と前記接続対象物とを互いに加圧接触させるアクチュエータと
を備えるコネクタを提供する。
【0009】
また、本発明は、第2のコネクタとして、第1のコネクタであって、
前記コンタクトは、前記押し付け部上に亘るように延びると共に前記アクチュエータが前記開位置から前記閉位置まで回動させられた際に前記押し付け部を前記接触部に向けて押圧する押圧部を更に有している
コネクタを提供する。
【0010】
また、本発明は、第3のコネクタとして、第1又は第2のコネクタであって、
前記バネ部は、斜め下方に向かって延びており、
前記接触部は、前記バネ部の自由端に位置している
コネクタを提供する。
【0011】
また、本発明は、第4のコネクタとして、第1乃至第3のいずれかのコネクタであって、
前記コンタクトは、前後方向に延びる基部と、該基部から上方に向かって延びると共に前記ハウジングに保持された前側被保持部及び後側被保持部とを更に有しており、
前記立部は、前記前後方向において、前記前側被保持部と前記後側被保持部との間に位置している
コネクタを提供する。
【0012】
また、本発明は、第5のコネクタとして、第4のコネクタであって、
前記ハウジングは、当該ハウジングの底面から前記挿入口まで連通したコンタクト収容部を有しており、
前記コンタクトは、少なくとも前記立部、前記バネ部及び前記接触部が前記コンタクト収容部内に位置するように、前記ハウジングの前記底面側から前記ハウジングに対して取り付けられている
コネクタを提供する。
【0013】
また、本発明は、第6のコネクタとして、第1乃至第5のいずれかのコネクタであって、
前記アクチュエータは前方に向けて倒すことにより前記開位置から前記閉位置まで回動させられるように前記ハウジングに取り付けられている
コネクタを提供する。
【0014】
更に、本発明は、第7のコネクタとして、第1乃至第6のいずれかのコネクタであって、
当該コネクタを基板上に固定するためのホールドダウンを左右両端に更に備えるコネクタにおいて、
前記アクチュエータは、左右両端に突出した軸部を有しており、
前記ハウジングは、該軸部を受ける軸受部を有しており、
前記ホールドダウンは、少なくとも部分的に前記軸受部に収容された前記軸部が該軸受部外に出てしまうことを防止するための軸抑え部を有している
コネクタを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコンタクトは、上方に向かって延びる立部とその立部から後側に向かって延びるバネ部とを備えており、接続対象物と接触する接触部は前後上下方向で規定される面内において変位可能となるようにバネ部に支持されている。そのため、接続対象物が挿入口に対して斜め下方向に向けて挿入される際に、コンタクトの接触部等がその挿入の妨げになることはない。
【0016】
加えて、コンタクトが前側被保持部及び後側被保持部を備えている場合には、更なる効果も奏しうる。例えば、特許文献1のリアコンタクトのように、後側だけでハウジングに保持される一方で、その接触部が変位可能となるようにバネ上の部位で支持されている場合、FPC/FFCと接触部の接触の際の反力により、回路基板とリアコンタクトの接続部に好ましくない力が加わることがある。これに対して、前側被保持部及び後側被保持部がハウジングに保持されており、且つ、前後方向において立部が前側被保持部及び後側被保持部の間に位置している場合には、FPC/FFCと接触部の接触の際の反力が前側被保持部及び後側被保持部とハウジングに吸収され、回路基板とコンタクトの接続部に好ましくない力が加わることが軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態によるコネクタを示す正面側斜視図である。
【図2】図1のコネクタの右側端部近傍を拡大して示す部分拡大図である。
【図3】図1のコネクタを示す背面側斜視図である。
【図4】図1のコネクタをIV--IV線に沿って示す断面図である。ここで、アクチュエータは開位置にある。
【図5】図4に対応するコネクタの他の断面図である。ここで、アクチュエータは閉位置にある。
【図6】図4のコネクタの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1乃至図5を参照して、本実施の形態によるコネクタ1は、回路基板(図示せず)の主面上に搭載され、FPC/FFC(接続対象物)60と接続されるものである。特に、本実施の形態によるコネクタ1は、上面側に開口した挿入口2を有している。この挿入口2は、コネクタ1の前端3と後端4との間に位置しており、挿入口2から後斜め下方向に向けてFPC/FFC60の端部62が挿入された状態で、後述するようにアクチュエータ30を操作すると、コンタクト20の接触部27とFPC/FFC60の端部62に設けられた端子部(図示せず)とを互いに加圧接触させることができる。以下、各部の構造等について詳細に説明する。
【0019】
コネクタ1は、絶縁性材料からなるハウジング10と、金属からなるコンタクト20と、絶縁性材料からなるアクチュエータ30と、金属からなるホールドダウン40とを備えている。
【0020】
図2、図4及び図5に示されるように、ハウジング10には、FPC/FFC60とコネクタ1との接続時にFPC/FFC60を受ける斜め受け面11と、コネクタ1の前端3近傍に位置している前側保持部12と、コネクタ1の後端4近傍に位置している後側保持部13と、底面14と挿入口2とを連通するコンタクト収容部15と、軸受部16とが形成されている。このうち、斜め受け面11は、緩やかな曲面を有しつつ後斜め下方向に向かって延びている。また、軸受部16は、ハウジング10の左右方向(Y方向)の両端部に形成されている。
【0021】
図4及び図5に示されるように、コンタクト20は、前後方向に延びる基部21と、回路基板(図示せず)に固定される固定部22と、ハウジング10の前側保持部12に保持される前側被保持部23と、ハウジング10の後側保持部13に保持される後側被保持部24と、基部21から上方(+Z方向)に向かって延びる立部25と、立部25から後側に向かって延びるバネ部26と、FPC/FFCと接触する接触部27と、アクチュエータ30の動きを規制する押圧部28とを有している。詳しくは、固定部22は、基部21から前方(−X方向)に延びている。前側被保持部23は、基部21から上方に向かって延びており、前側保持部12内に圧入されている。後側被保持部24は、基部21から上方に向かって延びており、後側保持部13に係止されている。立部25は、前後方向(X方向)において前側被保持部23と後側被保持部24との間に位置している。バネ部26は立部25の先端から後側(より具体的には、わずかに後斜め下向き)に延びており、立部25とバネ部26とは逆L字状の形状を構成している。本実施の形態による接触部27はバネ部26の自由端にて構成されている。換言すると、バネ部26は、その弾性により接触部27を支持しており、それによって接触部27がXZ平面(前後上下方向で規定される面)内において変位可能となっている。より具体的には、接触部27は、何らかの力を受けると、前斜め下方向に移動しうるようにバネ部26に支持されている。押圧部28は、後側被保持部24から前斜め上方(+Z方向且つ−X方向)に延びている。
【0022】
本実施の形態によるコンタクト20は、ハウジング10の底面14側からハウジング10に挿入され取付けられている。これにより、コンタクト20の立部25、バネ部26及び接触部27はハウジング10のコンタクト収容部15内に位置している。特に、接触部27は、何らの負荷も加わらない状態では、ハウジング10の斜め受け面11から後方(+X方向)に突出している。この接触部27は、バネ部26によって弾性支持されていることから下向き(−Z方向)又は前向き(−X方向)の力を受けると、斜め受け面11よりも内側に移動する。
【0023】
アクチュエータ30は、左右両端に外側に突出した軸部32と、押し付け部34とを有している。図2に示されるように、軸部32をハウジング10の軸受部16内に少なくとも部分的に収容される。これにより、アクチュエータ30は、開位置(図4参照)と閉位置(図5参照)との間で回動可能となるようにハウジング10に支持されている。
【0024】
図5に示されるように、アクチュエータ30が閉位置にある状態において、押し付け部34は後端近傍に位置している。この押し付け部34は、XZ平面内においてカプセルのような断面形状を有しており、その中心は軸部32の中心とはズレている。図4及び図5に示されるように、前述のコンタクト20の押圧部28は、常に押し付け部34上に亘るように延びている。
【0025】
図4に示されるように、アクチュエータ30が開位置にあるとき押し付け部34の長軸(長手方向)は押圧部28と略平行となっている。このとき、押し付け部34とハウジング10の斜め受け面11との間にスペースができる。このスペースは、挿入口2から後斜め下方向に延び、更に、後方に広がっている。このスペースがあるため、FPC/FFC60の端部62を挿入口2から後斜め下方向に向けて挿入することができる。上述したように、コンタクト20の接触部27は、何らの負荷も加わらない状態では、このスペース内に突出している。
【0026】
一方、図5に示されるように、アクチュエータ30が閉位置にあるとき、押し付け部34の長軸(長手方向)は押圧部28の延びる方向と交差する方向に向いている。このため、アクチュエータ30が閉位置にあるとき押圧部28は押し付け部34から押し上げられ、その反力として押し付け部34は押圧部28により前斜め下方向に向かって押圧される。本実施の形態においては、押圧部28により押圧された押し付け部34の向かう方向にコンタクト20の接触部27が位置している。そのため、FPC/FFC60の端部62が挿入口2に挿入された状態においてアクチュエータ30を開位置から閉位置まで回動すると、押圧部28が押し付け部34を接触部28に向けて押圧し、それによって押し付け部34はFPC/FFC60の端部62を接触部28に対して押し付ける。その結果、FPC/FFC60の端部62に形成された端子部(図示せず)と接触部27との電気的接続が図られる。
【0027】
図1及び図2に示されるように、ホールドダウン40は、ハウジング10の左右両端部に取り付けられる。このホールドダウン40は、図2に示されるように、回路基板(図示せず)に固定される固定部42と、軸受部16に部分的に収容された軸部32が軸受部16の外に出てしまうことを防止するための軸抑え部44とを有している。本実施の形態による軸抑え部44は、下側に突出する曲面を有しており、回動する軸部32上を摺動し得るように構成されている。そのため、軸部32は軸受部16から外れてしまうことがない一方で軸受部16内にてスムーズに回動することができる。
【0028】
本実施の形態においては、バネ部26によって支持された接触部27が下向き(−Z方向)の力を受けると、接触部27が下側若しくは前斜め下側に変位する。従って、FPC/FFC60の端部62を挿入口2からコネクタ1内に挿入する際にFPC/FFC60の端部62がたとえ接触部27に当たったとしても、接触部27は斜め受け面11の内側に移動するため、コンタクト20がFPC/FFC60の端部62の挿入の妨げになることはない。
【0029】
また、前側被保持部23を前側保持部12に保持され且つ後側被保持部24を後側保持部13に保持されており、それらの間に立部25、バネ部26及び接触部27が設けられていることから、接触部27に斜め下方向の力が加わっても前後の保持により受けられるため、固定部22に好ましくないモーメントなどが加わることを避けることができる。
【0030】
更に、押圧部28が単純な前方向ではなく前斜め上方向に延びていることからコネクタ1の高さを高くすることなく、FPC/FFC60の端部を斜めに受け入れ可能なスペースを構成することができる。
【0031】
以上、本発明について具体的構成を掲げて説明してきたが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、上述した実施の形態においてはアクチュエータ30の軸部32がハウジング10の軸受部16の外に出てしまうことを防止するための軸抑え部44をホールドダウン40に設けているが、軸抑え部44を他の部品に設けることとしてもよい。また、上述した実施の形態においては、コンタクト20の押圧部28によってもアクチュエータ30の軸部32の上方移動が規制されているが、例えば、軸抑え部44のような手段がある場合には、図6に示されるように、コンタクト20の押圧部28を省略することもできる。
【符号の説明】
【0032】
1 コネクタ
2 挿入口
3 前端
4 後端
10 ハウジング
11 斜め受け面
12 前側保持部
13 後側保持部
14 底面
15 コンタクト収容部
16 軸受部
20 コンタクト
21 基部
22 固定部
23 前側被保持部
24 後側被保持部
25 立部
26 バネ部
27 接触部
28 押圧部
30 アクチュエータ
32 軸部
34 押し付け部
40 ホールドダウン
42 固定部
44 軸抑え部
60 FPC/FFC(接続対象物)
62 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入口を有し且つ当該挿入口に対して挿入されたシート状の接続対象物と接続するコネクタであって、
ハウジングと、
該ハウジングに保持されたコンタクトであって、上方に向かって延びる立部と、該立部から後側に向かって延びるバネ部と、前後上下方向で規定される面内において変位可能となるように前記バネ部に支持された接触部とを有するコンタクトと、
開位置と閉位置との間で回動可能となるように前記ハウジングに支持されたアクチュエータであって、前記接続対象物が前記挿入口に挿入された状態で前記開位置から前記閉位置まで回動させられた際に、前記接続対象物を前記接触部に対して押し付ける押し付け部を有し、前記押し付け部により前記接触部と前記接続対象物とを互いに加圧接触させるアクチュエータと
を備えるコネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタであって、
前記コンタクトは、前記押し付け部上に亘るように延びると共に前記アクチュエータが前記開位置から前記閉位置まで回動させられた際に前記押し付け部を前記接触部に向けて押圧する押圧部を更に有している
コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のコネクタであって、
前記バネ部は、斜め下方に向かって延びており、
前記接触部は、前記バネ部の自由端に位置している
コネクタ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のコネクタであって、
前記コンタクトは、前後方向に延びる基部と、該基部から上方に向かって延びると共に前記ハウジングに保持された前側被保持部及び後側被保持部とを更に有しており、
前記立部は、前記前後方向において、前記前側被保持部と前記後側被保持部との間に位置している
コネクタ。
【請求項5】
請求項4に記載のコネクタであって、
前記ハウジングは、当該ハウジングの底面から前記挿入口まで連通したコンタクト収容部を有しており、
前記コンタクトは、少なくとも前記立部、前記バネ部及び前記接触部が前記コンタクト収容部内に位置するように、前記ハウジングの前記底面側から前記ハウジングに対して取り付けられている
コネクタ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のコネクタであって、
前記アクチュエータは前方に向けて倒すことにより前記開位置から前記閉位置まで回動させられるように前記ハウジングに取り付けられている
コネクタ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のコネクタであって、
当該コネクタを基板上に固定するためのホールドダウンを左右両端に更に備えるコネクタにおいて、
前記アクチュエータは、左右両端に突出した軸部を有しており、
前記ハウジングは、該軸部を受ける軸受部を有しており、
前記ホールドダウンは、少なくとも部分的に前記軸受部に収容された前記軸部が該軸受部外に出てしまうことを防止するための軸抑え部を有している
コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−187187(P2011−187187A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48457(P2010−48457)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】