説明

コネクタ

【課題】複数の機器を積層したコネクタ嵌合部にコネクタを嵌合して機器の端子とコネクタを接続する場合、機器側の積層公差を吸収して、機器のコネクタ嵌合部に容易に嵌合が可能であり、確実な端子の接続を行うことが可能であるコネクタを提供する。
【解決手段】端部に端子10を有する機器11が複数積層された積層体12に嵌合して、複数の機器の端子を一括して接続するためのコネクタ1であって、上記機器11の各端子10に接続するための複数の独立した嵌合部21〜24を有する端子本体部2と、前記端子本体部2を支持して一体化するための端子保持部3と、前記嵌合部21〜24と前記端子保持部2を接続し、機器の積層による公差を弾性力により吸収可能な公差吸収部として形成されている接続部51〜53を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の機器の端子を一括して接続することが可能なコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、図10に示すように、端子101が設けられた基板等の機器102を複数積層した機器の積層体103を組み立てて、一つの装置を構成する場合がある。機器の積層体103には、端部にコネクタ嵌合部104が形成される。
【0003】
図10に示すように、積層した機器103のコネクタ嵌合部104に、コネクタ201を嵌合して、複数の機器102の端子101をコネクタ201で一括して接続することができる。
【0004】
複数の機器の積層体103のコネクタ嵌合部104は、機器102の積層による公差があるので、設計値に対して端子の位置がずれることになる。コネクタ嵌合部102に、直接コネクタ201を嵌合して機器と接続する場合、積層による公差を考慮してコネクタ201の嵌合を行う必要がある。すなわち、コネクタ嵌合部102の端子101の位置が公差による位置ずれを何らかの手段で吸収しなければならない。
【0005】
従来、このようなコネクタ201と端子101の位置ずれを吸収する手段として、例えば特許文献1に記載の方法が公知である。
【0006】
特許文献1に記載の方法は、コネクタハウジングをメインカバーと構造上別体にし、メインカバーにコネクタハウジングの外周より大きな開口部を設け、可撓性を有する切断可能な保持部により、コネクタハウジングを開口部に移動可能に保持し,コネクタハウジングと配線板の間に、タブ端子の高さ以上のコネクタハウジングの移動空間を形成し、保持部の切断後、コネクタハウジングの挿通孔にタブ端子を通過させることによってコネクタ部を形成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−299054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし上記特許文献1に記載されているコネクタは、複数の機器を積層したコネクタ嵌合部に、コネクタを接続するものではない。特許文献1は、図10に示すような積層機器の端子を接続する場合とは、基本的な形態が相違する。
【0009】
従来、図10に示すような複数の機器が積層された場合の公差の吸収は、積層後の機器側で端子位置のずれを直し、公差を矯正するようにしていた。しかし、機器側で公差を矯正することは、矯正作業に非常に手間がかかり、コストが上昇してしまう。
【0010】
また従来、コネクタ側では公差を吸収することができなかった為、機器側で公差の矯正が不十分な場合には、コネクタを機器に嵌合して端子との接続を行うことが不可能になってしまうという問題があった。
【0011】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決しようとするものであり、複数の機器を積層したコネクタ嵌合部にコネクタを嵌合して機器の端子とコネクタを接続する場合、機器側の積層公差を吸収して、機器のコネクタ嵌合部に容易に嵌合が可能であり、確実な端子の接続を行うことが可能であるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明のコネクタは、
端部に端子を有する機器が複数積層された積層体に嵌合して、複数の機器の端子を一括して接続するためのコネクタであって、
上記機器の各端子に接続するための複数の独立した嵌合部を有する端子本体部と、
前記端子本体部を支持して一体化するための端子保持部と、
前記嵌合部と前記端子保持部を接続し、機器の積層による公差を弾性力により吸収可能である公差吸収部を有することを要旨とするものである。
【0013】
上記コネクタにおいて、前記公差吸収部は、前記独立した嵌合部に対し、独立して公差を吸収可能に設けられていることが好ましい。
【0014】
上記コネクタにおいて、前記公差吸収部は、前記嵌合部と前記端子保持部とを接続し一体に形成されている樹脂バネからなることが好ましい。
【0015】
上記コネクタにおいて、前記複数の嵌合部のうちの少なくとも一つの嵌合部は、前記端子保持部に固着されていることが好ましい。
【0016】
上記コネクタにおいて、前記公差吸収部が、前記嵌合部の後方端部に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明コネクタは、上記機器の各端子に接続するための複数の独立した嵌合部を有する端子本体部と端子保持部とを有し、前記嵌合部と前記端子保持部を接続し、機器の積層による公差を弾性力により吸収可能である公差吸収部を有することにより、機器の積層体の積層による公差をコネクタ側の公差吸収部により吸収する事ができる。そのため、コネクタの嵌合部が機器の積層体の端子の位置が公差により変動していても、嵌合部が追従して、機器のコネクタ嵌合部に容易にコネクタを嵌合することができ、確実な端子の接続が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のコネクタとコネクタ嵌合部を示す斜視図である。
【図2】図1のコネクタの正面図である。
【図3】図1のコネクタの背面図である。
【図4】図1のコネクタの平面図である。
【図5】図1のコネクタの下面図である。
【図6】図1のコネクタの左側面図である。
【図7】図1のコネクタの右側面図である。
【図8】図1のコネクタを機器に嵌合した状態を示す斜視図である。
【図9】図8のA−A線縦断面図である。
【図10】従来のコネクタと積層機器の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施例を詳細に説明する。図1は本発明のコネクタとコネクタ嵌合部の一実施例を示す斜視図である。図1に示すように本発明のコネクタ1は、端部に端子10を有する基板などの機器11が複数積層された機器の積層体12に嵌合して、複数の機器11の端子10を一括して接続するためのコネクタである。図1に示す実施例のコネクタ1は、4つの機器11が積層された積層体12の4つの端子10を一括して接続するためのコネクタである。機器11は、端子10の周囲は、コネクタのキャビティが嵌合可能な凹部13として形成されている。積層体12において、端子10の凹部14の集合体が、コネクタ嵌合部13として形成されている。
【0020】
機器11が積層された積層体12では、コネクタ嵌合部13の各凹部14と端子10は、積層方向(図1中Z方向)の公差による位置ずれや、積層方向に対し直交する水平(横)方向(図1中X方向)の公差による位置ずれ等が発生する。本実施例のコネクタは、これらの機器の積層による二方向の公差を公差吸収部により吸収することができるように構成されている。
【0021】
図2は図1のコネクタの正面図であり、図3は図1のコネクタの背面図であり、図4は図1のコネクタの平面図であり、図5は図1のコネクタの下面図であり、図6は図1のコネクタの左側面図であり、図7は図1のコネクタの右側面図である。コネクタ1は、図1〜7に示すように、機器の積層体12の各端子10に接続するために、各機器11に設けた4つの凹部14に嵌合可能な、分割した4つの独立した凸部から構成される端子本体部2を有する。
【0022】
端子本体部2は、図1中上から順に、第一の嵌合部21、第2の嵌合部22、第3の嵌合部23、第4の嵌合部24からなる4つの嵌合部が、所定の間隔で縦一列に配設されて構成されている。各嵌合部21〜24の配列は、機器11の積層方向と同じ方向に配列されている。コネクタ1は、嵌合部21〜24が、機器のコネクタ嵌合部13に嵌合して、コネクタ嵌合部13の端子10と電気的に接続するようになっている。
【0023】
嵌合部21〜24は、同じ形状に形成されている。嵌合部21〜24の形状は、断面が四角形の筒状に形成されている。嵌合部21〜24は、角が面取りされている。各嵌合部21〜24の内部に設けられている各キャビティには、機器11のオス型の端子10と接続可能に形成されているメス型の端子25が装着されている。
【0024】
嵌合部21〜24は、先端が機器側のコネクタ嵌合部13の各凹部14に嵌合した際に、端子25の機器11側(便宜的に前方側という)は、コネクタ嵌合部13の相手側端子10と電気的に接続される。各区嵌合部の各端子25の機器側と反対側(便宜的に後方側という)は、ワイヤーハーネスの端子(図示せず)に電気的に接続される。
【0025】
コネクタ1は、端子本体部2の独立した複数の嵌合部21〜24を支持して一体化するための端子保持部3を有する。端子保持部3は上記嵌合部21〜24の後方端部の周囲に形成されている。
【0026】
端子保持部3は、図2、図3等に示すように、嵌合部21〜24端部側の周囲を囲む四角形の外枠4と、上記各端子部21〜24を該外枠4に接続する接続部5(51〜54)とから構成されている。外枠4は、上板41、底板42、左側板43、右側板44の4枚の板状体により構成されている。
【0027】
接続部5は、第1の嵌合部21と外枠4の側板43、44とを接続する第一の接続部51、第2の嵌合部22と外枠4の側板43、44とを接続する第2の接続部52、第3の嵌合部23と外枠24の側板43、44とを接続する第3の接続部53、第4の嵌合部24と外枠24の側板43、44とを接続する第4の接続部54を有する。端子本体21〜24は、接続部5(51〜54)により外枠4に接続されて固定されている。
【0028】
コネクタ1は、絶縁性を有する合成樹脂材料を用いた成形体からなり、嵌合部21〜24と接続部51〜54と外枠4は一体に形成されている。接続部51〜53は、端子本体部3と前記嵌合部21〜23を接続する樹脂バネとして機能する形状に形成されている。接続部51〜53は、樹脂バネの弾性力により、機器の積層による公差を吸収する公差吸収部としての機能を有する。
【0029】
公差吸収部として形成されている接続部51〜53は、正面視した状態でS字あるいは逆S字状の湾曲した板状体からなり、一方の端部が外枠4に接続され、他方の端部が嵌合部21〜23に接続されている。接続部51〜53は、湾曲した部分が撓み易く、変形し易くなっている。接続部51〜53は、嵌合部21〜24にX方向、Z方向の応力が加わった場合に、容易に弾性変形して樹脂バネとして機能する。
【0030】
例えば、コネクタ1をコネクタ嵌合部13に挿入する場合、公差により嵌合部21〜23にX方向、Z方向の応力が加わると、接続部51〜53がそれに応じて変形して、公差があってもコネクタの端子本体部2が機器のコネクタ嵌合部13に追従して嵌合可能である。また、コネクタ1をコネクタ嵌合部13から取り外すと、接続部51〜54の変形が、弾性力により回復する。コネクタ1の嵌合部21〜23は、元の所定の位置に戻る。
【0031】
接続部51〜53は、それぞれ独立して嵌合部21〜23と外枠4を接続している。そのため、各接続部51〜53は、独立した嵌合部21〜23に対し、独立して各嵌合部21〜23の公差を吸収することができる。このように独立して嵌合部の公差を吸収できるように形成することで、公差が大きくなっても、端子アライメントを良好に補正して、コネクタの嵌合を更に確実に行うことができる。
【0032】
第4の接続部54は、上記接続部51〜53とは異なり、嵌合部24が外枠4に固着するように形成されている。第4の接続部54は、公差吸収部として機能しないようになっている。具体的には、第4の接続部54は、第4の嵌合部24の上面部分と左右の側板43、44を直線状に接続している。また、嵌合部24の底面部は底板42に接続一体化されている。第4の嵌合部24は、外枠4に固着していて、嵌合部24に応力が加わった際に、変形しないように端子保持部2に接続、保持されている。
【0033】
第4の嵌合部24に接続する第4の接続部54は、嵌合部24に応力が加わっても変形しない。そのため、コネクタ1をコネクタ嵌合部13に嵌合する際に、寸法の基準となる位置とすることができる。
【0034】
尚、上記実施例では第4の嵌合部を端子保持部に固着して変形しないように接続し、基準となるように形成しているが、特にこの形態に限定されない。すなわち、端子保持部に固着するどの嵌合部は、どの嵌合部であってもよい。端子保持部に固着する嵌合部は、複数の嵌合部のうちの一つの嵌合部とし、その他の嵌合部は独立して公差吸収部となるように接続部により接続するのが好ましい。また端子保持部に固着する嵌合部は、中央側とするのが好ましい。これは、固着した嵌合部から最も遠い嵌合部までの距離を最短とすることができるので、公差が大きくなった際の許容範囲を最大に確保できる。
【0035】
またコネクタ1は、該コネクタ1を機器11のコネクタ嵌合部13に嵌合した際に、嵌合を固定するためのロック部6が、外枠4の左側板43に設けられている。機器11側のロック部と対応する位置には、ロック部6のロック爪を係止する係止部(図示せず)が設けられている。コネクタ1を機器11のコネクタ嵌合部に嵌合した際に、ロック部6を係止部にロックして、コネクタ1が機器11から外れないように固定することができる。
【0036】
図8は、図1のコネクタを機器のコネクタ嵌合部に嵌合した状態を示す斜視図であり、図9は図8のA−A線断面図である。コネクタ1は、4つの機器11、11、11、11が積層されている積層体12のコネクタ嵌合部13に、端子本体部3の4つの嵌合部(第1の嵌合部21〜第4の嵌合部24)を挿通し嵌合する。コネクタ1の各嵌合部の端子25と、機器の端子10が電気的に接続される。この場合、機器11側の凹部14の位置が、積層の公差により、上下方向(Z軸方向)、左右方向(Z軸方向)にずれていても、接続部51〜54が撓んでX軸方向及びZ軸方向に変形する。嵌合部21〜23は凹部14のずれに追従する。コネクタ1の端子本体部2は、機器の積層体12のコネクタ嵌合部13に容易に挿通して嵌合する。このように、コネクタ1は、接続部51〜54の樹脂ばねが撓むことにより、機器の積層による公差を吸収している。尚、嵌合部24は、変形しないようになっているので、コネクタの接続位置の基準となっている。
【0037】
本発明のコネクタは上記実施例の態様に限定されず、変形が可能である。例えば、上記実施例では、端子本体部2は4つの嵌合部21〜24により構成したが、嵌合部の数は2つ以上であれば特に限定されず、相手側端子の数に応じて形成することができる。
【0038】
また上記実施例では、端子保持部3が端子本体部2の後方側の周囲に設けられて構成されていたが、端子保持部3は端子本体部2の右側面や左側面に設けられていても良い。
【0039】
上記実施例では、接続部5の公差吸収部として形成する場合、その形状がZ方向、X方向に対し変形し易い形状に形成されていて、Z方向、X方向の二方向で寸法公差を吸収可能な構造を有している。これに対し、接続部5をX方向、Y方向に変形し易い形状の公差吸収部として形成することもできる。具体的には、接続部5を上記実施例で用いた湾曲した板状体からなる樹脂バネを、平板面が水平方向から垂直方向となるように取り付ければよい。このように形成することでX方向、Y方向の二方向で寸法公差を吸収可能な構造とすることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 コネクタ
2 端子本体部
21 第1の嵌合部
22 第2の嵌合部
23 第3の嵌合部
24 第4の嵌合部
3 端子保持部
4 外枠
5 接続部
51 第1の接続部
52 第2の接続部
53 第3の接続部
54 第4の接続部
6 ロック部
10 機器側の端子
11 機器
12 機器の積層体
13 コネクタ嵌合部
14 嵌合可能な凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に端子を有する機器が複数積層された積層体に嵌合して、複数の機器の端子を一括して接続するためのコネクタであって、
上記機器の各端子に接続するための複数の独立した嵌合部を有する端子本体部と、
前記端子本体部を支持して一体化するための端子保持部と、
前記嵌合部と前記端子保持部を接続し、機器の積層による公差を弾性力により吸収可能である公差吸収部を有することを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記公差吸収部は、前記独立した嵌合部に対し、独立して公差を吸収可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記公差吸収部は、前記嵌合部と前記端子保持部とを接続し一体に形成されている樹脂バネからなることを特徴とする請求項1又は2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記複数の嵌合部のうちの少なくとも一つの嵌合部は、前記端子保持部に固着されていることを特徴とする請求項2又は3記載のコネクタ。
【請求項5】
前記公差吸収部が、前記嵌合部の後方端部に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−221875(P2012−221875A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89129(P2011−89129)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】