説明

コネクタ

【課題】ハウジングに3本以上のケーブルを挿入するようにした場合でも、ケーブルの抜けを防止するためのロック部材によってハウジングが大型化することのないコネクタを提供する。
【解決手段】ロック部材20をハウジング10に装着することにより、ロック部材20の当接部23によって各ケーブル1の係止部2dとハウジング10の各係止部12との係止解除が規制される。この場合、ハウジング10の各ケーブル挿入部11を互いに中心を結ぶ線が四角形状をなすように配置するとともに、各係止部12をケーブル挿入部11の中心を結ぶ四角形の中心側に位置するように設け、ロック部材20の当接部23が前記四角形の中心に位置するようにしたので、全ての係止部12の係止解除を一つの当接部23との当接によって規制することができ、ロック部材20の形状を簡素化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車載用アンテナに用いられる同軸ケーブルを3本以上接続するためのコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコネクタとしては、複数のケーブルが互いに軸心を平行にしてそれぞれ挿入される複数のケーブル挿入部を有するハウジングと、ハウジングに各ケーブル挿入部ごとにケーブルの径方向に弾性変形可能に設けられ、ケーブル挿入部に挿入されたケーブルにケーブルの軸方向に係止することによりケーブルの反挿入方向への移動を規制する複数の係止部とを備え、各ケーブルを保持したハウジングを相手側コネクタのハウジングに嵌合することにより、各ケーブルを相手側コネクタに接続するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−108510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のコネクタでは、ケーブル挿入部にケーブルを挿入すると、ハウジングの係止部がケーブルの係止部の当接によってケーブルの径方向外側に向かって弾性変形するとともに、ケーブルの係止部がハウジングの係止部を乗り越えると、ハウジングの係止部がケーブルの径方向内側に復元してケーブルの係止部と係止するようになっている。しかしながら、この状態ではハウジングの係止部が係止解除方向への変位を規制されていないため、ケーブルに反挿入方向への過大な引張力が加わると、ハウジングの係止部による係止が解除されてケーブルがハウジングから抜けてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、ハウジングの係止部にケーブルの径方向に当接するロック部材をハウジングに装着することにより、ロック部材によって各係止部の係止解除を規制するようにすれば、ケーブルに過大な引張力が加わった場合でも、ケーブルがハウジングから容易に抜けないようにすることができる。
【0006】
しかしながら、複数の係止部にそれぞれ当接する複数のロック部材を各ケーブル挿入部ごとに設けると、ハウジングにおける各ロック部材の装着スペースが大きくなり、特に3本以上のケーブルを挿入する場合はハウジングの大型化を来すという問題点があった。
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ハウジングに3本以上のケーブルを挿入するようにした場合でも、ケーブルの抜けを防止するためのロック部材によってハウジングが大型化することのないコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、3本以上のケーブルが互いに軸心を平行にしてそれぞれ挿入される複数のケーブル挿入部を有するハウジングと、ハウジングに各ケーブル挿入部ごとにケーブルの径方向に弾性変形可能に設けられ、ケーブル挿入部に挿入されたケーブルにケーブルの軸方向に係止することによりケーブルの反挿入方向への移動を規制する複数の係止部とを備えたコネクタにおいて、前記ハウジングに装着され、前記各係止部がケーブルの径方向に当接することにより各係止部の係止解除を規制するロック部材を備え、各ケーブル挿入部をその中心を結ぶ線が多角形状をなすように配置するとともに、各係止部をケーブル挿入部の中心を結ぶ多角形の中心側に位置するように設け、ロック部材には、各係止部が当接する当接部を前記多角形の中心に位置するように設けている。
【0009】
これにより、ロック部材をハウジングに装着することにより、ロック部材の当接部によって各ケーブルとハウジングの各係止部との係止解除が規制されることから、ケーブルに反挿入方向への過大な引張力が加わった場合でも、ケーブルとハウジングとの係止が解除されることがない。この場合、ハウジングの各ケーブル挿入部が互いに中心を結ぶ線が四角形状をなすように配置されるとともに、各係止部がケーブル挿入部の中心を結ぶ四角形の中心側に位置するように設けられ、ロック部材の当接部が前記四角形の中心に位置することから、全ての係止部の係止解除を一つの当接部との当接によって規制することができ、ロック部材の形状を簡素化することができるとともに、各ケーブル挿入部を互いに接近させて配置することができる。これにより、ハウジングに3本以上のケーブルを挿入するようにした場合でも、ハウジングを大型化させることがない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ケーブルとハウジングとの係止解除をロック部材によって規制することができるので、ケーブルに反挿入方向への過大な引張力が加わった場合でも、ケーブルの抜けを確実に防止することができる。この場合、ロック部材の形状を簡素化することができるとともに、各ケーブル挿入部を互いに接近させて配置することができるので、ハウジングにおけるロック部材の装着スペースを小さくすることができる。これにより、ハウジングに3本以上のケーブルを挿入するようにした場合でも、ハウジングを大型化させることがなく、コネクタの配置スペースの小さい機器へのケーブルの接続に極めて有利である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態を示すコネクタの斜視図
【図2】コネクタの正面図
【図3】コネクタの背面図
【図4】A−A線矢視方向断面図
【図5】コネクタの分解斜視図
【図6】ケーブルの接続工程を示すA−A線矢視方向断面図
【図7】ロック部材の装着工程を示すA−A線矢視方向断面図
【図8】コネクタのB−B線矢視方向正面図
【図9】ハウジングの正面図
【図10】ケーブルの側面図
【図11】ケーブルの平面図
【図12】相手側コネクタの斜視図
【図13】相手側コネクタの正面図
【図14】相手側コネクタとの接続工程を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至図14は本発明の一実施形態を示すもので、例えば車載用アンテナに用いられる複数のケーブルを接続するためのコネクタに関するものである。
【0013】
このコネクタは、4本のケーブル1を保持するハウジング10と、ハウジング10に装着されるロック部材20とを備え、相手側コネクタ30に接続されるようになっている。
【0014】
ケーブル1は、内部導体1aの外周に絶縁体1bを介して外部導体1cを配置した周知の同軸ケーブルからなり、その先端部には外部導体1cに導通する円筒状の外側端子2が取り付けられている。外側端子2は導電性の金属板を円筒状に曲げ加工することによって形成され、その基端側には、外部導体1cにカシメによって固定される第1の固定部2aと、ケーブル1の絶縁被覆1dにカシメによって固定される第2の固定部2bが設けられている。外側端子2の先端側には互いに外側端子2の周方向に分割された4つの弾性片部2cが設けられ、各弾性片部2cは外側端子2の径方向に弾性変形可能に形成されている。各弾性片部2cのうちの一つの弾性片部2cにはハウジング10に係止する係止部2dが設けられ、係止部2dは外側端子2の外周面よりも外側に突出している。係止部2dは弾性片部2cの一部を切り起こすことによって形成され、その一端側(外側端子2の先端側)が外側端子2の軸方向に対して傾斜をなし、他端側(外側端子2の基端側)がハウジング10に外側端子2の軸方向から係止可能に形成されている。また、外側端子2の内側には絶縁性の円筒部3が外側端子2の内周面と径方向に間隔をおいて設けられ、円筒部3内にはケーブル1の内部導体1aに導通する内側端子4が設けられている。
【0015】
ハウジング10は合成樹脂の成形品からなり、相手側コネクタ30内に挿入可能な立方体状に形成されている。ハウジング10には、各ケーブル1が互いに軸心を平行にしてそれぞれ挿入される複数のケーブル挿入部11が設けられ、各ケーブル挿入部11はハウジング10を前後方向に貫通するように形成されている。ケーブル挿入部11はケーブル1の外側端子2を挿入可能な円形の孔からなり、その両端はハウジング10の前端面及び後端面にそれぞれ開口している。この場合、各ケーブル挿入部11は中心を結ぶ線が四角形(正方形)をなすようにハウジング10の上下方向及び幅方向に等間隔で配置されている。
【0016】
また、ハウジング10には、各ケーブル1の係止部2dにそれぞれ係止する4つの係止部12が設けられている。各係止部12は、各ケーブル挿入部11の周方向一部をなすように形成され、図9に示すようにそれぞれ各ケーブル挿入部11の中心を結ぶ四角形Qの中心側に位置するように四角形Qの対角線L上に配置されている。各係止部12は、ハウジング10の後端側から前方に向かって延出するとともに、それぞれケーブル挿入部11の径方向に弾性変形可能に形成されている。各係止部12の先端側にはケーブル挿入部11の内側に向かって突出する突部12aが設けられ、突部12aにケーブル1の係止部2dが係止するようになっている。この場合、突部12aの一端側(係止部12の先端側)はケーブル1の係止部2dがケーブル1の軸方向に係止可能に形成され、突部12aの他端側(係止部12の基端側)はケーブル挿入部11の軸方向に対して傾斜をなすように形成されている。
【0017】
ハウジング10の前面及び両側面には、ロック部材20が係合ずる第1及び第2の凹部13,14が設けられている。前面の第1の凹部13は上側のケーブル挿入部11と下側のケーブル挿入部11との間をハウジング10の幅方向に延びるように形成され、ハウジング10の両側面の各第2の凹部14はそれぞれハウジング10の前後方向に延びるように形成されている。この場合、第1の凹部13の両端は各第2の凹部14の前端に連続するように形成されている。また、各第2の凹部14には、ロック部材20が係止する突部14aが設けられている。ハウジング10の上面には相手側コネクタ30に係止するロック部15が設けられ、ロック部15は後端側が上下方向に変位するように弾性変形可能に形成されている。ロック部15の上面には相手側コネクタ30が係止する係止孔15aが設けられ、その後端側の上面にはロック部15を下方に押圧可能な操作部15bが設けられている。
【0018】
ロック部材20は合成樹脂の成形品からなり、ハウジング10に前方から装着可能に形成されている。ロック部材20は、ハウジング10の前面に係合する第1の係合部21と、ハウジング10の両側面に係合する一対の第2の係合部22と、ハウジング10の各係止部12との当接により各係止部12の係止解除を規制する当接部23とからなる。
【0019】
第1の係合部21はハウジング10の幅方向に延びる板状に形成され、ハウジング10の第1の凹部13に係合するようになっている。この場合、第1の係合部21は、第1の凹部13に係合すると、外面がハウジング10の前面と面一をなすように第1の凹部13の深さに等しい厚さに形成されている。また、第1の係合部21の中央部21aは八角形状に形成されており、中央部21aはハウジング10の各係止部12の前方を覆うようになっている。
【0020】
各第2の係合部22はハウジング10の前後方向に延びる板状に形成され、それぞれハウジング10の第2の凹部14に係合するようになっている。この場合、各第2の係合部22は、第2の凹部14に係合すると、外面がハウジング10の側面と面一をなすように第2の凹部14の深さに等しい厚さに形成されている。また、各第2の係合部22の内側の面には、各第2の凹部14の突部14aが係止する溝22aが設けられている。
【0021】
当接部23は断面八角形の角柱状に形成され、第1の係合部21の中央部21aからハウジング10側に延出するように設けられている。この場合、当接部23は、ロック部材20をハウジング10に装着すると、図9に示すように各ケーブル挿入部11の中心を結ぶ四角形Qの中心側に位置するように各係止部12の間に挿入され、ケーブル1の径方向外側への各係止部12の変位を各係止部12との当接によって規制するようになっている。
【0022】
前記構成からなるコネクタを組み立てる場合は、まず、図6に示すようにハウジング10の各ケーブル挿入部11に各ケーブル1をそれぞれ挿入する。その際、ケーブル1の外側端子2をケーブル挿入部11内に挿入すると、外側端子2の係止部2dがハウジング10の係止部12の突部12aに当接するとともに、ハウジング10の係止部12がケーブル1の径方向外側に向かって弾性変形する。続いて、外側端子2の係止部2dが突部12aを乗り越えると、図7に示すようにハウジング10の係止部12がケーブル1の径方向内側に向かって復元し、外側端子2の係止部2dと突部12aとの係止によってケーブル1の反挿入方向への移動が規制される。
【0023】
次に、図7に示すようにロック部材20をハウジング10に装着すると、ロック部材20の当接部23が各係止部12の間に挿入され、ケーブル1の径方向外側への各係止部12の変位が当接部23との当接によって規制される。また、ロック部材20の第1及び第2の係合部21,22がハウジング10の第1及び第2の凹部13,14に係合するとともに、各第2の凹部14の突部14aが各第2の係合部22の溝22aに係止し、ロック部材20がハウジング10に保持される。その際、ロック部材20の第1及び第2の係合部21,22がハウジング10の外面と面一をなすように係合するとともに、第1の係合部21の中央部21aによってハウジング10の各係止部12の前方が覆われる。
【0024】
以上のように構成されたコネクタは、図14に示すように相手側コネクタ30に接続される。この場合、相手側コネクタ30は、例えば車載用アンテナのアンテナユニット内に配置されている。相手側コネクタ30は、前記ハウジング10が嵌合する雌型のハウジング31と、ハウジング31内に設けられた4つの端子32とを備え、各端子32は前記ハウジング10に保持されたケーブル1の外側端子2及び内側端子4に接触する外側端子32a及び内側端子32bを有している。また、ハウジング31内には前記ハウジング10のロック部15に係止する突部31aが設けられ、前記ハウジング10を相手側コネクタ30のハウジング31内に挿入すると、突部31aがロック部15の係止孔15aに係止するようになっている。また、ロック部15の操作部15bを押圧することにより、相手側コネクタ30とのロックが解除される。
【0025】
このように、本実施形態によれば、ロック部材20をハウジング10に装着することにより、ロック部材20の当接部23によって各ケーブル1の係止部2dとハウジング10の各係止部12との係止解除を規制するようにしたので、ケーブル1に反挿入方向への過大な引張力が加わった場合でも、ケーブル1とハウジング10との係止が解除されることがなく、ケーブル1の抜けを確実に防止することができる。
【0026】
この場合、ハウジング10の各ケーブル挿入部11を互いに中心を結ぶ線が四角形状をなすように配置するとともに、各係止部12をケーブル挿入部11の中心を結ぶ四角形の中心側に位置するように設け、ロック部材20の当接部23が前記四角形の中心に位置するようにしたので、全ての係止部12の係止解除を一つの当接部23との当接によって規制することができ、ロック部材20の形状を簡素化することができる。これにより、ハウジング10内におけるロック部材20の装着スペースを小さくすることができるとともに、各ケーブル挿入部11を互いに接近させて配置することができるので、ハウジング10に4本のケーブル1を挿入するように構成した場合でも、ハウジング10を大型化させることがなく、コネクタの配置スペースの小さい機器へのケーブルの接続に極めて有利である。
【0027】
また、ロック部材20の外面側をハウジング10の第1及び第2の凹部13,14に係合する第1及び第2の係合部21,22によって形成し、第1及び第2の係合部21,22をハウジング10の外面と面一をなすように形成したので、ハウジング10の外面とロック部材20の外面との間に段差が生ずることがなく、ロック部材20が外部の物品と接触してもハウジング10から容易に外れることがないという利点がある。この場合、第1の係合部21の中央部21aによってハウジング10の各係止部12の前方が覆われるので、各係止部12が外部に露出することがなく、外部の物品との接触から各係止部12を保護することができる。
【0028】
尚、前記実施形態では、ハウジング10に4本のケーブル1を保持するようにしたものを示したが、3本以上であれば4本以外の本数のケーブル1を保持するものであってもよい。
【0029】
また、前記実施形態では、各ケーブル1を保持したハウジング10を相手側コネクタ30のハウジング31に嵌合することにより、各ケーブル1を相手側コネクタ30に接続するようにしたものを示したが、相手側ケーブルをハウジング10のケーブル1に直接接続するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…ケーブル、2d…係止部、10…ハウジング、11…ケーブル挿入部、12…係止部、13…第1の凹部、14…第2の凹部、20…ロック部材、21…第1の係合部、22…第2の係合部、23…当接部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3本以上のケーブルが互いに軸心を平行にしてそれぞれ挿入される複数のケーブル挿入部を有するハウジングと、ハウジングに各ケーブル挿入部ごとにケーブルの径方向に弾性変形可能に設けられ、ケーブル挿入部に挿入されたケーブルにケーブルの軸方向に係止することによりケーブルの反挿入方向への移動を規制する複数の係止部とを備えたコネクタにおいて、
前記ハウジングに装着され、前記各係止部がケーブルの径方向に当接することにより各係止部の係止解除を規制するロック部材を備え、
各ケーブル挿入部をその中心を結ぶ線が多角形状をなすように配置するとともに、
各係止部をケーブル挿入部の中心を結ぶ多角形の中心側に位置するように設け、
ロック部材には、各係止部が当接する当接部を前記多角形の中心に位置するように設けた
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングの外面にロック部材が係合する凹部を設け、
ロック部材の外面とハウジングの外面とをロック部材が凹部に係合した状態で互いに面一をなすように形成した
ことを特徴とする請求項1記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−221797(P2012−221797A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87413(P2011−87413)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(390012977)イリソ電子工業株式会社 (76)
【Fターム(参考)】