説明

コネクタ

【課題】積層された電気・電子機器(部材)側に積層による公差が生じる場合にも、これらの機器(部材)が各々備える相手側コネクタをまとめて一括してコネクタ接続できるコネクタを提供する。
【解決手段】端子金具が収容されるキャビティ12を複数有し、キャビティ12がコネクタ本体14から独立する別部材として筒状に構成されるとともに、これら複数のキャビティ12同士も互いに独立する別部材として構成され、コネクタ本体14がこれら複数のキャビティ12を収容するホルダとなってこれら複数のキャビティ12は個別にコネクタ本体14に係止されており、この係止部分において、個々のキャビティ12とコネクタ本体14との間にはクリアランスが設けられており、このクリアランスによりキャビティ12はコネクタ本体14に対して動きが許容されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線端末に接続される端子金具が収容されるキャビティを複数有するコネクタに関し、さらに詳しくは、積層された部材の各々に備えられた複数の相手側コネクタに接続するコネクタとして好適なコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器(部材)には、電源や他の電気・電子機器(部材)に電気接続するためのコネクタが設けられている。例えば特許文献1には、電気接続箱内の配線板にバスバーやタブ端子が設けられており、この配線板を覆うメインカバーに一体に形成されたコネクタハウジング内にこれらのバスバーやタブ端子が収容されてなるコネクタが電気接続箱に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−299054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば同じような構成の電気・電子機器(部材)を複数用いる場合などにおいては、これらを積層配置したり並列配置したりすることがある。例えば基板など、その部材が平板状である場合には、特に積層配置することがある。同じような構成の複数の電気・電子機器(部材)を積層して用いる場合には、これらは同じような構成であることから、各々のコネクタは部材の同じ側の同じ位置に積層配置される。
【0005】
このとき、設計では、積層された部材側のコネクタ同士は、予め設計された所定の間隔で積層配置される。しかしながら、実際には、各部材の設計公差などにより、積層された部材側のコネクタ同士の間隔には、積層による公差が生じることが多い。
【0006】
このため、これらのコネクタをまとめて一括してコネクタ接続する場合には、積層された部材側に生じる積層公差を考慮してコネクタ接続を行わなければならない。このとき、積層された部材側で公差を矯正するのは非常に困難で、可能であったとしても大幅なコスト増につながるおそれがある。そのため、従来のコネクタでは、これらのコネクタをまとめて一括してコネクタ接続することができなかった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、積層された電気・電子機器(部材)側に積層による公差が生じる場合にも、これらの機器(部材)が各々備える相手側コネクタをまとめて一括してコネクタ接続できるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明に係るコネクタは、電線端末に接続される端子金具が収容されるキャビティを複数有するコネクタであって、前記キャビティがコネクタ本体から独立する別部材として筒状に構成されるとともに、これら複数のキャビティ同士も互いに独立する別部材として構成され、前記コネクタ本体がこれら複数のキャビティを収容するホルダとなってこれら複数のキャビティは個別に前記コネクタ本体に係止されており、この係止部分において、個々のキャビティと前記コネクタ本体との間にはクリアランスが設けられており、このクリアランスにより前記キャビティは前記コネクタ本体に対して動きが許容されていることを要旨とするものである。
【0009】
この際、前記コネクタ本体は、前記キャビティを挿入して係止する係止孔を複数有するとともに、挿入したキャビティの後ろとなる位置に、挿入したキャビティが前記コネクタ本体から脱落するのを抑えるカバーを備えることが好ましい。
【0010】
このとき、前記挿入したキャビティと前記カバーとの間には、前記コネクタ本体に対する前記挿入したキャビティの動きが許容されるクリアランスが設けられていることが好ましい。
【0011】
そして、本発明に係るコネクタにおいては、前記コネクタ本体に対して動きが規制されている基準のキャビティが存在することが望ましい。
【0012】
ここで、基準のキャビティとしては、前記コネクタ本体に一体成形されることにより、前記コネクタ本体に対して動きが規制されているものを挙げることができる。
【0013】
また、基準のキャビティとしては、前記コネクタ本体に圧入されることにより、前記コネクタ本体に対して動きが規制されているものを挙げることができる。
【0014】
また、基準のキャビティとしては、前記カバーに一体成形されることにより、前記コネクタ本体に対して動きが規制されているものを挙げることができる。
【0015】
また、基準のキャビティとしては、前記カバーに押圧されることにより、前記コネクタ本体に対して動きが規制されているものを挙げることができる。
【0016】
そして、前記カバーには、前記キャビティに収容される端子金具と接続される電線が通される貫通孔が形成されており、この貫通孔には、この貫通孔から電線の配策方向を決めるガイド溝が連なっていることが好ましい。
【0017】
そして、本発明に係るコネクタは、積層された部材の各々に備えられ、積層された状態にある複数のコネクタをまとめて一括して接続するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るコネクタによれば、コネクタ本体から独立する個々のキャビティとコネクタ本体との係止部分におけるクリアランスによって個々のキャビティがコネクタ本体に対して動きが許容される。このため、積層された電気・電子機器(部材)が各々備える相手側コネクタをまとめて一括してコネクタ接続するときに、積層された電気・電子機器(部材)側で積層された相手側コネクタ同士の間に生じる積層公差に対して、個々のキャビティを動かすことにより個々のキャビティが嵌合される個々の相手側コネクタに位置合わせをしてその積層公差を吸収することができる。これにより、積層された相手側コネクタをまとめて一括してコネクタ接続することができる。
【0019】
この際、コネクタ本体が、キャビティを挿入して係止する係止孔を複数有するとともに、挿入したキャビティの後ろとなる位置に、挿入したキャビティがコネクタ本体から脱落するのを抑えるカバーを備える場合には、確実に、コネクタ本体にキャビティを係止させることができる。
【0020】
このとき、挿入したキャビティとカバーとの間に、コネクタ本体に対する挿入したキャビティの動きが許容されるクリアランスが設けられている場合には、カバーを設ける構成にしたときにも、キャビティの動きが許容される状態を維持することができる。
【0021】
そして、本発明に係るコネクタにおいて、コネクタ本体に対して動きが規制されている基準のキャビティが存在する場合には、基準のキャビティを基準にして相手側コネクタと嵌合しやすくなる。
【0022】
そして、カバーに、キャビティに収容される端子金具と接続される電線が通される貫通孔が形成されており、この貫通孔に、この貫通孔から電線の配策方向を決めるガイド溝が連なっている場合には、電線の配策方向を規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係るコネクタの外観斜視図である。
【図2】コネクタのキャビティの外観斜視図である。
【図3】コネクタのキャビティの左側面図である。
【図4】コネクタのキャビティの前面図である。
【図5】コネクタのホルダ(コネクタ本体)の外観斜視図である。
【図6】内部が見える状態にされたホルダを表す外観斜視図である。
【図7】コネクタのホルダの後面図である。
【図8】コネクタのホルダの前面図である。
【図9】コネクタのホルダの左側面図である。
【図10】ホルダの一部の挿入孔にキャビティを挿入した状態を示す模式図である。
【図11】本発明の一実施形態に係るコネクタの後面図である。
【図12】図11のコネクタのA−A線断面図である。
【図13】図11のコネクタのB−B線断面図である。
【図14】本発明の一実施形態に係るコネクタの前面図である。
【図15】本発明のコネクタと相手側コネクタとの嵌合する前の状態を示す模式図である。
【図16】本発明のコネクタと相手側コネクタとを嵌合したものを、キャビティの中央位置で前後方向に沿って切断したときの断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るコネクタの外観斜視図である。なお、各図においては、便宜上、図1に示すように、コネクタの前後上下左右の方向を特定する。相手側コネクタと嵌合される側を前側としている。
【0025】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るコネクタ10は、電線端末に接続される端子金具が収容される複数のキャビティ12と、コネクタ本体14とを備えている。複数のキャビティ12は、コネクタ本体14から独立する別部材として筒状に構成されている。また、複数のキャビティ12同士も、互いに独立する別部材として構成されている。コネクタ本体14は、これら複数のキャビティ12を収容するホルダとなっている(以下、コネクタ本体14をホルダ14として表現することがある。)。
【0026】
図2〜4は、コネクタ10のキャビティ12を表す図面である。図2はキャビティ12の外観斜視図であり、図3はキャビティ12の左側面図であり、図4はキャビティ12の前面図である。図5〜9は、ホルダ14(コネクタ本体14)を表す図面である。図5はホルダ14の外観斜視図であり、図6は内部が見える状態にされたホルダ14を表す外観斜視図であり、図7はホルダ14の後面図であり、図8はホルダ14の前面図であり、図9はホルダ14の左側面図である。
【0027】
図2〜4に示すように、キャビティ12は、角筒状に構成されてその内部に図示しない端子金具が収容できるようになっている。端子金具は、キャビティ12の内部の図示しない係止突起に係止されることによりキャビティ12の内部に係止される。キャビティ12の後ろの開口側12aは端子金具(後述する筒型端子70)が挿入される側であり、キャビティ12の前の開口側12bは後述する相手側コネクタ60の端子金具(ピン端子62)が挿入される側である。キャビティ12の後ろの開口側12aおよび前の開口側12bのいずれも、端子金具(後述する筒型端子70およびピン端子62)が挿入されやすいように入口を広げるテーパが形成されている。
【0028】
キャビティ12の一方側(図2の右側)には、キャビティ12の前後方向の全長に延びる一対の突条22a,22bが形成されている。また、キャビティ12の他方側(図2の左側)には、キャビティ12の後側の一部分にのみ延びる一対の突条24a,24bが形成されている。一方側の一対の突条22a,22b間の溝と他方側の一対の突条24a,24b間の溝がガイドとなって、ホルダ14にキャビティ12を挿入しやすくなっている。
【0029】
他方側の一対の突条24a,24b間の溝の中央部分には、一段窪んだ凹部となるランス係止孔26が形成されており、後述するホルダ14のランス44が入り込んでランス44が係止されるようになっている。
【0030】
一方側の一対の突条22a,22bのうち上側の突条22aの後端には、右方向にさらに突出する突状のストッパ28が形成されており、後述するホルダ14の当接用突条38に当接されるようになっている。
【0031】
図5〜9に示すように、ホルダ14は、前面30aと両側面30b,30cと上下面30d,30eとで囲まれるとともに後側30fが開口された箱状のホルダ本体30と、ホルダ本体30の開口された後側30fを覆うカバー32と、ホルダ14を相手側コネクタに嵌合させたときに相手側コネクタに係止するためのロック34とを備えている。
【0032】
ホルダ本体30の内部は、キャビティ12の相手側コネクタに嵌合されない部分を収容する収容室となっている。ホルダ本体30の前面30aには、収容されるキャビティ12の相手側コネクタに嵌合される部分がホルダ本体30から突出されるように個々のキャビティ12が挿入される複数の挿入孔36が窓状に貫通形成されている。図5〜9に示す構成では、挿入孔36は、左右方向に2つ並ぶように配置され、上下方向に4つ並ぶように配置されている。
【0033】
左右方向に並んだ2つの挿入孔36の間には、キャビティ12のストッパ28が当接される当接用突条38が、ホルダ本体30の前面30aの内側に突となるように、また、上下方向に沿って連続するように、形成されている。この当接用突条38は、ホルダ本体30の前面30aを補強するリブの役割も果たしており、同じようにホルダ本体30の上下面30d,30eを補強する上下のリブ40,42に繋がっている。ホルダ本体30の両側面30b,30cの内側には、キャビティ12を挿入したときにキャビティ12のランス係止孔26に入り込んで係止されるランス44が設けられている。また、ホルダ本体30の左側面30bの外側には、後述するカバー32の係合片50と係合する係合爪46が設けられている。
【0034】
カバー32は、右側端部に設けられた2箇所のヒンジ48でホルダ本体30の右側後端に繋がっている。カバー32は、ヒンジ48を回動中心にして回動可能であり、カバー32が回動することにより、ホルダ本体30の後側30fの開口部を開閉することができる。カバー32の左側端部の上下2箇所には、ホルダ本体30の左側面30bの外側に形成された係合爪46と係合する係合片50を備えており、カバー32がホルダ本体30の後側30fを覆ったときにホルダ本体30の係合爪46と係合片50とが係合することにより、カバー32がホルダ本体30の後側30fを覆った状態が維持される。
【0035】
カバー32の内側面の中央部分には、上下方向に沿って延びる突条52が形成されており、カバー32がホルダ本体30の後側30fを覆ったときには、ホルダ14の挿入孔36に挿入されているキャビティ12の後端に形成された突状のストッパ28の後側端面に対し、所定の間隔(クリアランス)で相対する。
【0036】
カバー32において、この突条52が形成されている部分を挟んでその両側には、キャビティ12に収容される端子金具に接続される電線が通される貫通孔54が形成されている。この貫通孔54は、キャビティ12の後ろの開口側12aに臨んでおり、電線端末が接続された端子金具が、この貫通孔54を通ってキャビティ12の内部に収容される。あるいは、キャビティ12の内部に収容された端子金具に接続された電線が、貫通孔54を通ってコネクタ10の外部に引き出される。この貫通孔54には、上方向あるいは下方向に沿って延びるガイド溝56が連なっており、ガイド溝56によって、この貫通孔54からの電線の配策方向を上方向あるいは下方向に規制することができる。
【0037】
ホルダ本体30の左側面30bの外側には、ロック34がホルダ本体30に一体形成されており、コネクタ10が相手側コネクタと嵌合したときにその嵌合状態を維持できるようになっている。
【0038】
図10には、このような構成のホルダ14の一部の挿入孔36にキャビティ12を挿入した状態を示す。
【0039】
左側の挿入孔36に挿入されるキャビティ12は、一方側の一対の突条22a,22bが右側に配置され、他方側の一対の突条24a,24bが左側に配置される。これに対し、右側の挿入孔36に挿入されるキャビティ12は、一方側の一対の突条22a,22bが左側に配置され、他方側の一対の突条24a,24bが右側に配置される。これにより、左側の挿入孔36に挿入されるキャビティ12の突状のストッパ28は上側に配置され、右側の挿入孔36に挿入されるキャビティ12の突状のストッパ28は下側に配置される。これらのストッパ28が対となって上下方向で重なるように配置されているため、コネクタ10の左右の方向の大きさを小さくできる。
【0040】
図11〜14は、ホルダ14の挿入孔36にキャビティ12を挿入した完成形としてのコネクタ10を表す図である。図11はコネクタ10の後面図であり、図12は図11のコネクタ10のA−A線断面図であり、図13は図11のコネクタ10のB−B線断面図であり、図14はコネクタ10の前面図である。
【0041】
図12に示すように、ホルダ14の挿入孔36に挿入されたキャビティ12は、キャビティ12のランス係止孔26にホルダ14のランス44が入り込むことにより、ホルダ14に係止される。このとき、キャビティ12のランス係止孔26を有する他方側の一対の突条24a,24bがホルダ本体30の前面30aに当接されるとともに、キャビティ12のストッパ28がホルダ14の当接用突条38に当接される。
【0042】
この係止部分において、キャビティ12のランス係止孔26を有する側面12cとホルダ14の挿入孔36との間にはクリアランスLが設けられている。また、キャビティ12のストッパ28を有する一方側の一対の突条22a,22bとホルダ14の当接用突条38との間にはクリアランスLが設けられている。また、キャビティ12のストッパ28とカバー32の内側面の突条52との間にはクリアランスLが設けられている。さらに、図13に示すように、ホルダ14の挿入孔36に挿入されたキャビティ12の係止部分において、キャビティ12の上側面12dとホルダ14の挿入孔36との間や、キャビティ12の下側面12eとホルダ14の挿入孔36との間に、クリアランスLが設けられている。これらのクリアランスLにより、キャビティ12は、ホルダ14に対して動きが許容される。
【0043】
このような構成のコネクタ10を用いて、相手側コネクタと嵌合したときについて説明する。図15は、コネクタ10と相手側コネクタ62との嵌合する前の状態を示す模式図である。図16は、コネクタ10と相手側コネクタ62とを嵌合したものを、キャビティ12の中央位置で前後方向に沿って切断したときの状態を示す模式図である。
【0044】
本発明のコネクタ10によって一括接続される基板などの電気・電子機器(部材)60は、一方の端縁に相手側コネクタ62を備える。相手側コネクタ62は、一方の端縁から引き出されたピン端子64と、ピン端子64を覆うフード部66とを備えている。電気・電子機器(部材)60において、ピン端子64は、一方の端縁から2つ引き出されている。2つのピン端子64を個別に覆っている2つのフード部66は、一体成形により互いに連結されている。フード部66は、断面が角筒状に形成され、本発明のコネクタ10が嵌合する前側が開口していて、ピン端子64の周囲を覆う長さに形成されている。
【0045】
このような構成の電気・電子機器(部材)60が集まり、複数の電気・電子機器(部材)60は、上下方向に積層配置されている。複数の電気・電子機器(部材)60の相手側コネクタ62は、複数の電気・電子機器(部材)60が積層配置されることにより、上下方向に配列されて一纏めにされている。
【0046】
最下層に位置する電気・電子機器(部材)60の2連のフード部66の左側には、最上層に位置する電気・電子機器(部材)60の2連のフード部66の左側まで上方向に延びる板状のガイド部材68が設けられており、各電気・電子機器(部材)60の2連のフード部66の左側がこのガイド部材68に当接されて位置決めされている。これにより、複数の電気・電子機器(部材)60の相手側コネクタ62は、上下方向に配列されて一纏めにされている。なお、ガイド部材68の左外側面には、コネクタ10のロック34が係止するロック係止爪(図示しない)が設けられている。
【0047】
ここで、本発明のコネクタ10のキャビティ12を相手側コネクタ62のフード部66に挿入すると、図16に示すように、相手側コネクタ62のフード部66の内部のピン端子64と、本発明のコネクタ10のキャビティ12の内部の筒型端子70とが嵌合されて接触状態となり、これらの端子64,70が電気的に接続される。
【0048】
このとき、本発明のコネクタ10のキャビティ12を相手側コネクタ62のフード部66に挿入する際に、上下方向に並ぶフード部66間に積層による公差が生じていても、本発明のコネクタ10の個々のキャビティ12を動かすことにより、個々のキャビティ12が嵌合される個々のフード部66に位置合わせをしてその積層公差を吸収することができる。これにより、積層された複数の相手側コネクタ62をまとめて一括してコネクタ10接続することができる。
【0049】
なお、上記実施形態のコネクタ10では、複数のキャビティ12のうちのすべてのキャビティ12がホルダ14に対して動きが許容されている構成になっているが、複数のキャビティのうちの1つ以上のキャビティがホルダに対して動きが規制されている構成にすることもできる。このようなキャビティは、ホルダに対して動きが規制されているため、本発明のコネクタを相手側コネクタに嵌合する際の位置決めとなる基準のキャビティとすることができる。これにより、コネクタを相手側コネクタに嵌合しやすくすることができる。
【0050】
そして、コネクタを相手側コネクタに嵌合する際の位置決めとなる基準は1つ存在すれば十分であるため、他のキャビティの自由度を確保して積層による公差をより吸収しやすくするなどの観点から、ホルダに対して動きが規制されているキャビティは1つであることがより好ましい。
【0051】
キャビティの動きが規制される形態としては、1)キャビティがホルダに一体成形されている形態、2)キャビティがホルダ本体の挿入孔に圧入されている形態、3)キャビティがカバーに一体成形されている形態、2)キャビティがカバーに押圧されている形態、などを示すことができる。例えばこのような形態にされているキャビティを基準のキャビティにできる。
【0052】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0053】
例えば上記実施形態では、キャビティ12は左右方向に2列並列に並んでいる構成になっているが、キャビティ12は左右方向に1列の構成であっても良いし、3列以上並列に並んでいる構成であっても良い。また、上記実施形態では、カバー32が設けられているが、カバー32が設けられていない構成であっても良い。また、上記実施形態では、キャビティ12は角筒状であるが、円筒状などの他の形態であっても良い。また、上記実施形態では、カバー32に形成されたガイド溝56は、貫通孔54と同様、カバー32の両面を貫通するものであるが、カバー32の両面を貫通せず、カバー32の外側面が窪んだ凹部のように形成することもできる。
【符号の説明】
【0054】
10 コネクタ
12 キャビティ
14 ホルダ(コネクタ本体)
30 ホルダ本体
32 カバー
34 ロック
36 挿入孔
54 貫通孔
56 ガイド溝
60 相手側コネクタ
62 ピン端子
64 フード部
L クリアランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線端末に接続される端子金具が収容されるキャビティを複数有するコネクタであって、
前記キャビティがコネクタ本体から独立する別部材として筒状に構成されるとともに、これら複数のキャビティ同士も互いに独立する別部材として構成され、
前記コネクタ本体がこれら複数のキャビティを収容するホルダとなってこれら複数のキャビティは個別に前記コネクタ本体に係止されており、
この係止部分において、個々のキャビティと前記コネクタ本体との間にはクリアランスが設けられており、このクリアランスにより前記キャビティは前記コネクタ本体に対して動きが許容されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記コネクタ本体は、前記キャビティを挿入して係止する係止孔を複数有するとともに、挿入したキャビティの後ろとなる位置に、挿入したキャビティが前記コネクタ本体から脱落するのを抑えるカバーを備えることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記挿入したキャビティと前記カバーとの間には、前記コネクタ本体に対する前記挿入したキャビティの動きが許容されるクリアランスが設けられていることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記コネクタ本体に対して動きが規制されている基準のキャビティが存在することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記基準のキャビティは、前記コネクタ本体に一体成形されることにより、前記コネクタ本体に対して動きが規制されていることを特徴とする請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記基準のキャビティは、前記コネクタ本体に圧入されることにより、前記コネクタ本体に対して動きが規制されていることを特徴とする請求項4に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記基準のキャビティは、前記カバーに一体成形されることにより、前記コネクタ本体に対して動きが規制されていることを特徴とする請求項4に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記基準のキャビティは、前記カバーに押圧されることにより、前記コネクタ本体に対して動きが規制されていることを特徴とする請求項4に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記カバーには、前記キャビティに収容される端子金具と接続される電線が通される貫通孔が形成されており、この貫通孔には、この貫通孔から電線の配策方向を決めるガイド溝が連なっていることを特徴とする請求項2から8のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項10】
積層された部材の各々に備えられ、積層された状態にある複数の相手側コネクタをまとめて一括して接続するものであることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−226882(P2012−226882A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91639(P2011−91639)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】